以下、本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械を、スクロール式の空気圧縮機として用いた場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1はスクロール式空気圧縮機の本体部を構成する圧縮機本体で、この圧縮機本体1は、その外殻を構成する筒状のケーシング2を有し、該ケーシング2は、後述のケーシング本体3およびホルダ4等により構成されている。
3はケーシング2の本体を構成する段付筒状のケーシング本体で、このケーシング本体3は、図1に示すように軸方向に延びる大径筒部3Aと、該大径筒部3Aから軸方向の一側(外側)に向けて突出し該大径筒部3Aよりも小径な筒状に形成された軸受筒部3Bと、該軸受筒部3Bと前記大径筒部3Aとの間に形成された環状部3Cとにより構成されている。そして、ケーシング3の環状部3Cには、後述する連結部材18との間に補助クランク機構21が、ケーシング3の周方向に間隔をもって複数個(例えば、3個)配設されている。
4はケーシング本体3の軸方向他側に設けられたホルダで、該ホルダ4は、後述の背圧室22を形成するために用いられ、ケーシング本体3と一緒にケーシング2を構成している。ここで、ホルダ4は、ケーシング本体3の大径筒部3Aの開口端に取付けられる取付筒部4Aと、該取付筒部4Aの軸方向一側に位置し蓋状体として形成された略円盤状の底板部4Bとにより構成されている。
そして、ホルダ4の取付筒部4Aは、その外周側がケーシング本体3の大径筒部3Aに後述の固定スクロール6と一緒に固定して取付けられ、内部に後述する旋回スクロール11のジョイント部材16および背圧プレート17が収容されるものである。また、底板部4Bの外周側には、環状の背圧シール部材5が取付けられ、該背圧シール部材5は、後述する背圧プレート17の背面側との間を気密にシールしている。これにより、ホルダ4は、背圧プレート17と協働して該背圧プレート17との間に後述の背圧室22を形成している。
また、底板部4Bの外周側には、図1、図2に示す如く例えば3個の貫通穴4Cが軸方向に貫通して設けられ、該各貫通穴4C内には、後述する連結部材18の連結突起部18Aが旋回自在に隙間をもって挿入されるものである。さらに、ホルダ4の底板部4Bには、後述の背圧室22のうち装置本体の載置時に上,下方向で下側となる位置に通路穴4Dが設けられ、この通路穴4Dは、後述する開放通路25の一部を構成するものである。
6はケーシング2の軸方向他側に取付けられた固定スクロールで、該固定スクロール6は、図1に示すようにホルダ4の取付筒部4Aを介してケーシング本体3の大径筒部3Aに固定されている。ここで、固定スクロール6は、円板状をなす板体としての鏡板6Aと、該鏡板6Aの表面に中心側が巻始め端となり外周側が巻終り端となって立設された渦巻状のラップ部6Bと、鏡板6Aの背面側に形成された複数の冷却フィン6C等とにより構成されている。そして、固定スクロール6のラップ部6Bはインボリュート曲線を用いて渦巻状に形成されている。
7は固定スクロール6の外周側に設けられた環状のシール部材で、該シール部材7は、後述する旋回スクロール本体12の鏡板12Aと固定スクロール6とのの間をシールし、後述の吸込口14を旋回スクロール11側に対して気密に遮断するものである。
8はケーシング本体3の軸受筒部3B内に軸受9,10を介して回転可能に設けられた駆動軸で、この駆動軸8は、図1に示すように、その軸方向一側が軸受筒部3Bからケーシング本体3の外部へと突出し、例えばプーリ(図示せず)等を介して後述の電動モータ33(図3参照)に連結されるものである。また、駆動軸8の軸方向他側(先端側)は、ケーシング本体3の大径筒部3A内を軸方向に延びるクランク部8Aとなっている。
ここで、クランク部8Aは、その軸線が駆動軸8の軸線に対して予め決められた一定の寸法(偏心量)だけ偏心している。そして、クランク部8Aは、後述の旋回軸受20を介して連結部材18のボス部18B内に回転可能に取付けられている。また、駆動軸8には、回転バランスをとるためのバランスウエイト部8Bが一体に設けられている。
11はケーシング2と固定スクロール6との間に設けられた旋回スクロールを示し、この旋回スクロール11は、固定スクロール6と対面するようにケーシング本体3の大径筒部3Aの開口側に旋回可能に配設されている。そして、旋回スクロール11は、後述の旋回スクロール本体12、ジョイント部材16、背圧プレート17および連結部材18等により構成されている。
12は旋回スクロール11の本体部を構成する旋回スクロール本体で、該旋回スクロール本体12は、固定スクロール6と対向して配置されている。また、旋回スクロール本体12は、略円板状に形成された板体としての鏡板12Aと、該鏡板12Aの表面から固定スクロール6側に向け、中心側が巻始め端となり外周側が巻終り端となって立設された渦巻状のラップ部12Bとにより構成されている。一方、鏡板12Aの背面側には、複数の冷却フィン12Cが形成されている。また、旋回スクロール本体12の鏡板12Aには、後述する背圧孔23,24が2箇所に設けられている。
ここで、旋回スクロール本体12のラップ部12Bは、固定スクロール6のラップ部6Bと同様にインボリュート曲線を用いて渦巻状に形成され、固定スクロール6のラップ部6Bに対し、例えば180度ずらして重なり合うように配設されている。これにより、両者のラップ部6B,12B間には、その外径側から内径側(中央)にかけて複数の圧縮室13が画成されている。
そして、圧縮運転時には、固定スクロール6の外周側に設けられた吸込口14から外径側の圧縮室13内に空気を吸込みつつ、各圧縮室13を連続的に縮小して内部の空気を加圧することにより、最後に、中央側の圧縮室13内に収容された圧縮空気を、固定スクロール6の中央側に設けた吐出口15から外部に吐出する。即ち、複数の圧縮室13は、外径側に位置しているときに低圧となり、中央側の位置に位置しているときに高圧となっている。
16は旋回スクロール本体12の背面側に固着して設けられたジョイント部材で、該ジョイント部材16は、鏡板12Aの背面側に一体的にボルト止めされている。また、ジョイント部材16の背面側には、ほぼ全面に亘って円形状の凹陥部16Aが設けられ、該凹陥部16A内には後述の背圧プレート17が取付けられている。これにより、ジョイント部材16は、背圧プレート17を介して後述の背圧室22内の圧力を受圧することができる。
17はジョイント部材16の背面に取付けられた背圧プレートで、該背圧プレート17は、ジョイント部材16の凹陥部16A内に嵌合する円板として形成されている。そして、背圧プレート17は、背面側に形成される背圧室22の圧力を受承することにより、ジョイント部材16を介して旋回スクロール本体12を固定スクロール6に向けて押圧するものである。
18は旋回スクロール11の連結構造部をなす連結部材である。この連結部材18は、略円板状に形成され、ホルダ4を挟んだ状態でジョイント部材16に取付けられている。また、連結部材18の外周側には、ジョイント部材16側となる正面側に向けて突出した3個の連結突起部18Aが設けられている。これらの連結突起部18Aは、ホルダ4の貫通穴4Cにそれぞれ挿通され、ジョイント部材16の外周側に一体的にボルト19により固着されている。
また、連結部材18の背面側中央には、筒状のボス部18Bが一体的に形成され、このボス部18B内には、駆動軸8のクランク部8Aが旋回軸受20を介して回転可能に取付けられている。これにより、連結部材18は、ホルダ4を挟んで旋回スクロール本体12と駆動軸8とを連結し、該駆動軸8のクランク部8Aの旋回運動を旋回スクロール本体12に伝達する。
21は連結部材18とケーシング本体3との間に設けられた自転防止機構としての補助クランク機構である。この補助クランク機構21は、ケーシング本体3の環状部3Cと連結部材18との外周側に配設されている。そして、補助クランク機構21は、旋回スクロール11が旋回運動する間にケーシング本体3内で自転するのを抑え、旋回スクロール11の旋回動作を安定させるものである。
22はケーシング2と旋回スクロール11との間に設けられた背圧室で、この背圧室22は、旋回スクロール11の旋回スクロール本体12を固定スクロール6側に空気圧により押付けるものである。ここで、背圧室22は、ケーシング2の一部を構成するホルダ4と旋回スクロール11を構成する背圧プレート17との間に位置し、外周側が背圧シール部材5によって気密にシールされた円形の空間として形成されている。
そして、背圧室22は、圧縮室13内で圧縮された圧縮空気が後述の背圧孔23,24を通じて流入することにより、各圧縮室13側の圧力によって固定スクロール6から旋回スクロール11を離す方向にスラスト荷重が生じた場合でも、旋回スクロール11(旋回スクロール本体12)を固定スクロール6側に向けて押圧することができ、前記スラスト荷重による負荷を軽減することができる。
23は旋回スクロール11を構成する旋回スクロール本体12の鏡板12Aに設けられた背圧導入路としての高圧側背圧孔を示している。この高圧側背圧孔23は、後述の低圧側背圧孔24が連通する圧縮室13の位置よりも加圧された位置の高圧な圧縮室13に連通するように設けられている。
24は旋回スクロール11を構成する旋回スクロール本体12の鏡板12Aに設けられた背圧導入路としての低圧側背圧孔を示している。この低圧側背圧孔24は、高圧側背圧孔23が連通する加圧状態で高圧な圧縮室13よりも圧力が低い低圧な圧縮室13に連通するように、鏡板12Aのうち高圧側背圧孔23よりも径方向外側寄りとなる位置に設けられている。
25は背圧室22を大気に開放するための開放通路で、該開放通路25は、図1中に示す如く、背圧室22の最下部位に位置してホルダ4の底板部4Bに設けられた前述の通路穴4D(図2参照)と、一端側が該通路穴4Dに接続され他端側がケーシング2外に向けて延びた導管26等とにより構成されている。
27は導管26の途中等に設けられた遮断弁で、該遮断弁27は、後述の吸込弁29等と同様に電磁弁を用いて構成され、後述の制御装置35によって開,閉弁制御される。そして、遮断弁27は、開弁時に圧縮機本体1の背圧室22を開放通路25を介して大気に連通させ、背圧室22内の圧縮空気を大気中に放出する。一方、遮断弁27が閉弁したときには、背圧室22が開放通路25と共に大気に対して遮断され、背圧室22内には、背圧を発生させるための圧縮空気が収容されるものである。
28は圧縮機本体1の吸込口14に接続して設けられた導入配管で、該導入配管28は、例えば工場の空気圧ライン(図示せず)等に後述の吸込弁29を介して接続されている。そして、この場合の圧縮機本体1は、前記空気圧ラインの圧力よりも高い圧力の圧縮空気を発生させるブースタ(昇圧機)として用いられるものである。
29は圧縮機本体1の吸込口14と空気圧ラインとの間に設けられた吸込弁を示し、該吸込弁29は、例えば電磁弁により構成され、例えば導入配管28の途中部位または吸込口14の開口端等に接続して設けられている。そして、吸込弁29は、後述の制御装置35により開,閉制御され、開弁時には圧縮機本体1の吸込口14を前記空気圧ライン側に連通させ、閉弁時には吸込口14を前記空気圧ライン側から遮断するものである。
30は圧縮機本体1の吐出口15を下流側のタンク31等に接続する吐出配管を示し、該吐出配管30は、圧縮機本体1の吐出口15から吐出される高圧の圧縮空気をタンク31内に貯留させつつ、例えば高圧仕様の空気圧機器(図示せず)に圧縮空気を供給するものである。
32は圧縮機本体1の吐出口15とタンク31との間に設けられた吐出弁で、該吐出弁32は、例えば図3に示すように、吐出配管30の途中部位または吐出口15の開口端等に接続して設けられている。そして、吐出弁32は、後述の制御装置35により開,閉制御され、開弁時には圧縮機本体1の吐出口15をタンク31に連通させ、閉弁時には吐出口15を外部のタンク31に対して遮断し続けるものである。
33は旋回スクロール11を旋回駆動する駆動手段としての電動モータで、該電動モータ33は、その出力側が図1中に示す駆動軸8に連結され、該駆動軸8を回転駆動するものである。ここで、電動モータ33は、後述の制御装置35によって外部から給電されると、圧縮機本体1の駆動軸8を回転駆動することにより、旋回スクロール11をクランク部8A、旋回軸受20等を介して旋回駆動するものである。
34はタンク31内の圧力を検出する圧力センサで、該圧力センサ34は、例えばタンク31内の圧力を検出し、その検出信号を後述の制御装置35に出力する。これにより、圧縮機本体1(電動モータ33)は、タンク31内の圧力が予め決められた圧力範囲となるように駆動制御されるものである。即ち、タンク31内の圧力は、図5中に示す如く最低圧Pmin と最高圧Pmax との間の圧力範囲内に保たれるように、圧縮運転が断続的に行われるものである。
35はマイクロコンピュータ等からなる制御手段としての制御装置で、該制御装置35は、その入力側が圧力センサ34等に接続され、その出力側は遮断弁27、吸込弁29、吐出弁32および電動モータ33等に接続されている。また、制御装置35は、ROM,RAM等からなる記憶部35Aを有し、該記憶部35A内には、後述の図4に示す処理プログラムと、タイマTおよび後述の判定時間Ta(例えば、数秒程度の時間)等とが格納されている。
ここで、制御装置35は、遮断弁27の開,閉制御処理を図4に示すプログラムに従って後述の如く実行する。また、制御装置35は、図3に示すタンク31内の圧力が予め決められた所定範囲(図5中に示す最低圧Pmin と最高圧Pmax との間)の圧力値となるように、圧縮機本体1の運転制御等を行い、これに伴って吸込弁29、吐出弁32の開,閉制御、電動モータ33の駆動,停止制御等を実行するものである。
本実施の形態によるスクロール式空気圧縮機は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、電動モータ33によって駆動軸8を回転駆動したときには、駆動軸8の回転が旋回軸受20を介して旋回スクロール11に伝えられる。これにより、旋回スクロール11は、補助クランク機構21によって自転を規制された状態で、駆動軸8を中心として旋回運動を行う。
このとき、固定スクロール6のラップ部6Bと旋回スクロール本体12のラップ部12Bとの間に画成された圧縮室13は、外径側から中心側に向けて連続的に縮小する。これにより、圧縮機本体1は、吸込口14から吸込んだ空気を各圧縮室13で順次加圧し、圧縮空気を中心側の吐出口15から吐出配管30、吐出弁32を介して外部のタンク31へと吐出する。
そして、タンク31内には圧縮空気が順次貯留され、例えば図5中に実線で示す特性線36(時間T1,T3,T5)のように、タンク31内の圧力が最高圧Pmax に達すると、圧縮運転が停止され、これ以上にタンク31内の圧力が上昇して過剰圧となるのを防ぐ。また、この状態でタンク31内の圧縮空気は、外部の空気圧機器等に供給されることにより、タンク31内の圧力は漸次低下する。
一方、図5中の時間T2,T4のように、タンク31内の圧力が最低圧Pmin まで低下すると、圧縮運転が再開される。そして、圧縮運転の再開に伴って、タンク31内の圧力は、再び最高圧Pmax まで漸次上昇される。このように、本実施の形態によるスクロール式空気圧縮機は、タンク31内の圧力が最低圧Pmin と最高圧Pmax との間の圧力範囲内に保たれるように、圧縮運転の開始,停止,継続等が制御される。
また、圧縮室13内で圧縮された圧縮空気は、その一部が各背圧孔23,24を通じて旋回スクロール11の背面側に画成された背圧室22に導入される。これにより、圧縮空気の圧力によって旋回スクロール11が固定スクロール6から離れる方向に向けたスラスト荷重が生じても、背圧室22内の圧力(背圧)により旋回スクロール11を固定スクロール6側に向けて押圧することができ、スラスト荷重による負荷を軽減することができる。
ところで、背圧室22内に導入された圧縮空気中には、水蒸気等の水分が含まれているため、例えば圧縮運転を停止して背圧室22周囲の温度が低下したとき等には、背圧室22内に残った圧縮空気中にドレンが発生し易くなる。そして、背圧室22内にドレンが発生したときには、発錆や腐食等の原因となることが知られている。
そこで、本実施の形態では、遮断弁27の開,閉制御処理を制御装置35により図4に示すプログラムに従って実行し、背圧室22内にドレンが発生するのを未然に防ぐようにしている。
即ち、図4に示す処理動作がスタートすると、ステップ1で圧縮運転中であるか、圧縮運転が停止されたかを判定する。そして、ステップ1で「NO」と判定する間は、例えば図5中に実線で示す特性線36のように、時間T1に達する前の段階で圧縮運転が継続されている場合に相当するので、ステップ7に移ってリターンする。
また、ステップ1で「YES」と判定したときには、例えば図5中に示す特性線36のように、時間T1で圧縮運転を停止させた場合に相当するので、次なるステップ2に移って遮断弁27を開弁する。即ち、図5中に示す特性線37の如く、例えば時間T1,T3,T5で遮断弁27を開弁し、背圧室22内を開放通路25を介して大気に開放する。また、ステップ3では、タイマTによる計時を開始する。
次に、ステップ4では、タイマTが予め決められた判定時間Ta(例えば、数秒程度の時間)以上を計時したか否かを判定する。ここで、ステップ4で、「NO」と判定する間は、遮断弁27を開弁状態として背圧室22内を大気に開放し続ける。
そして、ステップ4で「YES」と判定したときには、遮断弁27を開弁した後に所定の判定時間Taが経過しているので、ステップ5に移って遮断弁27を閉弁し、背圧室22内を大気に対して遮断する。また、ステップ6では、タイマTによる計時を停止させ、その後はステップ7に移ってリターンする。
かくして、本実施の形態によれば、制御装置35により前述の如き遮断弁27の開,閉制御処理を実行し、旋回スクロール11が旋回運動する圧縮運転中には遮断弁27を閉弁し、旋回運動が停止される圧縮運転の停止時には、予め決められた判定時間Taの間だけ遮断弁27を開弁する構成としている。
このため、例えば圧縮運転を停止して背圧室22周囲の温度が低下したときに発生し易いドレンを、遮断弁27で開放通路25を開くことにより背圧室22内から大気中に圧縮空気と一緒に逃がすことができ、湿気を含んだ圧縮空気が背圧室22内に滞溜するのを防ぐことができる。
これにより、背圧室22内での発錆、腐食の発生を未然に防ぐことができ、装置の信頼性、寿命等を向上することができる。また、ホルダ4(底板部4B)の外周側と背圧プレート17との間に設けた背圧シール部材5がドレンの影響で偏摩耗したりするのを防止でき、シール寿命を延ばすことができる。
また、背圧プレート17との間に背圧室22を形成しているホルダ4の底板部4Bには、背圧室22のうち上,下方向で最も下側となる位置に通路穴4Dを設け、該通路穴4Dにより導管26等と共に開放通路25を構成している。このため、仮にドレンが背圧室22内に発生したとしても、重力の作用でより低い位置に流れるドレンを、通路穴4D、導管26を介して大気中へと排出することができ、背圧室22内にドレンが留まるのを防止することができる。
次に、図6および図7は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、旋回スクロールの旋回運動が停止された後に予め決められた遅延時間が経過したときに、遮断弁を開弁する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、第2の実施の形態では、遮断弁27の開,閉制御処理を図6に示すプログラムに従って実行し、背圧室22内にドレンが発生するのを防ぐようにしている。
即ち、図6に示す処理動作がスタートすると、ステップ11で圧縮運転が停止されたか否かを判定する。そして、ステップ11で「NO」と判定する間は、圧縮運転が継続されている場合に相当するので、ステップ22に移ってリターンする。
また、ステップ11で「YES」と判定したときには、例えば図7中に示す特性線41のように、時間T1で圧縮運転を停止させた場合に相当するので、次なるステップ12に移ってタイマTによる計時を開始する。そして、次のステップ13では、タイマTが予め決められた遅延時間Tb以上を計時したか否かを判定する。
ここで、ステップ13で「NO」と判定する間は、ステップ14に移って圧縮運転が再開されたか否かを判定する。そして、ステップ14で「YES」と判定したときには、例えば図7中の時間T1〜T2のように、遅延時間Tbよりも短い時間Txの経過後に圧縮運転が再開されているので、ステップ15に移ってタイマTによる計時を停止させる。そして、その後はステップ22に移ってリターンする。
一方、ステップ14で「NO」と判定する間は、ステップ13に戻って、これ以降の処理を続行する。そして、ステップ13で「YES」と判定したときには、例えば図7中の時間T3〜T5のように、遅延時間Tbの経過後にも圧縮運転が停止されているので、ステップ16に移ってタイマTによる計時を停止させる。
そして、次なるステップ17では、圧縮運転の停止後に遅延時間Tbが経過しているので、例えば図7中に示す特性線42の如く、時間T4で遮断弁27を開弁し、背圧室22内を開放通路25を介して大気に開放する。また、次なるステップ18では、タイマTによる計時を開始する。
次に、ステップ19では、タイマTが予め決められた判定時間Ta以上を計時したか否かを判定し、ステップ19で「NO」と判定する間は、遮断弁27を開弁状態として背圧室22内を大気に開放し続ける。そして、ステップ19で「YES」と判定したときには、判定時間Taが経過しているので、ステップ20に移って遮断弁27を閉弁し、背圧室22内を大気に対して遮断する。
また、ステップ21では、タイマTによる計時を停止させ、その後はステップ22に移ってリターンする。そして、その後は図7中の時間T5〜T6以降のように、特性線42等に沿って遮断弁27の開,閉弁制御を続行する。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、旋回スクロール11の旋回運動(圧縮運転)が停止された後に遅延時間Tbが経過したときに、遮断弁27を開弁する構成としているから、前記第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
特に、本実施の形態では、圧縮運転を停止して遅延時間Tbが経過したときに遮断弁27を開弁するため、圧縮運転の停止後に背圧室22内の温度が低下したときに発生し易いドレンに対し、背圧室22周囲の温度がドレンの発生温度に達する前に、遮断弁27を開弁して大気中に圧縮空気を放出することができ、背圧室22内にドレンが発生するのを抑えることができる。
この場合、遅延時間Tbの設定は、例えば背圧室22内に湿度センサ(例えば、後述の図8参照)を設け、湿度センサで検出した背圧室22内の湿度変化(湿度データ)により、適切な時間を設定することができる。また、遅延時間Tbは、背圧室22内の湿度データと外気温度のデータとに基づいて、適正に設定することもできる。
一方、遅延時間Tbは、固定スクロール6の温度データまたは背圧室22内の温度データに基づいて設定することもできる。また、固定スクロール6または背圧室22の温度データと外気温度のデータとに基づいて、適切な遅延時間Tbを設定することもできる。
また、圧縮運転を停止した後に遅延時間Tbの経過前に、圧縮運転を再開するときには、例えば図7中の時間T1〜T3のように、遮断弁27を閉弁し続けるため、圧縮空気を背圧室22内に残した状態で圧縮運転を再開することができ、圧縮空気が無駄に大気中に放出(消費)されるのを防ぐことができる。そして、この場合でも遅延時間Tbを適正に設定することにより、背圧室22内にドレンが発生するのを抑えることができる。
次に、図8ないし図10は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、圧縮運転の停止後に背圧室内の湿度変化をモニタすることにより、遮断弁の開,閉弁制御を行う構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、51は湿度検出手段としての湿度センサで、該湿度センサ51は、例えば図1中に示したホルダ4の底板部4B等に設けられ、背圧室22内の湿度Hを検出するものである。そして、湿度センサ51は、その検出信号を後述の制御装置53に出力するものである。
52は外気の温度を検出する外気温度検出手段としての外気温センサで、該外気温センサ52は、例えば圧縮機本体1が設置された工場内,外の雰囲気温度を外気の温度として検出するものである。そして、外気温センサ52は、その検出信号を後述の制御装置53に出力するものである。
53はマイクロコンピュータ等からなる制御手段としての制御装置で、該制御装置53は、その入力側が圧力センサ34、湿度センサ51および外気温センサ52等に接続され、その出力側は遮断弁27、吸込弁29、吐出弁32および電動モータ33等に接続されている。また、制御装置53は、ROM,RAM等からなる記憶部53Aを有し、該記憶部53A内には、後述の図9に示す処理プログラムと、タイマT、判定時間Taおよび予め決められた判定湿度H1等とが格納されている。
この場合、記憶部53A内に格納した判定湿度H1は、背圧室22内でのドレン発生を防ぐための判定値となる湿度であり、外気温センサ52で検出した周囲温度(外気温度)に応じて変更できるように適正な湿度値を選定すればよい。一般に、結露等が発生する露点温度または飽和蒸気圧は、外気温度に関連して変化するので、背圧室22内でのドレン発生を防ぐための判定湿度H1も、外気温度に応じて適正に変更されるものである。
そして、制御装置53は、第1の実施の形態で述べた制御装置35とほぼ同様に構成され、遮断弁27の開,閉制御処理を図9に示すプログラムに従って後述の如く実行する。また、制御装置53は、図8に示すタンク31内の圧力が予め決められた所定範囲(図10中に示す最低圧Pmin と最高圧Pmax との間)の圧力値となるように、圧縮機本体1の運転制御等を行い、これに伴って吸込弁29、吐出弁32の開,閉制御、電動モータ33の駆動,停止制御等を実行するものである。
即ち、図9に示す処理動作がスタートすると、ステップ31で圧縮運転が停止されたか否かを判定する。そして、ステップ31で「NO」と判定する間は、圧縮運転が継続されている場合に相当するので、ステップ39に移ってリターンする。
また、ステップ31で「YES」と判定したときには、図10中に示す特性線54のように、例えば時間T1で圧縮運転を停止させた場合に相当するので、次なるステップ32に移って湿度センサ51から背圧室22内の湿度Hを読込む。そして、次のステップ33では、背圧室22内の湿度Hが予め決められた判定湿度H1以上まで高くなっているか否かを判定する。
ここで、ステップ33で「NO」と判定する間は、ステップ31に戻って圧縮運転を停止しているか、即ち圧縮運転が再開されてはいないか否かを判定し、ステップ31以降の処理を続ける。そして、図10中に示す特性線55のように、例えば時間T1で圧縮運転を停止させると、背圧室22内の湿度Hは漸次高くなるが、時間T2で圧縮運転が再開されると、湿度Hは急激に低下し、背圧室22内の湿度Hが判定湿度H1以上まで高くなることはない。
しかし、例えば図10中の時間T3〜T4のように、圧縮運転の停止後に背圧室22内の湿度Hが判定湿度H1まで上昇すると、図9中のステップ33で「YES」と判定するので、このときにはステップ34に移り、例えば図10中の特性線56の如く時間T4で遮断弁27を開弁し、背圧室22内を開放通路25を介して大気に開放する。また、次なるステップ35では、タイマTによる計時を開始する。
そして、ステップ35〜39の処理を、例えば第1の実施の形態で述べた図4中のステップ3〜7における処理と同様に行い、判定時間Ta分だけ遮断弁27を開弁させた後に閉弁して、背圧室22内を大気に対して遮断する。また、その後も図10中の時間T5,T6,T7,T8,T9のように、特性線56等に沿って遮断弁27の開,閉弁制御を続行する。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、旋回スクロール11の旋回運動(圧縮運転)が停止された後に、背圧室22内の湿度Hの変化状態をモニタしながら、遮断弁27の開,閉弁制御を行う構成としているから、前記第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
特に、本実施の形態では、背圧室22の湿度変化に従って遮断弁27の開,閉弁を制御する構成としているので、例えば圧縮運転を停止した後に背圧室22内の湿度Hが高いとき(例えば、時間T4参照)にのみ遮断弁27を開弁して、大気中に圧縮空気を放出することができ、背圧室22内にドレンが発生するのを抑えることができる。
一方、圧縮運転を停止した後に背圧室22内の湿度Hが、判定湿度H1よりも低いとき(例えば、時間T1〜T2,T6〜T7,T8〜T9参照)には、遮断弁27を閉弁し続けて圧縮空気を背圧室22内に残すことにより、圧縮空気を大気中に無駄に放出することなく、次なる圧縮運転時に有効に活用でき、省エネルギ化を図ることができる。
また、背圧室22内に収容した圧縮空気の飽和蒸気圧または露点温度は、外気温度に影響されて変化するので、背圧室22の湿度Hと外気温度とに従って遮断弁27の開,閉弁を制御することにより、一層により細かい制御が可能となり、圧縮空気が無駄に放出(消費)されるのを防ぐことができる。
なお、前記第3の実施の形態では、制御装置53の記憶部53A内に格納した判定湿度H1を、外気温センサ52で検出した周囲温度(外気温度)に応じて変更する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図11に示す第1の変形例のように、外気温センサ52(図8参照)を廃止し、湿度センサ51からの検出信号を制御装置53′に出力する構成としてもよい。
そして、この場合の制御装置53′には、背圧室22内でのドレン発生を防ぐための判定湿度H1が固定値として記憶部53A′内に格納されるものである。しかし、このような場合でも、例えば寒冷地または温暖地仕様、夏季または冬季仕様等として、判定湿度H1を適宜に変更することは可能であり、背圧室22内でのドレン発生を有効に防止することができるものである。
次に、図12ないし図14は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、圧縮運転の停止後に固定スクロールまたは背圧室内の温度変化をモニタすることにより、遮断弁の開,閉弁制御を行う構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、61は温度検出手段としての温度センサで、該温度センサ61は、例えば図1中に示した固定スクロール6の背面側等に設けられ、固定スクロール6(圧縮室13)内の温度Kxを検出するものである。そして、温度センサ61は、その検出信号を後述の制御装置63に出力するものである。
ここで、スクロール式の圧縮機本体1は、図1に例示した如く、固定スクロール6と旋回スクロール11との間に複数の圧縮室13が画成され、旋回スクロール11の背面側には背圧室22が形成されている。このため、圧縮室13と背圧室22とは実質的に等しい温度に保たれる。従って、温度センサ61を固定スクロール6側に設けても、背圧室22側に設けた場合とほぼ同様な温度変化を検出することはできる。
但し、温度センサ61を固定スクロール6側に設ける方が一般的であり、例えばメンテナンス時の作業性もよい。しかし、固定スクロール6側に替えて、例えば図1中に示したホルダ4の底板部4B等に温度センサを設け、背圧室22内の温度を検出する構成としてもよいものである。
62は外気の温度を検出する外気温度検出手段としての外気温センサで、該外気温センサ62は、例えば圧縮機本体1が設置された工場内,外の雰囲気温度を外気温Kyとして検出するものである。そして、外気温センサ52は、その検出信号を後述の制御装置63に出力するものである。
63はマイクロコンピュータ等からなる制御手段としての制御装置で、該制御装置63は、その入力側が圧力センサ34、温度センサ61および外気温センサ62等に接続され、その出力側は遮断弁27、吸込弁29、吐出弁32および電動モータ33等に接続されている。また、制御装置63は、ROM,RAM等からなる記憶部63Aを有し、該記憶部63A内には、後述の図13に示す処理プログラムと、タイマT、判定時間Taおよび予め決められた判定値α等とが格納されている。
ここで、記憶部63A内に格納した判定値αは、背圧室22内でのドレン発生を防ぐための判定値であり、下記の数1式による温度差ΔKが判定値α以下になると、背圧室22内でドレンが発生し易くなる。即ち、圧縮運転の停止後に背圧室22、圧縮室13等の温度が徐々に低下したときに、圧縮空気を背圧室22内に溜めておくとドレンは発生するが、このときの温度は周囲の雰囲気温度(外気温Ky)に応じて変化することが知られている。
そこで、本実施の形態では、温度センサ61により検出した固定スクロール6(圧縮室13)の温度Kxと外気温センサ52で検出した外気温Kyとの温度差ΔKを演算し(図13中のステップ43参照)、この温度差ΔKを判定値αと比較判定することにより、遮断弁27の開,閉弁制御を行う構成としているものである。
そして、制御装置63は、第1の実施の形態で述べた制御装置35とほぼ同様に構成され、遮断弁27の開,閉制御処理を図13に示すプログラムに従って後述の如く実行する。また、制御装置63は、図12に示すタンク31内の圧力が予め決められた所定範囲(図14中に示す最低圧Pmin と最高圧Pmax との間)の圧力値となるように、圧縮機本体1の運転制御等を行い、これに伴って吸込弁29、吐出弁32の開,閉制御、電動モータ33の駆動,停止制御等を実行するものである。
ここで、図13に示す処理動作がスタートすると、まず、ステップ41で圧縮運転が停止されたか否かを判定する。そして、ステップ41で「NO」と判定する間は、圧縮運転が継続されている場合に相当するので、ステップ50に移ってリターンする。
また、ステップ41で「YES」と判定したときには、図14中に示す特性線64のように、例えば時間T1で圧縮運転を停止させた場合に相当するので、次なるステップ42に移って、温度センサ61による圧縮室13、背圧室22の温度Kxと、外気温センサ52による外気温Kyとを読込む。
そして、次なるステップ43では、温度Kxと外気温Kyとの温度差ΔKを演算する。次に、ステップ44では、このときの温度差ΔKが判定値α以下まで低下したか否かを判定し、ステップ44で「NO」と判定する間は、ステップ41に戻って圧縮運転を停止しているか、即ち圧縮運転が再開されてはいないか否かを判定し、ステップ41以降の処理を続ける。
ここで、図14中に示す特性線64,65のように、例えば時間T1で圧縮運転を停止させると、温度差ΔK(即ち、圧縮室13、背圧室22の温度Kx)は漸次低下するが、時間T2で圧縮運転が再開されると、温度差ΔKは再び上昇し、このときの温度差ΔKが判定値α以下まで下がることはない。
しかし、例えば図14中の時間T3〜T5のように、圧縮運転の停止後に温度差ΔKが判定値α以下に下がってしまうと、図13中のステップ44で「YES」と判定するので、このときにはステップ45に移り、例えば図14中の特性線66の如く時間T4で遮断弁27を開弁し、背圧室22内を開放通路25を介して大気に開放する。また、次なるステップ46では、タイマTによる計時を開始する。
そして、ステップ46〜50にわたる処理を、例えば第1の実施の形態で述べた図4中のステップ3〜7における処理と同様に行い、判定時間Ta分だけ遮断弁27を開弁させた後に閉弁して、背圧室22内を大気に対して遮断する。また、その後も図14中の時間T5,T6,T7,T8,T9のように、特性線66等に沿って遮断弁27の開,閉弁制御を続行する。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、旋回スクロール11の旋回運動(圧縮運転)が停止された後に、固定スクロール6(圧縮室13または背圧室22内)の温度Kxの変化状態をモニタしながら、遮断弁27の開,閉弁制御を行う構成としているから、前記第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
特に、本実施の形態では、圧縮室13または背圧室22内の温度変化に従って遮断弁27の開,閉弁を制御する構成としているので、例えば圧縮運転を停止した後に外気温Kyと温度Kxとの温度差ΔKが、判定値α以下まで下がったとき(例えば、図14中の時間T4参照)にのみ遮断弁27を開弁して、大気中に圧縮空気を放出することができ、背圧室22内にドレンが発生するのを抑えることができる。
一方、圧縮運転を停止した後にも前記温度差ΔKが、判定値αよりも高いとき(例えば、時間T1〜T2,T6〜T7,T8〜T9参照)には、遮断弁27を閉弁し続けて圧縮空気を背圧室22内に残すことにより、圧縮空気を大気中に無駄に放出することなく、次なる圧縮運転時に有効に活用でき、省エネルギ化を図ることができる。
また、背圧室22内に収容した圧縮空気の飽和蒸気圧または露点温度は、外気温Kyに影響されて変化するので、圧縮室13、背圧室22の温度Kxと外気温度Kyとに従って、前述の如く遮断弁27の開,閉弁を制御することにより、一層により細かい制御が可能となり、圧縮空気が無駄に放出(消費)されるのを防ぐことができる。
なお、前記第4の実施の形態では、温度センサ61による温度Kxと外気温センサ62による外気温Kyとの温度差ΔTにより遮断弁27の開,閉弁を制御する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図15、図16に示す第2の変形例のように、温度差等を求めることなく、遮断弁27の開,閉制御を行う構成としてもよい。
即ち、図15に示す制御処理では、まず、ステップ61で圧縮運転が停止されたか否かを判定する。そして、ステップ61で「NO」と判定する間は、圧縮運転が継続されている場合に相当するので、ステップ69に移ってリターンする。
また、ステップ61で「YES」と判定したときには、図16中に示す特性線71のように、例えば時間T1で圧縮運転を停止させた場合に相当するので、次なるステップ62に移って、温度センサ61による圧縮室13、背圧室22の温度Kxを読込む。そして、次なるステップ63では、温度Kxが判定温度K1以下まで下がっているか否かを判定する。
ここで、判定温度K1は、外気温センサ62で検出した外気温Kyに応じて、演算により適正な温度に変更、調整されるものである。そして、圧縮室13、背圧室22の温度Kxが判定温度K1以下に下がるときには、背圧室22内にドレンが発生し易くなり、判定温度K1よりも温度Kxが高いときには、ドレンが発生することはないと判断できるものである。
このため、ステップ63では前記温度Kxが判定温度K1以下まで低下したか否かを判定し、ステップ63で「NO」と判定する間は、ステップ61に戻ってこれ以降の処理を続ける。ここで、図16中に示す特性線71,72のように、例えば時間T1で圧縮運転を停止させると、圧縮室13、背圧室22の温度Kxは漸次低下するが、時間T2で圧縮運転が再開されると、温度Kxは、再び上昇し、判定温度K1以下まで下がることはない。
しかし、例えば図16中の時間T3〜T5のように、圧縮運転の停止後に温度Kxが判定温度K1以下まで下がってしまうと、図15中のステップ63で「YES」と判定するので、このときにはステップ64に移り、例えば図16中の特性線73の如く時間T4で遮断弁27を開弁し、背圧室22内を開放通路25を介して大気に開放する。また、次なるステップ65では、タイマTによる計時を開始する。
そして、ステップ65〜69にわたる処理を、例えば第1の実施の形態で述べた図4中のステップ3〜7における処理と同様に行い、判定時間Ta分だけ遮断弁27を開弁させた後に閉弁して、背圧室22内を大気に対して遮断する。また、その後も図16中の時間T5,T6,T7,T8,T9のように、特性線73等に沿って遮断弁27の開,閉弁制御を続行する。
かくして、本発明の第2の変形例でも、圧縮室13、背圧室22の温度Kxと外気温度Kyとに従って、前述の如く遮断弁27の開,閉弁を制御することにより、一層に細かい制御が可能となり、圧縮空気が無駄に放出(消費)されるのを防ぐことができる。
また、前記第4の実施の形態では、温度センサ61による温度Kxと外気温センサ62による外気温Kyとに基づいて遮断弁27の開,閉弁を制御する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図17に示す第3の変形例のように、外気温センサ62(図12参照)を廃止し、温度センサ61からの検出信号を制御装置63′に出力する構成としてもよい。
そして、この場合の制御装置63′には、背圧室22内でのドレン発生を防ぐための判定温度K1(例えば、図16参照)等が固定値として記憶部63A′内に格納されるものである。しかし、このような場合でも、例えば寒冷地または温暖地仕様、夏季または冬季仕様等として、判定温度K1を適宜に変更することは可能であり、背圧室22内でのドレン発生を有効に防止することができるものである。
また、前記各実施の形態では、圧縮機本体1の吐出口15側に吐出弁32を設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば吐出口15側の圧力が予め決められた圧力まで上昇すると開弁し、吐出口15からタンク31側に向けて圧縮気体が流通するのを許し、逆向きの流れを阻止する開弁圧設定式の逆止弁を、吐出弁32に替えて用いてもよいものである。
また、前記各実施の形態では、ケーシング2のケーシング本体3と旋回スクロール11の連結部材18との間に自転防止機構としての補助クランク機構21を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば固定スクロール6と旋回スクロール11との間に補助クランク機構21を設ける構成としてもよい。また、補助クランク機構21に代えて、オルダム継手等の他の自転防止機構を設ける構成としてもよい。
一方、前記各実施の形態では、圧縮機本体1の吸込口14側を導入配管28、吸込弁29を介して工場の空気圧ライン等に接続し、加圧空気の圧力を増圧させる構成としたスクロール式の空気圧縮機を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば外気を吸込口14側から直に吸込むようにした空気圧縮機、また空気以外の流体を圧縮するスクロール式流体機械等にも広く適用できるものである。
また、前記各実施の形態では、旋回スクロール本体12の鏡板12Aに高圧側背圧孔23と低圧側背圧孔24とをそれぞれ1個ずつ、合計2個設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば高圧側背圧孔23、低圧側背圧孔24の少なくとも一方を、2個または3個以上設ける構成としてもよく、両方を2個以上設ける構成としてもよい。また、旋回スクロール本体12の鏡板12Aに単一の背圧導入孔(導入路)を設け、圧縮室13から背圧室22に背圧を導入する構成としてもよい。
一方、前記各実施の形態では、背圧孔23,24を旋回スクロール11に設け、該各背圧孔23,24により圧縮室13と背圧室22とを連通する構成としている。しかし、本発明はこれに限らず、例えば背圧孔を固定スクロールの鏡板に設け、この背圧孔を旋回スクロールの背面側の背圧室に連通する構成としてもよい。また、背圧孔は、外部の配管等を用いて圧縮室と背圧室とを連通する構成としてもよい。
また、特開2000−130365号公報に記載の如く背圧室を固定スクロールの背面側に設け、固定スクロールをケーシング内で軸方向に移動できる構成としてもよい。この場合には、圧縮空気の圧力によって固定スクロールが旋回スクロールから離れる方向に向けたスラスト荷重が生じても、前記背圧室内の圧力(背圧)により固定スクロールを旋回スクロール側に向けて押圧することができ、スラスト荷重による負荷を軽減することができる。
さらに、実施の形態では、スクロール式流体機械としてスクロール式空気圧縮機を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば真空ポンプ、冷媒圧縮機等にも広く適用できるものである。
上述の如く、請求項1の発明によれば、背圧室を大気に開放するための開放通路を設け、該開放通路には制御手段により前記背圧室を大気に対して選択的に連通,遮断する遮断弁を設ける構成としているので、例えば圧縮運転の停止時等に遮断弁を開弁して開放通路を大気に連通させることにより、圧縮気体が背圧室内に滞溜するのを防止でき、この圧縮気体を開放通路、遮断弁を介して大気に放出することができる。このため、例えば圧縮運転を停止して背圧室周囲の温度が低下したとき等にドレンが背圧室内に発生するのを防止することができる。これにより、背圧室内での発錆、腐食の発生を未然に防ぐことができ、装置の信頼性、寿命等を向上することができる。
また、請求項2の発明は、載置時に背圧室のうち上,下方向で下側となる位置に開放通路を設ける構成としている。このため、仮にドレンが背圧室内に発生したとしても、重力の作用でより低い位置に集まるドレンを、開放通路を介して大気中に排出することができ、背圧室内にドレンが留まるのを防止することができる。
また、請求項3の発明は、制御手段により旋回スクロールが旋回運動しているときには遮断弁を閉弁し、旋回運動が停止しているときに遮断弁を開弁する構成としているので、例えば圧縮運転を停止して背圧室周囲の温度が低下したときに発生し易いドレンを、遮断弁で開放通路を開くことにより背圧室内から大気中に逃がすことができ、圧縮気体が背圧室内に滞溜するのを防ぐことができる。
また、請求項4の発明は、制御手段には、旋回スクロールの停止時間を計測する計時手段を設け、旋回スクロールの旋回運動を停止した後に遅延時間をもって遮断弁を制御手段により開弁させるため、例えば圧縮運転を停止して背圧室周囲の温度が低下したときに遮断弁を開弁させて大気中に圧縮気体を放出することができ、背圧室内にドレンが発生するのを抑えることができる。