以下、本発明の実施の形態による回転式圧縮機としてスクロール式空気圧縮機を例に挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1ないし図7は第1の実施の形態を示している。図中、1は空気を圧縮する圧縮機本体で、該圧縮機本体1は、軸方向一側が開口した略筒状のケーシング2と、後述の固定スクロール3、旋回スクロール9、駆動軸19とによって大略構成されている。そして、圧縮機本体1は、固定スクロール3に対して旋回スクロール9が順方向に回転運動することによって、外部の空気を圧縮して圧縮空気を吐出するものである。
3はケーシング2の開口側に設けられた固定スクロールで、該固定スクロール3は、図2に示すように、軸線O−Oを中心として略円板状に形成された鏡板4と、該鏡板4の表面となる歯底面に軸方向に立設された渦巻状のラップ部5と、該ラップ部5を取囲んで鏡板4の外径側に設けられた筒部6と、鏡板4の背面に突設された複数の冷却フィン7とによって大略構成されている。
ここで、ラップ部5は、例えば最内径端を巻始め端として、最外径端を巻終り端としたときに、内径側から外径側に向けて例えば3巻前,後の渦巻状に巻回されている。そして、ラップ部5の歯先面は、相手方となる旋回スクロール9の鏡板10の歯底面から一定の軸方向寸法だけ離間し、この歯先面側にはチップシール8が設けられている。
9はケーシング2内に旋回可能に設けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール9は、固定スクロール3の鏡板4と対向して配置された略円板状の鏡板10と、該鏡板10の表面となる歯底面に立設された渦巻状のラップ部11と、鏡板10の背面に突設された複数の冷却フィン12と、該冷却フィン12の先端側に位置して固定された背面プレート13とによって大略構成されている。
ここで、ラップ部11は、固定スクロール3のラップ部5とほぼ同様に、例えば3巻前,後の渦巻状をなしている。そして、ラップ部11の歯先面は、相手方となる固定スクロール3の鏡板4の歯底面から一定の軸方向寸法だけ離間し、この歯先面側にはチップシール14が設けられている。
また、背面プレート13の中央側には、後述する駆動軸19のクランク部19Aと回転可能に連結される筒状のボス部13Aが一体形成されている。また、背面プレート13の外径側とケーシング2との間には、旋回スクロール9の自転を防止する例えば3個の補助クランク15(1個のみ図示)が設けられている。
16は固定スクロール3の外径側に設けられた例えば2個の吸込口で、該各吸込口16は、鏡板4の外径側から筒部6にかけて開口し、後述する外径側の圧縮室18に連通している。そして、吸込口16は、例えば空気等の流体を吸込フィルタ16Aを通じて外径側の圧縮室18内に吸込むものである。
17は固定スクロール3の鏡板4の内径側(中心側)に設けられた吐出口で、該吐出口17は、最内径側の圧縮室18に連通し、この圧縮室18内の圧縮空気を外部に吐出させるものである。
18は固定スクロール3と旋回スクロール9との間に設けられた複数の圧縮室で、これらの圧縮室18は、ラップ部5,11の間に位置して外径側から内径側にわたって順次形成され、チップシール8,14によって気密に保持されている。そして、各圧縮室18は、旋回スクロール9が順方向に旋回運動するときに、ラップ部5,11の外径側から内径側に向けて移動しつつ、これらの間で連続的に縮小される。
これにより、各圧縮室18のうち最外径側の圧縮室18には、吸込口16から外部の空気が吸込まれ、この空気は最内径側の圧縮室18に達するまでに圧縮されて圧縮空気となる。そして、この圧縮空気は吐出口17から外部に吐出され、後述の貯留タンク23に貯えられる。
19はケーシング2に軸受等を介して回転可能に設けられた駆動軸で、該駆動軸19は、後述のモータ22によって駆動されることにより、旋回スクロール9を旋回運動させる。
ここで、駆動軸19の一端側には、軸線O−Oに対して一定の寸法だけ径方向に偏心したクランク部19Aが設けられ、このクランク部19Aは、旋回軸受等を介して旋回スクロール9の背面プレート13のボス部13Aに回転可能に連結されている。また、駆動軸19の他端側には、ケーシング2の外部に位置してプーリ19Bが設けられ、このプーリ19Bは、モータ22の出力側にベルト(図示せず)等を介して連結されている。
また、プーリ19Bにはボルト等を用いて冷却ファン20が取付けられ、該冷却ファン20は、ファンケーシング21内で冷却風を発生させる。これにより、冷却ファン20は、冷却風をファンケーシング21内のダクト等に沿ってケーシング2の内部や各スクロール3,9の背面側に送風し、ケーシング2、固定スクロール3、旋回スクロール9等を冷却する。
22は駆動源としてのモータで、該モータ22は、後述のコントロールユニット29によって制御されることにより、駆動軸19を順方向に回転駆動し、旋回スクロール9を旋回運動させるものである。
23は圧縮機本体1の吐出口17に接続された貯留タンクで、該貯留タンク23は、圧縮機本体1によって圧縮された圧縮空気を貯えるものである。そして、貯留タンク23内の圧縮空気は、必要に応じて外部の空圧機器等に供給される。
24は圧縮機本体1の吐出口17と貯留タンク23との間を接続する導入路としての導入配管で、該導入配管24は、圧縮機本体1から吐出された圧縮空気を貯留タンク23に導いている。
25は導入配管24の途中に設けられた逆止弁で、該逆止弁25は、例えば圧縮機本体1の吐出口17内の圧力が貯留タンク23内の圧力よりも高いときに開弁し、低いときに閉弁する。これにより、逆止弁25は、圧縮空気が圧縮機本体1から貯留タンク23に向けて流通するのを許し、貯留タンク23から圧縮機本体1に向かう逆向きの流れを遮断する。
26は貯留タンク23に設けられた圧力検出手段としての圧力センサで、該圧力センサ26は、貯留タンク23内の圧力を検出する。そして、圧力センサ26は、圧縮空気の圧力Pに対応する検出信号をコントロールユニット29に出力する。
27は圧縮機本体1を停止させるための停止スイッチで、該停止スイッチ27は後述のコントロールユニット29に接続されている。そして、停止スイッチ27を操作する(押す)と、停止スイッチ27は、停止信号S1をコントロールユニット29に出力する。
28は圧縮機を起動させるための起動スイッチで、該起動スイッチ28は後述のコントロールユニット29に接続されている。そして、起動スイッチ28を操作する(押す)と、起動スイッチ28は、起動信号S2をコントロールユニット29に出力する。
29はマイクロコンピュータ等からなる制御手段としてのコントロールユニットで、該コントロールユニット29の入力側には圧力センサ26、停止スイッチ27、起動スイッチ28等が接続され、出力側にはモータ22等が接続されている。また、コントロールユニット29には、圧縮機本体1の起動、停止を制御するプログラムと、休止時間t0、停止圧力しきい値Pmax、起動圧力しきい値Pmin等が予め記憶されている。
このとき、休止時間t0は、圧縮機を停止したときに、逆止弁25の上流側に位置する圧縮空気として、圧縮機本体1の吐出口17内や導入配管24内に残存した圧縮空気によって圧縮機本体1(旋回スクロール9)が逆回転する時間である。そして、この休止時間t0は、圧縮機の機種によって予め決められた固定値としている。
即ち、圧縮機本体1の逆回転時間を決める要因として、圧縮空気の吐出圧力(圧力P)、導入配管24内の容量、圧縮機本体1の回転抵抗等が挙げられるが、これらの要因は、圧縮機の機種毎に決まっている。このため、例えば圧縮機の機種毎に予め演算または実験によって逆回転する最大の時間を求めることができる。従って、この演算等による最大の時間と同じ、またはこの最大の時間に数秒のマージンを加えた時間を休止時間t0に設定することによって、休止時間t0を固定値として決めることができる。
そして、コントロールユニット29は、圧力センサ26によって検出した圧縮空気の圧力Pに応じてモータ22を運転または停止する。具体的には、コントロールユニット29は、圧力Pが停止圧力しきい値Pmax以上となったときには圧縮機本体1を停止し、圧力Pが停止圧力しきい値Pmax以下となったときには圧縮機本体1を駆動する。これにより、コントロールユニット29は、貯留タンク23内の圧力Pを停止圧力しきい値Pmaxと起動圧力しきい値Pminとの間に保持する。
また、コントロールユニット29は、停止スイッチ27による停止信号S1が入力されると圧縮機本体1を停止させる。一方、コントロールユニット29は、起動スイッチ28による起動信号S2が入力されると圧縮機本体1を起動する。
さらに、コントロールユニット29は、圧縮機本体1が運転状態から停止状態に切り替わったときは、所定の休止時間t0が経過した後に次回の起動を行う構成となっている。これにより、コントロールユニット29は、逆止弁25の上流側に位置する圧縮空気が逆流して圧縮機本体1が逆回転している間に、圧縮機本体1を順方向に駆動させるのを防止している。
次に、図1ないし図6を参照しつつ、コントロールユニット29による圧縮機の制御について説明する。
まず、図3では圧力式運転制御を行う。この圧力式運転制御は、貯留タンク23内の圧力Pを常時監視しつつ、この圧力Pが所定の停止圧力しきい値Pmax以上となったときに圧縮運転を停止し、圧力Pが所定の起動圧力しきい値Pmin以下となったときに圧縮運転を再開するものである。
この圧力式運転制御において、まずステップ1では、圧力センサ26の検出信号を用いて圧力Pを検出する。また、ステップ2では、圧力Pが停止圧力しきい値Pmaxよりも低いか否かを判定し、ステップ2で「YES」と判定したときには、ステップ3で圧力Pが起動圧力しきい値Pminよりも低いか否かを判定する。そして、ステップ3で「YES」と判定したときには、圧力Pが起動圧力しきい値Pminよりも低下しているから、ステップ4で後述する圧縮機起動処理を行うことによって、圧縮機を運転し、ステップ6に移る。
一方、ステップ2で「NO」と判定したときには、圧力Pが停止圧力しきい値Pmax以上であるから、ステップ5で後述する圧縮機停止処理を行うことによって、圧縮機を停止し、ステップ6に移る。
また、ステップ3で「NO」と判定したときには、なにもせず、ステップ6に移る。
このように、圧力式運転制御では、圧縮機が断続的に運転または停止されることにより、圧力Pが起動圧力しきい値Pminと停止圧力しきい値Pmaxとの間に収まるように制御する。そして、ステップ6では、圧縮機の電源がOFFされるまでステップ1〜5の処理を繰返し実行する。
なお、コントロールユニット29は、以上の圧力式運転制御に加えて、停止スイッチ27および起動スイッチ28に基づいて、圧縮機停止処理と圧縮機起動処置が割り込み制御される。即ち、停止スイッチ27によって停止信号S1が入力されたときには、コントロールユニット29は、圧縮機停止処理を割り込み処理する。一方、起動スイッチ28によって起動信号S2が入力されたときには、コントロールユニット29は、圧縮機起動処理を割り込み処理する。
次に、図4に示す圧縮機起動処理について述べると、まずステップ11では、圧縮機が運転中か否かを判定する。そして、ステップ11で「YES」と判定したときには、圧縮機は既に運転中であるから、その状態を保持しつつ、ステップ14に移ってリターンする。
一方、ステップ11で「NO」と判定したときには、圧縮機は停止中であるから、ステップ12に移って起動許可状態か否かを判定する。そして、ステップ12で「NO」と判定したときには、圧縮機は一旦停止してから所定の休止時間t0が経過していないから、起動許可状態になるまでそのまま待機する。
また、ステップ12で「YES」と判定したときには、一旦停止してから所定の休止時間t0が経過して起動許可状態となっているから、ステップ13に移って圧縮機を起動した後にステップ14に移ってリターンする。なお、電源投入に伴う圧縮機の起動時にも、コントロールユニット29は起動許可状態になっている。
次に、図5に示す圧縮機停止処理について述べると、まずステップ21では、圧縮機が運転中か否かを判定する。そして、ステップ21で「NO」と判定したときには、圧縮機は既に停止しているから、ステップ22で圧縮機の運転命令のみを解除する。
具体的には、例えば休止時間t0の途中で、圧力Pが起動圧力しきい値Pminよりも低下したときや起動スイッチ28が押されたときには、圧縮機の運転が予約された状態となっている。これに対し、コントロールユニット29は、圧力Pが停止圧力しきい値Pmax以上となったときや停止スイッチ27が押されたときに、圧縮機停止処理を開始するから、ステップ22では、休止時間t0中の運転予約を解除する。
また、休止時間t0の途中で停止スイッチ27を押したときには、ステップ21で「NO」と判定される。このとき、圧縮機は既に停止しており、停止タイマtは既に計時を開始している。このため、コントロールユニット29は、再び停止タイマtの計時を開始することなく、圧縮機の停止状態を保持しつつ、ステップ26に移ってリターンする。これにより、休止時間t0の途中に停止スイッチ27が押された場合でも、休止時間t0が延長されることがなく、1回分の休止時間t0が経過した後には、圧縮機を速やかに起動することができる。
一方、ステップ21で「YES」と判定したときには、圧縮機は運転中であるから、ステップ23に移って停止タイマが既にスタートしているか否かを判定し、ステップ23で「YES」と判定したときには、何もしないでステップ26に移ってリターンする。
また、ステップ23で「NO」と判定したときには、停止タイマtは計時を開始していないから、ステップ24に移って停止タイマtの計時を開始する。このとき、後述する停止タイマ処理も起動する。そして、ステップ24の後に、ステップ25に移って圧縮機を停止し、ステップ26に移ってリターンする。
次に、図6に示す停止タイマ処理について述べると、まずステップ31では、停止タイマtが予め決められた休止時間t0を経過したか否かを判定する。
このとき、休止時間t0は、圧縮機を停止したときに、導入配管24内の圧縮空気によって圧縮機本体1(旋回スクロール9)が逆回転する時間である。そして、この休止時間t0は、圧縮機の機種によって予め決められた固定値としている。
そして、ステップ31で「NO」と判定したときには、まだ停止タイマtが休止時間t0を経過していないから、圧縮機の起動を禁止する起動不可状態とし、この状態で待機する。一方、ステップ31で「YES」と判定したときには、停止タイマtが休止時間t0を経過している。この場合、圧縮機が前回停止した後に休止時間t0以上の時間が経過しているから、ステップ32に移って停止タイマtをリセット(t=0)した後に、ステップ33に移って起動許可状態にする。
本実施の形態によるスクロール式空気圧縮機は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、モータ22が作動すると、その回転がプーリ19B等を介して駆動軸19に伝達され、駆動軸19が軸線O−Oを中心として回転する。このとき、駆動軸19のクランク部19Aに連結された旋回スクロール9は、補助クランク15によって自転を防止された状態で、軸線O−Oを中心として一定の旋回半径で旋回運動を行う。
これにより、固定スクロール3のラップ部5と旋回スクロール9のラップ部11との間に画成された各圧縮室18は、外径側から内径側に向けて移動しつつ、連続的に縮小する。このため、外径側の圧縮室18には、固定スクロール3の吸込口16から外気が吸込まれ、この空気は個々の圧縮室18内で圧縮されることによって圧縮空気となる。そして、この圧縮空気は、内径側の圧縮室18から吐出口17を介して外部に吐出され、貯留タンク23に貯えられる。
然るに、コントロールユニット29は、図7に示すように、貯留タンク23内の圧力Pが起動圧力しきい値Pminと停止圧力しきい値Pmaxとの間に収まるように、圧力式運転制御を行う。このため、圧縮機本体1は、貯留タンク23内の圧力Pが起動圧力しきい値Pminよりも低下したときに起動し、停止圧力しきい値Pmaxよりも上昇したときに停止する。
ここで、圧縮機本体1が停止圧力しきい値Pmaxよりも上昇して停止したときには、導入配管24内のうち逆止弁25の上流側には、高圧の圧縮空気が残存する。このとき、この残存した圧縮空気は吐出口17から圧縮室18内に逆流するから、圧縮機本体1(旋回スクロール9)は、圧縮運転時とは逆方向に回転する。また、この逆回転中は、2つのスクロール3,9のラップ部5,11は圧縮運転中に比べて互いに押付けられた状態となる。
一方、貯留タンク23に接続された空圧機器を使用することによって、貯留タンク23内の圧力Pが起動圧力しきい値Pminよりも低下すると、コントロールユニット29は、圧縮機本体1を再起動させる。ここで、圧縮機本体1の逆回転中に圧縮機本体1を再起動すると、旋回スクロール9の回転方向が逆方向から順方向に急に切り替わるから、チップシール8,14の異常摩耗が生じる虞れがある。
これに対し、本実施の形態によるコントロールユニット29は、圧縮機本体1が停止したときには、所定の休止時間t0が経過した後に、次回の起動を行う構成となっている。即ち、圧縮機本体1が停止してから休止時間t0が経過するまで、次回の起動を行わない。このとき、休止時間t0は例えば圧縮機本体1が逆回転する最大の時間と同じ値に設定されているから、圧縮機本体1が逆回転している間は、コントロールユニット29は、圧力Pが起動圧力しきい値Pminよりも低下したときや起動スイッチ28が押されたときでも、圧縮機本体1を起動しない。この結果、圧縮機本体1の再起動時にスクロール3,9のラップ部5,11に過度な負荷が作用するのを防止することができ、チップシール8,14の異常摩耗を防止することができる。
かくして、本実施の形態では、コントロールユニット29は、圧縮機本体1が停止したときは、所定の休止時間t0が経過した後に、次回の起動を行う構成としたから、休止時間t0に逆止弁25の上流側に位置する圧縮空気によって圧縮機本体1が逆回転しても、コントロールユニット29は、この逆回転中は圧縮機本体1を停止状態に保持する。このため、逆回転中に圧縮機本体1が起動するのを防止することができ、圧縮機本体1が逆回転から順回転に急激に切り替わることがなくなる。この結果、回転方向の急激な変化に伴うチップシール8,14の異常摩耗を防ぐことができ、耐久性、信頼性を高めることができる。
また、休止時間t0は機種によって予め決められた固定値としたから、圧縮機の運転中に休止時間t0を求める複雑な演算等を行う必要がない。このため、コントロールユニット29の負担を軽減することができる。
また、圧縮機本体1の運転途中に停止スイッチ27が押された場合には、コントロールユニット29は、停止スイッチ27による停止信号S1に基づいて圧縮機停止処理を行い、圧縮機本体1を停止する。このため、コントロールユニット29は、停止信号S1の入力から休止時間t0が経過した後に次回の起動を行い、圧縮機本体1の逆回転中の起動を防止する。
一方、停止タイマtが休止時間t0まで経過する前に停止スイッチ27が押された場合には、既に圧縮機本体1は停止しているから、逆止弁25の上流側に位置する圧縮空気の圧力は停止直後に比べて低下している。このため、コントロールユニット29は、経過途中の残余の休止時間t0が経過した後に、次回の起動を行い、圧縮機本体1の逆回転中の起動を防止する。
特に、コントロールユニット29は、休止時間t0の途中に停止信号S1が入力された場合には、当該残余の休止時間t0が経過した後に、次回の起動を行うから、休止時間t0の途中から新たな休止時間t0の経過を待つ必要がなくなる。このため、休止時間t0の途中に複数回に亘って停止信号S1が入力されたときでも、圧縮機本体1が停止してから1回分の休止時間t0が経過した後には、速やかに圧縮機本体1を起動することができる。
次に、図8ないし図12は第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、圧力センサの検出信号に基づいて休止時間を可変に決める構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
31は第2の実施の形態による制御手段としてのコントロールユニットで、該コントロールユニット31は、第1の実施の形態によるコントロールユニット29とほぼ同様に、その入力側には圧力センサ26等が接続され、出力側にはモータ22等が接続されている。また、コントロールユニット31には、圧縮機本体1の起動、停止を制御するプログラムと、停止圧力しきい値Pmax、起動圧力しきい値Pmin等が予め記憶されている。
そして、コントロールユニット31は、圧力センサ26によって検出した圧縮空気の圧力Pに応じてモータ22を運転または停止し、第1の実施の形態と同様に、圧力式運転制御を行う。
また、コントロールユニット31は、停止スイッチ27による停止信号S1が入力されると圧縮機本体1を停止させる。一方、コントロールユニット31は、起動スイッチ28による起動信号S2が入力されると圧縮機本体1を起動する。
但し、コントロールユニット31は、圧縮機本体1が運転状態から停止状態に切り替わったときは、圧力センサ26による検出信号を用いて休止時間t1を決める点が第1の実施の形態と異なる。そして、コントロールユニット31は、休止時間t1が経過した後に次回の起動を行う構成となっている。これにより、コントロールユニット31は、逆止弁の上流側に位置する圧縮空気が逆流して圧縮機本体1が逆回転している間に、圧縮機本体1を順方向に駆動させるのを防止している。
次に、コントロールユニット31による圧縮機の制御について説明する。但し、圧力式運転制御および圧縮機起動処理は第1の実施の形態と同様である。このため、以下では圧縮機停止処理および停止タイマ処理についてのみ説明する。
図9に示す圧縮機停止処理について述べると、まずステップ41では、圧縮機が運転中か否かを判定する。そして、ステップ41で「NO」と判定したときには、圧縮機は既に停止しているから、ステップ42で圧縮機を運転させる命令を解除し、ステップ48でリターンする。これにより、休止時間t1の途中に停止スイッチ27が押された場合でも、休止時間t1が延長されることがなく、1回分の休止時間t1が経過した後には、圧縮機を速やかに起動することができる。
一方、ステップ41で「YES」と判定したときには、圧縮機は運転中であるから、ステップ43に移って停止タイマが既にスタートしているか否かを判定し、ステップ43で「YES」と判定したときには、何もしないでステップ48に移ってリターンする。
また、ステップ43で「NO」と判定したときには、停止タイマtは計時を開始していないから、ステップ44に移って圧力センサ26の検出信号を用いて圧力Pを検出する。次に、ステップ45では、図12中に実線で示す特性線を用い、圧力Pに基づいて休止時間t1を演算する。
ここで、休止時間t1は、圧縮機を停止したときに、導入配管24内等の圧縮空気によって圧縮機本体1(旋回スクロール9)が逆回転する時間である。そして、この休止時間t1は、図12に示す特性線と圧力Pとを用いて演算され、可変に設定される。
即ち、圧縮機本体1の逆回転時間を決める要因として、圧縮空気の吐出圧力(圧力P)、導入配管24内の容量、圧縮機本体1の回転抵抗等が挙げられる。このとき、圧力Pは、例えば図11中に実線で示す特性線(緩和曲線)および数1の式に従って、時間の経過に対して過渡的に減少する。
また、圧縮機本体1の吐出口17の圧力Pが一定値よりも低下すると、旋回スクロール9の逆回転は停止する。このため、数1の関係から以下の数2に示すように、圧力Pと休止時間t1との関係を表すことができる。従って、コントロールユニット31は、数2の式または図12に示す特性線を用いて、圧力Pから休止時間t1を演算する。
次に、ステップ46に移って停止タイマtの計時を開始する。このとき、後述する停止タイマ処理も起動する。そして、ステップ46の後に、ステップ47に移って圧縮機を停止し、ステップ48に移ってリターンする。
次に、図10に示す停止タイマ処理について述べると、まずステップ51では、停止タイマtが予め決められた休止時間t1を経過したか否かを判定する。
このとき、休止時間t1は、圧縮機を停止したときに、導入配管24内の圧縮空気によって圧縮機本体1(旋回スクロール9)が逆回転する時間である。そして、この休止時間t1は、圧力Pに基づいて可変に設定される。
そして、ステップ51で「NO」と判定したときには、まだ停止タイマtが休止時間t1を経過していないから、圧縮機の起動を禁止する起動不可状態とし、この状態で待機する。一方、ステップ51で「YES」と判定したときには、停止タイマtが休止時間t1を経過している。この場合、圧縮機が前回停止した後に休止時間t1以上の時間が経過しているから、ステップ52に移って停止タイマtをリセット(t=0)した後に、ステップ53に移って起動許可状態にする。
かくして、第2の実施の形態でも第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、休止時間t1は圧力センサ26の検出信号を用いた演算によって可変に決める構成としたから、圧縮機本体1の逆回転時間を決める要因として、圧縮空気の吐出圧力、導入配管24内の容量、圧縮機本体1の回転抵抗等が適宜変化したときでも、これらに応じて休止時間t1を決めることができる。この結果、圧縮機の運転状況に応じて適切な休止時間t1を設定することができる。
なお、前記第2の実施の形態では、図12に示す特性線等を用いて圧力Pに基から休止時間t1を演算するものとした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば圧力Pと圧縮機本体1の逆回転時間(休止時間t1)との関係を予め実験的に計測しておき、この計測結果を用いて圧力Pから休止時間t1を演算する構成としてもよい。
また、前記各実施の形態では、圧力センサ26は貯留タンク23に設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図13に示す変形例にように、導入配管24のうち逆止弁25の下流側に圧力センサ26′を設け、該圧力センサ26′を用いて貯留タンク23内の圧力を検出する構成としてもよい。
また、前記各実施の形態では、導入配管24の途中としては導入配管24の中間部位に逆止弁25を設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図1中に二点差線で示すように、導入配管24の途中として、導入配管24と圧縮機本体1との接続部位に逆止弁25′を設ける構成としてもよく、導入配管24と貯留タンク23との接続部位に逆止弁25″を設ける構成としてもよい。
また、前記各実施の形態では、圧縮機本体1と貯留タンク23との間は導入路としての導入配管を用いて接続する構成としたが、例えば圧縮機本体1のケーシング2内に導入路(通路)を設け、該導入路を用いて圧縮機本体1と貯留タンク23との間を接続する構成としてもよい。
さらに、前記各実施の形態では、回転式圧縮機としてスクロール式空気圧縮機を例に挙げて説明したが、例えばスクロール式の真空ポンプ、冷媒圧縮機等にも適用できる。また、スクロール式に限らず、例えばロータリー式圧縮機のように、回転運動によって気体を圧縮する各種の圧縮機に広く適用できるものである。