JP2010084306A - ナノファイバーの合糸方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電荷誘導紡糸法により製造したナノファイバーから成る高強度でかつ均質な糸条を安定して生産性よく製造する。
【解決手段】所定の芯糸移動経路5に芯糸6回転させながら供給し、芯糸移動経路5の周囲に配置したナノファイバー生成手段2にて、少なくとも1つの小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させ、電荷誘導紡糸現象にて延伸させてナノファイバー3を生成し、芯糸帯電手段10にて芯糸6にナノファイバー3の帯電極性とは逆極性の電圧を印加若しくは接地し、生成されたナノファイバー3を回転する芯糸6に巻き付け、芯糸6にナノファイバー3が巻き付いた糸条8を回収するようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、高分子物質から成るナノファイバーを製造してこれを糸条にするナノファイバーの合糸方法及び装置に関するものである。
従来、高分子物質から成るサブミクロンスケールの直径を有するナノファイバーを製造する方法として、電荷誘導紡糸法(エレクトロスピニング法とも称される)が知られている。従来の電荷誘導紡糸法は、高電圧を印加した針状のノズルに高分子溶液を供給し、この針状のノズルから線状に流出する高分子溶液に電荷を帯電させることで、この電荷を帯電された線状の高分子溶液中の溶媒が蒸発するのに伴って帯電電荷間の距離が小さくなり、帯電電荷間に作用するクーロン力が大きくなり、そのクーロン力が線状の高分子溶液の表面張力より勝った時点で線状の高分子溶液が爆発的に延伸される現象が生じ、一次、二次、場合によっては三次等と繰り返されることで、サブミクロンの直径の高分子から成るナノファイバーが製造されるものである(以下、このような現象を、電荷誘導紡糸現象と記載する。)。
従来の電荷誘導紡糸法では、1本ノズルの先から1〜数本のナノファイバーしか製造されないので、生産性が上がらないという問題があった。そこで、ナノファイバーを多量に製造する方法として、複数のノズルを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、バレルに貯蔵された高分子溶液をポンプにて帯電された多数のニードル状のノズルに供給して吐出させることで多量のナノファイバーを作り出し、これをノズルと異なる極性に帯電されたコレクタにて回収し積層しながら搬送することで、ナノファイバーが3次元のネットワーク構造に積層した空隙率が非常に高い高多孔性の高分子ウエブを製造する技術が開示され、従来の実験的レベルから実用性レベルに高められている。
また、従来、電荷誘導紡糸法によるナノファイバーがウエブとして製造され、人造皮革、フィルター、おむつ、生理用ナプキン、癒着紡糸剤、ワイピングクロス、人造血管、骨固定器具など多様に活用されているが、10MPa以上の力学物性を得るのが困難で広範囲な用途への利用に限界があること、このように製造されたナノファイバーのウエブを連続した糸条にして力学物性を高めようとすると、ウエブを一定長さに切断して短繊維を製造し、この短繊維から紡績糸を製造する別途の紡績工程を経なければならない問題があることを指摘した上で、電子紡糸法にて製造されたナノファイバーのウエブを用いて連続的に糸条を製造する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2では、列をなして帯電されたノズルからノズルと逆極性に帯電されたコレクタ内の水または有機溶媒の静的な表面上にナノファイバーを紡糸してウエブをなすように堆積させ、この堆積するウエブを、ノズルの列方向で見た一方の末端側より1cm以上離れた地点から一定の線速度で回転する回転ローラによって引き上げて連続した糸条とし、圧搾、延伸、乾燥および巻取りを行って連続した糸条を得ている。また、連続した糸条は撚糸することもできるとしている。
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、各ノズルから真下にナノファイバーを生成してコレクタ上のノズルに対応した位置へ静的に堆積させながら、その堆積域の広がりにより各ノズルから生成されたナノファイバー同士を絡み合わせて細帯状のウエブを形成し、このウエブの一端からナノファイバー群を引出すことでウエブの他端側に連続しているナノファイバー群を順次引き出し、連続した糸条に集束させるものであり、そのため各ノズルから紡糸されたナノファイバーの堆積が静的でほぼ同等であるのに対し、引き出し作用が引き出し側に近い堆積域に集中しやすくなる関係から、引き出し側に近い堆積域と遠い堆積域とでナノファイバーの引出し量とに差が生じる恐れがあり、その場合引出し量の差が堆積量の差を来たし、堆積量に差を生じた状態で引き出されることで連続した糸条の太さや力学物性を適正に制御するのは困難で安定しないという問題がある。さらに、引出し作用が引き出し側から遠い側の堆積域にも均等に及ぶようにするのに引出し速度を抑える必要があり大量に製造するのも困難であるという問題がある。
さらに、このような問題を解決するため、図14に示すようなナノファイバー合糸装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。図14において、ナノファイバー合糸装置71は、ナノファイバー生成手段72と、収集電極73と、芯糸供給手段74と、回収手段75を備えている。ナノファイバー生成手段72は、垂直な軸芯周りに回転自在に支持され、周面に小穴77が多数形成されている円筒容器76と、円筒容器76内に高分子溶液を供給する高分子溶液供給手段(図示せず)と、円筒容器76に高電圧を印加する第1の高電圧発生手段78と、円筒容器76を矢印a方向に回転駆動する回転駆動手段(図示せず)と、円筒容器76の上部に配設された反射電極79と、反射電極79に円筒容器76と同極の高電圧を印加する第2の高電圧発生手段80とを備え、円筒容器76の小穴77から流出した高分子溶液を遠心力と電荷誘導紡糸現象にて延伸させてナノファイバー81を生成し、生成されたナノファイバー81を反射電極79にて円筒容器76の下方に向けて旋回しつつ流動させるように構成されている。
収集電極73は円板状で、円筒容器76の下方に間隔をあけて同軸状にかつ回転自在に配設され、その中心部に収束されたナノファイバー81が貫通する貫通孔82を有しており、第3の高電圧発生手段83にて円筒容器76や反射電極79とは逆極性の高電圧を印加するように構成され、かつ回転駆動手段(図示せず)にて収集電極73を矢印a方向とは逆の矢印b方向に回転駆動するように構成されている。芯糸供給手段74は、ナノファイバー生成手段72の上方に配設され、芯糸84を繰り出して円筒容器76の軸芯位置直上から下方に供給するように構成され、回収手段75は、収集電極73の下方に配設され、撚られて収束した糸条85を収集電極73の貫通孔82を貫通させて回収するように構成されている。
作用を説明すると、ナノファイバー生成手段72の円筒容器76内に高分子溶液を供給しつつ円筒容器76を高速で回転駆動すると、円筒容器76内の電荷を帯電された高分子溶液に遠心力が作用し、各小穴77から流出するとともに遠心力の作用で延伸されて細い高分子線状体が生成され、さらに一次〜三次等に至る電荷誘導紡糸現象にて爆発的に延伸されてナノファイバー81が効率的に製造され、生成されたナノファイバー81は反射電極79にて円筒容器76の下方に向けて円筒容器76の軸芯回りに旋回しながら流動する。さらに、旋回しながら下方に向けて流動されたナノファイバー81は、下方に配設された収集電極73に向けて強く吸引され、かつその収集電極73がナノファイバー81の旋回流動方向とは逆方向に回転していることで、旋回流動しているナノファイバー81がより強く撚りをかけられて収束・合糸され、効率的に高強度の糸条85が形成される。形成された糸条85は、収集電極73の中心部の貫通孔82を通り、回収手段75にて回収される。
特開2002−201559号公報 特表2006−507428号公報 特開2008−163539号公報
ところが、図14に示したような構成でも、ナノファイバー生成手段72に対向させて大きな面積の平板状の収集電極73を配置しているので、ナノファイバー生成手段72と収集電極73間に発生する電気力線が収集電極73の全面に広がって形成され、この電気力線に沿ってナノファイバー81が流動しようとすることで、芯糸84に巻き付くナノファイバー81の量が少なく糸条85の製造効率が悪く、かつナノファイバー81が芯糸84に巻き付く位置が一定せず、そのため生成される糸条85の太さが一定せず、糸条85の太さにばらつきが発生するという問題のあることが判明した。
さらに、生成されたナノファイバーを、帯電したナノファイバーに対して電位差を有するとともに、軸芯部に貫通孔を有しかつ最大外径が紡糸ヘッドとの間の距離の1/10以下の収集電極にて吸引しつつ旋回させて集束することで撚りをかけ、撚られたナノファイバーを、収集電極の貫通孔を通して回収するようにし、紡糸ヘッドから収集電極の軸芯部の周囲に収束する電気力線を安定して形成し、それによって旋回して流動するすべてのナノファイバーをこの電気力線に沿って流動させて収集電極の軸芯部に安定して集束させ、太さにばらつきのない均質な糸条を安定して生産性よく低コストにて合糸する方法も提案されている(特願2007−234762号参照)。
このように生成されたナノファイバーを紡糸ヘッドとの間の距離の1/10以下の最大外径の収集電極に向けて集束しつつ流動させると、上記問題をかなり改善することができるが、やはりナノファイバーの一部が芯糸に巻き付かずに周囲に飛散し、芯糸に巻き付くナノファイバーの量を所望量まで増加させることができず、また集束箇所が面状ないし線状に連続しているために集束点が安定せず、その結果ナノファイバーの集束状態が不安定となって芯糸への巻き付きにばらつきが発生し、均質な糸条を安定して生産性よく製造することができず、また小穴を回転させてその遠心力で原料溶液を流出させてナノファイバーを生成する構成では、原料溶液の組成や粘度等に応じてナノファイバーを効率的に生成できる回転数が規制され、その回転数によって芯糸に対する巻き付き状態が規制され、所望の性状の糸条を得ることができない等の問題のあることも判明した。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、電荷誘導紡糸法により製造したナノファイバーから成る高強度でかつ均質な糸条を安定して生産性よく製造することができるナノファイバーの合糸方法と装置を提供することを目的とする。
本発明のナノファイバーの合糸方法は、芯糸を回転させながら所定の芯糸移動経路に供給する芯糸供給工程と、芯糸移動経路の周囲に配置した少なくとも1つの小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させ、前記原料溶液を延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成工程と、芯糸にナノファイバーの帯電極性とは逆極性の電圧を印加する若しくは接地することで、生成されたナノファイバーを回転する芯糸に巻き付ける合糸工程と、芯糸にナノファイバーが巻き付いた糸条を回収する回収工程とを有するものである。
なお、原料溶液としては、各種の合成樹脂材料や核酸や蛋白質などの生体高分子などの高分子物質(本発明では、分子量が10000以上の一般的な高分子物質に限らず、分子量が1000〜10000の準高分子物質も含める)を溶媒に溶解したものが好適に適用される。また、上記高分子物質は単体物に限らず、各種高分子物質の混合物であっても良い。さらに、原料溶液に無機質固体材料を混入することも可能である。また、小穴は、固定配置しても、芯糸の回転方向と逆方向に芯糸の回りに回転させても良い。
上記構成によれば、芯糸が回転しながら芯糸移動経路に供給されて移動している状態で、芯糸移動経路の周囲の小穴から原料溶液が帯電して流出することで、前記原料溶液が延伸されてナノファイバーが生成されるとともに、芯糸がナノファイバーとは逆極性の電圧を印加若しくは接地されていることで、生成されたナノファイバーは直に安定して芯糸に向けて移動し、回転している芯糸に絡んで確実に巻き付くので、生成されたナノファイバーが確実にかつ均等に芯糸に巻き付いた糸条が合糸され、この糸条を回収することで、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を安定して生産性よく製造することができる。
また、ナノファイバー生成工程において、芯糸移動経路の周囲に配置した複数の小穴から、または芯糸移動経路の移動方向に沿って配置した複数の小穴から原料溶液を流出させてナノファイバーを生成すると、多量のナノファイバーを芯糸に一度に巻き付けることができて糸条の製造効率を向上することができる。
また、芯糸移動経路の周囲に複数の小穴を配置した場合に複数の小穴から異なった組成の原料溶液を流出させると、性質の異なるナノファイバーが混紡された糸条を製造することができ、芯糸移動経路の移動方向に沿って複数の小穴を配置した場合に複数の小穴から異なった組成の原料溶液を流出させると、性質の異なる複数のナノファイバー層が積層された糸条を製造することができる。
また、複数の非導電性の糸を撚り合わせた芯糸を使用し、芯糸に導電性溶液を浸み込ませて芯糸に導電性を付与する工程を有すると、芯糸として非導電性の糸を用いながら芯糸を帯電若しくは接地することができ、芯糸が導電性を有する材質に限定されず、芯糸の性状に制限を受けないため、制約を受けずに所望の特性の糸条を製造することができる。
また、合糸工程後に、糸条を乾燥させる乾燥工程を有すると、導電性溶液が蒸発されて回収時には糸条の導電性が無くなっているので、高電圧が印加されず、安全上問題のない糸条を回収することができて好適である。
また、本発明のナノファイバーの合糸装置は、芯糸を回転させながら所定の芯糸移動経路に供給する芯糸供給手段と、芯糸移動経路の周囲に配置されて原料溶液を流出させる少なくとも1つの小穴を有し、流出する原料溶液に電荷を帯電させ、前記原料溶液を延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成手段と、芯糸に原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加する芯糸帯電手段若しくは芯糸を接地する接地手段と、芯糸にナノファイバーが巻き付いた糸条を回収する回収手段とを備えたものである。
この構成によると、芯糸供給手段にて芯糸を回転させながら所定の芯糸移動経路に供給し、ナノファイバー生成手段にて芯糸の周囲の小穴から原料溶液を帯電して流出させることで、前記原料溶液が延伸されてナノファイバーが生成され、生成したナノファイバーが、その帯電電荷とは逆極性の電圧を印加され若しくは接地されている芯糸に向けて流動し、回転している芯糸に絡んで確実に巻き付くので、生成されたナノファイバーが確実にかつ均等に芯糸に巻き付いた糸条が合糸され、この糸条を回収手段にて回収することで、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を安定して生産性よく製造することができる。
また、ナノファイバー生成手段が、複数の小穴が芯糸の周囲若しくは芯糸の移動方向又は芯糸の周囲及び芯糸の移動方向の両方に配置された構成であると、多量のナノファイバーを芯糸に一度に巻き付けることができて糸条の製造効率を向上することができる。また、複数の小穴から異なった組成の原料溶液を流出させると、性質の異なるナノファイバーが混紡された糸条や性質の異なる複数のナノファイバー層が積層された糸条を製造することができる。
また、芯糸が、導電性を有する糸にて構成されていると、芯糸を容易かつ安定して所要の電圧を印加した状態若しくは接地した状態とすることができて、ナノファイバーの巻き付き作用を安定して確保することができる。なお、導電性を有する糸としては、導電性アクリル系合成繊維のマルチフィラメントから成る糸や、カーボンナノチューブ製のフィラメントから成る糸などが好適であるが、導電性のない繊維から成る芯糸の中に1本以上の導電性の繊維状体を配置したものでも良い。
また、芯糸が、複数の非導電性の糸を撚り合わせて構成され、その芯糸に導電性溶液を浸み込ませる導電性溶液付与手段を有した構成としても、芯糸を容易かつ安定して所要の電圧を印加した状態若しくは接地した状態とすることができて、ナノファイバーの巻き付き作用を安定して確保することができる。なお、導電性溶液としては、例えばカルキを含んだ水で良く、その他、電解質を溶解した水溶液が好適に適用される。また、その導電性とは、ある程度の抵抗が有していても、適所で数kV〜数10kVの高電圧を印加することで、芯糸移動経路上の芯糸がその近傍の電位となるものであれば良い。
また、導電性溶液付与手段を有している場合に、糸条を乾燥させる乾燥手段を設けると、導電性溶液が蒸発されて回収時には糸条の導電性が無くなっているので、高電圧が印加されず、安全上問題のない糸条を回収することができて好適である。
本発明のナノファイバーの合糸方法及び装置によれば、芯糸が回転しながら芯糸移動経路を移動し、かつその芯糸に電圧が印加され若しくは接地されている状態で、芯糸移動経路の周囲の小穴から原料溶液を帯電させて流出させることで、流出した原料溶液に電荷誘導紡糸現象が生じてナノファイバーが生成されるとともに、生成されたナノファイバーが直に安定して芯糸に向けて移動し、回転している芯糸に絡み、確実に巻き付いて糸条が合糸されるので、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を安定して生産性よく製造することができる。
以下、本発明のナノファイバーの合糸方法及び装置の各実施形態について、図1〜図13を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明のナノファイバー合糸装置の第1の実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
図1において、1はナノファイバー合糸装置であって、電荷誘導紡糸現象によってナノファイバー3を生成するナノファイバー生成手段2と、上部ガイド4aと下部ガイド4bとの間に形成された垂直な芯糸移動経路5とを備え、ナノファイバー生成手段2は、芯糸移動経路5の周囲の一側方に配設されて、芯糸移動経路5に向けてナノファイバー3を生成して送出するように構成されている。上部ガイド4aの上部には、芯糸6を回転させながら芯糸移動経路5に供給する芯糸供給手段7が配設され、下部ガイド4bの下部には、芯糸6にナノファイバー3を巻き付けて合糸された糸条8を上記芯糸6と糸条8の回転を確保しつつ回収する回収手段9が配設されている。
上部ガイド4aの下部には、芯糸6に数kV〜数10kVの高電圧を帯電させる芯糸帯電手段10が配設されている。芯糸6を帯電させるため、芯糸6には導電性アクリル系合成繊維のマルチフィラメントから成る糸や、カーボンナノチューブ製のフィラメントから成る糸などが好適に用いられる。なお、導電性のない繊維から成る芯糸の中に1本以上の導電性の繊維状体を配置したものを用いることもできる。芯糸帯電手段10は、芯糸6に接触して帯電させる帯電電極11と高電圧を発生する第1の高電圧発生手段12にて構成されている。また、芯糸移動経路5におけるナノファイバー生成手段2に対向する領域13の上部と下部には、それぞれ絶縁手段14a、14bが配設され、帯電された芯糸6とナノファイバー生成手段2との間に発生する電界が外部に漏れ難いようにして、ナノファイバー生成手段2から芯糸6に直に向かう電気力線が形成されるように構成されている。絶縁手段14a、14bは、芯糸移動経路5の周囲を取り囲む絶縁筒体15とその外周からナノファイバー生成手段2に向けて延設された遮蔽板16にて構成され、それぞれ絶縁材料から成っている。
芯糸供給手段7は、図2に示すように、芯糸6を巻回した芯糸リール17と、モータなどの回転手段18と、回転手段18の下方に突出された回転軸18aの下端に装着され、先端にガイドローラ19aが設けられた巻戻しアーム19とを備えている。芯糸リール17は、回転軸18aに軸受20を介して回転自在に支持されるとともに、連動手段21を介して連動して回転しかつ所定の回転力を受けると相対回転するように構成されている。連動手段21は、芯糸リール17に固定されたフランジ22と、フランジ22の内周と回転軸18aの外周との間に圧縮状態で介装されたOリングなどの摩擦部材23にて構成されている。かくして、芯糸リール17から引き出した芯糸6をガイドローラ19aに巻き掛けて上部ガイド4aに向けて繰り出した状態で、回転手段18を回転させると、巻戻しアーム19が同期回転してその回転数で芯糸6が回転し、かつ芯糸6が引き出されると供給リール17が摩擦力に抗して回転軸18aに対して相対回転する。回転手段18の回転速度は、例えば数100rpm〜10000rpm程度で、芯糸6はその回転速度で回転する。
回収手段9は、図3に示すように、製造された糸条8を巻き取って回収する回収リール24と、中空回転軸25aを有するモータなどの回転手段25と、中空回転軸25a内に軸受26を介して回転自在に支持された回転軸27と、中空回転軸25aと回転軸27を変速可能に連動させる無段変速機などの可変連動手段28と、中空回転軸25aよりも上方に突出した回転軸27の上端に装着され、先端にガイドローラ29aが設けられた巻取りアーム29とを備えている。回収リール24は、回転手段25の上方に突出された中空回転軸25aの上部に固定され、可変連動手段28は、回転手段25の下部に配設されるとともに、中空回転軸25aの回転を入力とし、その回転速度を適宜に減速して回転軸27に出力するように構成されている。かくして、回転手段25を、芯糸供給手段7の回転手段18の回転速度よりも若干高速で回転させ、可変連動手段28にて減速して回転軸27を回転手段18と同じ回転速度で回転させることにより、巻戻しアーム19と巻取りアーム29が同期して回転し、上部ガイド4aと下部ガイド4bの間の芯糸移動経路5で芯糸6及び糸条8が回転し、かつそれより高速で回転する中空回転軸25aにて回収リール24が回転することで糸条8及び芯糸6が回収リール24に巻き取られ、またその分だけ供給リール17が巻き戻す方向に回転軸18aに対して相対回転することで芯糸6及び糸条8が芯糸移動経路5を下方に向けて移動し、芯糸6が回転しながら芯糸移動経路5に供給される。回転手段25の回転速度は、回収リール24による糸条8の巻取り速度が、例えば数mm〜数100cm/sec程度になるように回収リール24の巻取径に応じて調整設定され、かつ可変連動手段28にて回転軸27の回転速度が回転手段18と同速となるように制御される。
ナノファイバー生成手段2は、図4に示すように、ナノファイバー3の原料溶液を下方に向けて線状に流出する小穴を形成する複数のノズル部材31を備えた紡糸ヘッド30と、紡糸ヘッド30の下方に対向して配設された電界生成電極32と、第1の高電圧発生手段12とは逆極性の高電圧を発生する第2の高電圧発生手段33と、紡糸ヘッド30と電界生成電極32の間の空間に対して芯糸移動経路5とは反対側の側部に配設され、芯糸移動経路5に向かう気流を形成する送風手段34と、紡糸ヘッド30にナノファイバー3の原料溶液を供給する原料溶液供給手段35とを備えている。原料溶液供給手段35は、貯留容器36内に貯留されている原料溶液を送給ポンプ37にて供給管38を通して紡糸ヘッド30に供給するように構成されている。図示例では、第2の高電圧発生手段33で発生した高電圧を紡糸ヘッド30に印加し、電界生成電極32を接地してそれらの間に電界を発生させている。また、紡糸ヘッド30と電界生成電極32の間の空間と芯糸移動経路5と間には、風洞形成部材39が配設されている。この風洞形成部材39は遮蔽板16と兼用することができる。
この構成においては、紡糸ヘッド30に対して第2の高電圧発生手段33にて正極の高電圧が印加され、電界生成電極32が接地されているので、それらの間に生成した電界によってノズル部材31から線状に流出する原料溶液に正極の電荷が帯電され、原料溶液中の溶媒の蒸発に伴って1次〜3次、場合によってはそれ以上の次数の電荷誘導紡糸現象が発生して正極に帯電したナノファイバー3が生成されつつ電界生成電極32に向けて流動するとともに、送風手段34にて流動方向が偏向されて負極に帯電した芯糸6に向けて流動する。なお、紡糸ヘッド30を接地し、電界生成電極32を負極の高電圧を印加しても良い。
また、ナノファイバー生成手段2としては、図5に示すような構成のものを採用することもできる。図5において、紡糸ヘッド40は、水平な軸芯周りに回転自在に支持され、周面に直径が0.01〜2mm程度の小穴42が数mmピッチ間隔で多数形成されている円筒容器にて構成された回転容器41にて構成されている。小穴42に代えて短寸のノズル部材を配置し、そのノズル穴を小穴42としても良い。この回転容器41を、支持体(図示せず)に軸受け(図示せず)で支持された回転軸43を介してモータなどの回転手段44にて高速で回転させるように構成されている。回転容器41内に原料溶液供給手段35にて原料溶液を供給して高速回転させることで、回転容器41内の原料溶液が遠心力にて小穴42から線状に流出される。回転容器41の周囲には、その周面から適当な距離をあけて対向するようにリング状の電界生成電極45が配設されている。図示例では、回転容器41が接地されるとともに、電界生成電極45に第3の高電圧発生手段46で発生した高電圧が印加されており、回転容器41と電界生成電極45の間の空間に生成された電界によって、小穴42から流出した線状の原料溶液に電荷誘導紡糸現象が生じ、ナノファイバー3が生成される。回転手段44の前面には送風ファン47が配設され、発生された気流が送風路48を通して回転容器41と電界生成電極45の間の空間に導入され、生成されつつある若しくは生成されたナノファイバー3が芯糸移動経路5に向けて流動される。電界生成電極45と芯糸移動経路5の間には、風洞形成部材49が配設されている。この風洞形成部材49は遮蔽板16と兼用することができる。
この構成においては、回転容器41の少なくとも小穴42の近傍と電界生成電極45との間に生成した電界によって小穴42に正極の電荷が誘導され、その電荷が小穴42から流出する原料溶液に帯電され、原料溶液中の溶媒の蒸発に伴って1次〜3次、場合によってはそれ以上の次数の電荷誘導紡糸現象が発生して正極に帯電したナノファイバー3が生成され、負極に帯電した芯糸6に向けて流動する。なお、第3の高電圧発生手段46にて回転容器41に正極の高電圧を印加し、電界生成電極4を接地電位としても良いが、回転手段44に連結されている回転容器41を接地電位にした方が絶縁構成が簡単となるので好ましい。
原料溶液は、高分子物質を溶媒に溶解したものであり、その高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が好適なものとして例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、溶媒と高分子物質との混合比率は、溶媒と高分子物質により異なるが、溶媒量が約60%から98%の間が望ましい。
また、原料溶液には、高分子物質と溶媒のほかに無機質固体材料を混入することも可能である。この無機質固体材料としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、耐熱性、加工性などの観点からは酸化物を用いるのが好ましい。酸化物としては、Al2O3、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B2O3、P2O5、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb2O3、As2O3、CeO2、V2O5、Cr2O3、MnO、Fe2O3、CoO、NiO、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、HfO2、Nb2O5等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。このようにTiO2などの無機質固体材料を混入することで、防臭・抗菌機能や各種触媒機能を奏する機能性ナノファイバーから成る糸条8を製造することができ、衣類やその他の繊維製品に有用である。
以上の構成によれば、芯糸供給手段7と回収手段9にて芯糸6を回転させながら芯糸移動経路5に供給するとともに、芯糸移動経路5を移動する芯糸6に対して芯糸帯電手段10にて負極の高電圧を帯電させているので、芯糸移動経路5の側部に配設されたナノファイバー生成手段2にて正極に帯電して生成されたナノファイバー3は芯糸移動経路5に向けて流動し、直に安定して芯糸6に向けて移動し、回転している芯糸6に絡んで確実に巻き付くことになる。かくして、生成されたナノファイバー3が確実にかつ均等に芯糸6に巻き付いた糸条8が合糸され、この糸条8が回収手段9にて回収されることで、ナノファイバー3から成る高強度で均質な糸条8が安定して生産性よく製造される。
なお、以上の説明では芯糸6を負極に帯電させ、ナノファイバー生成手段2にて生成されるナノファイバー3は正極に帯電される例を示したが、逆に芯糸6を正極に帯電させ、ナノファイバー3は負極に帯電されるようにしても良く、その場合、図4、図5に示したナノファイバー生成手段2の構成における紡糸ヘッド30や電界生成電極45に対する印加電圧の極性を逆極性とすればよい。また、回収手段9の手前に除電手段を配置して、回収手段9にて糸条8を回収する前に帯電した電荷を除去するようにしてもよい。
(第2の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第2の実施形態について、図6〜図8を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明においては、先行する実施形態の構成要素と同一の構成要素について同じ参照符号を付して説明を省略し、主として相違点についてのみ説明する。
本実施形態は、上記第1の実施形態と芯糸供給手段7及び回収手段9の構成が異なるとともに、上部ガイド4aと下部ガイド4bに代えて上部と下部の回転手段50a、50bを配設している。本実施形態において、芯糸供給手段7は、芯糸リール51に巻回した芯糸6を引き出し、芯糸移動経路5の直上に配置したガイドローラ52を介して芯糸移動経路5に芯糸6を供給するように構成され、回収手段9は、芯糸移動経路5の直下に配置したガイドローラ53を介して芯糸移動経路5を移動してきた糸条8を回収リール54に巻き取って回収するように構成され、回収リール54若しくは芯糸リール51と回収リール54の両方を回転手段(図示せず)にて芯糸6の移動速度に対応した速度で回転駆動するように構成されている。
上部と下部の回転手段50a、50bは、図7に示すように、支持筒体55にて軸受56を介して中空回転軸57が回転自在に支持されるとともに、中空回転軸57に固定したプーリ58に巻掛回転手段59のベルト59aを巻き掛けることで、中空回転軸57を回転するように構成されている。芯糸移動経路5が中空回転軸57の軸芯位置を通って芯糸6や糸条8が貫通され、かつ中空回転軸57の内周に、芯糸6や糸条8の軸芯方向の移動は許容し、特に回転方向の移動に対して適当な摩擦抵抗を与える弾性摩擦部材60が設けられている。かくして、巻掛回転手段59を駆動することで中空回転軸57が回転し、それに伴って芯糸移動経路5上の芯糸6や糸条8が回転される。
上部と下部の回転手段50a、50bの他の構成例として、図8に示すように、中空回転軸62を有するモータ61を適用し、その中空回転軸62の内周に弾性摩擦部材60を配設した構成とし、芯糸6や糸条8の軸芯方向の移動は許容し、回転方向の移動に対して適当な摩擦抵抗を与えるようにしても良い。
本実施形態の構成によっても、第1の実施形態と同様にナノファイバー3が確実にかつ均等に芯糸6に巻き付いた糸条8が合糸され、この糸条8が回収手段9にて回収されることで、ナノファイバー3から成る高強度で均質な糸条8が安定して生産性よく製造される。
(第3の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第3の実施形態について、図9を参照して説明する。
上記第1の実施形態では、芯糸6が導電性を有し、芯糸6に帯電電極11を接触させて帯電させるようにした例を示したが、本発明は芯糸6が導電性を有するものに限定されるものではなく、本実施形態では、図9に示すように、芯糸6として複数の非導電性の糸を撚り合わせたものを使用し、その芯糸6に導電性溶液63を浸み込ませる導電性溶液付与手段64が上部ガイド部4aと帯電手段10の帯電電極11との間に配設されている。導電性溶液付与手段64は、具体的には、導電性溶液63を貯留した容器64aと、容器64aに一部が浸漬されるとともに外周面が芯糸6に接して回転する塗布ローラ64bと、塗布ローラ64bとの間で芯糸6を挟持するバックアップローラ64cにて構成されている。導電性溶液63としては、例えばカルキを含んだ水で良く、その他、電解質を溶解した水溶液が好適に適用される。なお、ここで言う導電性とは、ある程度の抵抗が有していても、数kV〜数10kVの高電圧を印加した状態でその近傍の電位となるものであれば良い。また、本実施形態では、糸条8に向けて熱風を吹き付けて糸条8を乾燥させる乾燥手段65が、下部の絶縁手段14bと下部ガイド4bの間に配設され、乾燥した糸条8を回収するように構成している。
本実施形態においては、複数の非導電性の糸を撚り合わせた芯糸6を用いながら、導電性溶液63を付与することで芯糸6を容易かつ安定して所要の電圧を印加した状態若しくは接地した状態とすることができ、したがってナノファイバー3の巻き付き作用を安定して確保することができる。また、糸条8を乾燥させる乾燥手段65を配設しているので、帯電のために付与された導電性溶液63が蒸発されて回収時には糸条8の導電性が無くなっているので、高電圧は印加されず、安全上問題のない糸条8を回収することができて好適である。
(第4の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第4の実施形態について、図10を参照して説明する。
本実施形態は、上記図6に示した第2の実施形態を基本構成とし、第3の実施形態と同様に芯糸6として複数の非導電性の糸を撚り合わせたものを使用して、その芯糸6に導電性溶液63を浸み込ませる導電性溶液付与手段64を配設し、かつ芯糸帯電手段10を、導電性溶液63を浸み込ませた芯糸6に対して帯電するのではなく、芯糸6に浸み込ませる前の導電性溶液63を帯電する構成としたものである。具体的には、図10に示すように、導電性溶液付与手段64は、芯糸リール51とガイドローラ52の間に配設され、その間の芯糸6に対して塗布ローラ64bを接触させるとともに、バックアップローラ64cの間で芯糸6を挟持するように構成されている。また、導電性溶液63を収容した容器64aを導電性部材にて構成して第1の高電圧発生手段12で発生した高電圧が印加し、帯電電極11を兼ねる構成としている。また、乾燥手段65も配設している。
本実施形態においても、第3の実施形態と同様に複数の非導電性の糸を撚り合わせた芯糸6を用いながら、芯糸6を容易かつ安定して所要の電圧を印加した状態若しくは接地した状態にしてナノファイバー3の巻き付き作用を安定して確保することができ、かつ回収時には導電性溶液63が蒸発され、糸条8の導電性が無くなっているので、安全上問題のない糸条8を回収することができる。
なお、以上の実施形態では、芯糸移動経路5の一側部に単一のナノファイバー生成手段2を配設した例を示したが、図10に仮想線で示すように、芯糸移動経路5の周囲に複数のナノファイバー生成手段2を配設しても良い。このように複数のナノファイバー生成手段2を配設すると、多量のナノファイバー3を芯糸6に一度に巻き付けることができて糸条8の製造効率を向上することができる。また、複数のナノファイバー生成手段2において、互いに異なる組成の原料溶液を流出させるように構成すると、性質の異なるナノファイバー3が混紡された糸条8を製造することができる。
(第5の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第5の実施形態について、図11を参照して説明する。
上記実施形態では、芯糸移動経路5の一側部に単一の又は周囲に複数のナノファイバー生成手段2を配設した例を示したが、本実施形態では、図11に示すように、芯糸移動経路5における芯糸6の移動方向に複数のナノファイバー生成手段2を配設している。このように複数のナノファイバー生成手段2を設けることで、多量のナノファイバー3を芯糸6に一度に巻き付けることができて糸条8の製造効率を向上することができ、特に芯糸6の移動方向に複数のナノファイバー生成手段2を配設して各ナノファイバー生成手段2において、互いに異なる組成の原料溶液を流出させるように構成すると、芯糸6の周囲に互いに性質の異なるナノファイバー3の層が順次積層された多層構造の糸条8を製造することができる。
(第6の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第6の実施形態について、図12を参照して説明する。
以上の実施形態においては、複数のノズル部材31を備えた紡糸ヘッド30や、複数の小穴42を形成した回転容器41を備えた紡糸ヘッド40から成る1又は複数のナノファイバー生成手段2を有する例を示したが、本実施形態では、図12に示すように、単一の小穴を構成するノズル部を有する複数の紡糸ヘッド66を、芯糸移動経路5の周囲に周方向に等間隔に配設してナノファイバー生成手段2を構成している。このような構成によっても、多量のナノファイバー3を芯糸6に一度に巻き付けることができて糸条8の製造効率を向上することができる。
(第7の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第7の実施形態について、図13を参照して説明する。本実施形態においては、複数の紡糸ヘッド66を、芯糸移動経路5における芯糸6の移動方向に適当間隔おきに複数段に紡糸ヘッド66を配設してナノファイバー生成手段2を構成している。このような構成によっても、多量のナノファイバー3を芯糸6に一度に巻き付けることができて糸条8の製造効率を向上することができるとともに、各段の紡糸ヘッド66から流出する原料溶液の組成を異ならせることで、芯糸6の回りに多層に性質の異なるナノファイバー3の層が順次積層された多層構造の糸条8を製造することができる。
本発明のナノファイバーの合糸方法及び装置によれば、芯糸が回転しながら芯糸移動経路を移動し、かつその芯糸に電圧が印加され若しくは接地されている状態で、芯糸移動経路の周囲の小穴から原料溶液を帯電させて流出させることで、流出した原料溶液に電荷誘導紡糸現象が生じてナノファイバーが生成されるとともに、生成されたナノファイバーが直に安定して芯糸に向けて移動し、回転している芯糸に絡み、確実に巻き付いて糸条が合糸されるので、ナノファイバーから成る高強度の糸条の生産に好適に利用することができる。
本発明の第1の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す部分断面図。 同実施形態における芯糸供給手段の構成を示す断面図。 同実施形態における回収手段の構成を示す部分断面図。 同実施形態におけるナノファイバー生成手段の構成を示す部分断面図。 同実施形態におけるナノファイバー生成手段の他の構成を示す断面図。 本発明の第2の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す部分断面図。 同実施形態における回転手段の構成を示す縦断面図。 同実施形態における回転手段の他の構成例を示す斜視図。 本発明の第3の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す部分断面図。 本発明の第4の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す部分断面図。 本発明の第5の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す部分断面図。 本発明の第6の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の要部構成を示す横断平面図。 本発明の第7の実施形態におけるナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す縦断面図。 従来例のナノファイバー合糸装置の全体概略構成を示す斜視図。
符号の説明
1 ナノファイバー合糸装置
2 ナノファイバー生成手段
3 ナノファイバー
5 芯糸移動経路
6 芯糸
7 芯糸供給手段
8 糸条
9 回収手段
10 芯糸帯電手段
11 帯電電極
12 第1の高電圧発生手段
30 紡糸ヘッド
31 ノズル部材
40 紡糸ヘッド
41 回転容器
42 小穴
63 導電性溶液
64 導電性溶液付与手段
65 乾燥手段
66 紡糸ヘッド

Claims (11)

  1. 芯糸を回転させながら所定の芯糸移動経路に供給する芯糸供給工程と、
    芯糸移動経路の周囲に配置した少なくとも1つの小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させ、前記原料溶液を延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成工程と、
    芯糸にナノファイバーの帯電極性とは逆極性の電圧を印加する若しくは接地することで、生成されたナノファイバーを回転する芯糸に巻き付ける合糸工程と、
    芯糸にナノファイバーが巻き付いた糸条を回収する回収工程とを
    有することを特徴とするナノファイバーの合糸方法。
  2. ナノファイバー生成工程において、芯糸移動経路の周囲に配置した複数の小穴から原料溶液を流出させてナノファイバーを生成することを特徴とする請求項1記載のナノファイバーの合糸方法。
  3. ナノファイバー生成工程において、芯糸移動経路の移動方向に沿って配置した複数の小穴から原料溶液を流出させてナノファイバーを生成することを特徴とする請求項1記載のナノファイバーの合糸方法。
  4. 複数の小穴から、異なった組成の原料溶液を流出させることを特徴とする請求項2又は3記載のナノファイバーの合糸方法。
  5. 複数の非導電性の糸を撚り合わせた芯糸を使用し、芯糸に導電性溶液を浸み込ませて芯糸に導電性を付与する工程を有することを特徴とする請求項1記載のナノファイバーの合糸方法。
  6. 合糸工程後に、糸条を乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とする請求項5記載のナノファイバーの合糸方法。
  7. 芯糸を回転させながら所定の芯糸移動経路に供給する芯糸供給手段と、
    芯糸移動経路の周囲に配置されて原料溶液を流出させる少なくとも1つの小穴を有し、流出する原料溶液に電荷を帯電させて前記原料溶液を延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成手段と、
    芯糸に原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加する芯糸帯電手段若しくは芯糸を接地する接地手段と、
    芯糸にナノファイバーが巻き付いた糸条を回収する回収手段とを
    備えたことを特徴とするナノファイバーの合糸装置。
  8. ナノファイバー生成手段は、複数の小穴が芯糸の周囲若しくは芯糸の移動方向又は芯糸の周囲及び芯糸の移動方向の両方に配置されていることを特徴とする請求項7記載のナノファイバーの合糸装置。
  9. 芯糸は、導電性を有する糸にて構成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のナノファイバーの合糸装置。
  10. 芯糸は、複数の非導電性の糸を撚り合わせて構成され、芯糸に導電性溶液を浸み込ませる導電性溶液付与手段を有することを特徴とする請求項7又は8に記載のナノファイバーの合糸装置。
  11. 糸条を乾燥させる乾燥手段を有することを特徴とする請求項10記載のナノファイバーの合糸装置。
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