JP2010077459A - 温度ヒューズ用エレメント及び合金型温度ヒューズ - Google Patents

温度ヒューズ用エレメント及び合金型温度ヒューズ Download PDF

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充明 植村
Shigekazu Okamoto
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Abstract

【課題】ヒューズエレメントの溶断温度が92℃〜98℃の温度ヒューズにおいて、その溶断温度未満と固相線温度との間の温度で繰返し加熱を受けても、ヒューズエレメントの損傷をよく軽減できる温度ヒューズを提供する。
【解決手段】In48〜54%、Bi7〜10%、Zn1.5〜3.0%、Ag0.1〜1.0%、残部Snの合金組成を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は温度ヒューズ用エレメント及び合金型温度ヒューズに関し、携帯電子機器に取り付けて使用されるサーモプロテクタとして有用なものである。
電子・電気機器のサーモプロテクタとして、合金型温度ヒューズが汎用されている。
合金型温度ヒューズは、リード導体間に低融点可溶合金片(ヒューズエレメント)を接続し、該低融点可溶合金片にフラックスを塗布し、該フラックス塗布低融点可溶合金片を絶縁外皮で封止してなり、電子・電気機器に良好な熱的接触状態で取付け、電子・電気機器が過電流のために所定の限界温度にまで発熱する際に、低融点可溶合金片を溶断させて電子・電気機器への給電を遮断している。
合金型温度ヒューズの溶断動作の機構は、低融点可溶合金片が溶融され、その溶融合金がリード導体先端部に濡れ拡がり分断されて通電が遮断されることにある。
ヒューズエレメントの溶融過程は、固相線温度で溶解し始め、液相線温度で溶解が終了し、固相線温度と液相線温度との間では、溶解液体に固相体が粒子状で分散した状態、すなわち固液共存状態となる。
ヒューズエレメントの溶断温度は、固相線温度よりも高温側であるが、固液共存物のリード導体への濡れ性や粘度等に左右される。
携帯型電子・電気機器、例えば携帯電話機では、リチウムイオン電池等の二次電池を電源として使用しており、その二次電池の発熱から携帯する者の人体を保護するために、二次電池に温度ヒューズを取り付けて二次電池温度90℃〜99℃で温度ヒューズを動作させ携帯電話機を不能状態とすることが行われている。
温度ヒューズ用エレメントの合金として、Sn−In−Bi−Znの4元合金が提案されている(特許文献1〜3)。
特開2006−299289号公報 特開2007−113050号公報 国際公開2004−106568号公報 図2は、51%In−9%Bi−3%Zn−37%SnのDSC(示差走行熱量)曲線を示している。 DSC測定は、合金試料とアルミ基準試料に各ヒータにより電力を供給して両者間の温度差を0とするように一定速度で加熱していき、合金試料が溶解すると吸熱が生じるのでその吸熱分の電力を合金試料側に補給して前記温度差を0としていくものであり、縦軸に両者間の電力供給量の差を、横軸に温度を示している。図2においては、固相線温度が80.7℃、液相線温度が96.9℃、吸熱ピーク温度が95.3℃となっている。
本発明者等においては、鋭意実験を行い、In48〜54%、Bi7〜10%、Zn1.5〜3.0%、残部Snの組成では、固相線温度が79℃〜81℃の範囲内にあること、ピーク温度が94℃〜96℃の範囲内にあり、ヒューズエレメントの溶断が(ピーク温度の±2℃)の範囲内で生じること確認した。
しかしながら、この合金を携帯電話機用温度ヒューズのヒューズエレメントとして使用すると、溶断温度(92℃〜98℃)と固相線温度(79℃〜81℃)との差が大きく、この固相線温度と溶断温度との間では、温度ヒューズが作動しなくてもヒューズエレメントが半溶解され、これが繰り返されると、ヒューズエレメントが損傷して温度ヒューズの所定の作動が保証できなくなる。
このように、In48〜54%、Bi7〜10%、Zn1.5〜3.0%、残部Snの組成を携帯電話機用温度ヒューズのヒューズエレメントとして使用すると、二次電池の発熱によりヒューズエレメント温度が92℃〜98℃に達すると、ヒューズエレメントを溶断させて携帯電話機を通電不能として人体を火傷から安全に保護できるが、保護範囲外の溶断温度未満から固相線温度(79℃〜81℃)までの温度での繰返し加熱でも携帯電話機が使用不可となってしまう。
そこで、In48〜54%、Bi7〜10%、Zn1.5〜3.0%、残部Snの組成の合金について、DSCピーク温度を変えることなく、従ってヒューズエレメントの溶断温度を変えることなく固相線温度を高めるべく鋭意検討した結果、Agを0.1〜1.0%添加すれば、細線加工性を充分に保持して固相線温度を2℃〜4℃上昇できることを知った。
合金の機械的強度をアップするために、Ag、Cu、Al、Ge、Ga等の金属を少量添加することは周知手段に属する。 この理由を考察すると次の通りである。a,……aのn種類の金属元素からなる合金Aにおいては、aにa,……aが溶けた固溶体、……、aにa,a,……an−1が溶けた固溶体というようにn種類の固溶体が生成し、a,……a、an+1の(n+1)種類の金属元素からなる合金A’においては、aにa,……a,an+1が溶けた固溶体、……、an+1にa,……aが溶けた固溶体というように(n+1)種類の固溶体が生成し、合金Aの溶解温度の最も低い固溶体の溶解温度に対し合金A’の溶解温度の最も低い固溶体の溶解温度が高いためであると推定できる。
しかしながら、前記Agの添加に代えCu、Al、Ge、Ga等を添加しても、固相線温度の上昇は得られない。
本発明の目的は、ヒューズエレメントの溶断温度が90℃〜99℃の温度ヒューズにおいて、その溶断温度未満と固相線温度との間の温度で繰返し加熱を受けても、ヒューズエレメントの損傷をよく軽減できる温度ヒューズを提供することにある。
請求項1に係る温度ヒューズ用エレメントは、In48〜54%、Bi7〜10%、Zn1.5〜3.0%、Ag0.1〜1.0%、残部Snの合金組成を有することを特徴とする。
請求項2に係る温度ヒューズ用エレメントは、In48〜54%、Bi7〜10%、Zn1.5〜3.0%、Ag0.1〜1.0%、残部Snの100重量部にCu、Al、Ge、Gaの少なくとも一種以上が合計で0.05重量部以下含有されてなる合金組成を有することを特徴とする。
請求項3に係る温度ヒューズは、ヒューズエレメントが請求項1または2何れかの温度ヒューズ用エレメントであることを特徴とする。
請求項4に係る温度ヒューズは、リード導体間に請求項1または2何れかの温度ヒューズ用エレメントが接続され、該エレメントにフラックスが塗布され、該フラックス塗布エレメントがベースフィルムとカバーフィルムとで封止されていることを特徴とする。
In48〜54%、Bi7〜10%、Zn1.5〜3.0%、残部Snの組成を携帯電話機用温度ヒューズのヒューズエレメントとして使用すると、二次電池の発熱によりヒューズエレメント温度が溶断温度90℃〜99℃に達すると、ヒューズエレメントを溶断させて携帯電話機を通電不能として人体を火傷に対し安全に保護できるが、保護範囲外の溶断温度未満から固相線温度(79℃〜81℃)までの温度での繰返し加熱でも携帯電話機が使用不可となってしまう。
本発明では、Agを0.1〜1.0%添加しており、溶断温度92℃〜98℃を殆ど変化させることなく固相線温度(82℃〜85℃))へと2℃〜4℃高めることができ、その高まった範囲では、高める前に前記繰返し加熱により受けていたヒューズエレメントの損傷を排除できる。
すなわち、使用危険温度範囲を従来の「ヒューズエレメント溶断温度(90℃〜99℃)と固相線温度(79℃〜81℃)との間の範囲」から「ヒューズエレメント溶断温度(90℃〜99℃)と固相線温度(82℃〜85℃)との間の範囲」に狭めることができる。
本発明において使用する合金組成は、In48〜54重量部、Bi7〜10重量部、Zn1.5〜3.0重量部、残部Snの合計100部をベースとし、これにAgを0.1〜1.0重量部添加したものである。
このベース組成の合金においては、固相線温度が79℃〜81℃の範囲内にある、ピーク温度が94℃〜96℃の範囲内にありヒューズエレメントの溶断が(DSCピーク温度の±2℃)の範囲内で生じる、200〜400μmφの細線加工、または厚み20〜40μmの板状加工が可能である等の特長を有する。このベース組成にAgを0.1〜1.0重量部添加する理由は、ベース組成に対DSCピーク温度を殆ど変えずに固相線温度を2℃〜4℃高めるためである。Ag0.1重量部未満では有効な固相線温度アップを得難く、1.0重量部を越えると溶断温度が高温側にシフトしてしまう(溶解金属の粘度が高くなり、濡れによる分断が生じ難くなる)。
Agの添加により固相線温度が上昇する理由は、既述した通り、最低溶解温度の固溶体の溶解温度が高るためである。
請求項2において添加しているCu、Al、Ge、Gaは不可避的不純物であり、その量を0.1〜1.0重量部にしても前記Ag添加の効果は期待できない。
温度ヒューズとしては、帯状リード導体間に板状ヒューズエレメントを接続し、該エレメントにフラックスを塗布し、該フラックス塗布エレメントをベースフィルムとカバーフィルムとでヒートシールや接着剤で封止した薄型とすることが好ましい。
セラミックス基板等の耐熱基板上に一対の膜電極を導電ペーストの印刷焼成により設け、膜電極間に温度ヒューズ用エレメントを接続し、該エレメントにフラックスを塗布し、該フラックス塗布エレメントをエポキシ樹脂などのポッテングにより封止した基板型を使用することもできる。
フラックスには、通常、融点がヒューズエレメントの融点よりも低いものが使用され、例えばロジン90〜60重量部、ステアリン酸10〜40重量部、活性剤0〜3重量部を使用できる。ロジンには、天然ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)、または、これらの精製ロジンを使用することができ、活性剤にはジエチルアミンの塩酸塩や臭化水素酸塩等を使用できる。
以下の実施例及び比較例においては、温度ヒューズには前記した薄型温度ヒューズを使用した。帯状リード導体の材質はスズメッキ銅とし、巾を1000μm、厚みを10μmとした。フラックスには、ロジン80重量部、ステアリン酸20重量部、ジエチルアミン臭化水素酸塩1重量部の組成を使用し、プラスチックベースフィルム及びプラスチックカバーフィルムには厚み200μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した。
ヒューズエレメントには、1ダイスについての引落率6.5%、線引き速度45m/minの条件で300φμmに線引きしたものを使用した。
固相線温度、ピーク温度、液相線温度は、示差熱測定装置Thermo plus TG8120 リガク社製を使用し、測定試料重量10〜14mg、昇温速度5℃/1分の条件で測定した。
温度ヒューズに0.1アンペアの電流を流しつつ、昇温温度1℃/1分のオイルバス中に浸漬し、溶断による通電遮断時のオイル温度を測定し、この温度を溶断温度とした(帯状リード導体がオイルに接触しており、ヒューズエレメントとオイルとの温度差は無視でまる)。
〔実施例1−1〕
ベース組成に51%In−37%Sn−9%Bi−3%Znを使用した。このベース100重量部にAgを0.5重量部を添加した実施例合金を、1ダイスについての引落率6.5%、線引き速度45m/minの条件で300φμmに線引きしてヒューズエレメントを製作した。断線などなく円滑に伸線できた。
実施例合金のDSC曲線は図1の通りであり、固相線温度が83.7℃、ピーク温度が96.8℃である。
薄型温度ヒューズを製作して溶断温度を測定したところ、94℃±1℃であり、ピーク温度にほぼ一致していた。
図2はベース組成のDSC曲線を示し、固相線温度が80.7℃、ピーク温度が95.3℃であり、固相線温度が実施例合金よりも3.0℃低い。
図3は実施例合金組成からZnを除いた合金のDSC曲線を示し、ピーク温度が99.3℃と高く、作動温度90℃〜99℃の温度ヒューズの温度要件を充足させ難い。
〔実施例1−2〕
ベース組成に51%In−37%Sn−9%Bi−3%Znを使用した。このベース100重量部にAgを1.0重量部を添加した実施例合金を、1ダイスについての引落率6.5%、線引き速度45m/minの条件で300φμmに線引きしてヒューズエレメントを製作した。断線などなく円滑に伸線できた。
実施例合金の固相線温度は84.8℃、ピーク温度は97.9℃であり、ヒューズエレメントの溶断温度は97.1℃であった。
〔実施例2−1〕
ベース組成に51%In−38.3%Sn−9%Bi−1.7%Znを使用した。このベース100重量部にAgを0.5重量部を添加した実施例合金を、1ダイスについての引落率6.5%、線引き速度45m/minの条件で300φμmに線引きしてヒューズエレメントを製作した。断線などなく円滑に伸線できた。
実施例合金の固相線温度は83.7℃、ピーク温度は96.7℃であり、ヒューズエレメントの溶断温度は95.4℃であった。
〔実施例2−2〕
ベース組成に51%In−38.3%Sn−9%Bi−1.7%Znを使用した。このベース100重量部にAgを1.0重量部を添加した実施例合金を、1ダイスについての引落率6.5%、線引き速度45m/minの条件で300φμmに線引きしてヒューズエレメントを製作した。断線などなく円滑に伸線できた。
実施例合金の固相線温度は84.8℃、ピーク温度が97.2℃であり、ヒューズエレメントの溶断温度は96.3℃であった。
〔実施例3−1〕
ベース組成に53%In−37.0%Sn−7%Bi−3.0%Znを使用した。このベース100重量部にAgを0.5重量部を添加した実施例合金を、1ダイスについての引落率6.5%、線引き速度45m/minの条件で300φμmに線引きしてヒューズエレメントを製作した。断線などなく円滑に伸線できた。
実施例合金の固相線温度は82.6℃、ピーク温度は95.5℃であり、ヒューズエレメントの溶断温度は94.4℃であった。
〔実施例3−2〕
ベース組成に53%In−37.0%Sn−7%Bi−3.0%Znを使用した。このベース100重量部にAgを1.0重量部を添加した実施例合金を、1ダイスについての引落率6.5%、線引き速度45m/minの条件で300φμmに線引きしてヒューズエレメントを製作した。断線などなく円滑に伸線できた。
実施例合金の固相線温度は83.8℃、ピーク温度が98.1℃であり、ヒューズエレメントの溶断温度は97.4℃であった。
本発明において使用するIn−Sn−Bi−Zn−Ag合金の一例のDSC曲線を示す図面である。 本発明において使用する合金組成に対しAgを除去したIn−Sn−Bi−Zn合金の一例のDSC曲線を示す図面である。 本発明において使用する合金組成に対しZnを除去したIn−Sn−Bi−Ag合金の一例のDSC曲線を示す図面である。
符号の説明
p ピーク

Claims (4)

  1. In48〜54%、Bi7〜10%、Zn1.5〜3.0%、Ag0.1〜1.0%、残部Snの合金組成を有することを特徴とする温度ヒューズ用エレメント。
  2. In48〜54%、Bi7〜10%、Zn1.5〜3.0%、Ag0.1〜1.0%、残部Snの100重量部にCu、Al、Ge、Gaの少なくとも一種以上が合計で0.05重量部以下含有されてなる合金組成を有することを特徴とする温度ヒューズ用エレメント。
  3. ヒューズエレメントが請求項1または2記載の温度ヒューズ用エレメントであることを特徴とする温度ヒューズ。
  4. リード導体間に請求項1または2記載の温度ヒューズ用エレメントが接続され、該エレメントにフラックスが塗布され、該フラックス塗布エレメントがベースフィルムとカバーフィルムとで封止されていることを特徴とする温度ヒューズ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103146976A (zh) * 2013-03-22 2013-06-12 天津百瑞杰焊接材料有限公司 一种熔点为100±2℃的无铅低温合金及其制备方法

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