例えば、自動車の組立ラインにおいて、車輪ハブに車輪を取り付ける工程では、複数のナットを同時に締結するナットランナと呼ばれる組立装置を用いて、生産性を向上させている。一般に、このナットランナは、ナットに嵌合する複数のソケットをナットの配列に対応して配置すると共に、複数のソケットを同時に回転するように構成している。
ところで、細分された小期間は一車種のみを連続的に生産する、いわゆるバッチ式の多品種組立ラインでは、車種が変わる毎にナットランナを交換するという不具合があった。より具体的には、ナットの配置数、ナットが配列されるピッチ円周の直径(以下、PCDという)、及びナットの呼び径の組合せが異なる毎に、ナットランナを交換していた。
このような、不具合を解消するために、呼び径の異なる2種類のナットを締結可能であり、しかも、作業性が良好で、かつ構造が簡単なナットランナが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1によるナットランナは、ナットランナ本体と取り付け軸を備えている。ナットランナ本体は、筐体内に駆動源を内蔵している。取り付け軸は、筐体の壁部に常時後方に付勢力を作用させて回転可能に、かつ軸方向に進退可能に貫通支承されている。又、取り付け軸は、中心から放射状に延びる複数の取り付け片を先端部に有している。
又、特許文献1によるナットランナは、複数の固定ソケットと複数の可動ソケットを備えている。複数の固定ソケットは、駆動源により回転可能に筐体の壁部の円周等配位置に配置され、先端部に第1ナット嵌合部を有している。複数の可動ソケットは、固定ソケットと対応させて、複数の取り付け片の先端部に回転可能に支承されている。可動ソケットは、第1ナット嵌合部と異なる内径の第2ナット嵌合部を先端部に有し、第1ナット嵌合部と嵌合する連結軸部を後端部に有している。
そして、特許文献1によるナットランナは、複数の可動ソケットを複数の固定ソケットの作業位置より後方に退避できるように構成されている。
又、前述の不具合を解消するために、複数のPCDと複数種の配置数を有するナットの締結が可能なナットランナが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2によるナットランナは、複数の締付駆動軸と特定締付駆動軸を備えている。複数の締付駆動軸は、基台の円周方向に等間隔に配設すると共に円周方向に移動自在に設けられている。又、複数の締付駆動軸は、円周の中心に向かって移動自在に設けている。特定締付駆動軸は、これらの締付駆動軸の内、一組の締付駆動軸の間の位置に向かって径方向に進退自在に設けている。
又、特許文献2によるナットランナは、カム溝が形成されたカムプレートが各締付駆動軸に係合している。このカム溝に案内されて、特定締付駆動軸以外の各締付駆動軸が円周方向に所定量移動可能とし、かつ径方向に所定量、移動される。
更に、特許文献2によるナットランナは、締結駆動軸が円周方向に移動するように、特定締付駆動軸を締結駆動軸と更に締結駆動軸間をリンク部材で連結している。そして、カムプレートに接続された第1駆動源と特定締付駆動軸を進退させる第2駆動源の一方又は両方を特定締付駆動軸の進退位置に応じて作動させ、特定締付駆動軸以外の各締付駆動軸をカム溝の形状にしたがって円周方向又は径方向に移動させている。
更に、前述の不具合を解消するために、ナットの軸数とPCDを変更可能なナットランナが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3によるナットランナは、複数の第1回転駆動軸、被動軸、公転機構、及び第1ソケットを備えている。複数の第1回転駆動軸は、相互に平行に配置している。被動軸は、歯車を介して第1回転駆動軸に係合すると共に、第1回転駆動軸を中心に所定角度、公転できる。公転機構は、被動軸を公転させる。第1ソケットは、被動軸の先端部に設けている。
又、特許文献3によるナットランナは、第2回転駆動軸、伸縮機構、第2ソケット、及びストッパ部材を備えている。第2回転駆動軸は、第1回転駆動軸と平行に配置して伸縮できる。伸縮機構は、直線動作して第2回転駆動軸を伸縮させる。第2ソケットは、第2回転駆動軸の先端部に設けている。ストッパ部材は、第2回転駆動軸を短縮させて第2ソケットを後退した状態に保持する。
そして、特許文献3によるナットランナは、被動軸を公転機構によって公転させることにより各第1ソケットの位置するPCDを変更した際に、第2回転駆動軸を伸縮機構によって短縮させてストッパ部材により第2ソケットを後退した状態に保持する。
特開平1−271179号公報
特開平4−289035号公報
特開昭58−132428号公報
特許文献1によるナットランナは、一台のナットランナで呼び径の異なる2種類のナットを締結できる。特許文献1によるナットランナは、固定ソケットに対して可動ソケットを簡単、迅速、確実に一括して着脱できる利点がある。しかし、特許文献1によるナットランナは、ナットの軸数とPCDが変更された場合は、別のナットランナを用意する必要があり、不便である。
一方、特許文献2によるナットランナは、複数のPCDと複数種の配置数を有するナットの締結が可能であるが、呼び径の異なる複数のソケットを一括して交換することは困難である。又、特許文献2によるナットランナは、各ソケットを回転駆動するために、各締付駆動軸及び特定締付駆動軸に転結するモータが必要であり、構成を複雑にしている。
又、特許文献3によるナットランナは、複数のPCDと複数種の配置数を有するナットの締結が可能であり、各ソケットが一つのモータで回転駆動されるので、特許文献2によるナットランナと比較して構成が簡易である。しかし、特許文献3によるナットランナも呼び径の異なる複数のソケットを一括して交換することは困難である。
ナットの配置数、PCD、及びナットの呼び径の組合せが異なる全ての仕様に対応する多軸締結装置が実現できれば、車種が変わる毎にナットランナを交換することなく、生産性を向上できる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ナットなどの締結具の配置数、PCD、及び締結具の呼び径の組合せが異なる全ての仕様に対応する多軸締結装置を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を満たすため、複数のPCDと複数種の配置数を有するナットなどの締結具の締結が可能であり、構成が簡易なナットランナに呼び径が異なる締結具を締結する複数のソケットを有する多軸締結装置を着脱自在に構成することにより、この課題を解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな多軸締結装置を発明した。
(1) 第1ピッチ円周の円周上に配置された複数の第1回転出力部により第1被締結部を締め付ける第1多軸締結手段と、前記第1ピッチ円周の直径と異なる直径を有する第2ピッチ円周の円周上に配置された複数の第2回転出力部により第2被締結部を締め付ける第2多軸締結手段と、この第2多軸締結手段を前記第1回転出力部に着脱自在に連結される中間回転軸と、を備えると共に、この中間回転軸の回転を前記第2回転出力部に伝達する回転力伝達手段を有することを特徴とする多軸締結装置。
(1)の発明による多軸締結装置は、第1多軸締結手段、第2多軸締結手段、及び中間回転軸を備えると共に回転力伝達手段を有している。第1多軸締結手段は、第1ピッチ円周の円周上に配置された複数の第1回転出力部により第1被締結部を締め付ける。第2多軸締結手段は、第1ピッチ円周の直径と異なる直径を有する第2ピッチ円周の円周上に配置された複数の第2回転出力部により第1被締結部を締め付ける。
中間回転軸は、第2回転出力部を第1回転出力部に着脱自在に連結される。回転力伝達手段は、中間回転軸の回転を第2回転出力部に伝達する。
例えば、(1)の発明による多軸締結装置は、直径Rのピッチ円周(第1ピッチ円周)の円周上に配列された呼び径がMである複数の第1締結具(第1被締結部)を第1ソケット(第1回転出力部)で同時に締結可能であると共に、直径Rのピッチ円周(第2ピッチ円周)の円周上に配列された呼び径がMである減数された前記第1締結具を前記第1ソケットで同時に締結可能な第1ナットランナ(第1多軸締結手段)と、この第1ナットランナに着脱自在に取り付けられる第2ナットランナ(第2多軸締結手段)と、を備える多軸締結装置であって、前記第2ナットランナは、前記第1ソケットの回転が伝動(回転力伝達手段)される第2ソケット(第2回転出力部)であって、直径Qのピッチ円周(第2ピッチ円周)の円周上に配列された呼び径がLである第2締結具(第2被締結部)を同時に締結可能な複数の第2ソケット(第2回転出力部)を備えることを特徴としてもよい。
(1)の発明による多軸締結装置は、第2ナットランナが第1ナットランナに着脱自在に取り付けられる。第1ナットランナは、直径Rのピッチ円周上に配列された呼び径がMである複数の第1締結具を第1ソケットで同時に締結可能である。又、ナットランナは、直径Rの円周上に配列された呼び径がMである減数された第1締結具を第1ソケットで同時に締結可能である。
そして、第2ナットランナは、複数の第2ソケットを備えている。第2ソケットは、第1ソケットの回転が伝動される。複数の第2ソケットは、直径Qのピッチ円周上に配列された呼び径がLである第2締結具を同時に締結可能である。
例えば、第1ナットランナは、複数の第1ソケットの軸方向を相互に平行に配置してよく、各第1ソケットの軸中心は、直径Rのピッチ円周上に配列される。複数の第1ソケットの内の1つ以上の特定の第1ソケットは、軸方向に後退してよく、第1ソケットで締結される呼び径がMである第1締結具の個数を減数させる。
特定の第1ソケットを除く第1ソケットは、一組の歯車を介して第1回転駆動軸から回転が伝動されてよく、特定の第1ソケットは、一組の歯車を介して第2回転駆動軸から回転が伝動されてよく、これらの第1及び第2回転駆動軸の軸中心が所定の円周上に均等配置される。
これらの第1及び第2回転駆動軸の後端に備わる小歯車が大歯車から回転が一斉に伝動されて、直径Rのピッチ円周上に配列された呼び径がMである複数の第1締結具を第1ソケットで同時に締結可能である。
特定の第1ソケットを除く第1ソケットの軸中心は、例えばリンク装置を用いて、第1回転駆動軸を中心に所定角度、公転してよく、特定の第1ソケットを除く第1ソケットの軸中心を直径Rの円周上に配列できる。
特定の第1ソケットを軸方向に後退した後に、特定の第1ソケットを除く第1ソケットを公転してよく、前述の大歯車を駆動して、直径Rの円周上に配列された呼び径がMである減数された第1締結具を第1ソケットで同時に締結可能である。
前述のリンク装置は、例えば、往復シリンダを用いて作動してよく、ピストンロッドを後退して個別の第1ソケットを公転できる。ピストンロッドを進出して、個別の第1ソケットを元の位置に復帰できる。
一組のリンク装置は、例えば、往復シリンダを用いて作動してよく、ピストンロッドの先端部とシリンダ本体の後端部に設けられた支持端とを一組のリンク装置に連結してよく、ピストンロッドを後退しての一組の第1ソケットを公転できる。ピストンロッドを進出して、一組の第1ソケットを元の位置に復帰できる。
このように構成された第1ナットランナに第2ナットランナが着脱自在に取り付けられる。着脱自在に取り付けられる態様は、後述するような一対のピンを用いて、第1ナットランナに対して位置決めする態様を含んでよく、他の態様であってもよい。
第1ソケットの回転が第2ソケットに伝動されるとは、第1ソケットと第2ソケットとが同軸に配置されて、直結することを意味しない。第1ソケットは、仲介回転体を介して、その回転が伝動されてよく、例えば歯車伝動装置を用いて第1ソケットの回転が第2ソケットに伝動される。回転が伝動されるとは、回転角度(回転数を含む)が伝動されることを含み、トルクが伝動される双方の意味を含んでいる。
複数の第2ソケットは、直径Qのピッチ円周上に配列されて、これらの第2ソケットの軸中心の位置が第1ナットランナに固定されている。そして、第1ソケットの回転が第2ソケットに伝動されて、直径Qのピッチ円周上に配列された呼び径がLである複数の第2締結具を同時に締結できる。
ここで、第1締結具及び第2締結具は、ナット又はボルトのいずれか一方を含むことができる。ナットは、外形が六角形をした六角ナット、又は外形が四角形をした四角ナットのいずれか一方を含んでよく、ボルトが貫通するいわゆる貫通ナット、又はボルトが貫通しない袋ナットのいずれかを一方を含むことができる。
ボルトは、頭部の形状が六角形をした六角ボルト、又は頭部の形状が四角形をした四角ボルトのいずれか一方を含むことができる。これらのナット又はボルトは、呼び径が規格されている。
第1及び第2ソケットは、対応する第1締結具又は第2締結具に嵌合して回転する工具であってよく、第1締結具又は第2締結具に嵌合する凹部を棒状の本体の先端部に開口している。第1及び第2ソケットは、市販のソケットを利用できる。
(1)の発明による第1多軸締結手段は、車輪ハブに車輪を取り付ける第1ナットランナに必ずしも限定されない。第1ナットランナは、直径Rのピッチ円周上に配列された呼び径がMである複数の第1締結具を第1ソケットで同時に締結可能であると共に、直径Rの円周上に配列された呼び径がMである減数された第1締結具を第1ソケットで同時に締結可能である。
同様に、(1)の発明による第2多軸締結手段は、車輪ハブに車輪を取り付ける第2ナットランナに必ずしも限定されない。第2ナットランナは、第1ナットランナに取り付けて、直径Qのピッチ円周上に配列された呼び径がLである第2締結具を複数の第2ソケットで同時に締結可能である。
第2ソケットは、減数される前の第1ソケットの本数と同数であってよく、減数された第1ソケットの本数と同数であってもよく、所定の本数の第2ソケットを備える第2ナットランナが第1ナットランナに装着される。
(1)の発明による第1ナットランナ(第1多軸締結手段)は、複数の第1ソケットを駆動するための駆動源を有している。一方、第2ソケットは、第1ソケットの回転が伝動されるが、(1)の発明による第2ナットランナ(第2多軸締結手段)は、複数の第2ソケットを駆動するための駆動源を有さない。(1)の発明による多軸締結装置は、第2多軸締結手段が第1多軸締結手段に着脱自在に取り付けられるアダプタであってよく、アドオン装置ということもできる。
例えば、(1)の発明による第1ナットランナは、直径R=114.3mmのピッチ円周上に配列された呼び径がM=M12である「五つ」の第1締結具を第1ソケットで同時に締結可能である。又、(1)の発明による第1ナットランナは、直径R=114.3mmのピッチ円周上に配列された呼び径がM=M12である「四つ」の第1締結具を第1ソケットで同時に締結可能である。
一方、(1)の発明による第2ナットランナは、直径Q=120mmのピッチ円周上に配列された呼び径がL=M14である「五つ」の第2締結具を同時に締結可能である。
前述の第1締結具及び第2締結具は、車輪ハブに車輪を取り付けるホイールナットであってよく、ナットの配置数、PCD、及びナットの呼び径の組合せが異なる全ての仕様に対応する多軸締結装置が実現できる。
このように、(1)の発明による多軸締結装置は、ナットなどの締結具の配置数、PCD、及び締結具の呼び径の組合せが異なる全ての仕様に対応できる。
(2) 前記回転力伝達手段は、前記中間回転軸に配設された第1歯車と、前記第2回転出力部に配設されて前記第1歯車に噛合する第2歯車と、を備えることを特徴とする(1)記載の多軸締結装置。
例えば、(2)の発明による多軸締結装置は、前記第1ナットランナに着脱自在に取り付ける基板と、軸中心が直径Rのピッチ円周上に配列されて前記基板に回転自在に取り付ける複数の第1回転軸(中間回転軸)と、軸中心が直径Qのピッチ円周上に配列されて前記基板に回転自在に取り付ける前記第1回転軸と同数の第2回転軸(第2回転出力部)と、を備え、前記第1回転軸は、前記基板の一方の面から突出して前記第1ソケットの先端部に嵌合する凸部と、中間部に取り付けた第1歯車と、を有し、前記第2回転軸は、前記基板の他方の面から突出して前記第2ソケットを着脱自在に取り付ける軸部と、中間部に取り付けて前記第1歯車に噛み合う第2歯車と、を有することを特徴としてもよい。
(2)の発明による多軸締結装置は、第2ナットランナが基板、複数の第1回転軸、及び第1回転軸と同数の第2回転軸を備えている。基板は、第1ナットランナに着脱自在に取り付けられる。複数の第1回転軸は、それらの軸中心が直径Rのピッチ円周上に配列されており、基板に回転自在に取り付けられている。複数の第2回転軸は、それらの軸中心が直径Qのピッチ円周上に配列されており、基板に回転自在に取り付けられている。
第1回転軸は、凸部と第1歯車を有している。凸部は、基板の一方の面から突出して、第1ソケットの先端部に嵌合する。第1歯車は、第1回転軸の中間部に取り付けられている。
又、第2回転軸は、軸部と第2歯車を有している。軸部は、基板の他方の面から突出しており、第2ソケットを着脱自在に取り付けている。第2歯車は、第2回転軸の中間部に取り付けられており、第1歯車に噛み合っている。
例えば、基板は、第1基板と第2基板とが積層するように組み立てて構成してよく、第1基板は、円板部の両翼に相反する向きに突出する一対の翼片を有してよく、第2基板は、円板状に形成されてよく、第1基板の円板部に同軸状に固定される。
基板を第1基板と第2基板とで構成することにより、第1及び第2回転軸を両軸支持して組み立てることができる。一対の翼片には、後述する一対のピンを固定してもよい。
第1回転軸は、その軸中心の位置が基板に固定された固定軸であってよく、凸部が第1ソケットの先端部に嵌合する。凸部は、呼び径がMである第1締結具と同じ形状が好ましく、第1ソケットの先端部の開口に挿入されて、第1ソケットの回転を第1回転軸に伝動できる。第1回転軸と第1ソケットとは、同軸に配置される、ということもできる。
同様に、第2回転軸は、その軸中心の位置が基板に固定された固定軸であってよく、軸部に第2ソケットが取り付けられる。市販のクイックソケットを使用すれば、第2ソケットの着脱が容易である。
軸部は第2ソケットを着脱自在に取り付けるとは、呼び径がLである第2締結具を締結可能な第2ソケットに代えて、呼び径がKである第2締結具を締結可能な別の第2ソケットを軸部に取り付けることを意味している。
しかし、(2)の発明による多軸締結装置は、第2締結具の呼び径がLからKに代わったときに、第2ソケットを交換することを意味しない。呼び径がLである第2締結具を締結可能な複数の第2ソケットを備える第2ナットランナと、呼び径がLである第2締結具を締結可能な複数の第2ソケットを備える第2ナットランナとが別個に用意されて、第1ナットランナに取り付けられることにより、複数の第2ソケットで第2締結具を同時に締結できる。
第1歯車と第2歯車は、歯筋が軸に対して平行な「平歯車」が好ましく、歯筋が軸に対して一様にねじれた「はすば歯車」であってもよい。第1歯車は、原動車として機能してよく、第2歯車は、従動車として機能してよく、第1歯車が第2歯車に噛み合って回転を伝動できる。第1歯車の歯数と第2歯車の歯数とは、同数であってよく、第2締結具の要求される締め付けトルクに対応して、第1歯車と第2歯車との歯数比を変えてもよい。
なお、実施例では、回転伝達手段を歯車の例で説明するが、これに限らず、ローラーを介して伝達したり、プーリーにベルトを掛けて伝達する方式に変更することも可能である。このように、(2)の発明による多軸締結装置は、ナットなどの締結具の配置数、PCD、及び締結具の呼び径の組合せが異なる全ての仕様に対応できる多軸締結装置を提供できる。
(3) 前記第2多軸締結手段は、基板と、この基板を前記第1多軸締結手段に位置決めする位置決め手段と、を有し、前記位置決め手段で位置決めされた状態で前記第2多軸締結手段を前記第1多軸締結手段に固定する固定手段を備えることを特徴とする(1)又は(2)記載の多軸締結装置。
例えば、(3)の発明による多軸締結装置は、第2ナットランナが基板を有し、基板の一方の面の両翼から突出して前記第1ナットランナに対して位置決めする一対のピン(位置決め手段)を有し、前記第1ナットランナは、前記基板の中心部に係合して当該基板が当該第1ナットランナに向かう力を付勢する引き寄せ部材(固定手段)を有することを特徴としてもよい。
第1ナットランナは、一対のピンが挿入する一対の嵌合穴を有してよく、一対の嵌合穴に案内されて、第1回転軸の凸部が第1ソケットの先端部に正しく嵌合される。
(3)の発明による多軸締結装置は、引き寄せ部材が基板の中心部に係合して、基板がナットランナに向かう力を付勢するので、第1ナットランナと第2ナットランナとの相対的な微小なズレを抑制できる。
本発明による多軸締結装置は、ナットなどの締結具の配置数、PCD、及び締結具の呼び径の組合せが異なる全ての仕様に対応できる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、本発明による多軸締結装置に備わる第1ナットランナの一実施形態を示す正面図であり、第1ソケットを5軸に配置した状態図である。図2は、前記実施形態による第1ナットランナの正面図であり、第1ソケットを4軸に配置した状態図である。
図3は、本発明による多軸締結装置に備わる第2ナットランナと前記実施形態による第1ナットランナとを対向配置した斜視図であり、第2ナットランナが第1ナットランナに取り付けられる前の状態図である。図4は、前記実施形態による第2ナットランナと前記実施形態による第1ナットランナとを対向配置した斜視図であり、第2ナットランナが第1ナットランナに取り付けられる直前の状態図である。
図5は、前記実施形態による第2ナットランナに備わる第1回転軸及び第2回転軸の斜視図であり、第1回転軸と第2回転軸とが係合している状態図である。図6は、前記実施形態による第2ナットランナと前記実施形態による第1ナットランナとを対向配置した斜視図であり、第2ナットランナが第1ナットランナに取り付けられた状態を縦断面で示している。
図7は、前記実施形態による第2ナットランナの平面図であり、第2ナットランナが台車に載置された状態図である。図8は、前記実施形態による第2ナットランナの正面図であり、第2ナットランナが台車に載置された状態図である。図9は、前記実施形態による第2ナットランナの右側面図であり、第2ナットランナが台車に載置された状態図である。
図10は、前記実施形態による第2ナットランナと前記実施形態による第1ナットランナとを対向配置した平面図であり、第2ナットランナが第1ナットランナに取り付けられた状態を部分断面で示している。
最初に、本発明による第2ナットランナ(第2多軸締結手段)が着脱される第1ナットランナ(第1多軸締結手段)の構成を説明する。図1から図3を参照すると、第1ナットランナ10は、五つの第1ソケット1a〜1eを備えている。これらの第1ソケット1a〜1eは、直径Rのピッチ円周上に配列された呼び径がMである五つの第1締結具である図示しないナット(以下、第1ナットという)を同時に締結可能である。
図3を参照すると、第1ナットランナ10は、第1ソケット1a〜1eの軸方向を相互に平行に配置している。又、各第1ソケット1a〜1eの軸中心は、直径Rのピッチ円周上に配列されている。
図1又は図3を参照すると、第1ソケット1a〜1eの内の第1ソケット1aは、往復シリンダ1acで軸方向に後退するように構成されており、第1ソケット1b〜1eで締結される呼び径がMである第1ナットの個数を「5」から「4」に減数できる(図2参照)。
図3又は図4を参照すると、第1ソケット1aは、スプライン軸1asの先端部に固定されている。スプライン軸1asは、軸中心Paを中心に回転できる(図1又は図2参照)。又、スプライン軸1asは、進退できるように第1ナットランナ10の本体に保持されている。
図3又は図4を参照すると、ホルダ1ahは、スプライン軸1asの先端部を回転可能に軸受けしている。ホルダ1ahは、T字状のブラケット1abの一片に固定されている。ブラケット1abの他片は、一対のスライド軸1ad・1adの先端部が固定されている。一対のスライド軸1ad・1adは、第1ナットランナ10の本体にスライド可能に軸支されている。
図3又は図4を参照すると、一対のスライド軸1ad・1adに案内されて、ブラケット1abは、進退運動(直線運動)のみが許容される。すなわち、往復シリンダ1acを駆動すると、ピストンロッドが後退して第1ソケット1aを後退できる。又、往復シリンダ1acを駆動すると、ピストンロッドが前進して第1ソケット1aを復帰できる。
図3又は図4を参照すると、第1ソケット1aを除く第1ソケット1b〜1eは、各回転軸1bs〜1esの先端部に着脱自在に取り付けられている。各回転軸1bs〜1esの基端部は、各歯車箱1bg〜1egに回転自在に支持されている(図1又は図2参照)。
図1から図3を参照すると、四つの歯車箱1bg〜1egは、互いに噛み合う一組の従動歯車及び原動歯車(図示せず)を内部に備えている。従動歯車は、各回転軸1bs〜1esの終端部に取り付けている。原動歯車は、各軸中心Pb〜Peを中心に回転する図示しない四つの第1回転駆動軸の先端部に取り付けている。各第1回転駆動軸を回転すると、原動歯車から従動歯車に回転が伝動されて、各第1ソケット1b〜1eを回転できる。
図1から図3を参照すると、四つの歯車箱1bg〜1egは、各揺動板1bh〜1ehを底面に固定している。各揺動板1bh〜1ehは、各軸中心Pb〜Peを中心にそれぞれ独立して回動できる。各揺動板1bh〜1ehを回動すると、各軸中心Pb〜Peを中心に第1ソケット1b〜1eを公転できる。
図1から図3を参照すると、各揺動板1bh〜1ehの背面には、複数のローラR1を取り付けている。これらのローラR1は、各第1回転駆動軸を軸止する円板の外周に転動して、各揺動板1bh〜1ehの回転運動を規定している。
図1から図3において、スプライン軸1asは、図示しない第2回転駆動軸と同軸に連結している。そして、四つの第1回転駆動軸の各軸中心Pb〜Peと第2回転駆動軸の軸中心Paとは、所定の円周上に均等配置されている。
図1から図3を参照すると、これらの第1及び第2回転駆動軸の後端に備わる小歯車(図示せず)が大歯車(図示せず)から回転が一斉に伝動されて、直径Rのピッチ円周上に配列された呼び径がMである5個又は4個の第1ナットを第1ソケット1a〜1eで同時に締結できる。
図1又は図2を参照すると、第1ナットランナ10は、三つの復動形のシリンダCL1〜CL3を配置している。シリンダCL1のピストンロッドの先端部は、揺動板1bhに回動可能に連結している。シリンダCL1の本体の後端部に設けた支持端kv1は、第1ナットランナ10の本体に可能に連結している(図3参照)。
同様に、図1又は図2を参照すると、シリンダCL2のピストンロッドの先端部は、揺動板1ehに回動可能に連結している。シリンダCL2の本体の後端部に設けた支持端kv2は、第1ナットランナ10の本体に可能に連結している。
一方、図1又は図2を参照すると、シリンダCL3のピストンロッドの先端部は、揺動板1chに回動可能に連結している。シリンダCL2の本体の後端部に設けた支持端kv3は、揺動板1dhに回動可能に連結している。
次に、本発明による第1ナットランナ10の作用を説明する。
図1において、シリンダCL1を駆動してピストンロッドを後退すると、揺動板1bhが軸中心Pbを中心に所定角度、回動して、第1ソケット1bを時計方向に公転できる(図2参照)。シリンダCL1を駆動してピストンロッドを進出すると、第1ソケット1bを元の位置に復帰できる。
同様に、図1において、シリンダCL2を駆動してピストンロッドを後退すると、揺動板1bhが軸中心Peを中心に所定角度、回動して、第1ソケット1eを板時計方向に公転できる(図2参照)。シリンダCL2を駆動してピストンロッドを進出すると、第1ソケット1eを元の位置に復帰できる。
一方、図1において、シリンダCL3を駆動してピストンロッドを後退すると、揺動板1chが軸中心Pcを中心に所定角度、回動して、第1ソケット1cを時計方向に公転できる(図2参照)。又、揺動板1dhが軸中心Pdを中心に所定角度、回動して、第1ソケット1dを反時計方向に公転できる(図2参照)。シリンダCL3を駆動してピストンロッドを進出すると、第1ソケット1c及び第1ソケット1dを元の位置に復帰できる。
図1に示された状態では、五つの第1ソケット1a〜1eは、それらの軸中心が直径Rのピッチ円周上に配列されており、第1ナットランナ10は、呼び径がMである五つの第1ナットを同時に締結できる。
図1に示された状態から、第1ソケット1aを後退させた後に、シリンダCL1〜CL3を駆動すると、4つの第1ソケット1b〜1eは、それらの軸中心が直径Rのピッチ円周上に移動する(図2参照)。
図2において、第1ソケット1aを後退させた状態では、スプライン軸1asに連結した第2回転駆動軸(図示せず)は、クラッチなどが切り換えられて、第1ナットランナ10の本体から回転が遮断される。
一方、図2において、4つの第1ソケット1b〜1eは、各軸中心Pb〜Peを中心に回転する四つの第1回転駆動軸(図示せず)から回転が一斉に伝動される。そして、第1ナットランナ10は、呼び径がMである四つの第1ナットを同時に締結できる。
次に、本発明の実施形態による第2ナットランナの構成を説明する。
図3から図10を参照すると、第2ナットランナ20は、基板2と五つの第1回転軸21と五つの第2回転軸22を備えている。基板2は、第1ナットランナ10に着脱自在に取り付けられる。
図3から図10を参照すると、五つの第1回転軸21は、それらの軸中心Ra〜Reが直径Rのピッチ円周上に配列されており、基板2に回転自在に取り付けられている。五つの第2回転軸22は、それらの軸中心Qa〜Qeが直径Qのピッチ円周上に配列されており、基板2に回転自在に取り付けられている。
図4又は図5を参照すると、第1回転軸21は、凸部21aと第1歯車21gを有している。凸部21aは、基板2の一方の面から突出しており、各第1ソケット1a〜1eの先端部に嵌合する。第1歯車21gは、第1回転軸21の中間部に取り付けられている。
図4又は図5を参照すると、第2回転軸22は、軸部22aと第2歯車22gを有している。軸部22aは、基板2の他方の面から突出しており、各第2ソケット2a〜2eを着脱自在に取り付けている。第2歯車は、第2回転軸の中間部に取り付けられており、第1歯車21gに噛み合っている。
図8又は図10を参照すると、基板2は、第1基板2gと第2基板2hとが積層するように組み立てて構成している。第1基板2gは、円板部20gの両翼に相反する向きに突出する一対の翼片2hg・2hgを有している。第2基板2hは、円板状に形成されており、第1基板2gの円板部20gに同軸状に固定されている。
図8又は図10を参照すると、基板2を第1基板2gと第2基板2hとで構成することにより、第1回転軸21及び第2回転軸22を両軸支持して組み立てることができる。一対の翼片2hg・2hgには、一対のピン23・23を固定している。
図8又は図10を参照すると、第1回転軸21は、それらの軸中心Ra〜Reの位置が基板2に固定された固定軸であり、各凸部21aが各第1ソケット1a〜1eの先端部に嵌合できる。
図4又は図9を参照すると、実施の形態では、凸部21aは、呼び径がMである第1ナットと同じ形状が好ましく、各第1ソケット1a〜1eの先端部の開口に挿入されて、第1ソケット1a〜1eの回転を第1回転軸21に伝動できる。各第1回転軸21と各第1ソケット1a〜1eとは、同軸に配置されている、ということもできる。
同様に、図8又は図10を参照すると、第2回転軸22は、それらの軸中心Qa〜Qeの位置が基板2に固定された固定軸であり、各軸部22aに各第2ソケット2a〜2eが取り付けられる。市販のクイックソケットを使用すれば、第2ソケット2a〜2eの着脱が容易である。
図5を参照すると、第1歯車21g及び第2歯車22gは、歯筋が軸に対して平行な平歯車を用いている。第1歯車21gは、原動車として機能してよく、第2歯車22gは、従動車として機能してよく、第1歯車21gが第2歯車22gに噛み合って回転を伝動できる。
図7から図9を参照すると、第2ナットランナ20は、台車30に載置されて第1ナットランナ10に着脱される。台車30は、基板31とVブロック32と一対の支持台33・33を備えている。
図7から図9を参照すると、Vブロック32は、基板31に固定されている。Vブロック32は、上部がV字状に切り欠いており、円板状の第2基板2hの外周に当接して、第2ナットランナ20の中心を割り出すことができる。
又、図7から図9を参照すると、Vブロック32の一方の面には、一対の停止板32a・32aを取り付けている。一対の停止板32a・32aは、第2基板2hの側面に当接して、第2ナットランナ20の一方の方向への移動を阻止している。
図7から図9を参照すると、一対の支持台33・33は、基板31に立設された支柱33aの上部が一対のピン23・23の基端部を支持している。支柱33aの上部は、U字状に開口したブロック33bを設けており、一対のピン23・23の基端部に形成されたフランジ23aに当接して、第2ナットランナ20の他方の方向への移動を阻止している。
図7から図9において、第2ナットランナ20を載置した台車30は、図示されない移動装置で移送されて、第1ナットランナ10に着脱される(図10参照)。
図3及び図4又は図10を参照すると、第1ナットランナ10の本体は、前方に突出する一対のボス11・11を配置している。そして、ボス11は、ピン23が嵌合する貫通穴11aを開口している。
図3及び図4又は図10において、一対のピン23・23が一対の貫通穴11a・11aして、第2ナットランナ20を第1ナットランナ10に位置合わせできる。又、各凸部21aを各第1ソケット1a〜1eの先端部に嵌合できる。
図3及び図7又は図10を参照すると、基板2は、その略中心から突出する円筒状のボス24を一方の面に有している。ボス24は、先端部に方形の溝24aを設けている。
一方、図6又は図10を参照すると、第1ナットランナ10は、ボス24に係合して基板2が第1ナットランナ10に向かう力を付勢する引き寄せ部材12を有している。引き寄せ部材12は、進退すると共に90度回転する軸12aを有している。又、軸12aは、溝24aに進入可能なI字状の係合板12bを先端部に有している。
図6又は図10を参照すると、軸12aを進出させて、係合板12bを溝24aに進出させた後に、係合板12bを90度回転すると、係合板12bをボス24の先端部の内壁に嵌合できる。軸12aを後退すると、ボス24が第1ナットランナ10に向かう力を付勢できる。そして、第1ナットランナ10と第2ナットランナ20との相対的な微小なズレを抑制できる。
次に、本発明の実施形態による第2ナットランナの作用を説明する。
例えば、本発明の実施形態による第1ナットランナ10は、直径R=114.3mmのピッチ円周上に配列された呼び径がM=M12である「五つ」の第1ナットを第1ソケット1a〜1eで同時に締結可能である。又、第1ナットランナ10は、直径R=114.3mmのピッチ円周上に配列された呼び径がM=M12である「四つ」の第1ナットを第1ソケット1b〜1eで同時に締結可能である。
一方、本発明の実施形態による第2ナットランナ20は、直径Q=120mmのピッチ円周上に配列された呼び径がL=M14である「五つ」の第2ナットを同時に締結可能である。第1ナット及び第2ナットは、車輪ハブに車輪を取り付けるホイールナットであってよく、ナットの配置数、PCD、及びナットの呼び径の組合せが異なる全ての仕様に対応する多軸締結装置が実現できる。
このように、本発明の実施形態による第2ナットランナ20は、ナットなどの締結具の配置数、PCD、及び締結具の呼び径の組合せが異なる全ての仕様に対応できる。
本発明の実施形態による第2ナットランナ20が着脱される第1ナットランナ10は、車輪ハブに車輪を取り付けるナットランナに必ずしも限定されない。第1ナットランナ10は、直径Rのピッチ円周上に配列された呼び径がMである5つの第1締結具を第1ソケット1a〜1eで同時に締結可能であると共に、直径Rの円周上に配列された呼び径がMである減数された第1締結具を第1ソケット1b〜1eで同時に締結可能である。
同様に、本発明の実施形態による第2ナットランナ20は、車輪ハブに車輪を取り付ける多軸締結装置に必ずしも限定されない。第2ナットランナ20は、第1ナットランナ10に取り付けて、直径Qのピッチ円周上に配列された呼び径がLである第2締結具を5つの第2ソケット2a〜2eで同時に締結可能である。
第2ソケットは、減数される前の第1ソケットの本数と同数であってよく、減数された第1ソケットの本数と同数であってもよく、所定の本数の第2ソケットを備える第2ナットランナが第1ナットランナに装着される。
本発明の実施形態による第2ナットランナ20は、第2ナットの呼び径がLからKに代わったときに、第2ソケット2a〜2eを交換することを意味しない。呼び径がLである第2ナットを締結可能な第2ソケット2a〜2eを備える第2ナットランナ20と、呼び径がLである第2ナットを締結可能な第2ソケット2a〜2eを備える第2ナットランナ20とが別個に用意されて、第1ナットランナ10に取り付けられることにより、第2ソケット2a〜2eで第2ナットを同時に締結できる。