以下、本発明を図面に基づいて説明する。
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図16は本発明に係る定着装置を画像定着装置(定着器)として搭載できる画像形成装置の一例の構成模式図である。この画像形成装置は電子写真式の複写機である。Aは複写機本体、Bは複写機本体Aに搭載されているカラー画像読み取り装置である。
カラー画像読み取り装置Bは複写すべきカラー画像原稿を色分解光電読み取りするものである。即ち、原稿台112上におかれたカラー原稿Gに対し、原稿照明用ランプ・短焦点レンズアレイ・CCDセンサーを組み込んだ読み取りユニット113がカラー原稿Gの画像面を照明しながら走査移動する。これにより、照明走査光の原稿面反射光が、短焦点レンズアレイによって結像されてCCDセンサーに入射する。CCDセンサーは受光部、転送部、出力部より構成されている。CCD受光部においてカラー画像の色分解光電読み取りがなされて光信号が電荷信号に変えられ、転送部でクロックパルスに同期して順次出力部へ転送され、出力部において電荷信号を電圧信号に変換し、増幅、低インピーダンス化して出力する。得られたアナログ信号は周知の画像処理を行なってデジタル画像信号(画像データ)に変換して複写機本体A側の制御回路部(制御手段)111に送られる。
複写機本体Aは、光導電性を有する円筒状の像担持体としてのドラム形状の電子写真感光体(以下、感光体ドラムと記す)101を有する。そして、その感光体ドラム101の外周面(表面)の周りに、帯電手段102と、像露光手段103と、カラー現像装置104と、定着装置106と、クリーニング手段107などを有する。109は記録材Pを積載収納する給送カセットである。110は搬送ローラ110a・110bと、転写ドラム110cと、搬送ベルト110dと、排出ローラ110eなどを有する搬送手段である。制御回路部111は、感光体ドラム101、帯電手段102、像露光手段103、カラー現像装置104、後述の転写手段105、定着装置106及び搬送手段110などの制御を行なうものである。
複写機本体Aに設けられた操作部(不図示)やパーソナルコンピューターなどの外部装置(不図示)から制御回路部111に画像出力信号が送られると、感光体ドラム101が矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転する。そしてその感光体ドラム101の外周面(表面)は帯電手段102によって所定の電位・極性に均一に帯電される。感光体ドラム101としては、導電性のドラム形状の支持基体を最下層とし、電荷発生層、電荷輸送層のように2層構造よりなる、機能分離タイプのものや、単層型のものが使用できる。
帯電手段102としては、ワイヤーと電界制御グリッドよりなるコロナ帯電器を用いたコロナ帯電方式を用いている。その他、感光体ドラム101に接触させた帯電ローラに直流あるいは直流と交流の重畳バイアスを印加して帯電するローラ帯電方式がある。また、磁性ローラに磁性粒子等を担持させ、これを像担持体に接触回動させて、これにバイアスを引加することにより電荷を感光体表面に直接注入することで帯電を行なう注入帯電方式などがある。
帯電後の感光体ドラム101表面を露光して潜像を形成する像露光手段103としては、回転可能な偏向ミラーを具備した走査光学系を用いている。この像露光手段103は、感光体ドラム101表面に、半導体レーザーを上記の画像データに応じて明滅させる。そして、レーザー照射パターンと同一な電荷パターンを発生させ、発生させた電荷により、前記帯電処理で帯電された帯電電荷を打ち消し、感光体ドラム101表面に所望の静電潜像パターンを形成する。走査光学系には、前記した半導体レーザーを使用したスキャナータイプのものや、LEDに集光装置であるセルフォックレンズを介して像露光を行なうもの、また、EL素子やプラズマ発光素子など、その他の光学系も使用することができる。
カラー現像装置104は、感光体ドラム101の回転中心と平行な回転軸104aにより支持されたロータリ104bを有する。
ロータリ104bには、感光体ドラム101表面の潜像にトナーを付着させて潜像を現像する現像手段として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4つの現像器104Y・104M・104C・104Bが取り外し可能に装着してある。現像器104Y・104M・104C・104B(以下、104(Y〜B)と記す)は、それぞれロータリ104bの回転によって所定の待機位置から感光体ドラム101表面と対向する現像位置まで順次移動される。そして現像器104(Y〜B)は、現像位置において感光体ドラム101表面との間に現像ニップ部を形成する。感光体ドラム101表面に形成された静電潜像パターンは、感光体ドラム101の回転に伴い現像ニップ部まで送られ、その現像ニップ部で現像器104(Y〜B)から各色のトナーによって現像される。現像器104(Y〜B)において、現像ニップ部は感光体ドラム101表面から数十μm〜数百μmの距離に設けられた現像スリーブ104Ys・104Ms・104Cs・104Bsの外周面(表面)と感光体ドラム101表面とに挟まれた領域である。現像ニップ部には、非磁性トナーを静電的に担持した磁性キャリアが、磁石を内蔵する現像スリーブ104Ys・104Ms・104Cs・104Bs(以下、104(Ys〜Bs)と記す)の回転に伴い搬送され、現像過程に供される。現像スリーブ104(Ys〜Bs)には現像バイアス電源(不図示)から数KHz/数百Vの高周波電界(現像バイアス)を印加する。これにより、磁性キャリアに担持されたトナー(トナー粒子)が現像スリーブ104(Ys〜Bs)と感光体ドラム101表面間を飛翔往復することで、静電潜像パターンに応じたトナー像が得られる(2成分現像方式)。
現像方式には、磁性トナーを磁力により搬送し、現像ニップ部で非接触で感光体ドラム101表面に飛翔現像させる磁性1成分の非接触現像方式、あるいは現像ニップ部で感光体ドラム1表面に接触させて現像処理をおこなう磁性接触現像方式も適用できる。また、非磁性トナーを現像ブレード(不図示)により規制して摩擦帯電させ、現像スリーブ104(Ys〜Bs)表面に担時して搬送し現像ニップ部において非接触でトナーを飛翔現像させる非磁性1成分の非接触現像方式も適用できる。或いは、現像ニップ部で感光体ドラム1表面に接触させ現像処理を行なう非磁性1成分の接触現像方式など、その他の現像方式も使用可能である。
一方、給送カセット109から搬送ローラ110a・110bにより1枚ずつ搬送されてくる記録紙(記録材)Pは感光体ドラム101と略同じ速度で回転される転写ドラム110cの外周面(表面)に保持される。その記録紙Pは、転写ドラム110cの回転によって感光体ドラム101表面と転写ドラム110c表面間の転写ニップ部に導入され、転写ニップ部で感光体ドラム101と転写ドラム110cとにより挟持搬送されて定着装置106へと送られる。記録紙Pが転写ニップ部で挟持搬送される過程において、転写ドラム110cの内周面側に設けられている転写手段105によって感光体ドラム101表面のトナー像を記録紙Pに転写する。このときの転写方式には電気的な力、或いは機械的な力を利用した転写方式を使用することができる。電気的な力を利用して転写を行なう方法として、コロナワイヤーによりトナーの帯電極性と逆極性の直流バイアスを印加して転写を行なうコロナ転写方式が挙げられる。この他にも、105〜1012の電気抵抗値を示す部材を表層に有するローラを当接させ、トナーと逆極性のバイアスを印加するローラ転写方式などが挙げられる。
転写ニップ部を出た記録紙Pは、定着装置106から熱と圧力を受けることによってトナー像が記録紙Pの面上に加熱定着され、排出ローラ110eによって排出トレイ114上に排出される。
トナー像転写後に感光体ドラム101は、クリーニング手段としてのクリーニング器107に設けられているブレード状のクリーニング部材107aにより感光体ドラム101表面に残っている残トナーなどが除去され、次の画像形成に供される。
(1−1)定着装置
以下の説明において、定着装置及びこの定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向をいう。長さとは長手方向の寸法である。幅とは短手方向の寸法をいう。
図1は本実施例1に係る定着装置106の構成模式図であって、外部加熱装置30の加熱ローラ31で加熱装置10の定着ローラ11を加熱するときの図である。図2は外部加熱装置30の説明図であって、加熱ローラ31と支持部材32の関係を表わす図である。
本実施例に示す定着装置106は、ローラ方式の加熱装置10と、ローラ方式の加圧装置20と、外部加熱装置30と、を有する。加熱装置10は、定着ローラ(定着回転体)11と、加圧ローラ(加圧回転体)12と、ハロゲンヒータ(発熱部材)13・14と、を有する。加圧装置20は、定着ローラ(第2定着回転体)21と、加圧ローラ(加圧回転体)22と、を有する。外部加熱装置30は、加熱ローラ(加熱部材)31と、支持部材(移動部材)32と、ハロゲンヒータ(第2発熱部材)33と、を有する。加圧装置20は、記録材搬送方向において加熱装置10の下流側に設けられている。加熱装置10の定着ローラ11と加圧ローラ12とハロゲンヒータ13・14、加圧装置20の定着ローラ21と加圧ローラ22、及び外部加熱装置30の加熱ローラ31とハロゲンヒータ33は、何れも長手方向に長い部材である。
(1−1−1)加熱装置(第1ニップ部形成ユニット)の構成
定着ローラ11は、長手方向に細長い中空の筒体に形成された芯金11aを有し、その芯金11aの両端部以外の外周面上に弾性層11bをローラ状に設け、その弾性層11bの外周面上に離型層11cを設けたものである。離型層11cの材料はFRP又はPFA、PTFE等のフッ素樹脂である。離型層11cは、弾性層11bの外周面上にフッ素樹脂をコート若しくはチューブを用いて形成してある。弾性層11bは、トナー画像の厚み変動(数〜数十μm)に追従可能であり、また定着ローラ11と加圧ローラ12との間に第1ニップ部としてのニップ部(定着ニップ部)N1を確保できるようにするためのものである。そのため、弾性層11bの材料として、弾性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴムを用いている。弾性層11bは弾性が小さいと、未定着トナー像の凹部の定着不足や、トナーの潰れによる粒状性の悪化といった画質の低下をもたらすので、所定の大きさの弾性を要する。芯金11aはアルミニウム等の材料を用いて中空の筒体に形成され、その芯金11aの両端部が定着装置116の装置フレーム(不図示)に軸受を介して回転自在に保持されている。その芯金11aの中空内には、芯金11aの長手方向に細長いハロゲンヒータ(以下、ヒータと記す)13が内蔵されている。ヒータ13の両端部は装置フレームにより保持されている。定着ローラ11には、そのヒータ13によって、記録材Pが担持する未定着トナー像taを溶融変形させて記録材P上に仮定着するために必要な熱量が供給される。
加圧ローラ12は、定着ローラ11と同様、長手方向に細長い中空の筒体に形成された芯金12aを有し、その芯金12aの両端部以外の外周面上に弾性層12bをローラ状に設け、その弾性層12bの外周面上に離型層12cを設けたものである。芯金12a、弾性層12b及び離型層12cの材料は、それぞれ、定着ローラ11の芯金11a、弾性層11b及び離型層11cの材料と同じである。その加圧ローラ12は、定着ローラ11の下方に定着ローラ11と平行に配置され、芯金12aの両端部が装置フレームに軸受を介して回転可能にかつ上下移動可能に保持されている。そして加圧ローラ12は、芯金12aの両端部と装置フレームとの間に設けられた加圧バネ(加圧部材)により定着ローラ11側に加圧されている。その加圧によって加圧ローラ12の外周面(表面)と定着ローラ11の外周面(表面)が接触し、加圧ローラ12の弾性層12bと定着ローラ11の弾性層11bがそれぞれ弾性変形する。これによって、加圧ローラ12表面と定着ローラ11表面との間に、記録材Pが担持する未定着トナー画像taに対して加熱を行なうためのニップ部(加熱ニップ部(第1ニップ部))N1を形成している。芯金12aの中空内には、発熱部材として芯金12aの長手方向に細長いハロゲンヒータ(以下、ヒータと記す)14が内蔵されている。ヒータ14の両端部は装置フレームにより保持されている。加圧ローラ12には、そのヒータ14によって、定着ローラ11内のヒータ13とともに、記録材Pが担持する未定着トナー像taを記録材P上に仮定着するために必要な熱量が供給される。
本実施例では、定着ローラ11、及び加圧ローラ12として、ローラ直径60mm、ローラ長さ330mmのローラを用いている。そして弾性層11b・12bにはシリコーンゴム2.5mm厚を用い、離型層11c・12cにはPFAチューブ50μm厚を用いている。そしてニップ部N1の幅を10mm、総加圧力を1176N(120kgf)とした。
定着ローラ11は芯金11aの端部に設けられた駆動ギア(不図示)がギア列(不図示)を介して駆動源としての定着モータM1(図3)によって回転されることにより矢印方向に回転される。その定着ローラ11の回転はニップ部N1を介して加圧ローラ12表面に伝達され、これにより加圧ローラ12は定着ローラ11の回転に追従して矢印方向に回転する。
(1−1−2)加圧装置(第2ニップ部形成ユニット)の構成
定着ローラ21は、長手方向に細長い中空の丸軸に形成された芯金21aを有し、その芯金21aの両端部以外の外周面上に弾性層21bをローラ状に設け、その弾性層21bの外周面上に離型層21cを設けたものである。離型層21cの材料はFRP又はPFA、PTFE等のフッ素樹脂である。離型層21cは、弾性層21bの外周面上にフッ素樹脂をコート若しくはチューブを用いて形成してある。弾性層21bは、トナー画像の厚み変動(数〜数十μm)に追従可能であり、また定着ローラ21と加圧ローラ22との間に第2ニップ部としてのニップ部(加圧ニップ部(第2ニップ部))N2を確保できるようにするためのものである。そのため、弾性層21bの材料として、弾性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴムを用いている。芯金21aは、芯金21aの両端部が装置フレームに軸受を介して回転自在に保持されている。
加圧ローラ22は、定着ローラ21と同様、長手方向に細長い中空の筒体に形成された芯金22aを有し、その芯金22aの両端部以外の外周面上に弾性層22bをローラ状に設け、その弾性層22bの外周面上に離型層22cを設けたものである。芯金22aと弾性層22bと離型層22cの材料は、それぞれ、定着ローラ21で用いた材料と同じである。その加圧ローラ22は、定着ローラ21の下方に定着ローラ21と平行に配置され、芯金22aの両端部を装置フレームに軸受を介して回転可能にかつ上下移動可能に保持させている。そして加圧ローラ22は、芯金22aの両端部と装置フレームとの間に設けられた加圧バネ(加圧部材)により定着ローラ21側に加圧されている。その加圧によって加圧ローラ22の外周面(表面)と定着ローラ21の外周面(表面)が接触し、加圧ローラ22の弾性層22bと定着ローラ21の弾性層21bがそれぞれ弾性変形する。これによって、加圧ローラ22表面と定着ローラ21表面との間に、ニップ部N2を形成している。加圧ローラ22には、加圧バネによって、上記の加熱装置10で加熱した未定着トナー像tbに対して加圧を行ない、その未定着トナー画像tbの表面に光沢を付与するために必要な加圧力が与えられている。
本実施例1では、定着ローラ21、及び加圧ローラ22として、ローラ直径40mm、ローラ長さ330mmのローラを用いている。そして弾性層21b・22bにはシリコーンゴム2.5mm厚を用い、離型層21c・22cにはPFAチューブ50μm厚を用いている。そしてニップN2の幅を8mm、総加圧力を1176N(120kgf)とした。
定着ローラ21は芯金21aの端部に設けられた駆動ギア(不図示)がギア列(不図示)を介して上記定着モータM1によって回転されることにより矢印方向に回転駆動される。その定着ローラ21の回転はニップ部N2を介して加圧ローラ22表面に伝達され、これにより加圧ローラ22は定着ローラ21の回転に追従して矢印方向に回転する。
(1−1−3)外部加熱装置(外部加熱手段)の構成
加熱ローラ31は、長手方向に細長い中空の筒体に形成された芯金31aを有し、その芯金31aの両端部以外の外周面上に離型層31cをローラ状に設けたものである。離型層31cの材料はFRP又はPFA、PTFE等のフッ素樹脂である。離型層31cは、芯金31aの外周面上にフッ素樹脂をコート若しくはチューブを用いて形成してある。この加熱ローラ31は、加熱装置10の定着ローラ11および、加圧装置20の定着ローラ21と平行に配置されている。芯金31aはアルミニウム等の材料を用いて中空の筒体に形成されている。そしてその芯金31aの中空内には、発熱部材として芯金31aの長手方向に細長いハロゲンヒータ(以下、ヒータと記す)33が内蔵されている。そのヒータ33の両端部は芯金31aの両端部に設けられた芯金側板31a1に保持されている。
支持部材32は、加熱ローラ31の径方向に長い板状に形成してある。この支持部材32は、加熱ローラ31の両端部と対向するように対をなして配設されている。そして各支持部材32の一端が装置フレームに回転自在に保持されている回転軸33の端部にそれぞれ固定されている。各支持部材32は、加熱ローラ31の径方向に長い長孔32aを有する。そしてその長孔32aで加熱ローラ31の芯金側板31a1に設けられている回転中心軸31dを加熱ローラ31の径方向に移動自在に支持している。また各支持部材32は、回転軸33と長孔32aとの間にカム32bを有する。各支持部材32の有するカム32bは装置フレームに回転自在に保持されているカム軸32b1に固定されている。また各支持部材32は、加熱ローラ31の径方向に移動可能な一対の加圧板32c・32cを有する。そして一対の加圧板32c・32c間に設けられている加圧バネ34の加圧力によって、一方の加圧板32cをカム32bの小径部の外周面に、他方の加圧板32cを回転中心軸31dの外周面に、それぞれ加圧状態に接触させている。
回転軸33の両端部のうち一方の端部には駆動ギア(不図示)を介して第2駆動源としての外部加熱モータM2(図3)が結合されている。その外部加熱モータM2を温度制御部40によって駆動し回転軸33を所定の方向へ一定角度回転させることにより、各支持部材32は第1の位置、又は第2の位置に変位する。ここで、第1の位置とは加熱ローラ31によって加圧装置20の定着ローラ21に熱を供給するための位置である。第2の位置とは加熱ローラ31によって加熱装置10の定着ローラ11に熱を供給するための位置である。
本実施例1では、加熱ローラ31として、ローラ直径20mm、ローラ長さ330mm、離型層31cにはPFAチューブ50μm厚のローラを用いた。
(1−2−1)加熱装置の温度制御(温調)
図3は定着装置106の加熱装置10と加圧装置20と外部加熱装置30と温度制御部40の関係を表わすブロック図である。
40は制御回路部11の温度制御部である。温度制御部40はRAMやROMなどのメモリとCPUからなる。メモリには、加熱装置10及び加圧装置20の温度制御に必要な温調テーブルや各種プログラムが記憶されているとともに、外部加熱装置30の加熱ローラ31の動作に必要な各種プログラムが記憶されている。
加熱装置10のヒータ13・14は電力供給制御部E1・E2の電源部(不図示)から電力が供給されることによって発熱する。ヒータ13の発熱により定着ローラ11の芯金11a、弾性層11b、離型層11cが加熱され、これによって定着ローラ11表面が昇温する。またヒータ14の発熱により加圧ローラ12の芯金12a、弾性層12b、離型層12cが加熱され、これによって加圧ローラ12表面が昇温する。定着ローラ11の温度は、定着ローラ11表面と接触するように配設した温度検知手段としてのサーミスタ15a(図1)によって検知される。また加圧ローラ12の温度は、加圧ローラ12表面と接触するように配設した温度検知手段としてのサーミスタ15b(図1)によって検知される。温度制御部40は、サーミスタ15a・15bの出力信号(温度情報)を取り込み、その出力信号に基づいて電力供給制御部E1・E2をON/OFF制御することにより、定着ローラ11と加圧ローラ12の表面温度を所定の温度(目標温度)に維持する。ここで、加熱装置10に関し、所定の温度とは記録材Pが担持する未定着トナー像taに対して加熱制御を行ない、未定着トナー像ta中のトナーを軟化、溶融させるための温度をいう。本実施例1では、定着ローラ11と加圧ローラ12の表面温度を160℃に維持している。
なお、本実施例では、サーミスタ15a・15bを定着ローラ11表面や加圧ローラ12表面に接触させているが、サーミスタ15a・15bはこれに限らず定着ローラ11表面や加圧ローラ12表面と非接触でもよい。
(1−2−2)加圧装置の温度制御(温調)
図4は定着装置106の構成模式図であって、外部加熱装置30の加熱ローラ31で加圧装置20の定着ローラ21を加熱するときの図である。図5は外部加熱装置30の加熱ローラ33を加圧装置20の定着ローラ21に接触させるときの動作説明図である。
加圧装置20は上記ヒータのような熱源を有していないが、ニップ部N1を通過した記録材Pをニップ部N2に連続して通紙(導入)すると、定着ローラ21と加圧ローラ22の表面温度は一定の温度で平衡状態になる。具体的には、ニップ部N1通過後の記録材Pが100℃〜120℃程度の温度でニップ部N2に連続して通紙されると、定着ローラ21の表面温度を60℃〜100℃程度に昇温させることができる。そのため、ニップ部N2に記録材Pを連続通紙する場合には、ニップ部N2に連続通紙される記録材Pの余熱を定着ローラ21と加圧ローラ22の温度調整に利用することができる。
ところが、上記ニップ部N1・N2で記録材Pを連続して挟持搬送する場合において、ニップ部N1・N2で記録材Pを連続して挟持搬送する前、即ち「立ち上げ時」には、外部加熱装置30からの熱供給により温調(温度調整)を行なう必要がある。ここで、「立ち上げ時」とは画像形成装置の主電源(メインスイッチ)をONにしてから1枚目の印字(画像形成)が開始されるまでの「主電源を投入して装置を立ち上げる時」を指す。或いは、印字JOBから印字JOBまでの間に画像形成装置が待機している状態から、新たに印字JOBが投入されて印字が開始されるまでの「待機状態から立ち上げる時」を指す。この「立ち上げ時」には、加圧装置20が連続通紙時の熱平衡状態に達していないため、印字開始直後と連続通紙後で画像の光沢感が変わってしまい、安定した画像品質が得られない。
そこで、外部加熱装置30を、「立ち上げ時」の加圧装置20の保温に利用するようにした。これにより、加圧装置20に専用の熱源を設けなくとも印字開始直後や待機からの復帰直後の加圧装置20の温調が可能となる。
印字開始直後や待機からの復帰直後の加圧装置20の温調は、加熱ローラ31を定着ローラ21に接触させ、かつヒータ33に温度制御部40の電力供給制御部E3の電源部(不図示)から電力が供給され、ヒータ33が発熱することにより行なわれる。加熱ローラ31を定着ローラ21に接触させる場合、第3駆動源としてのカムモータM3(図3)を駆動し、カム軸32b1をカム32bの大径部の頂点部が一方の加圧板32cと接触するように回転させる(図4)。これにより他方の加圧板32cで加熱ローラ31の回転中心軸31dを長孔32aに沿って定着ローラ21側に移動させ、加熱ローラ31の外周面(表面)を定着ローラ21表面に加圧状態に接触させる。これにより外部加熱ローラ31の芯金31a、離型層31cが加熱され、定着ローラ21表面が昇温する。
また上記温調と同時に定着モータにより定着ローラ21が回転され、定着ローラ21の回転に追従して加圧ローラ22が回転する。これにより加熱ローラ31によって加熱された定着ローラ21表面の熱がニップ部N2を介して加圧ローラ22表面に伝達される。その定着ローラ21の温度は、定着ローラ21表面と接触させるように配設した温度検知手段としてのサーミスタ25により検知され、そのサーミスタ25の出力信号(温度情報)を温度制御部40が取り込む。温度制御部40は、サーミスタ25からの信号に基づいて、カムモータの回転を制御し加熱ローラ31を定着ローラ21表面から離間させることにより、定着ローラ21の表面温度を所定温度(第2目標温度)に維持する。本実施例では、定着ローラ21の表面温度を約70℃に維持するようにしている。その定着ローラ21と加圧ローラ22の表面温度は、印字が開始され記録材Pの通紙が行なわれ連続通紙に移行した際には、外部からの熱供給を受けなくとも記録材Pの余熱により昇温され、約70℃よりも低い所定の温度で平衡状態に達する。
本実施例1ではサーミスタ25を定着ローラ21表面に接触させているが、サーミスタ25はこれに限らず定着ローラ21表面と非接触でもよい。
(1−2−3)外部加熱装置の熱供給動作
図6は従来例の定着装置の加熱装置及び加圧装置のそれぞれの定着ローラ表面温度の挙動を表わす説明図である。図7は本実施例1の定着装置106における外部加熱装置30の熱供給の切り換えと、加熱装置10及び加圧装置20の各ローラ表面温度との関係を表わす説明図である。図8は本実施例1の定着装置106の制御シーケンスの一例のフローチャート図である。図9は外部加熱装置30の動作説明図である。図9の(a)は加熱ローラ33が第1の位置で定着ローラ21から離間している状態を表わす図、(b)は加熱ローラ33が第2の位置に変位した状態を表わす図、(c)は加熱ローラ33が定着ローラ11と接触している状態を表わす図である。図10は本実施例1の定着装置106の加圧装置20の定着ローラ表面温度の挙動を表わす説明図である。図11は本実施例1の定着装置106の加熱装置10の定着ローラ表面温度の挙動を表わす説明図である。図12は本実施例1の定着装置106によるトナー像の光沢度と従来例の定着装置によるトナー像の光沢度の比較図である。
従来例の定着装置は外部加熱装置を用いていない。そのため加熱装置のニップ部と加圧装置のニップ部で記録材を連続して挟持搬送する場合、図6に示すように、印字が開始され上記各ニップ部への記録材の通紙が始まると、加圧装置の定着ローラ表面温度は所定の温度(約155℃)で平衡状態に達する。またそのとき加熱装置30の定着ローラ31表面温度は通紙枚数に応じて低下する。その結果、印字開始直後と連続通紙時とでは画像光沢に差が生じてしまう。
本実施例1の定着装置106では、温度制御部40は、加熱装置10のニップ部N1と加圧装置20のニップ部N2で記録材Pを連続して挟持搬送する前に、図8のS2からS5までの制御シーケンスを実行する。
S1では、画像形成装置に設けられているメインスイッチがオン(ON)されると同時にヒータ13・14・33を点灯(オン)する。またメインスイッチがオンされると同時に定着モータM1を駆動し定着ローラ11・21を回転させる。したがって加熱装置10と加圧装置20はともに定着ローラ11・21と加圧ローラ12・22が回転されながら定着ローラ11・21と加圧ローラ12・22の温調が行なわれる。
S2では、上述のようにカム軸32b1をカムモータM3により回転させて加熱ローラ31を定着ローラ21表面に接触させ、加熱ローラ31により定着ローラ21表面を加熱する。
S3では、サーミスタ25の出力信号を所定のタイミングで逐次取り込み、定着ローラ21の表面温度が所定の温度(第2目標温度)を超えたか否かを判断する。定着ローラ21の表面温度が所定の温度を超えた場合(YES)、カムモータM3を駆動しカム軸32b1を所定の方向へ回転させて定着ローラ21表面から加熱ローラ31を離間させる(図9の(a)参照)。これにより定着ローラ21と加熱ローラ31の表面温度が所定の温度に温調される(図7の「加圧装置温調」参照)。
S4では、上述のように外部加熱モータM2を駆動し回転軸33を所定の方向へ所定角度回転させて各支持部材32を第2の位置に変位させる(図9の(b)参照)。そしてカムモータM3を駆動しカム軸32b1を所定の方向へ回転させて加熱ローラ31表面を定着ローラ11表面に接触させ、加熱ローラ31により定着ローラ11表面を加熱する。
本実施例1では、上記S3とS4において、加圧装置20の定着ローラ21の表面温度は70℃を第2目標温度としている。そして外部加熱切り換えから印字スタートまでの時間(図7参照)を考慮して、加圧装置20の定着ローラ21の表面温度が75℃になった時点で、加熱ローラ31を第1の位置から第2の位置に変位させている。
S5では、サーミスタ15a・15bの出力信号を所定のタイミングで逐次取り込み、定着ローラ11と加圧ローラ12の表面温度が所定の温度(第1目標温度)を超えたか否かを判断する。定着ローラ11と加圧ローラ12の表面温度が所定の温度を超えた場合(YES)、その所定の温度を維持するようにヒータ13・14への通電が制御される。これにより定着ローラ11と加圧ローラ12の表面温度が所定の温度に温調される(図7の「加熱装置温調」参照)。その温調状態でニップ部N1・N2に記録材Pが連続して導入される(図7の「印字スタート」、「連続通紙」参照)。
S6では、記録材Pのニップ部N1・N2への連続通紙が終了したか否かを判断し、終了した場合(YES)にはS7に進む。
S7では、カムモータM3を駆動しカム軸32b1を所定の方向へ回転させて定着ローラ21表面から加熱ローラ31を離間させる。またヒータ13・14・33を消灯(オフ)するとともに、定着モータM1の駆動を停止する。
本実施例1の定着装置106において、加圧装置20の定着ローラ21表面温度は、図10に示すように、印字開始直後から所定の温度に維持されている。また定着ローラ21表面温度は、印字が開始され記録材Pが連続通紙に入った後も、その記録材Pの余熱により熱平衡で安定している。一方、加熱装置10の定着ローラ11表面温度は、図11に示すように、印字開始直後から所定の温度に維持されている。また定着ローラ11表面温度は、印字が開始され記録材Pが連続通紙に入った後、加熱ローラ31からの熱供給を受け安定している様子がわかる。
従って、本実施例1の定着装置106は、図12に示すように、従来例の定着装置に比べ、印字開始直後から安定した光沢性を得ることが可能となる。
本実施例1の定着装置106では、加熱ローラ31による定着ローラ21・11への熱供給(加熱)の切り換えをサーミスタ25の出力温度を基に行なっているが、加熱ローラ31による定着ローラ21・11への熱供給(加熱)の切り換えはこれに限られない。一例として、加熱ローラ31による定着ローラ21・11への熱供給の切り換えは、定着装置106周囲の雰囲気温度(環境温度)や記録材の出力枚数を基に、予めRAMやROMなどに記憶されたシーケンスにより制御することも可能である。
(1−2−4)定着装置の画像定着動作
本実施例1の定着装置106は、加圧装置20及び加熱装置10が温調された状態において、記録材Pはニップ部N1・N2の順に導入される。その記録材Pはニップ部N1で定着ローラ11表面と加圧ローラ12表面とにより挟持搬送される。そしてその搬送過程で記録材Pと未定着トナー像taが定着ローラ11表面と加圧ローラ12表面により加熱される。これによって、記録材Pが担持する未定着トナー像taは、軟化、溶融され、外力によって変形し得る状態の未定着トナー像となる。以下、その未定着トナー像とニップ部N1に導入される前の未定着トナー像taとを区別するため、未定着トナー像を仮定着トナー像tbと記す。ニップ部N1を出た記録材Pはニップ部N2で定着ローラ21表面と加圧ローラ22表面とにより挟持搬送される。そして仮定着トナー像tbに対して定着ローラ21表面と加圧ローラ22表面とにより加圧を行ない仮定着トナー像tbの表面に光沢を付与する。これにより仮定着トナー像tbは、記録材Pに定着され、その仮定着トナー像tbの表面に光沢を有する定着トナー像tcとなる。ニップ部N2を出た記録材Pは定着装置106外部に排出される。
本実施例1の定着装置106では、加熱装置10と加圧装置20との間隔を110mm、定着速度(記録材搬送速度(プロセススピード))を220mm/secとして画像出力を行なった。
以上の構成の定着装置106に対し、未定着トナー像taを担持している記録材Pをニップ部N1・N2に導入して未定着トナー像taの加熱定着を行なった。記録材Pには60°グロス40のコート紙(A4、170g/cm2)を使用した。
未定着トナー像taの形成にはワックスを内包したシアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、ブラックトナーを使用し、各色0.55mg/cm2の載り量で階調画像を出力した。今回使用したトナーのガラス転移点は85℃、融点は125℃である。なお、光沢度評価は「VG 2000」(日本電色工業株式会社製)で60°グロスの測定を行なった。
また、未定着トナー像taを形成するトナーには特に制限はなく、一般的な構成のトナーを使用する。ワックスなどの離型剤が内添されたトナーの場合は上記のような構成の加熱装置を用いるが、ワックスなどの離型剤が内添されていないトナーを使用する場合にはシリコーンオイル等の離型剤を定着ローラ11表面に塗布したほうが好ましい。この場合、定着ローラ11として、フッ素樹脂等の離型層を設けずにシリコーンオイル等の離型剤が含浸し易い表層を有するものを使用するのが好ましい。
また、加熱装置10は、未定着トナー像taを軟化、溶融させて記録材Pに仮定着させることを目的とするため、加熱装置10として、オーブン、フラッシュ定着といった非接触の加熱手段を用いてもよい。
トナー温度は、記録材Pと共に50μmの熱電対を定着装置116に通し、随時温度をモニターし、記録材Pの通過時間に対する温度をモニターすることにより得た。記録材Pに比べると、トナーの熱容量は小さいため、トナーと記録材Pは熱平衡に達し、トナーの温度は記録材Pの温度と同等と仮定した。
本実施例1の定着装置106の加熱定着によるトナー温度について説明する。
記録材P上のトナーは、加熱装置10のニップ部N1中で加熱され、120℃まで昇温される。そして記録材Pが加熱装置10によりニップ部N1から排出される。その記録材Pがニップ部N1を排出されてから加圧装置20のニップ部N2に導入されるまでの記録材Pの搬送中に若干の自然放熱を伴なう。そのため記録材P上のトナーは加圧装置20のニップ部N2へ110℃で進入する。加圧装置20の定着ローラ21表面温度は70℃で温調されているため、トナーの熱が定着ローラ21に奪われ、加圧ローラ22からはトナー温度90℃で排紙される。本実施例1では、加圧装置20の定着ローラ21表面の温調を70℃とすることで、ニップ部N2内でのトナー温度を110℃〜90℃に調節でき、所望の効果を得ることができた。但しこのときの適正トナー温度は、トナーの溶融特性によって変化するため、使用するトナーの溶融特性に応じ、ニップ部N2内のトナー温度は調節可能である。そのために、加熱装置10からの記録材Pの排紙温度(記録材Pを排出するときの温度)、加熱装置10から加圧装置20までに自然放熱される熱量、加圧装置20の設定温度など、定着装置116周辺の断熱構成やエアーフローによって適宜調整可能である。
以上説明したように、本実施例1の定着装置106によれば、加熱装置10のニップ部N1と加圧装置20のニップ部N2で記録材Pを連続して挟持搬送する前に、加熱ローラ31を定着ローラ21に接触させて定着ローラ21への熱供給を行なう。そして定着ローラ21が所定の温度に達したら、加熱ローラ31を定着ローラ11に接触させて定着ローラ11への熱供給に切り換える。これにより、印字開始直後の加圧装置20の温調を可能とし、且つ、連続通紙時の加熱装置の温度低下を抑えることができ、印字開始直後から連続通紙時まで一定の「光沢性」を得ることが可能となる。
[実施例2]
定着装置の他の例を説明する。
図13は本実施例2に係る定着装置106の構成模式図であって、外部加熱装置70のコイルユニット71で加熱装置50のローラ51cを加熱するときの図である。
(2−1)定着装置
本実施例2に示す定着装置106は、ベルト方式の加熱装置50と、ローラ方式の加圧装置60と、外部加熱装置70と、を有する。加熱装置50は、定着ベルト(定着回転体)51aと、加圧ベルト(加圧回転体)52aと、定着ベルト51aを懸架しているローラ51b・51cと、加圧ベルト52aを懸架しているローラ52b・52cと、ハロゲンランプ53と、を有する。加圧装置60は、定着ローラ(第2定着回転体)61と、加圧ローラ(加圧回転体)62と、を有する。加圧装置20は、記録材搬送方向において加熱装置10の下流側に設けられている。外部加熱装置70は、電磁誘導方式のコイルユニット71と、磁束遮蔽部材である磁束遮蔽板(移動部材)72と、を有する。コイルユニット71は、コイル71aから発生する磁束を定着ベルト51aと定着ローラ61に作用させるための部材であって、定着ベルト51aと定着ローラ61との間に設けられている。磁束遮蔽板72は、コイルユニット71の発生磁束をローラ51c及び定着ローラ61に作用させたり、定着ローラ61に作用する発生磁束を遮断したりするための部材であって、コイルユニット70と定着ローラ61との間に設けられている。加熱装置10の定着ベルト51a、加圧ベルト52a、ローラ51b・51c・52b・52c及びハロゲンランプ53、加圧装置60の定着ローラ61及び加圧ローラ62、コイルユニット71及び磁束遮蔽板72は、何れも長手方向に長い部材である。
(2−1−1)加熱装置(第1ニップ部形成ユニット)の構成
加熱装置50の定着ベルト51a及び加圧ベルト52aには、いずれも同じ層構成のベルトを使用している。以下そのベルト構成について説明する。
定着ベルト51a及び加圧ベルト52aは、厚さ50μmのニッケル製のエンドレスベルトを基層として有し、その基層の外周面上に弾性層(不図示)を設け、その弾性層の外周面上に離型層(不図示)を設けたものである。離型層の材料はFRP又はPFA、PTFE等のフッ素樹脂である。離型層は、弾性層の外周面上にフッ素樹脂をコート若しくはチューブを用いて形成してある。弾性層は、定着ベルト51aが未定着トナー像の厚み変動(数〜数十μm)に追従可能であり、弾性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴムを用いている。弾性層は弾性が小さいと、未定着トナー像の凹部の未定着やトナーの潰れによる粒状性の悪化といった画質の低下をもたらすので、所定の大きさの弾性を要する。
定着ベルト51aは、51bと51cの2本のローラに掛け渡されている。以下それぞれのローラの構成について説明する。
定着ベルト51aの記録材搬送方向上流側で懸架しているローラ51bは、アルミニウムなどの熱伝導性の良い材料を用いて長手方向に細長い中空の筒体に形成されている。このローラ51bの両端部は定着装置601の装置フレームに軸受を介して回転自在に保持されている。そのローラ51bの中空内には、ローラ51bの長手方向に細長いハロゲンヒータ(以下、ヒータと記す)53が内蔵されている。ヒータ53の両端部は装置フレームにより保持されている。定着ベルト51aには、そのヒータ53によって、記録材Pが担持する未定着トナー像taを溶融変形させて記録材P上に仮定着するために必要な熱量が供給される。
定着ベルト51aの記録材搬送方向下流側で懸架しているローラ(導電性ローラ)51cは、コイルユニット71の発生磁束の作用により効率良く発熱を行なうためにフェライトなどの材料を用いて長手方向に細長い中空の筒体に形成したものである。このローラ51cの両端部は装置フレームに軸受を介して回転自在に保持されている。
加圧ベルト52aは、52bと52cの2本のローラに掛け渡されている。ローラ52bと52cは同一の層構成となっている。このローラ52bと52cは、それぞれアルミニウムなどを用いて長手方向に細長い中空の筒体に形成されている。そしてそのローラ52bと52cの外周面(表面)に断熱のためにシリコーンのコーティングを施している。ローラ51b・52bは長手方向において平行に配置されている。そしてそのローラ51b・52bの下方にローラ51c・52cがローラ51b・52bと対向させて配置してある。そして各ローラ51c・52cの両端部が装置フレームに軸受を介して回転可能にかつ上下移動可能に保持されている。加圧ベルト52a側のローラ52b・52cは、ローラ52b・52cの両端部と装置フレームとの間に設けられた加圧バネ(加圧部材)により定着ベルト51a側に加圧されている。その加圧によって加圧ベルト52aの外周面(表面)が定着ベルト51aの外周面(表面)と接触し、定着ベルト51aと加圧ベルト52aの弾性層がそれぞれ弾性変形する。これによって定着ベルト51a表面と加圧ベルト52a表面との間に、記録材Pが担持する未定着トナー画像taに対して加熱を行なうためのニップ部(加熱ニップ部(第1ニップ部))N1を形成している。
本実施例2では、ローラ51c・52cの直径を50mm、ローラ51b・52bの直径を20mm、ローラ長さ330mmとしている。定着ベルト51a及び加圧ベルト52aの周長は280mmとし、ベルト長さは330mmとした。定着ベルト51a及び加圧ベルト52aにおいて、弾性層にはシリコーンゴム2.5mm厚を用い、離型層にはPFAチューブ50μm厚を用いた。
ローラ51cは端部に設けられた駆動ギア(不図示)がギア列(不図示)を介して駆動源としての定着モータM1(図14)によって回転されることにより矢印方向に回転される。ローラ51cの回転は定着ベルト51a及び、定着ベルト51aを介してローラ51bに伝達される。そして定着ベルト51aの回転はニップ部N1を介して加圧ベルト51bに伝達される。そしてその加圧ベルト51bの回転はローラ52c・52bに伝達される。これにより加圧ベルト52aは定着ベルト52aの回転に追従して矢印方向に回転する。
(2−1−2)加圧装置(第2ニップ部形成ユニット)の構成
加圧装置60において、定着ローラ(導電性ローラ)61は、コイルユニット71の発生磁束の作用により効率良く発熱を行なうためにフェライトなどの材料を用いて長手方向に細長い中空の丸軸に形成された芯金61aを有する。そしてその芯金61aの両端部以外の外周面上に弾性層61bを設け、その弾性層61bの外周面上に離型層61cを設けている。離型層61cの材料はFRP又はPFA、PTFE等のフッ素樹脂であり、弾性層61bの外周面上にフッ素樹脂をコート若しくはチューブを用いて形成してある。弾性層61bの材料としては、弾性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴムを用いる。芯金61aは両端部が装置フレームに軸受を介して回転自在に保持されている。
加圧ローラ62は、長手方向に細長い中空の丸軸に形成されたアルミニウム製の芯金62aを有し、その芯金62aの両端部以外の外周面上に弾性層62bを設け、その弾性層62bの外周面上に離型層62cを設けたものである。弾性層62bと離型層62cの材料は、それぞれ、定着ローラ61で用いた材料と同じある。その加圧ローラ62は下方に定着ローラ61と平行に配置され、芯金62aの両端部が装置フレームに軸受を介して回転可能にかつ上下移動可能に保持されている。そして加圧ローラ62は、芯金62aの両端部と装置フレームとの間に設けられた加圧バネ(加圧部材)により定着ローラ61側に加圧されている。その加圧によって加圧ローラ62の外周面(表面)と定着ローラ21の外周面(表面)が接触し、加圧ローラ62の弾性層62bと定着ローラ61の弾性層61bがそれぞれ弾性変形する。これによって、加圧ローラ62表面と定着ローラ61表面との間に、ニップ部N2を形成している。加圧ローラ62には、加圧バネによって、上記の加熱装置50で加熱した未定着トナー像tbに対して加圧を行ない、その未定着トナー像tbの表面に光沢を付与するために必要な加圧力が与えられている。
本実施例2では、定着ローラ61、及び加圧ローラ62として、ローラ直径40mm、ローラ長さ330mmのローラを用いている。そして弾性層61b・62bにはシリコーンゴム2.5mm厚を用い、離型層61c・62cにはPFAチューブ50μm厚を用いている。そしてニップN2の幅を8mm、総加圧力を1176N(120kgf)とした。
定着ローラ61は芯金61aの端部に設けられた駆動ギア(不図示)がギア列(不図示)を介して上記定着モータM1によって回転されることにより矢印方向に回転駆動される。その定着ローラ61の回転はニップ部N2を介して加圧ローラ62表面に伝達され、これにより加圧ローラ62は定着ローラ61の回転に追従して矢印方向に回転する。
(2−1−3)コイルユニットの構成
コイルユニット71は、磁性芯金(磁性体コア)71aと誘導コイル71bとを電気絶縁性の樹脂によって一体にモールドしたものである。このコイルユニット71は、加熱装置51のローラ51cに巻き掛けた定着ベルト51cの表面形状に沿うように横断面円弧状に形成され、そのローラ51cの外周面において定着ベルト51cの内周面と接触している領域と対向するように配設されている。このコイルユニット71はその配設位置で両端部が装置フレームに保持されている。このコイルユニット長さを330mmとした。
(2−1−4)磁束遮蔽板の構成
磁束遮蔽板72は、加熱装置51のローラ51cに巻き掛けた定着ベルト51cの表面形状に沿うように横断面円弧状に形成され、そのローラ51cの外周面において定着ベルト51cの内周面と接触している領域と対向するように配設されている。この磁束遮蔽板80はその配設位置でコイルユニット71の外面に沿って移動可能に両端部が装置フレームに保持されている。装置フレームに保持されている磁束遮蔽板72の両端部のうち一方の端部には駆動ギア(不図示)を介して外部加熱モータM2(図14)が結合されている。その外部加熱モータM2を温度制御部41(図14)によって駆動し磁束遮蔽板72を所定の方向へ一定角度回転させることにより、磁束遮蔽板72は第1の位置、又は第2の位置に変位する。ここで、第1の位置とはコイルユニット71の発生磁束を加熱装置50のローラ51cのみに作用させるように加圧装置60の定着ローラ61に作用する発生磁束を遮断する位置である。第2の位置とはコイルユニット71の発生磁束を加熱装置50のローラ51cと加圧装置60の定着ローラ61に作用させる位置である。磁束遮蔽板72の材料としては、導電率が良く、比透磁率が低い材料が良く、純度の高い銅などを使用することができる。そして磁束遮蔽板長さを330mmとした。
(2−1−5)加熱装置の温度制御(温調)
図14は定着装置106の加熱装置50と加圧装置60と外部加熱装置70と温度制御部41の関係を表わすブロック図である。
41は制御回路部11の温度制御部である。温度制御部41はRAMやROMなどのメモリとCPUからなる。メモリには、加熱装置50及び加圧装置60の温度制御に必要な温調テーブルや各種プログラムが記憶されているとともに、磁束遮蔽板70の動作に必要な各種プログラムが記憶されている。
加熱装置50のヒータ53は電力供給制御部E1の電源部(不図示)から電力が供給されることによって発熱する。ヒータ53の発熱によりローラ51bが加熱され、これによって定着ベルト51aが昇温する。定着ベルト51aの温度は、定着ベルト51a表面と接触するように配設した温度検知手段としてのサーミスタ54(図13)によって検知される。温度制御部41は、サーミスタ54の出力信号(温度情報)を取り込み、その出力信号に基づいて電力供給制御部E1をON/OFF制御することにより、定着ベルト51aの表面温度を所定の温度(目標温度)に維持する。ここで、加熱装置50に関し、所定の温度とは記録材Pが担持する未定着トナー像taに対して加熱制御を行ない、未定着トナー像ta中のトナーを軟化、溶融させる温度をいう。本実施例では、定着ベルト51aの表面温度を160℃に維持している。
なお、サーミスタ54を定着ベルト51a表面に接触させているが、サーミスタ54はこれに限らず定着ベルト51a表面と非接触でもよい。
(2−1−6)加圧装置の温度制御(温調)
図15は本実施例2に係る定着装置106の構成模式図であって、外部加熱装置70のコイルユニット71で加圧装置60の定着ローラ61を加熱するときの図である。
印字開始直後や待機からの復帰直後の加圧装置60の温調は、磁束遮蔽板72を第2の位置に変位させ、かつコイル71aに温度制御部41の電力供給制御部E3の電源部(不図示)から電力が供給され、定着ローラ61が発熱することにより行なわれる。つまり、磁束遮蔽板72を第2の位置に変位させることにより、コイルユニット71の発生磁束を加熱装置50のローラ51cと加圧装置60の定着ローラ61に作用させることができる。定着ローラ61はコイルユニット71の発生磁束の作用により発熱する。その定着ローラ61の温度は、定着ローラ61表面と接触させるように配設した温度検知手段としてのサーミスタ55により検知され、そのサーミスタ55の出力信号(温度情報)を温度制御部41が取り込む。温度制御部41は、サーミスタ55からの信号に基づいて、外部加熱モータM2を駆動し磁束遮蔽板72を第2の位置から第1の位置へ変位させて定着ローラ61に作用する発生磁束を遮断する。これによって定着ローラ61の表面温度を所定温度(第2目標温度)に維持している。本実施例では、定着ローラ21の表面温度を約70℃に維持するようにしている。その定着ローラ61と加圧ローラ62の表面温度は、印字が開始され記録材Pの通紙が行なわれ連続通紙に移行した際には、外部からの熱供給を受けなくとも記録材Pの余熱により昇温され、約70℃よりも低い所定の温度で平衡状態に達する。
本実施例2ではサーミスタ55を定着ローラ61表面に接触させているが、サーミスタ55はこれに限らず定着ローラ61表面と非接触でもよい。
(2−1−7)定着装置の画像定着動作
本実施例2の定着装置106は、加圧装置60及び加熱装置50が温調された状態において、記録材Pはニップ部N1・N2の順に導入される。その記録材Pはニップ部N1で定着ベルト51a表面と加圧ベルト52a表面とにより挟持搬送される。そしてその搬送過程で記録材Pと未定着トナー像taが定着ベルト51a表面と加圧ベルト52a表面により加熱される。これによって、記録材Pが担持する未定着トナー像taは、軟化、溶融され、外力によって変形し得る状態の未定着トナー像となる。ニップ部N1を出た記録材Pはニップ部N2で定着ローラ61表面と加圧ローラ62表面とにより挟持搬送される。そして仮定着トナー像tbに対して定着ローラ61表面と加圧ローラ62表面とにより加圧を行ない仮定着トナー像tbの表面に光沢を付与する。これにより仮定着トナー像tbは、記録材Pに定着され、その仮定着トナー像tbの表面に光沢を有する定着トナー像tcとなる。ニップ部N2を出た記録材Pは定着装置106外部に排出される。
本実施例2の定着装置106では、加熱装置50と加圧装置60との間隔を60mm、定着速度(記録材搬送速度(プロセススピード))を220mm/secとして画像出力を行なった。
記録材Pには60°グロス40のコート紙(A4、170g/cm2)を使用した。未定着トナー像taの形成にはワックスを内包したシアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、ブラックトナーを使用し、各色0.55mg/cm2の載り量で階調画像を出力した。今回使用したトナーのガラス転移点は85℃、融点は125℃である。なお、光沢度評価は「VG 2000」(日本電色工業株式会社製)で60°グロスの測定を行なった。
以上説明したように、本実施例2の定着装置106によれば、加熱装置50のニップ部N1と加圧装置60のニップ部N2で記録材Pを連続して挟持搬送する前に、定着ローラ61にコイルユニット71の発生磁束を作用させて定着ローラ61への熱供給を行なう。そして定着ローラ61が所定の温度に達したら、ローラ51cにコイルユニット71の発生磁束を作用させて定着ベルト51aへの熱供給に切り換える。これにより、実施例1と同様の作用効果を得られる。
[その他]
本実施例の画像形成装置は、図16に示す画像形成装置に限られず図17に示すようなタンデム式の画像形成装置であってもよい。
図17は本発明に係る定着装置を画像定着装置(定着器)として搭載できる画像形成装置の他の例の構成模式図である。この画像形成装置はタンデム式の複写機の構成模型図である。図16の複写機の部材と機能的に同じ部材には同じ符号を付して再度の説明を省略する。
図17に示す複写機は、複写機本体A側に作像手段として、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックKの各色のトナー画像を形成する第1〜第4の4つの画像形成ステーションSY・SM・SC・SK(以下、S(Y〜K)と記す)を有する。各ステーションS(Y〜K)は、像担持体としての感光体ドラム101を有する。各感光体ドラム101の周囲には、帯電手段(帯電器)102と、像露光手段(走査光学装置)103と、現像手段としての現像器104と、転写手段(転写ローラ)105と、クリーニング手段(クリーニング器)107が配設されている。そして、各ステーションS(Y〜K)の感光体ドラム1表面と対向するように搬送手段110の一部を構成する中間転写ベルト110eが配設してある。転写ベルト110eは、駆動ローラ110fと従動ローラ110gの二軸に張架されている。この転写ベルト110eを挟んで各感光体ドラム101と対向させて転写手段105を配置することによって感光体ドラム101と転写手段105との間に転写ニップ部を形成している。
各ステーションS(Y〜K)の感光体ドラム101が不図示の制御回路部(制御手段)により駆動制御されることによって矢印方向へ所定の周速度(プロセススピード)で回転される。その感光体ドラム101と同期して搬送ベルト110eも回転駆動系によって駆動ローラ110fにより矢印方向へ各感光体ドラム101の回転周速度に対応した周速度で回転される。
まず、1色目のイエローYのステーションSYにおいて、感光体ドラム101の外周面(表面)を帯電ローラ102により所定の電位に均一に帯電する。次に、読み取りユニット52から得られるカラー原稿Gの画像データに応じたレーザービームを感光体ドラム101表面に走査露光する。これによって感光体ドラム101表面に画像データに応じた静電潜像が形成される。そしてこの潜像が現像器104によりイエロートナーによって現像され、感光体ドラム101表面にイエロートナー像が形成される。同様の画像形成工程がマゼンタM、シアンC、ブラックKの各ステーションS(M〜K)においても行われる。そして各ステーションS(Y〜K)の感光体ドラム101表面に各色のトナー像が形成される。
一方、給送カセット109内に積載して収納された記録紙Pは搬送ローラ110a・110bにより転写ベルト110e上に搬送される。この記録紙Pは転写ベルト110eの回転によって回転方向上流側の転写ニップ部から回転方向下流側の転写ニップ部まで搬送される。記録紙Pにはその搬送過程において各感光体ドラム101のトナー像が転写ニップ部で転写手段105により記録材P上に順番に重ねて転写される。
各ステーションS(Y〜K)において、記録紙Pへのトナー像の転写後に感光体ドラム101表面に残った転写残トナーはクリーニング手段(クリーニング器)107により除去される。これによって感光体ドラム101は繰り返して次の画像形成に供される。
転写ベルト110eから分離し回転方向下流側の転写ニップ部を出た記録紙Pは定着装置106に導入される。その記録紙Pは定着装置106から熱と圧力を受けることによってトナー像が記録紙Pの面上に加熱定着される。
10:加熱装置、20:加圧装置、31:加熱ローラ、32:支持部材、40:温度制御部、50:加熱装置、60:加圧装置、71:コイルユニット、72:磁束所遮蔽板、P:記録材、N1:第1ニップ部、N2:第2ニップ部、ta:未定着トナー像、tb:仮定着トナー像、tc:定着トナー像