JP2010069475A - ヘテロポリオキソメタレート化合物の調製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の新規な製造方法を提供することを目的とし、さらに、二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物及びアコ配位子を有する該へテロポリオキソメタレート化合物とその製造方法を提供することも目的とし、また該化合物を用いた触媒反応を提供することをも目的としている。更に、該化合物を用いた触媒反応を提供することをも目的としている。
【解決手段】式(1)[β−XW11398−(式中、ヘテロ原子であるXはSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素をあらわし、ポリ原子であるWはタングステンをあらわし、Oは酸素をあらわす。)であらわされる一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法であって、Si及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物とWを含む化合物とを、pH6〜7の条件下で反応させることを特徴とする一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法、該化合物を前駆体化合物として用いた二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法、および該二欠損化合物を用いた、二欠損ケギン型構造を有し、かつアコ配位子を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法と該製造方法により得られたヘテロポリオキソメタレート化合物に関するものである。
ヘテロポリオキソメタレート化合物は、その特異な構造から酸性質及び/又は酸化性質等を発現し、各種触媒や担体等として用いることができる(例えば、特許文献1〜2、非特許文献1〜3参照。)。
固体触媒や担体として用いる場合には、比表面積が大きい方が単位重量あたりの活性が高くなるので、より高比表面積であることが望まれているが、例えばゼオライトのように規則的なミクロ細孔構造を有する化合物は、その細孔構造による立体規制による反応基質選択性や生成物構造選択性による特異な触媒性能を発揮することが知られており、各種のミクロ細孔構造を有するゼオライトが開発されている。
従来、式(1)[β−XW11398−(式中、ヘテロ原子であるXはSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素をあらわし、ポリ原子であるWはタングステンをあらわし、Oは酸素をあらわす。)であらわされる一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物(以下、一欠損POM化合物と称することがある。)の製造方法は、
A.Teze、G.Herve、「インオーガニック シンセシーズ(Inorg.Synth.)」(米国)、1990年、第270巻、p.85。
N.H.Nsouli、B.S.Bassil、M.H.Dickman、U.Kortz、B.Keita、L.Nadjo、「インオーガニック ケミストリー(Inorg.Chem.)」(米国)、2006年、第45巻、p.3858。
に記載されている通り、pHを5〜6に設定して調製することが一般的であったが、該化合物の収量および純度や、該化合物から誘導される式(2)[XW10368−(式中、ヘテロ原子であるXはSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素をあらわし、ポリ原子であるWはタングステンをあらわし、Oは酸素をあらわす。)であらわされる二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物(以下、二欠損POM化合物と称することがある)の収量および純度が低くなることがしばしば発生する問題があった。また、特許文献2では、ヘテロポリオキソメタレート化合物をイオン交換樹脂に担持させ、不均一系触媒として使用してエポキシ化反応を実施しているが、触媒活性と目的生成物の収率が低いことに加えて、過酸化水素の無効分解も大きな速度で併発するため、その有効利用率が50%程度と極めて低いことが判明し、高い触媒活性と過酸化水素有効利用率を達成できる不均一系へテロポリオキソメタレート化合物触媒の開発に工夫の余地があった。
なお、酸化反応としてはエポキシ化反応の他にも種々の反応が知られている。その中の一つにシラン化合物からシラノールを製造する反応がある。シラノールは、ポリシルセスキオキサン等のケイ素を含んだポリマー材料のビルディングブロックや金属錯体によるクロスカップリング反応の求核試材として有用である。シラノールは、通常、クロロシランの加水分解、シロキサンのアルカリ処理、量論酸化剤による酸化反応等により合成されるが、重金属等の多量の副生成物や酸・塩基を用いることによるジシロキサンの生成といった問題点がある。また、触媒的手法としては、イリジウムやルテニウム等の貴金属触媒と水を酸素源とする反応系とレニウムやチタン含有ゼオライト触媒と過酸化水素を酸化剤とする反応系が報告されている(例えば、非特許文献4、5参照。)が、これらの触媒系では、(1)基質適応性が狭い、(2)厳密な反応条件の制御が必要、(3)多量のジシロキサンの副生といった問題点がある。このため、より基質適応性が広く、反応の制御も容易で目的物を高い収率で得ることができる方法を開発する工夫の余地があった。
国際公開第02/072257号公報 特開2003−238545号公報
T.Okuhara、「ケミカル レビューズ(Chem.Rev.)」(米国)、2002年、第102巻、p.3641 T.Nakajo、A.Miyaji、K.Tsuji、「ファインケミカル」(日本)、2007年、第36巻、第11号、p.30 N.Mizuno、M.Misono、「ケミカル レビューズ(Chem.Rev.)」(米国)、1998年、第98巻、p.199 W.Adam、H.Garcia、C.M.Mitchell、C.R.Saha−Moller、O.Weichold、「ケミカル コミュニケーションズ(Chem.Commun.)」(米国)、1998年、p.2609−2610 W.Adam、H.Garcia、C.M.Mitchell、C.R.Saha−Moller、O.Weichold、「ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)」(米国)、1999年、第121巻、p.2097−2103
本発明の課題は、一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の新規な製造方法を提供することを目的とし、さらに、該一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を前駆体とする二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物及びアコ配位子を有する該二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物とその製造方法を提供することも目的とし、また該アコ配位子を有する該二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を用いた触媒反応を提供することをも目的としている。更に、該化合物を用いた触媒反応を提供することをも目的としている。
本発明者らは、二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物及びその製造方法について鋭意検討した結果、通常、高pH条件下ではヘテロ元素を含む化合物とポリ元素を含む化合物には加水分解する性質があり、低pHで製造されているヘテロポリオキソメタレート化合物の製造において、従来pHが5〜6の範囲で製造されていた一欠損POM化合物を高pH条件である6〜7のpH範囲で調製すると該一欠損POM化合物が高収率かつ高純度で得られることを見出し、更に、該一欠損POM化合物を前駆体として用いることで、高収率で二欠損POM化合物が得られ、さらに二欠損POM化合物を特定のpHで処理することにより、二欠損ケギン型構造を有し、かつ、アコ配位子を有するヘテロポリオキソメタレート化合物(以下、二欠損APOM化合物と称することがある)が得られ、該二欠損APOM化合物は触媒性能に優れ、特異な細孔構造を有することを見出した。
更に本発明者らは、このようにして得られた二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物が、シラン化合物からシラノールを合成する反応の触媒として好適に用いることができ、シラン化合物としてアルコキシシランを用いた場合でもシラノールを合成することができることも見出し、本発明の完成に至った。
本発明の二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として用いる反応系では、以下のような利点を有する。(1)ジシロキサンを生成することなく、高い収率、シラノール選択率を示す、(2)過剰量の高濃縮過酸化水素やUHP(過酸化水素と尿素の混合物)を使用することなく、基質に対して等量の過酸化水素のみを使用する、(3)立体障害が少なくシロキサンを生成しやすいシラノール生成に対しても有効で、広い基質適応性を示す。
特にアルコキシシランからシラノールへの触媒的合成としては、本発明が初めての報告例である。
すなわち、前記課題を解決する手段として、下記、一欠損POM化合物の製造方法及び該化合物を前駆体とする二欠損POM化合物の製造方法、および該二欠損POM化合物と特定のpHで処理することによる二欠損APOM化合物の製造方法、そして該二欠損APOM化合物を含む触媒、構造上限定されたミクロ孔構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物、及び、二欠損POM化合物を触媒として用いるシラノールの製造方法を発明した。
(I) 式(1)[β−XW11398−(式中、ヘテロ原子であるXはSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素をあらわし、ポリ原子であるWはタングステンをあらわし、Oは酸素をあらわす。)であらわされる一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法であって、Si及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物とWを含む化合物とを、pH6〜7の条件下で反応させることを特徴とする一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法。
(II) 二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法であって、(I)記載の製造方法で得られた一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を前駆体として用いることを特徴とする、式(2)[XW10368−(式中、ヘテロ原子であるXはSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素をあらわし、ポリ原子であるWはタングステンをあらわし、Oは酸素をあらわす。)であらわされる二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法。
(III) 前記式(2)であらわされる二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物は、XがSiであり、かつ、γ体の二欠損構造であることを特徴とする(II)記載の二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法。
(IV) 二欠損ケギン型構造を有し、かつ、アコ配位子を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法であって、(II)または(III)記載の製造方法で得られた二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を含む水溶液をpH=1.5〜3.0に調整することで得られることを特徴とする、式(3)[XW1034(HO)4−(式中、ヘテロ原子であるXはSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素をあらわし、ポリ原子であるWはタングステンをあらわし、Oは酸素をあらわし、Hは水素をあらわす。)であらわされる二欠損ケギン型構造を有し、かつ、アコ配位子を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法。
(V) (IV)記載の製造方法で得られた二欠損ケギン型構造を有し、かつ、アコ配位子を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を含むことを特徴とする不均一系触媒。
(VI) (IV)記載の製造方法で得られた二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリメタレート化合物であって、該化合物は4価の価数を有する二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレートアニオンと、四級アルキルアンモニウムカチオン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン及び/又はプロトンから選ばれる4個のカチオンとからなり、かつ、構造上限定されたミクロ孔構造を有することを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物。
(VII) シラン化合物を基質としてシラノールを製造する方法であって、該シラノールの製造方法は、(II)〜(IV)のいずれかに記載の製造方法で得られた二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として用いることを特徴とするシラノールの製造方法。
本発明の新規な製造方法は、一欠損POM化合物を効率良く得ることができ、かつ、該製法により得られた一欠損POM化合物を前駆体とすることで二欠損POM化合物が高収率で得られ、該二欠損POM化合物は、特定のpH条件で処理することにより二欠損APOM化合物が得られ、該二欠損APOM化合物は優れた触媒性能を示し、さらに構造上限定されたミクロ孔構造を有するので、その特異な構造による特異な反応性が期待されると同時に、ミクロ孔の特性を生かした分離膜などの材料にも応用が期待される。
図1は、実施例において合成したPOM化合物を触媒として、1−ブテンオキシドを合成した時の、用いたカウンターカチオンの種類と収率との関係を示すグラフである。 図2は、参考例1の(TBA)[γ−HSiW1036Cu(μ−1,1−N]のX線結晶構造解析結果を示す図である。 図3(a)は、参考例1の(TBA)[γ−HSiW1036Cu(μ−1,1−N]の粉末X線回折(XRD)の計算値であり、図3(b)は、実際の測定結果を示すグラフである。図3(c)は、実施例24の(TBA)[γ−SiW1034(HO)]の粉末X線回折(XRD)測定の結果である。 図4は、実施例4で得られた(TBA)[γ−SiW1034(HO)]を酢酸エチル中に分散させた時に、TetragonalからCubicに結晶構造が変化する様子を示した図である。 図5は、実施例48で得られた(TBA)[γ−SiW1034(HO)]のX線結晶構造解析結果を示す図である。 図6(a)は、実施例48で得られた(TBA)[γ−SiW1034(HO)] ]の粉末X線回折(XRD)の計算値であり、図6(b)は、実際の測定結果を示すグラフである。
前記式(1)で表される一欠損POM化合物は、Si及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物とポリ原子としてWを含む化合物とを、pH6〜7の条件下で反応させることにより調製することができる。
Si及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物とポリ原子としてWを含む化合物とを原料として一欠損POM化合物を合成する場合、その反応系内には、平衡関係にあるものも含めて様々な種類の異性体である一欠損POM化合物が存在すると考えられ、その制御は非常に困難であるが、pH6〜7の条件下で反応させることによって、式(1)で表される一欠損POM化合物以外の異性体の生成を排除することができ、目的とする一欠損POM化合物を高い収率で製造することができることになるものと考えられる。
なお、本発明の一欠損POM化合物の製造方法としては、Si及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物とポリ原子としてWを含む化合物とを、pH6〜7の条件下で反応させる工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。
一欠損POM化合物の調製に使用する原料としては、前記へテロ原子及び前記ポリ原子ともに該原子と酸素とを含む化合物が好ましく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、酸化物がより好ましく、具体的には、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸セシウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸バリウム、タングステン酸、酸化タングステン、珪酸、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸セシウム、珪酸カルシウム、珪酸バリウム、酸化珪素、酸化ゲルマニウム等が例示される。
前記原料として用いるSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物とポリ原子としてWを含む化合物との比率としては、ヘテロ元素1モルに対してポリ元素であるWが9〜12モルとなる比率であることが好ましい。より好ましくは、ヘテロ元素1モルに対してポリ元素であるWが10〜12モルとなる比率であり、更に好ましくは、ヘテロ元素1モルに対してポリ元素であるWが11モルとなる比率である。
一欠損POM化合物の調製方法としては、前記原料を含む水溶液を混合しながら、酸性水溶液でpHを6〜7に調整し、更に、例えば、アルカリ金属の塩化物等中性のアルカリ金属塩を添加することで、一欠損POM化合物のアルカリ金属塩が得られる。pHの調整には、酸性水溶液の他、炭酸ナトリウム水溶液等を用いることもできる。
前記酸性水溶液及びその濃度としては、上記一欠損POM化合物を調製するために用いられるSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物及びポリ原子としてWを含む化合物に応じて適宜設定することができ、特に制限されないが、例えば、塩酸水溶液、硝酸水溶液、硫酸水溶液等が挙げられる。また、その酸性水溶液の濃度としては、0.1〜10Mであることが好ましい。より好ましくは、1〜8Mである。
前記一欠損POM化合物のカウンターカチオンとしては、適宜設定することができ、アルカリ金属、アルカリ土類金属、四級アルキルアンモニウム、プロトン等特に制限されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましい。より好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムであり、特に好ましくは、ナトリウム、カリウムである。
前記アルカリ金属やアルカリ土類金属をカウンターカチオンに持つ前記一欠損POM化合物の原料としては、例えば、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等が挙げられる。
前記pHとしては、6.01〜7.0であることが好ましい。このような範囲にpHを調整して一欠損POM化合物の製造を行うと、該一欠損POM化合物をより高収率かつ高純度で得ることができ、本発明の効果がより発揮されることとなる。より好ましくは、6.05〜7.0である。
前記式(2);[XW10368−であらわされる二欠損POM化合物は、前記一欠損POM化合物のアルカリ金属塩を水に溶かして溶液のpHを8〜10に調整し、中性を示すアルカリ金属塩、例えばアルカリ金属の塩化物等を添加することで、アルカリ金属塩として得られる。また、前記pHを8.8〜9.1に調整すると、γ型構造([γ−XW10368−)の二欠損POM化合物を得ることができる。
前記二欠損APOM化合物は、該アルカリ金属塩等の水性媒体溶液に、硝酸や塩酸等を用いて該溶液のpHを1.5〜3.0に調整することにより、欠損部の2個のW=O結合をプロトン化してアコ配位子に変換することができ、式(3)[γ−XW1034(HO)4−(式中、ヘテロ原子であるXはSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素をあらわし、ポリ原子であるWはタングステンをあらわし、Oは酸素をあらわす。)の構造を有する二欠損のケギン型構造を有し、かつ、アコ配位子を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を得ることができ、該アコ配位子を形成している水素原子は、後述するアルカリ金属カチオンやアンモニウムカチオン等で置換できないプロトンである。前記二欠損APOM化合物は、例えば、過酸化水素を酸化剤に用いたエポキシ化反応において、高い活性と選択率、及び、過酸化水素有効利用率を達成する触媒と成り得る。
本発明の製造方法により得られる二欠損APOM化合物は、種々の酸化反応や酸塩基反応等の有機反応用触媒として用いることができ、中でも酸化反応や酸塩基反応を液相で行う際に好適に用いられる。
前記酸化反応の具体例としては特に限定されず、例えば、〈1〉不飽和結合の酸化(アルケンやアルキンの不飽和二重結合や不飽和三重結合の酸化)、〈2〉水酸基の酸化、〈3〉ヘテロ原子の酸化(硫黄原子や窒素原子等の酸化)、〈4〉飽和炭化水素部位の酸化、(5)芳香環の酸化、〈6〉これら〈1〉〜〈5〉以外のシランの酸化や酸化カップリング反応等の酸化反応等が挙げられる。このような酸化反応により被酸化性官能基が酸化され、酸化された有機化合物が製造されることになる。
前記酸塩基反応の具体例としては特に限定されず、例えば、〈7〉エステル化反応、〈8〉炭素骨格異性化反応、〈9〉重合反応、〈10〉付加反応、〈11〉開環反応、〈12〉脱離反応、〈13〉アセタール化反応〈14〉、ケタール化反応、〈15〉芳香族求電子置換反応、〈16〉芳香族求核置換反応、〈17〉アルドール反応、〈18〉ピナコール転移反応、〈19〉ベックマン転移反応、〈20〉カニッツァロ反応、〈21〉クライゼン縮合反応、〈22〉ダルゼンズ縮合反応、〈23〉ディールズアルダー反応、〈24〉フリーデルクラフツ反応、〈25〉フリース転移反応、〈26〉ガッターマン・コッホ反応、〈27〉マンニッヒ反応、〈28〉マイケル反応、〈29〉プリンス反応、〈30〉グリコシル化反応、〈31〉加溶媒分解反応、〈32〉1,3−双極性環状付加反応、〈33〉これら〈7〉〜〈32〉以外の酸塩基反応等が挙げられる。
前記反応は、気相反応もしくは液相反応のいずれの反応方法にも、本発明の触媒を使用することが可能であるが、例えば、過酸化水素を酸化剤に用いたオレフィン化合物のエポキシ化反応を行う場合には、反応活性を考慮すると液相中で反応を行うことがより好ましい。オレフィン化合物の過酸化水素によるエポキシ化反応について以下に例示することができる。
エポキシ化反応において使用するオレフィン化合物としては、非環式であっても環式であってもよく、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、ブタジエン類、1−ヘキセン、1−ペンテン、イソプレン、ジイソブチレン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、プロピレンのトリマーおよびテトラマー類、1,3−ブタジエン、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の末端オレフィン;2−ブテン、2−オクテン、2−メチルー1−ヘキセン、2,3−ジメチルー2−ブテン等の分子内オレフィン;シクロペンテン、シクロヘキセン、1−フェニル−1−シクロヘキセン、1−メチル−1−シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロペンタジエン、シクロデカトリエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、メチレンシクロプロパン、メチレンシクロペンタン、メチレンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の環式オレフィン等が挙げられる。また、オレフィン部位を有するポリマー類やオリゴマー類であってもよい。これらの中でも、炭素数2〜15の不飽和炭化水素が好ましい。より好ましくは、炭素数2〜12の不飽和炭化水素である。オレフィン化合物の種類としては、1種または2種以上用いることができる。
前記エポキシ化反応に用いられるオレフィン化合物はまた、例えば、−CHO、−COOH、−CN、−COOR、−OR(Rは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリールアルキル置換基を表す)等の基や、芳香族基、ハロゲン基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボニル基(例えばケトン、アルデヒド)、水酸基、エーテル基等の官能基を有していても良い。このような化合物としては、アリルアルコール、塩化アリル、アリルメチルエーテル、アリルビニルエーテル、ジアリルエーテル、アリルフェニルエーテル、メタクリル酸メチル、アクリル酸等が好適である。
また前記オレフィン化合物としては、炭素−炭素の二重結合を含む炭素数6以上のアリール化合物や周期律表の第15族及び第16族に属する元素を含む化合物を用いることもできる。このような化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン等の置換スチレン類、ジビニルベンゼン類、スチルベン、アラルケン類;炭素−炭素の二重結合を有するアミン類、チオール類、サルファイド類、ジサルファイド類、Se、Te、SbやAsを有する化合物、ホスフィン類、ホスファイト類等が好適である。
過酸化水素の使用形態としては、実用的には0.01〜70質量%の水溶液、アルコール類の溶液が好適であるが、100%の過酸化水素も使用可能である。使用量としては、反応基質と過酸化水素のモル比(反応基質のモル数/過酸化水素のモル数)が100/1以下となるようにすることが好ましく、より好ましくは10/1以下である。また、1/100以上となるようにすることが好ましく、より好ましくは、1/50以上である。
前記二欠損APOM化合物の使用量としては、反応基質100重量部に対して、0.0001重量部以上とすることが好ましく、3000重量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.01重量部以上であり、1500重量部以下である。また、2種以上の前記二欠損APOM化合物を触媒として用いる場合には、その合計重量を前記範囲内になるように調整するのが好ましい。
前記反応を液相中で行う場合、用いる溶媒としては、水及び/又は有機溶媒を用いることになり、有機溶媒としては1種または2種以上用いることができ、反応基質であるオレフィン化合物や、過酸化水素、生成したエポキシ化合物とは反応しないものが好ましい。用いられる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルまたはイソプロパノール、第三級ブタノール等の炭素数1〜6の第一、二、三級の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキシド、プロピレンオキシドが開環したオリゴマー類;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の窒素化合物;リン酸トリエチル、リン酸ジエチルヘキシル等のリン酸エステル等のリン化合物;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
前記溶媒の中でも、水、炭素数1〜4のアルコール類、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、ヘプタン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等や、これらの混合物を用いることが好ましい。オレフィン化合物が反応条件において液体である場合には、前記溶媒を使用することなくニートで反応を行うことも可能である。本発明においては、前記二欠損APOM化合物のカウンターカチオン種と溶媒の選択により触媒を不均一化することが可能であり、中でも、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、セシウム、四級アルキルアンモニウム、プロトンの少なくとも一つをカウンターカチオンに選び、ニトロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートから選ばれる少なくとも一つの溶媒を使用することがより好ましい。上記カウンターカチオンと溶媒との組み合わせにより、触媒系を不均一系にすることができる。
カウンターカチオンとして、より好ましくは、四級アルキルアンモニウムを用いることである。
溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートから選ばれる少なくとも一つの溶媒を使用することがより好ましい。
前記エポキシ化反応は、中性〜酸性溶液中で実施することが好ましく、pH調整のために反応系中に酸性物質を加えても良い。酸性物質としては、例えば、ブレンステッド酸、ルイス酸等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。ブレンステッド酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸や酢酸、安息香酸、蟻酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、ゼオライト類、混合酸化物類等の無機酸類が好適であり、ルイス酸としては、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化ホウ素化合物、塩化第二錫、フッ化アンチモン、塩化亜鉛、チタン化合物、ゼオライト類、複合酸化物等が好適である。また、無機及び/又は有機の酸性塩を用いることもできる。
前記エポキシ化反応において、相間移動触媒や界面活性剤を共存させることができる。また光照射下での反応を行うことも可能である。
前記エポキシ化反応は、0℃以上が好ましく、より好ましくは15℃以上である。また100℃以下が好ましく、より好ましくは、80℃以下である。反応時間は、1分以上が好ましく、また150時間以内が好ましい。より好ましくは、3分以上であり、48時間以内である。反応圧力は、特に問わないが、20atm以下が好ましい。より好ましくは、10atm以下であり、減圧下で反応を行うこともできる。
本発明に用いられる4価の価数を有する二欠損APOM化合物とは、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオンや四級アルキルアンモニウムカチオン等のカチオンを最大で4個を保有することができる二欠損APOM化合物をいい、アルカリ金属カチオンやアンモニウムカチオン等で置換できないプロトン(例えば、金属架橋酸素に結合したプロトン)を1個ないし複数個有していてもよいが、該置換できないプロトンは前記価数には含まれない。前記置換できないプロトンとは、例えば該プロトンが乖離するような塩基性条件下では、POM化合物自体が分解してポリ原子の縮合度が低下するなど、ヘテロポリ酸構造が維持できないほど強固に結合したプロトンをいう。
前記四級アルキルアンモニウムカチオンの4個のアルキル基は、各々異なっても又は全て同じでもよく、全て同じアルキル基であることがより好ましい。前記アルキル基は、炭素数が4〜12の直鎖及び/又は分岐を有するアルキル基が好ましく、炭素数が4〜12の直鎖のアルキル基がより好ましく、炭素数が4〜8の直鎖のアルキル基が更に好ましく、炭素数が4のテトラ−n−ブチルアンモニウムカチオン又はテトラ−n−オクチルアンモニウムカチオンが最も好ましい。上記4価の価数を有する前記二欠損APOM化合物アニオンと適切なカウンターカチオンの組み合わせにより、構造上限定されたミクロ孔構造を多様に構築することが可能である。前記ミクロ孔構造の存在により、大きな表面積を有する特異な場を提供できる結果、前記二欠損APOM化合物を触媒や材料等として使用した場合の活性や性能も飛躍的に向上することになる。例えば、溶媒を適切に選択し、前記二欠損APOM化合物を不均一系触媒として使用した反応を実現することができると共に、ミクロ孔構造に起因した形状選択性を発現することも可能となる。
本発明は、シラン化合物を基質としてシラノールを製造する方法であって、該シラノールの製造方法は、上述した本発明の製造方法で得られた二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として用いるシラノールの製造方法でもある。シラン化合物を基質とするシラノール合成の触媒として用いることができる二欠損POM化合物又は二欠損APOM化合物は、本発明の製造方法で製造されるものに限られないが、好ましくは、本発明の製造方法で得られた二欠損POM化合物又は二欠損APOM化合物であることである。
前記シラン化合物からのシラノール合成の基質として用いることができるシラン化合物は、非環式であっても環式であってもよく、下記一般式(4);
(式中、R、R、Rは、同一若しくは異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、−CHO基、−COOR基、−OR基(Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基を表す)、ハロゲン基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボニル基、及び、これらの基を組み合わせてできる基を表す。)で表される化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。
前記一般式(4)中、R、R、Rで表される官能基としては、上記のものの中でも、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、−OR基(Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基を表す)、及び、これらの基を組み合わせてできる基が好ましい。また、これらの官能基が置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン基が好ましい。
より好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、−OR基(Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基を表す)、及び、これらのハロゲン置換した基、並びに、これらの基を組み合わせてできる基である。
前記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、トリメチルシラン、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、トリイソプロピルシラン、トリブチルシラン、トリペンチルシラン、トリヘキシルシラン、トリオクチルシラン、トリフェニルシラン、トリ(p−メトキシフェニル)シラン、トリ(p−メチルフェニル)シラン、トリ(p−トリフルオロメチルフェニル)シラン、ジメチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、t−ブチルジメチルシラン、クロロメチルジメチルシラン、フェニルエチニルジメチルシラン、フェニルエテニルジメチルシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリブトキシシラン、(p−メトキシフェニル)ジメチルシラン、(p−メチルフェニル)ジメチルシラン、(p−トリフルオロメチルフェニル)ジメチルシラン等が挙げられる。
これらの中でも、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、トリイソプロピルシラン、トリブチルシラン、トリヘキシルシラン、トリオクチルシラン、トリフェニルシラン、トリ(p−メトキシフェニル)シラン、トリ(p−メチルフェニル)シラン、トリ(p−トリフルオロメチルフェニル)シラン、ジメチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、t−ブチルジメチルシラン、クロロメチルジメチルシラン、フェニルエチニルジメチルシラン、フェニルエテニルジメチルシラン、トリエトキシシランが好ましい。より好ましくは、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン、トリブチルシラン、t−ブチルジメチルシラン、トリエトキシシランである。
前記シラン化合物からのシラノール合成は、過酸化水素を添加しておこなうことが好ましい。過酸化水素の添加量としては、基質であるシラン化合物100mol%に対して、1〜110mol%であることが好ましい。本発明の二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として用いるシラノールの製造方法では、過剰量の過酸化水素を用いることなく、シラン化合物から高い収率、選択率でシラノールを得ることができる。過酸化水素の使用量として、より好ましくは、シラン化合物100mol%に対して、10〜100mol%であり、更に好ましくは、シラン化合物100mol%に対して、20〜100mol%である。
前記シラノール化反応において用いられる二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の使用量としては、反応基質100重量部に対して、0.0001重量部以上とすることが好ましく、3000重量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.01重量部以上であり、1500重量部以下である。また、2種以上の前記二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として用いる場合には、その合計重量を前記範囲内になるように調整するのが好ましい。
本発明のシラノールの製造方法において用いる溶媒は、特に制限されず、上述したエポキシ化反応に用いるものの1種又は2種以上を使用でき、好ましい溶媒も上記と同様である。
前記シラノールの製造方法において、シラン化合物をシラノール化する反応は、上記エポキシ化反応と同様に、中性〜酸性の溶液中で実施することが好ましく、pH調整のために反応系中に酸性物質を加えてもよい。酸性物質としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
シラノール化反応においては、相間移動触媒や界面活性剤を共存させることができる。また、光照射下での反応を行うことも可能である。
前記シラノール化反応の反応温度は、0℃以上であることが好ましく、より好ましくは、20℃以上である。また、150℃以下であることが好ましく、より好ましくは、120℃以下である。また、反応時間は、1分以上が好ましく、また150時間以内が好ましい。より好ましくは、3分以上であり、48時間以内である。反応圧力は、特に問わないが、20atm以下が好ましい。より好ましくは、10atm以下であり、減圧下で反応を行うこともできる。
前記シラノール化反応に用いることができる二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物として、4価の価数を有する二欠損APOM化合物を用いる場合、上述したものと同様のものが好ましい。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、「%」は「モル%」を意味し、「TBA」は「テトラ−n−ブチルアンモニウム」、「TMA」は「テトラメチルアンモニウム」、「TOA」は「テトラ−n−オクチルアンモニウム」、「CTA」は「セチルトリメチルアンモニウム」、「DMDOA」は「ジメチルジオクタデシル」アンモニウム、「THA」は、「テトラ−n−ヘキシルアンモニウム」を意味するものとする。
[α−SiW1240]・17HO、Cs[γ−PV1040]_6HOは、以下の文献を参考に調製した。
A.Teze、G.Herve、「インオーガニック シンセシーズ(Inorg.Synth.)」(米国)、1990年、第270巻、p.85。
(実施例1)K−SiW1139]・14HOの合成方法
NaSiO・9HO(14g)をイオン交換水(100mL)に溶解させた(溶液A)。NaWO・2HO(181g)をイオン交換水(300mL)に溶解させ、ここに4M塩酸水溶液(165mL)を15秒かけて加え激しく攪拌した。3分後、先に調製した溶液Aを加え、更に3分間攪拌した後、4M塩酸水溶液(80mL)を加え、更に3分間攪拌した後、2M炭酸カリウム水溶液を加えることにより溶液のpHを6〜7に設定した。2分後、KCl(90g)を加え、30分間穏やかに攪拌し、析出した固体(K−SiW1139]・14HOを濾過して2M塩化カリウム水溶液(100mL)で洗浄した後、1時間乾燥した。収量は、上記文献に比較し、平均的に約10%程度向上した。
(実施例2)K[γ−SiW1036]・12HOの合成方法
実施例1で得られたK−SiW1139]・14HO(30g)をイオン交換水(300mL)に1分間懸濁させ、不溶物を濾過により取り除いた。直ちに2M炭酸カリウム水溶液により溶液のpHを9.1とし、16分間その値に保った。ここに、KCl(80g)を加え、2M炭酸カリウム水溶液により10分間溶液のpHを9.1に保った。析出した固体を吸引濾過して、空気中で乾燥し、目的化合物であるK[γ−SiW1036]・12HO(23g)を得た。
(実施例3)K[γ−GeW1036]・6HOの合成方法
二酸化ゲルマニウム(5.4g)をイオン交換水(100mL)に溶解させた(溶液A)。NaWO・2HO(182g)をイオン交換水(300mL)に溶解させ、ここに4M塩酸水溶液(165mL)を15秒かけて加え激しく攪拌した。3分後、先に調製した溶液Aを加え、更に3分間攪拌した後、4M塩酸水溶液(80mL)を加え、更に3分間攪拌した後、2M炭酸カリウム水溶液を加えることにより溶液のpHを6〜7に設定した。2分後、KCl(90g)を加え、30分間穏やかに攪拌し、析出した固体を濾過して2M塩化カリウム水溶液(100mL)で洗浄した後、1時間乾燥した。収量は、上記文献に比較し、平均的に約2〜3%程度向上した。得られたK−GeW1139]・14HO(15g)をイオン交換水(150mL)に1分間懸濁させ、不溶物を濾過により取り除いた。直ちに2M炭酸カリウム水溶液により溶液のpHを8.8とし、16分間その値に保った。ここに、KCl(40g)を加え、2M炭酸カリウム水溶液により10分間溶液のpHを8.8に保った。析出した固体を吸引濾過して、空気中で乾燥し、目的化合物であるK[γ−GeW1036]・6HO(13g)を得た。
(実施例4)(TBA)[γ−SiW1034(HO)]の合成方法
実施例2の方法で合成したK[γ−SiW1036]・12HOを使用した以外は、以下の文献を参考に調製した。
K.Kamata、K.Yonehara、Y.Sumida、K.Yamaguchi、N.Mizuno、「サイエンス(Science)」(米国)、2003年、第300巻、p.964。
[γ−SiW1036]・12HO(4.5g)をイオン交換水(60mL)に室温で溶解させ、硝酸水溶液でpHを2.0に調整し、5分間攪拌した。ここに臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム(3.3g)を加えて15分間攪拌を続けた後、生成した沈殿物を濾過して、3時間室温で乾燥することにより、(TBA)[γ−SiW1034(HO)](2.5g)を得た。
(実施例5)(TMA)[γ−SiW1034(HO)]の合成方法
実施例2の方法で合成したK[γ−SiW1036]・12HO(4.5g)をイオン交換水(10mL)に室温で溶解させ、硝酸水溶液でpHを2.0に調整し、5分間攪拌した。ここに臭化テトラメチルアンモニウム(1.0g)を加えて15分間攪拌を続けた後、溶媒を留去して濃縮した。生成した沈殿物を濾過して、3時間室温で乾燥し、(TMA)[γ−SiW1034(HO)]を定量的に得た。
(実施例6)(TOA)xHy[γ−SiW1034(HO)](xとyは次式を満たす正数;x+y=4)の合成方法
実施例2の方法で合成したK[γ−SiW1036]・12HO(4.5g)をイオン交換水(60mL)に室温で溶解させ、硝酸水溶液でpHを2.0に調整し、5分間攪拌した。ここに臭化テトラオクチルアンモニウム(0.75g)を溶解させたトルエン溶液(60mL)を加えて15分間攪拌した後、トルエンを減圧下留去し、(TOA)xHy[γ−SiW1034(HO)](3.8g)を得た。
(実施例7)(CTA)xHy[γ−SiW1034(HO)](xとyは次式を満たす正数;x+y=4)の合成方法
実施例2の方法で合成したK[γ−SiW1036]・12HO(4.5g)をイオン交換水(60mL)に室温で溶解させ、硝酸水溶液でpHを2.0に調整し、5分間攪拌した。ここに塩化セチルトリメチルアンモニウム(0.46g)を加えて15分間攪拌を続けた後、生成した沈殿物を濾過して、3時間室温で乾燥し、(CTA)xHy[γ−SiW1034(HO)](4.0g)を得た。
(実施例8)(DMDOA)xHy[γ−SiW1034(HO)](xとyは次式を満たす正数;x+y=4)の合成方法
実施例2の方法で合成したK[γ−SiW1036]・12HO(4.5g)をイオン交換水(60mL)に室温で溶解させ、硝酸水溶液でpHを2.0に調整し、5分間攪拌した。ここに臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(1.0g)を溶解させたトルエン溶液(100mL)を加えて15分間攪拌した後、トルエンを減圧下留去し、(DMDOA)xHy[γ−SiW1034(HO)](4.1g)を得た。
(実施例9)(TBA)[γ−SiW1034(HO)]/C18−SiOの合成方法
イナートシル ODS−80A(GLサイエンス社製・C18−SiOと標記する)(0.1g)を2時間室温で排気した。(TBA)[γ−SiW1034(HO)](43mg)のアセトン溶液(5mL)を加え10分間攪拌した。アセトンを減圧下留去し、一晩真空乾燥して(TBA)[γ−SiW1034(HO)]/C18−SiOを得た。
(実施例10〜14)
実施例4〜8の方法により合成した各触媒(25〜45mg)を試験管に採り、ここに酢酸エチル(6mL)、60%過酸化水素水溶液(1.0mmol)、1−ブテン(5.0mmol)を加えて、60℃で2時間攪拌した。触媒は溶媒に溶解せず、不均一系であった。分析はガスクロマトグラフィーにより行い、目的化合物である1−ブテンオキシドの収率を過酸化水素基準として求めた。この結果を図1に示した。
(実施例15)
実施例4の方法により合成した(TBA)[γ−SiW1034(HO)](25mg)を試験管に採り、ここに酢酸エチル(6mL)、60%過酸化水素水溶液(1.0mmol)、1−ヘキセン(20mmol)を加えて、60℃で4.6時間攪拌した。分析はガスクロマトグラフィーにより行い、目的化合物である1−ヘキセンオキシドの収率は92%(過酸化水素を基準)であった。一方、同様の条件下で、反応時間2.5時間後(収率42%)に触媒を濾過したところ、その後の反応は全く進行しないことが分かった。
(実施例16)
実施例4の方法により合成した(TBA)[γ−SiW1034(HO)](25mg)を試験管に採り、ここに酢酸フェニル(6mL)、60%過酸化水素水溶液(1.0mmol)、1−ヘキセン(20mmol)を加えて、60℃で3.4時間攪拌した。触媒は溶媒に溶解せず、不均一系であった。分析はガスクロマトグラフィーにより行い、目的化合物である1−ヘキセンオキシドの収率は84%(過酸化水素基準)であった。
(実施例17)
実施例4の方法により合成した(TBA)[γ−SiW1034(HO)](25mg)を試験管に採り、ここに安息香酸エチル(6mL)、60%過酸化水素水溶液(1.0mmol)、1−ヘキセン(20mmol)を加えて、60℃で4時間攪拌した。触媒は溶媒に溶解せず、不均一系であった。分析はガスクロマトグラフィーにより行い、目的化合物である1−ヘキセンオキシドの収率は82%(過酸化水素基準)であった。
(実施例18)
実施例4の方法により合成した(TBA)[γ−SiW1034(HO)](25mg)を試験管に採り、ここに炭酸ジメチル(6mL)、60%過酸化水素水溶液(1.0mmol)、1−ヘキセン(20mmol)を加えて、60℃で6.3時間攪拌した。触媒は溶媒に溶解せず、不均一系であった。分析はガスクロマトグラフィーにより行い、目的化合物である1−ヘキセンオキシドの収率は77%(過酸化水素基準)であった。
(実施例19)
実施例4の方法により合成した(TBA)[γ−SiW1034(HO)](25mg)を試験管に採り、ここに酢酸エチル(6mL)、60%過酸化水素水溶液(1.0mmol)、1−ヘキセン(10mmol)、1−オクテン(10mmol)を加えて、60℃で8.3時間攪拌した。触媒は溶媒に溶解せず、不均一系であった。分析はガスクロマトグラフィーにより行い、目的化合物である1−ヘキセンオキシドの収率は21%、1−オクテンオキシドの収率は68%(過酸化水素基準)であった。
(実施例20)
実施例4の方法により合成した(TBA)[γ−SiW1034(HO)](25mg)を試験管に採り、ここにアセトニトリル(6mL)、60%過酸化水素水溶液(1.0mmol)、1−ヘキセン(10mmol)、1−オクテン(10mmol)を加えて、60℃で0.5時間攪拌した。触媒は溶媒に溶解し、均一系であった。分析はガスクロマトグラフィーにより行い、目的化合物である1−ヘキセンオキシドの収率は51%、1−オクテンオキシドの収率は49%(過酸化水素基準)であった。
(実施例21)
実施例4の方法により合成した(TBA)[γ−SiW1034(HO)](25mg)を試験管に採り、ここに酢酸エチル(6mL)、60%過酸化水素水溶液(1.0mmol)、1−ヘキセン(20mmol)、プロピレン(6atm)を加えて、60℃で8.3時間攪拌した。触媒は溶媒に溶解せず、不均一系であった。分析はガスクロマトグラフィーにより行い、目的化合物である1−ヘキセンオキシドの収率は15%、プロピレンオキシドの収率は58%(過酸化水素基準)であった。
(実施例22)
実施例4の方法により合成した(TBA)[γ−SiW1034(HO)](25mg)を試験管に採り、ここにアセトニトリル(6mL)、60%過酸化水素水溶液(1.0mmol)、1−ヘキセン(20mmol)、プロピレン(6atm)を加えて、60℃で8.3時間攪拌した。触媒は溶媒に溶解し、均一系であった。分析はガスクロマトグラフィーにより行い、目的化合物である1−ヘキセンオキシドの収率は43%、プロピレンオキシドの収率は39%(過酸化水素基準)であった。
(実施例23)
(TBA)[γ−SiW1034(HO)]/C18−SiO(42mg)を試験管に採り、ここに酢酸エチル(6mL)、60%過酸化水素水溶液(1.0mmol)、1−ヘキセン(20mmol)を加えて、60℃で7.8時間攪拌した。触媒は溶媒に溶解せず、不均一系であった。分析はガスクロマトグラフィーにより行い、目的化合物である1−ヘキセンオキシドの収率は95%(過酸化水素基準)であった。
(参考例1)
[γ−SiW1036]・12HOを上記方法で合成した以外は、(TBA)[γ−HSiW1036Cu(μ−1,1−N]を以下の文献に従い合成した。
K.Kamata、S.Yamaguchi、M.Kotani、K.Yamaguchi、N.Mizuno、「アンゲバンテ ヘミー インターナショナル エディション(Angew.Chem.Int.Ed.)」(独国)、2008年、第47巻、p.2407。
(TBA)[γ−HSiW1036Cu(μ−1,1−N]のX線結晶構造解析結果を図2に示した。これより(TBA)[γ−HSiW1036Cu(μ−1,1−N]はマイクロチャネル構造を有していることが分かった。また、粉末X線回折(XRD)測定の結果は、図3(b)のようになり、計算値(a)と一致することも分かった。
(実施例24)
実施例4で得られた(TBA)[γ−SiW1034(HO)]の粉末X線回折(XRD)測定の結果は図3(c)のようになり、(TBA)[γ−HSiW1036Cu(μ−1,1−N]と一致することが判明した。これより、(TBA)[γ−SiW1034(HO)]も(TBA)[γ−HSiW1036Cu(μ−1,1−N]と同じ構造を有していることが明らかとなった。実施例15、17における形状選択性は、このマクロチャネル構造に由来しているものと考えられる。また、実施例4で得られた(TBA)[γ−SiW1034(HO)]は、X線結晶構造解析より、チャネル径は、8.8Å×8.8Åであり、結晶系は、(Tetragonal、P4、a=25.5217、c=15.9978、V=10420.28(V/Z=2605))であることが明らかとなった。
(実施例25〜33、比較例1〜11)
下記式(5)で表されるジメチルフェニルシランのシラノール化反応を様々な触媒を用いておこなった。反応条件は以下のとおりである。なお、一部の実施例、比較例については、反応条件を変更しておこなった。結果を表1に示す。
[反応条件]
触媒:Wの量が基質であるジメチルフェニルシラン、及び、過酸化水素に対して7.3mol%となる量
基質:1mmol
過酸化水素:30%過酸化水素水溶液 1mmol
溶媒:6mL
反応温度、反応時間:60℃、2時間
収率は、GC測定により求めた。表中、収率、選択率は、それぞれ以下のようにして計算した。
収率:(2a(mol)+3a(mol)×2)/(使用した1a(mol))×100
2a選択率(%):(2a(mol))/(2a(mol)+3a(mol)×2)×100
3a選択率(%):(3a(mol)×2)/(2a(mol)+3a(mol)×2)×100
(実施例34〜47)
触媒(TBA)[γ−SiW1034(HO)]を用いて、様々なシラン化合物を基質として、下記式(6)で表されるシラン化合物のシラノール化反応をおこなった。反応条件は以下のとおりである。なお、一部の実施例については、反応条件を変更しておこなった。結果を表2に示す。
[反応条件]
触媒:基質、及び、過酸化水素に対して1mol%となる量
シラン化合物:1mmol
過酸化水素:60%過酸化水素水溶液 1mmol
溶媒:CHCN 6mL
反応温度:60℃
収率、選択率は、GC及びNMR測定により求めた。表中、収率、選択率は、それぞれ以下のようにして計算した。実施例45、46では、副生成物も得られた。実施例47では、7%の選択率でエタノールが得られた。
収率:(シラノール(mol)+ジシロキサン(mol)×2)/(使用した過酸化水素(mol))×100
シラノール選択率(%):(シラノール(mol))/(シラノール(mol)+ジシロキサン(mol)×2)×100
ジシロキサン選択率(%):(ジシロキサン(mol)×2)/(シラノール(mol)+ジシロキサン(mol)×2)×100
過酸化水素有効利用率(%):(シラノール(mol)+ジシロキサン(mol)×2)/(消費された過酸化水素(mol))×100
(実施例48)
実施例4で得られた(TBA)[γ−SiW1034(HO)]を酢酸エチル中に分散させ、60℃で1時間攪拌した。濾過して得られた(TBA)[γ−SiW1034(HO)]のX線結晶構造解析の結果は、図5に示すようになり、そのチャネル径は、10.5Å×10.5Åであり、結晶系は、(Cubic、Pn3−m&P−1、a=17.6757、V=5522.42(V/Z=2761))であることが明らかとなった。そして、粉末X線回折(XRD)測定の結果は、図6(b)のようになり、計算値(a)と一致することも分かった。また、実施例24との比較から、酢酸エチル溶媒が(TBA)[γ−SiW1034(HO)]の細孔内に取り込まれると同時に、その構造とチャネル径に変化を及ぼすことがわかった。その変化の様子を図4に示す。
上述の実施例1〜24、48から、次のように言えることが分かった。
実施例1及び実施例3に示すように、一欠損ケギン型POM化合物である[β−SiW1139]8−(XはSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素)を合成するに当たり、Si及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物とWを含む化合物とをpH6〜7の条件下で反応させることにより、pH=5〜6の条件下で反応させるこれまでの方法よりも収量が向上することが明らかとなった。また、本合成法により得られた一欠損POM化合物は、実施例2及び実施例4〜8に示すように、従来と同様の方法により、γ型二欠損POM化合物や、二欠損POM化合物の欠損部位に位置する2個のW=O結合をプロトン化してアコ配位子に変換した[γ−SiW1034(HO)]4−へと転換できることが分かった。[γ−SiW1034(HO)]4−のカウンターカチオンは任意に選択することができるが(実施例4〜8)、該POM化合物は、適切なカウンターカチオンとエステル系やカーボネート系溶媒の選択(実施例10〜22)により、不均一系触媒として使用することも可能であり、その活性はカウンターカチオンの種類に大きく依存し、炭素数が4〜8の直鎖のアルキル基を有するアルキルアンモニウムカチオンを使用した場合に、特に高収率で生成物を与えることが分かった(図1)。また、該POM化合物を担体に担持することによっても不均一系触媒反応は進行する(実施例9、13)。これら不均一系反応は、実施例15の結果から、溶媒に溶出した均一系触媒により進行しているのではなく、触媒が確かに不均一系触媒として働き反応が進行していると言える。目的生成物の収率も過酸化水素基準で73〜100%と非常に高く、換言すれば、酸化剤である過酸化水素が無効分解することなく目的とする反応に使用されていることを示しており、過酸化水素有効利用率も極めて高いことが判明した。また、該POM化合物はミクロ孔構造を有しており(参考例1、実施例24、図2〜3)、このミクロ孔構造を利用することにより、不均一系触媒反応では均一系触媒反応と異なり、形状選択性を発現させることが可能であることも明らかとなった(実施例19と20、及び、実施例21と22)。そしてまた、該POM化合物を酢酸エチル中に分散させることにより、酢酸エチル溶媒が該POM化合物の細孔内に取り込まれると同時に、該POM化合物の構造とチャネル径に変化を及ぼすことがわかった(実施例24及び48、図4〜6)。
また、実施例25〜47及び比較例1〜11から以下のようにいえることがわかった。
二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として用いてシラン化合物からのシラノール反応をおこなうことで、基質に対して等量の過酸化水素を用いても高い収率が得られ、また、ジシロキサンの生成が少なく、シラノールを高い選択率で得られることが明らかとなった。また、シラン化合物として様々な置換基を有する化合物を用いた場合でも、高い収率、シラノール選択率が得られ、広い基質適応性を有することが明らかとなった。中でも、本発明の触媒を用いると、アルコキシシランからシラノールへの触媒的合成が可能となることが確認された。

Claims (7)

  1. 式(1)[β−XW11398−(式中、ヘテロ原子であるXはSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素をあらわし、ポリ原子であるWはタングステンをあらわし、Oは酸素をあらわす。)であらわされる一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法であって、Si及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物とWを含む化合物とを、pH6〜7の条件下で反応させることを特徴とする一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法。
  2. 二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法であって、請求項1記載の製造方法で得られた一欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を前駆体として用いることを特徴とする、式(2)[XW10368−(式中、ヘテロ原子であるXはSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素をあらわし、ポリ原子であるWはタングステンをあらわし、Oは酸素をあらわす。)であらわされる二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法。
  3. 前記式(2)であらわされる二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物は、XがSiであり、かつ、γ体の二欠損構造であることを特徴とする請求項2記載の二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法。
  4. 二欠損ケギン型構造を有し、かつ、アコ配位子を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法であって、請求項2または3記載の製造方法で得られた二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を含む水溶液をpH=1.5〜3.0に調整することで得られることを特徴とする、式(3)[XW1034(HO)4−(式中、ヘテロ原子であるXはSi及びGeから選ばれる少なくとも一種の元素をあらわし、ポリ原子であるWはタングステンをあらわし、Oは酸素をあらわし、Hは水素をあらわす。)であらわされる二欠損ケギン型構造を有し、かつ、アコ配位子を有するヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法。
  5. 請求項4記載の製造方法で得られた二欠損ケギン型構造を有し、かつ、アコ配位子を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を含むことを特徴とする不均一系触媒。
  6. 請求項4記載の製造方法で得られた二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリメタレート化合物であって、該化合物は、4価の価数を有する二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレートアニオンと、四級アルキルアンモニウムカチオン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン及び/又はプロトンから選ばれる4個のカチオンとからなり、かつ、構造上限定されたミクロ孔構造を有することを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物。
  7. シラン化合物を基質としてシラノールを製造する方法であって、
    該シラノールの製造方法は、請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法で得られた二欠損ケギン型構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として用いることを特徴とするシラノールの製造方法。
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