JP2010060586A - 光変調素子および空間光変調器 - Google Patents

光変調素子および空間光変調器 Download PDF

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Abstract

【課題】応答速度が速く、画素の微小化による高精細な光変調が可能で、素子製造プロセスにおける加熱処理による磁化固定層の磁気特性の劣化に起因する動作のばらつきを防止することができる光変調素子、この光変調素子を用いて構成される光変調器の提供。
【解決手段】磁化固定層、非磁性中間層および磁化反転層の順で積層して構成されたスピン注入磁化反転素子部と、前記スピン注入磁化反転素子部を挟む一対の電極とを有し、前記磁化反転層における磁化状態の変化に応じて、前記磁化反転層へ入射した光の偏光面に対してその反射光または透過光の偏光面の回転角を変化させる光変調素子であって、一対の電極の少なくとも一方の電極がCuで形成され、Cuで形成された電極とスピン注入光変調素子部との間に金属からなる防御層を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、光変調素子および空間光変調器に関し、特に、スピン注入磁化反転による磁化方向の変化を利用して光の変調を行う光変調素子、およびその光変調素子を用いて空間的に光を変調する空間光変調器に関する。
光の位相や振幅を空間的に変調する空間光変調器は、ホログラフィ等の画像露光装置に応用され、ディスプレイ技術や記録技術等の分野で広く利用されている。また、2次元で並列に光情報を処理することができるため、光情報処理技術等への応用も研究されている。
代表的な空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)として、液晶パネルを用いたものが挙げられる。この液晶パネルは、油状で透明な液晶材料が2枚の透明な基板で挾まれた構造をしており、透明な基板としては、主にガラスが用いられることが多いが、プラスチックを用いることもある。透明基板の内面には、液晶に電圧を印加する電極として透明電極が設けられており、透明電極の材料には、抵抗値が低く形状を作製するのが容易なインジウムスズ酸化物(ITO)が広く用いられている。しかしながら、液晶パネルを用いるSLMは、ピクセルサイズが数μm以下の微細化は困難であり、応答時間も数十μs程度と非常に遅い。
そこで、微細化の問題と応答速度の問題を解決するために、特許文献1または特許文献2には、磁性ガーネットのファラデー効果を利用した高速応答の磁気光学式空間光変調器(MOSLM:Magnet-optic SLM)が提案されている。
特許文献1に記載された磁気光学式空間光変調器は、各ピクセルに対応した領域毎に個別に光反射膜を形成し、局所熱処理と光反射膜により印加される応力とで各ピクセル間が磁気的に分離したMOSLM、あるいは各ピクセルの外形に一致するようにXY駆動ラインを形成し、局所熱処理とXY駆動ラインにより印加される応力とで各ピクセル間が磁気的に分離されているMOSLMであり、ピクセル間の距離をピクセルサイズ以下に狭めることが可能となる。そして、磁性ガーネットがシングルドメイン構造を形成されていれば、XY駆動ラインにパルス電流を印加することによって、磁性ガーネットの磁化を反転させることができる。
また、特許文献2に記載された磁気光学式空間光変調器は、磁性ガーネット膜中に、それぞれ独立に磁化方向を設定できファラデー効果により入射光に対して磁化方向に応じた偏光方向の回転を与える多数のピクセルが2次元的に間隙をあけて配列されており、各ピクセルの磁化方向を個別に制御するための磁界を発生するXY駆動ラインを備えている。そして、XY駆動ラインヘの通電が合致したピクセルに対して合成磁界を印加し、選択的に磁化反転をする構造となっている。
また、非特許文献1には、光変調素子としてスピン注入磁化反転素子を複数個並べて画素を形成し、縦カー効果を測定することによって電流パルスによる光変調動作を検証する実験が報告されている。このスピン注入磁化反転素子で形成される光変調素子は、磁化固定層、非磁性中間層および磁化反転層の順に積層して構成される素子部を2つの電極で挟んだ構造を有するものである。
特開2005−70101号公報 特開2005−221841号公報(段落0013、0014) K.Aoshima et.a1,"Spin transfer switching incurrent-perpendicular-to-plane spin valve observed by magneto-optical Kerr effect using visible light." , Appl.Phys.Lett.91,052507(2007)
しかしながら、特許文献1に示すMOSLMにおいては、XY駆動ラインをピクセルの外周に沿って配する構造となっているために、ピクセルにおける数μm以下の微細化が困難であるという問題がある。特許文献2に示すMOSLMでは、電流による合成磁界を利用するために、ピクセルの微細化をすると、隣接ピクセルヘのクロストークが大きくなるという問題がある。非特許文献1に示す素子においては、磁性膜に面内磁気異方性の材料を用いているために、光変調素子で反射した偏光のカー回転角が小さいという問題がある。
一方、スピン注入磁化反転素子で形成された光変調素子の製造プロセスにおいては、磁化固定層、非磁性中間層、磁化反転層、電極等の成膜後に、素子化プロセスに必要な加熱処理(200℃程度)により、磁化固定層の磁気特性が劣化し、得られる光変調素子の動作がばらつく、という問題があった。特に、垂直磁気異方性を有する磁化固定層を備える光変調素子では、加熱処理によって垂直磁気異方性が劣化し、光変調素子の動作がばらつく、という問題があった。
そこで、本発明の課題は、応答速度が速く、画素の微小化による高精細な光変調を可能とするとともに、素子製造プロセスにおける加熱処理による磁化固定層の磁気特性の劣化に起因する動作のばらつきを防止することができる光変調素子、この光変調素子を用いて構成される光変調器を提供することにある。
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明の光変調素子は、磁化固定層、非磁性中間層および磁化反転層の順で積層して構成されたスピン注入磁化反転素子部と、前記スピン注入磁化反転素子部を挟む一対の電極とを有し、前記磁化反転層における磁化状態の変化に応じて、前記磁化反転層へ入射した光の偏光面に対してその反射光または透過光の偏光面の回転角を変化させる光変調素子であって、前記一対の電極の少なくとも一方の電極がCuで形成され、前記Cuで形成された電極と前記スピン注入磁化反転素子部との間に金属からなる防御層を有することを特徴とする。
この光変調素子では、磁化固定層、非磁性中間層および磁化反転層の順で積層して構成されたスピン注入磁化反転素子部を挟む一対の電極のうち、Cuで形成された電極と前記スピン注入磁化反転素子部との間に金属からなる防御層を設けることによって、応答速度が速く、画素の微小化による高精細な光変調を可能とするとともに、素子製造プロセスにおける加熱処理に起因する動作のばらつきを防止することができる。
請求項2に係る発明は、前記光変調素子において、前記防御層が、Ta、W、RuおよびAuから選ばれる少なくとも1種またはそれらの合金からなる金属膜、あるいは前記金属膜を複数積層してなる積層膜で形成されていることを特徴とする。
この光変調素子では、防御層をTa、W、RuおよびAuから選ばれる少なくとも1種またはそれらの合金からなる金属膜、あるいはその金属膜を複数積層してなる積層膜で形成することによって、応答速度が速く、画素の微小化による高精細な光変調を可能とするとともに、素子製造プロセスにおける加熱処理に起因する動作のばらつきを確実に防止することができる。
請求項3に係る発明は、前記光変調素子において、前記磁化反転層および前記磁化固定層が、垂直磁気異方性を有することを特徴とする。
この光変調素子では、磁化反転層および磁化固定層のいずれもが垂直磁気異方性を有することによって、光変調素子に対して垂直な方向に光を入射および反射させる極カー効果を利用することができる。これによって、大きなθ(磁気カー効果による偏光面の回転角度)を得ることができるために光変調素子としての性能を向上させることができる。
請求項4に係る発明は、前記光変調素子において、前記磁化反転層および磁化固定層のうちの少なくとも一方がCo膜とPt膜を交互に積層した多層構造で構成されることを特徴とする。
この光変調素子では、磁化反転層および磁化固定層のうち少なくとも1方をCo膜とPt膜を交互に積層した多層構造で形成することによって、大きなθを得ることができる。
請求項5に係る発明は、前記光変調素子において、前記磁化反転層と前記非磁性中間層の界面、および前記磁化固定層と前記非磁性中間層の界面の少なくとも一方に、遷移元素または遷移元素を含む合金からなる界面層を有することを特徴とする。
この光変調素子では、前記磁化反転層と前記非磁性中間層の界面、および前記磁化固定層と前記非磁性中間層の界面の少なくとも一方に、遷移元素または遷移元素を含む合金からなる界面層を有することにより、界面のスピン偏極率を向上させることができるため、駆動電流を低減することができる。
請求項6に係る発明は、前記光変調素子において、前記磁化反転層と前記磁化固定層のうちの少なくとも一方が、遷移元素と、希土類元素とを含む合金で形成されていることを特徴とする。
この光変調素子では、磁化反転層と磁化固定層のうちの少なくとも一方を、遷移元素と、希土類元素とを含む合金で形成することによって、磁化反転層および磁化固定層の飽和磁化(Ms)を低くすることができる。磁化反転層に低Ms材料を用いることにより、磁化反転電流密度Jcを低減することができる。また、磁化固定層に低Ms材料を用いることにより磁化固定層から磁化反転層へ漏れる磁界が減少し、スピン注入磁化反転特性が電流軸方向にシフトする量を低減することができる。これにより、正の磁化反転電流と負の磁化反転電流の大きさをほぼ同じにすることができるので、安定したスピン注入磁化反転動作を得ることができる。
請求項7に係る発明は、前記光変調素子において、前記遷移元素が、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
この光変調素子では、磁化反転層と磁化固定層のうちの少なくとも一方を、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の遷移元素と、希土類元素とを含む合金で形成することによって、磁化反転層の飽和磁化(Ms)を低くすることができる。磁化反転層に低Ms材料を用いることにより、磁化反転電流密度Jcを低減することができる。また、磁化固定層に低Ms材料を用いることにより磁化固定層から磁化反転層へ漏れる磁界が減少し、スピン注入磁化反転特性が電流軸方向にシフトする量を低減することができる。これにより、正の磁化反転電流と負の磁化反転電流の大きさをほぼ同じにすることができるので、安定したスピン注入磁化反転動作を得ることができる。
請求項8に係る発明は、前記光変調素子において、前記希土類元素が、Sm、Eu、GdおよびTbから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
この光変調素子では、磁化反転層と磁化固定層のうちの少なくとも一方を、遷移元素と、Sm、Eu、GdおよびTbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素とを含む合金で形成することによって、磁化反転層の飽和磁化(Ms)を低くすることができる。磁化反転層に低Ms材料を用いることにより、磁化反転電流密度Jcを低減することができる。また、磁化固定層に低Ms材料を用いることにより磁化固定層から磁化反転層へ漏れる磁界が減少し、スピン注入磁化反転特性が電流軸方向にシフトする量を低減することができる。これにより、正の磁化反転電流と負の磁化反転電流の大きさをほぼ同じにすることができるので、安定したスピン注入磁化反転動作を得ることができる。
請求項9に係る発明は、前記光変調素子において、前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極が、透明電極材料で形成されていることを特徴とする。
この光変調素子では、磁化固定層、非磁性中間層および磁化反転層の順で積層して構成されたスピン注入磁化反転素子部を挟む一対の電極のうちの少なくとも一方の電極を、透明電極材料で形成することによって、透明電極材料で形成された電極(以降、透明電極)を通じて磁化反転層に入射した光は、磁化反転層における磁化状態の変化に応じてその偏光面を回転させるとともにスピン注入磁化反転素子部で反射し、再びその透明電極を通じて偏光面の回転角(以降、偏光角)が変化した光を反射光として出射させることができる。また、スピン注入素子部を挟む一対の電極をともに透明電極で形成する場合には、一方の透明電極から入射した光の偏光面を磁化反転層の磁化状態に応じて回転させるとともにスピン注入磁化反転素子部を透過し、偏光角が変化した光を他方の透明電極を通じて透過光として出射させることができる。
また、請求項10に係る発明は、前記の光変調素子で構成される光変調部を有し、前記磁化反転層における磁化状態の変化に応じて、前記磁化反転層へ入射した光の偏光面に対してその反射光または透過光の偏光面の回転角を変化させ、反射光または透過光の先に設けた偏光手段を通じて特定の偏光のみを透過させることにより、光の変調を行う空間光変調器を提供する。
この空間光変調器では、前記の光変調素子で構成される光変調部を有することによって、電流注入による磁化反転層の高速な磁化状態の変化に応じて入射光の偏光角が変化し、その反射光または透過光の偏光角を変調することができるため、高精細かつ高速な光変調が可能となる。
本発明の光変調素子は、応答速度が早く、その微小化による高精細な光変調を可能とするとともに、素子製造プロセスにおける加熱処理による磁化固定層の磁気特性の劣化に起因する動作のばらつきを防止することができる。特に、垂直磁気異方性を有する磁化固定層を備える光変調素子では、加熱処理による垂直磁気異方性の劣化に起因する光変調素子の動作のばらつきを防止することができる。
本発明の空間光変調器は、前記光変調素子で構成される光変調部を有し、前記磁化反転層における磁化状態の変化に応じて入射光の偏光角を変化させ、その反射光または透過光の偏光角を変調し、反射光または透過光の先に設けた偏光フィルターを通じて特定の偏光のみを透過させて光の強度変調を行うことができるため、応答速度が速く、画素の微小化による高精細な光変調を可能とし、例えば、ピクセルサイズ2μm以下で応答速度が数十ns〜数ps程度の高精細かつ高速応答が可能になる。
以下、本発明の光変調素子および空間光変調器について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る光変調素子の構造を示す模式断面図、図2(a)〜(g)は、光変調素子を製造するための主要工程を説明する図、図3(a)は、本発明の空間光変調器の構成を示す概略平面図、図3(b)は、図3(a)に示すA−A線断面を示す模式図、図4(a)および(b)は、本発明の第2実施形態に係る空間光変調器の動作を示す概念図、図5(a)および(b)は、本発明の第3実施形態に係る空間光変調器の動作を示す概念図である。
図1に示す光変調素子10は、磁化固定層21、非磁性中間層22および磁化反転層23の順に積層して構成されるスピン注入磁化反転素子部11と、スピン注入磁化反転素子部11を挟んで上下に設けられた上部電極12と下部電極13とからなる一対の電極を有し、下部電極13とスピン注入磁化反転素子部11(磁化固定層21)との間に防御層14を有するものである。
[磁化固定層]
磁化固定層21は、磁化方向が固定され、上部電極12と下部電極13の間に印加される電圧に応じて、非磁性中間層22を介して、スピン偏極した電子を磁化反転層23に注入(スピン注入)する役割を有する層である。この磁化固定層21は、磁化反転層23とともに、垂直磁気異方性を有するものが好ましい。これによって、光変調素子10に対して垂直な方向に入射した光の偏光面を回転させる極カー効果を利用して、大きなθ(磁気カー効果による偏光面の回転角度;以下、「カー回転角」という)を得ることができる。極カー効果を最大限に得ることができる入射光の方向は、磁化の方向と平行な方向であるため、垂直磁気異方性を持つことで、磁化反転層23の膜面に垂直な方向から光変調素子10に入射した光を、最大限の極カー効果によって大きなθを有する透過光または反射光を得ることができる。
つまり、磁気カー効果の大きさは入射する光の波数ベクトルと磁性体の磁化ベクトルとのスカラー積に比例するため、一般に極カー効果は、光変調素子10の膜面に対して斜め方向から入射させる場合の縦カー効果や横カー効果に比べて大きなカー回転角θを得ることができる。したがって、面内磁化に比べて、θを増大することができるため、光変調素子10としての性能を向上させることができる。
垂直磁気異方性を有する磁化固定層21として、具体的には、図1に示すように、Co膜21aとPt膜21bが交互に積層した多層構造(以下、この構造を有する層を「Co/Pt多層膜」という)、または遷移元素と希土類元素とを含む合金で形成されているものが好ましい。この磁化固定層21は、下部電極13の上にMBE法やスパッタ法などによって形成することができる。
磁化固定層21をCo/Pt多層膜で構成する場合、Co/Pt多層膜は、所謂、人工格子膜の1つであり、Co膜21a単独では磁化方向は面内に向くのに対し、Co/Pt多層膜では、Co膜21aの磁化方向が膜面と垂直な方向に向く。また、Pt膜21bの厚さが薄い方が、保磁力は小さく、Pt膜21bの厚さを厚くすると、保磁力が大きくなる。また、Co膜21aの厚さが薄い方が保磁力は小さく、厚い方が保磁力は大きくなる。このような理由から、磁化固定層21はCo膜とPt膜をともに厚くなるような構成とすることで、磁化固定層21の保磁力を増大させることができ、磁化固定層21の保磁力を、磁化反転層23よりも大きくすることができる。なお、磁化反転層23におけるスピン注入磁化反動作を確実にするためには、磁化固定層21の保磁力は500[Oe](39.9[kA/m])以上であることが好ましい。
ここで、Co膜21aおよびPt膜21bの厚さや、Co膜21aとPt膜21bの積層数は、特に限定されるものではないが、Co膜21aあるいはPt膜21bの厚さが薄すぎると、また、積層数が少なすぎると、保磁力が低下し、一方、Co膜21aあるいはPt膜21bの厚さが厚すぎると、また、積層数が多すぎると、垂直磁気異方性が劣化する。したがって、Co膜21aの厚さは、0.4〜1.5nmが好ましく、Pt膜21bの厚さは、0.8〜1.5nmが好ましく、Co膜21aとPt膜21bの積層数は、Co膜21aとPt膜21bを一組として、5〜20が好ましい。また、このCo/Pt多層膜における一組のCo膜21aとPt膜21bの厚さは、それぞれ0.6nm程度、1.2nm程度とすることが、保持力の大きい磁化固定層21を得ることができる点で、好ましい。なお、Co膜21aとPt膜21bの積層順序は特に規定されるものではなく、図1に示すように、Co膜21aを磁化固定層21の最下部に配置してもよく、Pt膜21bを最下部に配置してもよい。また、保磁力および垂直磁気異方性の観点から、磁化固定層21の厚さは、10〜30nmが好ましい。
なお、前記の通り、磁化反転層23もCo膜とPt膜を交互に積層した多層構造とする場合には、磁化反転層23を構成するPt膜23bの1層の厚さを、磁化固定層21を構成するPt膜21bの1層の厚さよりも薄くする。また、Co膜23aの1層の厚さも、磁化固定層21を構成するCo膜23aの1層の厚さよりも薄くする。このような構造とすることで、磁化固定層21の保磁力を、磁化反転層23よりも、さらに大きくすることができる。
また、磁化固定層21を遷移元素と希土類元素を含む合金で構成する場合、このような合金は、薄い膜厚でも大きな極カー効果を示し、大きなカー回転角(θ)を得ることができる。これらの合金は、成膜が容易である、という利点をも有する。遷移元素としては、例えば、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。また、希土類元素としては、例えば、Sm、Eu、GdおよびTbから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。この遷移元素と希土類元素を含む合金の具体例として、GdFe(例えば、Gd30Fe70)やTbFeCo(例えば、Tb32.1Fe58.1Co9.8)等(数値は元素比〔at%〕)を示す)を好適に用いることができる。さらに、高保磁力のTbFeCoを磁化固定層21に用いることにより、大きな電流を流しても磁化固定層21の磁化の向きを一定方向に保つことができるため、安定したスピン注入磁化反転動作をすることができる利点がある。また、TbFeCoの飽和磁化(Ms)はおよそ150〜200Oe(12.0〜16.0kA/m)程度であって磁化反転層へ漏れ出る磁界が小さいため、スピン注入磁化反転特性が電流軸方向にシフトする量を低減することができる。これにより、正の磁化反転電流と負の磁化反転電流の大きさをほぼ同じにすることができるので、安定したスピン注入磁化反転動作を得ることが可能である。
[非磁性中間層]
非磁性中間層22は、磁化固定層21と磁化反転層23の間に配置されるものである。光変調素子10がCPP−GMR(Current Perpendicular to Plane − Giant MagnetoResistance)構造の磁気抵抗素子の場合には、非磁性中間層22として非磁性金属が用いられる。非磁性中間層22は、磁化反転層21と磁化固定層23の磁化状態を分離するために必要であり、磁化反転層21と磁化固定層23との間でスピン偏極した電子をやり取りする際の通路として機能する。たとえば、下部電極13、磁化固定層23、非磁性中間層22、磁化反転層21、上部電極12の順に積層された素子において、上部電極12が正の電圧となるように下部電極13と上部電極12間に電圧を印加すると、下部電極13から注入された電子は磁化固定層23の内部で磁化固定層23の磁化方向にスピンを揃え(スピン偏極)、そのスピン偏極した電子が非磁性中間層22内をスピンを保持したまま通過し、磁化反転層21に注入される。磁化反転層21の内部では、磁化反転層21の磁化方向を決定づける内部電子と注入されたスピン偏極電子との相互作用により、局所的なスピントルクという力が生じて磁化反転層21内の磁化方向を決定づける内部電子のスピンを反転させるために、結果として磁化反転層21の磁化方向が反転する。このように、非磁性中間層22はスピンの通路として機能するため、スピン軌道相互作用が小さく、スピン拡散長(スピンを保持する距離)の長い材料を用いるのが望ましい。非磁性金属材料の場合にはCuやAlなどが望ましく、ZnOなどの半導体材料を用いてもよい。また、その厚さは、スピン偏極した電子がスピン状態を保ったまま流れ、磁化反転層23に到達するように、1〜10nmであることが好ましい。
また、光変調素子10がトンネル電流型の磁気抵抗素子(TMR素子)である場合には、非磁性中間層22としては、マグネシア(MgO)やアルミナ(Al)等の絶縁体を用いて形成することができる。
この非磁性中間層22は、磁化反転層23に入射した光が反射される場合は、入射した光を入射面側に反射させる必要があるため、入射光に対する反射率の大きい材料を用いることが好ましく、また、磁化反転層23に入射した光が透過される場合には、磁化反転層23を透過した光が入射面側に対して反対側(磁化固定層21側)に透過されるように、入射光の透過率が大きい材料を用いることが好ましい。
この非磁性中間層22は、MBE法やスパッタ法などによって、磁化固定層21の上に形成することができる。
[磁化反転層]
磁化反転層23は、上部電極12と下部電極13との間に印加される電圧の向きに応じて(つまり、光変調素子10を流れる電流の向きに応じて)、磁化反転層23内に注入されたスピン偏極電子との相互作用によって生じるスピントルクにより自らの磁化の向きを反転させるものである。その結果、磁化反転層23は正と負の磁化方向を有する安定した2値の磁化状態をとることができる。そして、この磁化反転層23に偏光した光を入射すると、磁化反転層23の磁化方向に応じた磁気光学効果(磁気カー効果またはファラデー効果)によって、入射光の偏光面を右または左(あるいは左または右)に回転させる役割を有する層である。
この磁化反転層23は、スピン歳差運動の緩和時間が長く、スピン流が大きくなるような特性を持つ構造または材料で構成することが好ましく、特に、磁化固定層21とともに、垂直磁気異方性を有するものが好ましい。これによって、光変調素子10に対して垂直な方向に入射する光の偏光面を回転させる極カー効果を利用して、大きなカー回転角θを得ることができる。極カー効果を最大限に得ることができる入射光の方向は、磁化の方向と平行な方向であるため、垂直磁気異方性を持つことで、磁化反転層23の膜面に垂直な方向から光変調素子10に光を入射させることによって、極カー効果を大きくすることができる。垂直磁気異方性を有する磁化反転層23として、具体的には、図1に示すように、Co膜23aとPt膜23bが交互に積層した多層構造(以下、この構造を有する層を「Co/Pt多層膜」という)、または遷移元素と希土類元素とを含む合金で形成されているものが好ましい。この磁化反転層23は、非磁性中間層22の上にMBE法やスパッタ法などによって形成することができる。
磁化反転層23をCo/Pt多層膜で構成する場合、磁化固定層21について詳述したとおり、Pt膜23bの厚さが薄い方が、保磁力は小さく、Pt膜23bの厚さを厚くすると、保磁力が大きくなるため、磁化反転層23を構成するPt膜23bの1層の厚さが、磁化固定層21を構成するPt膜21bの1層の厚さよりも薄くすることが好ましい。また、Co膜23aの1層の厚さも、磁化固定層21を構成するCo膜23aの1層の厚さよりも薄くするのが好ましい。なお、磁化反転層23の保磁力は、印加する電流の向きを変えたときの磁化の向きの反転が安定して生じるように、磁化固定層23bの保磁力より小さくしなければならない。このような理由から、このCo/Pt多層膜における一組のCo膜23aとPt膜23bの厚さは、それぞれ0.2nm程度,0.6nm程度とすることが、保持力の小さい磁化反転層23を得ることができる点で、好ましい。
Co膜23aおよびPt膜23bの厚さや、Co膜23aとPt膜23bの積層数は、特に限定されるものではないが、Co膜23aあるいはPt膜23bの厚さが薄すぎると、また、積層数が少なすぎると、保磁力が低下し、一方、Co膜23aあるいはPt膜23bの厚さが厚すぎると、また、積層数が多すぎると、垂直磁気異方性が劣化する。したがって、Co膜23aの厚さは、0.2〜0.5nmが好ましく、Pt膜23bの厚さは、0.6〜1.5nmが好ましい。また、保磁力および垂直磁気異方性の観点から、磁化反転層23の厚さは、10nm以下とするのが好ましい。
また、磁化反転層23を遷移元素と希土類元素を含む合金で構成する場合、このような合金は、薄い膜厚でも電圧が印加された際に大きなカー効果を示し、大きなカー回転角(θ)を得ることができる。これらの合金は、成膜が容易である、という利点をも有する。また、遷移元素と希土類元素を含む合金を用いることで、低飽和磁化(Ms)の磁化反転層23を形成することができる。したがって、Msの大きさに比例する磁化反転電流密度Jcを低減することができる。遷移元素としては、例えば、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。また、希土類元素としては、例えば、Sm、Eu、GdおよびTbから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。この遷移元素と希土類元素を含む合金の具体例として、GdFe(例えば、Gd30Fe70)やTbFeCo(例えば、Tb32.1Fe58.1Co9.8)等(数値は元素比〔at%〕)を示す)を好適に用いることができる。
なお、GdFeでは、GdとFeの磁気モーメントが互いに反対に向き合い、その組成によって、全磁気モーメントがGdの磁気モーメントの向きになるか、Feの磁気モーメントの向きになるのかが決まる。例えば、Gd30Fe70の場合には、全磁気モーメントはGdの磁気モーメントの方向に向く。
また、希土類元素の化学的・物理的性質の類似を利用すれば、遷移金属との組み合わせによる材料変更は比較的容易であるが、希土類元素としては、得られる磁気的性質が同等である場合には、原料コストや成膜性に優れた材料を用いることが好ましい。
<界面層>
磁化固定層21と非磁性中間層22の界面、および磁化反転層23と非磁性中間層22の界面には、それぞれ遷移元素または遷移元素を含む合金で形成された第1界面層S、および第2界面層Sを設けることが好ましい。遷移元素または遷移元素を含む合金としては、例えば、Fe、CoおよびNiの少なくとも1種、ならびにCoFe、CoFeB、NiFe、CoFeSi等の合金が挙げられる。特に、第1界面層Sおよび第2界面層SをCoFeB合金あるいはFe膜、Co膜を用いて形成し、非磁性中間層22にアルミナ(Al)等のアモルファス絶縁体を用いてトンネル電流を流すことやマグネシア(MgO)の(100)結晶と組み合わせてコヒーレントなトンネル電流を流すことなどにより、駆動電流を大きく低減することができる。この第1界面層Sおよび第2界面層Sの厚さは、0.1〜1nmの範囲であれば、磁化固定層21および磁化反転層23の垂直磁気異方性はほとんど劣化しない。
<上部電極および下部電極>
また、光変調素子10において、スピン注入磁化反転素子部11を挟む一対の電極は、磁化反転層23の上部に配置される上部電極12と、磁化固定層21の下部に配置される下部電極13とで構成される。これらの一対の電極(上部電極12、下部電極13)は、光変調素子10(スピン注入磁化反転素子部11)に電圧を印加する役割を有する。この下部電極13と上部電極12の間に下部電極13を負に、上部電極12を正に電圧を印加することによって、磁化固定層21から磁化反転層23に向けてスピン偏極電子が注入される。スピン注入による磁化反転後、正負逆方向に電圧を印加すれば、磁化反転層23の磁化方向はスピン注入前の状態に戻る。
これらの一対の電極(上部電極12および下部電極13)の少なくとも一方は、透明電極材料で形成されていることが好ましい。すなわち、光変調素子10の磁化反転層23の側から光を入射させ、磁化方向が反転した磁化反転層23において偏光面の回転角度が変化した光を反射する場合には、上部電極12を透明電極材料で形成することが好ましい。ここで、磁化反転層23の側から光を入射させ、磁化方向が反転した磁化反転層23において偏光面が回転した光を磁化反転層23と磁化固定層21を透過して光変調素子10の下部電極13の側から出射させる場合は、上部電極12および下部電極13をともに透明電極材料で形成することが好ましい。また、透明電極材料としては、例えば、IZO、ITO等を用いることができる。さらに、上部電極12または下部電極13を10nm以下の厚さのCu膜で構成すれば、透明電極材料を用いなくとも光を十分に透過させることができる。
これらの一対の電極(上部電極12、下部電極13)は、後記の空間光変調器30では、光変調素子10を縦横に一定間隔で二次元配置する構成としているため、下部電極13は、帯状の形状を有し、一定幅かつ一定間隔で基板16上に設けられている。一方、上部電極12は、後記の空間光変調器30では、縦横に一定間隔で二次元配置された光変調素子10の中から選ばれる任意の素子に電圧を印加することができるように、一定幅の帯状形状を有し、その長手方向が下部電極13の長手方向と直交するように、一定間隔で平行に配置されている。
これらの上部電極12および下部電極13は、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)等で形成される。中でも、銅(Cu)は、安価で導電性に優れるため、好ましい。そして、これらの一対の電極(上部電極12および下部電極13)の少なくとも一方の電極(図1では、下部電極13)がCuで形成される。特に、光変調素子10の磁化反転層23の側から光を入射させ、磁化方向が反転した磁化反転層23において偏光面の回転角度が変化した光を反射する場合には、上部電極12を透明電極材料で形成するとともに、下部電極13がCuで形成される。下部電極13を銅で形成する場合、その厚さは、通常、5nm以上である。また、上部電極12を銅で形成する場合は、その厚さを10nm以下とすることによって、光を透過する透明電極とすることが可能である。
<防御層>
本発明の光変調素子10において、Cuで形成される電極(図1では、下部電極13)と、スピン注入磁化反転素子部11(磁化固定層21)との間に金属からなる防御層14が設けられる。一般に、Cuで形成される電極(図1では、下部電極13)は、光変調素子10の素子化プロセス時に、大気中での加熱処理(200℃程度)を施すと、Cuが磁化固定層21内に拡散し、素子動作のばらつきが発生しやすくなる。そこで、Cuで形成される電極(図1では、下部電極13)と、スピン注入磁化反転素子部11(磁化固定層21)との間に金属からなる防御層14を設けることによって、大気中での加熱処理時にCuが磁化固定層21内に拡散するのを抑制し、素子動作のばらつきを防止することができる。特に、垂直磁気異方性を有する磁化固定層21を備える場合には、加熱処理による垂直磁気異方性の劣化を抑制し、光変調素子10の動作のばらつきを防止することができる。また、防御層14を設けることによって、非磁性中間層22をMgOを用いて形成する場合でも、MgO膜の結晶性改善に必要な300℃以上の熱処理にも十分耐え、その熱処理による影響を防止することができる。また、上部電極12をCuで形成する場合は、上部電極12と、スピン注入磁化反転素子部11(磁化反転層23)との間に金属からなる防御層が設けられる。この場合、Cuで形成される上部電極12と、スピン注入磁化反転素子部(磁化反転層23)との間に金属からなる防御層を設けることによって、大気中での加熱処理時にCuが磁化反転層23内に拡散するのを抑制し、素子動作のばらつきを防止することができる。特に、垂直磁気異方性を有する磁化反転層23を備える場合には、加熱処理による垂直磁気異方性の劣化を抑制し、光変調素子10の動作のばらつきを防止することができる。この防御層14は、Ta、W、RuおよびAuから選ばれる少なくとも1種またはそれらの合金からなる金属膜、あるいは前記金属膜を複数積層してなる積層膜で形成されていることが好ましい。特に、成膜後の表面粗さが小さく、上層に成膜する磁性材料等からなる層(磁化固定層21、非磁性中間層22、磁化反転層23)の結晶性や磁気特性を向上させる下地膜として機能する点で、TaおよびRuから選ばれる少なくとも1種またはそれらの合金からなる金属膜、あるいはそれらの金属膜を複数積層してなる積層膜で形成されていることが好ましい。また、防御層14の厚さは、2nm以上が好ましい。
また、図1に示す第1実施形態の光変調素子10は、下部電極13と、スピン注入磁化反転素子部11(磁化固定層21)との間に金属からなる防御層14を設けた例であるが、本発明の光変調素子において、防御層は、Cuからなる上部電極と、スピン注入磁化反転素子部(磁化反転層)との間に設けてもよい。また、上部電極と下部電極をともにCuで形成する場合は、上部電極とスピン注入磁化反転素子部(磁化反転層)との間、および下部電極と、スピン注入磁化反転素子部(磁化固定層)との間に金属からなる防御層を設けてもよい。
<保護膜、下地層>
また、光変調素子10において、必要に応じて、磁化反転層23と上部電極12の間に保護膜15を配設したり、さらに、磁化固定層21の下側に、下地層を設けてもよい。
保護膜15は、磁化反転層23の酸化等によるダメージを防止する役割を担う層であり、特に、光変調素子10を形成する際の熱処理(後記する)における磁化反転層23の酸化を防止する。また、保護膜15を構成する材料には、熱処理の際に磁化反転層23を構成する材料と反応しない性質が求められる。さらに、保護膜15には、透光性に優れ、磁化反転層23による磁気カー効果を低下させない特性(換言すれば、入射光と反射光の偏光面を実質的に回転させない特性)を有していることが要求される。このような要求を満たす材料として、Ta、Ru等を用いることができる。この保護膜15は、Cuを含む材料で形成することは避ける必要がある。Cuを含む材料を用いると、熱処理中にCuの拡散が生じて磁化反転層23の垂直磁気異方性を消失させてしまう虞がある。
下地層は、必要に応じて、磁化固定層21の下側に設けられる層であり、5nm以上の厚さのPt膜で構成することができる。磁化固定層21の下地として下地層を挿入することで、磁化固定層21の保磁力を増大することができ、より安定したスピン注入磁化反転動作をさせることができる。なお、下地層の厚さは、厚くし過ぎても保磁力の大きさが飽和するため、20nm以下が好ましい。
<光変調素子の製造方法>
図1に示す光変調素子10は、前記の構造を形成することができる方法であれば、いずれの方法にしたがって製造してもよい。図2(a)〜(g)に、図1に示す光変調素子10の製造方法の一例を示す。
図2(a)〜(g)に示す製造方法では、まず、最初に、基板16の表面に下部電極13を形成する〔図2(a)〕。この下部電極13の形成は、例えば、基板16の表面に一様にスパッタ法等により下部電極13の材料からなる膜を形成し、この膜上に下部電極13と同じ線幅のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをエッチングマスクとして基板16の表面が露出するまで膜をドライエッチング等した後、レジストパターンを剥離することにより、行うことができる。また、下部電極13を形成する領域を溝としたレジストパターンを先に形成し、スパッタ法により下部電極13の材料からなる膜を形成した後、レジスト膜を剥離するリフトオフ法によって下部電極13を形成してもよい。
続いて、下部電極13の間の溝をアルミナや酸化珪素等の絶縁材料(絶縁体17)で埋める〔図2(b)〕。アルミナ膜の形成は、反応性スパッタリング法やCVD法、ゾル−ゲル法等により行うことができ、必要に応じて、CMP処理等により下部電極13を含む表面を平滑にする。こうして形成された表面の下部電極13の上に、防御層14、磁化固定層21、非磁性中間層22、磁化反転層23、保護膜15(図2では各層ごとの表示を省略する)を、この順番で各層ごとに所定の膜厚でスパッタリング法(例えば、マグネトロンスパッタリング)等により逐次成膜し、防御層14と、スピン注入磁化反転素子部11(磁化固定層21、非磁性中間層22、磁化反転層23)と、保護膜15の各層の構成成分を順次積層した膜11aを形成する〔図2(c)〕。このとき、Co/Pt多層膜からなる磁化固定層21と磁化反転層23の成膜では、例えば、CoスパッタターゲットとPtスパッタターゲットとが装着可能で、これらのターゲットに選択的にスパッタ電圧を印加することができる構造のスパッタ装置を用いることで、Co/Pt多層膜を容易に形成することができる。なお、基板16上に下部電極13、防御層14、磁化固定層21、非磁性中間層22、磁化反転層23、保護膜15の順に、スパッタリング法等、公知の技術を用いて、真空中で一貫して成膜してもよい。
次に、基板16の下部電極13の上に形成された膜11aに対して、必要に応じて、熱処理を施す。この熱処理は、光変調素子10の特性を向上させ、また、後に行われるフォトリソグラフィプロセス中における光変調素子10の特性変化を抑制するために行われる。この熱処理における磁化固定層21の磁気特性の低下を抑制する観点から下部電極13の上側に防御層14が設けられている。また、磁化反転層23の表面に、耐酸化性に優れるRu膜等を保護膜15として設けておくことも好ましい。特に、銅(Cu)で形成される電極(図1では、下部電極13)と、スピン注入磁化反転素子部11(磁化固定層21)との間に金属からなる防御層14を設けることによって、大気中での加熱処理時にCuが磁化固定層21内に拡散するのを抑制し、素子動作のばらつきを防止することができる。特に、垂直磁気異方性を有する磁化固定層21を備える場合には、加熱処理による磁化固定層21の垂直磁気異方性の劣化を抑制し、光変調素子10の動作のばらつきを防止することができる。
続いて、熱処理された膜11aの上に、例えば、100nm×300nmのレジストパターン91をメサパターンとなるように、EB露光法等により形成する〔図2(d)〕。このレジストパターン91をエッチングマスクとして用いて、膜11aをエッチングし、その後、レジストパターン91を除去する〔図2(e)〕。これにより、下部電極13の上に、防御層14、スピン注入磁化反転素子層11(磁化固定層21、非磁性中間層22、磁化反転層23)、保護膜15の順で構成された光変調素子層11bが形成される。次いで、CVD法等により、光変調素子層11bの間をアルミナや酸化珪素等の絶縁材料(絶縁体17)で埋め、必要に応じてCMP処理等により光変調素子層11bを含む表面を平滑にする〔図2(f)〕。または、前記の膜11aの各層をエッチングあるいはArイオン等によるイオンビームミリング法によって、下部電極13の手前までミリング加工した後に、このエッチングにより形成された溝をアルミナや酸化珪素等の絶縁材料(絶縁体17)で埋め、その後にリフトオフ(レジストパターン91の剥離)またはCMPを行う方法を用いてもよい。CMP処理等を行う場合には、スピン注入磁化反転素子部11の最上部に形成されている保護膜15(あるいは磁化固定層21の最上層)の厚さが所定値となるように、成膜時に研磨厚さ分だけ厚く形成しておいてもよい。
次に、上部電極12を、光変調素子層11bが覆われるように、かつ、下部電極13のラインパターンと直交するように、所定間隔で形成する〔図2(g)〕。この上部電極12の形成は、下部電極13の形成方法と同様にして行うことができる。このような製造方法を用いれば、微細な光変調素子10を高密度に配置した空間光変調器30を製造することができ、表示速度が速く、高精細な画像および映像表現が可能となる。
<光変調素子>
図1に示す光変調素子10は、下部電極13と上部電極12との間に一定の電圧を印加したときに、光変調素子10に入射した入射光の偏光面をカー効果により一定角度回転させて反射または透過する役割を担う。光変調素子10の平面視(図3)での大きさは、例えば、100nm×300nmの大きさからなり、図3に示す空間光変調器30では、光変調素子10は、二次元マトリックス状(縦横に一定間隔で二次元配置された状態)に配置されており、1個の光変調素子10が1画素となっている。また、光変調素子10の形状は長方形(矩形)に限定されるものではない。光変調素子10同士の間隔は、上部電極12、下部電極13およびスピン注入磁化反転素子部11の成膜技術(後述するように、半導体製造プロセスが好適に用いられる)の精度に応じて、適宜、定めることができる。
次に、本発明の光変調素子10を用いた空間光変調器の実施形態について説明する。
[空間光変調器]
図3(a)は、本発明の第2実施形態に係る空間光変調器30を示す。
図3(a)に示す空間光変調器30は、二次元アレイ状に配設された光変調素子10の磁化反転層23における磁化状態を変化させることによって、その磁化反転層23に入射する光の偏光に対してその反射光の偏光方向を変化させて、光の変調を行うものである。
図3(a)、(b)に示すように、空間光変調器30は、基板16と、基板16上に一定間隔で平行に設けられた帯状の下部電極13と、下部電極13上に一定間隔で設けられたスピン注入磁化反転素子部11と、下部電極13とでスピン注入磁化反転素子部11を挟むように一定間隔で平行に設けられた帯状の上部電極12と、を備えている。つまり、下部電極13と、スピン注入磁化反転素子部11と上部電極12とで、一つの光変調素子10からなる光変調部10aを構成している。また、後記するように、上部電極12の上方には、ハーフミラー18、偏光フィルタ19、20が配置されており、光変調部10aからの反射光をハーフミラー18で反射させ、反射光の偏光面の角度に応じて、偏光フィルタ(偏光手段)20が、その反射光を透過し或いは遮光する(図4(a)参照)。
図3(a)に示すように、この空間光変調器30の駆動(動作)は制御装置80によって制御され、制御装置80は、複数の下部電極13の中から電圧を印加する電極を選択する下部電極選択部82と、複数の上部電極12の中から電圧を印加する電極を選択する上部電極選択部83と、下部電極選択部82と上部電極選択部83とに電力を供給する電源81と、下部電極選択部82と上部電極選択部83および電源81の動作制御を司る制御部84とを備えている。以下、各構成要素について説明する。
<基板>
基板16は、下部電極13、スピン注入磁化反転素子部11および上部電極12を形成するための土台となるものである。空間光変調器30では、後記するように、光変調部10aのスピン注入磁化反転素子部11に入射した後に反射される光を利用するため、この実施形態においては、基板16に透光性は要求されず、下部電極13、スピン注入磁化反転素子部11および上部電極12を形成(成膜)する際の成膜環境に耐えられるものであればよい。したがって、基板16としては、シリコン基板、プラスチック基板、Siウエハ、ガラス基板、セラミックス基板等を用いることができる
<制御装置>
下部電極選択部82は、複数の下部電極13にそれぞれ対応して設けられた複数のスイッチング素子から構成される。上部電極選択部83もこれと同様に、複数の上部電極12にそれぞれ対応して設けられた複数のスイッチング素子から構成される。各スイッチング素子へは電源81から一定電圧が供給されており、駆動対象となる光変調素子10(スピン注入磁化反転素子部11)に下部電極13を介して接続されているスイッチング素子および上部電極12を介して接続されているスイッチング素子が、制御部84からの指令(動作信号)を受けて導通動作を行うことにより、その光変調素子10からなる光変調部10a(スピン注入磁化反転素子部11)に電圧が印加される。駆動対象となっている光変調部10a(スピン注入磁化反転素子部11)の選択と、この光変調部10aを駆動するためのスイッチング素子の動作制御は、制御部84によって行われる。
電源81は電圧反転機能を備えている。つまり、下部電極13に正電圧を印加すると共に、上部電極12に負電圧を印加することができ、逆に、下部電極13に負電圧を印加すると共に、上部電極12に正電圧を印加することもできるようになっている。この電源81の電圧反転機能の制御もまた制御部84により行われる。制御部84は、所謂、コンピュータであり、図示しない中央演算装置がROMに格納されたプログラムを実行することにより、電源81、下部電極選択部82および上部電極選択部83の動作制御が行われる。
<偏光フィルタ>
図4(a),(b)において、偏向軸70で示される光では、偏向軸は、ランダムな方向に向いている。偏光フィルタ19は、光変調部10aのスピン注入磁化反転素子部11へ入射する光が偏光軸71で示される所定方向となるように、偏向軸を揃える役割を果たす。偏光フィルタ(偏光手段)20は、ハーフミラーで反射させたスピン注入磁化反転素子部11からの反射光を、その偏光軸の角度によって、透過させたり遮光したりする役割を果たす。この図4(a),(b)に示されている状態について、図4を参照して以下に説明する。
<空間光変調器における光変調素子の駆動>
図4に、本発明の第2実施形態における空間光変調器30を構成する光変調部10a(スピン注入磁化反転素子部11)への電圧印加形態と磁化反転層23のカー効果との関係を模式的に表した図を示す。図4(a),(b)には、それぞれ、下部電極13と上部電極12とに印加する電圧の正負が逆にされた形態が示されている。図4(a),(b)に示す、磁化固定層21および磁化反転層23の各層内に示される矢印は磁化の向き(スピンの向き)を表している。
図4(a)に示すように、上部電極12と下部電極13との間で電流が上部電極12側から下部電極13側へと膜面に垂直に流れるようにした場合には、磁化反転層23における磁化(スピン)の向きは、磁化固定層21における磁化の向きと同じになる。一方、図4(b)に示すように、下部電極13側から上部電極12側へと膜面に垂直に電流が流れるようにした場合には、磁化反転層23における磁化の向きは、磁化固定層21における磁化の向きとは逆になる。このように、上部電極12と下部電極13との間で流す電流の向きによって、磁化反転層23における磁化の状態が変化する。この磁化の状態変化は、数ns〜数十ns(ns:ナノ秒)と極めて高速である。
偏光フィルタ19を通過することにより偏光軸71で示される所定の偏光軸を有する入射光が、図4(a),(b)に示す各光変調部10a(スピン注入磁化反転素子部11)へ入射すると、磁化反転層23の磁化状態に応じて、カー効果により、偏光面が所定角度回転した反射光となって、各光変調部10a(スピン注入磁化反転素子部11)から出射される。ここでは、カー回転角について、図4(a)の光変調部10aのように、偏光軸72で示される右回転が生じる方向を「正方向(+方向、+θ)」とし、図4(b)の光変調部10aのように、偏光軸73で示される左回転が生じる方向を「負方向(−方向、−θ)」とする。
そこで、反射光の進行方向に、ハーフミラー18を配置すると、反射光は、ハーフミラー18で反射する。そして、ハーフミラー18での反射光の進行方向に、偏光フィルタ20として偏光軸72と平行な偏光軸を有するものを配置すると、図4(a)の場合の反射光は偏光フィルタ20を通過することができるが、図4(b)の場合の反射光は偏光フィルタ20を通過することができない状態を作り出すことができる。空間光変調器30は、前記の通りに上部電極12と下部電極13とを選択的に駆動(電圧印加)して所望の光変調部10aに電流を流すことができるようになっているため、光変調部10a毎に(画素毎に)磁化反転層23の磁化の向きを電流の向きによって制御し、偏光フィルタ20を通過可能な反射光とするか通過不能な反射光とするかによって、反射光の強弱(コントラスト)を制御することができる。
また、磁化反転層23による磁気カー効果の大きさ(カー回転角の大きさ)によって反射光のコントラストの強弱比が決まる。図4(a),(b)に示すように、反射光を透過するかまたは遮光するかの状態の場合(つまり、カー回転角が一定角度以上ある場合)には、高いコントラストを得ることができるが、カー回転角が小さい場合には、低コントラストとなる。なお、図4(a)のように磁化反転層23の磁化の向きが上向きである場合に光検出器の出力が「明状態」となり、逆に図4(b)のように磁化反転層23の磁化の向きが下向きである場合には「暗状態」となる。
このように、磁化反転層23の磁化状態(磁化の向き)は、パルス電流を流す向きによって制御することができるため、パルス電流によって光の偏光面を制御する光変調素子10として動作させることができる。なお、パルス印加後の磁化の向きはそのまま保持され、別途電流を流したり、電圧を印加したりする必要はない。すなわち、本発明の光変調素子10からなる光変調部10aは自らメモリ機能を有する。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る空間光変調器40について説明する。
図5に示す第3実施形態に係る空間光変調器40は、磁化反転層23における磁化状態を変化させることによって磁化反転層23へ入射する光の偏光方向に対してその透過光の偏光方向を変化させるものである。すなわち、入射光を、入射光が入射する側とは反対側に透過させ、透過光の偏光を検出するファラデー効果を利用するものである。
第2実施形態では、偏光フィルタ20を入射光が入射する側とは反対側、すなわち、基板16の外側に配置する(図5(a),(b)参照)。
この空間光変調器40では、光変調素子10は、下部電極13と上部電極12との間に一定の電圧を印加したときに、光変調素子10からなる光変調部10aに入射した入射光の偏光面をファラデー効果により一定角度回転させて透過する役割を担う。
そして、入射光を透過させるため、基板16や、下部電極13も、透過性を有する必要がある。そのため、基板16としては、石英ガラス等の透過性に優れた基板を用いる。下部電極13としては、IZO、ITO等の透明電極材料を用いてもよいし、Cu等の金属膜も、薄膜であれば、照射する光の波長によっては一定の透過性が得られるので、用いることが可能である。
その他の構成については、第2実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
<光変調素子の駆動>
図5に第3実施形態における光変調素子への電圧印加形態と磁化反転層のファラデー効果との関係を模式的に表した図を示す。図5(a),(b)には、それぞれ、下部電極と上部電極とに印加する電圧の正負が逆にされた形態が示されている。
なお、磁化反転層23における磁化の向きについての説明は、第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
偏光フィルタ19を通過した、偏光軸71で示される所定の偏光方向を有する入射光が、図5(a),(b)に示す各光変調素子10へ入射すると、磁化反転層23によるファラデー効果により、偏光方向が所定角度(θ、θ)回転した透過光となって、各光変調部10aから出射される。ここでは、図5(a)の場合には偏光軸72で示される右回転方向(これを「+方向」とする)へ、図5(b)の場合には偏光軸73で示される左回転方向(これを「−方向」とする)へ、それぞれファラデー回転が生じる。
そこで、透過光の進行方向に、偏光軸72と平行な偏光軸を有する偏光フィルタ20を配置すると、図5(a)の場合の透過光は偏光フィルタ(偏光手段)20を通過することができるが、図5(b)の場合の透過光は偏光フィルタ20を通過することができない状態を作り出すことができる。こうして、偏光フィルタ20を通過する透過光を、光変調素子10ごとにその磁化反転層23の磁化の向きを電流の向きによって制御することにより、透過光の強弱(コントラスト)を制御することができる。
その他の説明については、第2実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
次に本発明に係る光変調素子の実施例および比較例について説明するが、本実施例では、防御層の有無による磁化固定層の磁気特性を調査することが目的であるため、図1に示す構造の光変調素子全層ではなく、第1および第2界面層、非磁性中間層、磁化反転層を除く各層を形成した素子とした。また、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、酸化膜付シリコン基板上に、下部電極、防御層、磁化固定層、保護膜の順に、スパッタリング法を用いて、真空中で一貫して成膜した。次に、保護膜上に画素サイズのレジストを形成した後、Arイオンによるイオンビームミリング法によって、下部電極の手前までミリング加工した。その後、レジストを剥離せずにそのままSiOを全面に堆積し、レジストをリフトオフした。その後、上部に上部電極としてIZOからなる透明電極を形成した。
磁化固定層は、一層当たりの膜厚(tCo)が0.4nmのCo膜と、一層当たりの膜厚1nmのPt膜とを交互に10層積層したCo/Pt多層構造とした。
下部電極は、膜厚200nmの銅(Cu)膜で形成した。
上部電極は、膜厚400nmのIZO膜とした。
保護膜は、膜厚3nmのRu膜とした。
さらに、下部電極と磁化固定層の間に防御層として、膜厚5nmのTa層を形成した。
(比較例1)
下部電極と磁化固定層の間に防御層を設けなかった以外は、実施例1と同様の構造の素子を製造した。
実施例1および比較例1で製造した素子について、それぞれ7kOe(557kA/m)、1×10−4Paの真空磁場中で、340℃、2時間の加熱処理を施し、この加熱処理の前後における極カー効果を測定した。実施例1の光変調素子に関する測定結果を図6(a)および(b)に、比較例1の光変調素子に関する測定結果を図7(a)および(b)に示す。なお、図6および図7に示す横軸の単位において、1[Oe]=79.577[A/m]である。
この図6(a),(b)および図7(a),(b)に示す測定結果から、防御層を有する実施例1の素子は、非磁性中間層(MgO膜)の結晶性を改善するために340℃の加熱処理を施した後でも、磁化固定層の垂直磁気異方性が維持されることが分かる。これに対して、防御層を有しない比較例1の素子は、340℃、2時間の加熱処理を施した場合、磁化固定層の垂直磁気異方性が完全に消失することが分かる。
本発明の第1実施形態に係る光変調素子の構造を示す模式断面図である。 (a)〜(g)は、光変調素子を製造するための主要工程を説明する図である。 (a)は、本発明の空間光変調器の構成を示す概略平面図、(b)は、(a)に示すA−A線断面を示す模式図である。 (a)および(b)は、本発明の第2実施形態に係る空間光変調器の動作を示す概念図である。 (a)および(b)は、本発明の第3実施形態に係る空間光変調器の動作を示す概念図である。 (a)は、実施例1の光変調素子について340℃で加熱処理前の極カー効果の測定結果、(b)は、実施例1の光変調素子について340℃で加熱処理後の極カー効果の測定結果を示す図である。 (a)は、比較例1の光変調素子について340℃で加熱処理前の極カー効果の測定結果、(b)は、比較例1の光変調素子について340℃で加熱処理後の極カー効果の測定結果を示す図である。
符号の説明
10 光変調素子
10a 光変調部
11 スピン注入磁化反転素子部
11a 膜
11b 光変調素子層
12 上部電極
13 下部電極
14 防御層
15 保護膜
16 基板
17 絶縁体
18 ハーフミラー
19,20 偏光フィルタ
21 磁化固定層
21a Co膜
21b Pt膜
22 非磁性中間層
23 磁化反転層
23a Co膜
23b Pt膜
第1界面層
第2界面層
30 空間光変調器
40 空間光変調器
70 偏光軸
71 偏光軸
80 制御装置
81 電源
82 下部電極選択部
83 上部電極選択部
84 制御部
91 レジストパターン

Claims (10)

  1. 磁化固定層、非磁性中間層および磁化反転層の順で積層して構成されたスピン注入磁化反転素子部と、前記スピン注入磁化反転素子部を挟む一対の電極とを有し、前記磁化反転層における磁化状態の変化に応じて、前記磁化反転層へ入射した光の偏光面に対してその反射光または透過光の偏光面の回転角を変化させる光変調素子であって、
    前記一対の電極の少なくとも一方の電極がCuで形成され、前記Cuで形成された電極と前記スピン注入磁化反転素子部との間に金属からなる防御層を有することを特徴とする光変調素子。
  2. 前記防御層が、Ta、W、RuおよびAuから選ばれる少なくとも1種またはそれらの合金からなる金属膜、あるいは前記金属膜を複数積層してなる積層膜で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光変調素子。
  3. 前記磁化反転層および前記磁化固定層が、垂直磁気異方性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光変調素子。
  4. 前記磁化反転層および磁化固定層のうちの少なくとも一方がCo膜とPt膜を交互に積層した多層構造で構成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光変調素子。
  5. 前記磁化反転層と前記非磁性中間層の界面、および前記磁化固定層と前記非磁性中間層の界面の少なくとも一方に、遷移元素または遷移元素を含む合金からなる界面層を有することを特徴とする請求項4に記載の光変調素子。
  6. 前記磁化反転層と前記磁化固定層のうちの少なくとも一方が、遷移元素と、希土類元素とを含む合金で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光変調素子。
  7. 前記遷移元素が、Fe、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の光変調素子。
  8. 前記希土類元素が、Sm、Eu、GdおよびTbから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の光変調素子。
  9. 前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極が、透明電極材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の光変調素子。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の光変調素子で構成される光変調部を有し、前記磁化反転層における磁化状態の変化に応じて、前記磁化反転層へ入射した光の偏光面に対してその反射光または透過光の偏光面の回転角を変化させ、反射光または透過光の先に設けた偏光手段を通じて特定の偏光のみを透過させることにより、光の変調を行う空間光変調器。
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