JP2010060098A - 焼結軸受およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温時でも高速摺動時でも、摺動部に十分な油を供給することで円滑に潤滑させることができる焼結軸受を提供する。
【解決手段】軸受面8a(8b)に開口した気孔20を、封止剤21により含浸・固化し封孔することで、軸受面8a(8b)の開口した気孔から温度変化や圧力上昇により、焼結体内に油が移動することを抑え、例えば低温時でも摺動部に油を留まらせておくことができ、優れた潤滑性を確保できる。また、封止剤21が含浸された軸受面8a(8b)の気孔20で凹部22を形成することで、この凹部22を油溜りとして機能させることができ、この凹部22に保持した油を摺動部に供給することで、例えば油切れの発生しやすい高速摺動時等における潤滑性を高めることができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、焼結金属で形成された焼結軸受およびその製造方法に関する。
焼結軸受は、金属粉末を圧粉成形した後、焼結することにより形成され、表面および内部に無数の気孔を有することを特徴とする。例えば、特許文献1には、内部気孔に油を含浸させた焼結軸受と、焼結軸受の内周に挿入された軸部材とを有する軸受装置が示されている。軸部材が回転すると、焼結軸受の軸受面に開口した気孔(以後、表面開孔とする)から油が滲みだし、この油が焼結軸受と軸部材との摺動部に供給されることにより、潤滑性が高められる。
特開平6−173953号公報 特開2004−108461号公報
しかし、上記特許文献1のような軸受装置において、軸部材の回転開始直後等の低温時には、含浸された油が自身の体積収縮により焼結軸受の内部の気孔部に凝集するため、摺動部に十分な油を介在させることができず、油不足による潤滑不良を生じる恐れがある。例えば特許文献2のように、焼結軸受の表面を樹脂でコーティングすれば、焼結軸受の表面開孔が封止されるため、低温時でも焼結軸受の内部に油が凝集することによる上述の潤滑不良を起こすことはない。しかし、このように焼結軸受の表面開孔を完全に封止すると、焼結軸受内部の油を摺動部に供給することができないため、低温時以外、特に高温時や高速摺動時では逆に油の供給不足による潤滑不良が生じる恐れがある。
本発明の課題は、軸受の温度や摺動速度に関わらず、摺動部に十分な油を常に供給することにより潤滑不良を防止できる焼結軸受を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明は、表面および内部に無数の気孔を有し、軸受面が形成された焼結軸受であって、少なくとも軸受面に開口した気孔に封止剤が含浸され、この封止剤が含浸された気孔で軸受面に凹部を形成している。
このように、本発明では、軸受面に開口した気孔に封止剤を含浸させて封止することにより、低温時に軸受面付近に存在する油がこの気孔から内部に向かって体積収縮し凝集することを抑えることができるため、低温時でも摺動部に油を留まらせておくことができ、潤滑不良を防止できる。また、軸受面に凹部を形成することで、この凹部を油溜りとして機能させることができるため、凹部に保持した油を摺動部に供給することで、高速摺動時であっても潤滑不良を防止できる。このとき、凹部を、封止剤が含浸された表面の気孔で形成することで、凹部の少なくとも一部が封止剤で形成されるため、この封止剤が、凹部に保持された油と接触することとなる。従って、油との親和性の高い封止剤を気孔に含浸させることで、凹部に確実に油を保持することができる。
軸受面のうち、前記凹部を除く領域は、焼結軸受が支持する相手材と接触することがある。従って、この領域を焼結金属で形成すれば、軸受面の耐摩耗性を高めることができる。一方、例えば焼結軸受が支持する相手材が金属製である場合、焼結軸受の前記領域を金属で形成すると、金属同士の接触により異音(いわゆる鳴き音)が発生することがある。このような異音を抑えたい場合は、例えば焼結軸受の前記領域の少なくとも一部を樹脂などで被覆した所謂オーバーレイを形成し、オーバーレイ部で相手材と接触するようにすればよい。
前記凹部を形成する気孔に含浸された封止剤の表面の中央部を凹ませておくと、凹部に保持できる油量が増すと共に、凹部で油を保持しやすくなる。
前記凹部は、例えば、軸受面の気孔に含浸した封止剤を、封止剤の固化時の体積収縮により軸受面から深部(内部)に向かって封止剤表面を後退させることで形成することができる。また、焼結軸受の気孔に100%封止剤を含浸させるのではなく、内部に封止剤が含浸されていない気孔を残すことにより、軸受面に確実に凹部を形成することができる。すなわち、軸受面に開口した気孔から含浸された封止剤が、焼結軸受の内部に残った気孔部に向かって毛細管現象により移動しながら硬化するため、封止剤により形成された表面が軸受内部側に後退し、これにより軸受面に確実に凹部を形成することができる。
軸受面に動圧発生部を設ければ、摺動部に介在した油膜の圧力が高められ、軸受剛性を向上させることができる。焼結軸受に動圧発生部を設けた場合、圧力の高められた油が焼結軸受の表面開孔から内部に移動し圧力が低下する、いわゆる「動圧抜け」が発生することがある。上記のように、軸受面の表面開孔に樹脂を含浸させれば、動圧抜けを防止し、油膜に発生した圧力を確実に維持でき、軸受剛性を高めることができる。
上記のような焼結軸受は、例えば、金属やセラミック、樹脂などの粉末を用いて圧粉成形した成形体を焼結して焼結体を形成し、この焼結体の少なくとも軸受面の表面開孔に封止剤を含浸させ、この封止材を含浸させた気孔で軸受面の少なくとも一部に凹部を形成することで製造される。このとき、焼結体に前記凹部を形成した後にサイジングをすると凹部が潰されてしまう恐れがあるため、樹脂の含浸は焼結体のサイジングの後に行うことが好ましい。
以上のように、本発明の焼結軸受によれば、低温時でも高速摺動時でも、摺動部に十分な油を供給することができるため、潤滑不良を防止できる。
以下、本発明の実施形態を例示する図面に基づいて説明する。本例は一例であり、特に軸受形状や使用装置を限定するものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る焼結軸受(軸受スリーブ8)を有する流体動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一例である。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する流体動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4はモータブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5は、ディスクハブ3の内周に取付けられている。ディスクハブ3は、その外周に磁気ディスクDを一枚または複数枚(図1では2枚)保持している。このように構成されたスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電するとロータマグネット5が回転し、これに伴ってディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
図2は、流体動圧軸受装置の一例を示している。この流体動圧軸受装置1は、軸部材2と、有底筒状のハウジング7と、焼結軸受としての軸受スリーブ8と、シール部材9とを主な構成要素として構成されている。なお、以下では、説明の便宜上、軸方向でハウジング7の閉塞側を下側、開口側を上側として以下説明する。
軸部材2は、例えばステンレス鋼等の金属材料で形成され、軸部2aと、軸部2aの下端に設けられたフランジ部2bとを備えている。軸部材2は、軸部2aおよびフランジ部2bを一体に形成する他、一部(例えばフランジ部2bの両端面2b1・2b2)を樹脂で形成することもできる。尚、フランジ部2bは必ずしも設ける必要はなく、例えば、軸部の端部に球面部を形成し、この球面部とハウジング7の底部7bとを接触摺動させることでピボット軸受を構成することもできる。
軸受スリーブ8は、例えば、銅、あるいは銅および鉄を主成分とする焼結金属で略円筒状に形成される。軸受スリーブ8の内周面8aはラジアル軸受面として機能し、下側端面8cはスラスト軸受面として機能する。軸受スリーブ8の表面および内部には独立孔や連通孔からなる無数の気孔が形成されている。軸受スリーブ8のには、樹脂やエラストマー、ゴムなどの高分子,ワックスなどの使用温度下で固体となる有機物、錫合金や亜鉛合金などの低融点金属,低融点ガラスなどの無機物からなる封止剤が含浸され、これにより軸受スリーブ8の表面に開口した気孔が樹脂で封止される。詳しくは、図4に示すように、軸受スリーブ8の表面のうち、少なくとも内周面8a(ラジアル軸受面)および下側端面8c(スラスト軸受面)に開口した気孔20に封止剤21が含浸され、この封止剤21を含浸された気孔20により、軸受面に凹部22が形成される。本実施形態では、軸受スリーブ8の表面全体の気孔20に封止剤21が含浸されている。気孔20に含浸された封止剤21の表面は、中央部を凹ませた形状(すり鉢形状、お椀形状、あるいは台形錐状)をなしている。軸受スリーブ8の表面のうち、少なくとも軸受面であるラジアル軸受面およびスラスト軸受面では、凹部22を除く領域(接触部23)が焼結金属の母材(本実施形態では銅あるいは銅及び鉄)で形成されている。このように、軸部材2の外周面2a1と接触し得る接触部23を金属材料で形成することで、耐摩耗性を高めることができる。
軸受スリーブ8の内周面8aには、ラジアル軸受隙間の流体膜(油膜)に動圧作用を発生させるためのラジアル動圧発生部が形成され、本実施形態では図3に示すように、ヘリングボーン形状の動圧溝8a1、8a2を配列した2つの動圧溝領域が軸方向に離隔して形成される。2つの動圧溝領域のうち、動圧溝8a1、8a2を除くクロスハッチングを付した部分は丘部となる。上側の動圧溝領域では、動圧溝8a1が軸方向非対称形状に形成され、具体的には、丘部の軸方向略中央部に形成された帯状部分に対して、上側の溝の軸方向寸法X1が下側の溝の軸方向寸法X2よりも大きくなっている(X1>X2)。下側の動圧溝領域では、動圧溝8a2が軸方向対称形状に形成される。以上に述べた上下動圧溝領域でのポンピング能力のアンバランスにより、軸部材2の回転中は、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面との間に満たされた油が下方に押し込まれるようになる。
軸受スリーブ8の下側端面8cには、スラスト軸受隙間の油膜に動圧作用を発生させるためのスラスト動圧発生部が形成される。本実施形態では、スラスト動圧発生部は、図3(b)に示すようにスパイラル形状を成している。
ハウジング7は、軸方向一方を開口したコップ状を成し、内周に軸受スリーブ8が保持された筒状の側部7aと、側部7aの下端を閉塞する底部7bとを一体に有する。ハウジング7の材料は特に限定されず、真鍮やアルミニウム合金などの金属、樹脂、ガラス等の無機物などを用いることができる。樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のどちらでも用いることができる。また必要に応じて、ガラス繊維やカーボン繊維、カーボンブラックなどのカーボンナノ材料や黒鉛などの様々な添加材を配合した樹脂組成物を用いることもできる。
ハウジング7の底部7bの上側端面7b1には、スラスト軸受隙間の油膜に動圧作用を発生させるためのスラスト動圧発生部として、例えばスパイラル形状の動圧溝が形成される(図示省略)。
シール部材9は、例えば樹脂材料又は金属材料で環状に形成され、ハウジング7の側部7aの上端部内周に配設される。シール部材9の内周面9aは、軸部2aの外周に設けられたテーパ面2a2と所定のシール空間Sを介して対向する。なお、軸部2aのテーパ面2a2は上側(ハウジング7に対して外部側)に向かって漸次縮径し、軸部材2の回転時には毛細管力シールおよび遠心力シールとしても機能する。シール部材9で密封されたハウジング7の内部空間に充満した潤滑油の油面は、シール空間Sの範囲内に維持される。なお必要に応じて、テーパ面などに撥油剤等により撥油性を付与することもできる。
上記構成の流体動圧軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の内周面8a(ラジアル軸受面)は、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間の潤滑油が動圧溝8a1、8a2の軸方向中心側に押し込まれ、その圧力が上昇する。このような動圧溝の動圧作用によって、軸部2aを非接触支持する第1ラジアル軸受部R1および第2ラジアル軸受部R2が構成される。
これと同時に、フランジ部2bの上側端面2b1とこれに対向する軸受スリーブ8の下側端面8c(スラスト軸受面)との間のスラスト軸受隙間、およびフランジ部2bの下側端面2b2とこれに対向する底部7bの上側端面7b1との間のスラスト軸受隙間に、動圧溝の動圧作用により潤滑油の油膜がそれぞれ形成される。そして、これら油膜の圧力によって、フランジ部2bを両スラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と、第2スラスト軸受部T2とが構成される。
このとき、上記のように、軸受スリーブ8の軸受面(内周面8a、下側端面8c)に開口した気孔(表面開孔)20に封止剤21を含浸させて封止することで、軸部材2の回転開始直後等の低温時であっても、ラジアル軸受隙間やスラスト軸受隙間の潤滑油が軸受スリーブ8の内部に吸い込まれず、軸受隙間に油を介在させて潤滑性を維持することができる。また、封止剤21を含浸させた気孔20により形成された凹部22を油溜りとして機能させることができるため、軸部材2の高速回転時にも軸受隙間に潤滑な油を供給することができる。特に、凹部22の底面を形成する封止剤21の表面の中央部を凹ませていることにより、凹部22により多くの油を保持することができる。また、凹部22に保持された油は封止剤21と接触することとなるため、封止剤21に油との親和性の高い材料を使用することで、油を凹部22に確実に保持することができる。
また、上記のように軸受スリーブ8の軸受面に動圧発生部を設け、軸受隙間の油膜に積極的に動圧作用を発生させる場合、軸受スリーブ8の軸受面に開口した気孔(表面開孔)10を封止剤21で封止することで、いわゆる「動圧抜け」を防止し、油膜の圧力を確実に高めることができる。特に、軸受面のうち、圧力が高まる場所となる丘部(図3のクロスハッチング部)の気孔を封止することで、動圧抜けを確実に防止することができる。
以下、本発明に係る焼結軸受の一実施形態である軸受スリーブ8の製造方法の一例を説明する。なお本例は一例であり、特に凹部22の形成方法を限定するものではない。
軸受スリーブ8は、圧粉成形工程(図5参照)、焼結工程(図示省略)、サイジング工程(図示省略)、動圧溝形成工程(図6参照)、および封止剤含浸工程(図7参照)を経て製造される。
圧粉成形工程では、まず、図5(a)に示すように、ダイ11、コアロッド12、および下パンチ13で囲まれたキャビティに、金属粉末Mを充填する。充填される金属粉末Mは、例えば銅粉や銅合金粉、あるいはこれらに鉄粉を配合したものが使用され、この金属粉末に必要に応じてグラファイト等が適量添加・混合される。この状態から上パンチ14を下降させ、金属粉末Mを軸方向上側から圧縮する(図5(b)参照)。その後、圧縮成形体Maを離型し(図5(c)参照)、この圧縮成形体Maを所定の焼結温度で焼結することで焼結体が得られる。
サイジング工程では、上記焼結体に、寸法サイジングおよび回転サイジングを施すことで、焼結体の内、外周面、および軸方向幅が適正寸法に矯正される(図示省略)。
動圧溝形成工程では、まず、図6(a)に示すように、焼結体15を上下パンチ18・19によって軸方向両側から支持(拘束)した状態で、図6(b)に示すように、ダイ16の内周に焼結体15を圧入する。これにより、焼結体15はダイ16と上下パンチ18・19とから圧迫力を受けて変形し、径方向にサイジングされる。これに伴い、焼結体15の内周面15aがコアロッド17の成形型17aに押し当てられ、成形型17aの凸凹形状が焼結体15の内周面15aに転写されて、動圧溝8a1・8a2が成形される。その後、図6(c)に示すように、ダイ16を下降させて焼結体15をダイ16から抜き、径方向の圧迫力を解除する。このとき、ダイ16からの離型に伴い、焼結体15に径方向のスプリングバックが発生し、焼結体15とコアロッド17との間に微小隙間が形成され、両者が分離可能な状態となる。そして、焼結体15をコアロッド17から引き抜くことにより、焼結体15が離型される。尚、図6では理解の容易化のため動圧溝8a1・8a2および成形型17aの深さを誇張して描いている。
こうして、動圧溝が形成された焼結体15の内部気孔に、封止剤が含浸される。以下、焼結体15への封止剤含浸工程を説明する。
焼結体15への封止剤の含浸は、大気中あるいは真空中で液体状の封止剤の中に焼結体15を浸漬させ、一定時間放置することにより行われる。このとき使用される封止剤は、焼結体15の内部の空孔まで含浸されやすいように粘度が低いものが適しており、例えば粘度として100mPa・s以下、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは30mPa・s以下とすることが望ましい。粘度が高い封止剤を使用する場合には、例えば温度や溶剤による希釈などで粘度を調整したり、界面活性剤の添加等により液状封止剤の表面エネルギーを低減したり、あるいは含浸できる大きさまで焼結体の気孔の径を大きくしても良い。
封止剤としては、含浸し気孔を封止できるなら特に材質は限定されない。例えば、ハンダ(錫合金)や亜鉛合金などの低融点金属や、低融点ガラス、シリコーン系、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂、フェノール樹脂やメラミン樹脂などの高分子材料、ワックスや蝋などの液体から固体に変化するような物質でかつ焼結軸受の使用時に固体となる物資が封止剤として好適に使用可能であり、焼結体を構成する金属との密着性や使用される油種に対する耐油性や親和性、軸受の使用環境等を考慮して選択することができる。
液体状の封止剤から取り出した焼結体15の表面には、図7(a)に示すように表面に開口した気孔20を含めて、表面全体を覆う液状封止剤21’による被膜が形成される。その後、焼結体15の表面に付着している余分な液状封止剤21’を除去することにより、図7(b)に示すように、焼結体15の表面15a上にはほとんど液状封止剤21’がない状態となる。除去方法は、例えば、エアーによる吹き飛ばし、ウエス等による拭き取り、あるいは溶剤による短時間洗浄などを例示することができる。
その後、焼結体15に含浸した液状封止剤21’を凝固や架橋反応、重合反応等の固化反応により固化させ、軸受スリーブ8が完成する。このとき、焼結体15の表面に開口した気孔20に満たされた液状封止剤21’が液体から固化する際の体積収縮により焼結体15の内部側に向かって凝集し、これにより固化した封止剤21の表面が軸受スリーブ8の内部側に後退し、軸受スリーブ8の表面(軸受面)に凹部22が形成される(図4参照)。このとき、例えば液状封止剤に焼結体を浸漬する時間等により、焼結体内部に気孔が残るよう調整し、固化させることで、封止剤21の表面の内部側への後退量を大きくすることができ、より深い凹部を形成することもできる。また、液状封止剤21’中に添加剤を配合し、その種類および量を適宜設定することで封止剤の体積収縮量を調整し、これにより凹部22の深さを変えることもできる。なお、液状封止剤21’は、固化する際に、気孔20の壁面と接触していることから毛細管現象により焼結体15の内部側に向かって移動するため、液状封止剤21‘の粘度や固化速度等を調整することで、凹部22の形状を円錐形状やお椀形状(すり鉢形状)、台形錐形状と変えることもできる。
上記のように、軸受面に形成される凹部22を、焼結体15に液状封止剤21’を含浸させて形成することにより、例えば機械加工で凹部を形成する場合のように加工粉が発生しないため、加工粉の清掃作業が不要となる上、加工粉がコンタミとして軸受内部に混入する恐れを回避できる。
また、焼結体15にサイジング工程および動圧溝形成工程を施した後に、液状封止剤21’を含浸・固化させて凹部22を形成することにより、凹部がサイジングや動圧溝形成時の圧迫により潰される事態を回避できる。
軸受スリーブ8の内部に油を浸入させないためには、軸受スリーブ8の内部空孔にできるだけ高い割合で封止剤を含浸させることが望ましく、例えば、軸受スリーブ8の全気孔のうち、60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは83%以上に封止剤を含浸させることが望ましい。
尚、焼結体15の内部気孔の全てに液状封止剤21’を含浸するのではなく、一部の内部気孔を残しておくと、液状封止剤21’が焼結体15の内部に残った気孔に毛細管現象により移動するため、液状封止剤21’の液面が焼結体15の内部側に後退しながら固化する。これにより、液状封止剤21’自身の固化による体積収縮による効果と相俟って、軸受スリーブ8の軸受面に凹部22を確実に形成することができる。例えば、軸受スリーブ8の気孔に含浸される封止剤の割合を、全気孔のうち95%以下、好ましくは90%以下とすれば、上記の効果を得ることができる。
軸受スリーブ8の内部空孔にどの程度の割合で封止剤21を含浸させるかは、焼結体15の液状封止剤21’への浸漬時間により調整することができる。このことを確認するために、以下のような試験を行った。
銅系の金属粉末を用い、密度を6.5g/cmに設定した焼結体を形成し、封止剤であるアクリル系樹脂溶液中への浸漬時間を変えた3種類の試験片(実施品1:60分間浸漬、実施品2:15分間浸漬、比較品:樹脂浸漬せず)を用意した。これらの試験片の樹脂封止剤を硬化させた後、油を含浸させ、その含浸量を比較した。結果を表1に示す。
Figure 2010060098
実施品1のように、焼結体15を液状封止剤中に60分浸漬すれば、油がほとんど含浸しない(比較品との比で0.05)。この含浸油量から、実施品1の軸受スリーブ8は、内部空孔の約95%封止剤が含浸・固化されていると推測される。一方、実施品2のように、焼結体15を液状封止剤中に15分浸漬させたものは、ある程度の油(比較品との比で0.37)が内部に含浸される。この含浸油量から、実施品2の軸受スリーブ8は、内部空孔の約63%に封止剤が含浸・固化されていると推測される。このように、液状封止剤の浸漬時間を変えることで、油の含浸量、すなわち軸受スリーブ8の空孔への封止剤の含浸割合を調整することができるため、軸受スリーブ8の内部への潤滑油の引き込み防止効果と、軸受面の凹部22の形成容易化効果とを考慮しながら、焼結体15の液状封止剤21’への浸漬時間を適宜設定すればよい。
また、軸受スリーブ8の表面に凹部22が形成されやすくするためには、上記のように焼結体15の液状封止剤への浸漬時間を調整するほか、液状封止剤の粘度や、液状封止剤と焼結金属との濡れ性、焼結体15の空孔率(密度)や気孔径等を適宜設定することにより調整することもできる。また、シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤などの界面活性剤を添加することで液状封止剤の表面エネルギー(表面張力)をコントロールし、基材への濡れ性や浸透性を調整することもできる。なお界面活性剤は表面エネルギーをコントロールできるなら何でもよく、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両生イオン系等問わず必要に応じて選択することができる。
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記実施形態と同様の構成・機能を有する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
上記の実施形態では、図4に示すように、軸受スリーブ8の表面のうち、表面に開口した気孔20の内部にのみ封止剤21が含浸され、凹部22以外の接触部23は焼結金属で形成されているが、これに限らず、例えば図8に示すように、接触部23にも封止剤21の被膜(オーバーレイ)を形成してもよい。これによれば、例えば樹脂などの自己潤滑性を有する封止剤を用いれば、金属製の軸部材2と封止剤21で接触させることができるため、金属同士の接触による異音の発生やいわゆる共擦りを防止することができる。尚、この場合、必ずしも接触部23の全面を封止剤21で被覆する必要はなく、少なくとも一部が封止剤で被覆されていれば、上記の効果を得ることができる。図示例では、摺動部を、樹脂からなる封止剤で被覆された部分23aと、焼結金属が露出した部分23bとで形成している。このように、接触部23に封止剤21による被膜を形成するには、図7(b)に示す樹脂含浸後の除去工程において、接触部23上に僅かに樹脂を残しておけばよい。
また、上記の実施形態では、焼結軸受に形成される動圧発生部として、へリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝が例示されているが、これに限らず、例えば多円弧形状、ステップ形状の動圧発生部を形成してもよい。また、動圧発生部が形成されていない平滑面(円筒面あるいは平坦面)を軸受面としてもよい。
また、上記の実施形態では、焼結軸受が情報機器用スピンドルモータの回転軸支持用として使用されているが、これに限らず、例えばファンモータや、自動車の電装モータ等の回転軸支持用として使用することもできる。
また、本発明は上述の例以外に、特に軸受面に動圧発生部を有しないすべり軸受にも使用できる。
スピンドルモータの断面図である。 流体動圧軸受装置の断面図である。 (a)は焼結軸受の断面図、(b)は同下面図である。 焼結軸受の表面(軸受面)の拡大断面図である。 (a)〜(c)は、焼結軸受の圧粉成形工程を説明する断面図である。 (a)〜(c)は、焼結軸受の動圧溝形成工程を説明する断面図である。 (a)は、樹脂を含浸させた直後の焼結体の表面の拡大断面図、(b)は、表面の樹脂を除去した焼結体の表面の拡大断面図である。 他の例の焼結軸受の表面(軸受面)の拡大断面図である。
符号の説明
1 流体動圧軸受装置
2 軸部材
7 ハウジング
8 軸受スリーブ(焼結軸受)
8a 内周面(ラジアル軸受面)
8a1・8a2 動圧溝(動圧発生部)
8c 下側端面(スラスト軸受面)
9 シール部材
15 焼結体
20 気孔
21 樹脂
21’ 樹脂溶液
22 凹部
23 接触部
R1・R2 ラジアル軸受部
T1・T2 スラスト軸受部
S シール空間

Claims (10)

  1. 無数の気孔を有し、軸受面が形成された焼結軸受であって、
    少なくとも軸受面に開口した気孔に封止剤が含浸され、この封止剤が含浸された気孔により軸受面に凹部を形成した焼結軸受。
  2. 軸受面のうち、前記凹部を除く領域を焼結金属で形成した請求項1記載の焼結軸受。
  3. 軸受面のうち、前記凹部を除く領域の少なくとも一部が樹脂で覆われた請求項1記載の焼結軸受。
  4. 前記凹部を形成する気孔に含浸された封止剤の表面の中央部を凹ませた請求項1記載の焼結軸受。
  5. 前記凹部が、気孔に含浸された封止剤の固化時の体積収縮により形成された請求項1記載の焼結軸受。
  6. 内部に、封止剤が含浸されていない気孔を有する請求項1記載の焼結軸受。
  7. 軸受面に動圧発生部が形成された請求項1記載の焼結軸受。
  8. 内周面に軸受面が形成された請求項1記載の焼結軸受と、焼結軸受の内周に挿入された軸部材とを有し、焼結軸受の軸受面と軸部材の外周面との間に生じるラジアル軸受隙間の油膜で軸部材を支持する流体動圧軸受装置。
  9. 金属粉末を圧粉成形した成形体を焼結して焼結体を形成し、この焼結体の少なくとも軸受面に開口した気孔に封止剤を含浸させ、この封止剤が含浸された気孔の少なくとも一部で凹部を形成する焼結軸受の製造方法。
  10. 焼結体にサイジングを行った後に、封止剤を含浸させる請求項9記載の焼結軸受の製造方法。
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