JP2010270786A - 焼結金属軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い摺動特性を発揮しつつも、鳴き音などの異音発生を抑制することのできる焼結金属軸受を提供する。
【解決手段】焼結金属軸受は軸2との摺動面3を有している。この焼結金属軸受は、軸2とは異なる金属組織で形成され、多数の内部気孔4を有する焼結金属製の軸受本体5と、軸受本体5の所定表面に形成され、摺動面3を構成する樹脂皮膜6とを備える。ここで、樹脂皮膜6は、内部気孔4と連通する表面開孔7を残して形成されており、かつ、その一部10が軸2との相対摺動に伴い軸受本体5から剥離して軸2の表面に密着するものであることを特徴としている。
【選択図】図3

Description

本発明は、焼結金属軸受に関し、特に低温時の静粛性に優れた焼結金属軸受に関する。
焼結金属軸受は、その内部気孔に潤滑油を含浸させた焼結含油軸受として好適に使用されるものである。この種の軸受は、非常に安価で製作可能であり、例えば産業用機械をはじめとして、自動車やオフィス機器、家庭用機器の小型電動モータなど、人の操作快適性に影響を及ぼす機器の駆動系に好適に使用されている。
ところで、上記焼結金属軸受を、例えば小型電動モータ用に適用する場合、モータを静止して低温環境に長時間置いた後に始動すると、鳴き音と呼ばれる異音が発生することがある。この鳴き音の発生原因としては、潤滑油の線膨張係数が焼結金属からなる軸受本体のそれよりも大きいために、低温時には潤滑油が軸受内部に引き込まれ、摺動面に潤滑油が枯渇するためと考えられている。
この種の問題に対しては、これまでに数多くの対応策が提案されている。例えば、下記特許文献1には、焼結含油軸受における焼結金属組織の組成や通気度、および潤滑油の粘度を工夫することで鳴き音の発生頻度を低減させる試みが開示されている。
また、下記特許文献2には、焼結含油軸受と軸とのクリアランス(軸受すき間)の大きさに基づき、所定面積の表面開孔の軸受面に占める割合を調整することで、低温時における潤滑油の枯渇の軽減を図ろうとした旨が記載されている。
しかし、下記特許文献1に開示の手段は、あくまでも適量の潤滑油を摺動面上に残すことを前提としたものであるから、潤滑油の枯渇度が高まった場合には十分な効果を得ることは難しい。また、下記特許文献2に開示の手段では、軸受面の表面開孔の形態が軸の回転摺動に伴い変化したり、軸受の摩耗が進展することで軸受すき間が変化した場合、表面開孔の形態が初期状態とは異なったものとなるため、当初想定した程度に鳴き音の発生防止を図ることは難しい。
例えば下記特許文献3のように、潤滑油不足に起因する回転効率の低下防止や寿命向上のために、焼結含油軸受の摺動面の一部に非多孔質の樹脂層を形成しているものもある。これは、焼結金属製の摺動面の一部を開孔部のない樹脂製の摺動面に置き換えることで軸との金属接触を低減すると共に油の軸受内部への逃げを防止したものである。しかし、この構成では、高温環境下での寿命が焼結含油軸受に比べて劣る。また、そもそも樹脂層で軸受表面の開孔を塞いでいることから、潤滑油の供給が不十分となり、摺動性の低下を招くおそれがある。
例えば、下記特許文献4には、多孔質の焼結体の表層部に、固体潤滑剤を含む樹脂層を、焼結体の空孔を塞がないように形成して、当該樹脂層と相手部材を潤滑油中で摺動させるようにした焼結摩擦部材(クラッチ)が開示されている。そのため、この構成を焼結含油軸受に適用できれば、焼結金属と相手部材との接触を避けつつも、摺動面となる樹脂層の表面に潤滑油を供給できるように思われる。しかし、実際には、このような構成とした場合であっても、低温時に軸受内部への油の引き込みが生じることには変わりなく、その場合、樹脂層のみで相手部材を支持する必要が生じる。また、上記特許文献に開示の摩擦部材に樹脂層を導入した目的は、固体潤滑剤の脱落防止であるから、これを含有する樹脂層には相当の厚みが必要となり、小さな空孔への対応が難しい(空孔を樹脂で埋めてしまう)。加えて、金属製の摺動面に比べて低弾性となり、微視的な接触面積が増加することで却って摩擦係数が増加するおそれもある。
また、上記の鳴き音に関する問題は、低温下での起動時のみならず、他の様々な状況で起こり得る。例えば長期にわたり使用されるオフィスのコピー機などでは、定常的に鳴き音が発生している場合もある。特に、オフィス等では、その作業環境によって静粛性が要求される場合も少なくないため、鳴き音の防止対策が強く望まれている。
特開2003−120674号公報 特開2004−138215号公報 特開2002−39183号公報 特開2000−130484号公報
以上の事情に鑑み、本明細書では、高い摺動特性を発揮しつつも、鳴き音などの異音発生を抑制することのできる焼結金属軸受を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
本発明は、前記課題の解決を図るためになされたものである。すなわち、本発明に係る焼結金属軸受は、軸との摺動面を有する焼結金属軸受であって、軸とは異なる金属組織で形成され、多数の内部気孔を有する焼結金属製の軸受本体と、軸受本体の所定表面に形成され、摺動面を構成する樹脂皮膜とを備え、樹脂皮膜は、内部気孔と連通する表面開孔を残して形成されており、かつ、その一部が軸との相対摺動に伴い軸受本体から剥離して軸の表面に密着するものである点をもって特徴付けられる。
本発明者らが軸受使用時における鳴き音の発生原因を調査したところ、顕著な鳴き音を生じる場合には、焼結金属軸受の摺動面を構成する金属が軸の表面に付着していることが判明した。軸との摺動に伴い軸受の摺動面を構成する金属が部分的に剥がれて軸に付着すると、付着した金属と軸受の摺動面を構成する金属とが摺動接触して、同種金属のために凝着を生じる。この場合には摩擦係数が大きくなる。一方で、剥離した金属片が付着していない軸の表面と軸受とが摺動しているときの摩擦係数は比較的小さくなる。以上のことから、軸受の摺動面を構成する金属が剥離して軸の表面に付着し始めると、摺動面間の摩擦係数の変動幅が大きくなり、その結果、当該摺動面間が加振源となって振動が生じるものと考えられる。故に、この振動が異音の発生原因と推定される。
本発明は、以上に述べた新規な知見に基づきなされたものである。すなわち、本発明に係る焼結金属軸受によれば、軸受本体の摺動面となるべき表面に形成された樹脂皮膜の一部が軸と摺動接触した際に軸受本体から剥離し、剥離した部分が軸の表面に密着する。そのため、樹脂皮膜の剥離に伴い焼結金属を構成する金属組織が摺動面に露出した場合でも、露出した金属が軸の表面に密着した樹脂皮膜の一部と摺動接触することになる。そのため、軸と軸受との間で露出金属の凝着が生じるのを防止することができ、この凝着による振動、ないしこの振動に起因して生じる異音(鳴き音)の発生を抑制することができる。また、樹脂皮膜の一部が剥離して軸に密着することにより、摺動面が、剥離されずに残った樹脂皮膜と、樹脂皮膜の剥離により露出した軸受本体を構成する金属組織とで再構成されることになる。この場合、軸受本体を例えば軸とのなじみ性(初期摺動性)に優れた金属で形成する等、樹脂皮膜と軸受本体の金属組織とで異なる摺動特性(機械的特性)を摺動面に付与することで、軸受性能を総合的に高めることも可能となる。もちろん、剥離が生じる前の段階では、摺動面が樹脂皮膜で構成されており、凝着が生じるおそれがないため、低温、高温とを問わず異音の発生も生じない。
ここで、軸受本体の金属組織は樹脂皮膜との密着性の異なる少なくとも2種類の金属からなり、樹脂皮膜は、軸との相対摺動時、金属組織を構成する一の金属から剥離し、他の金属とは密着状態を維持するものであってもよい。
このように構成することで、樹脂皮膜が形成された軸受本体の所定表面のうち、一の金属で構成された部分では樹脂皮膜が剥離して当該一の金属が露出し、他の金属で構成された部分では樹脂皮膜が維持される。よって、予め軸受本体の作成段階で、焼結金属を構成する各種金属(通常、金属粉末の配合割合や粒径)を調整しておくことで、金属露出面と、樹脂皮膜で覆われた面がそれぞれ摺動面に占める割合を調整することができる。もちろん、このように軸受本体および樹脂皮膜を形成するのであれば、摺動面全体にわたって偏りなく樹脂皮膜の剥離および軸表面への密着が生じるので、摺動面における上記凝着を全面にわたって防止することができる。
また、樹脂皮膜は、軸受本体よりも軸との密着性に優れた樹脂で形成されていてもよい。
通常、軸受本体に形成された樹脂皮膜の剥離のし易さは、相対摺動する軸の回転速度や軸からの荷重によって変わる。また、軸や軸受に関しても、樹脂皮膜との密着性だけでなく他の要因(強度、剛性、耐摩耗性、導電性、加工性など)も考慮に入れて材質の選択を行う必要があるため、どのような樹脂(皮膜)を選択すればよいかは容易に判断できない。この点、例えば上記の条件を満たす樹脂で皮膜を形成すれば、軸や軸受の材質の選定にあまり影響を与えることなく、軸受本体から剥離した部分を確実に軸の表面に密着させることができる。また、摺動接触により軸受本体から剥離したものがそのまま軸の表面に密着するのであれば、剥離位置と密着位置とが互いに向かい合う位置となるので、剥離して金属が露出した部分を、軸の表面に密着した樹脂皮膜の一部と確実に摺動接触させることができる。これにより、露出金属の凝着をより高い確率で防止することができる。
また、樹脂皮膜には、その一部が軸受本体から剥離してかつ軸の表面に密着し得る限りにおいて任意の種類の樹脂が使用できるが、上記のように、軸表面への密着性の良さ(軸受本体からの剥離のし易さ)の観点からは、熱硬化性樹脂を使用することもできる。また、熱硬化性樹脂の中でも、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂からなる群の中から選択される一の樹脂で樹脂皮膜を形成することもできる。これは、通常、軸や軸受本体にそれぞれ求められる特性を満たす材質を選定(軸であれば鉄系、軸受本体であれば銅系又は銅鉄系)する場合に有効に作用する。
また、本発明に係る焼結金属軸受は、摺動面が樹脂皮膜で形成される一方、この摺動面には、軸受本体の内部空孔と連通する表面開孔が塞がれることなく残っていることから、内部空孔に潤滑油が含浸されているものであってもよい。
上記構成の焼結金属軸受であれば、摺動面が樹脂皮膜で形成されているので、例えば比較的低速回転下や低荷重下もしくは高摩擦下での使用であれば、無潤滑状態であっても特に問題なく使用することができる。また、上記のように、摺動面が樹脂皮膜で形成される一方で、この面に軸受本体の内部空孔と連通する表面開孔が塞がれずに残っているので、軸受本体の内部空孔に潤滑油を含浸できると共に、軸の相対摺動時には、含浸させた潤滑油を摺動面上に供給することができる。これにより、既存の焼結含油軸受と同等あるいはそれ以上に、高速回転下や高荷重下においても良好な摺動状態を実現することができる。
もちろん、焼結含油軸受として使用する場合であっても、軸と軸受とにそれぞれ密着させた樹脂皮膜により、低温下での潤滑不良時にも異音の発生を抑制することができる。また、剥離した樹脂皮膜の一部が不純物として潤滑油中に含まれることもないため、潤滑油の性能を阻害することもない。
また、上記構成の焼結金属軸受は、この焼結含油軸受と、焼結金属軸受の内周に配設される軸とを備えた軸受装置として提供されるものであってもよい。
以上の説明に係る焼結金属軸受は、低温下だけでなく高温下における異音発生を抑制することができ、かつ摺動性に優れていると共に低コストに製造可能であることから、例えば寒冷地に使用される自動車の電装モータをはじめ、自動車に内蔵される電子機器用のモータ用軸受として好適に使用できる。もちろん、プリンターやコピー機、あるいは各種電子機器に内蔵されるファンモータなど運転時の温度が高く利用時間が比較的長いものであって、鳴き音等が使用者に不快感を与え得るオフィスや家庭で使用される機器にも好適に使用することができる。
以上のように、本発明によれば、高い摺動特性を発揮しつつも、鳴き音などの異音発生を抑制することのできる焼結金属軸受を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る焼結金属軸受の縦断面図である。 図1中の領域Aの拡大断面図であって、軸の相対摺動前における焼結金属軸受の摺動面周辺の構造を模式的に示す図である。 図1中の領域Aの拡大断面図であって、軸の相対摺動後における焼結金属軸受の摺動面周辺の構造を模式的に示す図である。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る焼結金属軸受1の縦断面図を示している。この実施形態では、焼結金属軸受1は円筒状をなし、その内周に支持すべき軸2(図1を参照)を配設すると共に、軸2の外周面と対向する領域に摺動面3を設けている。また、焼結金属軸受1はその内部に多数の空孔4を有し、これらの内部空孔4には潤滑油が含浸されている。これら多数の内部空孔4は、摺動面3に開孔した後述の表面開孔7とつながっており、軸2の相対回転に伴い、内部空孔4に保持された潤滑油が表面開孔7を通じて摺動面3上に滲み出てくるようになっている。
図2は、図1における領域A、すなわち焼結金属軸受1の摺動面3周辺の拡大断面図を示している。同図に示すように、焼結金属軸受1は、多孔質性の焼結金属からなる軸受本体5と、軸受本体5の所定の表面、少なくとも軸2との摺動面3となる領域(内周面)に形成される樹脂皮膜6とを備える。この場合、樹脂皮膜6は、軸受本体5の内周面に開孔し内部空孔4と連通する表面開孔7を塞ぐことなく形成されている。そのため、樹脂皮膜6を軸受本体5の内周面に形成した状態においても、表面開孔7は塞がれることなく摺動面3上に残っている。
軸受本体5は、原料となる1又は2種類以上の金属粉末(単金属と合金との何れをも含む)を圧縮成形した後、焼結することで得られるもので、この実施形態では、銅粉末と鉄粉末との2種類の金属粉末を原料として成形される。よって、図2に示すように、軸受本体5は、銅を主とする組織8(以下、単に銅組織という。)と、鉄を主とする組織9(以下、単に鉄組織という。)とが混在した構造を有する。この場合、樹脂皮膜6を形成することで摺動面3となる領域(軸受本体5の内周面)は、銅組織8と鉄組織9とで構成されている。
また、この場合、樹脂皮膜6は、軸受本体5を構成する銅組織8と鉄組織9の双方に密着した状態で形成されており、以下に述べるように、その一部が、軸2との相対摺動に伴い軸受本体5から剥離して軸2の外周面に密着するように、材質や膜厚、成膜条件などが設定される。もちろん、軸2の回転速度や荷重(回転時に摺動面3に付与される面圧)などの軸受使用条件も考慮に入れて、軸受本体5および軸2に対する樹脂皮膜6の密着性を定めてもよい(樹脂皮膜6の材料となる樹脂を選定してもよい)。
以下、樹脂皮膜6の移動について説明する。図2に示すように、樹脂皮膜6を軸受本体5の所定表面に形成した後であって、軸2との相対回転前においては、全ての樹脂皮膜6は軸受本体5に密着した状態にある。そして、この状態から、軸2を軸受本体5(焼結金属軸受1)に対して回転させることで、軸2の表面と樹脂皮膜6との間で摺動接触を生じる。この摺動接触に伴い、例えば図3に示すように、摺動面3を構成する樹脂皮膜6の一部が軸2によって軸受本体5から剥ぎ取られて(剥離して)、その部分の直下に位置する金属組織が露出する。また、剥ぎ取られた樹脂皮膜の一部10は、そのまま軸2の表面に付着して定着する。この実施形態では、樹脂皮膜6に対する密着性が比較的弱い銅組織8の表面に密着していた部分が剥離し、樹脂皮膜6に対する密着性が比較的強い鉄組織9の表面に密着していた部分はそのまま残っている。
また、この場合、軸受本体5の銅組織8から剥離した樹脂皮膜の一部10は、剥ぎ取られるのと同時にそのまま樹脂皮膜6に対する密着性が比較的強い軸2の表面に密着するようになっている。ここで、軸2は、必要とされる強度や剛性、加工性などを考慮してSUSなどの金属で形成されることが多いことから、例えば軸2がSUSで形成される場合、樹脂皮膜6には、銅組織8には密着し難く、鉄組織9や軸2を形成するSUSには密着し易い樹脂が使用される。具体的には、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、フェノール樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を例示することができる。また、上記実施形態のように、焼結金属軸受1を銅鉄系の焼結金属で形成し、軸2を鉄系の金属で形成する場合であれば、銅と銅の接着強度に比べて鉄と鉄の接着強度に優れたアクリル系の樹脂が好適である。ただし、これら樹脂皮膜6の材料となる樹脂には、軸2への高い密着性が要求されるため、当該密着性を低減させるような充填材の添加はなるべく避けたほうがよい。
上記構成の焼結金属軸受1において、軸2の相対回転に伴い、多数の内部空孔4に保持された潤滑油が表面開孔7を介して摺動面3上に滲み出す。これにより、軸2と焼結金属軸受1との間に潤滑油の膜が形成され、この潤滑油膜を介して軸2が回転自在に支持される。
また、軸2の相対回転に伴い、軸2の外周面と摺動面3とが摺動接触することで、摺動面3を構成する樹脂皮膜6の一部が軸受本体5から剥ぎ取られると共に、剥ぎ取られた樹脂皮膜の一部10はそのまま軸2の表面の剥ぎ取った部分に密着する。これにより、図3に示すように、軸2の外周面が、軸2の材料となる金属の部分と、新たに密着形成された樹脂皮膜の一部10の部分とで再構成される。また、焼結金属軸受1の摺動面3についても、樹脂皮膜6の残部と、樹脂皮膜6の剥離により新たに露出形成された金属組織(ここでは銅組織8)とで再構成される。この場合、露出形成された銅組織8と、軸2の表面に密着形成された樹脂皮膜の一部10とは原則、対応する軸方向位置に形成されるので、図3に示す状態で軸2と焼結金属軸受1とが摺動接触を生じた場合、銅組織8が樹脂皮膜の一部10と優先的に摺動接触する。これにより、露出形成された銅組織8の軸2の金属表面への付着が抑制されるので、軸2の表面に付着した銅組織8の一部と露出した銅組織8との凝着を回避して、異音の発生を防止することができる。また、剥離した樹脂皮膜の一部10が全て軸2の外周面に密着することで、銅組織8の露出面積と、軸2の外周面における樹脂皮膜の一部10の密着面積とは等しくなるため、漏れなく露出した銅組織8をカバーして銅の凝着を防ぐことができる。
上記構成の焼結金属軸受1は、例えば原料粉末を圧縮成形する工程(A)、圧粉成形体を焼結する工程(B)、焼結体(軸受本体5)にサイジングを施す工程(C)、軸受本体5の所定表面に樹脂皮膜6を形成する工程(D)、および潤滑油を含浸する工程(E)とを経て製造される。以下、各工程につき説明する。
(A)圧粉成形工程
まず、原料となる金属粉末を成形金型内部に充填し、これを圧縮成形することで完成品(軸受本体5)に近い形状の圧粉成形体を得る。この際、適度に内部空孔4が残るように、あるいは、後述するように、樹脂皮膜6の形成に伴い内部空孔4や表面開孔7が小さくなる点も考慮して圧縮成形後の密度を設定する。なお、原料粉末には、例えば銅粉末と、鉄粉末とを同程度配合したものが用いられるが、一方の配合比率を高めたもの(例えば銅粉末の全体に占める割合を60wt%以上としたもの)を原料粉末として用いてもよい。もちろん、鉄や銅以外の金属粉末(合金粉末を含む)を1又は複数種類混合したものを原料として用いてもよい。また、主成分となる同種又は異種金属粉末間のバインダとしての作用を期待して、Sn粉末などの低融点金属を添加したり、成形性の改善を図る目的で黒鉛等の固体潤滑剤を添加しても構わない。
(B)焼結工程
上記圧粉成形工程(A)で得られた圧粉成形体を、例えば主成分となる金属粉末の焼結温度まで加熱することで焼結し、軸受本体5を得る。なお、使用する金属粉末の種類によっては、焼結による浸炭作用を避けるため、かかる焼結作業を非浸炭雰囲気下で行うことも可能である。
(C)サイジング工程
上記工程(B)で得られた軸受本体5に対し、適当な金型を用いて圧迫力を付与することで、軸受本体5を所定形状に整形すると共に、その寸法を所定範囲内に仕上げる。
(D)樹脂皮膜形成工程
上記(A)〜(C)の工程を経て、完成品の形状に仕上がった軸受本体5の所定表面に樹脂皮膜6を形成する。ここで、具体的な形成方法については、摺動面3を樹脂皮膜6で形成できる限りにおいて原則任意であり、その形成範囲についても特に問わない。よって、例えば、樹脂皮膜6の材料となる液状の樹脂に軸受本体5を大気又は真空(減圧)環境下で浸漬させ、当該液状樹脂から取り出した後、遠心分離等により焼結体表面に付着した樹脂の液切りを行った後、加熱等により適当な硬化反応を起こさせることで、軸受本体5に付着した液状樹脂を硬化させて、樹脂皮膜6を形成するようにしてもよい。この場合、例えば図2に示すように、軸受本体5のサイジングを受けた外表面から所定深さの表層部に至るまで、樹脂皮膜6が形成される。また、この場合、熱硬化性樹脂を使用するようにすれば、常温で上記作業を行うことができ取扱いが容易である。また、硬化反応に伴う体積の縮小率が熱可塑性樹脂のそれに比べて大きいので、仮に浸漬時に内部空孔4や表面開孔7が埋まった部分があっても、所定割合の内部空孔4や表面開孔7を塞ぐことなく残し易い。また、樹脂皮膜6の成形に射出成形を用いる場合と比べて低コストに成膜できる。もちろん、樹脂皮膜6は軸2との摺動面3を構成するように形成していれば足りるので、例えば軸受本体5の摺動面3となる領域のみに液状の樹脂を塗布して、これを硬化させることで、内部空孔4に含浸させる潤滑油の量を減らすことなく摺動面3を樹脂皮膜6で形成することができる。もちろん、上記成膜条件を満たすのであれば、特に熱硬化性樹脂に限定する必要はなく、熱可塑性樹脂を使用することも可能である。
(E)潤滑油含浸工程
上記工程(D)で得られた軸受本体5の内部に潤滑油を含浸する。具体的には、大気又は真空(減圧)環境下において、軸受本体5を潤滑油で満たした潤滑油浴中に一定時間浸漬させることで、軸受本体5の内部空孔4に潤滑油を含浸させる。潤滑油には任意のものが使用できるが、低温時における潤滑特性や粘性を考慮した場合、PAO系潤滑油やエステル系潤滑油が好適である。なお、上記潤滑油の内部空孔4への含浸を短時間で行うため、潤滑油を加熱した状態で含浸作業を行うようにしてもよい。
そして、含浸作業後、適当な油除去装置を用いて油切り作業を行う。これにより、軸受内部の内部空孔4に含浸させた潤滑油はそのままに、表面に付着した余分な潤滑油のみが除去される。以上の工程を経て、図1に示す焼結金属軸受1が完成する。
なお、上述のようにして製造された焼結金属軸受1はそのまま、すなわち図2に示す状態で最終製品として出荷することも可能であるが、例えばなじみ運転など適度な回転摺動を与えることで、図3に示すように樹脂皮膜6の一部を焼結金属軸受1側から軸2側に移した上で、これら焼結金属軸受1と軸2とを備えた軸受装置として出荷することも可能である。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る焼結金属軸受は上記例示の形態に限定されるわけではなく、本発明の範囲内において任意の形態を採り得ることはもちろんである。その製造方法についても同様である。
例えば樹脂皮膜6に関していえば、少なくとも摺動面3を構成する軸受本体5の所定表面(内周面)に樹脂皮膜6が形成されていればよく、それ以外の表面への樹脂皮膜6の形成は任意である。よって、軸受本体5の全面(内周面や外周面、端面、および面取り部)に樹脂皮膜6が形成されていても構わない。また、上記実施形態のように、表面開孔7の輪郭を形作る周囲の面を含めて、軸受本体5の表層部(に含まれる内部空孔4の輪郭を形作る面)にまで樹脂皮膜6が形成されていてもよいし、摺動面3に対応する表面のみ、あるいは、深層部も含めて全ての内部空孔4と表面開孔7の輪郭を形作る面に樹脂皮膜6が形成されていてもよい。もちろん、潤滑油の円滑な供給を妨げない程度に内部空孔4や表面開孔7の一部が塞がれていても差し支えない。
また、軸受本体5の組成に関し、上記実施形態では2種類の金属組織からなる場合を説明したが、1種類又は3種類以上の金属組織からなる焼結金属体であってもよい。すなわち、軸2との相対摺動に伴いその一部が軸受本体5から剥離して軸2の表面に密着可能な限りにおいて、1又は3種類以上の金属粉末を軸受本体5の原料として使用しても構わない。
また、上記以外の事項についても、本発明の技術的意義を没却しない限りにおいて他の具体的形態を採り得ることはもちろんである。
本発明の有用性を立証するため、以下の摺動実験を行った。具体的には、無潤滑下で軸と焼結金属軸受とを相対回転させた際に生じる異音の有無と、軸表面への移着(移動定着)の状態を確認した。なお、焼結金属軸受には偏荷重によるモーメントを作用させることで、ミスアライメントを意図的に付与した状態で上記摺動実験を行った。
ここで、軸は、鉄製(SKD11とSUS420Jの何れか一方)とした。また、焼結金属軸受については、何れも銅鉄系の焼結金属製(鉄成分の含有率:40wt%)とし、上記の如く、軸の相対摺動に伴い軸受本体から剥離して軸の外周面に密着し得る樹脂皮膜を形成し、この樹脂皮膜で摺動面を構成したもの(実施例)と、焼結金属で直接摺動面を構成したもの(比較例)とを用意して上記摺動実験を行った。
下記の表1に実験結果を示す。表から分かるように、所定の樹脂皮膜を形成しない既存の焼結金属軸受(比較例)では、摺動開始から5分後に異音の発生が確認された。また、摺動実験後に軸の外周面を調べたところ、外周面に焼結金属軸受の摺動面を構成する銅が付着していた。これに対して、所定の樹脂皮膜を設けた焼結金属軸受には、摺動実験終了時まで異音の発生は確認されなかった。また、実験後の軸の外周面には、軸受本体に形成した樹脂皮膜の一部が点在していることが分かった。この樹脂皮膜の一部が銅の鉄への付着を妨げたものと考えられる。
Figure 2010270786
1 焼結金属軸受
2 軸
3 摺動面
4 内部空孔
5 軸受本体
6 樹脂皮膜
7 表面開孔
8 銅組織
9 鉄組織
10 樹脂皮膜の一部

Claims (6)

  1. 軸との摺動面を有する焼結金属軸受であって、
    前記軸とは異なる金属組織で形成され、多数の内部気孔を有する焼結金属製の軸受本体と、前記軸受本体の所定表面に形成され、前記摺動面を構成する樹脂皮膜とを備え、
    前記樹脂皮膜は、前記内部気孔と連通する表面開孔を残して形成されており、かつ、その一部が前記軸との相対摺動に伴い前記軸受本体から剥離して前記軸の表面に密着するものであることを特徴とする焼結金属軸受。
  2. 前記軸受本体の金属組織は前記樹脂皮膜との密着性の異なる少なくとも2種類の金属からなり、前記樹脂皮膜は、前記軸との相対摺動時、前記金属組織を構成する一の金属から剥離し、他の金属とは密着状態を維持するものである請求項1に記載の焼結金属軸受。
  3. 前記樹脂皮膜は、前記軸受本体よりも前記軸との密着性に優れた樹脂で形成されている請求項1又は2に記載の焼結金属軸受。
  4. 前記樹脂皮膜は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂からなる群の中から選択される一の樹脂で形成されている請求項3に記載の焼結金属軸受。
  5. 前記内部空孔に潤滑油が含浸されている請求項1〜4の何れかに記載の焼結金属軸受。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載の焼結金属軸受と、該焼結金属軸受の内周に配設される軸とを備えた軸受装置。
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