JP2010249242A - 焼結含油軸受およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動時、特に摺動開始時における摺動摩擦特性を改善する。
【解決手段】焼結含油軸受1の内部には、多数の内部気孔4が単独もしくは複数つながった状態で存在すると共に、これら内部気孔4と連通する多数の表面開孔6が軸受面5上に形成されている。軸受本体3の内周面には、軸受本体3を構成する焼結金属よりも摩擦係数の低い低摩擦層7が被覆形成されており、この低摩擦層7の外表面で軸受面5が構成されている。この場合、低摩擦層7で被覆形成された軸受面5上には、軸受本体3に形成された表面開孔6の少なくとも一部がなお開口した状態で残っており、内部気孔4に含浸した潤滑油を表面開孔6を通じて軸受面5上に供給できるようになっている。
【選択図】図2
【解決手段】焼結含油軸受1の内部には、多数の内部気孔4が単独もしくは複数つながった状態で存在すると共に、これら内部気孔4と連通する多数の表面開孔6が軸受面5上に形成されている。軸受本体3の内周面には、軸受本体3を構成する焼結金属よりも摩擦係数の低い低摩擦層7が被覆形成されており、この低摩擦層7の外表面で軸受面5が構成されている。この場合、低摩擦層7で被覆形成された軸受面5上には、軸受本体3に形成された表面開孔6の少なくとも一部がなお開口した状態で残っており、内部気孔4に含浸した潤滑油を表面開孔6を通じて軸受面5上に供給できるようになっている。
【選択図】図2
Description
本発明は焼結含油軸受およびその製造方法に関する。
従来、各種機械部品、例えば他の機械要素との間で摺動を伴う軸支持部などに使用される機械部品に、焼結金属で形成され、その内部に潤滑油等を含浸させた焼結含油軸受が好適に用いられている。
この種の軸受は、支持すべき軸との相対回転に伴い、内部に含浸した潤滑油の滲み出しにより軸との摺動部に油膜を形成し、この油膜によって軸を支持するものであるが、実際には、摺動面の加工精度等の問題から、油膜を介した非接触の摺動状態を構成する流体潤滑と、表面に付着した油分を介して軸と軸受とが直接的に接触摺動する固体潤滑とが共存する、いわゆる境界潤滑となることが多い。
例えば、下記特許文献1には、流体潤滑性能と固体潤滑性能とを兼備した滑り軸受として、内部に潤滑油が含浸されると共に、黒鉛や二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤粉末を表層部に定着させてなる焼結含油軸受が提案されている。この軸受は、潤滑油が軸受部に不足する場合であっても固体潤滑域において安定した摺動性能を発揮することを狙ったものである。また、下記特許文献1には、固体潤滑剤の好ましい添加量が、鉄粉100部に対して0.5〜8部程度である旨が記載されている。
ところで、焼結含油軸受に特有の問題として、運転開始直後は摩擦係数が比較的高くなり、初期摩耗が発生し易いとの問題がある。すなわち、摺動初期においては、支持すべき軸の相対回転速度が十分でなく、また、摺動域における温度も常温(雰囲気温度)と大差ないことから、軸受内部に含浸させた潤滑油等が軸受面上に滲み出しにくく、軸受面の初期摩耗や、油膜形成不足による摩擦係数の増大、異音の発生が生じ易い。このような場合には、固体潤滑が主となるため、上記特許文献1に開示のように固体潤滑剤を配合したものであっても、摺動摩擦を十分に低減することは難しい。固体潤滑剤の添加量を増加する方法も考えられるが、そのような方法では、鉄粉など軸受本体の主成分となる金属粉末の焼結強度を低下させるおそれがあるため、添加できる量には限界がある。
以上の事情に鑑み、本明細書では、摺動時、特に摺動開始時における摺動摩擦特性を改善することを本発明により解決すべき技術的課題とする。
前記課題の解決は、本発明に係る焼結含油軸受により達成される。すなわち、この焼結含油軸受は、焼結金属で形成され、その内部に多数の気孔を有すると共に、内部気孔に潤滑剤が含浸されたものであって、内周に設けた軸受面には多数の表面開孔が形成されている焼結含油軸受において、軸受面は焼結金属よりも摩擦係数の低い低摩擦層で構成され、かつ、低摩擦層には内部気孔と連通する表面開孔の少なくとも一部が開口している点をもって特徴付けられる。ここで、「表面開孔」とは、多孔質組織である焼結含油軸受の軸受本体に含まれる気孔が外表面に開口した部分をいう。また、「摩擦係数」とは、当該軸受により支持すべき相手部材に対する摩擦係数をいう。
このように、軸受本体を構成する焼結金属よりも摩擦係数の低い低摩擦層で軸受面を構成することで、固体潤滑域での摺動摩擦が軽減される。そのため、運転開始直後に固体潤滑で摺動する際の摺動摩耗、ひいては初期トルクを低減することができ、異音の発生も防止することができる。加えて、本発明では、軸受面を構成した低摩擦層に、内部気孔と連通する表面開孔の少なくとも一部が開口するようにしたので、軸受の内部気孔に含浸された潤滑油等を表面開孔を通じて迅速に軸受面上に供給することができる。そのため、固体潤滑から境界潤滑に移行するのに要する時間を短縮して、その間の摺動摩耗を抑えると共に、定常運転時における摺動摩擦を小さくして、安定した摺動状態を達成することができる。
低摩擦層で軸受面を構成する場合、軸受面の表面開孔率は20%以上かつ40%以下に設定されていてもよい。なお、ここでいう「表面開孔率」とは、焼結含油軸受における軸受面の単位面積に占める表面開孔の面積割合をいい、以下の条件で測定および評価されるものをいう。
[測定器具]
金属顕微鏡:Nikon ECLIPSS ME600
デジタルカメラ:Nikon DXM1200
写真撮影ソフト:Nikon ACT−1 ver.1
画像処理ソフト:イノテック製 QUICK GRAIN
[測定条件]
写真撮影:シャッタースピード0.5秒
2値化しきい値:235
[測定器具]
金属顕微鏡:Nikon ECLIPSS ME600
デジタルカメラ:Nikon DXM1200
写真撮影ソフト:Nikon ACT−1 ver.1
画像処理ソフト:イノテック製 QUICK GRAIN
[測定条件]
写真撮影:シャッタースピード0.5秒
2値化しきい値:235
本発明に係る焼結含油軸受であれば、運転初期における摺動摩耗特性が向上するので、必要以上に表面開孔率を高めて潤滑油等の滲み出しを促進せずとも足りる。このような観点から、油膜の形成に必要な量の潤滑剤(潤滑油等)を軸受面上に供給するのに最低限必要な表面開孔率の下限値を20%とした。また、潤滑剤の内部気孔への引き込みにより油膜の維持が困難とならない程度の表面開孔率の最大値を40%とした。
低摩擦層は焼結金属よりも撥油性に優れた材料で形成されたものであってもよい。このように低摩擦層を撥油性材料で形成することで、軸受面は相手部材との低摩擦性を有するだけでなく撥油性にも優れたものとなる。そのため、油膜が形成された際には、油膜と軸受面との間の摩擦を低くして、流体潤滑域における回転トルクを抑制することが可能となる。
具体的には、低摩擦層はフッ素系樹脂で形成されたものであってもよい。フッ素系樹脂であれば、通常、金属製の相手部材に対する摩擦係数にも優れ(小さく)、かつ、潤滑油等に対する濡れ性も非常に小さい。そのため、固体潤滑域では相手部材との摺動摩擦を低減しつつも、境界潤滑域では、油膜との摺動摩擦を低くして、摺動域全域における摺動抵抗、ひいては回転トルクをさらに抑制することができる。
上記の低摩擦層は、焼結金属からなる多孔質の軸受母体の一部を改質処理等したものであってもよく、あるいは、上記軸受母体とは別体に形成されたものであってもよい。ここで、軸受母体とは別体に形成する場合として、例えば低摩擦層を樹脂被膜やめっき層などで構成する場合が挙げられる。これら別体被膜や別体層で低摩擦層を形成するようにすれば、軸受面の表面開孔およびこの表面開孔に連通する表層部の内部気孔の孔径が、上記被膜の膜厚等の分だけ、当該表層部よりも深層に位置する深層部の内部気孔の孔径より相対的に小さくなる。よって、この場合に軸受面の表面開孔率を上記数値範囲(20%以上かつ40%以下)に設定するようにすれば、軸受内部に多量の潤滑剤を保持しつつも、当該潤滑剤の滲み出しを徐々に行うことができ。これにより、適量の潤滑剤を長期にわたって軸受面上に安定的に供給することが可能となる。
ここで、低摩擦層の厚みは、例えば10μm以下に設定されていてもよい。例えば上記のように低摩擦層を焼結多孔質体とは別体に形成する場合、焼結多孔質体の表面に形成された表面開孔を埋めることなく、当該表面上に被膜等を形成する必要があるところ、当該膜厚を10μm以下に抑えることで、表面開孔の少なくとも一部(比較的孔径の大きい開孔)を確実に残しつつ、軸受面を低摩擦層で構成することができる。なお、ここでいう「低摩擦層の厚み」とは、低摩擦層の厚さ方向の寸法をいい、低摩擦層の深さ(低摩擦層が形成されている部分のうち軸受面から最も離れている位置)を意味するものではない。また、軸受面を構成する部分とそれ以外の部分(例えば内部気孔の表面を構成する部分)とで厚みが異なる場合には、軸受面を構成する部分の厚みをいうものとする。
また、上記焼結含油軸受は、その外周面ないし端面が低摩擦層で構成されているものであってもよい。軸受面は、相手部材の支持形態により、軸受の内周面だけでなくその端面にも形成されることがある。このような場合、軸受面となり得る軸受端面も併せて低摩擦層で構成することで、上記と同様の不具合を解消して、スラスト支持部においても良好な摺動摩擦特性を得ることができる。また、外周面を摺動面として使用する場合(例えばカムフォロアとして使用する場合)にも有効である。
特に、低摩擦層を撥油性を示す材料で形成した場合、内周に設けた軸受面だけでなく、軸受外周面やその端面に撥油性が付与される。そのため、例えば含油処理後、軸受の外周面や端面に付着した油分を遠心分離などで除去し易くして、油分除去に要する時間、あるいは除去に必要な遠心力の軽減化を図ることができる。また、外周面や底側の端面はパーツフィーダ等との当接面となることがあるが、上記のように外周面等に撥油性を付与したものであれば、外周面や底面に油分等が付着するのを避けて、パーツフィーダ等による自動搬送・整列を滞りなく行うことが可能となる。
上記構成の焼結含油軸受は、運転初期、運転中ともに安定した摺動摩擦特性(トルク特性)が得られることから、例えばトルク変動が激しい用途(例えば自動車パワーウィンドウモータ用)や、摩擦音の発生を嫌う用途(例えば自動車パワーシートモータ用)に好適に使用できる。特に、低温(−40℃以上かつ0℃以下)では油膜等が非常に形成し難いところ、本発明に係る焼結含油軸受であれば、固体潤滑性能にも優れていることから、当該環境下においても良好な摺動摩擦特性を得ることができる。
また、軸受の外周面や端面など軸受の外表面全体に撥油性を有する低摩擦層を形成するようにすれば、軸受表面に油分が付着しなくなるので、周辺部材への油分の付着を嫌う用途、例えばプリンタの給紙・搬送機構用の軸受としても好適に使用できる。
また、前記課題の解決は、焼結金属で形成され、その内部に多数の気孔を有すると共に内部気孔に潤滑剤が含浸されたものであって、内周に設けた軸受面には多数の表面開孔が形成されている焼結含油軸受の製造方法において、焼結後の素材表面を加圧して整形した後、整形面に素材を構成する焼結金属よりも摩擦係数の低い低摩擦層を形成することで軸受面を構成し、かつ低摩擦層に表面開孔の少なくとも一部を残すようにしたことを特徴とする焼結含油軸受の製造方法によっても達成される。
この方法によれば、運転初期、運転中ともに良好かつ安定した摺動摩擦特性(トルク特性)を発揮することのできる焼結含油軸受を提供することができる。また、焼結素材の最終的に軸受面となる領域を予め加圧整形(サイジングともいう。以下同じ、)しておくことで、低摩擦層の形成後も形状精度に優れた軸受面を得ることができる。また、整形後に低摩擦層を形成することで、例えば低摩擦層を素材と別体に形成する場合、素材表面に形成した低摩擦層が整形時に剥れる事態を回避して、低摩擦層で確実に軸受面を構成することができる。
以上より、本発明によれば、摺動時、特に摺動開始時における摺動摩擦特性を改善することができる。
以下、本発明の一実施形態を図1および図2に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る焼結含油軸受1の断面図を示している。同図における焼結含油軸受1は、主に焼結金属製の軸受本体3(この図では円筒状)からなるもので、軸受本体3の内部には多数の気孔4が存在し、これら多数の内部気孔4には潤滑油が含浸されている。焼結含油軸受1の内周には、支持すべき軸2(図1中2点鎖線)の外周面と摺動する軸受面5が設けられている。軸受面5には多数の内部気孔4が開口しており(後述する表面開孔6)、軸2の相対回転に伴い、軸2の外周面と対向する軸受面5の表面開孔6を通じて、内部気孔4に保持されている潤滑油が軸受面5と軸2の外周面との間に滲み出すようになっている。
図2は、図1における領域A、すなわち焼結含油軸受1の軸受面5およびその近傍の拡大断面図である。同図に示すように、焼結含油軸受1の内部には、多数の内部気孔4が単独もしくは複数つながった状態で存在すると共に、これら内部気孔4と連通する多数の表面開孔6が軸受面5上に形成されている。軸受本体3の内周面には、軸受本体3を構成する焼結金属よりも摩擦係数の低い低摩擦層7が被覆形成されており、この低摩擦層7の外表面で軸受面5が構成されている。この場合、低摩擦層7で被覆形成された軸受面5上には、軸受本体3に形成された表面開孔6の少なくとも一部がなお開口した状態で残っており、内部気孔4に含浸した潤滑油を表面開孔6を通じて軸受面5上に供給できるようになっている。言い換えると、低摩擦層7の厚みは、焼結金属製の軸受本体3の内周面を被覆することで、当該内周面に開口形成されていた表面開孔6を閉塞してしまわない程度に調整されている。具体的には、少なくとも10μm以下に低摩擦層7の厚みが調整されている。また、この際、軸受面5の表面開孔率は20%以上かつ40%以下となるように設定されている。
この実施形態では、低摩擦層7は、軸受本体3の内周面だけでなく、当該内周面上に形成された表面開孔6の表面にも形成されている。さらには、表面開孔6と連通する内部気孔4(ここでは軸受面5に比較的近い軸受本体3の表層部に含まれる内部気孔4)の表面にまで低摩擦層7が連続的に形成されている。また、この図示例では、潤滑油が内部気孔4および内部気孔4と連通する表面開孔6付近にまで含浸されている。
上記構成の焼結含油軸受1は、例えば原料粉末を圧粉成形する工程(a)、圧粉成形体を焼結する工程(b)、焼結体の表面を整形する工程(c)、焼結体の軸受面を少なくとも含む領域に低摩擦層を形成する工程(d)、および潤滑油を含浸する工程(e)とを経て製造される。以下、各工程を詳細に説明する。
(a)圧粉成形工程
まず、原料となる金属粉末を成形金型内部に充填し、これを圧縮成形することで完成品に近い形状の圧粉成形体を得る。原料粉末には、例えばFe粉末と、Cu粉末とを同程度配合したものが用いられるが、何れか一方の金属粉末のみを原料粉末として用いることもできる。もちろん、FeやCu以外の金属粉末(Fe系合金粉末やCu系合金粉末を含む)を原料に用いることもでき、これら複数種の金属粉末を混合したものを原料として用いることもできる。また、主成分となる金属粉末間のバインダとしての作用を期待して、Sn粉末などの低融点金属を添加することもできる。
まず、原料となる金属粉末を成形金型内部に充填し、これを圧縮成形することで完成品に近い形状の圧粉成形体を得る。原料粉末には、例えばFe粉末と、Cu粉末とを同程度配合したものが用いられるが、何れか一方の金属粉末のみを原料粉末として用いることもできる。もちろん、FeやCu以外の金属粉末(Fe系合金粉末やCu系合金粉末を含む)を原料に用いることもでき、これら複数種の金属粉末を混合したものを原料として用いることもできる。また、主成分となる金属粉末間のバインダとしての作用を期待して、Sn粉末などの低融点金属を添加することもできる。
具体的には、例えばCu粉末を主成分とし、又はCu粉末とFe粉末とを主成分とする場合(Cu系又はCu−Fe系の場合)には、これら主成分となるCu粉末やFe粉末より粒径の小さいSn粉末をバインダとして配合することができる。また、Fe粉末を主成分とする場合(Fe系の場合)には、Fe粉末よりも粒径の小さいCu粉末をバインダとして配合することができる。ここで、Cu粉末をバインダとして使用可能なCu粉末の一例として、45μm以上かつ75μm以下の割合が50%以上(好ましくは60%以上)を占めるCu粉末を挙げることができる。
あるいは、成形時もしくは使用時の摺動性改善を図る目的で黒鉛やMoS2、MnS、ステアリン酸亜鉛等の粉末状固体潤滑剤など、上記以外の機能を有する粉末を、その用途や要求特性に応じてさらに添加することもできる。
また、表面開孔率に関して言えば、後述する低摩擦層の形成工程(d)で焼結金属製の軸受本体3に形成された表面開孔6が低摩擦層7の被覆形成により縮小することを考慮して、最終的な表面開孔率よりも大きめに設定しておくのがよい。具体的には、軸受本体3の内周面の表面開孔率が25%以上かつ45%以下となるように成形密度を調整しておくことができる。
(b)焼結工程
上記工程(a)で得られた圧粉成形体を、主成分となる金属粉末の焼結温度まで加熱することで焼結し、焼結体を得る。ここで、例えば上記のようにSn粉末やCu粉末をバインダとして配合している場合、バインダとなる粉末が溶融して、当該粉末があった領域に新たな内部気孔4が形成される。この種の内部気孔4は、圧粉成形時に形成される内部気孔4と比べてその形状が安定しているため(歪んでいないため)、表面開孔6にも連通しやすい。そのため、バインダとなる粉末の粒径やその配合割合を調整することで、表面開孔6を通じて軸受面5上に潤滑油を供給可能な内部気孔4の割合を比較的容易に制御することができる。具体的には、例えば焼結後(あるいは整形後)の焼結体内部に、直径40μm以上の流出孔(表面開孔6と連通し軸受面5上に潤滑油を供給可能な内部気孔4)が1%以上かつ6%以下の割合で分布するように、バインダとなる粉末の配合割合を設定することができる。
上記工程(a)で得られた圧粉成形体を、主成分となる金属粉末の焼結温度まで加熱することで焼結し、焼結体を得る。ここで、例えば上記のようにSn粉末やCu粉末をバインダとして配合している場合、バインダとなる粉末が溶融して、当該粉末があった領域に新たな内部気孔4が形成される。この種の内部気孔4は、圧粉成形時に形成される内部気孔4と比べてその形状が安定しているため(歪んでいないため)、表面開孔6にも連通しやすい。そのため、バインダとなる粉末の粒径やその配合割合を調整することで、表面開孔6を通じて軸受面5上に潤滑油を供給可能な内部気孔4の割合を比較的容易に制御することができる。具体的には、例えば焼結後(あるいは整形後)の焼結体内部に、直径40μm以上の流出孔(表面開孔6と連通し軸受面5上に潤滑油を供給可能な内部気孔4)が1%以上かつ6%以下の割合で分布するように、バインダとなる粉末の配合割合を設定することができる。
(c)整形工程(サイジング工程)
上記工程(b)で得られた焼結体(焼結後の軸受素材)に対し、適当な金型を用いて圧迫力を付与することで、焼結体を所定形状に整形すると共に、その寸法を所定範囲内に仕上げる。
上記工程(b)で得られた焼結体(焼結後の軸受素材)に対し、適当な金型を用いて圧迫力を付与することで、焼結体を所定形状に整形すると共に、その寸法を所定範囲内に仕上げる。
(d)低摩擦層形成工程
上記(a)〜(c)の工程を経て、完成品に準じる形状に仕上がった軸受素材(軸受本体3)の外表面に低摩擦層7を被覆形成する。ここでは、PTFEなどのフッ素系樹脂からなる樹脂被膜を低摩擦層7として軸受本体3の内周面と外周面、および両端面に被覆形成する。具体的には、減圧環境下において、フッ素系樹脂を混合した溶剤中に焼結体を一定時間浸漬させる。その後、当該溶剤を除去することで、軸受本体3の内周面および内周面から所定厚みの表層部に含まれる内部気孔4の表面に低摩擦層7としての撥油性被膜が形成される(図2を参照)。これにより、低摩擦層7としての撥油性被膜により軸受面5が構成される。なお、溶剤の除去は、撥油性被膜の固化のための加熱と同時に行ってもよい。
上記(a)〜(c)の工程を経て、完成品に準じる形状に仕上がった軸受素材(軸受本体3)の外表面に低摩擦層7を被覆形成する。ここでは、PTFEなどのフッ素系樹脂からなる樹脂被膜を低摩擦層7として軸受本体3の内周面と外周面、および両端面に被覆形成する。具体的には、減圧環境下において、フッ素系樹脂を混合した溶剤中に焼結体を一定時間浸漬させる。その後、当該溶剤を除去することで、軸受本体3の内周面および内周面から所定厚みの表層部に含まれる内部気孔4の表面に低摩擦層7としての撥油性被膜が形成される(図2を参照)。これにより、低摩擦層7としての撥油性被膜により軸受面5が構成される。なお、溶剤の除去は、撥油性被膜の固化のための加熱と同時に行ってもよい。
また、上述の方法で低摩擦層7を形成する場合、軸受面5となる軸受本体3の内周面だけでなく、その外周面や両端面など軸受本体3の全外表面に低摩擦層7が形成される。これにより、完成品としての焼結含油軸受1の外周面8および両端面9,9(図1を参照)が何れも、低摩擦層7としての撥油性被膜により構成される。
ここで、低摩擦層7(撥油性被膜)の厚みは、表面開孔6を残す観点からは10μm以下とすることが好ましい。また、上述のように、数十μmの内部気孔4ないし表面開孔6を主とする場合には、5μm以下とすることが好ましい。一方で、この低摩擦層7は、例えば回転摺動する軸2から所定のせん断力を受けるため、低摩擦層7が軸受本体3から剥離しない程度の密着力を有する程度の厚み(例えば1μm程度)が最低限必要となる。この厚みの下限値は、軸2から受けるトルクの大きさによっても異なるため、これらの点を踏まえて適当な厚みに設定するのが好ましい。もちろん、焼結金属からなる軸受本体3との密着性を高めるための成分を上記溶剤に添加することも可能である。
あるいは、上述のように被覆後の表面開孔率を調整する観点から、低摩擦層7の厚みを設定することもできる。例えば被覆前の軸受本体3の内周面の表面開孔率が25%以上かつ45%以下の場合、被覆後の表面開孔率が20%以上かつ40%以下となるように低摩擦層7(撥油性被膜)の厚みを設定するようにしてもよい。
(e)潤滑油含浸工程
上記工程(d)で得られた焼結体の内部に潤滑油を含浸する。具体的には、工程(d)と同様、減圧環境下において、当該焼結体を潤滑油で満たした潤滑油浴中に一定時間浸漬させることで、軸受内部の内部気孔4に潤滑油を含浸させる。この際、流体潤滑に最低限必要な潤滑油の量を考慮して、例えば軸受内部への含浸割合が軸受全体に対して10vol%以上となるように潤滑油を含浸させるようにするのがよい。使用する潤滑油としては、特に低温時における潤滑特性や粘性抵抗に優れたPAO系潤滑油やエステル系潤滑油が使用可能である。また、この際、潤滑油の内部気孔4への含浸を確実かつ短時間で行うため、潤滑油を加熱した状態で含浸作業を行うようにしてもよい。
上記工程(d)で得られた焼結体の内部に潤滑油を含浸する。具体的には、工程(d)と同様、減圧環境下において、当該焼結体を潤滑油で満たした潤滑油浴中に一定時間浸漬させることで、軸受内部の内部気孔4に潤滑油を含浸させる。この際、流体潤滑に最低限必要な潤滑油の量を考慮して、例えば軸受内部への含浸割合が軸受全体に対して10vol%以上となるように潤滑油を含浸させるようにするのがよい。使用する潤滑油としては、特に低温時における潤滑特性や粘性抵抗に優れたPAO系潤滑油やエステル系潤滑油が使用可能である。また、この際、潤滑油の内部気孔4への含浸を確実かつ短時間で行うため、潤滑油を加熱した状態で含浸作業を行うようにしてもよい。
そして、含浸作業後、適当な油除去装置(遠心分離装置など)を用いて油切り作業を行う。これにより、軸受内部の内部気孔4に含浸させた潤滑油はそのままに、表面に付着した余分な潤滑油のみが除去される。これにより、焼結含油軸受1が完成する。なお、焼結含油軸受1の外周面8や両端面9,9を低摩擦層7で構成しておけば、この油切りの際、外周面8や両端面9,9に潤滑油が付着するのを極力避けて、あるいは、付着した潤滑油を容易に除去することができる。
以上の説明に係る焼結含油軸受1によれば、軸受本体3を構成する焼結金属よりも摩擦係数の低い低摩擦層7で軸受面5が構成されるので、固体潤滑域での摺動摩擦が軽減される。そのため、運転開始直後に固体潤滑で摺動する際の摺動摩耗、ひいては初期トルクを低減することができ、異音の発生も防止することができる。また、低摩擦層7で構成された軸受面5上には、なお内部気孔4と連通する表面開孔6が開口した状態で残っているので(図2を参照)、内部気孔4に含浸された潤滑油を表面開孔6を通じて迅速に軸受面5上に供給することができる。これにより、軸受面全体として軸との間の潤滑状態が固体潤滑から境界潤滑へと移行するのに要する時間が短縮され、その間の摺動摩耗が最小限に抑えられる。また、定常運転時の摺動摩擦が低くなるので、安定した摺動状態が得られる。
また、この実施形態では、低摩擦層7を撥油性を示す材料(フッ素系樹脂)で形成しているので、軸受面5上に油膜を形成した際、油膜と軸受面5との摺動摩擦が低減される。これにより、軸2との回転トルクをさらに低減することができる。
なお、低摩擦層7は、樹脂被膜以外で形成することも可能なことはもちろんであり、例えば、銀めっきやニッケルめっきなどのめっき層を、めっき処理により軸受本体3の所定表面に析出形成することで、低摩擦層7を形成してもよい。あるいは、被膜状や層状のものを焼結金属製の軸受本体3に被覆形成する以外に、軸受本体3の表面に物理的又は化学的処理を施すことで、軸受本体3の所定の表層部を改質する(いわば改質層を設ける)ようにしてもよい。
また、この実施形態では、軸受面5上に表面開孔6が極力残るように低摩擦層7(撥油性被膜)の厚みを設定したが、表面開孔6の大きさによっては、部分的に表面開孔6を閉塞する程度の厚みとしても特に問題ない。
また、上記実施形態では、整形工程(c)の後に低摩擦層7を形成したが、低摩擦層7の剥離を伴わない程度において、低摩擦層7を形成した後に加圧整形(サイジング)を施すようにしてもよい。
以上の説明に係る焼結含油軸受1は、運転初期、運転中ともに良好かつ安定した摺動摩擦特性(トルク特性)を発揮できるものであることから、例えばトルク変動が激しい用途(例えば自動車パワーウィンドウモータ用)や、摩擦音の発生を嫌う用途(例えば自動車パワーシートモータ用)に好適に使用できる。また、これら自動車関連用途においては、比較的低温(−30℃〜−40℃)下での使用を考慮する必要があるが、本発明に係る焼結含油軸受であれば、固体潤滑性能にも優れていることから、低温環境下で使用される用途に対しても良好な摺動摩擦特性を得ることができる。
1 焼結含油軸受
2 軸
3 軸受本体
4 内部気孔
5 軸受面
6 表面開孔
7 低摩擦層
8 外周面
9 端面
2 軸
3 軸受本体
4 内部気孔
5 軸受面
6 表面開孔
7 低摩擦層
8 外周面
9 端面
Claims (10)
- 焼結金属で形成され、その内部に多数の気孔を有すると共に、該内部気孔に潤滑剤が含浸されたものであって、内周に設けた軸受面には多数の表面開孔が形成されている焼結含油軸受において、
前記軸受面は前記焼結金属よりも摩擦係数の低い低摩擦層で構成され、かつ、該低摩擦層には前記内部気孔と連通する前記表面開孔の少なくとも一部が開口していることを特徴とする焼結含油軸受。 - 前記軸受面の表面開孔率が20%以上かつ40%以下に設定されている請求項1に記載の焼結含油軸受。
- 前記低摩擦層は前記焼結金属よりも撥油性に優れた材料で形成されたものである請求項1又は2に記載の焼結含油軸受。
- 前記低摩擦層はフッ素系樹脂で形成されたものである請求項3に記載の焼結含油軸受。
- 前記低摩擦層は樹脂被膜で形成されたものである請求項1〜4の何れかに記載の焼結含油軸受。
- 前記低摩擦層はめっき層で形成されたものである請求項1〜3の何れかに記載の焼結含油軸受。
- 前記低摩擦層の厚みが10μm以下に設定されている請求項1〜6の何れかに記載の焼結含油軸受。
- 外周面ないし端面が前記低摩擦層で構成されている請求項1〜7の何れかに記載の焼結含油軸受。
- 自動車パワーウィンドウモータ用あるいはパワーシートモータ用として組み込まれて使用される請求項1〜8の何れかに記載の焼結含油軸受。
- 焼結金属で形成され、その内部に多数の気孔を有すると共に該内部気孔に潤滑剤が含浸されたものであって、内周に設けた軸受面には多数の表面開孔が形成されている焼結含油軸受の製造方法において、
焼結後の素材表面を加圧して整形した後、該整形面に前記素材を構成する前記焼結金属よりも摩擦係数の低い低摩擦層を形成することで前記軸受面を構成し、かつ前記低摩擦層に前記表面開孔の少なくとも一部を残すようにしたことを特徴とする焼結含油軸受の製造方法。
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JP2009099769A JP2010249242A (ja) | 2009-04-16 | 2009-04-16 | 焼結含油軸受およびその製造方法 |
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JP2016176382A (ja) * | 2015-03-19 | 2016-10-06 | 富士電機株式会社 | 摺動部材及びその製造方法、並びに圧縮機 |
CN111480014A (zh) * | 2017-12-15 | 2020-07-31 | 千住金属工业株式会社 | 滑动构件和轴承 |
-
2009
- 2009-04-16 JP JP2009099769A patent/JP2010249242A/ja active Pending
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US11261914B2 (en) | 2017-12-15 | 2022-03-01 | Senju Metal Industry Co., Ltd. | Sliding member and bearing |
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