JP2011007217A - 滑り軸受ユニット用軸部材、およびこの軸部材を備えた滑り軸受ユニット - Google Patents

滑り軸受ユニット用軸部材、およびこの軸部材を備えた滑り軸受ユニット Download PDF

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Abstract

【課題】焼結金属製の滑り軸受において、高い摺動特性を発揮しつつも、鳴き音などの異音の発生を抑制する。
【解決手段】滑り軸受ユニットに使用される軸部材3は、銅組織9を主体とし、又は銅組織9と鉄組織10とを有する焼結金属製の滑り軸受(焼結金属軸受2)に組み込まれて使用されるもので、焼結金属軸受2との摺動面4を有する。この軸部材3は、金属製の軸本体7と、軸本体7の所定表面に形成され、摺動面4を構成する樹脂皮膜8とを備える。樹脂皮膜8は、銅組織9に比べて軸本体7との密着性に優れた樹脂で形成され、かつ、その一部が焼結金属軸受2との相対摺動に伴い軸本体7から剥離するに留まるものである。
【選択図】図3

Description

本発明は、滑り軸受ユニット用軸部材に関し、特に低温時の静粛性に優れた滑り軸受ユニット用軸部材に関する。
滑り軸受に好適に使用される軸受の1つに焼結含油軸受がある。焼結含油軸受は、焼結金属製の軸受の内部空孔に潤滑油を含浸させたものである。この種の滑り軸受は、ボールベアリング等に比べて使用時の静粛性に優れており、また非常に安価で製作可能なことから、例えば産業用機械をはじめとして、自動車やオフィス機器、家庭用機器の小型電動モータなど、人の操作快適性に影響を及ぼす機器の駆動系に好適に使用されている。
ところで、上記焼結金属製の滑り軸受を、例えば小型電動モータ用に適用する場合、モータを静止して低温環境に長時間置いた後に始動すると、鳴き音と呼ばれる異音が発生することがある。この鳴き音の発生原因としては、潤滑油の線膨張係数が焼結金属からなる軸受本体のそれよりも大きいために、低温時には潤滑油が軸受内部に引き込まれ、摺動面間において潤滑油が枯渇するためと考えられている。
この種の問題に対しては、これまでに数多くの対応策が提案されている。例えば、下記特許文献1には、焼結含油軸受における焼結金属組織の組成や通気度、および潤滑油の粘度を工夫することで鳴き音の発生頻度を低減させる試みが開示されている。
また、下記特許文献2には、焼結含油軸受と軸とのクリアランス(軸受すき間)の大きさに基づき、所定面積の表面開孔の軸受面に占める割合を調整することで、低温時における潤滑油の枯渇の軽減を図ろうとした旨が記載されている。
しかし、下記特許文献1に開示の手段は、あくまでも適量の潤滑油を摺動面上に残すことを前提としたものであるから、潤滑油の枯渇度が高まった場合には十分な効果を得ることは難しい。また、下記特許文献2に開示の手段では、軸受面の表面開孔の形態が軸の回転摺動に伴い変化したり、軸受の摩耗が進展することで軸受すき間が変化した場合、表面開孔の形態が初期状態とは異なったものとなるため、当初想定した程度に鳴き音の発生防止を図ることは難しい。
例えば下記特許文献3のように、潤滑油不足に起因する回転効率の低下防止や寿命向上のために、焼結含油軸受の摺動面の一部に非多孔質の樹脂層を形成しているものもある。これは、焼結金属製の摺動面の一部を開孔部のない樹脂製の摺動面に置き換えることで軸との金属接触を低減すると共に油の軸受内部への逃げを防止したものである。しかし、この構成では、高温環境下での寿命が焼結含油軸受に比べて劣る。また、そもそも樹脂層で軸受表面の開孔を塞いでいることから、潤滑油の供給が不十分となり、摺動性の低下を招くおそれがある。
例えば、下記特許文献4には、多孔質の焼結体の表層部に、固体潤滑剤を含む樹脂層を、焼結体の空孔を塞がないように形成して、当該樹脂層と相手部材を潤滑油中で摺動させるようにした焼結摩擦部材(クラッチ)が開示されている。そのため、この構成を焼結含油軸受に適用できれば、焼結金属と相手部材との接触を避けつつも、摺動面となる樹脂層の表面に潤滑油を供給できるように思われる。しかし、実際には、このような構成とした場合であっても、低温時に軸受内部への油の引き込みが生じることには変わりなく、その場合、樹脂層のみで相手部材を支持する必要が生じる。また、上記特許文献に開示の摩擦部材に樹脂層を導入した目的は、固体潤滑剤の脱落防止であるから、これを含有する樹脂層には相当の厚みが必要となる。これでは、金属製の摺動面に比べて低弾性となり、微視的な接触面積が増加することで却って摩擦係数が増加するおそれがある。
また、上記の鳴き音に関する問題は、低温下での起動時のみならず、他の様々な状況で起こり得る。例えば長期にわたり使用されるオフィスのコピー機などでは、定常的に鳴き音が発生している場合もある。特に、オフィス等では、その作業環境によって静粛性が要求される場合も少なくないため、鳴き音の防止対策が強く望まれている。
特開2003−120674号公報 特開2004−138215号公報 特開2002−39183号公報 特開2000−130484号公報
以上の事情に鑑み、本明細書では、この種の滑り軸受において、高い摺動特性を発揮しつつも、鳴き音などの異音の発生を抑制することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
本発明は、前記課題の解決を図るためになされたものである。すなわち、本発明に係る滑り軸受ユニット用軸部材は、1又は2種類以上の金属組織を有する焼結金属製の滑り軸受に使用されるもので、滑り軸受との摺動面を有する滑り軸受ユニット用の軸部材であって、金属製の軸本体と、軸本体の所定表面に形成され、摺動面を構成する樹脂皮膜とを備え、樹脂皮膜は、滑り軸受を構成する所定の金属組織に比べて軸本体との密着性に優れた樹脂で形成され、かつ、その一部が滑り軸受との相対摺動に伴い軸本体から剥離するに留まるものである点をもって特徴付けられる。
本発明者らが焼結金属製の滑り軸受を使用した際の鳴き音の発生原因を調査したところ、顕著な鳴き音を生じる場合には、焼結金属軸受の摺動面を構成する金属が軸部材の表面に付着していることが判明した。軸部材との摺動に伴い軸受の摺動面を構成する金属が部分的に剥がれて軸部材に付着すると、付着した金属と軸受の摺動面を構成する金属とが摺動接触して、同種金属のために凝着を生じる。この場合には摩擦係数が大きくなる。一方で、剥離した金属片が付着していない軸部材の表面と軸受とが摺動しているときの摩擦係数は比較的小さくなる。以上のことから、軸受の摺動面を構成する金属が剥離して軸部材の表面に付着し始めると、摺動面間の摩擦係数の変動幅が大きくなり、その結果、当該摺動面間が加振源となって振動が生じるものと考えられる。故に、この振動が異音の発生原因と推定される。
本発明は、以上に述べた新規な知見に基づき、滑り軸受の側ではなく軸部材の側に凝着防止のための対策を講じたものである。すなわち、本発明に係る滑り軸受ユニット用軸部材であれば、滑り軸受との摺動面を樹脂皮膜で構成し、かつ、この樹脂皮膜を、滑り軸受を構成する所定の金属組織よりも軸本体との密着性に優れた樹脂で形成したので、基本的に滑り軸受の摺動面と摺動接触する部位では剥離が生じ難く、仮に剥離が生じたとしても(樹脂皮膜と滑り軸受の摺動面との密着性よりも、当該樹脂皮膜と軸本体との密着性の方が勝るため)、一部分の剥離に留まる。これにより、滑り軸受の摺動面を構成する金属組織と金属製の軸本体とが直接接触する事態を避けて、軸部材と軸受との間で凝着が生じるのを防止することができる。従って、この凝着に起因して生じる振動、およびこの振動による異音(鳴き音)の発生を抑制することができる。
また、焼結金属製の滑り軸受に比べて金属製の軸(軸本体)であれば、その寸法精度や表面精度を容易に高めることができるので、この軸本体に樹脂皮膜を形成してなる軸部材の寸法精度等も、焼結金属軸受に樹脂皮膜を形成した場合のそれより高くなる。よって、例えば皮膜厚みを調整する等して、樹脂皮膜を、滑り軸受との相対摺動によりその一部が剥離するに留まるものとすることで、当該樹脂皮膜を形成した後の軸部材の寸法精度等を高く維持して、その軸受すき間を高精度に管理することができる。
また、上述のように、本発明では、軸部材の外周面に樹脂皮膜を形成するようにしたので、当然に、滑り軸受には樹脂皮膜等を形成する必要はない。これにより、滑り軸受に既存の焼結金属軸受や焼結含油軸受を用いることができ、潤滑油の介在のもと、良好な摺動潤滑状態を得ることができる。
樹脂皮膜には、滑り軸受を構成する所定の金属組織よりも軸本体との密着性に優れており、かつ、その一部が剥離するに留まる限りにおいて任意の種類の樹脂が使用でき、例えば成形性の観点からは、熱硬化性樹脂を使用することができる。また、熱硬化性樹脂のうち、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂からなる群の中から選択される1つの樹脂で樹脂皮膜を形成することもできる。これらの樹脂は、通常、軸部材や軸受本体に対して要求される特性を満たす材質を使用(軸部材であれば鉄系、滑り軸受であれば銅系又は銅鉄系)する場合に有効に作用する。
上記構成の滑り軸受ユニット用軸部材は、この軸部材と、軸部材を内周に配設した焼結金属製の滑り軸受とを備えた滑り軸受ユニットとして提供されるものであってもよい。
また、この場合、滑り軸受を構成する金属組織は、軸本体に対して密着力が弱くかつ摺動性に優れた金属組織が好適であり、例えば上記の熱硬化性樹脂との相性も踏まえると、銅を主体とする金属組織(銅単体もしくは銅合金からなる組織を含む)を例示することができる。もちろん、上記滑り軸受が2種類以上の金属組織を有するものであってもよく、その場合、これら複数の金属組織として、樹脂皮膜との密着性が相互に異なるものであってもよい。具体例として、銅鉄系の金属組織(銅および鉄を主体とする金属組織)を例示することができる。
ここで、前者の構成(銅を主体とする金属組織)を採る場合、銅の比率が50wt%以上100wt%以下となるように、滑り軸受の材料組成を定めてもよい。具体的には、銅粉末(純銅粉末だけでなく銅合金粉末も含む)の混合比率が50wt%以上100wt%以下となるように、原料粉末の配合割合を定めるようにしてもよい。
また、後者の構成(2種類以上の金属組織)を有する滑り軸受に、本発明に係る軸部材を組合せることで、以下の作用を得ることができる。すなわち、軸部材の摺動面のうち、滑り軸受を構成する所定の金属組織と向かい合う領域では、上述の理由から樹脂皮膜の剥離が生じ難い。その一方で、滑り軸受を構成する他の金属組織と向かい合う領域では、上記所定の金属組織に比べて剥離が生じ易い。よって、この滑り軸受の製作段階で、その組成(例えば、原料となる各金属粉末の配合割合や粒径など)を調整しておくことで、所定の金属組織と他の金属組織とがそれぞれ摺動面と向かい合う割合、言い換えると、剥離する部分と密着状態が維持される部分の割合を調整することができる。もちろん、このように滑り軸受および樹脂皮膜を形成するのであれば、摺動面全体にわたって樹脂皮膜の剥離と密着部分とが均等に生じることになるので、摺動面における上記凝着を全面にわたって防止することができる。
また、本発明に係る滑り軸受ユニットは、軸部材の側に凝着防止のための樹脂皮膜を形成するものであるから、焼結金属製の滑り軸受には任意のものを使用することができる。例えば、内部空孔を埋めて非多孔質とした焼結金属軸受を使用することもできる。あるいは、内部空孔に潤滑油を含浸させた焼結含油軸受を使用することもできる。
また、本発明に係る滑り軸受ユニットであれば、軸部材の摺動面が樹脂皮膜で構成されているので、例えば比較的低速回転下や低荷重下もしくは高摩擦下での使用であれば、無潤滑状態であっても特に問題なく使用することができる。また、上記のように、滑り軸受の構成は原則任意であることから、高速回転下や高荷重下において良好な摺動状態を実現したい場合には、内部空孔に潤滑油を含浸させた状態で使用すればよい。
以上の説明に係る軸部材又はこの軸部材を備えた滑り軸受ユニットは、低温下だけでなく高温下における異音発生を抑制することができ、かつ摺動性に優れていると共に低コストに製造可能であることから、例えば寒冷地に使用される自動車の電装モータをはじめ、自動車に内蔵される電子機器用のモータ用軸受として好適に使用できる。もちろん、プリンターやコピー機、あるいは各種電子機器に内臓されるファンモータなど運転時の温度が高く利用時間が比較的長いものであって、鳴き音等が使用者に不快感を与え得るオフィスや家庭で使用される機器にも好適に使用することができる。
以上のように、本発明によれば、この種の滑り軸受において、高い摺動特性を発揮しつつも、鳴き音などの異音の発生を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る滑り軸受ユニットの縦断面図である。 図1中の領域Aの拡大断面図であって、滑り軸受との相対摺動前における滑り軸受ユニット用軸部材の摺動面周辺の構造を模式的に示す図である。 図1中の領域Aの拡大断面図であって、滑り軸受との相対摺動後における滑り軸受ユニット用軸部材の摺動面周辺の構造を模式的に示す図である。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。ここでは、銅鉄系の焼結軸受に対して鉄系の軸本体を有する軸部材を使用する場合を例にとって説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る滑り軸受ユニット1の一部縦断面図を示している。この実施形態では、滑り軸受ユニット1は、焼結金属軸受2と、焼結金属軸受2の内周に配設される滑り軸受ユニット用軸部材(以下、単に軸部材という。)3とを備える。軸部材3の外周面のうち焼結金属軸受2の内周面と向かい合う領域には摺動面4が設けられている。また、焼結金属軸受2はその内部に多数の空孔5を有し、これらの内部空孔5には潤滑油が含浸されている。これら多数の内部空孔5は、例えば図2に示すように、焼結金属軸受2の内周面に開孔した表面開孔6とつながっており、軸部材3の相対回転に伴い、内部空孔5に保持された潤滑油が表面開孔6を通じて摺動面4との間(軸受すき間)に滲み出てくるようになっている。
図2は、図1における領域A、すなわち軸部材3の摺動面4周辺の拡大断面図を示している。同図に示すように、この軸部材3は、金属製の軸本体7と、軸本体7の所定の表面、少なくとも焼結金属軸受2との摺動面4となる領域(外周面の一部領域)に形成される樹脂皮膜8とを備える。
また、焼結金属軸受2は、原料となる1又は2種類以上の金属粉末(単金属と合金との何れをも含む)を圧縮成形した後、焼結することで得られるもので、この実施形態では、銅粉末と鉄粉末との2種類の金属粉末を原料として成形される。よって、図2に示すように、焼結金属軸受2は、銅を主とする組織9(以下、単に銅組織という。)と、鉄を主とする組織10(以下、単に鉄組織という。)とが混在した構造を有する。この場合、摺動面4と向かい合う領域(焼結金属軸受2の内周面)は、銅組織9と鉄組織10とで構成される。
この場合、樹脂皮膜8は、軸本体7の所定表面に密着した状態で形成されており、以下に述べるように、その一部が、焼結金属軸受2との相対摺動に伴い軸本体7(軸部材3)から剥離するように、かつ、樹脂皮膜8のうち、軸本体7よりも樹脂皮膜8との密着性に乏しい銅組織9と主に摺動接触する部分では剥離がなるべく生じないように、材質や膜厚、成膜条件などが設定される。もちろん、軸部材3の回転速度や荷重(回転時に摺動面4に付与される面圧)などの軸受使用条件も考慮に入れて、焼結金属軸受2および軸本体7に対する樹脂皮膜8の密着性を定めてもよい。また、軸本体7や焼結金属軸受2に関しては、樹脂皮膜8との密着性だけでなく他の要因(強度、剛性、耐摩耗性、導電性、加工性、膨潤(潤滑油による樹脂の変質)など)も考慮に入れて材質の選択を行う必要があるため、これらを考慮して、先に軸本体7と焼結金属軸受2の材質をまず先に定め、その上で、上記条件を満たす樹脂を選定してもよい。
以下、樹脂皮膜8の移動について説明する。図2に示すように、樹脂皮膜8を軸本体7の所定表面に形成した後であって、焼結金属軸受2との相対回転前においては、全ての樹脂皮膜8は軸本体7に密着した状態にある。そして、この状態から、軸部材3と焼結金属軸受2とを相対回転させることで、焼結金属軸受2の内周面と樹脂皮膜8との間で摺動接触を生じる。この摺動接触に伴い、例えば図3に示すように、摺動面4を構成する樹脂皮膜8の一部が軸本体7から剥ぎ取られて(剥離して)、剥ぎ取られた部分の軸本体7の外周面が露出する。この実施形態では、樹脂皮膜8に対する密着性が比較的弱い銅組織9と主として摺動接触する部分では樹脂皮膜8の剥離が生じ難く、樹脂皮膜8に対する密着性が比較的強い鉄組織10と主として摺動接触する部分では樹脂皮膜8の剥離が生じ易い。
ここで、軸部材3のベースとなる軸本体7は、必要とされる強度や剛性、加工性などを考慮してSUSなどの鉄系金属で形成されることから、例えば軸本体7がSUSで形成される場合、樹脂皮膜8には、銅(銅組織9)に比べてSUS(軸本体7)との密着性に優れた樹脂が使用される。また、樹脂皮膜8に使用する樹脂と各金属との組合せによっては、軸本体7から剥離した樹脂皮膜8の一部が剥ぎ取られるのと同時に、当該剥ぎ取られた一部をそのまま樹脂皮膜8に対する密着性が比較的強い金属組織の表面に密着させることもできる。言い換えると、軸本体7と同等、あるいは、軸本体7よりも他の金属組織(ここでは鉄組織10)との密着性に優れた樹脂を使用することができる。上記双方の条件を満たす樹脂として、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、フェノール樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を例示することができる。また、この中でも、上記実施形態のように、滑り軸受ユニット1を銅鉄系の焼結金属で形成し、軸本体7をSUSなどの鉄系金属で形成する場合であれば、銅と銅の接着強度に比べて鉄と鉄の接着強度に優れたアクリル系の樹脂が好適である。
上記構成の滑り軸受ユニット1において、軸部材3の相対回転に伴い、多数の内部空孔5に保持された潤滑油が表面開孔6を介して摺動面4上に滲み出す。これにより、軸部材3と焼結金属軸受2との間(軸受すき間)に潤滑油の膜が形成され、この潤滑油膜を介して軸部材3が回転自在に支持される。
また、軸部材3の相対回転に伴い、軸部材3に設けた摺動面4と焼結金属軸受2の内周面とが摺動接触することで、摺動面4を構成する樹脂皮膜8の一部が軸本体7から剥ぎ取られる。これにより、図3に示すように、軸部材3の外周面が、一部露出した軸本体7の外周面と、剥離せずに軸本体7に残った樹脂皮膜8の一部とで再構成される。この場合、剥離した部分は主に焼結金属軸受2の鉄組織10と摺動接触する部分に多く、樹脂皮膜8が剥離せずに残った部分は主に銅組織9と摺動接触する部分に多い。ここで、焼結金属軸受2を構成する2種類の金属組織のうち、鉄組織10に比べて銅組織9のほうがSUS製の軸本体7に削り取られ易く、また付着し易い性質を有することから、軸本体7と鉄組織10との接触よりも軸本体7と銅組織9との接触を避ける必要がある。よって、図3に示す状態で軸部材3と焼結金属軸受2とが回転摺動させた場合、剥れずに軸本体7に残った樹脂皮膜8の一部は銅組織9と優先的に摺動接触する。これにより、銅組織9の軸本体7外周面への付着が抑制されるので、銅組織9の凝着を回避して、異音の発生を防止することができる。
また、この実施形態のように、銅組織9と鉄組織10からなる焼結金属軸受2は、銅粉末と鉄粉末との混合、圧縮、焼成を経て形成されることから、摺動面4と向かい合う内周面に、銅組織9と鉄組織10が偏り無く分布する。よって、摺動面4全体にわたって銅の凝着を抑制することができ、異音の発生をより確実に防止することができる。また、剥離した樹脂皮膜8の一部が焼結金属軸受2の鉄組織10に密着する場合には、これら剥離した樹脂皮膜8が不純物として潤滑油中に含まれることもないため、潤滑油の性能を低下させずに済む。
上記構成の滑り軸受ユニット用軸部材3は、軸本体7の製作工程と、製造した軸本体7の所定表面に樹脂皮膜8を形成する工程とを経て製造される。ここで、軸本体7に関しては、例えばSUSなどの金属素材を鍛造などで粗成形した後、全面を研削し、最後に、摺動面4となる領域(樹脂皮膜8を形成する領域)に研磨などの仕上げ加工を施すことで製作することができる。また、切削等の機械加工で軸本体7の外形をある程度形成しておき、然る後、研削や研磨などで最終形状に仕上げることも可能である。もちろん、これ以外の加工工程を経て軸本体7を製作することも可能である。例えば、素材を焼結金属製とし、この素材の所定表面にサイジングを施すことで軸本体7を製作しても構わない。
また、樹脂皮膜8に関しては、上記の工程を経て製作した軸本体7の所定表面に、樹脂皮膜8の材料となる液状の樹脂を供給した後、これを固化させることで樹脂皮膜8を形成する。ここで、具体的な形成方法については、摺動面4を樹脂皮膜8で形成できる限りにおいて原則任意であり、その形成範囲についても特に問わない。よって、例えば、樹脂皮膜8の材料となる液状の樹脂に軸本体7を浸漬させ、当該液状樹脂から垂直方向に取り出した後(ゆっくり取り出せば膜厚は薄くなる)、そのまま加熱等により適当な硬化反応を起こさせることで、軸本体7の表面に付着した液状樹脂を硬化させて、樹脂皮膜8を形成するようにしてもよい。また、樹脂皮膜8は、摺動時にその一部が剥離するように形成する必要があることから、上記液状樹脂をスプレー等で霧状に噴霧供給してもよい。これにより、非常に薄い樹脂皮膜8を軸本体7に形成することができる。この樹脂皮膜8は薄いほど軸受すき間の寸法公差にも影響を及ぼさずに済むため、硬化収縮の度合いが大きい熱硬化性樹脂をスプレーコーティング法を用いて薄膜状に供給する方法が有効である。何れの方法を採用した場合でも、樹脂皮膜8の成形に射出成形を用いる場合と比べて低コストに成膜できる。もちろん、樹脂皮膜8は摺動面4を構成するように形成していれば足りるので、軸本体7の全面に樹脂皮膜8を形成する必要はない。なお、上記成膜条件を満たすのであれば、特に熱硬化性樹脂に限定する必要はなく、熱可塑性樹脂を使用しても構わない。
以上のようにして製造された軸部材3を、対応する焼結金属軸受2と組合せることで、、図1に示す滑り軸受ユニット1が完成する。
なお、上述のようにして製造された滑り軸受ユニット1はそのまま、図2に示す状態で最終製品として出荷することも可能であるが、例えばなじみ運転など適度な回転摺動を与えることで、図3に示すように樹脂皮膜8の一部を剥離させたものを、新たな焼結金属軸受2と組合せて滑り軸受ユニット1を構成したものを最終製品として出荷することも可能である。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る滑り軸受ユニット用軸部材は上記例示の形態に限定されるわけではなく、本発明の範囲内において任意の形態を採り得ることはもちろんである。その製造方法についても同様である。
また、軸部材3以外の事項(例えば焼結金属軸受2の組成や製造方法、潤滑油を含めた潤滑剤の種類)についても、本発明の技術的意義を没却しない限りにおいて他の具体的形態を採り得ることはもちろんである。
本発明の有用性を立証するため、以下の摺動実験を行った。具体的には、無潤滑下で軸部材と焼結金属軸受とを相対回転させた際に生じる異音の有無と、軸受内周面への移着(移動定着)の状態を確認した。なお、焼結金属軸受には偏荷重によるモーメントを作用させることで、ミスアライメントを意図的に付与した状態で上記摺動実験を行った。
ここで、焼結金属軸受については、何れも銅鉄系の焼結金属製(鉄成分の含有率:40wt%)とした。軸部材に関しては、そのベースとなる軸本体を鉄製(SKD11とSUS420Jの何れか一方)とし、この軸本体に、焼結金属軸受との相対摺動に伴い軸本体から剥離し、かつ焼結金属軸受の一方の金属組織(銅組織)に比べて軸本体との密着性に優れた樹脂皮膜を形成し、この樹脂皮膜で摺動面を構成したもの(実施例)と、軸本体の外周面で摺動面を構成したもの(比較例)とを用意して上記摺動実験を行った。樹脂皮膜にはアクリル樹脂を使用した。
下記の表1に実験結果を示す。この表から分かるように、所定の樹脂皮膜を形成しない既存の軸部材(比較例)を用いた場合、摺動開始から5分後に異音の発生が確認された。また、摺動実験後に軸部材の摺動面(外周面)を調べたところ、当該摺動面に焼結金属軸受の摺動面を構成する銅が付着していた。これに対して、所定の樹脂皮膜を設けた軸部材を用いた場合、摺動実験終了時まで異音の発生は確認されなかった。また、実験後の軸の外周面には、軸本体に形成した樹脂皮膜の一部が残っていた一方で、銅の付着は見られなかった。摺動前の状態と比べて一部が剥離しているものの、剥離せずに残った樹脂皮膜の一部で銅の軸本体への付着が妨げられたものと考えられる。
Figure 2011007217
1 滑り軸受ユニット
2 焼結金属軸受
3 軸部材
4 摺動面
5 内部空孔
6 表面開孔
7 軸本体
8 樹脂皮膜
9 銅組織
10 鉄組織

Claims (6)

  1. 1又は2種類以上の金属組織を有する焼結金属製の滑り軸受に使用されるもので、前記滑り軸受との摺動面を有する滑り軸受ユニット用の軸部材であって、
    金属製の軸本体と、該軸本体の所定表面に形成され、前記摺動面を構成する樹脂皮膜とを備え、
    前記樹脂皮膜は、前記滑り軸受を構成する所定の金属組織よりも前記軸本体との密着性に優れた樹脂で形成され、かつ、その一部が前記滑り軸受との相対摺動に伴い前記軸本体から剥離するに留まるものである滑り軸受ユニット用軸部材。
  2. 前記樹脂皮膜は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂からなる群の中から選択される1つの樹脂で形成されている請求項1に記載の滑り軸受ユニット用軸部材。
  3. 請求項1又は2に記載の軸部材と、該軸部材を内周に配設した焼結金属製の滑り軸受とを備えた滑り軸受ユニット。
  4. 前記滑り軸受が銅を主体とする金属組織を有する請求項3に記載の滑り軸受ユニット。
  5. 前記滑り軸受が2種類以上の金属組織を有し、これら金属組織は前記樹脂皮膜との密着性が相互に異なるものである請求項3又は4に記載の滑り軸受ユニット。
  6. 前記滑り軸受の内部空孔に潤滑油が含浸されている請求項3〜5の何れかに記載の滑り軸受ユニット。
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