JP2010059351A - 制振塗料組成物及び屋根材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】乾燥温度を高めた場合であっても、ワキの発生を抑制することができる制振塗料組成物及び屋根材の製造方法を提供する。
【解決手段】塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、前記塗膜の制振性を高めるための無機充填剤とを含有した制振塗料組成物であって、ポリマーシェルに熱膨張剤を内包した熱膨張性マイクロカプセルと、水溶性カルシウム塩とを含有することを特徴とする制振塗料組成物および該制振塗料組成物を用いた屋根材の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、水系樹脂分散液と無機充填剤とを含有する制振塗料組成物及びその制振塗料組成物を用いた屋根材の製造方法に関する。
最近では、環境に対する影響を配慮して、水系分散媒中に樹脂粒子が分散している水系樹脂分散液を利用した制振塗料組成物が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、制振塗料組成物において、無機充填剤、無機塩等が配合可能な成分として記載されている。一方、特許文献2及び3は、発泡剤等を含有させることで、塗膜のズレやタレ等の不具合を抑制した制振塗料組成物を提案している。
特開2007−262137号公報 特開2005−187514号公報 特開平7−145331号公報
ところで、制振塗料組成物は、塗布された制振塗料組成物の乾燥温度を高めることにより、塗膜形成の効率化を図ることができる。しかしながら、従来の制振塗料組成物では、乾燥温度を高めた場合、塗膜の表面外観に凹凸が生じたり、塗膜にピンホールが形成したりする現象が発生する。この現象は、一般にワキと呼ばれており、塗膜表面の欠陥となる。この点、上記特許文献3には、発泡剤を含有させることでワキが防止される旨記載されているものの、こうした制振塗料組成物であっても、乾燥温度を高めた場合、ワキの発生を有効に抑制することができないおそれがあった。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、乾燥温度を高めた場合であっても、ワキの発生を抑制することができる制振塗料組成物及び屋根材の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の制振塗料組成物は、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、前記塗膜の制振性を高めるための無機充填剤とを含有した制振塗料組成物であって、ポリマーシェルに熱膨張剤を内包した熱膨張性マイクロカプセルと、水溶性カルシウム塩とを含有することを要旨とする。
ワキの発生は、塗布した制振塗料組成物を加熱乾燥させる際に、同制振塗料組成物の内部に対して表面の硬化速度が過剰に速まることが一因であると考えられる。つまり、塗布した制振塗料組成物が加熱乾燥される初期段階において、制振塗料組成物の表面に被膜が形成されると推測される。そして制振塗料組成物の水系分散媒がさらに揮発する際に、水系分散媒の蒸気が、被膜を変形させたり、被膜にピンホールを形成させたりすると推測される。この点、上記構成によれば、制振塗料組成物を加熱乾燥することで塗膜を形成するに際して、水溶性カルシウム塩の溶解によって生じたカルシウムイオンと熱膨張性マイクロカプセルとの共存により、乾燥初期段階における被膜形成が阻害されると推測される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制振塗料組成物において、前記水溶性カルシウム塩が0.1〜2.0質量%含有されるとともに前記熱膨張性マイクロカプセルが0.01〜0.1質量%含有されることを要旨とする。
この構成によれば、制振塗料組成物の流動性を十分に確保することができるとともに塗膜を積層した基材に対する同塗膜の密着性を高めることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の制振塗料組成物において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがさらに含有されることを要旨とする。
この構成によれば、制振塗料組成物の流動性を高めることができるようになる。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制振塗料組成物において、屋根用金属板に用いられることを要旨とする。
請求項5に記載の発明の屋根材の製造方法は、屋根用金属板の両面に組成の異なる塗料を塗布する塗布工程と、前記塗布された塗料を加熱乾燥させる乾燥工程とを備え、前記乾燥工程は、前記屋根用金属板の両面に塗布された前記塗料を同時に加熱乾燥させる工程であるとともに、前記塗布工程において前記屋根用金属板の両面に塗布される塗料のうち、前記屋根用金属板の一方の面に塗布される塗料は、制振塗料組成物である屋根材の製造方法において、前記制振塗料組成物は、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、前記塗膜の制振性を高めるための無機充填剤とを含有した制振塗料組成物であって、ポリマーシェルに熱膨張剤を内包した熱膨張性マイクロカプセルと、水溶性カルシウム塩とを含有することを要旨とする。
金属屋根を構成する屋根材においては、制振塗料組成物を用いた塗装が施されることで雨音が低減されるようになる。そうした屋根材を形成する屋根用金属板では、制振塗料組成物を用いた塗装が一方の面に施されるとともに、耐候性等を付与する塗装が他方の面に施される。このように屋根用金属板に塗装を施すに際して、屋根用金属板の両面に塗料を塗布した後に、同じ乾燥工程で塗料を加熱乾燥させることで、乾燥工程の効率化を図ることができるようになる。このとき、制振塗料組成物に適した乾燥温度よりも、上記他方の面に塗布される塗料に適した乾燥温度が高い場合、制振塗料組成物から形成された塗膜にワキが発生し易くなるという問題がある。この点、上記制振塗料組成物においては、乾燥温度を高めた場合であってもワキの発生を抑制することができる。従って、屋根用金属板における乾燥工程の効率化を図ることができるようになる。
本発明によれば、乾燥温度を高めた場合であっても、ワキの発生を抑制することができる。
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態における制振塗料組成物には、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、塗膜の制振性を高めるための無機充填剤とが含有されている。この制振塗料組成物には、ポリマーシェルに熱膨張剤を内包した熱膨張性マイクロカプセルと、水溶性カルシウム塩とが含有されている。
樹脂粒子を構成する高分子材料としては、例えばアクリル系樹脂、アクリル/スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル/アクリル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム、スチレン/ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、及びイソプレンゴムから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。なお、これらの高分子材料は変性体であってもよい。
樹脂粒子は、単独種の高分子材料から形成されていてもよいし、複数種の高分子材料から形成されていてもよい。さらに、水系樹脂分散液には、これらの高分子材料から構成される樹脂粒子を単独で含有させてもよいし、複数種の樹脂粒子を含有させてもよい。
これらの高分子材料の中でも、制振性能が発揮される温度領域を常温付近に調整することが容易であるという観点からアクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルを単量体とする単独重合体、これらの単独重合体の混合物、並びにこれらの単量体が重合した共重合体が挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、エトキシエチルエステル等が挙げられる。
ここで、樹脂粒子はメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの共重合体から形成されることにより、塗膜の制振性能が発揮される温度領域を屋根材が使用される温度領域に調整することが容易となる。従って、制振塗料組成物を屋根材に用いる場合において、樹脂粒子はメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの共重合体から形成されることが好ましい。この場合、樹脂粒子は、例えばメタクリル酸メチルの質量(A)とアクリル酸ブチルの質量(B)との質量比(A/B)が1/3〜3/1の範囲の共重合体から形成されることが好ましい。
樹脂粒子を分散する水系分散媒としては、水、及び水と一価アルコールとの混合液が挙げられる。一価アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。水系樹脂分散液は、例えば乳化剤を含有した水溶液中に単量体及び重合開始剤を滴下する乳化重合等の周知の方法に従って得ることができる。
制振塗料組成物中における水分の含有量は、樹脂粒子100質量部に対して好ましくは30〜300質量部、より好ましくは50〜200質量部、さらに好ましくは50〜150質量部である。この水分の含有量が樹脂粒子100質量部に対して30質量部未満の場合、樹脂粒子の分散性が十分に確保されないおそれがある。一方、水分の含有量が樹脂粒子100質量部に対して300質量部を超える場合、制振塗料組成物の乾燥速度が遅延することで効率的に塗膜を形成することが困難となるおそれがある。
無機充填剤は、塗膜の制振性能を高めるために含有される。無機充填剤としては、例えばマイカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、ガラス、シリカ、アルミナ、アルミニウム、水酸化アルミニウム、鉄、アスベスト、酸化チタン、酸化鉄、珪藻土、ゼオライト、フェライト等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で含有させてもよいし、複数種を組み合わせて含有させてもよい。これらの無機充填剤の中でも、優れた制振性能が発揮され易いという観点から、マイカが好ましい。
制振塗料組成物中における無機充填剤の含有量は、樹脂粒子100質量部に対して好ましくは10〜300質量部、より好ましくは20〜250質量部である。制振塗料組成物中における無機充填剤の含有量が、樹脂粒子100質量部に対して10質量部未満の場合、制振効果を顕著に高めることが困難となる。一方、制振塗料組成物中における無機充填剤の含有量が、樹脂粒子100質量部に対して300質量部を超える場合、塗膜の成形性が悪化するおそれがある。
熱膨張性マイクロカプセルは、ポリマーシェルに熱膨張剤を内包して構成されている。こうした熱膨張性マイクロカプセルを加熱すると、ポリマーシェルが軟化するとともに熱膨張剤の体積が増大することで、膨張したカプセルを形成する。熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えば松本油脂製薬(株)製のマツモトマイクロスフェアー(商品名)、日本フィライト(株)のエクスパンセル(商品名)等の市販品を使用することができる。熱膨張性マイクロカプセルは、単独種を含有させてもよいし、複数種を組み合わせて含有させてもよい。熱膨張性マイクロカプセルの最高膨張温度は、制振塗料組成物中において急激な体積膨張を抑制することで塗膜の発泡を均一にするという観点から、100℃以上であることが好ましい。なお、最高膨張温度は、熱膨張性マイクロカプセルを昇温した際に、体積が最も大きくなる温度に相当する。
熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度は、95℃以下であることが好ましい。この膨張開始温度は、熱膨張性マイクロカプセルを昇温したときに、そのカプセルの膨張が開始する温度に相当する。この膨張開始温度は95℃以下の場合、上述した最高膨張温度との温度差が大きくなるため、例えば100℃以上の温度環境下で制振塗料組成物を加熱した場合に、熱膨張性マイクロカプセルが急激に膨張することが抑制される。また、上記膨張開始温度は、制振塗料組成物の保存時における熱安定性を確保するという観点から70℃以上であることが好ましい。
本明細書において、熱膨張性マイクロカプセルの最高膨張温度及び膨張開始温度は、熱機械分析装置を用いた熱機械分析法(TMA法)にて測定された温度である。熱機械分析装置の測定条件は、プローブ鉛直方向の荷重を10μN、測定温度範囲を20〜250℃、及び昇温速度を20℃/分としている。
制振塗料組成物中における熱膨張性マイクロカプセルの含有量は、好ましくは0.01〜0.1質量%である。熱膨張性マイクロカプセルの含有量が0.01質量%以上であると、ワキの発生をより効果的に抑制することができるようになる。一方、熱膨張性マイクロカプセルの含有量が0.1質量%を超える場合、塗膜を積層した基材に対する同塗膜の密着性が十分に得られないおそれがある。
水溶性カルシウム塩は、上記熱膨張性マイクロカプセルと併用することで、ワキの発生を抑制する。水溶性カルシウム塩は、例えば20℃の水に対する溶解度が水100ml当たり1g以上、好ましくは水100ml当たり10g以上、最も好ましくは水100ml当たり25g以上のカルシウム塩を意味する。水溶性カルシウム塩としては、塩化カルシウム、臭化カルシウム、硝酸カルシウム等の無機酸塩、クエン酸カルシウム、ギ酸カルシウム,酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グリシン酸カルシウム等の有機酸塩が挙げられる。これらの水溶性カルシウム塩は、単独で含有させてもよいし、複数種を組み合わせて含有させてもよい。これらの水溶性カルシウム塩の中でも、水溶性に優れるという観点から、硝酸カルシウムを含むことが好ましい。
制振塗料組成物中における水溶性カルシウム塩の含有量は、好ましくは0.1〜2.0質量%、より好ましくは0.4〜1.2質量%である。水溶性カルシウム塩の含有量が0.1質量%以上であると、ワキの発生をより効果的に抑制することができるようになる。一方、水溶性カルシウム塩の含有量が2.0質量%を超える場合、制振塗料組成物の流動性が低下するおそれがある。
熱膨張性マイクロカプセル(A)に対する水溶性カルシウム塩(B)の質量比(質量比=B/A)は、好ましくは3以上、より好ましくは6以上である。熱膨張性マイクロカプセル(A)に対する水溶性カルシウム塩(B)の質量比が3以上であると、ワキの発生をより効果的に抑制することができるようになる。
制振塗料組成物には、無機充填剤を含有する同組成物の流動性を高めるという観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがさらに含有されることが好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば炭素数が6〜24の直鎖又は分岐のアルキルアルコールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが付加した化合物を挙げることができる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの中でも、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルが好ましい。
制振塗料組成物中におけるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有量が0.01質量%以上であると、流動性をより効果的に高めることができるようになる。なお、制振塗料組成物中におけるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有量の上限は、例えば10質量%以下である。
制振塗料組成物には、例えば制振性付与成分、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、安定剤、発泡剤、滑剤等を必要に応じて加えることができる。制振性付与成分としては、例えばベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、正リン酸エステル系化合物及び芳香族第二級アミン系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が挙げられる。
制振塗料組成物は、水系樹脂分散液、無機充填剤、熱膨張性マイクロカプセル、水溶性カルシウム塩等を公知の混合手段を用いて混合することによって調製することができる。こうした制振塗料組成物が適用物の所定箇所に塗布された後に加熱乾燥されることにより、適用物の表面にて塗膜が形成される。このとき、水溶性カルシウム塩の溶解によって生じたカルシウムイオンと熱膨張性マイクロカプセルとの共存により、乾燥初期段階における被膜形成が阻害されると推測される。従って、乾燥温度を例えば200℃以上となるまで高めた場合であっても、ワキの発生が抑制されるようになる。
制振塗料組成物の制振性能は、塗膜の損失係数又は損失弾性率によって示される。つまり、塗膜の損失係数の値又は損失弾性率の値が高ければ高いほど、制振性能に優れることが示される。さらに、塗膜の温度範囲において、損失係数又は損失弾性率の変動が小さければ小さいほど、制振性能について温度依存性が低減されることになる。塗膜の損失係数は周知の中央加振法損失係数測定装置によって測定することができるとともに損失弾性率は周知の動的粘弾性測定装置により測定することができる。
塗膜の厚さは、好ましくは10μm〜900μm、より好ましくは10μm〜500μmである。塗膜の厚さを10μm以上とすることで、優れた制振性能が発揮され易くなる。一方、塗膜の厚さが900μmを超える場合、適用物の軽量化の妨げとなるおそれがある。
制振塗料組成物は、振動エネルギーの抑制について要求される各種分野において利用することができる。制振塗料組成物の適用分野としては、例えば自動車、壁材、床材、屋根材、フェンス等の建材、家電機器、産業機械等が挙げられる。
次に、本実施形態の制振塗料組成物を屋根材に適用した実施形態について詳細に説明する。
金属屋根を構成する屋根材においては、制振塗料組成物を用いた塗装が施されることで雨音が低減されるようになる。そうした屋根材を形成する屋根用金属板では、制振塗料組成物を用いた塗装が一方の面に施されるとともに、耐候性等を付与する塗装が他方の面に施されている。すなわち、屋根材の表面塗装は耐候性等を付与する塗装が施されるとともに屋根材の裏面塗装は制振性を付与する塗装が施されている。
屋根用金属板を構成する金属としては、例えばスチール、ステンレス鋼、アルミニウム合金、亜鉛合金、銅、チタニウム等が挙げられる。金属板には、各種金属からなるめっきが施されていてもよい。
屋根用金属板の塗装工程では、屋根用金属板の両面に組成の異なる塗料を塗布した後に、同じ乾燥工程で塗料を加熱乾燥させる。このように屋根用金属板の両面に塗布された塗料を同時に加熱乾燥させることで、乾燥工程の効率化を図ることができるようになる。屋根用金属板の両面に塗料を塗布する装置としては、例えばロールコータが好適に用いられる。塗料の乾燥方法としては、例えば熱風乾燥、赤外線乾燥等が挙げられる。
ここで、屋根用金属板に塗装を施すに際して、制振塗料組成物に適した乾燥温度よりも、表面塗装の塗料に適した乾燥温度が高い場合、制振塗料組成物から形成された塗膜にワキが発生し易くなる。例えば、乾燥温度を低下させることで、ワキの発生は抑制されるものの、乾燥工程の効率化を妨げることになる。この点、上記制振塗料組成物においては、乾燥温度を高めた場合であってもワキの発生を抑制することができる。従って、屋根用金属板における乾燥工程の効率化を図ることができるようになる。
なお、屋根用金属板の表面に塗布される塗料としては、例えばポリエステル樹脂、フッ素樹脂等を塗膜形成成分とした溶剤系又は水系の塗料が挙げられるが、特に溶剤系の塗料の場合、乾燥温度が高く設定される傾向にある。この点、本実施形態の製造方法は特に溶剤系の塗料において有効である。
塗装が施された屋根用金属板は、所定の形状に成形されることで屋根材が得られる。こうして得られた屋根材から、例えば折板、瓦棒葺、立平葺、平葺、横葺、金属瓦葺等の工法により金属屋根が形成される。ここで、金属屋根では、表面側に雨滴が衝突することで生じる振動は、裏面側にて制振塗料組成物から形成された塗膜により抑制される。これにより、屋根材から発生する雨音が低減される。こうした屋根材が適用される建造物としては、例えば倉庫、工場、駐車場、駐輪場、体育館、アーケード、寺院、神社、一般家屋等が挙げられる。
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)制振塗料組成物には、ポリマーシェルに熱膨張剤を内包した熱膨張性マイクロカプセルと、水溶性カルシウム塩とが含有されている。この構成によれば、制振塗料組成物を加熱乾燥することで塗膜を形成するに際して、水溶性カルシウム塩の溶解によって生じたカルシウムイオンと熱膨張性マイクロカプセルとの共存により、乾燥初期段階における被膜形成が阻害されると推測される。このため、乾燥温度を高めた場合であっても、ワキの発生を抑制することができる。従って、制振塗料組成物から形成された塗膜の表面外観が良好となる。
(2)制振塗料組成物には、水溶性カルシウム塩が0.1〜2.0質量%含有されるとともに熱膨張性マイクロカプセルが0.01〜0.1質量%含有されることが好ましい。このように構成した場合、制振塗料組成物の流動性を十分に確保することができるとともに塗膜を積層した基材に対する同塗膜の密着性を高めることができる。
(3)制振塗料組成物には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがさらに含有されることが好ましい。このように構成した場合、制振塗料組成物の流動性を高めることができるようになる。従って、制振塗料組成物を塗布する厚さをより薄くした場合であっても、均一に塗布することが容易となる。
(4)屋根用金属板に塗装を施すに際して、屋根用金属板の両面に塗料を塗布した後に、同じ乾燥工程で塗料を加熱乾燥させることで、乾燥工程の効率化を図ることができるようになる。このとき、制振塗料組成物に適した乾燥温度よりも、表面塗装の塗料に適した乾燥温度が高い場合、制振塗料組成物から形成された塗膜にワキが発生し易くなる。この点、上記制振塗料組成物を屋根用金属板に用いることで、乾燥温度を高めた場合であってもワキの発生を抑制することができる。従って、屋根用金属板における乾燥工程の効率化を図ることができるようになる。
(5)本実施形態の屋根材の製造方法においては、乾燥工程は屋根用金属板の両面に塗布された塗料を同時に加熱乾燥させる工程であり、塗布工程において屋根用金属板の両面に塗布される塗料のうち、屋根用金属板の一方の面に塗布される塗料として上記実施形態の制振塗料組成物を用いている。この製造方法によれば、乾燥温度を高めた場合であってもワキの発生を抑制することができる。従って、屋根用金属板における乾燥工程の効率化を図ることができる屋根材の製造方法が提供される。
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・制振塗料組成物を屋根用金属板の一方の面に塗布して、その制振塗料組成物のみを加熱乾燥してもよい。この場合であっても、ワキの発生を抑制することができるため、乾燥温度を高めることにより、乾燥の効率化を図ることができる。そして例えば、乾燥ラインの短縮等の乾燥設備を簡略化することもできるようになる。
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・前記水溶性カルシウム塩が1.2質量%以下の範囲で含有されてなり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがさらに含有される制振塗料組成物。この構成によれば、熱膨張性マイクロカプセル及び水溶性カルシウム塩を含有することで、ワキの発生を抑制した制振塗料組成物において、その流動性を高めることができる。
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜4)
アクリル系エマルション(大日本インキ化学工業株式会社製、BC−280)43.89質量%、無機充填剤としてのマイカ((株)クラレ製、200HK)43.99質量%、及び水7.76質量%を含有し、全体として100質量%の組成物を基準組成物として調製した。なお、アクリル系エマルション100質量部には、樹脂粒子が50質量部含まれている。その樹脂粒子は、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの共重合体であり、同共重合体におけるメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの質量比は55:45である。また、基準組成物には、分散剤、着色剤等が含有されている。
表1に示すように、基準組成物に熱膨張性マイクロカプセル、水溶性カルシウム塩としての硝酸カルシウム等を配合した後、撹拌機によって混合することにより制振塗料組成物を調製した。前記熱膨張性マイクロカプセルは、松本油脂製薬(株)製のマツモトマイクロスフェアー(商品名)F−36であり、その膨張開始温度は75〜85℃、最高膨張温度は105〜120℃である。
(比較例1)
比較例1においては、表1に示されるように実施例1に記載の基準組成物を制振塗料組成物とした。
(比較例2)
比較例2においては、表1に示されるように熱膨張性マイクロカプセルを含有させずに制振塗料組成物を調製した。
(比較例3)
比較例3においては、表1に示されるように水溶性カルシウム塩を含有させずに制振塗料組成物を調製した。
<制振塗料組成物の流動性>
表1には、各例の制振塗料組成物について、比較例1の制振塗料組成物を基準として、流動性が低下しているものを“−”で示すとともに、流動性が同等のものを“±”で示している。
<塗膜の形成>
各例の制振塗料組成物を厚さ5mmのSPCC鋼板にバーコータで塗布した後、そのSPCC鋼板を加熱炉内に入れて制振塗料組成物を加熱乾燥することで塗膜を形成した。この加熱乾燥では、SPCC鋼板の表面温度が220℃となるように加熱炉内の温度を設定し、その温度で40秒間処理した。なお、各例の制振塗料組成物の塗布量は、塗膜の厚さが約70μmとなるように調整している。
<塗膜の評価>
各例の塗膜について、塗膜の乾燥状態を目視で確認したところ、いずれの塗膜も良好であった。次に、各例の塗膜について、ワキの発生の有無を目視で確認した。表1には、ワキの発生が確認されなかったものを“無し”で示すとともに、ワキの発生が確認されたものを“有り”で示している。
次いで、各例の塗膜とSPCC鋼板との密着性を評価した。密着性の評価では、各例の塗膜を十分に冷却した後、塗膜面にセロハンテープを貼着し、そのセロハンテープを一気に剥がした。表1には、SPCC鋼板から塗膜が剥離しなかったものを“◎”、セロハンテープを貼着した塗膜における面積当たりの残存率が50%以上のものを“○”、及び、前記残存率が50%未満のものを“×”で示している。
Figure 2010059351
表1の結果から明らかなように、各実施例では、熱膨張性マイクロカプセル及び水溶性カルシウム塩が含有されているため、ワキの発生が確認されなかった。これに対して、比較例1〜3では、熱膨張性マイクロカプセル及び水溶性カルシウム塩の少なくとも一方が含有されていないため、ワキの発生が確認された。

Claims (5)

  1. 塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、前記塗膜の制振性を高めるための無機充填剤とを含有した制振塗料組成物であって、
    ポリマーシェルに熱膨張剤を内包した熱膨張性マイクロカプセルと、水溶性カルシウム塩とを含有することを特徴とする制振塗料組成物。
  2. 前記水溶性カルシウム塩が0.1〜2.0質量%含有されるとともに前記熱膨張性マイクロカプセルが0.01〜0.1質量%含有されることを特徴とする請求項1に記載の制振塗料組成物。
  3. ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがさらに含有されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制振塗料組成物。
  4. 屋根用金属板に塗布されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制振塗料組成物。
  5. 屋根用金属板の両面に組成の異なる塗料を塗布する塗布工程と、
    前記塗布された塗料を加熱乾燥させる乾燥工程とを備え、前記乾燥工程は、前記屋根用金属板の両面に塗布された前記塗料を同時に加熱乾燥させる工程であるとともに、前記塗布工程において前記屋根用金属板の両面に塗布される塗料のうち、前記屋根用金属板の一方の面に塗布される塗料は、制振塗料組成物である屋根材の製造方法において、
    前記制振塗料組成物は、
    塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、前記塗膜の制振性を高めるための無機充填剤とを含有した制振塗料組成物であって、ポリマーシェルに熱膨張剤を内包した熱膨張性マイクロカプセルと、水溶性カルシウム塩とを含有することを特徴とする屋根材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010255213A (ja) * 2009-04-22 2010-11-11 Sekisui Chem Co Ltd 折版及び屋根
JP2011214271A (ja) * 2010-03-31 2011-10-27 Cci Corp 屋根材用制振塗料組成物及び屋根材
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