JP2010059219A - 生体親和性高分子材料およびその製造方法 - Google Patents

生体親和性高分子材料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた機械特性を維持しつつ、生体親和性表面の構築が可能な新規生体親和性高分子材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン基質の非晶質部分に、カルボン酸ビニルを構成単位とする重合体がナノメートルオーダーで分散した構造を有すると共に、リン脂質極性基を有する表面が構築され、前記リン脂質極性基は、表面近傍に存在する重合体のエステル基を加水分解して生じた水酸基を化学修飾することにより固定されていることを特徴とする、生体親和性高分子材料。
【選択図】図4

Description

本発明は、新規な生体親和性高分子材料およびその製造方法に関する。
医療における治療や診断に使用する医療デバイスの重要性は、医療技術の高度化、高齢化社会の到来、患者のquality of life(QOL)向上の必要性に関連して益々高まっている。これらの医療デバイスを製造するためには様々な材料が利用されるが、特に、高分子材料は成型性、生産性、価格の面から幅広く利用されている。
医療デバイスに用いられるマテリアルに必要な特性として、(1)生体成分と材料表面との界面で起こる血栓形成や免疫応答を抑制する生体親和性表面の構築、(2)使用目的および部位に応じた機械特性(弾性率、柔軟性など)の発現がある。
ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)に代表されるポリオレフィンは優れた機械特性や化学的安定性を有しており、結晶化度を変化させることでそのバルク特性を大きく変化させることが可能であることから、医療デバイス用マテリアルとして着目されている。また、医療廃棄物として焼却された場合に、二酸化炭素と水しか排出せず、環境負荷も低いという優れた特徴を有する。
しかし、ポリオレフィンは、その結晶性に由来して大半のポリマーとは非相溶であることから、その機械的特性を維持しつつブレンド、アロイ化することが困難である。また、化学的安定性に由来して表面への官能基の導入が困難なため、表面に生体親和性基を導入することが非常に難しい材料である。
このような問題を解決するために、長さが500mm程度の比較的短いポリエチレンチューブなどの基材に、プラズマ処理を施して官能基を導入する技術が提供されている(例えば、非特許文献1〜3)。
しかしながら、プラズマ処理では、基材表面に種々の官能基が導入されることから、均質な生体親和性表面の構築は困難である。さらに、プラズマ処理は、複雑な形状の基材の均一処理には適さないことから、例えばチューブのような高アスペクト比を有する成型加工された基材を大量、かつ均一に処理することは出来ない。
Surface & Coatings Technology 201 (2007) 8039−8042 Surface & Coatings Technology 201 (2006) 699−706 JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 96 (2004) 4539-4546
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上述したような、優れた機械特性を維持しつつ、生体親和性表面の構築が可能な生体親和性高分子材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、種々の形状に成型加工されたポリオレフィンを基質とする生体親和性高分子材料およびその製造方法を提供することをも課題とする。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、超臨界流体中で、ポリオレフィンに、所定の官能基を有するモノマーを含浸させつつ、当該モノマーを重合させることにより高分子複合体を形成した後、当該高分子複合体の表面に、前記官能基を利用して生体親和性基を導入することにより、優れた機械的特性と生体親和性表面を有する高分子材料の創製に成功し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(10)に関する。
(1)ポリオレフィン基質の非晶質部分に、カルボン酸ビニルを構成単位とする重合体がナノメートルオーダーで分散した構造を有すると共に、
リン脂質極性基を有する表面が構築され、
前記リン脂質極性基は、表面近傍に存在する前記重合体のエステル基を加水分解して生じた水酸基を化学修飾することにより固定されていることを特徴とする、生体親和性高分子材料。
(2)前記化学修飾が、下記一般式(i)で表されるリン脂質極性基含有単量体と、下記一般式(ii)で表される縮合性官能基含有単量体と、を構成単位とする共重合体との縮合反応によることを特徴とする、(1)記載の生体親和性高分子材料。
(ただし、上記式中、R1a及びR1bは、それぞれ独立して水素又はメチル基を表す。また、R2aは下記一般式(iii)で表される基であり、R2bは下記一般式(iv)で表される基である。)
(ただし、上記式中、nは2〜12の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、kは2〜18の整数を表し、Rは、アルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基を表す。)
(3)前記カルボン酸ビニルが酢酸ビニルである、(1)又は(2)記載の生体親和性高分子材料。
(4)前記ポリオレフィン基質が成型加工品である、(1)〜(3)いずれかに記載の生体親和性高分子材料。
(5)前記ポリオレフィン基質がチューブ状成型加工品であり、人工血管、カテーテル又は透析チューブ用である、(4)記載の生体親和性高分子材料。
(6)超臨界流体中で、ポリオレフィン基質に、カルボン酸ビニルを含浸させつつ、当該カルボン酸ビニルを重合させて高分子複合体を形成する工程と、
前記高分子複合体の表面近傍に存在するエステル基を水酸基に変換する工程と、
前記水酸基を化学修飾することにより、前記高分子複合体の表面にリン脂質極性基を導入する工程と、
を有することを特徴とする、生体親和性高分子材料の製造方法。
(7)記化学修飾が、下記一般式(i)で表されるリン脂質極性基含有単量体と、下記一般式(ii)で表される縮合性官能基含有単量体と、を構成単位とする共重合体との縮合反応によることを特徴とする、(6)記載の製造方法。
(ただし、上記式中、R1a及びR1bは、それぞれ独立して水素又はメチル基を表す。また、R2aは下記一般式(iii)で表される基であり、R2bは下記一般式(iv)で表される基である。)
(ただし、上記式中、nは2〜12の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、kは2〜18の整数を表し、Rは、アルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基を表す。)
(8)前記カルボン酸ビニルが酢酸ビニルである、(6)又は(7)記載の製造方法。
(9)前記ポリオレフィン基質が成型加工品である、(6)〜(8)いずれかに記載の製造方法。
(10)前記超臨界流体が、超臨界二酸化炭素である(6)〜(9)いずれかに記載の製造方法。
本発明の生体親和性高分子材料は、ポリオレフィンの優れた機械的特性を維持しつつ、生体親和性表面を有することから、医療用デバイスの材料として使用することが出来る。
以下、本発明を実施形態に即して詳細に説明する。
生体親和性高分子材料
本発明の生体親和性高分子材料は、ポリオレフィン基質の非晶質部分に、カルボン酸ビニルを構成単位とする重合体がナノメートルオーダーで分散した構造を有する高分子複合体の表面に、前記共重合体のエステル基を利用して生体親和性基を導入してなる。
本発明における高分子複合体は、通常条件下では熱力学的に混じり合わない2種類以上の高分子からなるコンポジットである。係る複合体は、特開2005−255964号公報およびWO2004/016659(国際公開公報)から公知である。より詳細には、このような複合体は、非晶性高分子が結晶性高分子の非晶層(球晶間、フィブリルのミクロボイド、及びラメラ構造間の全て)にナノメートルオーダーで分散して共連続相相互進入網目(IPN)を形成していることを特徴とするナノコンポジットである。ポリオレフィン基質の非晶質部分に分散させる重合体として、カルボン酸ビニルを構成単位とする重合体を用いることにより、ポリオレフィン基質の良好な機械的特性が維持されると共に、表面近傍にエステル基を有する高分子複合体を得ることが出来る。
本発明の生体親和性高分子材料において、ポリオレフィンとしては、特に制限はなく、望まれる物性を有する公知の高分子であればよい。具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテンなどの単独重合体、プロピレン−エチレンコポリマー、プロピレン−ブテンコポリマー等の共重合体が挙げられる。ポリオレフィン基質の形状としては、特に制限はなく、目的にあわせて成型加工されていて良く、例えば、平板状、円盤状 、立方体、直方体、円柱型、ドーナツ型、球状、チューブ状、袋状等があげられる。
カルボン酸ビニルを構成単位とする重合体としては、ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニル、ポリ2−メチルプロピオン酸ビニルなどの単独重合体の他、カルボン酸ビニルとカルボン酸ビニルと共重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する単量体を構成単位とする共重合体も含まれる。カルボン酸ビニルと共重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、メタクリル酸メチル等のメタクリル系単量体、アクリル酸メチル等のアクリル系単量体、アリルアルコール、ビニルトリメチルシランなどをあげることができる。
本発明の生体親和性高分子材料は、その表面に生体親和性基を有する。係る生体親和性基は、前記高分子複合体の表面近傍に存在するエステル基を加水分解して生じた水酸基を化学修飾することにより導入されたものである。係る化学修飾に関しては、特に制限はないが、下記一般式(i)で表されるリン脂質極性基含有単量体と、下記一般式(ii)で表される縮合性官能基含有単量体と、を構成単位とする共重合体との縮合反応による化学修飾を一例としてあげることが出来る。
なお、上記式(i)および(ii)において、R1a及びR1bは、それぞれ独立して水素又はメチル基を表す。また、R2aは下記一般式(iii)で表される基であり、R2bは下記一般式(iv)で表される基である。
また、上記式(iii)および(iv)においては、nは2〜12の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、kは2〜18の整数を表し、Rは、アルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基を表す。なお、R、R及びRは、同一であっても、それぞれ異なっていても良い。また、アルコキシ基としては、特に制限はないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などがあげられる。
生体親和性高分子材料の製造方法
本発明に係る生体親和性高分子材料の製造方法は、超臨界流体中で、ポリオレフィン基質に、カルボン酸ビニルを含浸させつつ、当該カルボン酸ビニルを重合させて高分子複合体を形成する工程と、前記高分子複合体の表面近傍に存在するエステル基を水酸基に変換する工程と、前記水酸基を化学修飾することにより、前記高分子複合体の表面にリン脂質極性基を導入する工程と、を有することを特徴とする。
高分子複合体を形成する工程において、含浸の条件には特に制限はなく、使用する超臨界流体の中に十分なモノマー(カルボン酸ビニルを含む単量体)が含浸するまでの適当な時間、適当な温度で放置することで可能である。ここで、含浸温度は超臨界条件にも依存し、続いて行う重合反応に重合開始剤が含まれている場合、その重合開始温度より数十度程度低い温度が好ましい。具体的には超臨界状態若しくは亜臨界状態の二酸化炭素を使用する場合、含浸圧力は1〜40MPa、温度は−50〜150℃、時間は0.1〜96時間の範囲である。また含浸の程度は含浸後に基質を取り出し重量増加を測定することで容易に知ることができる。含浸条件により重量増加は数wt%〜数百wt%までの範囲で自由に設定可能である。
この工程では、含浸後、含浸させたモノマーをそのまま重合反応させる(in−situ反応)。重合反応条件は、使用した超臨界流体、非晶性高分子モノマーの種類、重合反応の種類により適宜選択することができる。好ましくは特定の温度で開始できるラジカル重合反応である。ラジカル重合反応に使用するラジカル重合反応開始剤は、すでに説明した含浸で使用する温度より数十℃高い温度で開始するものが好ましい。具体的には、α、α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)等が挙げられる。超臨界流体が二酸化炭素であり、モノマーが酢酸ビニル(VAc)の場合、重合開始剤は約80℃で使用できるAIBNが好ましい。重合反応時間についても特に制限はなく、適宜選択し、必要ならば重合停止剤の添加、反応系の冷却等で停止することができる。また反応装置から取り出した後、基質外での重合反応により生成したポリマーを除く必要があるが、適当な溶媒により洗浄することが好ましい。
続いて、前記モノマーにより導入された高分子複合体表面に存在するエステル基を加水分解して水酸基に変換することにより、表面に水酸基を有する高分子複合体を合成する。加水分解反応としては、通常公知の条件を使用することが出来る。
さらに、生体親和性表面の構築は、上述のようにして高分子複合体の表面に導入された水酸基を化学修飾することにより、リン脂質極性基を固定することにより達成される。この化学修飾の一例としては、上記一般式(i)で表されるリン脂質極性基含有単量体と、上記一般式(ii)で表される縮合性官能基含有単量体と、を構成単位とする共重合体との縮合反応による化学修飾をあげることが出来る。反応は、アルコキシシリル基と水酸基による縮合反応における通常の条件を採用することが出来る。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、下記の略語を用いた。
PE:ポリエチレン
ScCO:超臨界二酸化炭素
PVAc:ポリ酢酸ビニル
MPC:2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン
PBS:リン酸バッファー
(実施例1):生体親和性材料(PE/PMSi)の製造
(1)ScCOを用いたPE/PVAc複合体チューブの調製
PEチューブ(イマムラ製)は内径300μm、外径600μmを用いた。このチューブを5mステンレススチールのボビンに巻き、24時間アセトンを用いてSoxhlet抽出により洗浄し、減圧乾燥したものを使用した。ボビンに巻いたPEチューブをモノマー溶液に接触しないように高圧セル内に設置した。酢酸ビニル、α, α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を所定量高圧セルに仕込み、35℃、6.00MPaまでCOを加圧後、約25分で80℃まで昇温し、24時間重合を行った。重合後、Soxhlet抽出(溶媒:アセトン、24時間)し、シート外部に付着しているPVAcを除去した。除去後、恒量になるまで減圧乾燥し、PE/PVAc複合体チューブを得た。
(2)PE/PVAc複合体の表面加水分解(PE/PVAc−OHの調製)
PE/PVAc複合体チューブ内に0.2M NaOH/MeOH溶液を満たし、同じ溶液で3時間、熱還流した。MeOH及び純水で洗浄、減圧乾燥し、PE/PVAc−OHチューブを得た。
(3)シランカップリング基を有するMPCポリマー(PMSi)の合成
Poly(MPC−co−3−methacryloxypropyl triethoxysilane(MSi))(PMSi)はラジカル重合により合成した。所定量のMPC、MSi、AIBN、エタノールを重合管に採取し、封管後60℃で6時間重合した。ジエチルエーテル/クロロホルム(7/3=v/v)への再沈殿によりポリマーを回収し、減圧乾燥した。
(4)生体親和性ポリマーのチューブ表面への固定化
内部に0.2wt% PMSi/エタノール溶液 (触媒にコハク酸を1.0×10−3wt%含む) を満たしたPE/PVAc−OHチューブを同様の溶液に浸漬し24時間室温下で接触させた。その後溶液を除去し40°C、2時間乾燥させた。エタノールで洗浄後、減圧乾燥しPE/PMSiチューブを得た。
上で作製したチューブを、それぞれおおよそ100μmの厚みにカットし、その断面を顕微IRにより測定した。図1〜図3に、チューブ断面の顕微IR測定から得られた強度のマッピングデータを示す。PEではメチレン鎖(−CH−)に由来するピークのみ確認できる。PE/PVAcでは、チューブのどの部分でもPVAcのカルボニル(C=O)に由来するピークが確認できた(図1参照)。モノマーと開始剤を溶解したScCOはPEチューブの表面から徐々に内部に向かって含浸していくが、PEチューブの膜厚は150μmと薄いため、迅速に均一にscCOが浸透したと考えられ、チューブのどの部分でもPVAcが複合化により固定されたと考えられる。これらの結果より、本発明の製造方法が、特に、成型加工したポリマー材料に適していることが言える。PE/PVAc−OHでは、水酸基が表面近傍のみに確認された。加水分解されたのは表面から約25μmの深さまでであり、チューブ内部に存在するPVAcは加水分解されていないことが分かった。なお、PEチューブおよびPE/PVAcチューブの表面では水酸基は確認されていない(図2のスペクトル参照)。これらの結果から表面加水分解によりPE/PVAc−OHの機械特性に影響がさほど生じないと考えられる。
図3に、PMSiを固定化したチューブ断面の顕微IR測定の結果を示す。PMSi固定後、カルボニルの1725cm−1と水に由来する3300cm−1の吸収が大きくなった。また、1200 〜1350 cm−1(−P=O、C−N)や960〜1150cm−1(P−O−C、−N(CH))のホスホリルコリン基に由来する吸収が大きくなり、800〜850cm−1(Si−C、Si−O)に新たな吸収が確認された。チューブ内部のPVAcはシランカップリング反応により影響を受けておらず、PE/PVAc−OHの表面にPMSiが固定化したことを示した。
(実施例2)チューブのキャラクタリゼーション
上で作製したPE/PVAcチューブの引張試験による機械的特性評価及びPE/PMSiの生体親和性(タンパク質吸着)評価を行った。
(1)PE/PVAcチューブの引張試験による機械的特性の評価
チューブの引張試験は小型卓上試験機 (島津製作所製、EZTest−ES−50N)とつかみ具の歯にラバーを貼り付けた1kNヘンリスコットつかみ具を用いた。試験条件は次のとおりである。
つかみ間長:50mm
試験速度:100mm/min
試験温度:24.5℃
表1に引張試験の結果を示す。なお、PE/PVAcチューブは、PVAc含有率が12.6wt%の試料を使用した。PVAcを複合化したPE/PVAcチューブの破断強度はPEチューブと比べ若干大きくなる傾向にあり、PVAcを複合化したチューブの破断歪は減少したが、良好な機械的特性を維持していることが分かった。測定温度24.5℃はPVAcのガラス転移温度以下であるため、PEの非晶領域で生成したPVAcはPEの非晶鎖の運動を抑制し、強度が大きくなり柔軟性が低下したと考えられる。以上の結果から、複合化したPVAcの機械的性質の影響が見られることから、酢酸ビニルと異種モノマーとの共重合により機械特性を制御することも可能であると考えられる。
(2) 生体親和性評価
以下の方法により、タンパク質吸着量を測定することで、PE/PMSiチューブの生体親和性を評価した。
(2−1)方法1:チューブ内に蛍光標識されたウシ血清アルブミン(FITC−BSA)/PBS溶液(4.5mg/mL)を満たしてチューブ内表面と37°Cで1時間接触させた後、タンパク質溶液を取り除き、PBSを1mL流して洗浄した。蛍光顕微鏡にて吸着したFITC−BSAの蛍光強度を測定した。
(2−1)方法2:チューブ内にウシ血清アルブミン(BSA)/PBS溶液(4.5mg/mL)を満たしてチューブ内表面とタンパク質溶液を37°Cで1時間接触させた後、タンパク溶液を取り除き、PBSを1mL流して洗浄した。その後、をチューブ内表面に吸着したBSAを0.3mLの0.1wt%Triton X−100水溶液により脱着した。Triton X−100水溶液中のBSA量はCBQCAタンパク質定量キット(C−6667,Molecular Probes,Inc., USA)により定量した。
タンパク質吸着の結果を図4に示す。PMSiで修飾していない表面は、PBSで洗浄後も蛍光が確認された。一方、PMSiで表面修飾した場合はPBSで洗浄するとほぼ蛍光を確認できなかった。また、吸着タンパク質の定量を行ったところ、チューブ表面の極性が大きくなるにつれてBSAの吸着量が減少することがわかった。PMSiでの修飾により、タンパク質吸着量が、血液との接触時に血栓形成が起こりにくい量(K. Ishihara, Sci. Tech. Adv. Mater. 1, 131 (2000))まで低下していることが分かる。
本発明の生体親和性高分子材料は、良好な機械的特性を維持しつつ、生体親和性表面が構築されていることから、種々の医療用デバイスのマテリアルとして使用することが可能である。
また、本発明の成型加工されたポリオレフィンを基質とする生体親和性高分子材料、特にチューブ形状を有した生体親和性高分子材料は、人工血管、カテーテル、透析チューブ等への適用が期待される。
図1は、PE/PVAcチューブ長さ方向における各位置(両端部および中央部)の断面を顕微IRにより測定して得られた強度のマッピングデータを示す図である。 図2は、チューブ断面の顕微IR測定から得られた強度のマッピングデータを示す図である。 図3は、PMSiを固定化したチューブ断面の顕微IR測定の結果を示す図である。 図4は、タンパク質吸着量測定の結果を示す図である。

Claims (10)

  1. ポリオレフィン基質の非晶質部分に、カルボン酸ビニルを構成単位とする重合体がナノメートルオーダーで分散した構造を有すると共に、
    リン脂質極性基を有する表面が構築され、
    前記リン脂質極性基は、表面近傍に存在する前記重合体のエステル基を加水分解して生じた水酸基を化学修飾することにより固定されていることを特徴とする、生体親和性高分子材料。
  2. 前記化学修飾が、下記一般式(i)で表されるホスホリルコリン基含有単量体と、下記一般式(ii)で表される縮合性官能基含有単量体と、を構成単位とする共重合体との縮合反応によることを特徴とする、請求項1記載の生体親和性高分子材料。
    (ただし、上記式中、R1a及びR1bは、それぞれ独立して水素又はメチル基を表す。また、R2aは下記一般式(iii)で表される基であり、R2bは下記一般式(iv)で表される基である。)
    (ただし、上記式中、nは2〜12の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、kは2〜18の整数を表し、Rは、アルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基を表す。)
  3. 前記カルボン酸ビニルが酢酸ビニルである、請求項1又は2記載の生体親和性高分子材料。
  4. 前記ポリオレフィン基質が成型加工品である、請求項1〜3いずれかに記載の生体親和性高分子材料。
  5. 前記ポリオレフィン基質がチューブ状成型加工品であり、人工血管、カテーテル又は透析チューブ用である、請求項4記載の生体親和性高分子材料。
  6. 超臨界流体中で、ポリオレフィン基質に、カルボン酸ビニルを含浸させつつ、当該カルボン酸ビニルを重合させて高分子複合体を形成する工程と、
    前記高分子複合体の表面近傍に存在するエステル基を水酸基に変換する工程と、
    前記水酸基を化学修飾することにより、前記高分子複合体の表面にリン脂質極性基を導入する工程と、
    を有することを特徴とする、生体親和性高分子材料の製造方法。
  7. 記化学修飾が、下記一般式(i)で表される構成単位と、下記一般式(ii)で表される構成単位を有する重合体との縮合反応によることを特徴とする、請求項6記載の製造方法。
    (ただし、上記式中、R1a及びR1bは、それぞれ独立して水素又はメチル基を表す。また、R2aは下記一般式(iii)で表される基であり、R2bは下記一般式(iv)で表される基である。)
    (ただし、上記式中、nは2〜12の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、kは2〜18の整数を表し、Rは、アルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基を表す。)
  8. 前記カルボン酸ビニルが酢酸ビニルである、請求項6又は7記載の製造方法。
  9. 前記ポリオレフィン基質が成型加工品である、請求項6〜8いずれかに記載の製造方法。
  10. 前記超臨界流体が、超臨界二酸化炭素である請求項6〜9いずれかに記載の製造方法。
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