JP2010058411A - 熱可塑性樹脂フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

熱可塑性樹脂フィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】光学発現性が良好であり、位相差の傾斜構造を有し、光学特性の耐久性が良好なフィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂と添加剤とを含む組成物を溶融混練する工程と、溶融混練した組成物を該熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下に冷却して固化する工程と、固化した組成物を含む熱可塑性樹脂含有組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程とを含み、前記挟圧装置によって該溶融物にかかる圧力が20MPa〜120MPaであり、かつ、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする。
【選択図】なし

Description

本発明は熱可塑性樹脂フィルムおよびその製造方法に関する。また、該フィルムを有する偏光板、液晶表示装置にも関する。
近年、液晶ディスプレイ市場の隆盛に伴い、様々なフィルムが開発されている。例えば、特許文献1〜3には、傾斜型位相差フィルムが開示されている。
例えば、特許文献1には、周速度の異なる二つのロール間にフィルムを通すことで、該フィルムにせん断力を付与し、光軸が傾斜したフィルムを作成する方法と、TN型液晶ディスプレイへの応用が記載されている。しかし、前記文献1に記載の方法では、フィルムの光学特性のバラツキが大きいこと、フィルム表面に接触傷が付き易い等の問題があった。また、溶融物に対して適用することも示唆していなかった。これに対し、特許文献2および3では、ゴムロールと周速の異なってもよい金属ロールの2つのロールを用いて溶融物を挟み、せん断力を付与することで、上記問題点を解決した膜厚100〜150μmの光学フィルムが得られることが記載されている。
一方、熱可塑性樹脂原料のペレットに注目し、樹脂ペレットを溶融製膜に用いる前に調製する方法が近年検討されている。例えば、特許文献4には、樹脂原料ペレットを再ペレット化し、マット剤などの粉体添加物を均一分散することで、フィルムの異物故障およびダイライン故障を改善する方法が開示されている。また、特許文献5には、二軸押出混練機を用いて特定の条件下で樹脂原料ペレットを調製し、着色および分子量低下を抑制した熱可塑性樹脂ペレットおよびその製造方法が開示されている。
特開平6−22213号公報 特開2007−38646号公報 特開2007−237495号公報 特開2007−268872号公報 特開2007−269941号公報
しかしながら、本発明者らが特許文献1〜3に記載の製造方法を検討したところ、位相差の傾斜特性があるが、光学発現性が低く、さらには作成した光学フィルムの光学特性が使用環境温度や湿度によって、時間とともに変化してしまうという問題があることがわかった。
一方、特許文献4では、樹脂原料ペレットを再ペレット化し、マット剤などの粉体添加物を均一に分散する方法が開示されているが、該文献では視野角拡大に求められる光学特性や傾斜構造を有する光学フィルムの作製について何も開示されていない。特許文献5では樹脂原料ペレットを再ペレット化した原料を用いるフィルムの製造方法が開示されているが、該文献でも視野角拡大に求められる光学特性や傾斜構造を有する光学フィルムの作製について何も開示されていない。このような特許文献4および5に記載の製造方法を本発明者らが検討したところ、光学発現性が悪く、位相差の傾斜構造も不十分であり、光学特性の耐久性も不十分であった。すなわち、単に再ペレット化しただけでは光学特性の耐久性は改善されないことがわかった。
このように、光学発現性が良好であり、位相差の傾斜構造を有し、光学特性の耐久性が良好なフィルムの製造方法は従来知られておらず、このような特性のフィルムを製造できる方法が望まれていた。
本発明の第一の目的は、光学発現性が良好であり、位相差の傾斜構造を有し、光学特性の耐久性が良好なフィルムおよびその製造方法を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、該フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置を提供することにある。
本発明者らが、上記課題に鑑みて鋭意研究をおこなったところ、高い圧力を挟圧装置間にかけて製膜することにより光学発現性が大幅に向上し、高い圧力を挟圧装置間にかけつつせん断応力を加えて製膜することで位相差傾斜構造が得られ、さらに驚くべきことに、再ペレット化した熱可塑性樹脂原料を使用して高い圧力を挟圧装置間にかけて製膜するとReおよびRthの耐久性を改良できることを見出すに至った。
特に、長期間高温下にフィルムがさらされた際のReおよびRthの耐久性の変動原因が、いかなる理論に基づくものであるかは不明であるが、熱可塑性樹脂と添加剤との分散性にあることを見出した。このような樹脂と添加剤とが不均一分散する原因として、添加剤の分散が経時的に変化してしまうこと(例えば、添加剤がフィルム表面に経時的にブリードアウトしてくることに起因する)や、フィルム製膜時の分散性自体が不均一であること(例えば、製膜工程中に添加剤が揮散したことにより、フィルム表面とフィルム内部の分散が不均一となることに起因する)などが考えられる。そこで、本発明では、使用する熱可塑性樹脂原料ペレットと添加剤とを一度溶融混練してから再ペレット化することで、溶融製膜時の樹脂溶融物(以下、メルトとも言う)中に均一に添加剤を分散させることができることを見出した。その結果、ある範囲の高い圧力を挟圧装置間にかけて樹脂メルトに加えることで、得られた位相差傾斜構造の大きな光学フィルムのReおよびRthの耐久性を改良できることを見出すに至った。
さらに、高圧のみ(せん断応力を加えない)の場合に比べ、いかなる理論に基づくものであるか不明であるが、高圧を加えつつ、せん断応力も加えることでReおよびRthの耐久性が顕著に改善されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、下記手段により上記課題を解決できることを見出し、以下に記載する本発明を完成するに至った。
[1] 熱可塑性樹脂と添加剤とを含む組成物を溶融混練する工程と、溶融混練した組成物を該熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下に冷却して固化する工程と、固化した組成物を含む熱可塑性樹脂含有組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程とを含み、前記挟圧装置によって該溶融物にかかる圧力が20MPa〜120MPaであり、かつ、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くすることを特徴とする熱可塑性フィルムの製造方法。
[2] 前記熱可塑性樹脂と添加剤とを含む組成物が、ペレットであることを特徴とする[1]に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[3] 前記溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程において、前記挟圧装置が互いに周速が異なる2つのロールであることを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルムの製造方法。
[4] 下記式(1)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比が0.75〜0.99であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 (1)
[5] 前記固化した組成物を含む熱可塑性樹脂含有組成物をダイから溶融押出しする工程において、前記熱可塑性樹脂含有組成物全体に対して、前記固化した組成物を30〜100質量%使用することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
[6] 前記固化した組成物が、前記添加剤を0.1〜20質量%含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
[7] 前記添加剤が安定剤、可塑剤、無機微粒子、紫外線吸収剤および光学調整剤から選択される少なくとも1種であること特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
[8] 前記熱可塑性樹脂が、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
[9] 90℃相対湿度10%の環境下で500時間経過前後のRe[0°]の変動の絶対値および90℃相対湿度10%の環境下で500時間経過前後のRthの変動の絶対値がいずれも0〜10nmであり、さらに、下記式(I)および(II)を満足することを特徴とする熱可塑性フィルム。
10nm≦Re[0°]≦300nm 式(I)
(式(I)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおける正面方向のレターデーションを表す。)
40nm≦γ≦300nm (II)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II’)
(式(II)および(II’)中、Re[+40°]は該法線に対して+40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して−40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表す。ここで、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向である。)
[10] 膜厚方向のレターデーションRthが30〜500nmであることを特徴とする[9]に記載の熱可塑性フィルム。
[11] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする熱可塑性フィルム。
[12] [9]〜[11]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
[13] [9]〜[11]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、光学発現性が良好であり、位相差の傾斜構造を有し、光学特性の耐久性が良好である。そのため、偏光板、特に液晶表示装置用偏光板に好適に用いることができる。また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法によれば該フィルムを製造することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、「フィルム長手方向」とは、MD(マシン・ダイレクション)方向を意味する。 本明細書において、「スクリュー長」とは、押出機の熱可塑性樹脂供給口からスクリュー先端までの長さを表し、Lで表される。また、本明細書において、「ゲル」とは、溶融工程中に生成された熱可塑性樹脂の変性架橋物であり、溶媒に不溶であるものを表す。
[熱可塑性樹脂フィルム]
本発明の熱可塑性樹脂フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、90℃相対湿度10%の環境下で500時間経過前後のRe[0°]の変動の絶対値および90℃相対湿度10%の環境下で500時間経過前後のRthの変動の絶対値がいずれも0〜10nmであり、下記(I)および(II)式を満足することを特徴とする。
10nm≦Re[0°]≦300nm (I)式
(式(I)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおける正面方向のレターデーションを表す。)
40nm≦γ≦300nm (II)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II’)
(式(II)および(II’)中、Re[+40°]は該法線に対して+40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して−40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表す。ここで、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向である。)
以下、本発明のフィルムの詳細を説明する。
(面内方向のレターデーションRe、γ)
本発明のフィルムは、下記(I)および(II)式を満足することを特徴とする。
10nm≦Re[0°]≦300nm 式(I)
40nm≦γ≦300nm 式(II)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II’)
本明細書において、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向と定義する。即ち、フィルム面の法線方向は、傾斜角度0°の方向であり、フィルム面内の任意の方向は、傾斜角度90°の方向である。
本発明のフィルムは、より好ましくは下記式(III)および(IV)を満足するものである。
40nm≦Re[0°]≦280nm 式(III)
60nm≦γ≦250nm 式(IV)
さらに好ましくは、下記式(V)および(VI)を満足するものである。
70nm≦Re[0°]≦250nm 式(V)
80nm≦γ≦180nm 式(VI)
(厚み方向のレターデーションRth)
本発明のフィルムは、下記数式(A)で定義される厚み方向のレターデーションRthが30〜300nmであることが好ましい。
Rthは、屈折率楕円体がβ°一様傾斜したことを仮定し、屈折率楕円体の各方位の屈折率nx、ny、nzを数値計算し、下記数式(A)に代入して、求めることができる。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d 数式(A)
本発明のフィルムでは、nyはフィルム幅方向の屈折率である。nxはフィルムのx軸への射影成分がz軸への射影成分よりも大きい方位の、nzはz軸への射影成分がx軸の射影成分よりも大きい方位の屈折率である。
nx、ny、nzの求め方については、王子計測機器株式会社の技術資料等(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/kobra.html)に記載されているが、例えば、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]の値および平均屈折率naveの値および膜厚値dから、以下の数式(B)を用いて計算することが出来る。
Figure 2010058411
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、数式(B)中のβは、屈折率楕円体が一様傾斜したことを仮定した場合の傾斜角度を表し、傾斜型位相差フィルムの構造を単純に把握するときに使用される。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。また、平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
前記Rthは、厚み方向(Z方向)の屈折率(配向)と面配向(X−Y方向の配向)との差の指標である。前記Rthは、40nm〜400nmであることが好ましく、より好ましくは50nm〜350nmであり、さらに好ましくは60nm〜250nmである。
γ、Re[0°]およびRthが前記好ましい範囲のフィルムは、後述する本発明の製造方法によって作製することができる。また、上記好ましい光学特性の光学フィルムを、TNモード、ECBモード、OCBモード等の液晶ディ液晶ディスプレイの光学補償に利用した場合に、視野角特性の改善に寄与し、広視野角化を達成することができる。
Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、液晶ディスプレイに利用した場合に、表示ムラとなって現れるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には、±3nm以内であることが好ましく、±1nm以内であることがさらに好ましい。また、同様に遅相軸の角度のバラツキも、表示ムラの原因となるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には±1°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることがさらに好ましく、±0.25°以内であることが特に好ましい。
上記光学特性値は、以下の方法により測定することができる。
本発明において、フィルムのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、傾斜角度0°での位相差、傾斜角度40度での位相差および傾斜角度−40度での位相差を測定したものである。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)各仮傾斜方位とフィルム法線を含む面内においてRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
なお、測定波長は550nmとする。なお、一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムは、どの方位で測定しても、|Re[+40°]−Re[−40°]|≒0nmとなる。すなわち、傾斜方位で|Re[+40°]−Re[−40°]|を測定した場合、0nm以上の位相差を発現することが本発明のフィルムの特徴である。
また、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム面の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキとする。
さらに、遅相軸およびRthのバラツキも同様に測定される。
(Re[0°]、Rthの耐久性)
本発明のフィルムは、高温下で長期間保存した際の光学特性変化が小さい。このように光学特性の耐久性を向上させることで、高温下においても長期間高いレテーデーションを発揮することができ、高温下での使用にも好適なフィルムを得ることができる。
本発明のフィルムの90℃相対湿度10%で500時間経過前後におけるRe[0°]の変動の絶対値ΔRe[0°]が、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることが特に好ましい。
本発明のフィルムの90℃相対湿度10%で500時間経過前後におけるRthの変動の絶対値ΔRthが、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることが特に好ましい。
(厚み)
本発明のフィルムは、厚みが10μm〜90μmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜80μmであり、さらに好ましくは25μm〜70μmである。
[熱可塑性樹脂フィルムの製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)は、熱可塑性樹脂と添加剤とを含む組成物を溶融混練して工程と、溶融混練した組成物を該熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下に冷却して固化する工程と、固化した組成物を含む熱可塑性樹脂含有組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程とを含み、前記挟圧装置によって該溶融物にかかる圧力が20MPa〜120MPaであり、かつ、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くすることを特徴とする。このような大きな圧力をかけることが、従来の方法と異なる本発明の特徴である。前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば互いに周速が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、20〜120MPaの高圧を均一にかけられることから、互いに周速が異なる2つのロールであることが好ましい。ロール圧力は、圧力測定フィルム(富士フィルム社製 中圧用プレスケール等)を2つのロールに通すことで測定することが出来る。等)を2つのロールに通すことで測定することが出来る。本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を含むことで、光学発現性が良好であり、位相差の傾斜構造を有し、光学特性の耐久性が良好であるフィルムを得ることができる。以下、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法について説明する。
<熱可塑性樹脂と添加剤とを含む組成物の溶融混練>
(添加剤)
本発明の製造方法では、熱可塑性樹脂を溶融混練する際に添加剤を添加する。前記添加剤は、熱可塑性樹脂中により均一に分散することで、より効率的に機能を発揮する。本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、前記添加剤の量は熱可塑性樹脂に対して0.1質量%〜20質量%好ましい、より好ましくは0.2質量%〜15%、さらに好ましくは0.3質量%〜10質量%である。前記添加剤の量が熱可塑性樹脂に対して20質量%以下であれば、添加剤が過剰になりすぎず十分均一に分散できるため好ましく、0.1質量%以上であれば、均一分散になり易いため好ましい。
本発明の製造方法では、前記添加剤として特に制限はなく、例えば市販の熱可塑性樹脂ペレット中に含まれる熱可塑性樹脂以外の成分も添加剤に含まれ、前記添加剤が、安定剤、可塑剤、無機微粒子、紫外線吸収剤および光学調整剤から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
安定剤:
本発明では、熱分解を抑制するために安定剤を添加するが、熱分解は熱可塑性樹脂中の至る所で均等に発生するため、安定剤は均一に分散されていたほうが、安定化作用がより効率的に発現し易い。したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において安定剤を添加した場合、熱可塑性樹脂の分解抑制の作用効果をより高めることができる。
前記安定剤としては下記のものが挙げられる。
安定剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等、解明できていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために有用である。その時、製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。これらの安定化剤は次に挙げられる効果に用いるがこれらに限定されるものではない。
安定剤の代表的な素材としては、フェノール系安定剤、亜リン酸系安定剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定剤、アミン系安定剤、エポキシ系安定剤、ラクトン系安定剤、アミン系安定剤、金属不活性化剤(スズ系安定剤)などが挙げられる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。
該安定剤は、それぞれ単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、アクリル樹脂の質量に対して安定化剤の添加量は0.001質量%〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%〜0.8質量%である。
本発明において、フィルム構成材料の熱溶融時における安定化のために用いる化合物として有用なヒンダードフェノール系安定剤は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されているものなどの、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定剤を添加することが好ましい態様である。好ましいフェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が挙げられる。これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox1076、Irganox1010、Irganox3113、Irganox245、Irganox1135、Irganox1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
亜リン酸系安定剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
本発明の亜リン酸エステル系安定剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。さらに、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定剤も好ましく用いられ、具体的な化合物として下記にものをあげることができる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例を示すが本発明で用いることができる安定化剤はこれらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPを挙げることができる。
安定剤としてさらに使用されるチオエーテル系安定剤について記述する。本発明においてアクリル樹脂に添加することができるチオエーテル系安定剤も分子量500以上が好ましく、公知の任意のチオエーテル系安定剤を用いることができる。これらは、住友化学株式会社からスミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO−412Sとしても入手可能である。
本発明に好ましく用いられるエポキシ系安定剤としては、脂肪族、芳香族、脂環族、芳香族脂肪族またはヘテロ環式構造を有し、側鎖としてエポキシ基を有する化合物も有用である。エポキシ基は好ましくは、グリシジル基としてエーテルまたはエステル結合により分子の残基に結合するか、あるいはヘテロ環式アミン、アミドまたはイミドのN−グリシジル誘導体である。これらのタイプのエポキシ化合物は広く公知であり、市販品として容易に入手可能である。これらの素材は特開平11−189706号公報の[0096]〜[0112]に詳細に記載されている。これらのエポキシ系素材は、アデカスタブ O−130P、アデカスタブ O−180A(旭電化工業株式会社)から、市販品として入手できる。
スズ系安定剤としては、公知の任意のスズ系安定剤を用いることができる。好ましいスズ系安定剤の具体例としては、オクチル錫マレエートポリマー、モノステアリル錫トリス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチル錫ジラウレートが挙げられる。
なお、前記安定剤は後述する酸補足剤や光安定剤を包含する概念である。酸を捕捉することを主眼とする酸捕捉や、酸補足剤光安定性を改善することを主眼とする光安定剤と、前記さまざまな効果を有する酸補足剤や光安定剤以外のその他の効果を有する前記安定剤のどちらを用いても良いが、中でも、ラジカルを補足するフェノール系安定剤の方が好ましい。
熱可塑性樹脂のうち、アクリル樹脂など高温下では酸によっても分解が促進される熱可塑性樹脂を用いる場合は酸捕捉剤を含有することが好ましい。
本発明において有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸捕捉剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、および塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22個の炭素原子を有する脂肪酸と、4〜2個の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、および種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油および他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、およびエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
さらに上記以外に用いることが可能な酸捕捉剤としては、オキセタン化合物やオキサゾリン化合物、或いはアルカリ土類金属の有機酸塩やアセチルアセトナート錯体、特開平5−194788号公報の段落68〜105に記載されているものが含まれる。なお酸捕捉剤は酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。
本発明に用いられるフィルム形成材料中の酸捕捉剤は、少なくとも上記の1種以上選択でき、添加する量は、アクリル樹脂の質量に対して、光安定化剤の添加量は0.001質量%〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%〜2質量%である。
本発明に用いることができる光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物などが挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系光安定剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができ、またこれらヒンダードアミン系光安定剤と可塑剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用しても、添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜15質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部である。これらを添加する時期は、溶融物(メルト)作製工程の何れの段階であってもよく、また、溶融物作製工程(メルト調製工程)の最後に添加剤を添加する工程を加えてもよい。
紫外線吸収剤:
本発明においては、1種または2種以上の紫外線吸収剤を用いてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
これらの紫外線吸収剤として、以下の市販品も利用できる。ベンゾトリアゾール系としてはTINUBIN P(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 320(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 327(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TINUBIN 328(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、スミソーブ340(住友化学社製)、アデカスタブLA−31(旭電化工業社製)などがある。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、シーソーブ100(シプロ化成社製)、シーソーブ101(シプロ化成社製)、シーソーブ101S(シプロ化成社製)、シーソーブ102(シプロ化成社製)、シーソーブ103(シプロ化成社製)、アデカスタブLA−51(旭電化工業社製)、ケミソープ111(ケミプロ化成社製)、UVINUL D−49(BASF社製)などを挙げられる。また、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、TINUBIN 312(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)やTINUBIN 315(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)がある。更にサリチル酸系紫外線吸収剤としては、シーソーブ201(シプロ化成社製)やシーソーブ202(シプロ化成社製)が上市されており、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としてはシーソーブ501(シプロ化成社製)、UVINUL N−539(BASF社製)がある。これらの中でも、特にアデカスタブLA−31が好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
可塑剤:
本発明においては、フィルム形成材料中に少なくとも1種の可塑剤を添加することが好ましい。
前記可塑剤は、熱可塑性樹脂分子の流動性を上げるために添加するが、分散不良が発生すると、混練溶融時に分散不良部分の流動性が低下し剪断を受け易く、そこから分子切断し、分解物を発生し易く好ましくない。また、可塑剤を添加した場合、特に熱可塑性樹脂組成物の溶融温度を低下させることもでき、熱可塑性樹脂組成物の熱分解抑制の作用効果を高めることができる。
可塑剤とは、一般的には高分子中に添加することによって脆弱性を改良したり、柔軟性を付与したりする効果のある添加剤であるが、本発明においては、熱可塑性樹脂単独での溶融温度よりも溶融温度を低下させるため、また同じ加熱温度において熱可塑性樹脂単独よりも可塑剤を含むフィルム構成材料の溶融粘度を低下させるために、可塑剤を添加することが好ましい。また、熱可塑性樹脂の親水性を改善し、熱可塑性樹脂フィルムの透湿度改善するためにも添加されるため透湿防止剤としての機能を有する。
ここで、フィルム構成材料の溶融温度とは、該材料が加熱され流動性が発現された状態の温度を意味する。熱可塑性樹脂を溶融流動させるためには、少なくともガラス転移温度よりも高い温度に加熱する必要がある。ガラス転移温度以上においては、熱量の吸収により弾性率あるいは粘度が低下し、流動性が発現される。しかし熱可塑性樹脂では高温下では溶融と同時に熱分解によって熱可塑性樹脂の分子量の低下が発生し、得られるフィルムの力学特性等に悪影響を及ぼすことがあるため、なるべく低い温度で熱可塑性樹脂を溶融させる必要がある。フィルム構成材料の溶融温度を低下させるためには、熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつ可塑剤を添加することで達成することができる。
可塑剤は液体であっても固体であっても良く、組成物の制約上無色であることが好ましい。熱的にはより高温において安定であることが好ましく、分解開始温度が150℃以上、さらに200℃以上が好ましい。添加量は光学物性・機械物性に悪影響がなければ良く、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択され、本発明に係る熱可塑性樹脂100質量部に対して好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜25質量部である。特に1〜20質量%が好ましい。0.1質量%よりも少ないと平面性改善の効果が認められず、30質量%よりも多いとブリードアウトが発生しやすくなり、フィルムの経時安定性が低下するために好ましくない。
本発明に用いる可塑剤としては、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体、アルコールが縮合した構造を有する多価エステル化合物、ポリマー可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号公報に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
以下、本発明に用いられる可塑剤について、その具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
リン酸エステル系の可塑剤として、具体的には、リン酸シクロアルキルエステル、リン酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていても良い。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでも良く、また置換基同志が共有結合で結合していても良い。 またエチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等のリン酸エステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていても良い。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでも良く、また置換基同志が共有結合で結合していても良い。
さらにリン酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていても良く、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。上記化合物の中では、リン酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。また特表平6−501040号公報の請求項3〜7に記載のリン酸エステル系可塑剤を用いることも好ましい。さらに、リン酸エステル系可塑剤としては、特開2002−363423号公報の[0027]〜[0034]、特開2002−265800号公報の[0027]〜[0034]、特開2003−155292号公報の[0014]〜[0040]等に記載の揮発性し難いリン酸エステル化合物を好ましい例として挙げることができる。
リン酸エステル系可塑剤の具体例を以下に挙げるが、本発明で用いることができるリン酸エステル系可塑剤はこれらに限定されるものではない。これらの化合物は、旭電化工業株式会社から、アデカスタブFP−500、アデカスタブFP−600、アデカスタブFP−700、アデカスタブFP−2100、アデカスタブPFR等として市販され、入手することができる。また、味の素化学株式会社から、レオフォースBAPPとして入手することができる。
カルボン酸エステルとしては、例えば、フタル酸エステル類、クエン酸エステル類、アジピン酸エステル類、芳香族多価カルボン酸エステル類、肪族多価カルボン酸エステル類、ジグリセリンテトラアセテートなどの多価アルコールの脂肪酸エステル類などを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、等を単独あるいは併用するのが好ましい。
本発明ではさらに糖類系可塑剤個の好ましく、単糖あるいは2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体であるが、これらの単糖または多糖は、分子中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基など)が置換されていることを特徴とする。置換基の例としては、エーテル基、エステル基、アミド基、イミド基などを挙げることができる。
単糖または2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
ポリマー可塑剤も好ましく利用され、具体的には脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は、1,000〜500,000程度が好ましく、特に好ましくは、5,000〜200,000である。1,000以下では揮発性に問題が生じ、500,000を超えると可塑化能力が低下し、熱可塑性樹脂の機械的性質に悪影響を及ぼす。これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でも良い。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いても良く、他の可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤、滑り剤およびマット剤等を含有させても良い。
本発明に用いる可塑剤として、下記一般式(1)で表される有機酸と3価以上のアルコールが縮合した構造を有するエステル化合物を、好ましく用いられる。
Figure 2010058411
式中、R1〜R5は水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらはさらに置換基を有していてよい。Lは連結基を表し、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表す。
1〜R5で表されるシクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、具体的にはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の基である。これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、フェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8のアシル基、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のカルボニルオキシ基等が挙げられる。
1〜R5で表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、γ−フェニルプロピル基等の基を表し、また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
1〜R5で表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、もしくはtert−ブトキシ等の各アルコキシ基である。また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等を置換していてもよい)、アルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい))、アセチル基、プロピオニル基等のアシル基が、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられる。
1〜R5で表されるシクロアルコキシ基としては、無置換のシクロアルコキシ基としては炭素数1〜8のシクロアルコキシ基基が挙げられ、具体的には、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等の基が挙げられる。また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
1〜R5で表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基が挙げられるが、このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等前記シクロアルキル基に置換してもよい基として挙げられた置換基で置換されていてもよい。
1〜R5で表されるアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等が挙げられ、これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
1〜R5で表されるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8の無置換のアシル基が挙げられ(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
1〜R5で表されるカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられるが、これらの基はさらに前記シクロアルキル基に置換してもよい基と同様の基により置換されていてもよい。
1〜R5で表されるオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、またフェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基を表す。これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
また、R1〜R5で表されるオキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシカルボニルオキシ基を表し、これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
1〜R5のうちのいずれか同士で互いに連結し、環構造を形成していてもよい。
また、Lで表される連結基としては、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表すが、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の基であり、これらの基は、さらに前記のR1〜R5で表される基に置換してもよい基としてあげられた基で置換されていてもよい。
中でも、Lで表される連結基として特に好ましいのは直接結合であり芳香族カルボン酸である。
また、これら本発明において可塑剤となるエステル化合物を構成する、前記一般式(1)で表される有機酸としては、少なくともR1またはR2に前記アルコキシ基、アシル基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニルオキシ基を有するものが好ましい。また複数の置換基を有する化合物も好ましい。なお、3価以上のアルコールの水酸基を置換する有機酸は単一種であっても複数種であってもよい。
前記一般式(1)で表される有機酸と反応して多価アルコールエステル化合物を形成する3価以上のアルコール化合物としては、好ましくは3〜20価の脂肪族多価アルコールであり、3価以上のアルコールは下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
一般式(3) R′−(OH)m 式中、R′はm価の有機基、mは3以上の正の整数、OH基はアルコール性水酸基を表す。特に好ましいのは、mとしては3または4の多価アルコールである。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ガラクチトール、グルコース、セロビオース、イノシトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と3価以上の多価アルコールのエステルは、公知の方法により合成できる。実施例に代表的合成例を示したが、前記一般式(1)で表される有機酸と、多価アルコールを例えば、酸の存在下縮合させエステル化する方法、また、有機酸を予め酸クロライドあるいは酸無水物としておき、多価アルコールと反応させる方法、有機酸のフェニルエステルと多価アルコールを反応させる方法等があり、目的とするエステル化合物により、適宜、収率のよい方法を選択することが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と3価以上の多価アルコールのエステルからなる可塑剤としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2010058411
式中、R6〜R20は水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらはさらに置換基を有していてよい。R21は水素原子またはアルキル基を表す。
前記R6〜R20のシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基については、前記一般式(1)のR1〜R5と同様の基が挙げられる。
このようにして得られる多価アルコールエステルの分子量には特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、400〜1000であることがさらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、熱可塑性樹脂との相溶性の点では小さい方が好ましい。
微粒子:
本発明では、熱可塑性樹脂に微粒子を混合してもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂フィルムを透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
また、本発明の製造方法により最終的に得られた熱可塑性樹脂フィルム中での微粒子の平均二次粒子サイズは0.01〜5μmであることが好ましく、0.02〜3μmであることがより好ましく、0.02〜1μmであることが特に好ましい。ここで、前記微粒子の平均二次粒子サイズは、熱可塑性樹脂フィルムを透過型電子顕微鏡(倍率10万〜100万倍)で観察し、粒子100個の二次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。前記無機化合物としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2、V25、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウム等が挙げられる。好ましくは、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2およびV25の少なくとも1種であり、さらに好ましくはSiO2、TiO2、SnO2、Al23およびZrO2の少なくとも1種である。
前記SiO2の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品を使用することができる。また、前記ZrO2の微粒子としては、例えば、アエロジルR976およびR811(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品を使用することができる。またシーホスターKE−E10、同E30、同E40、同E50、同E70、同E150、同W10、同W30、同W50、同P10、同P30、同P50、同P100、同P150、同P250(日本触媒)なども使用することができる。さらに、シリカマイクロビーズP−400、700(触媒化成工業株式会社製品)も使用することができる。また、SO−G1、SO−G2、SO−G3、SO−G4、SO−G5、SO−G6、SO−E1、SO−E2、SO−E3、SO−E4、SO−E5、SO−E6、SO-C1、SO-C2、SO-C3、SO-C4、SO-C5、SO-C6、(株式会社アドマテックス製)も使用することができる。さらに、シリカ粒子8050、同8070、同8100、同8150(株式会社モリテックス製、水分散物を粉体化)も使用することができる。
光学調整剤:
本発明における熱可塑性樹脂には、光学調整剤を添加することができる。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
(熱可塑性樹脂)
本発明の製造方法で用いられる熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、公知の熱可塑性樹脂や、市販の熱可塑性樹脂ペレットを用いることができ、本発明の製造方法により熱可塑性樹脂組成物中の揮散成分を低下させる効果が得られる。特に、市販の熱可塑性樹脂ペレットを用いた場合など、熱可塑性樹脂中の未反応モノマーや添加剤が含まれている場合に本発明の効果を顕著に得ることができる。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル類、透明ポリエチレン、透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。本発明のフィルムでは、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましく、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことがより好ましいい。また、前記環状オレフィン類は、付加重合によって得られた環状オレフィン類であることが好ましい。
特に、正の固有複屈折性を示す、セルロースアシレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂は、2つのロールでせん断変形を付加した場合、遅相軸が傾斜方位を向き、|Re[+40°]―Re[−40°]|>0のフィルムを作成することができ、例えば、2つのロールをダイ出口と平行に配置した場合、傾斜方位はフィルム長手方向と同じである。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、上記加工を行った場合、進相軸が傾斜方位を向き、|Re[+40°]―Re[−40°]|>0のフィルムを作成することができる。
本発明のフィルムを、視野角補償フィルムとして液晶表示装置に応用する場合には、液晶表示装置の特性や偏光板加工の利便性を考慮にいれて、上記正または負の固有複屈折樹脂を適宜選択して用いることが出来る。
本発明に使用可能な環状オレフィン系樹脂の例には、ノルボルネン系化合物の重合により得られたノルボルネン系樹脂が含まれる。また、開環重合および付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよい。
付加重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006−/004376号公報、国際公開WO第2006−/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合によって得られるものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(Polyplastics社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なセルロースアシレート系樹脂の例には、セルロース単位中の3個の水酸基が、少なくとも一部がアシル基で置換されたいずれのセルロースアシレートも含まれる。当該アシル基(好ましくは炭素数3〜22のアシル基)は、脂肪族アシル基および芳香族アシル基のいずれであってもよい。中でも、脂肪族アシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、炭素数3〜7の脂肪族アシル基を有するものがより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族アシル基を有するものがさらに好ましく、炭素数は3〜5の脂肪族アシル基を有するものがよりさらに好ましい。これらのアシル基は複数種が1分子中に存在していてもよい。好ましいアシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基などが含まれる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基から選択される1種または2種以上を有するセルロースアシレートであり、よりさらに好ましいものは、アセチル基およびプロピオニル基の双方を有するセルロースアシレート(CAP)である。前記CAPは、樹脂の合成が容易であること、押し出し成形の安定性が高いこと、の点で好ましい。
セルロースアシレートは例えば特開2001−188128号、特開2006−142800号、特開2007−98917号各公報記載のものを使用でき、全アシル置換度は2.1〜3.0が好ましく、アセチル基の置換度は0.05〜2.5が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5あるいは1.5〜2.5である。プロピオニル置換度は0.1〜2.8が好ましく、より好ましくは0.1〜1.2あるいは2.3〜2.8である。このようなセルロースアシレートは、融解温度が低く、融解性が改善されているので、溶融押出し製膜性に優れる。
セルロースアシレート系樹脂の質量平均重合度および数平均分子量については特に制限はない。一般的には、質量平均重合度が350〜800程度、および数平均分子量が70000〜230000程度である。前記セルロースアシレート系樹脂は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。前記式(S−1)および(S−2)を満足するセルロースアシレートの合成方法としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁の記載や、特開2006−45500号公報、特開2006−241433号公報、特開2007−138141号公報、特開2001−188128号公報、特開2006−142800号公報、特開2007−98917号公報記載の方法を参照することができる。
本発明に使用可能なポリカーボネート系樹脂として、ビスフェノールA骨格を有するポリカーボネート樹脂が挙げられ、ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものであり、例えば、特開2006−277914号公報、特開2006−106386号公報、特開2006−284703号公報記載のものが好ましく用いることができる。例えば、市販品として、「タフロンMD1500」(出光興産社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なスチレン系樹脂とは、主成分としてスチレン及びそれらの誘導体を重合して得られる樹脂及び、その他の樹脂の共重合体を指し、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のスチレン系熱可塑性樹脂等を用いることができ、特に複屈折、フィルム強度、耐熱性を改良できる、共重合体樹脂が好ましい。
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン−アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「 Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン-アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」などを用いることができる。
本発明に使用可能なアクリル系樹脂とは、主成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂、およびさらにその誘導体のことをいい、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のメタクリル酸系熱可塑性樹脂等を用いることできる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(3)で表される構造のものを挙げることができる。
Figure 2010058411
前記一般式(3)中、R31およびR32は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基を示す。
前記アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが好ましく、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチル(以下MMAともいう)がより好ましい。これらのうち一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち一種の単重合体であっても、2種以上の共重合体であっても、その他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度を高める観点からその他の樹脂との共重合体であることが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
(1)ラクトン環単位を含むアクリル樹脂
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378号公報に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109号公報に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
これらの中でも、前記熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン系樹脂であることが好ましく、高透明性、複屈折発現性および耐熱性の観点からノルボルネン系樹脂であることがより好ましく、付加重合系のノルボルネン系樹脂であることが特に好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
(前記熱可塑性樹脂と添加剤とを含む組成物)
本発明の製造方法では、前記熱可塑性樹脂と添加剤とを含む組成物の取扱性および製膜適性の観点からペレットであることが好ましい。
(溶融混練)
本発明の製造方法では、熱可塑性樹脂と添加剤とを含む組成物を予め溶融混練することを特徴とする。この時、混練が強いと、さらに熱可塑性樹脂を分解してしまうため、低混練性のスクリューを有する押出機用いることが好ましい。
したがって、溶融製膜に使用するペレットを一度溶融して不安定部位を除去した後、再度ペレット化し、これを溶融製膜に使用することが好ましい。
このような本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、押出機としては制限は特にないが、ニーディングディスクを設置してあるスクリューを2本有する2軸押出機を使用することが好ましい。また、2軸混練機では混練中に排気することができるため、前記熱可塑性樹脂中の不安定部位に由来する揮散物を排気除去でき好ましい。
本発明に用いる多軸押出機が有するスクリューの形状については、以下の構成が好ましいが、この限りではなく、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、その他の一般的な構成の組み合わせでも構わない。
前記スクリューの回転形式は特に制限はなく、一般に用いられる同方向回転型、異方向回転型のいずれを適用しても良いが、スクリュー内部で樹脂に与えられる剪断応力が高すぎるとゲルが形成されるため、剪断応力の小さな条件やスクリュー形状を選定することが好ましい。特に、スクリュー内部で最も剪断応力が大きい部位は噛合い部であるが、噛合い部の剪断速度がゼロとなる異方向回転型スクリューを用いることが特に好ましい。
また、スクリューの噛合いについては、一般的な噛合い型、非噛合い型、部分噛合い型のいずれを用いても良いが、特にスクリューへの樹脂付着による劣化物形成を避けるためには、セルフクリーニング効果の高い噛合い型スクリューを用いることが好ましい。
前記スクリューのディメンジョンは特に制限はなく、スクリュー径Dsは特に限定されないが、製作技術およびコストの観点から、好ましくはDs<500mm、より好ましくは30mm<Ds<450mmである。また、スクリュー径Dsとスクリュー長Lの比L/Dsは、好ましくは10<L/Ds<120、より好ましくは15<L/Ds<60である。
スクリューの形状は、脱気や充満押出しのために、先端ほど溝深さが浅くなる圧縮型のスクリュを用いても良いが、圧縮部における樹脂の剪断によりゲル形成、および樹脂劣化物や揮散成分発生の可能性があるため、通常は非圧縮型のフルフライトスクリューの下流に真空ポンプやギアポンプを設置し、脱気および充満安定押出しを行う方法がよい。また、スクリューは1本のつなぎ構造よりも、セグメントタイプである方が、任意のスクリューディメンジョンへの変更が容易であり、好ましい。
押出混練機のスクリューはセグメント化されたスクリューエレメントを適宜組み替えることができる。代表的なスクリューエレメントとしては、材料の搬送を主とするスクリューセグメント、分散混合を強化したニーディングディスクセグメントおよびロータセグメントなどがある。前記ニーディングディスクセグメントはディスクとバレル内面の間で混練物に強いせん断を与え、ポリマーの溶融、分散、分配を進めるが、同時にせん断による発熱を伴うものである。前記ロータセグメントも前記ニーディングディスクセグメントと同様に混練物にせん断力を与えて混錬を進めることができ、一般にはニーディングディスクセグメントよりもせん断発熱が小さく、低温度で混練ができる特徴がある。ニーディングディスクセグメントとロータセグメントはスクリューセグメントに比較して材料に強い剪断を与え、ポリマーの溶融、分散、分配を進める目的で使用される。
スクリューにはニーディングディスクエレメントを設けることが好ましい。ニーディングディスクエレメントの種類は、送り、逆送り、ニュートラルに分類される。送りや逆送りはニーディングディスクがねじれて装着されている。スクリュー回転方向と逆方にねじれていくもの(送り)は送る能力が高く分散効果は弱くなり、スクリュー方向と順方向にねじれているものは逆流が強くなり(逆送り)、分散応力が高くなる。ニュートラルはニーディングディスクが直行した形状であり、送り、逆送りの中間となる。また、各々のエレメントを構成しているパドル幅は狭いもの、広いもの、およびその組み合わせがある。これらニーディングディスクエレメントの種類、形状、パドル幅は、押出機内部樹脂の分散混合剪断の挙動に影響を及ぼす。ゲルを発生させないためには、低剪断、低充満、低滞留時間であることが好ましいため、送りスクリューを採用して幅が狭いパドルを用いることが有効である。なお、この他にも特殊なニーディングディスクが多種存在するが、それらを用いても良い。本発明において、スクリューは、スクリューセグメントを主体として、本発明の熱可塑性樹脂の製造方法で規定する範囲を満たすようにニーディングディスクセグメントを適宜加えて構成することができる。
また、ニーディングのスクリュー形状にも種類がある。例えば、通常の送りスクリューと逆に溝が切ってある逆スクリューは、流動が逆になるため、上流を昇圧することができる。昇圧することで上流が充満するため、流動する樹脂により強い剪断応力が発生し、かつ滞留時間が長くなるため、混樹脂劣化が促進されてしまう。このため、ゲルの発生を抑えるためには逆スクリューは適さず、送りスクリューを用いることが好ましい。ただし、フィラー混練等の混練性能が要求される場合に限っては、混練性とゲル抑制の両立が可能な範囲で逆スクリューを用いても良い。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、前記多軸混練押出機が有するスクリュー中のニーディングディスクの長さ(量)を変えることにより、自由に混練強度を変えることができるこのように揮散成分の少ないペレットを使用して溶融製膜すると、揮散物がフィルム表面に付着し難くなり、フィルムの接触角の分布(偏差)を小さくすることができ好ましい。
また、ニーディングディスクのスクリューは順送りのエレメント(送りスクリュー)であっても逆送りのエレメント(逆スクリュー)であっても、ニュートラルであってもよいが、スクリューは順送りのエレメントとすることが滞留時間を短くし、樹脂の劣化およびゲルの発生を抑制することができる点で好ましい。
本発明に使用するニーディングディスクの形状は特開2004−17414号、特開2002−86541号、特開平5−104610号、特開平5−237914号、特開平6−55612号、特開平6−126809号、実開平6−68816号、特開平8−258110号、特開平9−136345号、特開平11−10639号、特開2000−15629号、特開2001−162671号、特開2002−338728号、特開2003−39527号、特開2003−62892号、特開2004−284195号、特開2007−182041号各公報に記載ものが好ましく用いることができる。この中でより好ましいのが特開2004−17414号および特開2002−86541号各公報に記載のものである。
また、ニーディングディスクによって熱可塑性樹脂および添加剤を溶融混練した後の熱可塑性樹脂組成物の温度がTg+80℃〜Tg+130℃であることが好ましい。より好ましくはTg+80℃〜Tg+120℃である。このような溶融状態に近い熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性樹脂組成物の不安定部位に由来する揮散物や劣化物を排気除去し易くなり、また、溶融近い状態の樹脂組成物の溶融粘度が低くなり、滞留し難く、ゲルや劣化異物の発生を抑制できる。
(溶融混練した組成物を冷却固化する工程)
前記溶融混練した組成物を冷却して固化する場合、前記組成物を溶融混練した後、ダイからヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製することが好ましい。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等により冷却固化し、ペレット化することが好ましい。
前記押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。また、前記ダイとしては特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
前記ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
本発明の製造方法では、前記固化した組成物が、前記添加剤を0.1〜20質量%含むことが好ましく、0.3〜18質量%含むことがより好ましく、0.5〜15質量%含むことが特に好ましい。
(多軸押出機の構成)
図1は、二軸押出機22の構成を示している。同図に示すように、二軸押出機22は、二軸スクリュー型のベント式押出機であり、シリンダー42内に2本のスクリュー48、48を備えている。各スクリュー48はスクリュー軸44にスクリュー羽根46が取りつけられて構成されており、回転自在に支持されるとともに、不図示のモータによって回転駆動される。なお、二軸押出機22は、2本のスクリュー軸44、44が平行に配置されたものを用いてもよいし、2本のスクリュー軸44、44が傾斜して配置させたものを用いてもよい。また、2本のスクリュー軸44、44の回転方向が同方向のものを用いてもよいし、異方向のものを用いてもよい。そして、ベント孔54、56からは、溶融過程において熱可塑性樹脂組成物に含まれていた揮散性成分や樹脂劣化物や残留モノマーや水分が取り除かれる。
シリンダー42の外周部には、不図示のジャケットが取りつけられており、所望の温度に温度制御できるようになっている。この温度制御は、樹脂温度が剪断発熱によって樹脂劣化温度を超えないように制御される。シリンダー42の供給口50には不図示の定量供給装置(フィーダー)を介してホッパーが設けられ、このホッパーから熱可塑性樹脂および添加剤が投入され、定量供給装置を経てシリンダー42内に供給される。
上述した熱可塑性樹脂は、二軸押出機22の供給口50を介してシリンダー42内に供給される。シリンダー42内は供給口50側から順に、供給口40から供給された熱可塑性樹脂および添加剤を定量輸送する供給部(A1で示す領域)と、熱可塑性樹脂組成物を混練・圧縮する圧縮部(A2で示す領域)と、混練・圧縮された熱可塑性樹脂組成物を計量する計量部(A3で示す領域)とで構成される。
押出機22のスクリュー圧縮比は、例えば1.1〜4.0に設定されることが好ましく、L/Dは20〜100に設定されることが好ましい。ここで、スクリュー圧縮比とは、背圧をかけて混練するために成形材料を溶融状態で圧縮する程度をいい、供給部A1と計量部A3との容積比(すなわち供給部A1の単位長さ当たりの容積÷計量部A3の単位長さ当たりの容積)で表され、供給部A1のスクリュー軸44の外径d1、計量部A3のスクリュー軸44の外径d2、供給部A1の溝部径a1、および計量部A3の溝部径a2とを使用して算出される。また、L/Dとは、 図1のシリンダー内径(D)に対するシリンダー42の長さ(L)の比である。また、二軸押出機22内での温度が樹脂劣化温度を超える場合には、二軸押出機22とダイとの間に冷却機(図示せず)を設けるようにするとよい。
なお、スクリュー圧縮比が1.1以上であり、またはL/Dが20以上であると、十分に熱可塑性樹脂および添加剤が混練され、熱可塑性樹脂組成物の不安定部位に由来する揮散物や熱可塑性樹脂熱分解に由来する劣化物の除去が十分となる。逆に、スクリュー圧縮比が4.0以下であると、剪断応力がかかり過ぎず、発熱が抑制されることにより樹脂が劣化し難くなるので、樹脂の劣化物が出難くなる。また、剪断応力がかかり過ぎなければ分子の切断が起こりにくく、分子量が低下しがたくなるためフィルムの機械的強度が低下することがなく好ましい。L/Dが100以下であれば、樹脂の滞留時間が長くなり過ぎず、樹脂の劣化を起こし難くなる。
熱可塑性樹脂組成物の不安定部位に由来する揮散物が発生し難く、且つ熱可塑性樹脂を劣化しにくくするためには、スクリュー圧縮比は1.1〜4.0の範囲が好ましく、より好ましくは1.2〜3.8の範囲、特に好ましくは1.5〜3.5の範囲である。
本発明の多軸押出機中における熱可塑性樹脂溶融物の滞留時間としては、30秒〜600秒間が好ましく、より好ましくは40秒〜400秒間、さらに好ましくは50秒〜300秒間である。前期滞留時間は、熱可塑性樹脂物および添加剤が多軸押出機に供給されてから溶融物が多軸押出機吐出口(ダイ)から出てくるまでの時間を測定することによって得られる。
<溶融押出し>
本発明の製造方法では、前記固化した組成物を含む熱可塑性樹脂含有組成物をダイから溶融押出しする。さらに、本発明の製造方法では、前記固化した組成物としてペレットを用いることが好ましい。溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化(または再ペレット化)するのが好ましい。市販品の熱可塑性樹脂(例えば、TOPAS#6013、タフロンMD1500、デルペット980N、DayLark D332等)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。また、前記本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法で製造された熱可塑性樹脂組成物、本発明の熱可塑性樹脂組成物も以下の方法でペレット化(または再ペレット化)することができる。
本発明の製造方法では、前記固化した組成物を含む熱可塑性樹脂含有組成物をダイから溶融押出しする工程において、前記熱可塑性樹脂含有組成物全体に対して、前記固化した組成物を30〜100質量%使用することが好ましく、熱分解成分を大幅に抑制できる。前記割合が30%以上であれば、得られるフィルムの光学特性の耐久性が顕著に向上するため好ましい。
前記割合は、50〜100質量%であることがより好ましく、70〜100質量%であることが特に好ましい。
また、再ペレット化したペレットと、市販等の本発明以外の熱可塑性樹脂ペレットとをあわせて原料とすることで、本発明のフィルムを安価に生産することができ、好ましい。
本発明の製造方法では、光学特性の耐久性を前記好ましい範囲に制御する観点から、前記熱可塑性樹脂含有組成物全体に対して、前記添加剤が0.1〜20質量%含まれることが好ましく、0.3〜18質量%含まれることがより好ましく、0.5〜15質量%含まれることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。
ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
溶融押出し前に、ペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
次に、乾燥したペレットを、製膜用押出機の供給口を介してシリンダー内に供給し、混練および溶融させる。押出機のシリンダー内は、例えば、供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。ダイの押出し温度(以下、吐出温度とも言う)は、熱可塑性樹脂の溶融温度に応じて決定されるが、一般的には、190〜300℃程度が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機とダイの間にギアポンプを設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。前記ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。またダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。
ダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜30倍がよく、好ましくは5.0〜20倍である。
本発明の製造方法において、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
前記ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
<キャスト>
次に、熱可塑性樹脂の溶融物をダイからフィルム状に押し出し、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧し、冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。本発明の製造方法において第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度よりも速いが、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
本発明の製造方法では、ダイから溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する従来の方法に加え、挟圧装置間に圧力を20〜120MPaかけることで、本発明の光学特性を有するフィルムを作製している。好ましいロール圧力は20〜100MPaであり、より好ましい圧力は30〜90MPaである。前記圧力が20MPa以上であればRe[0°]およびγが本発明の範囲内となり、さらにΔRe[0°]およびΔRthも本発明の範囲内となるため好ましい。前記圧力が25MPa以上であれば、さらにRthも好ましい範囲まで発現するためより好ましい。前記圧力が120MPa以下であればRe[0°]、γ、Rth、ΔRe[0°]およびΔRthが本発明の範囲内となるため好ましい。
本発明の製造方法では、下記式(1)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比を0.75〜0.99に調製し、溶融樹脂が挟圧装置を通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造することが好ましい。挟圧装置の移動速度比は、0.75〜0.98とすることがより好ましい。
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 (1)
前記移動速度比が、0.75以上であればさらにΔRe[0°]およびΔRthが改善されるため好ましく、前記移動速度比が0.99以下であれば十分せん断応力をメルトにかけることができ等速の場合に比べΔRe[0°]およびΔRthが顕著に向上するため好ましい。
(吐出温度)
本発明の製造方法では、吐出温度(ダイ出口の樹脂温度)は、樹脂の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、樹脂の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、樹脂が劣化しにくい。
(エアーギャップ)
本発明の製造方法では、エアーギャップ(ダイ出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離)は、ダイと挟圧装置間におけるメルトの保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
(製膜速度)
本発明の製造方法では、タッチロール近傍の気流を発生させ熱分解物を除去する観点から、製膜速度(ライン速度)が10〜50m/分であることが好ましく、12〜40m/分であることがより好ましく、14〜33m/分であることが特に好ましい。ライン速度が速くなるとエアーギャップ中でのメルトの冷却を抑制でき、メルトの温度が高い状態で、2つのロールによって、より均一なせん断変形を付与できる。一方、50m/分以下であればと、溶融混練機内のスクリュー回転数を上げる必要がなく、スクリューの剪断力が強くなったことに起因する樹脂の分解が生じることがないため、揮散物が抑制でき好ましい。
なお、前記搬送速度とは、2つのロール間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
本発明の製造方法では、フィルム状の溶融物の幅は特に制限はなく、例えば200〜2000mmとすることができる。
(2つのロールを用いたキャスト)
前記溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)およびチルロール(第2ロール))間を通過させることが好ましい。なお、本明細書では、前記溶融物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流のダイに最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
本発明のフィルムの製造方法では、前記ダイから押し出された溶融物の着地点に特に制限はなく、該ダイから押出されたメルトの着地点と、該タッチロールと該キャストロールとが最も接近する部分における隙間の中点を通る鉛直線との距離がゼロであっても、ずれていてもよい。 前記メルトの着地点とは、ダイから押し出されたメルトが初めてタッチロールあるいはチルロールに接触(着地)する地点を指す。また前記タッチロールとキャストロールの隙間の中点とは、タッチロールとキャストロールの隙間が最も狭くなった所のタッチロール表面とキャストロール表面の中点を指す。
前記2つのロール(例えば、タッチロールやキャスティングロール)の表面は、算術平均高さRaが100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
本発明の製造方法では、前記2つのロールのそれぞれの横幅は特に制限はなく、フィルム状の溶融物の幅に対応して、自由に変更して採用することができる。
2つのロール間のロール圧力が20MPa〜120MPaであることが好ましい、より好ましくは25MPa〜90MPa、さらに好ましくは30MPa〜85MPaにすることが好ましい。前記圧力が20MPa以上であればRe[0°]およびγが本発明の範囲内となり、さらにΔRe[0°]およびΔRthも本発明の範囲内となるため好ましい。前記圧力が25MPa以上であれば、さらにRthも好ましい範囲まで発現するためより好ましい。前記圧力が120MPa以下であればRe[0°]、γ、Rth、ΔRe[0°]およびΔRthが本発明の範囲内となるため好ましい。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、シリンダー設定値を適宜変更することとなる。前記シリンダー設定値は、用いる樹脂材料や2つのロールの材質によっても異なるが、例えば、フィルム状の溶融物の実効幅が200mmの場合、3〜100KNであることが好ましく、3〜50KNであることがより好ましく、3〜25KNであることが特に好ましい。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、ロールのショア硬さが45HS以上のロールを使用することが好ましい。好ましい前記2つのロールのショア硬さは50HS以上であり、さらに好ましくは60〜90HSである。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
前記2つのロールの材質は、金属であることが前記ショア硬さを達成する観点から好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。また、2つのロールの材質は金属であれば、表面の凹凸が小さく、フィルムの表面に傷が付きにくいため、好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールは、前記ロール圧力を達成できれば特に制限なく用いることができる。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
さらに、本発明の製造方法では、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロールの周速比を調整することで、溶融樹脂が2つのロールを通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造することが好ましい。2つのロールの周速比は、0.75〜0.99とすることが好ましく、0.75〜0.98とすることがより好ましい。ここで、2つのロールの周速比とは、遅いロールの周速度/速いロールの周速度を意味する。
前記移動速度比が、0.75以上であればさらにΔRe[0°]およびΔRthが改善されるため好ましく、前記移動速度比が0.99以下であれば十分せん断応力をメルトにかけることができ等速の場合に比べΔRe[0°]およびΔRthが顕著に向上するため好ましい。また、前記2つのロールの周速比を0.75〜0.99にすると、フィルム表面に傷が付き難く、平滑性が良好なフィルムを安定的に製造することができるため好ましい。
本発明のフィルムを得るためには、前記2つのロールの速度はどちらが速くても構わないが、タッチロールが遅い場合、タッチロール側にバンク(溶融物の余剰分がロール上へ滞留し、形成された滞留物)が形成される。タッチロールは、溶融物が接触している時間が短いため、タッチロール側に形成されたバンクは、十分に冷却することができず、剥離ダンが発生し、面状故障の原因となり易い。よって、遅いロールがチルロール(第2ロール)であり、速いロールがタッチロール(第1ロール)であることが好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、前記2つのロールとして、それぞれ直径の大きなロールを用いるのが好ましく、具体的には、直径が350〜600nm、より好ましくは350〜500nmの2つのロールを使用するのが好ましい。直径の大きなロールを用いると、フィルム状の溶融物とロールの接触面積が広くなり、せん断がかかる時間がより長くなるため、Re[+40°]とRe[−40°]の差が大きなフィルムを、しかもRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキを抑制しつつ製造することができる。なお、本発明の製造方法では、前記2つのロールの直径は等しくても、異なっていてもよい。
本発明の製造方法では、前記2つのロールが、互いに異なる周速で駆動される。前記2つのロールは、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキを抑制するためには、独立駆動であることが好ましい。
さらにRe[40°]とRe[−40°]の差を大きくするために、2つのロールの表面温度に差をつけてもよい。好ましい温度差は5℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。その際、2つのロール自体の設定温度は、樹脂のガラス転移温度Tgを用いて、好ましくはTg−70℃〜Tg+20℃、より好ましくはTg−50℃〜Tg+10℃、さらに好ましくはTg−40℃〜Tg+5℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに樹脂をいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
また、本発明の製造方法では、ダイから溶融押出しされ2つのロールの少なくとも一方に接触する直前まで、溶融物を保温し、幅方向の温度分布を軽減するのが好ましく、具体的には、幅方向の温度分布を5℃以内にするのが好ましい。温度分布を軽減するためには、溶融物のダイと2つのロールとの間の通路の少なくとも一部に、断熱機能または熱反射機能のある部材を配置し、該溶融物を外気から遮蔽するのが好ましい。この様に、断熱部材を通路に配置して、外気から遮蔽することで、外部環境、例えば風、の影響を抑えることができ、フィルムの幅方向の温度分布を抑制することができる。フィルム状溶融物の幅方向の温度分布は、±3℃以内がより好ましく、±1℃以内がよりさらに好ましい。
さらに、前記遮蔽部材を用いると、フィルム状溶融物の温度が高い状態、すなわち、溶融粘度が低い状態で、ロール間を通過させることができるため、本発明のフィルムを作成しやすい効果もある。
なお、フィルム状の溶融物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
前記遮蔽部材は、例えば、2つのロールの両端部よりも内側で、且つダイの幅方向側面と隙間を介して設けられる。遮蔽板は、ダイの側面に直接固定されてもよいし、支持部材によって支持固定されてもよい。遮蔽部材の幅は、ダイの放熱による上昇気流を効率的に遮断できるように、例えば、ダイ側面の幅と同等かそれ以上であるのが好ましい。
遮蔽部材とフィルム状の溶融物の幅方向端部との隙間は、ロールの表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、フィルム状溶融物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、ダイの側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
よりRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキをなくす方法として、フィルム状の溶融物がキャスティングロールに接触する際の密着性を上げる方法がある。具体的には、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法を組み合わせて、密着性を向上させることができる。このような密着向上法は、フィルム状の溶融物の全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
このようにして製膜した後、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロール(例えばキャスティングロールとタッチロール)以外に、キャスティングロールを1本以上使用して、フィルムを冷却するのが好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(ダイに近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。複数本あるキャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
さらに加工したフィルムの両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。
巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/幅である。
本発明の製造方法で得られるフィルムの未延伸時の膜厚は、10μm〜90μmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜80μmであり、さらに好ましくは25μm〜70μmである。 膜厚が薄いほうが、単位面積あたりの分解物量が少なくなる傾向があり、本発明の効果が発揮されやすい。
<延伸、緩和処理>
さらに、上記方法により製膜した後、延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(g)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸
(d) 縦延伸→緩和処理
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(f) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)〜(d)の工程である。
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、Tg−30℃〜Tg+50℃が好ましく、Tg−20℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。また、好ましい横延伸倍率は1.05〜4.0倍、より好ましく1.1〜3倍、さらに好ましくは1.2〜2.5倍である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
縦延伸は、2対のロール間を加熱しながら出口側の周速を入口側の周速より速くすることで達成できる。この際、間の間隔(L)と延伸前のフイルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/W(縦横比と称する)が2〜50以下(長スパン延伸)ではRthを小さいフィルムを作成し易く、L/Wが0.01〜0.3(短スパン)ではRthが大きいフィルムを作成できる。本実施の形態では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)のどれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
延伸温度は、Tg−30℃〜Tg+50℃が好ましく、Tg−20℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。また、好ましい縦延伸倍率は1.05〜4.0倍、より好ましく1.1〜3倍、さらに好ましくは1.2〜2.5倍である。
さらに、これらの延伸の後に緩和処理を行うことで寸法安定性を改良できる。熱緩和は製膜後、縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましい。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行ってもよく、延伸後巻き取った後、オフラインで行ってもよい。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
[偏光板]
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板は、本発明のフィルムと偏光子を用いたものであれば、特に構成に制限はない。例えば、本発明の偏光板が、偏光子とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明ポリマーフィルム)からなる場合において、本発明のフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。また、本発明の偏光板は、その少なくとも一方の面に、他の部材との貼着のための粘着剤層を有してもよい。また、本発明の偏光板において、本発明のフィルムの表面が凹凸構造であれば、アンチグレア性(防眩性)の機能を有することになる。さらに、本発明の偏光板には、本発明のフィルムの表面にさらに反射防止層(低屈折率層)を積層した本発明の反射防止フィルムや、本発明のフィルムの表面にさらに光学異方性層を積層した本発明の光学補償フィルムを用いることも好ましい。
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のフィルムは、液晶表示装置における液晶セルと偏光板との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。
本発明の偏光板は、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムがこの順に積層している構成であることがより好ましい。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子、本発明のフィルムおよび粘着剤層がこの順に積層している構成もより好ましい。
(光学フィルム)
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
(セルロースアシレートフィルム)
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
(偏光子)
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明に用いられる偏光子は、本発明の目的を達成し得るものであれば、任意の適切なものが選択され得る。前記偏光子としては、例えば、親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。前記親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させた偏光子が好ましい。
前記偏光子は、好ましくは、さらにカリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含有する。前記偏光子が、カリウムおよびホウ素を含有することによって、好ましい範囲の複合弾性率(Er)を有し、且つ、偏光度が高い偏光子(偏光板)を得ることができる。カリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含む偏光子の製造は、例えば、偏光子の形成材料であるフィルムを、カリウムおよびホウ素の少なくとも一方の溶液に浸漬すればよい。前記溶液は、ヨウ素を含む溶液を兼ねてもよい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、従来公知の方法が適用できる。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
偏光子の製造方法の一例について、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(原反フィルム)は、純水を含む膨潤浴、およびヨウ素水溶液を含む染色浴に浸漬され、速比の異なるロールでフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。つぎに、膨潤処理および染色処理されたフィルムは、ヨウ化カリウムを含む架橋浴中に浸漬され、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。架橋処理されたフィルムは、ロールによって、純水を含む水洗浴中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルムは、乾燥して水分率を調節した後で巻き取られる。このように、偏光子は、原反フィルムを、例えば、元の長さの5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
前記偏光子は、接着剤との密着性を向上させるために、任意の表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で、または2つ以上を組み合せて用いてもよい。
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。 本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
前記接着剤としては、公知の偏光板製造用接着剤を用いることができる。また、前記偏光子と各フィルムの間に接着剤層を有する態様も好ましい。前記接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。前記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有することが好ましい。
本発明の偏光板の製造方法は、上記の方法に限定されず、他の方法を用いることもできる。例えば、特開2000−171635号、特開2003−215563号、特開2004−70296号、特開2005−189437号、特開2006−199788号、特開2006−215463号、特開2006−227090号、特開2006−243216号、特開2006−243681号、特開2006−259313号、特開2006−276574号、特開2006−316181号、特開2007−10756号、特開2007−128025号、特開2007−140092号、特開2007−171943号、特開2007−197703号、特開2007−316366号、特開2007−334307号、特開2008−20891号各公報などに記載の方法を使用できる。これらの中でもより好ましくは特開2007−316366号、特開2008−20891号公報に記載の方法である。
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムは、本発明のフィルムであってもよい。また、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等、従来偏光板の保護フィルムとして用いられている種々のフィルムを利用することができる。
このようにして得た本発明の偏光板は、液晶表示装置内で使用するのが好ましく、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置が挙げられる。液晶表示装置は透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置等に適用される。
[液晶表示装置]
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
本発明のフィルムは、光学用途用フィルムとして好ましく用いることができ、光学補償フィルムとして特に好ましく用いることができる。
本発明のフィルムにさらに他の層を付与することで積層フィルムとすることもできる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
(測定法)
各実施例および比較例で用いた測定法の詳細を以下に示す。
(1)Re、Rth、γ
長手方向に10cmの間隔で20点、幅方向に等間隔で20点サンプリングし、前記の方法でRe[0°]、Re[40°]、Re[−40°]、Rthを測定する。これらの値から、γを計算した。
(2)ΔRe[0°]、ΔRth
90℃相対湿度10%の環境下で500時間経過前後のRe[0°]の変動をΔRe[0°]とし、90℃相対湿度10%の環境下で500時間経過前後のRthの変動をΔRthとした。測定方法は上記(1)と同様である。
(熱可塑性樹脂)
A−1:
COC(付加重合型ノルボルネン樹脂)として、ポリプラスチックス(株)製、TOPAS6013(商品名)、Tg=136℃を用いた。
A−2:
COP(開環重合型ノルボルネン樹脂)、国際公開WO98/14499号公報の実施例1の化合物、Tg=136℃を用いた。
A−3:
ポリカーボネート樹脂として、出光興産(株)製、タフロンMD1500(商品名)、Tg=142℃を用いた。
A−4:
アクリル系樹脂として、特開2008−9378号公報の[0222]〜[0224]に記載の製造例1に従い、メタクリル酸メチル=7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成し、ラクトン化率98%、Tg=134℃のアクリル系樹脂を用いた。
A−5:
セルロースアシレート樹脂として、特開2008−87398号公報の実施例1に記載のペレット、Tg=174℃を使用した。
A−6:
セルロースアシレート樹脂として、特開2008−50562号公報の表3に記載の実施例101の樹脂、Tg=137℃を用いた。
(添加剤)
B−1:
熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、安定剤としてIRGANOX−1010(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製を下記表1および表2に記載の添加量で用いた。
B−2:
熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、安定剤としてIRGANOX−1010(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製を0.6重量部、安定剤としてSumilizerGP(商品名)、住友化学社製を0.4重量部添加したものを用いた。
B−3:
熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、安定剤としてIRGANOX−1010(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製を0.6重量部、可塑剤としてグリセリントリベンゾエートを表1に記載の添加量で用いた。
B−4:
熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、安定剤としてIRGANOX−1010(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製を0.6重量部、可塑剤としてビスフェノールAジフェニルホスフェート、ADEKA社製、アデカスタブFP700(商品名)を3重量部、シリカ粒子としてアエロジルR972V(商品名)、日本アエロジル社製(一次平均径16nm、見かけ比重90g/L)を0.05重量部、紫外線吸収剤としてLA−31(商品名)、ADEKA社製を1.1重量部添加したものを用いた。
B−5:
熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、安定剤としてIRGANOX−1010(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製を1.0重量部、可塑剤としてビスフェノールAジフェニルホスフェート、ADEKA社製、アデカスタブFP600(商品名)を10重量部添加したものを用いた。
B−6:
熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、安定剤としてIRGANOX−1010(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製を1.0重量部添加したものを用いた。
[実施例1]
(混練工程(再ペレット化))
表1に記載の熱可塑性樹脂ペレット100重量部と、表1に記載の組成および添加量にて添加剤を添加し、ブレンダーで混合後、窒素気流で満たされている2軸混練押出機のホッパーに投入した。2軸混練押出機のスクリューは、スクリュー回転数300rpm、押出し量200kg/hrで、0.1気圧で真空排気しながら、ニーディングディスクを有するスクリューを有する二軸押出機にて混練し、熱可塑性樹脂溶融物を得た。なお、真空排気は、二軸混練押出機スクリューのケーシングに排気口をつけ、これを真空ポンプに配管して行った。得られた熱可塑性樹脂溶融物をダイから押出し、60℃の水中で固化した後、直径3mm、長さ2〜6mm(大部分は3mm)に裁断して、熱可塑性樹脂組成物ペレットを作成した。
(製膜)
上記熱可塑性樹脂組成物ペレットを100℃において2時間以上乾燥後、一軸押出機に供給して265℃で溶融させた。
溶融したメルト樹脂の厚み精度をアップさせるために、ギアポンプを用いて一定量送り出した。ギアポンプから送り出された溶融ポリマーは異物除去のために5μmの焼結フィルターを経由した後、スリット状の隙間を有するダイへ送り出され、Tg−10℃、Tg−5℃のタッチロール、キャストロールを用い表1の条件で製膜した。固化したシートをポリシングロールから剥ぎ取り、ロール状フィルムに巻き取った。なお、巻き取り直前に両端(全幅の各5%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。製膜幅は1.5mとし、製膜速度15m/分で3000m巻き取った。用いたキャストロールとタッチロールの直径はそれぞれ500mm、400mmであり、表面粗度Raがいずれも25nmの金属ロールであった。
(フィルムの特性)
得られた実施例1のフィルムの特性も表1にあわせて記載した。なお、本発明のフィルムのRe[+40°]とRe[−40°]を測定した傾斜方位は、いずれも、フィルムの長手方向であった。
[実施例2〜24、比較例1〜4]
用いた樹脂と製膜条件を下記表1に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例のフィルムを得た。なお、製膜前の溶融に際し、環状オレフィン樹脂は265℃、ポリカーボネート樹脂は275℃、アクリル樹脂は270℃、セルロースアシレート樹脂は240℃でそれぞれ溶融した。
なお、再ペレット化原料使用率とは、用いた熱可塑性樹脂ペレット全量に対する、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を経たペレットの添加量の重量%のことを意味し、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を経ていないペレットは、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法でペレットにした熱可塑性樹脂と同じ種類の樹脂を用い、使用添加剤が同じ種類と添加量のものを使用した。
各実施例および比較例のフィルムの特性および耐久性を下記表1に示す。
Figure 2010058411
表1から、実施例1〜24のフィルムは、いずれも良好な光学特性を示し、光学特性の耐久性も良好であることが判明した。
比較例1はタッチ圧を本発明の下限値以下としたものであり、Re[0°]、γの発現が不十分であり、ΔRe[0°]およびΔRthがいずれも10nmを超えてしまった。比較例2はタッチ圧を本発明の上限値以上としたものであり、Re[0°]およびγの発現が不十分であり、ΔRe[0°]およびΔRthがいずれも10nmを超えてしまった。一方、タッチ圧が本発明の範囲内である実施例1〜4のフィルムでは良好な光学特性を示し、光学特性の耐久性も良好であった。 比較例3は、再ペレット化原料を0%、すなわち、市販のペレットを上記のとおりそのまま用いたものであり、ΔRe[0°]およびΔRthがいずれも10nmを超えてしまった。一方、再ペレット化原料の使用率が本発明の範囲内である実施例6〜8のフィルムでは良好な光学特性を示し、光学特性の耐久性も良好であった。
比較例4は、2つのロール間の周速比を本発明の範囲外として2つのロールを等速で製膜したものであり、得られたフィルムはγ(傾斜位相差構造)が発現しておらず、ΔRe[0°]およびΔRthもいずれも10nmを超えてしまった。
また、実施例1〜24より、本発明のフィルムは光学用途に適したフィルムであり、特に光学補償フィルムとして好適に用いることができることがわかった。
TN液晶パネルへの装着と評価
(TNモード用偏光板の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%、KI濃度3質量%のヨウ素水溶液(30℃)中に60秒浸漬して染色し、次にホウ酸濃度4質量%、KI濃度3.5質量%の水溶液(55℃)中に60秒浸漬している間に元の長さの5.5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
これとは別に、セルロースアシレートフィルム(富士フイルム(株)製、フジタックT60)を濃度2.0モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬ケン化処理した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流し、105℃で乾燥した。
実施例1のフィルム表面にコロナ放電処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用い、偏光子の片側に貼り付けた。また、上記ケン化処理したフジタックT60を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、偏光板を得た。
実施例19と比較例4の各フィルムをフジタックT60と同様な条件でケンカ処理した。ポリビニルアルコール系接着剤を用い、得た各フィルム/偏光子/フジタックT60形態で貼り合せ、偏光板を得た。
(液晶表示装置の作製)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC−20C1−S 、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに本発明の実施例1および実施例19のフィルムを用いて作製した偏光板を、本発明に作製したフィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置した。作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D 、ELDIM社製)を用いて、白黒コントラスト比が10を超える視野角特性(コントラスト視野角特性)を評価し、上下左右視野角が全て40°以上であることを確認した。
一方、本発明の比較例4のフィルムを用いて作製した偏光板を、比較例4のフィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置した。白黒コントラスト比が10を超える視野角特性を測定したところ、上下左右視野角40°未満の視野角方位が存在することを確認した。
このように、本発明のフィルムを用いると、TN液晶表示装置に組み込んだ場合、視野角補償を行うことができる。
(半透過型ECBモード用偏光板の作製)
作成した実施例1のフィルムのフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。この偏光子を用いて、図1に示すような配置で、60μmのセルロースアシレートフィルム(富士フィルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、本発明実施例1のフィルムを貼合わせた。この様にして、実施例1のフィルムを用いた偏光板を2枚作製した。
実施例18〜19および比較例4の各フィルムを上記実施例1のフィルムと同様に、ECBモード用偏光板を作製した。
(半透過型ECBモード液晶表示装置の作製と評価)
次に、上記偏光板を用いてECB型の半透過型液晶表示装置を作製した。使用した液晶セルは、液晶材料としてZLI−1695(Merck社製)を用い、液晶層厚は反射電極領域(反射表示部)で2.4μm、透過電極領域(透過表示部)で4.9μmとした。液晶層の基板両界面のプレチルト角は2度であり、液晶セルのΔndは、反射表示部で略150nm、透過表示部で略320nmであった。
この液晶セルの上下に、上記作製した偏光板を、図2に示すように配置した。偏光板P1およびP2中の矢印はそれぞれの吸収軸を、位相差フィルム中の矢印はそれぞれの遅相軸を、ECBセルの矢印はそれぞれの対向面に施されたラビング処理のラビング方向を示す。ここで、12時方向が0°、時計回りが+である。
本発明の実施例1、18、19の各フィルムを有する偏光板を用いた液晶表示装置(ECB−LCD)について、白黒表示時のコントラスト比が10以上の視野角度を求めたところ、ECB−LCDは左右上下のいずれの方向も視野角度70°以上を達成していた。また、上記実施例1、18、19の各フィルムを有する偏光板を、90℃相対湿度10%の環境下で500時間経過前後、液晶表示装置(ECB−LCD)へ同様に組込み、視野角の変化が10%未満であることを確認した。
一方、比較例4のフィルムを用いた液晶表示装置(ECB−LCD)は、コントラスト比10以上の視野角度が、上下左右視野角40°未満の視野角方位が存在することを確認した。また、比較例4のフィルムを有する偏光板を、90℃相対湿度10%の環境下で500時間経過前後、液晶表示装置(ECB−LCD)へ同様に組込み、視野角の変化が30%を超えることを確認した。
このように、本発明のフィルムを用いると、液晶表示装置に組み込んだ場合、大きな視野角補償を行うことができる。
本発明で用いることができる二軸押出機の一例の断面図である。 本発明の半透過型ECBモード液晶表示装置における偏光板の吸収軸、液晶セルの配向方向およびフィルムの遅相軸を表した平面図である。
符号の説明
22 二軸押出機
42 シリンダー
44 スクリュー軸
46 スクリュー羽根
48 スクリュー
49 スクリュー先端部
50 供給口
52 吐出口
54 ベント孔
56 ベント孔
A1 供給部
A2 圧縮部
A3 計量部
D シリンダー内径
L スクリュー長

Claims (13)

  1. 熱可塑性樹脂と添加剤とを含む組成物を溶融混練する工程と、
    溶融混練した組成物を該熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下に冷却して固化する工程と、
    固化した組成物を含む熱可塑性樹脂含有組成物をダイから溶融押出しする工程と、
    溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程とを含み、
    前記挟圧装置によって該溶融物にかかる圧力が20MPa〜120MPaであり、かつ、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くすることを特徴とする熱可塑性フィルムの製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂と添加剤とを含む組成物が、ペレットであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  3. 前記溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程において、前記挟圧装置が互いに周速が異なる2つのロールであることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
  4. 下記式(1)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比が0.75〜0.99であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
    移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 (1)
  5. 前記固化した組成物を含む熱可塑性樹脂含有組成物をダイから溶融押出しする工程において、前記熱可塑性樹脂含有組成物全体に対して、前記固化した組成物を30〜100質量%使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
  6. 前記固化した組成物が、前記添加剤を0.1〜20質量%含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
  7. 前記添加剤が安定剤、可塑剤、無機微粒子、紫外線吸収剤および光学調整剤から選択される少なくとも1種であること特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
  8. 前記熱可塑性樹脂が、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
  9. 90℃相対湿度10%の環境下で500時間経過前後のRe[0°]の変動の絶対値および90℃相対湿度10%の環境下で500時間経過前後のRthの変動の絶対値がいずれも0〜10nmであり、さらに、下記式(I)および(II)を満足することを特徴とする熱可塑性フィルム。
    10nm≦Re[0°]≦300nm 式(I)
    (式(I)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおける正面方向のレターデーションを表す。)
    40nm≦γ≦300nm (II)式
    γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II’)
    (式(II)および(II’)中、Re[+40°]は該法線に対して+40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して−40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表す。ここで、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向である。)
  10. 膜厚方向のレターデーションRthが30〜500nmであることを特徴とする請求項9に記載の熱可塑性フィルム。
  11. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする熱可塑性フィルム。
  12. 請求項9〜11のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
  13. 請求項9〜11のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
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