JP2008069241A - セルロースアシレートフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶融流延によって製膜されたセルロースアシレートフィルム1であって、前記フィルムの製膜方向(矢印X)に平行であり且つ最大深さまたは最大高さが0.5μm以下および最小幅が500μm以上のダイライン2が、前記フィルムの幅方向(矢印Y)の長さ1cm当たり10本以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【選択図】図2
Description
[1] 溶融流延によって製膜されたセルロースアシレートフィルムであって、前記フィルムの製膜方向に平行であり且つ最大深さまたは最大高さが0.5μm以下および最小幅が500μm以上のスジが、前記フィルムの幅方向の長さ1cm当たり10本以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
100(1/s)≦ωG'=G"(230℃)
200(Pa・s)≦η0(230℃)≦3000(Pa・s)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、溶融流延の製膜方向(長手方向)に平行であり且つ最大深さまたは最大高さが0.5μm以下および最小幅が500μm以上のスジが、フィルムの幅方向の長さ1cm当たり10本以下であることを特徴とする。
スジは主としてダイラインであるが、フィルムの幅方向の長さ1cm当たりの本数を測定する際に、最大深さまたは最大高さが0.5μm以下および最小幅が500μm以上のスジとして観察されるもののすべてがダイラインであることを証明する必要はない。最大深さまたは最大高さが0.5μm以下および最小幅が500μm以上のスジとして観察されるものの本数が、フィルムの幅方向の長さ1cm当たり10本以下であれば本発明の要件を満たすものとする。なお、以下の説明においては、便宜上スジをダイラインとして説明する。
そこで、前記二点を満足するために、本発明のセルロースアシレートフィルムは、点光源からの照射光で壁面に投影した際に、明点となる異物の数が0.1〜50個/cm2以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜30個/cm2以下であり、特に好ましくは0.1〜10個/cm2である。フィルム中に存在する明点となる異物の数が前記範囲にある場合、本発明におけるダイラインの発生が抑制される。
上述したように、セルロースアシレートは、エステル基の炭素鎖を長くすることで融点を下げ溶融製膜を可能にしている。よって、熱分解によってエステル基が分解してしまうと、融点が上がり、製膜工程中での不溶融物(すなわち異物)となってしまう。そこで、本発明で用いるセルロースアシレートは以下の特徴を持つことが好ましい。即ち、本発明のセルロースアシレートフィルムの水酸基量(DsOH;後述する処理を施す前の水酸基量)と、該フィルムを230℃で30分間処理した後の水酸基量(DsOH30)との比(DsOH30/DsOH)が0.9以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.95以上である。測定方法については後述する。
本発明者らは、側鎖の分解のメカニズムを解析した結果、残留する酸、塩基が、アセテートの加水分解の原因になっていることを突き止めた。溶融製膜中では、メルト温度が200〜250℃になるため、僅かな酸、塩基であっても、側鎖の加水分解が進行してしまう。そこで、本発明では、セルロースアシレート原料の再沈殿後の洗浄処理および乾燥を適切に行うこと好ましい。即ち、再沈殿後のセルロースアシレート原料の洗浄は20〜60℃の純水で、特に超音波洗浄器を用いることが好ましい。また、この際の洗浄水(純水)のpHは5.0〜8.0が好ましく、更に好ましくは6.0〜8.0になるまで、繰り返し洗浄を行う。さらに、繰り返し洗浄したセルロースアシレートを弱アルカリで安定化後、50〜140℃で1時間、真空中で乾燥を行うことが好ましい。また、前記乾燥は80℃〜140℃で2時間、真空中で行うことがさらに好ましく、特に好ましくは100℃〜120℃で2時間、真空中で行うことである。意外なことに、前記範囲以上の温度もしくは、時間で乾燥を行うと、逆にセルロースアシレートを溶融製膜した際のせん断発熱量が増大してしまう場合があることが分かった。この現象の正確な原因については不明であるが、過剰な乾燥を行うと、セルロースアシレート中の様々な低分子量化合物が蒸発してしまい、樹脂の流動性を悪化させてしまうことが原因の一つと考えられる。
(置換度)
まず、本発明で用いることのできるセルロースアシレートについて説明する。本発明で用いられるセルロースアシレートは下記式(S−1)〜(S−2)を満足するものであることが好ましい。
式(S−1) 2.5≦X+Y ≦3.0
式(S−2) 1.25≦Y≦3.0
式(S−3) 2.6≦X+Y≦2.95
式(S−4) 2.0≦Y≦2.95
式(S−5) 2.7≦X+Y≦2.95
式(S−6) 2.3≦Y≦2.9
セルロースアシレートを合成する際のセルロース原料としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、綿花リンター由来のものが好ましく用いられる。
セルロース原料はアシル化に先立って、活性化剤と接触させる処理(活性化)を行っておくことが好ましい。前記活性化剤としては、酢酸、プロピオン酸、または酪酸が好ましく、特に好ましくは酢酸である。前記活性化剤の添加量は好ましくは5質量%〜10000質量%であり、より好ましくは10質量%〜2000質量%、さらに好ましくは30質量%〜1000質量%である。添加方法は噴霧、滴下、浸漬などの方法から選択できる。セルロース原料の活性化時間は20分間〜72時間が好ましく、特に好ましくは20分間〜12時間である。活性化温度は0℃〜90℃が好ましく、20℃〜60℃が特に好ましい。さらに活性化剤に硫酸などのアシル化の触媒を0.1質量%〜10質量%加えることもできる。
セルロースとカルボン酸の酸無水物とをブレンステッド酸またはルイス酸(「理化学辞典」第五版(2000年)参照)を触媒として反応させることで、セルロースの水酸基をアシル化することが好ましい。
カルボン酸の酸無水物として、好ましくはカルボン酸としての炭素数が2〜22のものを用いることができる。特に好ましくは、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物である。酸無水物はセルロースの水酸基に対して1.1〜50当量添加することが好ましく、1.2〜30当量添加することがより好ましく、1.5〜10当量添加することが特に好ましい。
セルロースのアシル化触媒には、ブレンステッド酸またはルイス酸を使用することが好ましく、硫酸または過塩素酸がより好ましく、好ましい添加量は0.1〜30質量%であり、より好ましくは1〜15質量%であり、特に好ましくは3〜12質量%である。
セルロースのアシル化溶媒としてカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは、炭素数2〜7のカルボン酸であり、特に好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸である。これらの溶媒は混合して用いてもよい。
セルロースのアシル化の反応熱による温度上昇を制御するために、アシル化剤は予め冷却しておくことが好ましい。セルロースのアシル化温度は−50℃〜50℃が好ましく、より好ましくは−30℃〜40℃、特に好ましく−20℃〜35℃である。反応の最低温度は−50℃以上が好ましく、−30℃以上がより好ましく、−20℃以上が特に好ましい。セルロースのアシル化時間は0.5時間〜24時間が好ましく、1時間〜12時間がより好ましく、1.5時間〜10時間が特に好ましい。
セルロースのアシル化反応の後に、反応停止剤を加えることが好ましい。反応停止剤は酸無水物を分解するものであればよく、水、アルコール(炭素数1〜3のもの)、カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸等)が挙げられ、中でも水とカルボン酸(酢酸)との混合物がさらに好ましい。水とカルボン酸との組成は、水が好ましくは5質量%〜80質量%、さらに好ましくは10質量%〜60質量%、特に好ましくは15質量%〜50質量%である。
アシル化反応停止後に中和剤を添加してもよい。中和剤の好ましい例としては、アンモニウム、有機4級アンモニウム、アルカリ金属、2族の金属、3〜12族金属、または13〜15族元素の、炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸塩、水酸化物または酸化物などを挙げることができる。特に好ましくは、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムの、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩または水酸化物である。
このようにして得られたセルロースアシレートは、全置換度がほぼ3に近いものであるが、所望の置換度のものを得る目的で、少量の触媒(一般には、残存する硫酸などのアシル化触媒)と水との存在下で、20〜90℃に数分〜数日間保つことによりエステル結合を部分的に加水分解し、セルロースアシレートのアシル置換度を所望の程度まで減少させる。この後、残存触媒を前記の中和剤を用いて、部分加水分解を停止させる。
本発明で用いるセルロースアシレート中の異物を最大限に低減しておくため、異物を原料から除去しておくことが好ましい。具体的には、原料合成段階でろ過方法を用いて除去することが好ましい。より具体的には、セルロースアシレート中の未反応物、難溶解性塩、その他の異物などを除去または削減するために、アシル化工程から再沈殿工程の間のいずれかにおいて、セルロースアシレートを含む反応溶液をろ過することが好ましい。ろ過に用いるフィルターの保留粒子サイズは、好ましくは0.1μm〜50μmであり、さらに好ましくは、0.5μm〜40μmであり、特に好ましくは、1μm〜30μmである。フィルターの保留粒子サイズが0.1μmより小さ過ぎると、ろ過圧の上昇が著しくなり、実質的に工業的な生産が困難になる傾向がある。また、保留粒子サイズが40μmより大き過ぎると、異物の除去が十分にできない場合がある。また、濾過は2回以上繰り返して行ってもよい。
セルロースアシレート溶液を、水もしくはカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸など)水溶液と混合し再沈殿させる。再沈殿は連続式、バッチ式のいずれでもよい。
再沈殿後、セルロースアシレート原料を洗浄処理することが好ましい。
洗浄後のセルロースアシレートは、安定化のために、弱アルカリ(Na、K、Ca、Mg等の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物)を添加するのが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの質量平均重合度は150〜700であり、好ましくは200〜600、さらに好ましくは200〜500である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に記載されるように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布測定などの方法により測定できる。さらに、平均重合度の測定方法については、特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
本発明で用いられるセルロースアシレートは、質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜5.0であり、さらに好ましくは2.0〜4.5であり、特に好ましくは2.0〜4.5である。
本発明のセルロースアシレート組成物には、少なくとも一種の安定剤を添加することができる。また、本発明のセルロースアシレート組成物を用いて製膜する際に、工程中にて安定剤を好ましく添加することができる。安定剤は、特にセルロースアシレートの加熱溶融前または加熱溶融時に添加することが好ましい。安定剤は、セルロースアシレート組成物中に含まれる材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等、解明できていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために有用である。安定剤には、製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。以下において安定化剤について具体的に説明するが、本発明で用いることができる安定剤は以下に説明されるものに限定されない。
本発明のセルロースアシレート組成物に含まれる構成材料の熱溶融時における安定化のために用いるフェノール系安定剤として、既知のヒンダードフェノール系安定剤を用いることができる。これには、例えば米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されているものなどの、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。
上記の亜リン酸系安定剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
さらに本発明では、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定剤も好ましく用いられる。具体的な化合物として下記のものを挙げることができるが、本発明で用いることができる安定化剤はこれらに限定されるものではない。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されている。代表的な市販品としては、住友化学株式会社のスミライザーGPを挙げることができる。
本発明においてセルロースアシレートに添加することができるチオエーテル系安定剤も分子量500以上であるものが好ましく、公知の任意のチオエーテル系安定剤を用いることができる。そのようなチオエーテル系安定剤は、住友化学株式会社からスミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO−412Sとしても入手可能である。
エポキシ系安定剤は、酸捕捉剤として作用し、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸捕捉剤としてのエポキシ化合物を含んでいるものが好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、および塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22個の炭素原子を有する脂肪酸と、4〜2個の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、および種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油および他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、およびエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
上記スズ系安定剤としては、公知の任意のスズ系安定剤を用いることができる。好ましいスズ系安定剤の具体例としては、オクチル錫マレエートポリマー、モノステアリル錫トリス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチル錫ジラウレートが挙げられる。
セルロースアシレートは高温下では酸によっても分解が促進されるため、本発明では酸捕捉剤を使用することが好ましい。
本発明のセルロースアシレート組成物には、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤は、製膜工程中にセルロースアシレート組成物に添加してもよい。
紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載されている。紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレート組成物または調製する溶融物(メルト)の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
本発明では、光安定剤を用いることもできる。光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
本発明のセルロースアシレート組成物には可塑剤を添加することができる。また、製膜時にセルロースアシレート組成物に可塑剤を添加してもよい。
可塑剤を添加することによって、得られるフィルムの機械的性質を向上させ、柔軟性や耐吸水性を付与し、水分透過率を低減させる等のフィルム改質効果が期待できる。また溶融流延法で製膜する際には、用いるセルロースアシレート単独のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることができる。また、同じ加熱温度において、セルロースアシレートよりも粘度を低下させることができる。本発明に用いる可塑剤としては、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号公報に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
本発明では、セルロースアシレートに微粒子を混合してもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明におけるセルロースアシレートに含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、セルロースアシレートフィルムを透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、セルロースアシレートに対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
この時、別途微粒子を含まないセルロースアシレートのマスターペレット(セルロースアシレートマスターペレット)を作製しておくことが必要である。その場合、微粒子含有マスターペレットには、同時に上記の安定剤を含有させておくことが好ましい。また、微粒子含有マスターペレット中の微粒子の添加量は特に制限されないが、好ましくはセルロースアシレートフィルム中の微粒子最終濃度の2〜50倍が好ましく、より好ましくは2〜30倍であり、さらに好ましくは3〜25倍であり、特に好ましくは4〜20倍である。セルロースアシレートマスターペレットと微粒子含有マスターペレットの混合には、前記した混合機を利用することができる。なお、微粒子含有マスターペレットを作製する段階で、微粒子以外の添加剤(安定剤、可塑剤、その他の添加剤など)を一緒に添加してもよく、その場合も微粒子以外の添加剤の濃度は、好ましくはセルロースアシレートフィルム中の所望添加剤最終濃度の2〜50倍が好ましく、より好ましくは2〜30倍であり、さらに好ましくは3〜25倍であり、特に好ましくは4〜20倍である。
本発明のセルロースアシレート組成物には、光学調整剤を添加することができる。光学調整剤は、製膜時にセルロースアシレート組成物に添加してもよい。
以下に、本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法について、詳細に記述する。なお、本発明のセルロースアシレートフィルムは、これらの方法により製造されたものに限定されるものではない。
前記セルロースアシレートと添加物は溶融製膜に先立ち混合しペレット化するのが好ましい。
ペレット化前にセルロースアシレートと添加物は乾燥しておくことが好ましい。ベント式押出機を用いることで、これを代用することもできる。
ペレット化は、前記セルロースアシレートと添加物とを2軸あるいは1軸混練押出機を用いて150℃〜240℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを水中で固化し裁断することで作製することができる。水中に直接押出ながらカットするアンダーウオーターカット法でペレット化を行ってよい。
好ましいペレットの大きさは、断面積が1mm2〜300mm2、長さが1mm〜30mmであり、より好ましくは断面積が2mm2〜100mm2、長さが1.5mm〜10mmである。
押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは30rpm〜500rpmである。ペレット化における押出滞留時間は通常10秒間〜10分間、好ましくは30秒間〜3分間である。
(2−1)乾燥
溶融製膜に先立ちペレット中の水分を乾燥して含水率を0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下にすることが好ましい。ペレット状の樹脂乾燥は通常用いられる何れの乾燥方法も用いることができる。例えば除湿エアーを循環する乾燥機、熱風乾燥機、真空乾燥機、超音波乾燥機、高周波乾燥機、赤外線乾燥機等が挙げられる。このための乾燥温度は40〜180℃が好ましく、さらに好ましくは60〜160℃、特に好ましくは80〜140℃である。乾燥風量は多いほど乾燥効率は上がるが、水分除去効率と経済性を考慮すると1時間あたりに樹脂100kgを乾燥させるのに必要な風量としては好ましくは10〜200m3/時間で有り、特に好ましくは50〜125m3/時間である。乾燥風の露点は好ましくは−60℃〜0℃で有り、乾燥効率と経済性を考慮するとより好ましくは−40℃〜−20℃である。
乾燥したセルロースアシレート樹脂を押出機の供給口からシリンダー内に供給する。
押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、より好ましくは2.5〜4.0である。L(スクリュー長)/D(スクリュー径)は20〜70が好ましく、より好ましくは24〜50である。押出温度は210〜245℃が好ましく、より好ましくは210〜240℃であり、特に好ましくは220〜240℃である。押出し機のバレルは3〜20に分割したヒーターで加熱し溶融することが好ましい。
スクリューとしては、フルフライト、マドック、ダルメージ等何れのタイプを用いることが可能である。均一な可塑化と、滞留部分の発生防止およびせん断発熱による熱劣化防止を図るために、これらを適宜組み合わせて適正なスクリュー設計を行うことが必要である。
樹脂の酸化防止のために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用いて真空排気しながら溶融押出しを実施するのがより好ましい。
ギアポンプ保護の点から、押し出し機出口にブレーカープレート式の濾過を行うことが好ましい。用いるフィルターのサイズは20〜600メッシュが好ましく、さらに好ましくは40〜400メッシュ、特に好ましくは50〜300メッシュである。
高精度濾過のために、ギアポンプ通過後にリーフ型ディスクフィルター型の濾過装置を設けることが好ましい。濾過は、単段で行っても、多段で行ってもよい。濾材の濾過精度は3μmm〜15μmmが好ましく、さらに好ましくは3μmm〜10μmmである。濾材はステンレス鋼、スチールを用いることが好ましく、中でもステンレス鋼が望ましい。濾材は線材を編んだもの、金属焼結濾材が使用でき、特に後者が好ましい。
厚み精度向上(吐出量の変動減少)のために、押出機とダイスとの間にギアポンプを設置するのが好ましい。これにより、ダイ部分の樹脂圧変動幅を±1%以内にできる。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御することも好ましい。3枚以上のギアを用いた高精度ギアポンプも有効である。ギアポンプ内の滞留部分が樹脂劣化の原因となるため、滞留の少ない構造が好ましい。また、軸受け部分に滞留して熱劣化した樹脂を軸のクリアランスから放出することにより、熱劣化ポリマーの混入を防止することも有効である。
押出機とギアポンプ、ギアポンプとダイ等とをつなぐアダプタの温度変動を小さくすることが押出圧力安定のために好ましい。このためにアルミ鋳込みヒーターを用いることがより好ましい。
ダイス内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプを用いても構わない。また、Tダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためのスタティックミキサーを入れても構わない。Tダイ出口部分のクリアランスは、一般にフィルム厚みの1.0〜20.0倍がよく、さらに好ましくは3.0〜15倍である。特に好ましくは5.0〜10倍である。
ダイのクリアランスは40〜50mm間隔で調整可能であることが好ましく、より好ましくは25mm間隔以下である。また、下流のフィルム厚みを計測してダイの厚み調整にフィードバックさせる方法も厚み変動の低減に有効である。
機能層を外層に設けるため、多層製膜装置を用いて2種以上の構造を有するフィルムの製造も可能である。
本願における滞留時間とは、樹脂が供給口から押出機に入った時点からダイスから出る時点までの時間とする。好ましい滞留時間は1分間〜10分間であり、好ましくは1分間〜7分間である。
ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い密着を上げることが好ましい。タッチロール法では、キャスティングドラムにタッチロールを押し当てて製膜する。また、フィルムの両端部のみを密着させるエッジピニングも好ましい。
キャスティングドラムは通常1〜8本、より好ましくは2〜5本用いて徐冷することが好ましい。ロール直径は50mm〜5000mmが好ましく、さらに好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、さらに好ましくは3mm〜30mmである。キャスティングドラムは60℃〜160℃が好ましく、さらに好ましくは80℃〜140℃である。
この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。このようにして得た未延伸フィルムの厚みは30μm〜400μmが好ましく、より好ましくは50μm〜200μmである。
また、いわゆるタッチロール法を用いる場合、タッチロール表面は、ゴム、テフロン等の樹脂でもよいし、金属ロールでもよい。さらに、金属ロールの厚みを薄くすることでタッチしたときの圧力によりロール表面が若干くぼみ、圧着面積が広くなりフレキシブルロールと呼ばれる様なロールを用いることも可能である。フレキシブルロールの厚みは0.1mm〜7mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.5mm、さらに好ましくは0.2mm〜4mmである。タッチロール温度は60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは80℃〜140℃である。タッチロールの抑え圧は0.1〜10MPaが好ましく、より好ましくは0.2〜8MPa、さらに好ましくは0.3〜5MPaである。ここでいう押え圧とは、タッチロールを押付ける力を、タッチロールとキャスティングロールの接触面積で割った値を指す。タッチロールを用いた製膜法は、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
巻き取り前に両端をトリミングすることが好ましい。トリミングされた部分はフィルム用原料として再利用してもよい。トリミングカッターとしてはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等の何れを用いても構わない。材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼、セラミック等を用いることができる。
好ましい巻き取り張力は1kg/m幅〜50kg/幅、より好ましくは3kg/m幅〜20kg/幅である。一定の巻き取り張力で巻き取ってもよいが、巻取り径に応じてテーパーをつけ巻取ることがより好ましい。
またニップロール間のドロー比率を調整し、ライン途中でフィルムに規定以上の張力がかからない様にすることが必要である。
巻き取り前に、少なくとも片面にラミフィルムを付けてもよい。また両端あるいは片端にローレットを付与することも好ましい。
製膜した未延伸フィルムや延伸フィルムを製品サイズに合わせるためのトリミング工程実施時や、製膜条件調整時には屑フィルムが発生する。発生量は投入原料の5〜30%程度に達するのが一般的であるため、屑フィルムを粉砕し、未使用原料と混合あるいは単独で再利用することは、コスト面および環境面から極めて重要である。
発生した屑フィルムは、製膜時のオンライン上で、連続した短冊状のままピンチロールまたは送風機で粉砕機へ送って細片状に粉砕することが好ましく、一旦巻き取り機で巻き取った後、にオフラインの粉砕機で粉砕する方法を用いても構わない。フィルム端部の熱劣化が激しいフィルムの場合には、フィルムの端部のみをスリットして除去して用いてもよい。
フィルムを粉砕する際には、粉砕機、固定刃と回転刃との接触により粉砕(切断・せん断)するもの、シュレッダーの様な短冊状に細切り状に切断するもの、あるいはカッターミルのようなせん断力を利用する粉砕機(細断機)、ブロワーカッターやハンマーミル等を利用できる。粉砕刃としては、平刃、くし刃、ロータリー刃等を用いることができる。
粉砕するフィルムのサイズは、通常0.1〜30mmであり、好ましくは0.5〜15mm、さらに好ましくは1〜10mm程度である。粉砕サイズが大き過ぎると配管に詰まり易く、一方、粉砕サイズが小さ過ぎても、配管内部に付着し易いため好ましくない。粉砕サイズは、通過させるメッシュの穴径で調整することができる。
粉砕時に金属部同士が接触し金属粉が発生するのを防止するため、磁力を有する金属除去装置により取り除くことが有効である。また、フィルム屑に付着したゴミを洗浄、乾燥で除去してもよい。
粉砕フィルムは、加圧あるいは減圧よる気体搬送により搬送するのが好ましく、コンベアやロータリーフィーダーによる輸送等によってもよい。また、粉砕フィルムはかさ比重が小さいため、圧縮機を用いたり、単軸あるいは二軸押出機を用いたリしてペレット化を行なってもかまわない。
粉砕フィルムは、吸湿を防止した粉砕機を用いてインラインで直ちに原料に戻す場合は乾燥が不要だが、通常は所定の水分率にするため乾燥が必要である。乾燥する場合は、熱風乾燥機、ドライエアー乾燥機、真空乾燥機、超音波乾燥機、赤外線乾燥機等を使用できる。
粉砕、乾燥処理したフィルムは気送配管により原料タンクに供給され、バージン原料(未使用セルロースアシレート)と混合し、ホッパーへ供給してもよい。また、粉砕フィルムとバージン原料を別々に計量し、押出機機に供給してもよい。粉砕フィルム原料とバージン原料の混合割合は質量比で1:99〜70:30が好ましく、さらに好ましくは5:95〜50:50である。この範囲内であれば、粉砕フィルムとバージン原料の嵩密度が異なっても押出機への供給安定性が良好であるため好ましい。但しリペレット化した場合は、フィルム物性に問題がなければ、上記範囲である必要はなく、任意の配合比率で混合することが可能である。
このようにして得た未延伸セルロースアシレートフィルムは、Reが0〜20nm,Rthが0〜80nmであることが好ましく、より好ましくはReが0〜10nm,Rthが0〜60nm、さらに好ましくはReが0〜10nm,Rthが0〜30nmである。Re、Rthは各々面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)で光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthはセルロースアシレートフィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定する。その測定されたレタデーション値(Re)と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
未延伸セルロースアシレートフィルムは、製膜方向(長手方向)とフィルムのReの遅相軸とのなす角度θが、0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。
光弾性係数はMD、TDとも13×10-13(cm2/dyn)〜25×10-13(cm2/dyn)が好ましく、より好ましくは14×10-13(cm2/dyn)〜20×10-13(cm2/dyn)である。
全光透過率は90%〜100%が好ましい。ヘイズは好ましくは0〜1%であり、より好ましくは0〜0.6%である。
厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、さらに好ましくは0%〜2%である。
引張り弾性率は1.5kN/mm2〜3.5kN/mm2が好ましく、より好ましくは1.8kN/mm2〜2.6kN/mm2である。破断伸度は3%〜300%が好ましい。
40℃・相対湿度90%での透水率は300g/m2・日〜1000g/m2・日が好ましく、さらに好ましくは500g/m2・日〜800g/m2・日である。25℃・相対湿度80%での平衡含水率は1質量%〜4質量%が好ましく、さらに好ましくは1.5質量%〜2.5質量%である。
熱膨張係数はMD、TDとも50ppm/℃〜180ppm/℃が好ましく、より好ましくは100ppm/℃〜160ppm/℃である。湿度熱膨張係数はMD、TDとも40ppm/℃〜90ppm/℃が好ましく、より好ましくは50ppm/℃〜80ppm/℃である。
溶融流延で製膜したセルロースアシレートフィルムには、溶液流延で製膜したフィルムと異なり、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、ブタノールなどの有機溶剤がフィルム中に含まれていない。すなわち、溶融流延で製膜することによって、フィルム中の残留溶剤量を0.01質量%以下に抑えることができる。
(1)延伸
製膜したセルロースアシレートフィルムを、縦延伸、横延伸することも好ましい。縦延伸、横延伸はいずれか一方だけを実施してもよいし、両方実施してもよい。また縦延伸、横延伸は各々1回で行ってもよく、複数回に亘って実施してもよく、同時に縦、横に延伸してもよい。未延伸フィルムを延伸することによって、Re、Rthを制御することもできる。
延伸温度はTg〜(Tg+50℃)が好ましく、さらに好ましくは(Tg+5℃)〜(Tg+20℃)である。好ましい延伸倍率は少なくとも一方向に1%〜300%、より好ましくは3%〜200%である。一方の延伸倍率を他方より大きくして延伸するほうがより好ましく、小さい方の延伸倍率は1%〜30%が好ましく、より好ましくは3%〜20%であり、大きいほうの延伸倍率は30%〜300%、より好ましくは40%〜200%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここでいう延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
このような延伸はニップロール、テンター等を用いて実施することが好ましい。また、特開2000−37772号公報、特開2001−113591号公報、特開2002−103445号公報等の各公報に記載の同時2軸延伸法を用いてもよい。
延伸後のセルロースアシレートフィルムのRe、Rthは下式を満足することが好ましい。
Rth≧Re
200≧Re≧0
500≧Rth≧30
Rth≧Re×1.2
100≧Re≧20
350≧Rth≧80
延伸後のセルロースアシレートフィルムの厚みは15μm〜200μmが好ましく、より好ましくは40μm〜140μmである。厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、さらに好ましくは0%〜1%である。
延伸セルロースアシレートフィルムの物性は以下の範囲が好ましい。
引張り弾性率は1.5kN/mm2以上3.0kN/mm2未満が好ましく、より好ましくは1.8kN/mm2〜2.6kN/mm2である。
破断伸度は3%〜100%が好ましく、より好ましくは8%〜50%である。
Tgは95℃〜145℃が好ましく、より好ましくは105℃〜135℃である。
80℃1日での熱寸法変化は縦、横両方向とも0%〜±1%が好ましく、さらに好ましくは0%〜±0.3%である。
40℃・相対湿度90%での透水率は300g/m2・日〜1000g/m2・日が好ましく、さらに好ましくは500g/m2・日〜800g/m2・日である。
25℃・相対湿度80%での平衡含水率は1質量%〜4質量%が好ましく、さらに好ましくは1.5質量%〜2.5質量%である。
ヘーズは0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜1%以下である。全光透過率は90%〜100%が好ましい。
本発明の未延伸・延伸セルロースアシレートフィルムは結晶性を示し、示差熱分析計(DSC)において170℃〜240℃に結晶融解に起因する吸熱ピークが現れる。結晶融解熱は7J/g〜20J/gが好ましい。
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行なうことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、さらにまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などが挙げられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は上記表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
上記の未延伸、延伸セルロースアシレートフィルムや、これらに上記の表面処理を施したフィルムは、そのまま単独で使用してもよいし、さらにこれらと他のフィルムや素子を組み合わせて使用してもよい。中でも、本発明のセルロースアシレートフィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせて使用することが好ましい。特に好ましいのが、偏光膜の付与、光学補償層の付与、反射防止層の付与であり、これによって、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムが提供される。
現在、市販の偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシル基)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行)58頁に記載の化合物が挙げられる。
詳細な偏光板の作製方法および偏光板特性は特開2005−128520号公報の段落番号[0008]〜[0020]、特開2005−266222号公報の段落番号[0007]〜[0013]、特開2005−138375号公報の段落番号[0083]〜[0113]、特開2006−2026の段落番号[0142]〜[0145]、特開2006−45500の段落番号[0109]〜[0111]に記載するものが好ましく用いることができる。
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、セルロースアシレートフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体上に設けて成る。屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは上記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
本発明のセルロースアシレートフィルム、並びに、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた本発明の偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムは、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。以下にこれらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。これらのモードのうち、本発明のセルロースアシレートフィルム、偏光板および光学補償フィルムは特にTN、STN、VA、IPSモードの液晶表示装置に好ましく用いられる。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型および半透過型のいずれでもよい。
カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の位相差板の支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置とについては、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号および特開平9−26572号の各公報の他、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示 装置の位相差板の支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360°の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許第4,583,825号、同5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償板や光学補償板の支持体として用いてもよい。または偏光板の保護フィルムとして特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に面内に水平に配向しているのが特徴であり、これが電圧印加の有無で液晶の配向方向を変えることでスイッチングするのが特徴である。具体的には特開2004−365941号公報、特開2004−12731号、特開2004−215620号公報、特開2002−221726号公報、特開2002−55341号公報、特開2003−195333号公報に記載のものなどを使用できる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償板や光学補償板の支持体として用いてもよい。または偏光板の保護フィルムとして特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の位相差板としても有利に用いられる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開第00/65384号パンフレットに記載がある。
本発明の透明ポリマーフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置とについては、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
以下において、セルロースアシレートペレットおよびセルロースアシレートフィルムの測定方法と評価方法ついて記載する。本出願に記載される測定値は、以下に記載される方法により測定されたものである。
セルロースアシレートフィルムの全幅に亘り25mm幅でサンプリングしたTDサンプルと、幅方向中央部を35mm幅で2m長サンプリングしたMDサンプルを用意した。次に、TDサンプル、MDサンプルの7mm×7mmの範囲を連続的に表面形状・粗さ測定器(Zygo社製 NewView 6000型)で測定し、そのサンプル中に含まれるスジの深さ、高さ、幅を測定した。最大深さまたは最大高さが0.5μm以下および最小幅が500μm以上のスジについて、本数を以下のようにして測定した。また、最大深さまたは最大高さが0.5μmより大きいか、または最小幅が500μm未満であるスジについても、本数を以下のようにして測定した。
該フィルム(製膜全幅×長手方向30cm)を白色スクリーンの前に10mmの間隔を空け平行に設置し、このフィルムの中央部から32.5°の方向に1m離して設置したスライド投影機(例えばキャビン工業(株)製Color CabinIII)から投光し、スクリーンに投影された製膜方向(MD)に平行なスジ(光の明暗)を全幅に亘って数え、幅方向1cmあたりの本数を求めた。
上記(1)のフィルム(製膜全幅×長手方向30cm)を白色スクリーンの前に10mmの間隔を空けて平行に設置し、このフィルムの中央部から32.5°の方向に1m離して設置したスライド投影機(例えばキャビン工業(株)製Color CabinIII)から投光し、投影像中の明点数を求めた。
セルロースアシレートフィルムを230℃で30分間処理した後の水酸基量(DsOH30)と、前記処理前の水酸基量(DsOH)を下記の方法で測定して、比(DsOH30/DsOH)を求めた。
セルロースアシレートの水酸基量は、ASTM D−817−91に準じた方法(セルロースアシレートを完全に加水分解し、遊離したカルボン酸またはその塩をGC、LCで定量)で測定した。
プレート型レオメーター(例えばPhysica社製 MCR301型)を用い、230℃で、製膜したセルロースアシレートフィルムをセットしてから5分後に、歪1%、周波数:0.1〜1000(Hz)の範囲で、貯蔵弾性率、損失弾性率を測定し、その二つが等しくなる角周波数ωを求めた。
また、前記装置、測定条件、サンプルを用いて、せん断速度1.00×10-2における溶融粘度η0を求めた。
なお、測定サンプルには、溶融製膜したフィルムを用いたが、溶融粘度η0が200〜3000Pa・sであれば、製膜時における溶融押し出し機内のセルロースアシレートの混練性が適当となり、本発明の効果を調べることができる。
(セルロースアセテートプロピオネートの合成)
セルロース(広葉樹パルプ)10質量部に、酢酸0.1質量部、プロピオン酸2.7質量部を噴霧した後、1時間室温で保存した(前処理)。別途、無水酢酸1.2質量部、プロピオン酸無水物61質量部、硫酸0.7質量部の混合物を調製し、−10℃に冷却後に、前記前処理を行ったセルロースと反応容器内で混合した(工程1)。
その後、70℃の純水にて、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行った(工程4)。
(セルロースアセテートプロピオネートの合成)
攪拌装置および冷却装置を付けた反応容器に、セルロース(パルプ)80質量部、酢酸33質量部を取り、60℃で4時間処理してセルロースを活性化した。無水酢酸33質量部、プロピオン酸518質量部、プロピオン酸無水物536質量部、硫酸4質量部を混合し、−20℃に冷却してから反応容器に添加した。
(セルロースアセテートブチレートの合成)
攪拌装置および冷却装置を付けた反応容器に、セルロース(リンター)200質量部、酢酸100質量部を取り、60℃で4時間処理することによりセルロースを活性化した。酢酸161質量部、無水酢酸449質量部、酪酸742質量部、酪酸無水物1349質量部、硫酸14質量部を混合し、−20℃に冷却してから反応容器に添加した。
1.未延伸セルロースアシレートフィルムの製膜
(1)セルロースアシレートの調製
合成例1〜3の方法において、アシル化剤の組成、アシル化の反応温度および時間、部分加水分解の温度および時間を変化させることにより、表1に記載される種々のセルロースアシレートを同様に合成した。目的とするアシル置換度に応じて、セルロースにアシル化剤(酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、プロピオン酸無水物、酪酸、酪酸無水物から単独または複数を組み合わせて選択される)、ならびに触媒としての硫酸を混合し、反応温度を40℃以下に保ちながらアシル化を実施した。原料となるセルロースが消失してアシル化が完了した後、さらに40℃以下で加熱を続けて、所望の重合度となるように調整した。酢酸水溶液を添加して残存する酸無水物を加水分解した後、60℃以下で加熱を行うことで部分加水分解を行い、所望の全置換度に調整した。残存する硫酸を過剰量の酢酸マグネシウムにより中和した。酢酸水溶液から再沈殿を行い、さらに、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行い、表1に記載のアシル基の種類、置換度、重合度の異なるセルロースアシレートを得た。
(2−1)セルロースアシレートのペレット化
前記セルロースアシレート100質量部に、安定剤(住友化学(株)製スミライザーGP)0.3質量部、二酸化珪素粒子(アエロジルR972V)0.05質量部、紫外線吸収剤(2−(2’−ヒドロキシ−3’、5−ジ−tert−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール0.05質量部、2、4−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン0.1質量部)を混合した。
これらを100℃で3時間乾燥して含水率を0.1質量%以下にした後、2軸混練押出機を用いて210℃で溶融した後、60℃の温水中に押し出してストランドとした。その後、裁断し、直径3mm長さ5mmの円柱状のペレットに成形した。
前記方法で調製したセルロースアシレートペレットを、露点温度−40℃の脱湿風を用いて100℃で5時間乾燥し含水率を0.01質量%以下にした。これを80℃のホッパーに投入し、180℃(入口温度)から230℃(出口温度)に調整した溶融押出し機で溶融した。なお、これに用いたスクリューの直径は60mm、L/D=32、圧縮比4であった。溶融押出機から押出された樹脂はギアポンプで一定量計量され送り出されるが、この時ギアポンプ前の樹脂圧力が10MPaの一定圧力で制御できる様に、押出機の回転数を変更させた。ギアポンプから送り出されたメルト樹脂は濾過精度5μmmのリーフディスクフィルターにて濾過し、スタティックミキサーを経由してスリット間隔0.8mm、230℃のハンガーコートダイから、キャスティングドラム(CD)上に表1記載の条件でダイから押出した。これを(Tg−5℃)、Tg、(Tg−10℃)に設定した3連のキャストロール上に押し出し、最上流側のキャストロールに表1記載の条件でタッチロールを接触させ、未延伸フィルムを製膜した(ここでTgはメルトのガラス転移温度である)。なお、タッチロールは特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い、(Tg−5℃)に調温した。但し薄肉金属外筒厚みは2mm、押え圧は1MPaで行った。
固化したメルトをキャスティングドラムから剥ぎ取り、巻き取り直前に両端(全幅の各5%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、30m/分で幅1.5m、長さ3000mの未延伸フィルムを得た。
このようにして得た各未延伸セルロースアシレートフィルムの水酸基量、pH、粘弾性特性を測定した。
得られた各セルロースアシレートフィルムについて、それぞれスジの本数、明点数、230℃・30分処理前後の水酸基量比(DsOH30/DsOH)、230℃・せん断速度1.0×10-2(sec-1)における溶融粘度(η0(230℃))、230℃・歪1%における貯蔵弾性率と損失弾性率とが等しくなる角周波数(ωG'=G"(230℃))を測定して、結果を表1に記載した。なお、フィルム中の残留溶剤量はいずれのフィルムにおいても0.01質量%以下であった。
(1)セルロースアシレートフィルムの鹸化
上で製膜した未延伸フィルムに対して、下記の浸漬法で鹸化を行った。また、下記の塗布鹸化も実施したが浸漬鹸化と同様の結果を得た。
a)浸漬鹸化
60℃に調温した1.5mol/LのNaOH水溶液を鹸化液として用いて、未延伸フィルムを2分間浸漬した。その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、水洗浴を通した。
b)塗布鹸化
iso−プロパノール80質量部に水20質量部を加え、これにKOHを1.5mol/Lとなるように溶解して60℃に調温したものを鹸化液として用いた。この鹸化液を60℃の未延伸フィルム上に10g/m2で塗布し、1分間鹸化した。その後、50℃の温水を10L/m2・分で1分間スプレーして洗浄した。
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸して厚み20μmの偏光膜を調製した。
このようにして得た偏光層と、前記鹸化処理したセルロースアシレートフィルムとを、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として用いて、偏光軸とセルロースアシレートフィルムの長手方向とが45°となるように張り合わせた。このようにして作製した偏光板を特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置に取り付け、最も投影平行スジが見え易い斜め32°から目視評価し表示ムラの発生度合いを1(良)〜5(悪)の5段階で評価して、結果を表1に記載した。実用上耐えうるレベルは、1〜2である。スジ(ダイライン)の本数が本発明の範囲外のフィルムは極端に表示ムラが悪かった。
前記偏光板を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置に用いた。さらに、本発明のフィルムを用いて低反射フィルムを作製し、これらの液晶表示装置の最表層に貼り目視評価を行ったところ、良好な視認性能が得られた。
h 高さ
W1 幅
W2 幅
1 セルロースアシレートフィルム
2 スジ(ダイライン)
X 製膜方向
Y 幅方向
Claims (7)
- 溶融流延によって製膜されたセルロースアシレートフィルムであって、前記フィルムの製膜方向に平行であり且つ最大深さまたは最大高さが0.5μm以下および最小幅が500μm以上のスジが、前記フィルムの幅方向の長さ1cm当たり10本以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
- 残留溶剤量が0.01質量%以下であるセルロースアシレートフィルムであって、前記フィルムの長手方向に平行であり且つ最大深さまたは最大高さが0.5μm以下および最小幅が500μm以上のスジが、前記フィルムの幅方向の長さ1cm当たり10本以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
- 点光源からの照射光で前記フィルムを壁面に投影した際に、明点となる異物の数が0.1〜50個/cm2であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記フィルムを230℃で30分間処理した後の水酸基量(DsOH30)と、前記処理前の水酸基量(DsOH)との比(DsOH30/DsOH)が、0.9以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記フィルム20gをジクロロメタン80gに溶解し、前記ジクロロメタンに溶解した前記フィルムを純水10mlで抽出した抽出水溶液のpHが5.0〜8.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 230℃および歪1%における貯蔵弾性率と損失弾性率とが等しくなる角周波数(ωG'=G"(230℃))と、230℃およびせん断速度1.0×10-2(sec-1)における溶融粘度(η0(230℃))とが、下記式を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
100(1/s)≦ωG'=G"(230℃)
200(Pa・s)≦η0(230℃)≦3000(Pa・s) - 請求項1〜6のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法であって、セルロースアシレートを含む組成物を210℃〜245℃で溶融し、且つ、1〜10分の滞留時間で製膜してセルロースアシレートフィルムを製造する工程を含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
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