JP2010057517A - リコンビナーゼ発現細胞 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、ヒトを含む動物細胞でのFLPタンパク質の翻訳効率が増強された改変塩基配列を有するDNAを提供することに在る。
【解決手段】酵母由来FLPをコードする塩基配列において、FLP蛋白質のアミノ酸をコードするコドンを置換することにより、酵母において好適に用いられるコドンの比率がヒトにおいて好適に用いられるコドンの比率に変更されることによる、ヒトを含む動物細胞でのFLPタンパク質の翻訳効率が増強された改変塩基配列を有するDNAが得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、リコンビナーゼ発現細胞およびかかる細胞を用いる組換えウイルスベクターの作製方法に関する。
動物細胞への遺伝子導入用または遺伝子治療用のウイルスベクターとして、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス等が用いられている。これらのウイルスベクターを遺伝子治療に用いる場合、その安全性の観点から、ウイルスにコードされる蛋白質がなるべく発現しない構造のベクターが望まれている。
レトロウイルスベクターにおいては、ウイルスの増殖に必要なすべての蛋白質を供給するウイルス産生細胞が樹立されている。一方、アデノウイルスベクターやヘルペスウイルスベクターでは、ウイルスにコードされる蛋白質の種類の多さおよびその蛋白質の細胞毒性の問題から、ウイルスの複製に必要なすべての蛋白質を供給するウイルス産生細胞は樹立されていない。その代替法として、これらのウイルスベクター作製においては、ヘルパーウイルスを使用する方法が用いられている。その方法は、目的の遺伝子を挿入したベクター側のウイルスは、ウイルスの増殖に必須の遺伝子の一部またはすべてを除いてあるため、ベクター単独では増殖できないが、ヘルパーウイルスからウイルスの増殖に必要なウイルス蛋白質を供給することにより、ヘルパーウイルスとともにベクターも増殖させるというものである。このヘルパーウイルスを用いる方法により、アデノウイルスベクター(非特許文献1)やヘルペスウイルスベクター(非特許文献2)が作製されている。
ヘルパーウイルスを用いるウイルスベクター作製法での課題の一つは、目的ウイルスベクターに対してヘルパーウイルスの量をいかに減らすかという点である。そのため、アデノウイルスベクターでは、パッケージング配列の変異株由来のヘルパーウイルスを用いてヘルパーウイルスDNAのウイルス粒子(virion)へのパッケージング効率を下げ、ヘルパーウイルスの増殖速度を遅くした工夫や(非特許文献3)、ヘルパーウイルスのパッケージング配列の両側にリコンビナーゼCreの認識配列であるloxP配列を挿入し、このヘルパーウイルスをリコンビナーゼCreを発現する細胞に感染させることによりパッケージング配列を除く工夫(非特許文献4)等がなされている。
特に、後者の方法において、リコンビナーゼCreを発現する細胞は重要であり、Creを恒常的に発現するいくつかの細胞株が報告されている(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7)。しかし、リコンビナーゼCreは、動物細胞に対して細胞毒性を有するため、恒常的にCreを発現する細胞株は樹立できるものの、高発現プロモーターの制御下にCreを大量に発現する安定な細胞株は樹立しにくいと考えられている(非特許文献8)。
Mitani et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. Vol.92. 3854-3858 (1995) Banerjee et. al., Nature Medicine. Vol.1, 1303-1308 (1995) Kochanek et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. Vol.93. 5731-5736 (1996) Parks et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. Vol.93. 13565-13570 (1996) Parks et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. Vol. 93. 13565-13570 (1996) Chen et. al., Somat. Cell Mol. Genet. Vol. 22. 477-488 (1996) Lieber et. al., J. Virol. Vol.70. 8944-8960 (1996) Lieber et. al. J. Virol. Vol.70. 8944-8960 (1996)
本発明の目的は、種々のウイルスベクターの作製のために用いる、Creを高発現する細胞を提供することにある。本発明のさらなる目的は、かかる細胞を使用して、より効率的な組換えウイルスベクターの作製方法を提供することにある。
Cre蛋白質に限らず、細胞毒性を有する蛋白質を恒常的に発現する細胞株を樹立しようとする場合、一般に高発現プロモーター下流に当該蛋白質遺伝子を組み込んだプラスミド等で細胞を形質転換しても、当該蛋白質を高レベルで安定に発現する細胞株は得にくく、当該蛋白質の毒性が細胞にとって許容レベル以下の量の蛋白質を発現する細胞株しか得られないことが多い。
一方、薬剤等により蛋白質の発現を誘導するプロモーターも知られている。しかし、一般にこのような誘導型のプロモーターは、恒常的に発現する強力なプロモーターに較べれば、そのプロモーター活性は弱いことが知られている。
そこで、本発明者らは、強力なプロモーターからCre蛋白質を発現する安定な細胞株を得るための手段として、プロモーターとCre遺伝子との間にリコンビナーゼFLPの認識配列およびスタッファーDNAを挿入することにより、Cre蛋白質の発現を制御することに成功した。この細胞株は、リコンビナーゼFLPが存在しない場合にはCre蛋白質がほとんど発現しないため、Creの細胞毒性が回避でき、FLP存在下では強力なプロモーターからCre蛋白質が高発現する。
すなわち、本発明の要旨は、
(1)リコンビナーゼFLPの存在下でFLP依存的にリコンビナーゼCreを発現する細胞、
(2)前記(1)記載の細胞に、リコンビナーゼFLPを導入することによりリコンビナーゼCreを発現させる方法、
(3)リコンビナーゼFLPの存在下でFLP依存的にリコンビナーゼCreを発現する細胞を用いることを特徴とする、組換えウイルスベクターの製造方法、
(4)前記(2)および前記(3)記載の方法を用いた組換えアデノウイルスベクターの製造方法、
ならびに
(5)酵母由来FLPをコードする塩基配列において、FLP蛋白質のアミノ酸をコードするコドンを置換することにより、酵母において好適に用いられるコドンの比率がヒトにおいて好適に用いられるコドンの比率に変更されることによる、ヒトを含む動物細胞でのFLPタンパク質の翻訳効率が増強された改変塩基配列を有するDNA、
に関する。
本発明により、組換えウイルスベクター、特に、組換えアデノウイルスベクターの製造に有用な細胞が提供される。本発明により、組換えウイルスベクターの製造が効率的に行なわれ、遺伝子治療の分野で利用可能な組換えウイルスベクターの供給が容易になる。更に、本発明により、ヒトを含む動物細胞でのFLPタンパク質の翻訳効率が増強された改変塩基配列を有するDNAが提供される。
図1は、プラスミドpCALNLZ(A)、プラスミドpUFNF(B)およびプラスミドpCALNL5(C)の構造を示す模式図である。図中、CA ProはCAGプロモーター、Neoはネオマイシン耐性遺伝子、SpAはSV40ポリA配列、GpAはβ−グロビンポリA配列を示す。斜線を引いた箱内の部分はloxP配列を、黒塗り部分はFRT配列を示す。Apはアンピシリン耐性遺伝子、oriはプラスミドの複製起点を示す。Xは制限酵素XhoI部位を、Mは制限酵素MluI部位を示す。 図2は、プラスミドpCAFNFNCreの構造を示す模式図である。NCreは核移行シグナルを有するCre遺伝子を示す。 図3は、プラスミドpxCAFLP(A)、プラスミドpxCAwt(B)およびプラスミドpxCALNLZ(C)の構造を示す模式図である。太線部は、アデノウイルスゲノム(約0.4kb)を示す。 図4はヒト型FLPの塩基配列の例を示す。図中左欄の数値は、翻訳開始点の最初の塩基を1番とした時の塩基番号を示す。小文字は酵母の配列から置換した塩基を示し、下線部はアミノ酸配列を置換した箇所を示す。
本発明において、「リコンビナーゼFLP」とは、酵母(Saccharomyces cerevisiae)の2ミクロンDNAによりコードされ、2つのFLPの認識配列(FRT)間の部位特異的組換え反応を行なう酵素である(Babineau et. al.,J. Biol. Chem., Vol. 260, 12313-12319 (1985)) 。FLPは、2つの同一方向のFRTに挟まれたDNAを切り出すことが可能である。FRTは34bpからなる塩基配列 (Jayaram et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. Vol. 82. 5875-5879 (1985))であり、本発明においては、「FLPの認識配列」とは、FRTを含む塩基配列であれば特に限定されない。
本発明において、「リコンビナーゼFLPの存在下でFLP依存的にリコンビナーゼCreを発現する」とは、リコンビナーゼFLPの非存在下ではリコンビナーゼCreが発現できないように構築されたDNAをゲノム中に有する細胞が、リコンビナーゼFLPの存在下では、2つの同一方向のFRTに挟まれたDNAを切り出すことにより、リコンビナーゼCreの発現を開始することをいう。
本発明において「リコンビナーゼCre」とは、大腸菌のバクテリオファージP1がコードし、バクテリオファージP1内のloxP配列(Abremskiら、J. Biol. Chem. 1509 −1514 (1984) ;および Hoessら、Proc. Natl. Acad. Sci. Vol. 81、1026−1029 (1984))を基質とする、特異的なDNA組換え酵素であり、loxP配列を認識し、この配列間でDNAの切断、鎖の交換と結合の全工程を行なう。即ち、loxP配列がリコンビナーゼCreの認識配列となる。
リコンビナーゼCre遺伝子は、バクテリオファージP1のDNAのリコンビナーゼ遺伝子をコードする部分を、例えば、ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)法を用いて増幅してプラスミドにクローニングしたもの(例えば、pUCCre(特開平8−84589号公報))から適当な制限酵素により切り出して使用することができる。
本発明においては、リコンビナーゼCre遺伝子配列の5’側または3’側の末端に核移行シグナル配列を接続させていることが好ましい。これは、細胞質で合成されたリコンビナーゼCreがその認識配列であるloxP配列を有するDNAに効果的に作用するには、核内に移行する必要があり、核移行シグナル配列はこれを促進する(Daniel Kalderon ら、Cell. 39、499-509 (1984)) からである。核移行シグナル配列を有するCre遺伝子は、プラスミドpSRNCre(Kanegae Y. et. al., Nucleic Acid Res., Vol.23, 3816-3821 (1995)) 等から得ることができる。
本発明の細胞のゲノムに存在する前記構築DNAは、具体的には、プロモーター、リコンビナーゼFLPの認識配列、スタッファー配列、リコンビナーゼFLPの認識配列、リコンビナーゼCre遺伝子配列を上流からこの順に含む。
前記プロモーターとしては、哺乳動物細胞で機能する限り特に限定されないが、その例として、SRαプロモーター(Molecular and Cellular Biology, Vol.8, 466-472 (1991)) 、EF−1αプロモーター(Gene, Vol.91, 217-223 (1990))、CMVプロモーター等が挙げられる。
しかし本発明には、CAGプロモーターが特に有利に用いられる。このプロモーターは、サイトメガロウイルスエンハンサー、ニワトリβ−アクチンプロモーター、ウサギβグロビンのスプライシングアクセプターおよびポリA配列からなるハイブリドプロモーター(CAGプロモーター)であり、高発現ベクターとして特開平3−168087号公報に開示されている。その調製は同公報に記載されているpCAGGS(特開平3−168087号公報、13頁20行〜20頁14行および22頁1行〜25頁6行)から制限酵素SalI、HindIII で切り出すことにより行なうことができ、本発明に利用することができる。また、市販のプラスミドから適当な制限酵素で切り出して用いることもできる。
リコンビナーゼFLPの認識配列とは、前記したように、FRTを含む塩基配列であれば特に限定されない。当該配列は、DNA合成装置により合成して用いることができる。
前記スタッファー配列とは、2つの同一方向のリコンビナーゼFLPの認識配列に挟まれた塩基配列をいい、FLPの存在下では環状に切り出される配列である。
スタッファー配列は、Cre遺伝子の発現を阻止する配列であれば特に制限はないが、細胞をトランスフェクションして目的のDNAが組み込まれたかどうかを確認することができるように、薬剤耐性遺伝子等のマーカー遺伝子を含有することが好ましく、哺乳動物細胞の選択に好適に用いられるネオマイシン耐性遺伝子がより好ましい。また、スタッファー配列は、薬剤耐性遺伝子を効率的に発現させ、下流に位置するリコンビナーゼCre遺伝子が発現しないように、薬剤耐性遺伝子の下流にポリA配列をも含むことがさらに好ましい。ポリA配列としては、特に限定されるものではないが、SV40由来のポリA配列、ウサギβグロビンのポリA配列等が挙げられる。これらの薬剤耐性遺伝子およびポリA配列は、市販のプラスミドから入手可能である。
リコンビナーゼCre遺伝子の下流に用いられるポリA配列としては、特に限定されるものでないが、ウサギβグロビン由来のものが好ましい。
本発明の細胞を調製するために用いる細胞としては、目的のウイルスベクターの増殖に適した細胞であれば特に限定されない。
本発明の細胞をアデノウイルスベクター作製に用いる場合は、アデノウイルスE1A遺伝子を発現する細胞を用いることが望ましい。E1A遺伝子を発現する細胞は、既存の方法(Imler et. al.Gene Ther. Vol. 3. 75-84 (1996)) 等により作製できるが、E1A遺伝子を持続的に発現しているヒト胎児腎由来細胞株293細胞(ATCC CRL1573)がより好ましい。しかしながら、当該細胞がE1A遺伝子のみを発現している必要はなく、他のアデノウイルス遺伝子やその他の遺伝子を発現していてもよい。
以下、293細胞を用いて、リコンビナーゼFLPの存在下でFLP依存的にリコンビナーゼCreを発現する細胞の調製方法の一例を説明する。
〔1〕34bpのFRT配列を含有し、制限酵素SwaI部位を導入するために合成された54bpのDNA(配列番号:1)を同じ方向に2個含み、かつ、2個のFRT配列間にSwaI部位を有するプラスミドを構築する。以下、本発明においては、SwaI部位を導入したプラスミド等が好適に用いられる。
〔2〕プラスミドpCALNLZ(Y. Kanegae et. al., Gene, Vol.181, 207-212 (1996) 、図1A)) からネオマイシン耐性遺伝子とSV40のポリA配列を含む断片を調製し、前記〔1〕で得られたプラスミドのSwaI部位に挿入して、当該断片の両端にFRT配列を有するプラスミドpUFNF(図1B)を得る。
〔3〕CAGプロモーターおよびウサギβ−グロビンポリA配列の供給源であるプラスミドpCALNLw(Kanegae Y. et. al., Gene, Vol.181, 207-212 (1996))のSwaI部位に27塩基の合成ポリリンカー(配列番号:2) を挿入し、プラスミドpCALNL5(図1C)を得る。前記〔2〕で得られたpUFNFからFRT配列/ネオマイシン耐性遺伝子/SV40のポリA配列/FRT配列を含む断片を調製し、前記pCALNL5由来のCAGプロモーターを含む断片と連結し、プラスミドpCAFNF5を得る。このプラスミドは、pCALNL5の2つのloxP配列それぞれがFRT配列に置換された構造を有する。
〔4〕プラスミドpSRNCre(Kanegae Y. et. al., Nucleic Acid Res., Vol.23, 3816-3821 (1995)) から核移行シグナルを付加したCre遺伝子(NCre)を含む断片を調製し、前記〔3〕で得られたpCAFNF5のSwaI部位に挿入し、プラスミドpCAFNFNCre(図2)を得る。
〔5〕293細胞に前記〔4〕で得られたpCAFNFNCreをトランスフェクション(リン酸カルシウム共沈法)後、G418(ネオマイシン誘導体)耐性細胞をシングルクローン化し、本発明の細胞(293FNCre細胞)を得る。
このようにして得られた293FNCre細胞等の本発明の細胞は、当該細胞にリコンビナーゼFLP遺伝子またはFLP蛋白質を導入することにより、リコンビナーゼCreを高発現することができる。リコンビナーゼFLP遺伝子の導入方法としては、プラスミドを直接またはトランスフェクションにより導入する方法、ウイルスベクターを用いる方法、リポソーム法などが挙げられる。293FNCre細胞等のアデノウイルスの増殖に適した細胞の場合は、FLP遺伝子はアデノウイルスベクターを用いて導入するのがより好ましい。
293FNCre細胞等の本発明の細胞は、ヘルパーウイルスを用いるウイルスベクターの作製に利用できる。293FNCre細胞を用いた組換えアデノウイルスベクターの作製を例として、以下にその具体的な方法を示す。
アデノウイルスの逆方向反復配列(inverted terminal repeat: ITR)とパッケージング配列のみを有し、他のすべてのアデノウイルスゲノムが外来遺伝子に置換された組換えアデノウイルスベクター(目的ウイルス)は、それ単独では増殖することができないため、ヘルパーウイルスの共存下に増殖させる。その際、ヘルパーウイルスの増殖を抑制するため、ヘルパーウイルスのパッケージング配列の両端にloxP配列を挿入しておき、このヘルパーウイルスと目的ウイルスまたは目的ウイルスのDNAを含むプラスミドとをCre発現293細胞に感染またはトランスフェクションすることにより、ヘルパーウイルスのパッケージング配列を欠失させ、その増殖を抑制し、目的ウイルスの割合を高める試みがなされている(Parks et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. Vol.93. 13565-13570 (1996))。この場合、Creの発現量が高いほど効率的にヘルパーウイルスのパッケージング配列が除かれ、目的ウイルスの割合が高くなると考えられる。
本発明の293FNCre細胞は、FLP発現組換えアデノウイルスと共に用いることにより、Cre発現293細胞を代替でき、恒常的にCreを発現する293細胞よりも大量のCreを発現することができる。したがって、Cre発現293細胞よりも効率的にヘルパーウイルスのパッケージング配列を除くことができ、目的ウイルスの割合を高めることができる。その際、FLP発現アデノウイルス自体のパッケージング配列の両端にloxP配列を挿入しておけば、このアデノウイルスはFLPを供給するだけでなく、ヘルパーウイルスとして作用させることができる。
本発明の293FNCre細胞等の細胞は、組換えアデノウイルスベクター作製だけでなく、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの作製にも用いることができる。以下に293FNCre細胞を用いたAAVベクター作製の例を挙げる。
AAVベクターの作製には、AAVのベクタープラスミドと共に、ヘルパーウイルスとしてアデノウイルスを293細胞等の細胞に感染させる必要がある(Berns et. al., Adv. Virus. Res., Vol. 32, 243-306 (1987))。ヘルパーウイルスとして用いたアデノウイルスは、AAVベクター生成後に、熱失活等の操作によりAAVベクターから除く必要があるため、ヘルパーウイルス自体は増殖しない方が望ましい。
本発明の293FNCre細胞をAAV産生細胞として、パッケージング配列の両端にloxP配列を挿入したFLP発現アデノウイルスをヘルパーウイルスとして用いることにより、ヘルパーウイルスはAAVの増殖に必要な蛋白質を供給するがそれ自体は感染粒子にパッケージングされないため、効率的にAAVベクターを製造することができる。
さらに、本発明の細胞は、ヘルパーウイルスを用いる他のウイルスベクター作製にも応用できる。その例として、ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。ヘルペスウイルスの増殖に適した細胞を、293FNCre細胞と同様な方法で形質転換し、FLP依存的にCreを発現するようにしておく一方、ヘルパーウイルスは、パッケージング配列の両端にloxP配列を挿入しておく。目的遺伝子を有するベクタープラスミドをFLP依存的にCreを発現する細胞にトランスフェクションし、ヘルパーウイルスを感染させ、何らかの方法で細胞にFLPを発現させることにより、ヘルパーウイルスはパッケージング配列が除かれるため増殖せず、目的のベクターウイルスのみが得られる。細胞にFLP蛋白質を発現させる例として、ヘルパーウイルスにFLPの発現単位を挿入しておく方法が挙げられる。
また、リコンビナーゼFLPは、Creと同様のDNA組換え反応を行う酵素であるが、ヒトを含む細胞由来細胞にFLP遺伝子を導入しても、動物細胞の培養を行う通常の温度(37℃)では、FLP蛋白質が十分には産生されていない可能性が示されている。中野らの報告では、高発現プロモーターである前述のCAGプロモーター下流に連結したFLP遺伝子を、高発現ベクターであるアデノウイルスベクターに挿入し、当該ベクターを培養動物細胞に感染させても、FLP蛋白質が十分には産生されない可能性が示された(平成11年度日本癌学会発表演題番号2463)。FLP遺伝子の発現に用いたプロモーターは、高発現プロモーターであるCAGプロモーターであることより、FLP蛋白質が十分には産生されない原因は、転写段階ではなく翻訳段階が律速になっていることが推測される。FLP遺伝子を動物培養細胞に導入することにより発現したFLP蛋白質を十分に機能させるためには、動物細胞でのFLP蛋白質の発現量を増加させることが必須である。
そこで、本発明者らは、酵母由来の蛋白質であるFLPのコドンを、酵母で好適に用いられるコドンの比率から、ヒトにおいて好適に用いられるコドンの比率に変更することにより、ヒトを含む動物細胞でのFLP蛋白質の翻訳効率を増強させることを考案した。すなわち、酵母由来FLPをコードする塩基配列において、FLP蛋白質のアミノ酸をコードするコドンを置換することにより、酵母において好適に用いられるコドンの比率がヒトにおいて好適に用いられるコドンの比率に変更されることによる、ヒトを含む動物細胞でのFLPタンパク質の翻訳効率が増強された改変塩基配列を有するDNAを見出した。
本発明において、「酵母において好適に用いられるコドンの比率」とは、各アミノ酸をコードする複数のコドンのうち、酵母の遺伝子における各コドンの使用頻度のことを示し、その値は既存の文献(Wada K. et. al., Nucleic Acids Res., Vol.18, Suppl. 2367-2411 (1990))などに開示されている。その具体例を表1に示す。表1の「酵母遺伝子標準値」は、上記文献に記載された酵母(S. cerevisiae)の遺伝子における各コドンの使用頻度をアミノ酸ごとに表示したものである。同様に、「ヒトにおいて好適に用いられるコドンの比率」とは、ヒト遺伝子での各コドンの使用頻度のことを示し、その具体的な値を表1の「ヒト遺伝子標準値」に示す。
本明細書において、「酵母において好適に用いられるコドンの比率」のことを単に「酵母型コドン」、「ヒトにおいて好適に用いられるコドンの比率」のことを単に「ヒト型コドン」と称する場合がある。
本発明において、「酵母において好適に用いられるコドンの比率がヒトにおいて好適に用いられるコドンの比率に変更される」とは、ある蛋白質のアミノ酸配列を変化させずに、その使用コドンを置換することにより、各コドンの使用頻度を表1の「ヒト遺伝子標準値」に近づけることである。「ヒト遺伝子標準値」に近づける割合に特に制限はなく、ヒト型コドンへの置換によりヒトを含む動物細胞でのFLP蛋白質の翻訳効率が増強するという特徴を満たせば良い。
本発明において、「ヒト型コドン」に置換したFLPの塩基配列の例(配列番号:5)を図4ならびに表1に示す。表1ならびに本明細書中で「酵母型FLP」とは酵母由来の本来の塩基配列を有するFLPを示し、「ヒト型FLP」とは、その塩基配列を「ヒト型コドン」に置換した塩基配列を有するFLPのことを示す。表1に示した「酵母型FLP」と「ヒト型FLP」とを例として、「酵母型コドン」から「ヒト型コドン」への置換について、さらに詳細に説明する。
例えば、システインには「TGT」と「TGC」の2種類のコドンが使用され、表1において、FLPには5個のシステインが存在し、酵母型FLPでは全て「TGT」のコドンが用いられている。この5個の「TGT」のコドンのうち3個を「TGC」のコドンに置換することにより、「TGT」コドンの割合は40%となり「ヒト遺伝子標準値」にほぼ等しくなる。この様にして、FLP蛋白質全体のアミノ酸のコドンを「ヒト遺伝子標準値」にできるだけ近づけることが、本発明の「ヒト型コドン」への置換である。
ただし、機械的に「ヒト遺伝子標準値」に近づけるようにコドンを置換するのではなく、例えば、同一アミノ酸が連続する場合には同一コドンを用いずに、2番目以降のアミノ酸のコドンを変え同一コドンが連続しないようにするなどの工夫も本発明に含まれる。
本発明の「ヒト型コドン」に置換したFLPは、さらにその5’末端をKozak配列に一致させるのが好ましい。Kozak配列とは、脊椎動物の遺伝子の翻訳開始点の前後に高頻度に認められる塩基配列のことであり、その詳細は既存の文献に開示されている(Kozak M., Nucleic Acids Res., Vol.9, 5233-5262 (1981)、Kozak M., J. Cell Biol., Vol. 108, 229-241 (1989)など)。
本発明の「ヒト型コドン」に置換したFLPは、さらに37℃での酵素活性を増加させるためのアミノ酸の置換を含んでいても良い。FLPの酵素活性の至適温度は30℃であり、動物細胞の培養を行う通常の温度(37℃)では、酵素活性が低下することが知られている(Buchholz F. et. al., ucleic Acids Res. Vol. 24. 4256-4262 (1996))。FLP蛋白質の37℃での酵素活性を増加させるための工夫としては、FLP蛋白質の4つのアミノ酸を他のアミノ酸に置換することにより、その活性を増加させたとの報告がなされている(Buchholz F, et. al., Nat. Biotechnol. Vol.16, 657-662 (1998))。より具体的には、FLPのアミノ酸配列の2番目がプロリンからセリンへ、33番目がロイシンからセリンへ、108番目がチロシンからアスパラギンへ、294番目がセリンからプロリンへ置換されている。表1ならびに図4に示した、本発明におけるヒト型FLPの例はこれら4アミノ酸の置換を含む。
次に、本発明のヒト型コドンに置換した塩基配列のFLPを含むDNAの調整法について、図4に示した塩基配列を有するヒト型FLPを例として述べる。図4の塩基配列に対応する30〜40塩基からなるDNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖を合成する。その際、両鎖が重なるような配列のDNAとしておく。また、プラスミドにクローニングするため、5’末端側にPstIサイト、3’末端側にKpnIサイトを付加しておく。ヒト型FLP遺伝子には、EcoRVならびにHindIIIサイトが各一ヶ所存在するので、PstI−EcoRV断片、EcoRV−HindIII断片、HindIII−KpnI断片に相当するDNAを各々アニーリング後別々のプラスミドにクローニングし、次いでこれらの断片を連結しFLP全長を含むプラスミドを構築する。
このようにして調製したヒト型FLP遺伝子を含むDNAは、動物細胞で発現可能な適当なプロモーター下流に連結後、プラスミドDNAの形でヒトもしくは動物細胞に遺伝子導入しても良いし、ウイルスベクター、好ましくはアデノウイルスベクターを用いて遺伝子導入しても良い。
ヒトもしくは動物細胞に遺伝子導入したFLP蛋白質の発現量の増加を確認する方法は、特に制限はなく、FLP蛋白質そのものの量を測定する方法、FLP蛋白質の機能を測定する方法などが挙げられる。FLP蛋白質そのものの量を測定する方法としては、抗FLP抗体を用いたウエスタンブロット法などが挙げられる。FLP蛋白質の機能を測定する方法としては、FLP蛋白質を含む細胞破砕液を酵素溶液として用いてFRT配列を含む基質DNAの組換え効率を測定する方法や、細胞にFLP遺伝子とともに基質DNAを同時に導入し、基質DNAが組換えを起こすことにより細胞に何らかの性質が現れるような測定方法を用いてもよい。後者の例として、プロモーター/FRT配列/ネオマイシン耐性遺伝子/ポリA配列/FRT配列/lacZ遺伝子/ポリA配列の構造を有する基質DNAを用い、lacZ遺伝子産物であるβ−ガラクトシダーゼの活性を測定する方法が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではなく、本発明の技術分野における通常の変更ができることは言うまでもない。なお、実施例中のファージ、プラスミド、DNA、各種酵素、大腸菌、培養細胞等を取り扱う諸操作は、特に断らない限り、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual, T. Maniatis ら編、第2版 (1989), Cold Spring Harbor Laboratory」に記載の方法に準じて行なった。
本実施例で用いたコスミドベクターpAxCAwt(Kanegae Y. et. al., Nucleic acid Res., Vol.23, 3816-3821 (1995)) およびpAxcw(特開平8−308585号公報、15頁、pAdexlcwはpAxcwと同一である)は、アデノウイルスE1およびE3遺伝子以外のアデノウイルス5型ゲノムの大部分を含むベクターである。また、pAxCAwtは、E1遺伝子欠失部位にCAGプロモーターが導入され、かつプロモーターとポリA配列との間にクローニング部位が存在する。pAxcwは、E1遺伝子欠失部位にClaIおよびSwaI部位のみが挿入されている。
実施例1
FLP蛋白質依存的にリコンビナーゼCreを発現する細胞株(293FNCre細胞)の作製
動物細胞の染色体上に、CAGプロモーター/FRT配列/ネオマイシン耐性遺伝子/SV40ポリA配列/FRT配列/核移行シグナル付きCre遺伝子/β−グロビンポリA配列の構造を有するDNAが挿入された細胞株を得るために、以下の操作を行なった。
34bpのFRT配列を含む54塩基の合成DNA(配列番号:1)およびその相補鎖をプラスミドpUC18のSmaI部位に挿入し、FRT配列が同方向に2個挿入され、かつ2個のFRT配列間にSwaI部位を有するプラスミドpUFwF(2.8kb)を得た。
プラスミドpCALNLZ(Y. Kanegae et. al., Gene, Vol.181, 207-212 (1996) 、図1A)) をMluIおよびXhoIで消化後平滑化したネオマイシン耐性遺伝子とSV40のポリA配列を含む断片を、pUFwFのSwaI部位に挿入したプラスミドpUFNF(図1B)を得た。
プラスミドpCALNLw(Kanegae Y. et. al., Gene, Vol.181, 207-212 (1996))のSwaI部位に27塩基の合成ポリリンカー(5'-AAA TTG AAT TCG AGC TCG GTA CCC GGG-3'、配列番号:2) およびその相補鎖を挿入し、プラスミドpCALNL5(図1C)を得た。pUFNFをBamHIおよびAsp718で消化し平滑化したFRT配列/ネオマイシン耐性遺伝子/SV40のポリA配列/FRT配列を含む約1.2kbの断片を、pCALNL5をMluIおよびXhoIで消化後平滑化したCAGプロモーターを含む約4.9kbの断片と連結し、プラスミドpCAFNF5(6.1kb)を得た。
プラスミドpSRNCre(Kanegae Y. et. al., Nucleic Acid Res., Vol.23, 3816-3821 (1995)) をPstIおよびXbaIで消化後平滑化した核移行シグナルを付加したCre遺伝子(NCre)を含む1.2kbの断片を、pCAFNF5のSwaI部位に挿入し、プラスミドpCAFNFNCre(図2)を得た。
293細胞をpCAFNFNCreで形質転換(リン酸カルシウム共沈法)後、G418(ネオマイシン誘導体)耐性細胞をシングルクローン化し、複数の細胞株(293FNCre細胞)を得た。
実施例2
リコンビナーゼFLP発現プラスミドおよび組換えアデノウイルスの作製
リコンビナーゼFLPの翻訳開始コドンの前後の塩基配列をKozak配列に合わせたプラスミドを得るため、以下の操作を行った。
(a)プラスミドpUCFLPは、酵母(Saccharomyces cerevisiae)の2ミクロンDNA(6318bp:James et al.,Nature, Vol. 286, 860-865 (1980))のSphI部位(5568番目)からXbaI部位(703番目)までのFLP遺伝子全長を含む断片(1457bp)が、プラスミドpUC19のSphI−XbaI部位間に挿入されたプラスミドである。pUCFLPをXbaIおよびSphIで消化し、FLP遺伝子全長を含む約1.5kbの断片を得た。
(b)5’末端突出側がHind III切断部位と、もう一方の末端がSphI切断部位と結合可能で、かつ翻訳開始コドンの上流にPstI部位を有する以下の配列の合成DNAアダプターを調製した。
5'-AG CTT CTG CAG CAG ACC GTG CAT CAT G-3' (配列番号:3)
3'-A GAC GTC GTC TGG CAC GTA-5' (配列番号:4)
(a)および(b)の両DNAをpUC19のHind III−XbaI部位間に挿入し、プラスミドpUKFLP(4.1kb)を得た。
pUKFLPをPstIおよびFspIで消化後平滑化したFLPコード領域を含む1.4kbの断片を、コスミドベクターpAxCAwtのプロモーターとポリA配列との間のSwaI部位に挿入し、コスミドベクターpAxCAFLPを得た。
前記pAxCAFLPをSalI消化後、自己ライゲーションさせ、アデノウイルスDNAの大部分を除いた(左端約0.4kbを含む)FLP発現プラスミドpxCAFLP(図3A)を得た。また同様に、pAxCAwtをSalI消化後自己ライゲーションさせたプラスミドpxCAwt(図3B)も作製した。pxCAwtは、実施例3においてpxCAFLPの陰性対照プラスミドとして用いる。
pAxCAFLPとアデノウイルスDNA−末端蛋白質複合体とを既知の方法(Miyake et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. Vol.93, 1320-1324 (1996)および特開平7−298877号公報)に従いリン酸カルシウム共沈法で293細胞を形質転換し、目的のFLP発現組換えアデノウイルスAxCAFLP(E1およびE3遺伝子欠失)を得た。
実施例3
293FNCre細胞のFLP蛋白質に依存したCre蛋白質の発現
(1) Cre蛋白質に依存してlacZ遺伝子を発現するプラスミドの作製
コスミドベクターpAxCALNLZ(Kanegae et. al., Nucleic Acid Res., Vol.23, 3816-3821 (1995))は、コスミドベクターpAxcwのE1遺伝子欠失部位に、CAGプロモーター/loxP配列/ネオマイシン耐性遺伝子/SV40ポリA配列/loxP配列/大腸菌lacZ遺伝子/β−グロビンのポリA配列が挿入されたコスミドである。pAxCALNLZをSalI消化後自己ライゲーションさせ、アデノウイルスDNAの大部分を除いた(左端約0.4kbを含む)プラスミドpxCALNLZ(図3C)を作製した。pxCALNLZは、Cre蛋白質に依存してlacZ遺伝子を発現するベクターである。
(2)293FNCre細胞のFLP蛋白質に依存したCre蛋白質の発現
293FNCre細胞がFLP蛋白質依存的にCre蛋白質を発現することの確認は、実施例2で作製したプラスミドpxCAFLPとプラスミドpxCALNLZとのコ・トランスフェクション法により行なった。その原理は、pxCAFLPにより発現したFLP蛋白質が293FNCre細胞の染色体に作用し、2個のFRT配列間のスタッファー配列(ネオマイシン耐性遺伝子およびSV40ポリA配列)を切り出し、CAGプロモーターからCre蛋白質が発現する。発現したCre蛋白質が、プラスミドpxCALNLZの2個のloxP配列間のスタッファー配列(ネオマイシン耐性遺伝子およびSV40ポリA配列)を切り出すことにより、lacZ遺伝子が発現する。したがって、これらの2つのプラスミドをコ・トランスフェクションした細胞がlacZ遺伝子を発現すれば、293FNCre細胞がFLP蛋白質依存的にCre蛋白質を発現することの証明となる。以下に、実験方法の詳細および結果を示す。
実施例1で得た293FNCre細胞のクローンのうちの6クローン(#1、#2、#3、#6、#8および#9)を6穴プレートで培養し、0.5μgのpxCAFLPと0.5μgのpxCALNLZとをリン酸カルシウム共沈法にてコ・トランスフェクションした。陰性対照として、pxCAFLPの代わりに実施例2で作製したpxCAwtを用いた。
3日後、培養液を除き、PBS(−)で細胞面を洗浄後、0.25%グルタルアルデヒド液を加え、4℃で10分間細胞を固定後、再度PBS(−)で洗浄した。発現したβ−ガラクトシダーゼを同定するため、X−Gal染色液(5mMフェリシアン化カリウム/5mMフェロシアン化カリウム/2mM塩化マグネシウム/1mg/ml X−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)/PBS(−))を加えて5時間染色した。
以上の実験の結果、#1、#3、#6および#9の4クローンは、pxCAwtとpxCALNLZとをコ・トランスフェクションした場合は、β−ガラクトシダーゼを発現し、青く染色された細胞は数%以下であったが、pxCAFLPとpxCALNLZとをコ・トランスフェクションすると、約50%の細胞が青く染色された。したがって、これらの4クローンは、プロモーターとCre遺伝子との間に、−FRT配列/ネオマイシン耐性遺伝子/SV40ポリA配列/FRT配列−が正確に挿入され、FLP蛋白質依存的にCre蛋白質を高発現することが証明された。
本発明により、組換えウイルスベクター、特に、組換えアデノウイルスベクターの製造に有用な細胞が提供される。本発明により、組換えウイルスベクターの製造が効率的に行なわれ、遺伝子治療の分野で利用可能な組換えウイルスベクターの供給が容易になる。
配列番号:1の塩基配列は、FLPの認識配列である。
配列番号:2の塩基配列は、ポリリンカーである。
配列番号:3の塩基配列は、アダプターのセンス鎖である。
配列番号:4の塩基配列は、アダプターのアンチセンス鎖である。
配列番号:5の塩基配列は、ヒト型FLP全配列である。

Claims (5)

  1. 酵母由来FLPをコードする塩基配列において、FLP蛋白質のアミノ酸をコードするコドンを置換することにより、酵母において好適に用いられるコドンの比率がヒトにおいて好適に用いられるコドンの比率に変更されることによる、ヒトを含む動物細胞でのFLPタンパク質の翻訳効率が増強された改変塩基配列を有するDNA。
  2. FLPをコードする塩基配列の5’末端領域がKozak配列に一致する請求項2記載のDNA。
  3. 37℃におけるFLP蛋白質の翻訳効率が増強されている請求項1または2記載のDNA。
  4. FLPのアミノ酸配列中、2番目がセリン、33番目がセリン、108番目がアスパラギン、および294番目がプロリンである、請求項1から3のいずれか記載のDNA。
  5. 配列番号:5の塩基配列である請求項4記載のDNA。
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