以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る充電装置の外観図である。
図1に示した充電装置6は、中点端子付きのバッテリーパックを充電する充電装置である。
バッテリーパック1は、+端子(+)2、中点端子(C)3、温度端子(T)4、−端子(−)5を有している。
充電装置6は、バッテリーパック1の各端子に対応する端子として、+端子(+)7、中点端子(C)8、温度端子(T)9、−端子(−)10を有している。
バッテリーパック1は、2つの二次電池セル(以下、セルと省略する。)が直列接続されている。
中点端子(C)3と中点端子(C)8は、バッテリーパック1のセル間の中点電圧を出力する出力端子として機能する。
また、温度端子(T)4と温度端子(T)9は、バッテリーパック1の温度を出力する出力端子として機能する。
これら対応する各端子は、バッテリーパック1を充電装置6の装着部11に装着することにより、互いに接続される。
充電装置6が充電を行うための電力は、ACコード12、ACプラグ13を介して家庭用交流電源から供給することができる。
充電装置6にバッテリーパック1が接続されているかどうかは温度端子9にサーミスタ135が接続されているかどうかによって判別している。
このサーミスタ135は、バッテリーパック1の温度端子4と−端子5との間に接続され、後述するように、バッテリーパック1の温度測定手段として機能する(図2参照)。
バッテリーパック1が充電装置6に装着されると、充電装置6は、バッテリーパック1の電圧を測定する。
バッテリーパック1の電圧(充電電圧)は、充電装置6に内蔵された充電制御マイコン115(図2参照)により測定される。
また、バッテリーパック1の中点端子3からは、直列接続された2つのセル141、142(複数の二次電池セル)の中点電圧143が出力される。
充電制御マイコン115は、中点端子3の電圧を測定する前にセル電圧調整を実行しているか否かを判断し、セル電圧調整中であれば、中点端子3の測定前にセル電圧の調整を一時中断する。
充電制御マイコン115は、充電開始前にバッテリーパック1の+端子2の電圧(直列接続された2つのセル全体の電圧)と中点端子3の中点電圧に基づいて、各セル141、142の電圧を算出する。
充電制御マイコン115は、+端子2の電圧が予め設定した電圧(第1の設定値)未満の場合、セル電圧調整を行うか否かを判断する。
この第1の設定値は、充電制御マイコン115内のメモリ149に予め記憶されている。
充電制御マイコン115は、セル電圧の調整を行う最大時間を設定するタイマー149をスタートさせる。
このタイマーは、充電制御マイコン115内で制御される。
充電制御マイコン115は、+端子2の電圧と中点端子3の電圧から各セルの電圧を算出する。
充電制御マイコン115は、各セルの電圧を比較し、電位差が予め設定した電位差(第2の設定値)以上の場合、セル電圧の調整を行う。
この第2の設定値は、充電制御マイコン115内のメモリ149に予め記憶されている。
セル電圧の調整は、中点端子3からバランス充電又はバランス放電を行うことによって低い電圧側のセルの充電又は放電を行い、高い電圧側のセルと低い電圧側のセルの電圧を近づける。
そして、充電制御マイコン115は、各セルの電位差が予め設定した電位差(第3の設定値)未満になった場合、又は、設定した最大時間が経過した場合、セル電圧の調整を終了する。
この第3の設定値は、充電制御マイコン115内のメモリ149に予め記憶されている。
充電制御マイコン115は、セル電圧の調整が終了した後に、バッテリーパック1の充電を開始する。
充電制御マイコン115は、充電中にバッテリーパック1の+端子2の電圧(直列接続された2つのセル全体の電圧)と中点端子3の中点電圧に基づいて、各セル141、142の電圧を算出する。
そして、充電制御マイコン115又は、セルの最大充電電圧がセルの過充電保護電圧値を超えないように、充電電圧を制御する。
このセルの過充電保護電圧値は、温度情報と対応付けて充電制御マイコン115内のメモリ149に予め記憶されている。
図2は、図1に示した充電装置6とバッテリーパック1の電気回路の構成を示すブロック図である。
なお図2では、本発明の説明に必要のない一般的な構成については、図示省略した。
図2の充電装置6の構成要素に付した符号は、次の要素を示している。
すなわち、102はAC入力部、103は一次電源回路、104はトランス、105はフォトカプラ、106は二次平滑回路、107はレギュレータである。
108、111、112、116、118、119、120、121、122、123、140は抵抗器を示している。
109、110はオペアンプ、113はボリューム、114は急速充電スイッチを示している。
115は充電制御マイコン、117はトリクル充電スイッチ、124はスイッチを示している。
144はダイオード、145はセル充電出力、146はセル電圧検出、147はバッテリーパック電圧検出である。
148はセル放電出力、149はメモリである。
7は前述の充電装置6の+端子、8は充電装置6の中点端子、9は充電装置6の温度端子、10は充電装置6の−端子を示している。
図2のバッテリーパック1の構成要素の符号は、次の要素を示している。
すなわち、2はバッテリーパック1の+端子、3はバッテリーパック1の中点端子、4はバッテリーパック1の温度端子、5はバッテリーパック1の−端子を示している。
134は電池保護回路、135はサーミスタ、136は充電保護FET、137は放電保護FET、138および139はスイッチを示している。
141および142はセル、143はセル間の中点を示している。
AC入力部102にAC電力が入力されると、そのAC電力は、一次電源回路103を介してトランス104に供給される。
トランス104は、一次側の高電圧から二次側の低電圧に電圧変換すると共に、一次側と二次側のGNDラインを分離する。
トランス104の二次側出力は、二次平滑回路106で整流されて後段の充電制御回路に出力される。
レギュレータ107は、二次平滑回路106からの出力電圧を、バッテリーパック1の各セル141、142の最大充電電圧の規格値(過充電保護電圧値)である4.2Vに変換して出力する。
このレギュレータ107からの4.2Vの電圧の電力は、バッテリーパック1のセル電圧を調整するための電力として利用される。
また、トランス104の二次側電圧は、電圧帰還用の抵抗器112と、充電電圧の最大値を調整するボリューム113によって分圧される。
このトランス104の二次側電圧は、充電制御マイコン115により、オペアンプ109とフォトカプラ105を介して制御される。
充電装置6の温度端子9には、レギュレータ107の出力電圧が抵抗器119を介して供給される。
バッテリーパック1のスイッチ138および139は、セル141とセル142の電圧の不均衡とセル142の過放電を防止するためのスイッチである。
バッテリーパック1の温度端子4に電圧が発生していない場合、すなわち充電装置6が接続されていないとき、スイッチ138および139はOFFとなっている。
このとき、バッテリーパック1の中点端子3には、セル141とセル142の間の中点電圧は出力されない。
この状態でバッテリーパック1の中点端子3が+端子2又は−端子5と短絡しても、セル141又はセル142からは放電されないため、セルの不均衡とセルの過放電を防止することが可能になる。
充電装置6にバッテリーパック1が接続されると、バッテリーパック1の温度端子4には、レギュレータ107の出力電圧を抵抗器119とサーミスタ135により分圧した電圧が発生する。
充電制御マイコン115は、抵抗器119とサーミスタ135により分圧された電圧を温度端子9を介して検出することにより、バッテリーパック1の装着を検出して、バッテリーパック1への充電制御を開始する。
バッテリーパック1のスイッチ138およびスイッチ139は、温度端子4に電圧が発生することによりONする。
スイッチ138、139がONすることにより、セル141とセル142との間の中点電圧が、抵抗器140を介して中点端子3に出力される。
サーミスタ135の抵抗値は、バッテリーパック1の内部温度によって変化するので、サーミスタ135は、バッテリーパック1の内部温度を測定するセンサとして利用される。
充電装置6は、基本的には、サーミスタ135により測定されたバッテリーパック1の内部温度に基づいてバッテリーパック1を充電する際の充電電圧および充電電流を決定している。
この充電制御の詳細は、後述する。
充電装置6の充電制御マイコン115は、温度端子9の電圧レベルにより、バッテリーパック1の装着および内部温度を検出する。
また、充電制御マイコン115は、抵抗器120および121を介して充電電圧を測定する。充電制御マイコン115は、温度端子9の電圧によりバッテリーパック1の装着を検出した場合に、バッテリーパック1の充電電圧および中点端子3の中点電圧を測定する。
すなわち、充電制御マイコン115は、バッテリーパック電圧測定手段と中点電圧測定手段として機能する。
測定した中点電圧は、セル141、142の充電電圧を個別に算出するために利用される。
充電制御マイコン115は、バッテリーパック1の電圧が予め設定された第1の設定値(Vadj)より低く、且つセル141とセル142との間の電位差が第2の設定値(VD)より高い場合、すなわちセル間の電圧バランスが崩れた場合に、セル電圧調整を行う。
このセル電圧調整は、セル141とセル142との間の電位差を充電前に解消するものである。これにより、バッテリーパック1の充電を好適に行うことができる。
セル電圧調整は、バッテリーパック1の−極側のセル142を充放電することによって行う。
すなわち、セル142の電圧がセル141の電圧より高い場合は、スイッチ124をONして抵抗器140および123を介してセル142の放電を行う。
セル142の電圧がセル141の電圧より低い場合は、ダイオード144、抵抗器122および140を介して、中点端子8からセル142の充電を行う。
本実施形態のセル電圧調整では、バッテリーパック1の+極側のセル141に対しては充放電を行わない。
このスイッチによるセル141の放電においても、中点端子3の測定時にはスイッチを遮断した状態で測定を行う。
セル電圧調整中に中点端子8から充放電を行っている状態では、抵抗器140により、セル間の中点143の電圧と中点端子8の測定電圧との間に電位差が生じる。
このため、中点端子8の電圧、すなわち中点電圧の測定は、セル電圧調整を一時的に休止した状態で行い、その後セル電圧調整を再開する。
本実施形態のダイオード144に代えて、レギュレータ107の出力電圧と抵抗器122の間にスイッチ(図示省略)を設け、充電制御マイコン115の制御によりセル142の充電を行うことも可能である。
このスイッチによるセル142の充電においても、中点端子3の測定時にはスイッチを遮断した状態で測定を行う。
本実施形態のセル電圧調整に代えて、+端子7と中点端子8との間に抵抗器およびスイッチ(図示省略)を設け、+極側のセル141の放電を行うことにより、セル電圧調整を行うことも可能である。
このスイッチによるセル141の放電においても、中点端子3の測定時にはスイッチを遮断した状態で測定を行うことは言うまでもない。
尚、セルに並列に抵抗とスイッチ(図示省略)を設け、各セルの放電によりセル電圧の調整を行う方法では、直列に接続されるセル数は2個に限定されず、2個以上でも可能である。
セル電圧調整は、セル141とセル142の電位差が第3の設定値未満の場合、或いはタイマーで設定された時間を経過した場合に終了する。
トリクル充電は、抵抗器116によって制限された充電電流をバッテリーパック1に供給することにより行う。
トリクル充電は、バッテリーパック1の電圧が急速充電可能な電圧に満たない場合に行われ、急速充電可能な電圧に達した場合に終了する。
急速充電は、充電初期の段階では、バッテリーパック1に一定の充電電流を供給する定電流充電を行い、その後、バッテリーパック1に一定の充電電圧を供給する定電圧充電に移行する。
充電電流値は、抵抗器118を介して電圧レベルに変換される。
充電電流値の設定は、レギュレータ107の出力電圧を抵抗器108、111で分圧した電圧値で決定される。
充電電流値は、オペアンプ110とフォトカプラ105を介して制御される。
充電電流が流れることにより、充電装置6の+端子7とバッテリーパック1の+端子2の間の接触抵抗、充電装置6の−端子10とバッテリーパック1の−端子5の間の接触抵抗に対して電位差が発生する。
また、セル141と+端子2との間の回路抵抗、セル142と−端子5との間の回路抵抗、セル141とセル142との間の回路抵抗等の抵抗成分に対しても、充電電流が流れることによる電位差が発生する。
そこで、充電制御マイコン115は、バッテリーパック1の充電電圧と中点端子8の中点電圧に基づいて、セル141およびセル142の電圧を算出する際に、上述の電位差を補正する。
充電電流値が十分小さいときには、上述の電位差も僅かであるので、充電電流値が予め設定した値よりも小さい場合には補正を行わない。
充電制御マイコン115は、セルの適切な充電電圧値を内蔵のメモリ149に記憶している。
この適切な充電電圧値は、過充電保護のための電圧値(過充電保護電圧値)であり、温度によって異なるものである。
本実施の形態では、メモリ容量を節約するために、小さな温度差の単位で多数の過充電保護電圧値を記憶するのではなく、表1のように5つの温度範囲毎に過充電保護電圧値を記憶している。
なお、充電制御マイコン115は、5つの温度範囲毎に充電電流値も変更する。
表1は充電制御マイコン115のメモリ149に記憶される温度範囲−過充電保護電圧値テーブルおよび温度範囲−充電電流値テーブルである。
このテーブルは温度範囲毎に設定された過充電保護電圧値と充電電流値とを示している。
すなわち、充電制御マイコン115は、急速充電中のバッテリーパック1の内部温度を検出し、検出した内部温度に応じて、過充電保護電圧値と充電電流値を決定する。
充電中の充電制御マイコン115は、充電電圧の高い方のセルの充電電圧が、セルの過充電保護電圧値を超えないように、バッテリーパック1の充電電圧を制御する。
この充電電圧制御は、抵抗器112と充電電圧の最大値を調整するボリューム113の中点に、充電制御マイコン115の充電電圧調整出力から充電電圧調整用のDC電圧を供給することによって行われる。
すなわち、充電電圧を上げる場合、充電制御マイコン115はオペアンプ109の−入力の電圧を下げ、充電電圧を下げる場合、充電制御マイコン115はオペアンプ109の−入力の電圧を上げる。
充電中の充電制御マイコン115は、バッテリーパック1の内部温度に応じて、充電電流値を変更する。
この充電電流値の変更は、抵抗器108と111の中点に、充電制御マイコン115の充電電流調整出力から急速充電電流調整用のDC電圧を出力することによって行われる。
すなわち、充電電流を上げる場合、充電制御マイコン115はオペアンプ110の+入力の電圧を上げ、充電電流を下げる場合、充電制御マイコン115はオペアンプ110の+入力の電圧を下げる。
本実施の形態では、充電電流および充電電圧を制御する方法として、充電制御マイコン115が直接DC電圧を出力する例を示した。
これに代えて充電制御マイコン115がPWM出力を行い、平滑するための素子を用いてDC電圧を作成しても良い。
また、充電制御マイコン115がデジタルデータを出力し、D/Aコンバータを介してDC電圧を作成しても良い。
さらに、図2に示したフォトカプラ105を直接的に制御する方法で、充電電圧および充電電流を制御することも可能である。
このフォトカプラ105を直接的に制御する方法では、PWM出力を平滑して作成しても、或いは、制御出力のデジタルデータをD/Aコンバータを介して作成しても良い。
充電制御マイコン115は、充電電流値を電圧レベルに変換する抵抗118の電位差を検出することにより充電電流を測定する。
充電制御マイコン115は、急速充電中の充電電圧の上昇と充電電流の減少を検出し、その上昇および減少の程度により急速充電を完了するか否かを判定する。
次に、急速充電制御のフローの概要を図3のフローチャートに基づいて説明する。
充電制御マイコン115は、バッテリーパック1が装着されているかどうかを判断する(ステップS1)。
具体的には、レギュレータ107の出力電圧を抵抗器119とサーミスタ135により分圧した電圧が温度端子9に発生するかどうかによって、バッテリーパック1の装着を判断している。
バッテリーパック1が装着されている場合には、そのバッテリーパック1の温度、中点端子8の電圧(中点電圧)、バッテリーパック1の電圧(V7:+端子7の充電電圧)を、順次検出する(ステップS2〜S4)。
バッテリーパック1の電圧検出処理の詳細は、後述する。
次に、充電制御マイコン115は、検出した中点端子8の中点電圧、バッテリーパック1の電圧に基づいて、セル141および142のセル電圧を算出する(ステップS5)。
このセル電圧算出処理の詳細は、後述する。
次に、充電制御マイコン115は、検出したバッテリーパック1の電圧(V7)が第1の設定値(Vadj)より低いか否かを判別する(ステップS6)。
バッテリーパック1の電圧(V7)が第1の設定値(Vadj)より低ければ、充電制御マイコン115は、セル141および142のセル電圧が所定の電圧範囲内となるように、セルの電圧を調整するセル電圧調整を行う(ステップS7)。
第1の設定値(Vadj)は、バッテリーパック1が電源として使用される電子機器が動作可能な最低電圧に基づいて設定される設定電圧である。このように第1の設定値(Vadj)を設定することで、放電末期のセル電圧を揃えるためにセル電圧調整を行うことができる。したがって、セル電圧調整は設定電圧以下の場合に、セル電圧調整を行うことになる。
このように、放電末期のセル電圧を揃えるようにしたのは、セル電圧が高い状態でセル電圧を揃えると、放電末期でセル電圧の低下が急峻になり、電子機器の使用電圧範囲を上げる必要が生じて電子機器の使用可能時間が減少することになるからである。
このセル電圧調整の詳細は、後述する。
バッテリーパック1の電圧(V7)が第1の設定値(Vadj)以上の場合には、充電制御マイコン115は、検出したバッテリーパック1の温度に基づいて、セル充電電圧設定値を決定する(ステップS8)。
第1の設定値(Vadj)以上である場合にバッテリーパック1は充電が行われるので、本実施形態において、第1の設定値(Vadj)はバッテリーパック1への充電を開始する充電開始電圧となっている。したがって、セル電圧調整は充電開始電圧以下の場合に、セル電圧調整を行うことになる。
このセル充電電圧設定値の決定処理の詳細は後述するが、本実施の形態では、前述の過充電保護電圧値をセル充電電圧値として決定している。
次に、充電制御マイコン115は、検出したバッテリーパック1の温度に基づいて、充電電流値(Ichg)を決定し、急速充電を開始する(ステップS9、S10)。
充電電流値の決定処理の詳細は、後述する。
充電制御マイコン115は、急速充電を開始すると、セル141、142の何れかのセル電圧(セル充電電圧)が、ステップS8で決定されたセル充電電圧の設定値、すなわち過充電保護電圧値に達したか否かを判別する(ステップS11)。
充電装置6は、セル141、142の何れも過充電保護電圧値に達していなければ、定電流制御を行う(ステップS12)。
この定電流制御処理の詳細は、後述する。
なお、ステップS7の調整処理でセル141、142のセル電圧の不均衡が解消されているので、セル141、142の充電電圧が上記の過充電保護電圧値に達するタイミングのズレは、小さくなっている。
一方、セル141、142の何れかのセル充電電圧が過充電保護電圧に達した場合は、充電制御マイコン115は、その過充電保護電圧値を超えることなく維持するように、充電電圧の制御を行う。
そして、充電制御マイコン115は、充電電流の低下によりセル141および142の充電量が所定値に達したか否かを判別し(ステップS13)、充電量が所定値に達していなければステップS1に戻り、所定値に達していれば、本急速充電制御を終了する。
次に、充電制御マイコン115の充電制御に対応するバッテリーパック1の動作を、図4のフローチャートに基づいて説明する。
バッテリーパック1の温度端子4に電圧が供給されていない場合、スイッチ138、139はOFFしている(ステップS16)。
充電装置6が温度端子4に電圧を供給する(ステップS17)。
この温度端子4への電圧供給により、充電制御マイコン115は、バッテリーパック1が充電装置6に装着されたことを検出する(図3のステップS1参照)。
また、充電装置6が温度端子4に電圧を供給すると、バッテリーパック1の温度端子4には、前述のように電圧が発生し(ステップS18)、充電制御マイコン115が図4のステップS2でバッテリーパック1の温度を検出可能となる。
次に、温度端子4に電圧が供給されると、スイッチ138、139がONして中点端子3に中点電圧が出力される(ステップS19、S20)。
これにより、充電制御マイコン115は、図3のステップS3での中点電圧検出処理を行うことが可能となる。
次に、図3のステップS2におけるバッテリーパック1の温度検出処理の詳細を、図5のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
この温度検出処理では、充電制御マイコン115は、先ず、温度端子9の電圧を測定する(ステップS21)。
そして、充電制御マイコン115は、その温度端子9の電圧に対応するバッテリーパック1の温度をメモリ149に登録された温度/電圧テーブルを参照する(ステップS22)。
次に、充電制御マイコン115は、参照した温度端子9の電圧に対応するサーミスタ135の温度を、バッテリーパック1の温度として判断し(ステップS23)、図3のフローにリターンする。
次に、図3のステップS5におけるセル電圧算出処理の詳細を、図6のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
このセル電圧算出処理では、充電制御マイコン115は、先ず、バッテリーパック1の電圧(V7)と中点端子8の電圧(V8)を参照する(ステップS51、S52)。
そして、充電制御マイコン115は、セル142の−接点から−端子10までの電位差Vz2を算出する(ステップS53)。
具体的には、充電制御マイコン115が充電電流値(Ichg)を検出する。そして、充電制御マイコン115の内蔵メモリ149に記憶されているセル142の−接点から−端子10までの抵抗成分の総和(Z2)を読み出して、Vz2=(Ichg×Z2)なる演算式により算出される。
この電位差Vz2は、上記の演算式に示したように、GNDラインの抵抗成分と充電電流値により算出される。
すなわち、電位差Vz2は、−端子10と−端子5との間の接触抵抗、充電保護用のFET136と放電保護用のFET137のドレイン−ソース間抵抗Rds(ON)とパターン抵抗の総和(Z2)に、充電電流値(Ichg)を乗算して求められる。
次に、充電制御マイコン115は、セル142の電圧(Vc142)を算出する(ステップS54)。
このセル142の電圧(Vc142)は、中点端子8の電圧(V8)から上記のセル142の−接点から―端子10までの電位差Vz2を減算して求められる。
次に、充電制御マイコン115は、セル141の+接点から+端子7までの電位差Vz1を算出する(ステップS55)。
具体的には、充電制御マイコン115が充電電流値(Ichg)を検出する。そして、充電制御マイコン115の内蔵メモリ149に記憶されているセル141の+接点から+端子7までの抵抗成分の総和(Z1)を読み出して、Vz1=(Ichg×Z1)なる演算式により算出される。
すなわち、この電位差Vz1は、+端子7と+端子2の間の接触抵抗とパターン抵抗の総和(Z1)に充電電流値(Ichg)を乗算して求められる。
次に、充電制御マイコン115は、セル141の電圧(Vc141)を算出して(ステップS56)、図3のフローにリターンする。
このセル141の電圧(Vc141)は、+端子7の電圧(V7)からVz1、セル142の電圧(Vc142)およびVz2を減算して求められる。
次に、図3のステップS7におけるセル電圧調整の詳細を、図7のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
このセル電圧調整では、充電制御マイコン115は、先ず、タイマーをスタートさせ(ステップS71)、タイマー時間(Tm)はカウントアップされていく。
次に、セル141およびセル142への充放電を停止する(ステップS72)。
セル142への充電の停止は、セル充電出力145をGNDレベルに落とすことにより、ダイオード145で逆流することがなく充電を停止することができる。
セル142からの放電の停止は、セル放電出力148によりスイッチ124を遮断する。
セル142の充放電を停止した後、バッテリーパック1の電圧(V7)と中点端子8の電圧(V8)を検出する(ステップS73、ステップS74)。
ステップS73、ステップS74にて検出したバッテリーパック1の電圧(V7)および中点端子8の電圧(V8:中点電圧)から、セル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)を算出する(ステップS75)。
ステップS75で算出されるセル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)はセル141、セル142への充放電を停止した状態での電圧である。したがって、ステップS75で算出されるセル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)はステップS5にて算出したル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)とは一致しない。
また、充放電を停止した状態でバッテリーパック1の電圧(V7)および中点端子8の中点電圧(V8)を検出しているので、図3のステップS5でのセル電圧算出とは異なり接触抵抗や回路抵抗による電位差は考慮しない。
充電制御マイコン115は、セル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)との差が第2の設定値(VD)より小さいかどうかを判別する(ステップS76)。
セル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)との差が第2の設定値(VD)より小さい場合、セル電圧調整を行わず図3のフローにリターンする。すなわち、セル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)とがほぼ同じ電圧の場合には、セル電圧調整を行わず図3のフローにリターンする。
一方、セル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)との差が第2の設定値(VD)以上である場合には、セル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)とのうち、どちらの電圧が高いかを判断する(ステップS77)。すなわち、セル141と142の電圧の差が所定値以上となるときに、セル141と142の電圧の差が所定値以下となるように、前記二次電池セルの電圧を調整する。
そして、充電制御マイコン115は、セル142の電圧(Vc142)の方がセル141の電圧(Vc141)より高い場合は、セル142を放電する(ステップS78)。
このセル142の放電は、スイッチ124をONして抵抗器123、140を介して行う。
一方、セル142の電圧(Vc142)の方がセル141の電圧(Vc141)より低い場合は、充電制御マイコン115は、セル142を充電する(ステップS79)。
このセル142の充電は、スイッチ124をOFFしスイッチ139をONして、ダイオード144、抵抗器122、140を介して行う。
充電制御マイコン115は、再度、セル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)との差が第2の設定値(VD)より小さいかどうかを判別する(ステップS80−1)。
ここでは、セル電圧調整を開始する閾値と、セル電圧調整を終了する閾値を同じ値を使用する例を示している。
その他の方法として、充電制御マイコン115のメモリ149に第3の設定値を記憶して、この閾値をセル電圧調整を終了する閾値にすることも可能である。
セル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)との差が第2の設定値(VD)より小さい場合には、セル電圧調整を行わず、図3のフローにリターンする。すなわち、セル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)とがほぼ同じ電圧の場合には、セル電圧調整を行わず、図3のフローにリターンする。
一方、セル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)との差が第2の設定値(VD)以上である場合には、タイマー時間(Tm)が予め設定された限界時間(TL)以上となるかどうかを判断する(ステップS80−2)。
タイマー時間(Tm)が限界時間(TL)以上となった場合には、図3のフローにリターンする。
タイマー時間(Tm)が限界時間(TL)となっていない場合には、ステップS72に戻る。
このようにして、セル141の電圧(Vc141)とセル142の電圧(Vc142)との差が第2の設定値(VD)より小さくなるまでセル電圧調整は実行される。
次に、図3のステップS8におけるセル充電電圧設定値の決定処理の詳細を、図8のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
このセル充電電圧設定値の決定処理では、充電制御マイコン115は、先ず、ステップS2で検出したバッテリーパック1の温度を参照する(ステップS81)。
そして、充電制御マイコン115は、当該充電制御マイコン115内のメモリ149に登録された温度範囲−過充電保護電圧値テーブルを参照する(ステップS82)。
このテーブルに登録された過充電保護電圧値は、温度範囲に対応する過充電保護のための上限電圧値である。
次に、充電制御マイコン115は、この温度範囲に対応する過充電保護のための上限電圧値として登録された過充電保護電圧値を読出し、この過充電保護電圧値をセル充電電圧設定値として決定し(ステップS83)、図3のフローにリターンする。
次に、図3のステップS9における充電電流値の決定処理の詳細を、図9のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
この充電電流値の決定処理では、充電制御マイコン115は、先ず、ステップS2で検出したバッテリーパック1の温度を参照する(ステップS91)。
そして、充電制御マイコン115は、当該充電制御マイコン115内のメモリ149に登録された温度範囲−充電電流値テーブルを参照し、バッテリーパック1の充電電流値を決定し(ステップS92)、図3のフローにリターンする。
次に、図3のステップS12における充電電圧制御処理の詳細を、図10のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
この充電電圧制御処理では、充電制御マイコン115は、先ず、前述の算出したセル141の電圧(Vc141:セル充電電圧)とセル142の電圧(Vc142:セル充電電圧)を参照する(ステップS1201)。
次に、充電制御マイコン115は、セル141の電圧(Vc141)がセル142の電圧(Vc142)よりも大きいかどうかを判定する(ステップS1202)。
セル141の電圧(Vc141)がセル142の電圧(Vc142)よりも大きい場合には、セル141が過充電保護電圧値を超えないように充電電圧を制御する(ステップS1203)。
一方、セル141の電圧(Vc141)がセル142の電圧(Vc142)よりも小さい場合には、セル142が過充電保護電圧値を超えないように充電電圧を制御し(ステップS1204)、図3のフローにリターンする。
以上説明したように、充電制御マイコン115は、セル電圧の調整中において、バッテリーパック1の+端子2の電圧と中点端子3の中点電圧を測定する前に、バランス充電又はバランス放電を一時中断し、その状態で電圧を測定する。
そして、充電制御マイコン115は各セルの電圧を算出するようにした。
本実施の形態では、バッテリーパック1の+端子2の電圧を測定する前にセル電圧調整を中断する方法について示したが、少なくとも中点端子3の測定前にセル電圧調整の中断を実行すれば、本発明の効果は期待できる。
すなわち、本実施の形態を実施することにより、バッテリーパックに内蔵する2個直列に接続された各セルの電圧を正確に測定することが可能になり、セルの電圧バランスを正確に揃えることが可能になった。
さらに、本発明の目的は、上述した各実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(コンピュータ実行可能なプログラム)を記録(記憶)したコンピュータ読取可能な記憶媒体によっても達成される。
すなわち、この記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出して実行することによって達成される。
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した各実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードおよび該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、次のものを用いることができる。
例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク等を用いることができる。
また、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
また、本発明は、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、上記の各実施の形態の機能が実現される場合だけに限定されるものではない。
その他、例えば、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれることにより各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
この場合、当該書込みの後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行うこととなる。