JP2010056483A - 膜製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基板上に薄膜成長核を形成する場合に、大気圧環境下で、高温プロセスを排除し、かつスループットを低下させることなく、さらには薄膜成長核の無駄を発生させることなく容易に薄膜成長核を形成することにより膜製造設備のコストの低減及び膜製造コストの低減を図ることができる膜製造方法を提供する。
【解決手段】金属若しくは半導体を構成する元素、又はその元素からなるイオンを組成中に含む物質の溶液又は懸濁液を、基板上に塗布し、乾燥させた後、大気圧水素プラズマにて曝露処理することにより、基板上に薄膜を形成するための薄膜成長核を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、基板上に薄膜成長核を形成する膜製造方法に関する。
液晶ディスプレイに利用されるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)や薄膜太陽電池に対し、さらなる性能向上を図るため、従来用いられてきた非晶質シリコン薄膜に代えて結晶性シリコン(Si)薄膜の適用が試みられている。
現段階では、結晶性シリコン(Si)薄膜は、中小サイズの液晶ディスプレイ用TFTとして適用された実例があるが、TFTの閾値均一性が必要とされるため、ディスプレイとしての歩留まりは非常に悪い。一方、太陽電池の分野においても、従来のアモルファスシリコン(Si)に見られた光劣化を呈さず、キャリアライフタイムも長い結晶性シリコン(Si)薄膜の適用が待望されているが、現段階において、太陽電池に適用可能な品質を持った薄膜は得られてないのが現状である。
結晶性シリコン(Si)薄膜の各種デバイスへの適用を阻害する主たる要因として、結晶性シリコン(Si)薄膜を構成する多数の結晶粒間に存在する結晶粒界の存在が挙げられる。
例えば、TFTにおいて素子内に存在する粒界は、捕獲準位を形成するため、キャリア移動度を低下させる要因となる。また、各素子に含まれる粒界数が異なれば、素子間の特性ばらつきを生じる原因となる。一方、多結晶Si薄膜太陽電池における粒界は、捕獲準位により少数キャリアの消滅が促進され発電効率の低下につながる。
以上の観点から多結晶シリコン薄膜をデバイスへ適用するためには、その粒界を如何に制御するかが最重要課題である。
この粒界制御の一手法として、作製される多結晶シリコン(Si)膜の結晶粒の大粒径化が挙げられる。このため、大粒径多結晶シリコン(Si)薄膜(10μm×10μm以上)を作製するための研究が様々に行われている。
一般的な大粒径シリコン(Si)膜を作製する手法として、加熱溶融・再結晶化を基本原理とした、レーザー又は熱プラズマを照射する手法、固相における結晶核生成と結晶成長との活性化エネルギーの違いを利用した固相アニール(焼きなまし)による手法、またこの原理をさらに発展させた触媒金属を用いる手法が提案されている。
とりわけ後者の固相アニールを利用した手法は、前者に比べて大面積処理に大変有利であるのみならず、簡便な装置・簡便なプロセスパラメータにて、比較的大粒径のシリコン(Si)膜を作製し得るため魅力的な技術である。このように、魅力的な技術であるものの、成長核と結晶成長との活性化エネルギーの差異を利用した固相成長によるプロセスは、大粒径化のため多大な時間を要する。
大粒径化のためには、前駆体膜となるアモルファスシリコン中に必要以上のシリコン(Si)結晶成長核の生成を抑制する必要がある。これは、隣接する成長核の距離が近ければ、固相成長により得られる結晶粒径もそれに律則されることによる。このため、必要以上の結晶成長核の生成を抑制するためプロセスの低温化が必須となる。
プロセスの低温化は、成長核の発生頻度を低下させるものの、結晶成長速度も遅らせる要因となるためスループットを大きく低下させる要因となる。また、成長核の発生位置は、全くランダムな配置で生じるため、ある部分では必要以上の成長核間距離が発生し、ある部分では非常に隣接した距離で成長核が発生することとなる。このため得られる薄膜の均一性が低下する。
一方、固相成長による製法におけるスループットの向上のため、成長核生成のための活性化エネルギー及び結晶成長の活性化エネルギーを著しく低下させる触媒元素(Ni、Pd、Al、他)の添加による手法が提案されている。
本手法の採用により、触媒元素のない場合に比べて低温かつ短時間にて比較的大粒径の多結晶シリコン(Si)薄膜を作製した例が存在する。本手法では、触媒元素の存在位置のみで各活性化エネルギーの低下が生じるため、シリコン(Si)結晶核の発生位置制御が可能となる。このことは均一な粒径を有する多結晶シリコン(Si)薄膜の成長を可能にする。
一般的に、触媒元素の添加は、真空蒸着法、スパッタ法又はCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法)等の様々な成膜法によって実現される。これらの成膜法は、いずれも真空又は減圧という環境を利用しなければならず、設備コストに大きな負担がかかる。
一方、ニッケル(Ni)化合物が水溶性であることを利用して水溶液塗布による触媒添加を提案している例や、鉄又はニッケル(Ni)を内包するタンパク質(フェリチンタンパク質)を塗布して実施した例もある。これらの手法に一般的に用いられる触媒元素ニッケル(Ni)は、シリコン(Si)中では、ミッドギャップに近い位置に不純物準位を形成するため、リーク電流の起源になり、キャリアの再結合中心としても働くことが知られている。このため、結晶化プロセス後、不要な触媒金属を取り除くためのゲッタリングプロセスが必要となる。また、ゲッタリングプロセスを適用したとしても、シリコン(Si)中の触媒金属元素を完全に除去することはできない。
以上のように、触媒金属の添加は、プロセスのハイスループット化に寄与するものの、残留する触媒成分の影響が残るため、広く普及するには至っていない。
このような触媒元素の影響を低減するため、シリコン(Si)と同族であるゲルマニウム(Ge)を結晶成長核として利用しようという試みがある。
例えば特許文献1及び特許文献2では、ガラス基板上に形成されたアモルファスシリコン(Si)上にゲルマニウム(Ge)膜を形成し、アモルファスゲルマニウム(Ge)がアモルファスシリコン(Si)に比較して低温で結晶化し易いことを利用して、結晶性ゲルマニウム(Ge)を種結晶としてアモルファスシリコン(Si)を固相成長により結晶性シリコン(Si)へ相変態させるための一手法が提案されている。
一方、特許文献3では、アモルファスゲルマニウム(Ge)をガラス基板上へ一旦蒸着し、固相アニールにより結晶化させた後、酸素によるエッチングを利用した手法により、ナノメータースケールの微小なゲルマニウム(Ge)結晶核を形成し、これをシリコン(Si)の結晶成長核として利用しようという試みが報告されている。
特開平11−298007号公報(1999年10月29日公開) 特開平11−204434号公報(1999年7月30日公開) 特開2006−135149号公報(2006年5月25日公開)
しかしながら、上記従来の特許文献1及び特許文献2では、シリコン(Si)の電子物性に大きな影響を与えないゲルマニウム(Ge)の利用を提唱しているものの、ゲルマニウム(Ge)の添加方法に関しては、前記した一般的な成膜法を採用している。また、溶液を用いる際には、ゲルマニウム(Ge)溶液をアモルファスシリコン(Si)膜上に塗布した後、ゲルマニウム(Ge)化合物を、そのまま結晶化触媒として用いる手法を提案している。
さらには、ゲルマニウム(Ge)の選択的な成膜・添加に関しても言及しているが、いずれの手法も、アモルファスシリコン(Si)膜上へのゲルマニウム(Ge)の添加法に限定されたものであり、任意基板上へのゲルマニウム(Ge)の選択的な膜形成法・添加手法に関しては、新たな示唆が見当たらない。
一方、上記従来の特許文献3でも、ゲルマニウム(Ge)の形成には一旦真空又は減圧なる環境を用いており、さらには真空中にてアニールを行うという複雑な工程が必要となる。さらには、ゲルマニウム(Ge)のランダム結晶成長、及びランダムな酸素エッチング反応を利用しているため、ゲルマニウム(Ge)結晶核の位置制御性は皆無となり、本手法により作製される多結晶Si薄膜の均一性には、疑問が残る。
また、液晶用TFTを考えた場合、画面の輝度を稼ぐため、画素全面に半導体薄膜が存在する訳ではなく、50μm□の一画素に対して10×10μm程度の半導体膜が必要となる。このように、液晶用TFTにおいて半導体膜を必要とするのは、限定された位置にのみであり、現状では、このような構造を作製するために、一旦ガラス基板上の全面にアモルファスシリコン(Si)や多結晶シリコン(Si)膜を形成した後、TFTを作製する位置以外の不要な半導体膜を除去している。このことは、成膜される半導体膜の大部分が、無駄になっていることを意味している。
ここで、ゲルマニウム(Ge)成長核を既知の手法により、任意基板上へ形成する場合には、真空蒸着→アニール(焼きなまし)結晶化→フォトリソ(感光性樹脂によるマスクパターン形成)→RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)によるエッチングという方法があるが、長時間かつ多大な工程が必要であると共に、大気圧環境下では形成できない、さらには半導体原料の無駄を発生するという問題点を有している。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、基板上に薄膜成長核を形成する場合に、大気圧環境下で、高温プロセスを排除し、かつスループットを低下させることなく、さらには薄膜成長核の無駄を発生させることなく容易に薄膜成長核を形成することにより膜製造設備のコストの低減及び膜製造コストの低減を図ることができる膜製造方法を提供することにある。
本発明の膜製造方法は、上記課題を解決するために、金属若しくは半導体を構成する元素、又はその元素からなるイオンを組成中に含む物質の溶液又は懸濁液を、基板上に塗布し、乾燥させた後、大気圧水素プラズマにて曝露処理することにより、基板上に薄膜を形成するための薄膜成長核を形成することを特徴としている。尚、基板は、例えば、ガラス基板の他、プラスチック、ゴム、又は紙の基板でもよく、基板上に薄膜を形成する場合に薄膜と基板との接触界面における界面エネルギーが比較的大きくなる組み合わせが好ましい。また、基板は、シート、フィルム等であってもよい。さらに、金属若しくは半導体を構成する元素、又はその元素からなるイオンとしては、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)等の元素及びそのイオン等がある。また、その元素からなるイオンを組成中に含む物質には、その元素単体のイオン、及びその元素からなるイオンを組成中に含む化合物が含まれる。
上記の発明によれば、基板上に薄膜を形成するための薄膜成長核を形成する場合には、金属若しくは半導体を構成する元素、又はその元素からなるイオンを組成中に含む物質の溶液又は懸濁液を、基板上に塗布し、乾燥させた後、大気圧水素プラズマにて曝露処理すれば、当該元素が大気圧水素プラズマ中の水素により還元されることによって当該元素からなる薄膜を形成することができる。
このため、従来、真空(低圧)、及び高い基板温度という環境を利用しなければならなかった薄膜成長核の形成工程を、大気圧一貫にて行うことが可能となる。この結果、高価な真空排気装置と大量のエネルギー消費とを不要にすることが可能となる。
また、溶液又は懸濁液を、基板上に塗布し、乾燥させた後、大気圧水素プラズマにて曝露処理するので、従来の蒸着等の高温プロセスを排除することができ、かつ容易に薄膜成長核を形成することができる。
さらに、成長核を基板上へ形成する場合に、既知の真空蒸着→アニール(焼きなまし)結晶化→フォトリソ(感光性樹脂によるマスクパターン形成)→RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)によるエッチングという方法を採用していないので、長時間かつ多大な工程が不要となり、スループットを低下させることがない。
また、成長核を基板上へ形成する場合に、上記の既知方法では、基板の全面に成長核を形成し、必要部分以外をエッチングにより除去する方法を採用しているので、薄膜成長核の無駄が発生していた。しかし、本発明では、基板の必要部分に溶液又は懸濁液を塗布して、薄膜成長核を形成することができる。したがって、薄膜成長核の無駄を発生させることがない。
したがって、基板上に薄膜成長核を形成する場合に、大気圧環境下で、高温プロセスを排除し、かつスループットを低下させることなく、さらには薄膜成長核の無駄を発生させることなく容易に薄膜成長核を形成することにより膜製造設備のコストの低減及び膜製造コストの低減を図ることができる膜製造方法を提供することができる。
尚、本発明では、基板上に形成された薄膜成長核自体を薄膜として使用することも可能である。この方法を、半導体を構成する元素に適用すれば、基板上に半導体膜を、大気圧環境下で形成し、高温プロセス及び毒性ガスの使用を排除して形成することが可能となる。
また、本発明の膜製造方法では、ゲルマニウム(Ge)元素を組成中に含む物質の溶液又は懸濁液を、基板上に塗布し、乾燥させた後、大気圧水素プラズマにて曝露処理することにより、基板上に薄膜成長核となる半導体ゲルマニウム(Ge)を形成することが好ましい。
本発明では、金属若しくは半導体を構成する元素、又はその元素からなるイオンを組成中に含む物質の溶液又は懸濁液として、ゲルマニウム(Ge)元素を組成中に含む物質の溶液又は懸濁液を対象とする。
これにより、例えば基板としてのガラス基板上に、例えば半導体膜であるシリコン(Si)薄膜を形成する場合に、薄膜成長核として好適な結晶性ゲルマニウム(Ge)成長核を容易に形成することができる。
また、ゲルマニウム(Ge)の薄膜成長核を形成する場合に、ゲルマニウム(Ge)の酸化物水溶液を使用することによって、危険で不安定な材料を用いることなくゲルマニウム(Ge)の薄膜成長核を形成することができる。
すなわち、従来であれば、ゲルマニウム(Ge)の薄膜成長核を形成する場合に、真空環境下を利用した化学蒸着にてゲルマンガスやハロゲン化ゲルマニウムを用いており、これらは毒性を呈する。本発明では、このような毒性ガスの使用を排除することができる。
また、本発明の膜製造方法では、ゲルマニウム(Ge)元素を組成中に含む物質の溶液又は懸濁液の作製に、過酸化水素水とゲルマニウム(Ge)とを用いることが好ましい。
すなわち、ゲルマニウム(Ge)は過酸化水素水により酸化されることによって、水溶性の酸化ゲルマニウム(Ge)に変質し、容易に溶解する。したがって、ゲルマニウム(Ge)元素を組成中に含む物質の溶液又は懸濁液を作製する場合に、容易に作製することができる。また、溶質として酸化ゲルマニウム(Ge)を選択してもよい。
また、本発明の膜製造方法では、大気圧水素プラズマにて曝露処理して形成されたゲルマニウム(Ge)を薄膜成長核として、シリコン(Si)薄膜を形成することが好ましい。
これにより、界面エネルギーが高くなることによってシリコン(Si)膜が付着し難い基板上にシリコン(Si)薄膜を形成する際に、シリコン(Si)が付着しても、その界面エネルギーが低いゲルマニウム(Ge)を薄膜成長核として用いれば、半導体膜であるシリコン(Si)薄膜を容易に形成することができる。したがって、例えば、液晶表示装置のTFT等に用いられる半導体薄膜を短時間で簡易に製造することができる。試算では、溶液塗布から位置制御されたゲルマニウム(Ge)の薄膜成長核が形成されるまで15分以下で完了する。このため、従来のアニール・エッチングによるゲルマニウム(Ge)結晶の位置制御作製法に比較して大幅に時間短縮が可能となる。
また、本発明では、位置制御して塗布した後に形成される結晶性ゲルマニウム(Ge)を、シリコン(Si)を成膜するときの薄膜成長核として用いれば、大粒径の結晶シリコン(Si)膜を作製することができる。
また、本発明の膜製造方法では、前記溶液又は懸濁液の作製、塗布、乾燥及び曝露処理を大気圧環境下で行うことができる。
これにより、本発明における薄膜成長核を形成するための全ての単位操作が大気圧環境下で実施可能となり、プロセス条件に一貫性が生じるため、膜製造設備のコストの低減及び膜製造コストの低減を図ることができる。
また、本発明の膜製造方法では、大気圧水素プラズマにて曝露処理するときの圧力は、100Torr以上であることが好ましい。
これにより、100Torr以上の大気圧環境下では、曝露処理に重要な働きをする原子状水素の原料である水素分子を大量に処理雰囲気中に供給できるため、大気圧水素プラズマでの曝露処理の高速化を達成できる。
また、100Torr以上の大気圧環境下では、溶液の蒸散が真空環境に比べて大幅に抑制できるため、溶液塗布処理を同一容器内で安定に行うことができる。
また、本発明の膜製造方法では、大気圧水素プラズマにて曝露処理するときの放電形態は、グロー放電であるとすることができる。
すなわち、従来、アーク水素プラズマを用いた手法が提案されてはいるが、アークプラズマを用いた場合には、還元反応は進行するものの、ガス温度が数千Kにも達し、還元対象となる酸化物そのものが気化するのみならず、基板を構成するアルミニウム(Al)やシリコン(Si)等の酸化物も溶解及び分解されてしまう。このことから、基板を用いるプロセスには適用が困難である。
これに対して、本発明では、グロー放電を用いた大気圧水素プラズマを用いることにより、低温還元処理が可能となる。
また、本発明の膜製造方法では、溶液又は懸濁液を位置制御して基板に塗布することができる。
従来では、例えば、液晶表示装置において、TFTをガラス基板の一部に形成する場合には、ガラス基板の全面に半導体薄膜であるシリコン(Si)を形成した後、必要箇所以外をエッチング等により除去する工程が必要であった。
しかし、本発明では、基板に溶液又は懸濁液を塗布するので、容易に、溶液又は懸濁液を任意の位置に塗布することができる。しかも、基板全体ではなく、基板の所望の箇所に塗布することができる。例えば、ゲルマニウム(Ge)原料が溶液状であるため、インクジェット方式等により、制御された位置に必要最小限の半導体ゲルマニウム(Ge)原料を塗布した後、大気圧水素プラズマにて曝露処理することによって、ゲルマニウム(Ge)の薄膜成長核を形成し、さらには、このゲルマニウム(Ge)の薄膜成長核の部分のみに半導体膜であるシリコン(Si)を形成することができる。
したがって、エッチングの工程を削減でき、さらにはエッチングにより廃棄される半導体材料の浪費を防止することができる。
また、本発明の膜製造方法では、大気圧水素プラズマにて曝露処理するときに、水素ガス、又は水素及び希ガスからなる混合ガスのみを用いることが好ましい。
これにより、毒性のあるガスを用いることなく、簡便に膜製造を行うことができる。
また、本発明の膜製造方法では、前記溶液又は懸濁液の塗布、及び曝露処理を400℃以下の温度、さらに言えば室温にて行うことが好ましい。
これにより、高温プロセスを排除することができる。
また、本発明の膜製造方法では、前記金属若しくは半導体を構成する元素、又はその元素からなるイオンを組成中に含む物質の溶液の濃度、乾燥方法を変化させることにより、大気圧水素プラズマにて曝露処理した後に形成される薄膜成長核の大きさ及び密度を制御することができる。尚、本発明では、ナノサイズのゲルマニウム(Ge)の薄膜成長核を形成することが可能である。
これにより、ゲルマニウム(Ge)の薄膜成長核の大きさを、溶液濃度、溶液温度、溶媒の乾燥方法等の簡便な物理パラメータにより制御することができる。
また、本発明の膜製造方法では、大気圧水素プラズマにて曝露処理して形成されたゲルマニウム(Ge)を薄膜成長核としてシリコン(Si)薄膜を形成する場合には、水素及び希ガスの混合ガスを主体とする反応ガスが充填された圧力10〜202kPa(76〜1520Torr)の反応室内に、薄膜成長核としてのゲルマニウム(Ge)を形成した基板とシリコン(Si)からなるターゲットとを互いに平行となるように対向配置し、かつ基板がターゲットよりも高温となるようにした状態で、基板とターゲットの間に放電を生起させることによって、基板における上記薄膜成長核としてのゲルマニウム(Ge)上に選択的にシリコン(Si)の薄膜を形成することが好ましい。
これにより、基板にゲルマニウム(Ge)の薄膜成長核の形成を行った後、連続して、圧力10〜202kPa(76〜1520Torr)の大気圧環境下において、シリコン(Si)を選択的に成膜することができる。
本発明の膜製造方法は、以上のように、金属若しくは半導体を構成する元素、又はその元素からなるイオンを組成中に含む物質の溶液又は懸濁液を、基板上に塗布し、乾燥させた後、大気圧水素プラズマにて曝露処理することにより、基板上に薄膜を形成するための薄膜成長核を形成する方法である。
それゆえ、基板上に薄膜成長核を形成する場合に、大気圧環境下で、高温プロセスを排除し、かつスループットを低下させることなく、さらには薄膜成長核の無駄を発生させることなく容易に薄膜成長核を形成することにより膜製造設備のコストの低減及び膜製造コストの低減を図ることができる膜製造方法を提供するという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施の形態の膜製造方法は、基板上に薄膜成長核を容易に形成する方法を提供するものである。
最初に、薄膜成長核について説明する。
例えば、基板としてのガラス基板に、大粒径シリコン(Si)膜を形成することを考える。この場合、基板として例えばシリコン(Si)基板上にさらにシリコン(Si)膜を形成する場合には、全面がシリコン(Si)の成長核であることに相当するので、図2において破線で示すように、シリコン(Si)膜の成膜速度Rdは成膜時間の初期から略定常状態の約0.95(a.u.)となっている。
しかし、基板としてのガラス基板にシリコン(Si)膜を形成する場合には、成膜初期には成長核が存在しないので、図2において実線で示すように、成膜初期にガラス基板上にシリコン(Si)の成長核が形成される必要があり、これがガラス基板上でのシリコン(Si)膜成長のインキュベーション時間となる。したがって、図2において実線で示すように、この場合には、シリコン(Si)の成長核の形成に伴って成膜速度Rdが徐々に増加するようになるが、定常状態の成膜速度Rdとなるまでに約25分を必要とし、多大な時間を要していることがわかる。
このような挙動は、シリコン(Si)と同族であるゲルマニウム(Ge)を結晶成長核として用いる場合には見られない。すなわち、結晶ゲルマニウム(Ge)基板上と結晶シリコン(Si)基板上とでは同等にシリコン(Si)膜が形成され易いことを意味している。このことは、図3に示すように、成膜初期(5分経過後)の成膜速度Rdが、結晶ゲルマニウム(Ge)基板上と結晶シリコン(Si)基板上とでは略同等の値である約8(nm/sec)を示すことからも分かる。
このことから、ガラス基板上にゲルマニウム(Ge)結晶核を形成した後、シリコン(Si)成膜を行うことによって、ガラス基板上のガラス面にはシリコン(Si)の付着を抑制し、かつゲルマニウム(Ge)成長核にのみシリコン(Si)を成長させることが可能となる。このことは、ゲルマニウム(Ge)の付着密度を制御することによって成長核密度を制御したことと同等であり、シリコン(Si)結晶粒の大粒径化につながる。これにより、大粒径、かつ不要なシリコン(Si)を除去する後工程を必要とせずに、ガラス基板上にTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)素子の土台となる半導体膜を形成することが可能となる。
また、本処理法で形成可能な結晶ゲルマニウム(Ge)膜は、それ自身が半導体である。このゲルマニウム(Ge)結晶は、シリコン(Si)に比べて高いキャリア移動度を有しており、魅力的な材料である。単純に、TFTスイッチング速度を比較した場合、より高いキャリア移動度の材料が望まれることから、ゲルマニウム(Ge)を用いることによって、より高速な応答性を期待できる。このことから、位置制御して析出させた後述するゲルマニウム(Ge)酸化物を還元した時点で、制御された位置にゲルマニウム(Ge)半導体膜を形成することが可能となる。この過程においても、最初からTFTを形成すべき位置にのみゲルマニウム(Ge)が形成されるため、無駄なゲルマニウム(Ge)を使用しなくてもよい。
次に、本実施の形態におけるガラス基板への薄膜成長核としての結晶性ゲルマニウム(Ge)微粒子の形成方法について説明する。
上述したように、本実施の形態では、ガラス基板上に薄膜成長核としての結晶性ゲルマニウム(Ge)微粒子を形成する必要がある。
ここで、従来のゲルマニウム(Ge)成長核の一般的な形成法としては、真空蒸着→アニール(焼きなまし)結晶化→フォトリソ(感光性樹脂によるマスクパターン形成)→RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)によるエッチングという方法がある。しかし、この従来方法では、長時間かつ多大な工程が必要であると共に、大気圧という環境と真空環境とが混在しており、一貫した圧力環境下で形成できないという問題点を有している。
この問題を解決するために、本実施の形態の膜製造方法では、ゲルマニウム(Ge)元素を組成中に含む化合物の溶液を、ガラス基板上に塗布し、乾燥させた後、大気圧水素プラズマにて還元することにより、薄膜成長核となる半導体ゲルマニウム(Ge)薄膜を製造することを特徴としている。
すなわち、本実施の形態では、毒性ガスを用いることなく大気圧一貫でゲルマニウム(Ge)薄膜又はゲルマニウム(Ge)微結晶(以下、「ゲルマニウム(Ge)薄膜」に統一)を形成するため、次の点を利用している。
第一:大気圧水素プラズマ中で生成される原子状水素が強い還元性を有すること。
第二:ゲルマニウム(Ge)の酸化物の水溶液を容易に作製し易いこと。
ここで、第一点目について、大気圧水素プラズマ中で生成される原子状水素の還元力を、次式に従ってギブスの自由エネルギーを算出することにより見積もった。ただし、次式において、G:ギブスの自由エネルギー、H:反応エンタルピー、T:絶対温度、S:エントロピーである。
G=H−TS
ここで、各種酸化物と水素原子及び水素分子との反応による各温度におけるギブスの自由エネルギー(G)を求めた結果を図4に示す。計算に用いた化学反応の反応式は、以下の通りである。
(a) GeO+4H →Ge + 2H
(b) GeO+2H →Ge + 2H
(c) SiO+4H →Si + 2H
(d) SiO+2H →Si + 2H
(e) 1/2 Al+3H →Al + 3/2 H
(f) 1/2 Al+3/2H →Al + 3/2 H
ここでは、反応生成物(還元生成物)、つまりゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)をそれぞれ1mol生成する際の値を求めている。
図4に示すように、(b),(d)及び(f)の反応は、それぞれGeO、SiO、Alと水素分子との反応におけるギブスの自由エネルギー(G)を示すが、800K以上のGeOと水素との反応を除き、全ての領域でギブスの自由エネルギー(G)が正の値を示している。
このことは、反応式に挙げた反応が矢印の方向に進行しないことを示しており、水素分子によるシリコン(Si)酸化物又はアルミニウム(Al)酸化物との還元反応は、今回扱った現実的な温度範囲において生じないことを意味している。さらに、ゲルマニウム(Ge)に限定して言えば、ゲルマニウム(Ge)酸化物の温度を800K以上に加熱しない限り、水素分子による還元反応は進行せず、水素分子を用いた場合には、低温還元処理は不可能であることがわかる。
一方、原子状水素による各種酸化物の還元反応においては、0K〜2000Kの温度範囲でいずれも負の値を示していることがわかる。このことから、各種酸化物に原子状水素を曝露することにより還元反応が進行することがわかる。
実際の実験系においては、酸化物の還元により生じたHOや雰囲気中の残留酸素の影響により、上式に挙げた還元反応と共に酸化反応も進行するため、酸化反応が進行するか還元反応が進行するかは、この両反応に関与するギブスの自由エネルギー(G)がいずれが優位かによる。例えば、アルミニウム(Al)の酸化・還元反応を示す(e)及び(f)を比較した場合、(e)の反応においてAlの還元反応は明らかに進行することを述べたが、これにより発生したHOが還元アルミニウム(Al)表面に滞在する場合、(f)の逆反応、つまり、
2Al+3HO→Al+3H
なる反応が生じことにより、より大きな負のギブスの自由エネルギー(G)が生成されることとなり、酸化反応が進行し得ることとなる。
一方、ゲルマニウム(Ge)の場合は、(a)のギブスの自由エネルギー(G)は−750〜−600kJ/molと大きな負の値を示し、一方、(b)の逆反応は、最小の値で−80kJ/mol程度であり、温度上昇と共にギブスの自由エネルギー(G)は上昇する。このことは、ゲルマニウム(Ge)が、アルミニウム(Al)やシリコン(Si)に比較して非常に還元し易い元素であることを示している。また、これまで述べた還元反応におけるギブスの自由エネルギー(G)が負であっても、反応速度は系の活性化エネルギー、及び原子状水素の生成密度(原子状水素の分圧)に律速される。
このため、反応を優位な時間内に進行させるためには、活性化エネルギーを低下させる触媒等を用いるか、又は原子状水素の生成密度を上昇させることが重要となる。このうち、触媒反応を用いる手法は、新たな物質を反応系内に取り入れる必要があり、本手法が目的とする半導体薄膜の形成において、これら触媒元素が電気的に活性な不純物となる場合、これら触媒不純物を除去する過程が必要となる。このため、後者の原子状水素密度の上昇こそが、もっとも簡便な手法である。
このため、本実施の形態において、大気圧近傍で水素プラズマを発生し、この水素プラズマ中での多量の原子状水素を利用することは、大きなメリットであると考えられる。
次に、第二点目として、本実施の形態では、原子状水素により還元され易いゲルマニウム(Ge)酸化物が水溶性であることを利用している。具体的には、ゲルマニウム(Ge)の供給源として、ゲルマン酸(HGeO、HGeO等)の水溶液を用いる。
すなわち、ゲルマニウム(Ge)は、酸化剤となる過酸化水溶液に侵漬することによって、主に下記の反応により水溶化する。ただし、HGeO:メタゲルマン酸、HGeO:オルトゲルマン酸である。
Ge+2H→HGeO or HGeO+2H
また、以下のゲルマン酸の脱水反応により二酸化ゲルマニウム(GeO)の析出が期待できる。
GeO or HGeO→GeO+H
この溶解反応により、まず、ゲルマニウム(Ge)酸化物(ゲルマン酸:HGeO(メタゲルマン酸)又はHGeO(オルトゲルマン酸)、並びに二酸化ゲルマニウム(GeO))を溶液として、位置制御を行いながらガラス基板上に塗布し、これを乾燥再結晶化させることにより析出した固体ゲルマン酸(HGeO(メタゲルマン酸)又はHGeO(オルトゲルマン酸)、又は二酸化ゲルマニウム(GeO)を大気圧水素プラズマにて還元すれば、所定の位置に位置制御させてゲルマニウム(Ge)薄膜を形成することが可能となる。
形成されるゲルマニウム(Ge)半導体膜の付着面積は、ガラス基板上へ散布するゲルマニウム(Ge)水溶液の水滴の大きさ、及びゲルマニウム(Ge)溶液の濃度を変化させることにより、任意に制御可能である。
以上の基本原理を元に、ゲルマニウム(Ge)溶液を、図1(a)に示すように、各種の手法によりガラス基板上へ塗布し、これを乾燥させることによって、ゲルマニウム(Ge)酸化物を析出させる。図1(a)においては、ガラス基板全面へのコートの場合、スピンコートによる手法が考えられ、また、スプレイ法による手法によっても霧密度の制御により、全面塗布〜ランダムに塗布した状態を再現できる。さらに、インクジェット方式により位置制御しながらゲルマニウム(Ge)水溶液を塗布することが可能になる。
これら塗布したゲルマニウム(Ge)酸化物水溶液を、乾燥により固体状ゲルマニウム(Ge)酸化物として析出させた後、図1(b)に示すように、大気圧近傍の水素プラズマにて還元することによって、ゲルマニウム(Ge)の結晶膜を得ることができる。尚、上記結晶性ゲルマニウム(Ge)の形状は、直方型、楕円球体型又は真球型に作製可能である。これにより、幾何学的に形状の揃った結晶性ゲルマニウム(Ge)微粒子を薄膜成長核として用いることができる。
ここで、大気圧近傍の水素プラズマを用いることのメリットは、単に還元反応を示す原子状水素密度を上昇させるのみならず、原料となるゲルマニウム(Ge)水溶液の蒸発速度を低減できることから、原料ゲルマニウム(Ge)水溶液溶媒の過度な蒸発を防止することにつながる。
また、GeOの生成法としては、ゲルマニウム(Ge)の熱酸化(900℃)が考えられるが、本方式ならば低温での作製が可能である。大気圧水素プラズマ処理の際も特に基板加熱は必要なく、全て低温でのプロセスで行うことができる。具体的には、溶液又は懸濁液の塗布、及び曝露処理を400℃以下の温度で行うことができる。さらに言えば室温が好ましい。これにより、高温プロセスを排除することができる。尚、400℃というのは、廉価なガラス基板を用いた場合にプロセスを行える最高温度である。また、紙やプラスチック上に行う場合には、室温でのプロセスが重要である。
そして、本実施の形態では、大気圧水素プラズマを用いることによって、GeO溶液塗布プロセス(大気圧)→プラズマ処理(大気圧)というように、プロセス間のつながりが良い。
この結果、例えば、図5に示すように、溶液塗布から水素プラズマ還元によるゲルマニウム(Ge)薄膜の形成までを、同一チャンバーにて大気圧一貫処理することが原理的に可能となる。すなわち、図5においては、インクジェット塗布装置2にて、原料ゲルマニウム(Ge)水溶液をガラス基板1に塗布し、水素プラズマ装置3にてゲルマニウム(Ge)の還元を行う工程を連続して行っている。
また、本実施の形態では、ゲルマニウム(Ge)と原子状水素との反応によりGeHが生成され、水素プラズマ照射により還元が進行すると共に、固体ゲルマニウム(Ge)が水素化物として気化・蒸散してしまうことが考えられる。しかし、そもそも、ゲルマニウム(Ge)は、シリコン(Si)に比較して10倍程度水素化し難い元素であり、かつ水素化物が非常に不安定な分子である。また、元素の質量が大きいことから、シリコン(Si)によるSiHに比較して拡散も生じ難い。このため、還元の進行により水素プラズマ中においてゲルマニウム(Ge)の水素化物が形成された場合においても、ゲルマニウム(Ge)の付着位置は、略初期の酸化ゲルマニウム(Ge)微粒子が形成された位置に限定される。このゲルマニウム(Ge)の水素化による気相拡散の抑制には、プロセス雰囲気が大気圧であることによる効果も寄与している。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態では、前記実施の形態1の膜製造方法に加えて、大気圧プラズマ化学輸送法による選択成膜法により、実施の形態1で作製したゲルマニウム(Ge)の薄膜成長核にシリコン(Si)膜を成膜する方法について説明する。尚、この技術は、本願発明者が、特願2007−225020において提案した技術である。
本手法では、ヘリウム(He)希釈したプラズマ化学輸送雰囲気下で成膜を行う場合に、成膜初期においてガラス基板上ではシリコン(Si)膜の付着が生じ難い一方、シリコン(Si)上では、成膜初期からプロセス条件によって一義的に決まる一定の成膜速度で付着反応が進行することを利用している。
この現象を併用することにより、ゲルマニウム(Ge)が付着したガラス基板上へ選択的にシリコン(Si)膜を形成することが可能になる。このことは、ゲルマニウム(Ge)水溶液を初期に所定位置に滴下しておき、大気圧一貫雰囲気でのプラズマ処理によりゲルマニウム(Ge)の酸化物を還元することによって、ゲルマニウム(Ge)成長核を選択的に形成でき、さらには大気圧水素プラズマ化学輸送法によるシリコン(Si)成膜を試みることにより、大粒径のシリコン(Si)膜を形成することが可能となることを意味している。
上記のプラズマ化学輸送雰囲気下で成膜する場合の膜製造装置10の構成について、図6に基づいて説明する。図6は膜製造装置10を示す構成図である。
図6に示すように、膜製造装置10は、反応室11の内部に、基板ヒータ12に載置された基板13が設けられていると共に、基板13に対して平行に対向する単結晶シリコン(Si)(001)板からなるターゲット14が設けられている。上記基板13は、実施の形態1にてしたガラス基板上の所望部分にゲルマニウム(Ge)膜を形成した基板である。また、ターゲット14と基板13との間の距離は例えば1mmである。
この反応室11は、例えば、圧力が10〜20kPa(76〜1520Torr)となっており、ヘリウム(He)と水素(H)との混合ガスが導入される。そして、ターゲット14には上部電極15にて電源16から電圧が印加され、ターゲット14と基板13との間でプラズマが発生できるようになっている。さらに、ターゲット14は、冷却水にて冷却される。
上記構成の膜製造装置10では、まず、単結晶Si(001)板からなるターゲット14を上部電極15の下に設け、基板13を基板ヒータ12上に設置する。そして、上部電極15を、20℃の冷却水にて2l/minの流量で流すことにより冷却する。また、ターゲット14と基板13との間の距離を例えば1mmとする。
そして、ターゲット14と基板13との間に電圧を印加してプラズマを発生することにより、基板13のゲルマニウム(Ge)にシリコン(Si)が形成される。成膜時間は、例えば5分である。
このように、本実施の形態では、圧力10〜202kPa(76〜1520Torr)の、水素(H)及び希ガスである例えばヘリウム(He)の混合ガスを主体とする反応ガスが充填された反応室11内に、比較的高温に保持した基板13と、比較的低温に保持した水素化物が揮発性であるターゲット14とを互いに平行に配置し、基板13とターゲット14の間に放電を生起させることによって、基板13の対象表面部上に選択的にターゲット14の薄膜を形成する。
ここで、上記の基礎となる原理を詳細に説明する。
すなわち、水素化物が揮発性である物質からなるターゲット14を基板13に対向して配置し、両者に温度差を設けておいて両者の間に大気圧程度の水素プラズマを生成すると、両板材の表面において(1)水素プラズマにより生起された原子状水素との化学反応によるターゲット物質Mの水素化物MHx(x=1,2...)の生成、揮発によるエッチング、及び、(2)エッチングにより生成された該水素化物がプラズマ中で再分解されることによるターゲット物質Mの堆積の両工程が同時に生じる。しかし、その速度は、低温側のターゲット14の表面では(1)のエッチングの方が大きく、(2)の堆積の方が小さい。
一方、高温側の基板13の表面では(2)の堆積の速度が大きく、(1)のエッチングの速度は小さい。したがって、両者の温度差を適度に大きくしておくことにより、エッチング/堆積の速度差は非常に大きなものとなり、低温側のターゲット14から高温側の基板への比較的高速の物質移動が生じる。
そして、上記の方法では、基板13上にプラズマによる成膜を行う際に、反応ガスとして水素(H)及び希ガスである例えばヘリウム(He)の混合ガスを主体としたものを用いる。水素(H)ガスに希ガスを混合することによってプラズマ中のラジカル密度を変調し、とりわけ、プラズマ中で生成される各ラジカル種の密度分布を、対象表面部以外の箇所で核生成し難いラジカルを多く含んだものにする。そして、このことにより、対象表面部以外の箇所での成長核発生頻度を対象表面部上での成長核発生頻度よりも低下させる。
次に、上記の方法において、対象表面部上にのみ選択的に膜が形成される原理を説明する。ここでは、基板13における対象表面部の材料がシリコン(Si)であり、基板13における対象表面部以外の表面がガラス(アモルファス材料)であるものとし、対象表面部上にシリコン(Si)の膜を形成するものとする。
上述の方法によって、基板13上にプラズマによるシリコン(Si)成膜を行う際、全面が成長核であるシリコン(Si)からなる対象表面部には、処理を開始するとシリコン(Si)膜がすぐに堆積し始める。一方、ガラス表面においては、一旦、シリコン(Si)膜が堆積するが、その付着によって基板−膜界面に界面エネルギーが新たに発生するため、対象表面部上に堆積するシリコン(Si)膜に比較して不安定な状態となる。このとき、プラズマ中の原子状水素の密度が高い場合、ガラス表面に付着したエネルギー的に不安定なシリコン(Si)が水素化及びエッチングされることによって再離脱する。こうして、対象表面上への優先的な薄膜堆積が実現する。
尚、プラズマ中のラジカル種の密度分布は、反応ガスを構成する希ガスの種類によっても制御可能であることが判明している。すなわち、希ガスは、例えばヘリウム(He)又はネオン(Ne)を用いることができる。
また、本実施の形態では、ターゲット14として、シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)を用いることができる他、その他として、例えば、炭素(C)、炭化珪素(SiC)、スズ(Sn)、ガリウム(Ga)、ボロン(B)、リン(P)、アンチモン(Sb)、ヒ素(As)のいずれかを主成分とするものを用いることができる。
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本実施例では、本実施の形態の膜製造方法について、実際に確認した実験例について説明する。
〔実施例1:ゲルマニウム(Ge)酸化物水溶液及びゲルマニウム(Ge)酸化物の作製〕
本実施例では、原料供給法であるゲルマニウム(Ge)酸化物の懸濁液は、ゲルマニウム(Ge)塊4gを50ccの30%過酸化水素水(H)に浸積し、室温に保持することにより、ゲルマニウム(Ge)を酸化ゲルマニウム(Ge)へ変質させることによって溶解させた。作製した懸濁液をピペットにて約1cc採取後、ガラス基板上へ滴下し80℃にて乾燥させた。
作製されたガラス基板上のゲルマニウム(Ge)酸化物の実体観察像を、図7に示す。図7に示すように、水溶液を塗布した箇所に白色の物質が観察される。このように、作製されたゲルマニウム(Ge)酸化物が、どのような形態を示すかを明らかにするために、電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による観察を行った。その結果を、図8(a)(b)に示す。図8(a)(b)に示すように、作製された析出物は、一辺が約500nm程度の立方体を呈する微粒子が集積したものであることがわかる。
このように、ファセットと見られる面で覆われた形の整った微粒子の存在が認められたことから、得られた微粒子の結晶形態を調べるためにX線回折法による結晶構造の同定を行った。その結果を、図9に示す。
図9に示すように、多数の結晶面からの回折ピークが観察され、その回折ピークの角度から得られた物質は、α−石英型のGeOであることが分かった。H.W.Kimらの報告によれば、ゲルマニウム(Ge)の微粉末を900℃にて熱酸化することによって、同様の構造を有する微結晶GeOを作製しており、この報告例と比較すると、本手法では、報告例にあるような一切の高温熱処理なしに石英構造型のGeO結晶を作製できることを示している。
ここで、溶液濃度等の調整により作製されるGe酸化物微粒子の粒径制御が可能なことを確認するため、先に作製したゲルマニウム(Ge)酸化物の溶液濃度を10倍に希釈し、その溶液10μlをピペットにて採取シリコン(Si)基板上へ滴下後、室温にて20分乾燥させた。それによって得られた酸化物の形態を電子顕微鏡により観察した。その結果を、図10に示す。
図10に示すように、楕円型をした微粒子の存在が確認され、長軸が約200nm、短軸が約50nmの微粒子が作製されていることがわかった。また、このように析出させたゲルマニウム(Ge)酸化物微粒子がいかなる結晶形態を呈するのかを判断するため、RHEED(Reflection High-Energy Electron Diffraction:反射型高エネルギー電子線回折)により分析した。その結果を、図11に示す。
図11に示すように、RHEEDパターンに多数のリングが観察されることが分かる。先のSEM観察像からも明らかなように、得られたゲルマニウム(Ge)酸化物が、粒径200nm程度の微粒子の集合体であることから、得られるRHEEDパターンは粉末回折に近いパターンとなる。このパターンにリングが観察されたことから、得られた微粒子は、非晶質ではなく結晶であることが明らかとなった。
また、回折パターンのリング半径の比から、希釈溶液から得られた酸化ゲルマニウム微粒子も、α−石英型の結晶構造を有することがわかった。
〔実施例2:ゲルマニウム(Ge)酸化物の粒子径の大きさの制御〕
本実施例では、ゲルマニウム(Ge)酸化物の粒子径の大きさについての制御が可能かについて検討実験を行った。
本実施例では、図12に示すように、まず、ゲルマニウム(Ge)ウエハ塊0.05g〜0.15gを20ccの30%過酸化水素水(H)に浸積し、生成したゲルマニウム(Ge)酸化物の沈殿後の上澄液をゲルマニウム(Ge)酸化物の溶液としてピペットにて約1cc採取後、ガラス基板上へ滴下し室温(25℃)で放置したものと、70℃にて乾燥させものとについて、SEMによりそれぞれ評価した。
次に、同様に、ゲルマニウム(Ge)ウエハ塊0.05g〜0.15gを20ccの30%過酸化水素水(H)に浸積した。そして、生成したゲルマニウム(Ge)酸化物の懸濁液をピペットにて約1cc採取後、ガラス基板上へ滴下し室温(25℃)で放置したものと、70℃にて乾燥させものとについて、同様に、SEMによりそれぞれ評価した。
沈殿後の上澄み液のゲルマニウム(Ge)酸化物における室温乾燥のものと、70℃にて乾燥させたものとについてのSEMの結果を、図13(a)〜(d)に示す。沈殿後の上澄み液を70℃にて乾燥したものについて、ゲルマニウム(Ge)ウエハ塊0.05gでは、図13(a)に示すように、きれいな球形つまり真球型であったのに対して、ゲルマニウム(Ge)ウエハ塊0.15gでは、図13(b)に示すように、いびつな楕円形つまり楕円球体型であることがわかった。また、溶かすゲルマニウム(Ge)の量を少なくすることによって、ゲルマニウム(Ge)微粒子の大きさが小さくなることがわかった。
一方、沈殿後の上澄み液を室温(25℃)にて放置したものについて、図13(c)(d)に示すように、70℃にて乾燥したものと同様に、溶かすゲルマニウム(Ge)の量を少なくすることによって、ゲルマニウム(Ge)微粒子の大きさが小さくなることがわかった。
次に、ゲルマニウム(Ge)酸化物の懸濁液における70℃にて乾燥させものについてのSEMの結果を、図14(a)(b)に示す。
その結果、図14(a)に示すように、ゲルマニウム(Ge)の溶かす量を0.05gとしたときの平均粒径は1μmであった。これに対して、図14(b)に示すように、ゲルマニウム(Ge)の溶かす量を0.15gとしたときの平均粒径は1.25〜2.5μmであった。この結果、溶解させるゲルマニウム(Ge)の重量を少なくすることによって、ゲルマニウム(Ge)微粒子の大きさが小さくなることがわかった。また、微粒子の形状は、直方型であった。
以上の結果、ゲルマニウム(Ge)酸化物の溶液又は懸濁液の重量%及び乾燥温度を変化させることによって、ゲルマニウム(Ge)酸化物の形状及び粒子の大きさを制御できることがわかった。
〔実施例3:析出酸化ゲルマニウム(Ge)の高圧水素プラズマ還元〕
本実施例では、実施例1で作製した酸化ゲルマニウム(Ge)を高圧水素プラズマに室温で曝露することにより、ゲルマニウム(Ge)の生成を試みた。プラズマの生成条件は、圧力400Torr、投入電力密度96W/cm、プラズマ生成ギャップ1mm、水素濃度25%である。曝露時間は5分とし、曝露時の試料温度は、室温である。曝露前及び曝露後の結果を、図15(a)(b)(c)及び図15(d)(e)(f)に示す。
図15(a)(b)(c)は、先にも示したように、プラズマ曝露前の実体観察像、断面SEM像、及び表面SEM像をそれぞれ示している。一方、図15(d)(e)(f)は、それぞれプラズマ曝露後の実体観察像、断面観察像、表面観察像を示している。
図15(a)と図15(d)とを比較することにより、図15(d)中の破線で囲まれた領域、つまり水素プラズマに直接曝露された部分において、白色の粉末から黒茶色への変色が観察される。また、図15(b)と図15(e)とを比較することにより、図15(e)では、表面から4μm程度の深さまで、観察像中のコントラストが異なる微粒子が積層していることがわかる。つまり、僅か5分のプラズマ曝露により4μm程度の深さまで、ゲルマニウム(Ge)酸化物がプラズマの影響を受けていることが分かる。
最後に、図15(c)と図15(f)とを比較すると、曝露前は比較的滑らかであった微粒子の表面に微細な穴が、多数形成されていることが分かる。これは、酸化ゲルマニウム(Ge)微粒子から水素還元により、ゲルマニウム(Ge)と結合していた酸素が水などの形で脱離する際に形成される穴であると考えられる。
そこで、このような変色を呈した原因が、酸化物の還元によるものであることを確認するため、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光法)によりゲルマニウム(Ge)の結合状態を調べた。図17にその結果を示す。着目したピークは、ゲルマニウム(Ge)3d軌道に起因するものである。尚、図16において、(a)は曝露前のXPSスペクトルを示し、(b)は5分間曝露後のXPSスペクトルを示す。
曝露前のスペクトルでは、結合エネルギー32.7eVの位置にゲルマニウム(Ge)3dピークが現れることがわかる。これは、酸素がゲルマニウム(Ge)に結合したことによるゲルマニウム(Ge)3dのケミカルシフトに一致しており、析出した白色固体がゲルマニウム(Ge)の酸化物であることが確認される。一方、図16の(b)に示す5分間曝露後のXPSスペクトルでは、ゲルマニウム(Ge)3dピークは、29.3eVの位置に現れる。この結合エネルギーは、ゲルマニウム(Ge)単体から観察されるピークと一致する。このことから、水素プラズマに5分間曝露することによって、ゲルマニウム(Ge)酸化物がゲルマニウム(Ge)へ還元されていることが確認できた。ここで、図16の(b)において、30〜32.5eVにかけて観察される裾ピークであるが、これは試料を空気中で搬送したことによる自然酸化膜の影響である。
その証左として、図17の(b)のスペクトルを得た試料に対して、ある一定時間のアルゴン(Ar)イオンスパッタを実施した後、再度XPSスペクトルを測定したところ、図17に示すスペクトルが得られた。スパッタを実施しなかった場合、裾ピークを観察することができるが、2分、及び6分間のスパッタを実施することにより、両スペクトルから裾ピークが無くなっていることがわかる。このことから、図16の(b)の裾スペクトルは、還元が不十分であることが原因ではなく、大気中搬送が原因の自然酸化膜が原因であることが明らかとなった。また、6分のスパッタによっても、ゲルマニウム(Ge)の酸化に起因する32eV辺りのピークが再検出されなかったことから、析出した各酸化物微粒子の内部まで十分に還元されていることが推察される。
ここで、α−石英型の結晶構造を有するGeOを還元することにより形成されるゲルマニウム(Ge)が、どの程度の結晶性を有するのかを調べるため、処理を行った試料に対してXRD(X-ray diffraction:X線回折)及びラマン分光による測定を行った。
図18は、還元処理後のXRDスペクトルを示す。図18に示すように、スペクトル中にGeOと結晶ゲルマニウム(Ge)とに起因する回折ピークが存在することがわかる。ここで、GeOの回折ピークが観察されるのは、酸化ゲルマニウム(Ge)層の厚みが14μm程度のうち表面から4μmの領域までがゲルマニウム(Ge)に還元された状態で試料が形成(図15(e))されおり、X線の進入深さが深いため、還元が進行していない深層部に残留した酸化ゲルマニウム(Ge)からの回折の影響を受けているためである。
そこで、ゲルマニウム(Ge)に対して侵入深さが非常に浅い可視光を用いたラマン散乱分光を実施した。これにより、還元進行層のみの情報を取り出すことが可能となる。その結果を、図19に示す。図19には、(a)還元前の試料からのラマン散乱スペクトルと、(b)還元後の試料からのラマン散乱スペクトルとを示す。
図19の(a)に示すように、還元前のスペクトルには、結晶性ゲルマニウム(Ge)に起因する波数300cm−1 におけるピークは観察されず、200〜300cm−1 及び400〜550cm−1 にかけて酸化ゲルマニウム起因のピークが多数観察される。一方、図19の(b)に示すように、還元後の試料のスペクトルには、波数300cm−1 に鋭い単一のピークが現れ、その半値幅も非常に小さい。さらには、波数280cm−1 当たりの非晶質ゲルマニウム(Ge)に起因するスペクトルも観察されないことから、α−石英型GeOを還元して形成されるゲルマニウム(Ge)は、室温処理にも拘わらず、結晶性ゲルマニウム(Ge)が形成できることが分かった。
以上のことから、本手法により、大気圧一貫・低温処理により結晶性ゲルマニウム(Ge)の薄膜を作製し得ることが明らかとなった。
また、上記では5分間の曝露を行った結果を示したが、単一GeO微粒子のみであれば、30秒以下の曝露で完全にゲルマニウム(Ge)化可能である。
〔実施例4:還元Ge微粒子状へのSi選択成膜〕
最後に、ガラス基板上で還元形成したゲルマニウム(Ge)を核として、実施の形態2にて示すAPECT法(Atmospheric-pressure Plasma Enhanced Chemical Transport:大気圧プラズマ化学輸送法)を用いて選択成膜が可能かどうかを確認した。
APECT法による成膜条件は、H:He=1:3とし、全圧を500Torr、投入電力96W/cm、基板温度200℃として、成膜時間を2分として成膜を行った。その結果を、図20(a)(b)(c)に示す。図20(a)は、成膜前の還元ゲルマニウム(Ge)微粒子、図20(b)はシリコン(Si)成膜後の還元ゲルマニウム(Ge)微粒子の表面、図20(c)は微粒子が表面に存在しなかったガラス基板表面の成膜後の様子を、それぞれSEMにより観察した結果を示している。
図20(a)と図20(b)とを比較することにより、各ゲルマニウム(Ge)微粒子にシリコン(Si)が付着することにより、その形状や粒子の間隔が大きく変化していることがわかる。
一方、図20(b)と同一倍率で観察した図20(c)に示すように、ガラス基板の表面には、ゲルマニウム(Ge)表面で観察された粒径を呈する付着物は観察されず、一面均一でコントラストの無いガラス基板の表面が観察される。この結果は、本手法による還元ゲルマニウム(Ge)微粒子をシリコン(Si)の成長核として用いることが可能であることを示している。
本発明は、基板上に薄膜成長核を形成する膜製造方法に関し、例えば、液晶ディスプレイに利用されるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)や薄膜太陽電池に対し、結晶性シリコン(Si)薄膜を形成する場合への適用が可能である。
(a),(b),(c)は、本発明における膜製造方法の実施の一形態を示す工程図である。 ガラス基板にシリコン(Si)膜を形成する場合と、シリコン(Si)基板にシリコン(Si)膜を形成する場合とにおける成膜時間と成膜速度との関係を示すグラフである。 ガラス基板、結晶ゲルマニウム(Ge)基板、及び結晶シリコン(Si)基板にシリコン(Si)を成膜する場合の5分経過後の成膜速度Rdを示すグラフである。 各種酸化物と水素原子、及び水素分子の反応による各温度におけるギブスの自由エネルギー(G)を求めた結果を示すグラフである。 本実施の形態の膜製造方法による製造装置を示す斜視図である。 本発明における膜製造方法の他の実施の形態を示すものであり、大気圧プラズマ化学輸送法による選択成膜法により、ゲルマニウム(Ge)膜を形成したガラス基板にシリコン(Si)を成膜する製造装置を示す構成図である。 作製されたガラス基板上のゲルマニウム(Ge)酸化物の実体観察像を示す図である。 (a)は作製されたゲルマニウム(Ge)酸化物の形態を電子顕微鏡により観察した結果を示す図であり、(b)はその拡大図である。 作製されたゲルマニウム(Ge)酸化物のX線回折法による結晶構造を示すチャートである。 ゲルマニウム(Ge)酸化物水溶液の再結晶化により析出させた微粒子を電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。 ゲルマニウム(Ge)酸化物微粒子の結晶形態を、RHEED(反射型高エネルギー電子線回折)により分析した結果を示す図である。 ゲルマニウム(Ge)酸化物の溶液又は懸濁液の作製方法を示す図である。 (a)〜(d)は、ゲルマニウム(Ge)酸化物の溶液(上澄み液)を用いた場合の乾燥状態のゲルマニウム(Ge)酸化物のSEM像を示す図である。 (a),(b)は、ゲルマニウム(Ge)酸化物の懸濁液を用いた場合の乾燥状態のゲルマニウム(Ge)酸化物のSEM像を示す図である。 (a),(b),(c)は、プラズマ曝露前のゲルマニウム(Ge)酸化物の実体観察像、断面SEM像、及び表面SEM像を示す図であり、(d),(e),(f)は、プラズマ曝露後のゲルマニウム(Ge)酸化物の実体観察像、断面観察像、及び表面観察像を示す図である。 水素プラズマ曝露前後のゲルマニウム(Ge)のXPS(X線光電子分光法)測定結果を示すチャートである。 水素プラズマ曝露後のゲルマニウム(Ge)に対してアルゴン(Ar)イオンスパッタを実施した後に、再度XPSスペクトルを測定した結果を示すチャートである。 還元処理後のゲルマニウム(Ge)のXRDスペクトルを示すチャートである。 還元前後後の微結晶ゲルマニウム(Ge)のラマンスペクトルを示すチャートである。 (a)は、成膜前の還元ゲルマニウム(Ge)微粒子のSEM像を示す図であり、(b)は還元ゲルマニウム(Ge)微粒子上に成膜されたシリコン(Si)成膜後のSEM像を示す図であり、(c)は微粒子が表面に存在しなかったガラス基板表面のシリコン(Si)成膜後のSEM像を示す図である。
符号の説明
1 ガラス基板(基板)
2 インクジェット塗布装置
3 水素プラズマ装置
10 膜製造装置
11 反応室
12 基板ヒータ
13 基板
14 ターゲット
15 上部電極
16 電源

Claims (12)

  1. 金属若しくは半導体を構成する元素、又はその元素からなるイオンを組成中に含む物質の溶液又は懸濁液を、基板上に塗布し、乾燥させた後、大気圧水素プラズマにて曝露処理することにより、基板上に薄膜を形成するための薄膜成長核を形成することを特徴とする膜製造方法。
  2. ゲルマニウム(Ge)元素を組成中に含む物質の溶液又は懸濁液を、基板上に塗布し、乾燥させた後、大気圧水素プラズマにて曝露処理することにより、基板上に薄膜成長核となる半導体ゲルマニウム(Ge)を形成することを特徴とする請求項1記載の膜製造方法。
  3. ゲルマニウム(Ge)元素を組成中に含む物質の溶液又は懸濁液の作製に、過酸化水素水とゲルマニウム(Ge)とを用いることを特徴とする請求項2記載の膜製造方法。
  4. 大気圧水素プラズマにて曝露処理して形成されたゲルマニウム(Ge)を薄膜成長核として、シリコン(Si)薄膜を形成することを特徴とする請求項2又は3記載の膜製造方法。
  5. 前記溶液又は懸濁液の作製、塗布、乾燥及び曝露処理を大気圧環境下で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜製造方法。
  6. 大気圧水素プラズマにて曝露処理するときの圧力は、100Torr以上であることを特徴とする請求項5記載の膜製造方法。
  7. 大気圧水素プラズマにて曝露処理するときの放電形態は、グロー放電であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の膜製造方法。
  8. 溶液又は懸濁液を位置制御して基板に塗布することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の膜製造方法。
  9. 大気圧水素プラズマにて曝露処理するときに、水素ガス、又は水素及び希ガスからなる混合ガスのみを用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の膜製造方法。
  10. 前記溶液又は懸濁液の塗布、及び曝露処理を400℃以下の温度にて行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の膜製造方法。
  11. 前記金属若しくは半導体を構成する元素、又はその元素からなるイオンを組成中に含む物質の溶液の濃度、乾燥方法を変化させることにより、大気圧水素プラズマにて曝露処理した後に形成される薄膜成長核の大きさ及び密度を制御することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の膜製造方法。
  12. 大気圧水素プラズマにて曝露処理して形成されたゲルマニウム(Ge)を薄膜成長核としてシリコン(Si)薄膜を形成する場合には、
    水素及び希ガスの混合ガスを主体とする反応ガスが充填された圧力10〜202kPa(76〜1520Torr)の反応室内に、薄膜成長核としてのゲルマニウム(Ge)を形成した基板とシリコン(Si)からなるターゲットとを互いに平行となるように対向配置し、かつ基板がターゲットよりも高温となるようにした状態で、基板とターゲットの間に放電を生起させることによって、基板における上記薄膜成長核としてのゲルマニウム(Ge)上に選択的にシリコン(Si)の薄膜を形成することを特徴とする請求項4記載の膜製造方法。
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