JP2010054498A - 試料分析方法、試料搬入部材、試料搬入方法および昇温脱離分析装置 - Google Patents

試料分析方法、試料搬入部材、試料搬入方法および昇温脱離分析装置 Download PDF

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Abstract

【課題】試料に含まれる極微量の成分の分析の感度を高めること。
【解決手段】液体中で試料(14)を調製する試料調製工程と、調製された試料(14)を、試料搬入部材(21)の冷媒液収容部(21b)に収容された液体状の冷媒中に沈んだ状態で収容する試料冷却収容工程と、試料(14)が収容された試料搬入部材(21)を、真空状態に排気されて分析が行われる分析真空室(2)に接続された搬入室(12)に搬入する試料搬入工程と、搬入室(12)を、真空状態に排気する搬入室排気工程と、搬入室(12)の試料搬入部材(21)を分析真空室(2)に移動させ、試料搬入部材(21)の試料(14)を、分析真空室(2)の試料保持部材(3)に移動させる試料移動工程と、試料保持部材(3)の試料に対して分析を行う試料分析工程と、を実行する試料分析方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、分析装置等で分析される試料の試料搬入方法、試料搬入方法で使用される試料搬入部材、これらで搬入された試料の分析を行う試料分析方法および昇温脱離分析装置に関し、特に、電解チャージ等により液体中で調製された試料に対して好適に使用可能な試料分析方法、試料搬入部材、試料搬入方法および昇温脱離分析装置に関する。
図15は従来の質量分析装置の一例としての昇温脱離分析装置の全体説明図である。
試料の特性を測定、分析する分析装置として、試料から脱離する微量なガスの測定を行う質量分析装置の一例である昇温脱離分析装置(TDS:Thermal Desorption Spectrometer)が従来から知られている。
図15において、従来の昇温脱離分析装置01では、分析が行われる分析真空室02には、試料を保持する試料保持部材、いわゆる試料ステージ03が配置されている。前記試料ステージ03には、下方から図示しない赤外光が照射され、試料ステージ03上に保持された試料の昇温が可能な構成となっている。また、前記分析真空室02は、真空ポンプ(排気装置)04により真空状態に排気されている。前記分析真空室02には、前記試料ステージ03の近傍に質量分析計06が配置されている。前記質量分析計06としては、例えば、4重極子質量分析計、いわゆるQ−MAS(quadrupole mass spectrometer)を使用可能である。
前記分析真空室02には、開閉可能な仕切弁、いわゆるゲートバルブ011を介して、搬入室012、いわゆるロードロックチャンバが接続されている。前記搬入室012には、試料014を搬入、搬出可能な試料出入口013が形成されている。前記昇温脱離分析装置01には、ゲート011が開いた状態で搬入室012と分析真空室02との間で移動可能な試料移動部材015、いわゆるロードロックアームが配置されている。なお、前記搬入室012には、真空ポンプ(排気装置)016が接続されており、搬入室012内部が真空状態に排気可能に構成されている。
図15に示す従来の昇温脱離分析装置01では、昇温脱離分析装置01の外部で調製された試料014が、試料出入口013を通じて真空排気前の搬入室012の試料移動部材015に載せられる。次に、搬入室012が真空ポンプ016で排気されて真空状態になると、ゲート011が開放されて、搬入室012から分析真空室02に試料移動部材015を移動させる。そして、試料移動部材015上の試料014を、図示しないマニュピレータ等を使用して試料移動部材015から試料ステージ03に移動させる。そして、試料ステージ03上の試料014が昇温されることで試料014から脱離した成分が、質量分析計06で測定される。
また、このような昇温脱離分析装置に関する技術として、下記の特許文献1記載の技術も公知である。
特許文献1としての特開2005−90987号公報には、加熱ステージ(10)上に保持された試料(21)を昇温した際に、試料(21)から放出される脱離ガスを質量分析計(20)で測定し、分析を行う昇温脱離分析装置が記載されている。特許文献1記載の技術では、まず、試料を分析装置に導入する前に、大気中で、試料表面に接着剤を塗布・乾燥させておく。次に、接着剤が塗布された試料を、ロードロックチャンバ(1)内にセットし、真空排気した後、試料搬送機構(5)を使用して、加熱ステージ(10)上にセットする。そして、加熱ステージ(10)上の試料表面に対して、銅製の急凍結棒(34)を使用して液体窒素を注入して冷却し、試料表面の接着剤を収縮硬化させて試料表面の膜を剥離させている。
すなわち、特許文献1記載の技術では、大気中で試料を調製した後、搬入室であるロードロックチャンバ(1)内で真空排気し、その後に、試料を冷却している。
特開2005−90987号公報(「0036」〜「0040」、図1)
(従来技術の問題点)
特許文献1記載の技術では、常温の試料をステージに載せてから真空排気、冷却による表面膜剥離、昇温の順に行うことによって、昇温時に脱離する成分ガスを測定している。しかし、特許文献1記載の技術では、接着剤を塗布する作業が加わって面倒であったり、接着剤の剥離時に精度良く剥離できない場合には測定結果に悪影響がでる問題もある。
また、前記特許文献1記載の技術や、図15に示す従来の昇温脱離分析装置01において、試料を試料ステージ03に載せてから冷却し、その後に昇温する場合、例えば、鉄鋼材料の水素脆化問題を引き起こす極微量の拡散性水素のように、極微量の成分を測定する場合には、冷却後に比べて脱離しやすい冷却前に真空排気を行うと、排気により極微量の成分が脱離してしまうため、分析の精度、感度が十分でないという問題がある。
さらに、前記従来の昇温脱離分析装置において、昇温脱離分析装置に導入前に、大気中で試料を冷却して、装置に搬入することも考えられるが、冷却時に大気中の成分(主に水)が付着する恐れがある。また、冷却された状態で分析装置まで搬入される途中で大気に曝されたり、排気前の分析装置内の雰囲気ガス中に含まれる成分が試料に吸着されてしまう恐れがあり、極微量の成分の測定に悪影響があり、分析の感度、精度が低下してしまう問題がある。
前述の事情に鑑み、本発明は、試料に含まれる極微量の成分の分析の感度を高めることを技術的課題とする。
前記技術的課題を解決するために、請求項1記載の発明の試料分析方法は、
液体中で試料を調製する試料調製工程と、
調製された前記試料を、試料搬入部材の冷媒液収容部に収容された液体状の冷媒中に沈んだ状態で収容する試料冷却収容工程と、
前記試料が収容された前記試料搬入部材を、真空状態に排気されて分析が行われる分析真空室に接続された搬入室に搬入する試料搬入工程と、
前記搬入室を、真空状態に排気する搬入室排気工程と、
前記搬入室の前記試料搬入部材を前記分析真空室に移動させ、前記試料搬入部材の前記試料を、前記分析真空室の試料保持部材に移動させる試料移動工程と、
前記試料保持部材の試料に対して分析を行う試料分析工程と、
を実行することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の試料分析方法において、
前記液体状の冷媒が収容された冷媒収容槽内に沈められた前記試料搬入部材に対して、前記試料搬入部材の前記冷媒収容部に調製された試料を収容する前記試料冷却収容工程、
を実行することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の試料分析方法において、
液体窒素により構成された前記液体状の冷媒に沈められた試料を収容する前記試料搬入部材が前記搬入室に搬入される前に、前記搬入室を窒素ガスでパージする窒素パージ工程、
を実行することを特徴とする。
前記技術的課題を解決するために、請求項4に記載の発明の試料搬入部材は、
液体状の冷媒が収容される冷媒液収容部を備え、真空状態の真空室を有する分析装置の外部において液体中で調製された試料が搬入され、前記冷媒液収容部の前記冷媒中に前記試料が沈んだ状態で収容されると共に、前記試料を冷媒中に保持した状態で前記分析装置に搬入されることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の試料搬入部材において、
前記分析装置に設けられ且つ分析される試料が保持される試料保持部材に対して、前記試料保持部材の外縁に接触可能に形成され、且つ、前記試料保持部材の外縁に対応する外縁形状を有する試料搬入側縁、
を備えたことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の試料搬入部材において、
前記試料保持部材に試料搬入側縁が接触した状態で、前記試料保持部材側に行くに連れて、深さが浅くなるように形成された前記冷媒液収容部、
を備えたことを特徴とする。
前記技術的課題を解決するために、請求項7に記載の発明の試料搬入方法は、
液体中で調製された前記試料を、試料搬入部材の冷媒液収容部に収容された液体状の冷媒中に沈んだ状態で収容する試料冷却収容工程と、
前記試料が収容された前記試料搬入部材を、分析が行われる分析装置に設けられた真空排気される搬入室に搬入する試料搬入工程と、
を実行することを特徴とする。
前記技術的課題を解決するために、請求項8に記載の昇温脱離分析装置は、
試料が保持され且つ試料の昇温を行う試料保持部材が配置されると共に内部が真空に排気される第1の分析真空室と、前記第1の分析真空室と接続され且つ試料から脱離したガス成分の質量分析を行う質量分析計が支持されて内部が真空に排気される第2の分析真空室と、を有し、試料の分析が行われる分析真空室と、
前記第1の分析真空室と前記第2の分析真空室との間を接続し、且つ、通過するガスから一部のガス成分を除去するガス除去装置と、
を備えたことを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の昇温脱離分析装置において、
請求項4ないし6のいずれかに記載の試料搬入部材を使用して、前記試料保持部材に前記試料を移動させることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の昇温脱離分析装置において、
前記第1の分析真空室を真空排気する第1の真空ポンプと、
前記第1の分析真空室と前記第1の真空ポンプとを接続する第1の排気路に設けられ、前記第1の分析真空室と前記第1の真空ポンプとの接続、切断を行う第1のバルブと、
を備え、前記質量分析が行われる場合には、前記第1のバルブが閉じられる
ことを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、試料が液体状の冷媒中に沈んで冷却された状態で移動されるため、大気に曝されることが低減でき、大気中の成分が試料に付着することを低減できる。また、試料が冷却された状態で真空に排気されるため、真空に排気された後に冷却される場合に比べて、試料の成分の脱離が低減できる。この結果、試料に含まれる極微量の成分の分析の感度を高めることができる。
請求項2に記載の発明によれば、試料搬入部材を冷却することができ、液体状の冷媒が気化しても冷却された試料搬入部材により試料の昇温を低減することが出来る。
請求項3に記載の発明によれば、試料に水分が付着することを低減することができる。
請求項4に記載の発明によれば、試料が液体状の冷媒中に沈んで冷却された状態で移動されるため、大気に曝されることが低減でき、大気中の成分が試料に付着することを低減できる。この結果、試料に含まれる極微量の成分の分析の感度を高めることができる。
請求項5に記載の発明によれば、試料搬入部材から試料保持部材に、試料を容易に移動させることができる。
請求項6に記載の発明によれば、前記冷媒液収容部材の深さが浅くなるように形成された面を通じて、容易に試料を移動させることができる。
請求項7に記載の発明によれば、試料が液体状の冷媒中に沈んで冷却された状態で移動されるため、大気に曝されることが低減でき、大気中の成分が試料に付着することを低減できる。また、試料が冷却された状態で真空に排気されるため、真空に排気された後に冷却される場合に比べて、試料の成分の脱離が低減できる。この結果、試料に含まれる極微量の成分の分析の感度を高めることができる。
請求項8に記載の発明によれば、測定結果に悪影響を及ぼす一部のガス成分を除去することができ、試料に含まれる極微量の成分の分析の感度を高めることができる。
請求項9に記載の発明によれば、試料に大気中の成分が付着したり、試料から成分が脱離することが低減でき、請求項9の構成を有しない場合に比べて、さらに、分析の感度を高めることができる。
請求項10に記載の発明によれば、質量分析時に第1のバルブV1が閉じられ、第1の分析真空室において脱離したガスが直接排気されず、第2の分析真空室に移動するため、分析の感度を高めることができる。
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
図1は本発明の実施例1の試料分析装置の一例としての昇温脱離分析装置の全体説明図である。
なお、図1において、実施例1の昇温脱離分析装置と、図15に示した従来の昇温脱離分析装置において、同一の構成については、図15の各符号から「0」を除いた符号を付し、詳細な説明は省略する。
図1において、本発明の実施例1の試料分析システムSでは、試料分析装置の一例としての昇温脱離分析装置1の搬入室12には、搬入室12内を窒素ガスで充満させる、いわゆる窒素パージするための窒素タンク20が接続されている。
また、実施例1の試料ステージ3では、図15に示す構成とは異なり、赤外線が使用されず、クライオスタット(低温恒温装置)が使用されている。なお、このような試料ステージ3は、従来公知の種々のものを使用可能であり、例えば、20K程度〜850K程度の温度領域で冷却および昇温が可能なAdvanced Research Systems inc.製のDisplexGM冷凍機式クライオスタットを使用可能である。
また、実施例1の昇温脱離分析装置1では、調製された試料14は、昇温脱離分析装置1の試料移動部材15に搬入される際に、試料搬入部材21に収容された状態で、試料出入口13を通じて試料移動部材15に搬入される。
図2は実施例1の試料搬入部材の斜視説明図である。
図3は試料搬入部材に収容された試料を試料ステージに移動させる作業を行う際の説明図である。
図2、図3において、実施例1の試料搬入部材21は、全体として略直方体状に形成されており、試料ステージ3側の表面である試料搬入側縁21aは、円板状の試料ステージ3に対応して、円弧状に凹んだ形状に形成されている。また、前記試料搬入部材21の上端部には、凹部状の冷媒液収容部21bが形成されている。図2、図3に示すように、前記冷媒液収容部21bは、試料ステージ3に試料搬入側縁21aが接触した状態で、試料ステージ3側に行くに連れて、深さが浅くなるように試料移動用傾斜面21cが形成されている。
なお、実施例1の試料保持部材21は、凹部状の冷媒液収容部21bの大きさに比べて、全体が十分大きな形状のSUS(Stainless Used Steel)材料で形成されており、全体の熱容量が大きくなっている。
また、実施例1では、前記試料保持部材21が試料移動部材15に載せられた状態で、試料移動部材15の上面の高さが試料ステージ3の上面の高さに一致するように、試料移動部材15の位置、高さが設定されている。
(実施例1の分析方法の説明)
図4は実施例1の分析方法の説明図であり、図4Aは試料調製工程の説明図、図4Bは試料冷却収容工程の説明図である。
図5は実施例1の分析方法の続きの説明図であり、図5Aは試料搬入工程の説明図、図5Bは試料移動工程の説明図である。
前記実施例1の試料分析システムSの昇温脱離分析装置1では、金属や非鉄金属の水素脆化の分析、水素吸蔵材料に含まれる水素の分析等を行う場合に、図4Aに示すように、試料調製工程において、分析対象の試料14に水素を注入するための電解チャージが行われる。すなわち、電源26が接続された試料14を、電解用溶液の一例としての硫酸(HSO)が収容された電解槽27内に沈めた状態で電源26を作動させて、試料14中に水素を注入する電解チャージを行う。
次に、図4Bにおいて、実施例1の試料冷却収容工程では、まず、試料搬入部材21を、液体状の冷媒の一例である液体窒素が収容された冷媒収容槽28内に、試料搬入部材21を沈めておいて、冷媒液収容部21bに液体窒素を入れると共に、熱容量の大きな試料搬入部材21を冷却する。そして、電解チャージされて調製された試料14を、ピンセット等で、電解槽27から速やかに冷媒収容槽28内の試料搬入部材21の冷媒液収容部21bに移動させる。
このとき、昇温脱離分析装置1では、ゲートバルブ11が閉じられた状態で、搬入室12内に窒素ガスタンク20の窒素ガスを充満させておくことで、予め、窒素パージしておく。
次に、図5Aにおいて、試料搬入工程では、冷媒収容槽28から試料搬入部材21を取り出し、試料出入口13を通じて窒素パージされた搬入室12に搬入し、試料移動部材(ロードロックアーム)15に載せる。このとき、冷媒収容槽28から取り出された試料搬入部材21の冷媒液収容部21bには、液体窒素が収容されると共に、液体窒素中に試料14が沈められた状態で移動される。
次に、搬入室排気工程において、搬入室12の真空ポンプ16を作動させて、窒素パージされた搬入室12内を真空状態に排気する。この排気に伴い、搬入室12内の窒素と、冷媒液収容部21bの液体窒素が気化して排気される。
前記搬入室12が、真空排気されて、分析真空室2の真空度に到達すると、図5Bに示す試料移動工程において、ゲートバルブ11が開放され、試料移動部材15を搬入室12から分析真空室2に移動させる。すなわち、前記試料移動部材15を、試料搬入部材21と共に試料の搬入、搬出が行われる図5Bに示す試料交換位置と、試料搬入部材21が試料ステージ3に接触した図3に示す試料載せ替え位置と、の間で移動させる。前記試料移動部材15を、図3に示す試料載せ替え位置に移動させると、マニュピレータ29で試料14が、掻き出されるように試料ステージ3に移動される。このとき、試料14は、試料移動用傾斜面21cに沿ってガイドされて試料ステージ3に移動する。なお、実施例1では、冷却された試料14が温まらないように、前記試料ステージ3は、試料14が移動される前に、20[K]程度に冷却されている。
試料14が試料ステージ3に載せられると、図1に示すように、試料移動部材15が試料交換位置まで退避する。そして、試料14が昇温され、試料14から脱離したガスが、質量分析計6の一例としてのQ−MASにより測定され、試料14に含まれた極微量の成分の分析が行われる。
(実施例1の作用)
したがって、前記構成を備えた実施例1の試料分析システムSでは、調製された試料14は、大気にほとんど曝されることなく、液体窒素中の試料搬入部材21に収容されて冷却される。このため、大気に曝された状態で冷却する場合に比べて、冷却時に大気中のガスが付着することが低減されており、分析に悪影響を及ぼすことが低減されている。
また、前記試料搬入部材21に保持された試料14は、液体状の冷媒に沈められた状態で保持されており、大気に曝されることなく搬入室12に収容される。このため、試料14を昇温脱離分析装置1に移動させる途中や、真空排気前の搬入室12に搬入後も、試料14に大気中のガス成分が付着しにくく、付着したガスにより分析に悪影響を及ぼすことが低減されている。
特に、実施例1では、搬入室12が不活性ガスであり、液体窒素と同成分の窒素でパージされており、大気中の水分が付着することが低減されている。
さらに、実施例1では、試料14が液体窒素に沈められて、冷却された状態のまま排気が開始され、真空状態に排気される過程で液体窒素が気化、蒸発している。したがって、真空排気後に試料を冷却する場合に比べて、比較的高温で成分が脱離しやすい冷却前の試料から真空排気時に成分が脱離することが低減される。
また、実施例1では、試料搬入部材21の熱容量が大きな構成となっているため、冷媒収容槽28で冷却された試料搬入部材21の温度が上昇しにくく、試料14が冷却された状態で保持されやすくなっている。したがって、試料14を試料ステージ3に移動させるまでの間に、試料搬入部材21が昇温して試料14の温度が上昇して成分が脱離することが低減されている。
さらに、実施例1では、試料14が移動される試料ステージ3も20K程度に冷却されており、冷却された状態で搬送される試料14が試料ステージ3に移動した瞬間に温まってしまうことが防止されている。
さらに、実施例1では、試料搬入部材21の試料搬入側縁21aが試料ステージ3の外形に対応して凹んだ形状に形成されると共に、試料移動用傾斜面21cで試料ステージ3側に向かって冷媒液収容部21bの深さが浅くなるように形成され、試料搬入部材21の上面が試料ステージ3の上面と同じ高さに設定されている。したがって、前記試料搬入部材21から試料ステージ3に試料を載せ替える際に、試料搬入部材21の上面と試料ステージ3の上面とが、隙間がほとんどない状態で面一となり、試料14を容易に移動させることが可能になっている。したがって、試料14の破損等が低減されており、試料14の破損による分析への悪影響が低減されている。
したがって、実施例1の試料分析システムSでは、調製された試料14が試料ステージ3にセットされて分析が行われるまでの間に、試料14に大気中のガス成分が付着したり、試料14から成分が脱離することが低減されている。この結果、試料14が昇温されて脱離ガスを測定、分析する際に、付着したガス成分により分析結果に悪影響が及ぼされたり、試料14に含まれる極微量の成分が脱離して測定できないといったことが低減され、高感度、高精度の分析を行うことができる。
図6は本発明の実施例2の昇温脱離分析装置の全体説明図であり、実施例1の図1に対応する図である。
次に本発明の実施例2の説明を行うが、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。この実施例2は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
図6において、実施例2の昇温脱離分析装置1′では、実施例1と異なり、分析真空室2′が、第1の分析真空室2aと、第1の分析真空室2aに配管31を介して接続された第2の分析真空室2bとを有する。そして、前記第1の分析真空室2aに試料ステージ3が配置され、第2の分析真空室2bに質量分析計6が配置されている。なお、前記第2の分析真空室2bは、真空ポンプ33により真空状態に排気されている。
図6において、実施例1の配管31は、U字形状に湾曲した形状に構成されており、配管31の外部には、配管31を冷却する冷却装置34が配置されている。したがって、前記配管31は、通過するガスの一部の成分を吸着して除去するトラップ管としての機能を有する。前記トラップ管31および冷却装置34により、実施例2のガス除去装置31+34が構成されている。
(実施例2の作用)
前記実施例1の昇温脱離分析装置1では、試料14の近傍に質量分析計6が配置されており、感度が高くなっている優位性がある。しかし、例えば、試料14に吸蔵された水素(H)を測定したい場合に、試料14の電解チャージ時に付着した水分(HO)が液体窒素冷却時に保持されたまま試料ステージ3にセットされることがある。この状態では、極微量の水素に対して、水分が比較的大量になってしまうので、この水分が昇温時に脱離すると、測定結果に悪影響を及ぼすことが考えられる。
これに対して、前記構成を備えた実施例2の昇温脱離分析装置1′では、脱離したガス成分が、U字形状のトラップ管31を通過する際に、配管31の内面に吸着されて除去されやすい水分が除去され、水分に比べて配管31に吸着されにくい水素成分は、トラップ管31を通過し、第2の分析真空室2bに流入しやすい。したがって、実施例2の昇温脱離分析装置1′は、第2の分析真空室2bに配置された質量分析計6により、水分の影響をほとんど受けることなく極微量の水素成分を高感度、高精度に測定することができる。すなわち、実施例2の昇温脱離分析装置1′では、ガス除去装置31により、不要なガス成分である水分を除去することができ、測定したいガス成分を高感度で測定することができる。
図7は本発明の実施例3の昇温脱離分析装置の全体説明図であり、実施例2の図6に対応する図である。
次に本発明の実施例3の説明を行うが、この実施例3の説明において、前記実施例1、2の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。この実施例3は、下記の点で前記実施例1、2と相違しているが、他の点では前記実施例1、2と同様に構成されている。
図7において、実施例3の昇温脱離分析装置1″では、第1の分析真空室2aには、第1の排気路P1を介して、第1の真空排気装置の一例としての真空ポンプ4が接続されており、第1の排気路P1には、第1のバルブV1が設けられている。なお、実施例3では、前記真空ポンプ4、33として、ターボ分子ポンプが使用されており、各分析真空室2a,2bが10−8[Pa]程度まで真空排気される。
実施例3では、第1の分析真空室2aに試料14を搬入する際に、第1のバルブV1が開の状態となって、真空ポンプ4により第1の分析真空室2aが排気され、且つ、真空ポンプ33により第2の分析真空室2bが排気される。そして、試料Sの質量分析が行われる場合には、第1のバルブV1が閉の状態となって、第1の真空分析室2aが、トラップ管31以外の部分が密閉された状態となる。そして、第2の真空ポンプ33で引き続き排気を継続した状態で、試料ステージ3が昇温されて、試料14の質量分析が行われる。
また、実施例3のトラップ管31は、第1の分析真空室2aから延びる上流管31aと、第2の分析真空室2bから延びる下流管31bと、上流管31aの下流端と下流管31bとの間を接続し且つ上流管31aおよび下流管31bよりも呼び径が大きなU字管31cと、を有する。なお、実施例3では、トラップ管31の上流管31a、下流管31b、U字管31cは、市販の3/8SUS316管(呼び径が3/8インチのステンレス316製の管)を使用している。
(コンダクタンスの説明)
第1の真空分析室2aの圧力をp1、第2の真空分析室2bの圧力をp2とすると、トラップ管31を流れる気体の流量Q[Pa・m/s]は、差圧Δp[Pa]=p1−p2により、以下の式(1)で表される。
Q=C・Δp …式(1)
このときの比例係数Cがコンダクタンスである。
実施例1〜3のような昇温脱離分析装置1〜1″のように、高真空度(分子流領域)では、気体の平均自由工程が長さLのパイプの直径D(断面積A)よりも十分に長く、vを気体分子の平均速度とした場合に、コンダクタンスCは、以下の式(2)で表される。
C=(1/4)・v・A・(4D/3L)
=(π/12)・v(D/L) [m/s] …式(2)
ここで、気体分子の平均速度vは、ボルツマン定数をk、温度をT、気体分子1個の質量をm[kg]、とした場合に、以下の式(3)で表される。
v=(8kT/πm)1/2 …式(3)
したがって、分子量Mの気体については、(分子量M[g])=(気体分子1個の質量m[kg])×(アボガドロ数N)であるため、式(3)は、以下の式(3′)となる。
v={(8×1.38×10−23×T)/(3.14×M×10−3/6.02×1023)}1/2
=1.46×10×(T/M)1/2 …式(3′)
したがって、例えば、20℃の大気(M=29)に対しては、v=464[m/s]となり、式(2)から、C=121(D/L)[m/s]となる。U字形状に湾曲した配管のコンダクタンスは、直管に較べてコンダクタンスが小さくなる。エルボーや直角管などの曲がり配管の場合には、便宜的にまっすぐな配管の長さを1.3倍長い配管として計算して大きな誤差は生じないことが知られている。ここではU字管31cに対して同様な取り扱いを行うことにする。したがって、D=0.0095[m]、L=0.75[m]の3/8SUS316の配管(配管肉厚0.89mm)の大気に対するコンダクタンスCは、C=121{(0.0095−0.00089×2)/1.3×0.75}=0.0000571となる。
また、室温(27℃=300K)の水素(M=2)に対しては、v=1788[m/s]となり、C=468(D/L)[m/s]となる。したがって、D=0.0095[m]、L=0.75[m]の3/8SUSU316のU字形状配管(配管肉厚0.89mm)の水素に対するコンダクタンスCは、同様に、C=468×{(0.0095−0.00089×2)/1.3×0.75}=0.000221[m/s]となる。
(実施例3の作用)
前記構成を備えた実施例3の試料分析システムSでは、試料14に水分や大気の成分等が付着した状態で、試料ステージ3にセットされても、実施例2の試料分析システムと同様に、実施例3の昇温脱離分析装置1″では、トラップ管31において、内面で吸着され、第2の分析真空室2bで水素を高感度、高精度で測定することができる。
特に、大気のガス(窒素や酸素)に比べて、水素は、トラップ管31におけるコンダクタンスが大きく、流入量が大きくなる。したがって、試料14に吸蔵された水素を効率的に、第2の分析試料室2bに流入させることができる。
また、実施例3では、第1のバルブV1を閉めて第1の分析真空室2aをトラップ管31を除いて密閉した状態で、真空ポンプ33を作動させており、第1の分析真空室2aの試料14から脱離したガスが、効率的にトラップ管31に導かれ、第2の分析真空室2bに流入する。したがって、第1のバルブV1を開放していたり、真空ポンプ33を作動させない場合に比べて、脱離したガスを、第2の分析真空室2bの質量分析計6で効率的に測定することができる。
(実験例)
次に、コンダクタンスCや昇温速度と、試料14からの脱離との関係について、シミュレーション実験を行った。
実験では、実施例3の昇温脱離分析装置1″のモデルを使用し、以下の計算式を使用した。すなわち、第1の分析真空室2aの体積をV1、圧力をp1とし、第2の分析真空室2bの体積をV2、圧力をp2とし、真空ポンプ33の排気速度をS、トラップ管31のコンダクタンスをC、試料14から脱離した気体の量をQとした場合に、以下の式(5)、(6)が成立する。
V1・(dp1/dt)=−C(p1−p2)+Q …式(5)
V2・(dp2/dt)=−S・p2+C(p1−p2) …式(6)
ここで、第2の分析真空室2bには真空ポンプ33が接続されており、排気速度Sが大きいため、p2<<p1として、p2を除外すると、式(5)は、以下の式(5′)となる。
V1・(dp1/dt)=−C・p1)+Q …式(5′)
また、式(6)において、排気速度Sが大きいため、圧力p2の時間変化が非常に小さくなり、(dp2/dt)<<(S/V2)と近似でき、式(6)の左辺を0と近似できる。また、式(5)の場合と同様に、排気速度Sが大きいため、C<<Sであるため、式(6)は式(6′)に近似できる。
p2=C・p1/S …式(6′)
以下の実験例では、前記式(5′)、(6′)を使用して、試料14からのガスの脱離と、コンダクタンスC等との関係について、実験を行った。
なお、実験例では、第1の分析真空室2aの体積V1を0.0025[m]、第2の分析真空室2bの体積V2を0.007[m]、真空ポンプ33の排気速度Sを0.210[m/s]とした。
(実験例1)
実験例1では、脱離する原子の結合エネルギーEaをEa=58.6[kJ/mol]=0.61[eV]とし、脱離する気体の数NをN=1×1015[個]とした。また、試料ステージ3の昇温速度βをβ=30[K/min]とし、コンダクタンスCをC=0.0002[m/s]とした。なお、気体の温度依存性はないものと仮定した。
(実験例1′)
比較例1では、実施例1のTDS、すなわち、トラップ管31や第2の分析真空室2bを有しない構成とした以外は、実験例1と同様とした。
実験結果を図8に示す。
図8は実験例1および実験例1′の実験結果の説明図であり、図8Aは横軸に温度を取り縦軸に脱離速度を取った脱離速度の実験結果のグラフ、図8Bは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例1′の実験結果のグラフ、図8Cは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例1の実験結果のグラフ、図8Dは図8Cの要部拡大図である。
図8Aにおいて、試料14を昇温していくと、217[K]程度で、脱離が発生するものと仮定する。これに対して、図8Bに示すように、実験例1′のTDS(昇温脱離分析システム)では、圧力の変化、すなわち、脱離したガス分子による圧力の上昇が発生し、脱離したガスが測定される。
これに対して、図8C、図8Dに示すように、実験例1のTDSでは、第1の分析真空室2aの圧力p1(図8C、図8Dの実線参照)においても、第2の分析真空室2bの圧力p2(図8C、図8Dの破線参照)でも、圧力上昇が発生し、脱離したガスが測定される。p2の圧力上昇は、図8Aに示した実験例1′の実験結果と同等であり、第2の分析真空室2bにおいて、実験例1′とほぼ同数のガス分子(グラフから0.97×1015[個])を測定できることが確認された。したがって、第3の実施例では、第2の分析真空室2bの水素に対する定量補正係数を修正することなく利用することが可能である。なお、実験例1′では、第1の分析真空室2aの圧力p1を計測すると、原理的には高感度化を実現できることになるが、検出されたガスの中に含まれる付着物としての水等の影響を排除できないので定量性に乏しくなるなどの問題が残る。
(実験例2)
実験例2では、コンダクタンスCの依存性を確認する実験を行った。
実験例2―1では、コンダクタンスCをC=0.00002[m/s]とした以外は、実験例1と同様とした。
実験例2−2では、コンダクタンスCをC=0.00005[m/s]とした以外は、実験例1と同様とした。
実験結果を図9、図10に示す。
図9は実験例2−1の実験結果の説明図であり、図9Aは図8Aと同一のグラフ、図9Bは図8Bと同一のグラフ、図9Cは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例2の実験結果のグラフ、図9Dは図9Cの要部拡大図である。
図9C、図9Dに示すように、実験例2−1では、第1の分析真空室2aと、第2の分析真空室2bとの間のコンダクタンスCが、実験例1に比べて小さいために、脱離して上昇した圧力p1が低下する速度が小さくなっている。すなわち、第1の分析真空室2aから第2の分析真空室2bに、ガス粒子が少しずつ流入し、第2の分析真空室2bで検出されるガス粒子の変化も少しずつになっている。従って、充分に高い温度までの昇温を行う場合でも、測定時間内に全てのガス粒子が第2の分析真空室2aに導入されない。このため、第2の分析真空室2bで検出されるガス粒子の数も、グラフから0.81×1015[個]となった。
図10は実験例2の実験結果の説明図であり、図10Aは横軸に温度をとり縦軸に第2の圧力変化をとった実験例1、2−1、2−2の実験結果のグラフ、図10Bは図10Aの要部拡大図である。
図10において、実験例2−2では、コンダクタンスCが、実験例1と実験例2−1の中間程度であるため、第2の分析真空室2bにおける圧力p2の変化について、ピークと低下する速度が中間程度になった。なお、実験例2−2では、ガス粒子の数は、0.91×1015[個]であった。したがって、実験例1、2の結果から、コンダクタンスCが小さすぎると、ガスの定量測定値が低下することが確認された。なお、コンダクタンスCが10−1[m/s]よりも大きくなると、トラップ管31による吸着、除去性能が小さくなるため、望ましくない。すなわち、実験例では、コンダクタンスCは、10−1〜10−4オーダの範囲が望ましいことが確認された。
(実験例3)
実験例3では、昇温速度と第2の分析真空室2bの圧力変化との関係について実験を行った。
実験例3−1では、実験例1と同様にコンダクタンスCをC=0.0002[m/s]とし、昇温速度βをβ=60[K/h]とした以外は、実験例1と同様とした。
実験例3−2では、実験例2−1と同様にコンダクタンスCをC=0.0002[m/s]とし、昇温速度βをβ=60[K/h]とした以外は、実験例1と同様とした。
実験結果を図11〜図13に示す。
図11は実験例3−1の実験結果の説明図であり、図11Aは図8Aと同様の脱離速度のグラフ、図11Bは図8Bと同様の従来の第1の分析真空室の圧力変化のグラフ、図11Cは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例3−1の実験結果のグラフ、図11Dは図11Cの要部拡大図である。
図11A、図11B、図8A、図8Bにおいて、実験例3−1では、実験例1に比べて、昇温速度が遅いため、脱離ガス粒子の脱離速度が遅くなっており、脱離速度や圧力変化のピークが下がっている。また、昇温速度が遅いため、脱離が開始する時期が実験例1よりも低温側にシフトしており、ピークは197[K]程度にシフトしている。
図11C、図11Dに示すように、実験例3−1では、第2の分析真空室2bで検出されるガス粒子の数がグラフから1.0×1015[個]であり、実験例1よりも、低い温度で検出が可能となっている。
図12は実験例3−2の実験結果の説明図であり、図12Aは図8Aと同様の脱離速度のグラフ、図12Bは図8Bと同様の従来の第1の分析真空室の圧力変化のグラフ、図12Cは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例3−2の実験結果のグラフ、図12Dは図12Cの要部拡大図である。
図12A、図12Bにおいて、実験例3−2も、実験例3−1と同様に、脱離ガス粒子の脱離速度が遅く、脱離が開始する時期が実験例1よりも低温側にシフトしている。
図12C、図12Dに示すように、実験例3−2では、第2の分析真空室2bで検出されるガス粒子の数がグラフから0.99×1015[個]であり、実験例3−1とほぼ同様であった。
図13は実験例3の実験結果のグラフであり、図13Aは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例3−1および3−2の第1の分析真空室の圧力変化のグラフ、図13Bは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例3−1および3−2の第2の分析真空室の圧力変化のグラフである。
図13において、図13Aに示すように、実験例3−1、実験例3−2では、コンダクタンスCの差に伴って、実験例3−1よりも実験例3−2の方が、第2の分析真空室2bにガスが移動しにくい、すなわち、第1の分析真空室2aに残るガスが多く、ピークが大きくなる。よって、実験例3−2では、実験例3−1に比べて、第1の分析真空室2aと第2の分析真空室2bとの圧力差、すなわち、式(1)のΔpが大きくなる。よって、実験例3−2の方が、コンダクタンスCが小さいが、Δpが大きくなるため、実験例3−1、3−2で、式(1)の左辺のQは、図13Bに示すように、同様となる。
したがって、実験例1、3の実験結果から、昇温速度を遅くすることで、低い温度で測定が可能になると共に、実験例1、2、3の実験結果から、コンダクタンスCが小さくても、昇温速度を小さくすることで、コンダクタンスCが大きい場合と同様の結果が得られることが確認された。すなわち、昇温速度を小さくすることで、コンダクタンスCの大小の影響を小さくすることができることが確認された。
なお、実験例3において、昇温速度を、60[K/h]から、120[K/h]、180[K/h]に変更した実験を行ったが、図13Bと同様の結果が得られたため、図示は省略する。
図14は実験例1と実験例3−1の比較の説明図であり、図14Aは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例1および実験例3−1の第2の分析真空室の圧力変化のグラフ、図14Bは図14Aにおいて実験例3−1を縦軸方向に10倍したグラフと実験例1の要部拡大図である。
図14に示すように、実験例3−1では、実験例1に比べて低温側にピークがシフトしているが、第2の分析真空室2bの圧力p2のピークの値は、オーダーが10倍以上異なっている。したがって、図14から、実験例1のように昇温速度を大きくすることで、測定の高感度化に期待できることが確認された。
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H05)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、試料分析装置の一例としての昇温脱離分析装置を例示したが、この装置に限定されず、電子顕微鏡等の真空室を有する種々の試料分析装置に適用可能である。また、質量分析計もQ−MASに限定されず、従来公知の質量分析計を使用可能である。
(H02)前記実施例において、試料搬入部材21の形状、大きさ等は、実施例に例示した構成に限定されず、使用や設計等に応じて適宜変更可能である。例えば、試料搬入部材21の形状は、試料ステージ3の外形に対応した形状としたが、この構成に限定されず、試料ステージ3の形状とは関係のない外形とすることも可能である。また、熱容量が大きくなくても良い場合には、全体を小型化したり、熱容量が更に大きくしたい場合は全体を大型化したり、熱容量の大きな材料を使用することが可能である。さらに、冷媒液収容部21bの形状も傾斜面を省略したり、四角形の凹部形状を丸形としたり、凹部でなく溝状としたり、あるいは冷媒液収容部21bの上面を塞ぐ蓋を設けたり、任意の形態に変更可能である。
(H03)前記実施例において、搬入室12は、試料搬入部材21を搬入前に窒素パージしておくことが望ましいが、試料14が大気に曝されない状態で搬入されるので、窒素パージを省略することも可能である。
(H04)前記実施例において、試料に電解チャージをして、脱離する極微量な水素を測定する分析方法について例示したが、測定対象は水素に限定されず、任意の成分を対象とした分析を行うことができる。また、試料の調製として電解チャージを例示したが、この調整方法に限定されず、液体冷媒に試料を沈めることが可能で、液体冷媒で影響を受けにくい任意の調整方法で調整した試料を使用可能である。
(H05)前記実施例2において、ガス除去装置31+34に冷却装置34を設ける構成としたが、冷却しなくても十分に除去できる場合には、冷却装置34を省略することも可能である。また、配管31の形状は、U字管に限定されず、波形形状やS字形状等の任意の形状とすることが可能である。
また、実施例2のガス除去装置31+34は、水素ガスに対して水分を除去するためにU字管と冷却装置の構成としたが、この構成に限らず、測定したいガス成分が通過し、除去したいガス成分を吸着可能な任意の構成とすることが可能である。例えば、ヘリウム成分を測定したい場合は、ガス除去装置としてクライオポンプを使用することで、ヘリウム成分以外の成分を除去することも不可能ではない。
本発明の試料分析方法、試料分析装置は、例えば、鉄鋼分野における水素脆化問題の分析や、非鉄金属材料分野における水素脆化問題の分析、燃料電池の水素吸蔵材料の研究開発、半導体、フラットパネルディスプレイの研究開発や故障解析等の分野において好適に使用可能である。
図1は本発明の実施例1の試料分析装置の一例としての昇温脱離分析装置の全体説明図である。 図2は実施例1の試料搬入部材の斜視説明図である。 図3は試料搬入部材に収容された試料を試料ステージに移動させる作業を行う際の説明図である。 図4は実施例1の分析方法の説明図であり、図4Aは試料調製工程の説明図、図4Bは試料冷却収容工程の説明図である。 図5は実施例1の分析方法の続きの説明図であり、図5Aは試料搬入工程の説明図、図5Bは試料移動工程の説明図である。 図6は本発明の実施例2の昇温脱離分析装置の全体説明図であり、実施例1の図1に対応する図である。 図7は本発明の実施例3の昇温脱離分析装置の全体説明図であり、実施例2の図6に対応する図である。 図8は実験例1および実験例1′の実験結果の説明図であり、図8Aは横軸に温度を取り縦軸に脱離速度を取った脱離速度の実験結果のグラフ、図8Bは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例1′の実験結果のグラフ、図8Cは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例1の実験結果のグラフ、図8Dは図8Cの要部拡大図である。 図9は実験例2−1の実験結果の説明図であり、図9Aは図8Aと同一のグラフ、図9Bは図8Bと同一のグラフ、図9Cは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例2の実験結果のグラフ、図9Dは図9Cの要部拡大図である。 図10は実験例2の実験結果の説明図であり、図10Aは横軸に温度をとり縦軸に第2の圧力変化をとった実験例1、2−1、2−2の実験結果のグラフ、図10Bは図10Aの要部拡大図である。 図11は実験例3−1の実験結果の説明図であり、図11Aは図8Aと同様の脱離速度のグラフ、図11Bは図8Bと同様の従来の第1の分析真空室の圧力変化のグラフ、図11Cは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例3−1の実験結果のグラフ、図11Dは図11Cの要部拡大図である。 図12は実験例3−2の実験結果の説明図であり、図12Aは図8Aと同様の脱離速度のグラフ、図12Bは図8Bと同様の従来の第1の分析真空室の圧力変化のグラフ、図12Cは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例3−2の実験結果のグラフ、図12Dは図12Cの要部拡大図である。 図13は実験例3の実験結果のグラフであり、図13Aは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例3−1および3−2の第1の分析真空室の圧力変化のグラフ、図13Bは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例3−1および3−2の第2の分析真空室の圧力変化のグラフである。 図14は実験例1と実験例3−1の比較の説明図であり、図14Aは横軸に温度を取り縦軸に圧力を取った実験例1および実験例3−1の第2の分析真空室の圧力変化のグラフ、図14Bは図14Aにおいて実験例3−1を縦軸方向に10倍したグラフと実験例1の要部拡大図である。 図15は従来の質量分析装置の一例としての昇温脱離分析装置の全体説明図である。
1,1′,1″…分析装置、
2,2′…分析真空室、
2a…第1の分析真空室、
2b…第2の分析真空室、
3…試料保持部材、
4…第1の真空ポンプ、
6…質量分析計、
12…搬入室、
14…試料、
21…試料搬入部材、
21a…試料搬入側縁、
21b…冷媒液収容部、
28…冷媒収容槽、
31+34…ガス除去装置、
P1…第1の排気路、
V1…第1のバルブ。

Claims (10)

  1. 液体中で試料を調製する試料調製工程と、
    調製された前記試料を、試料搬入部材の冷媒液収容部に収容された液体状の冷媒中に沈んだ状態で収容する試料冷却収容工程と、
    前記試料が収容された前記試料搬入部材を、真空状態に排気されて分析が行われる分析真空室に接続された搬入室に搬入する試料搬入工程と、
    前記搬入室を、真空状態に排気する搬入室排気工程と、
    前記搬入室の前記試料搬入部材を前記分析真空室に移動させ、前記試料搬入部材の前記試料を、前記分析真空室の試料保持部材に移動させる試料移動工程と、
    前記試料保持部材の試料に対して分析を行う試料分析工程と、
    を実行することを特徴とする試料分析方法。
  2. 前記液体状の冷媒が収容された冷媒収容槽内に沈められた前記試料搬入部材に対して、前記試料搬入部材の前記冷媒収容部に調製された試料を収容する前記試料冷却収容工程、
    を実行することを特徴とする請求項1に記載の試料分析方法。
  3. 液体窒素により構成された前記液体状の冷媒に沈められた試料を収容する前記試料搬入部材が前記搬入室に搬入される前に、前記搬入室を窒素ガスでパージする窒素パージ工程、
    を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の試料分析方法。
  4. 液体状の冷媒が収容される冷媒液収容部を備え、真空状態の真空室を有する分析装置の外部において液体中で調製された試料が搬入され、前記冷媒液収容部の前記冷媒中に前記試料が沈んだ状態で収容されると共に、前記試料を冷媒中に保持した状態で前記分析装置に搬入されることを特徴とする試料搬入部材。
  5. 前記分析装置に設けられ且つ分析される試料が保持される試料保持部材に対して、前記試料保持部材の外縁に接触可能に形成され、且つ、前記試料保持部材の外縁に対応する外縁形状を有する試料搬入側縁、
    を備えたことを特徴とする請求項4に記載の試料搬入部材。
  6. 前記試料保持部材に試料搬入側縁が接触した状態で、前記試料保持部材側に行くに連れて、深さが浅くなるように形成された前記冷媒液収容部、
    を備えたことを特徴とする請求項5に記載の試料搬入部材。
  7. 液体中で調製された前記試料を、試料搬入部材の冷媒液収容部に収容された液体状の冷媒中に沈んだ状態で収容する試料冷却収容工程と、
    前記試料が収容された前記試料搬入部材を、分析が行われる分析装置に設けられた真空排気される搬入室に搬入する試料搬入工程と、
    を実行することを特徴とする試料搬入方法。
  8. 試料が保持され且つ試料の昇温を行う試料保持部材が配置されると共に内部が真空に排気される第1の分析真空室と、前記第1の分析真空室と接続され且つ試料から脱離したガス成分の質量分析を行う質量分析計が支持されて内部が真空に排気される第2の分析真空室と、を有し、試料の分析が行われる分析真空室と、
    前記第1の分析真空室と前記第2の分析真空室との間を接続し、且つ、通過するガスから一部のガス成分を除去するガス除去装置と、
    を備えたことを特徴とする昇温脱離分析装置。
  9. 請求項4ないし6のいずれかに記載の試料搬入部材を使用して、前記試料保持部材に前記試料を移動させることを特徴とする請求項8に記載の昇温脱離分析装置。
  10. 前記第1の分析真空室を真空排気する第1の真空ポンプと、
    前記第1の分析真空室と前記第1の真空ポンプとを接続する第1の排気路に設けられ、前記第1の分析真空室と前記第1の真空ポンプとの接続、切断を行う第1のバルブと、
    を備え、前記質量分析が行われる場合には、前記第1のバルブが閉じられる
    ことを特徴とする請求項8または9に記載の昇温脱離分析装置。
JP2009162087A 2008-07-31 2009-07-08 試料分析方法、試料搬入部材、試料搬入方法および昇温脱離分析装置 Active JP5405218B2 (ja)

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