JP2010052693A - 車両用ニーエアバッグ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】乗員の膝がエアバッグドアに近接等した状態でニーエアバッグが膨張展開した場合に脛への負担を軽減する。
【解決手段】エアバッグモジュール62は、グラブドア20に配設されている。一方、グラブボックス本体16の上縁及び下縁には上側延出部100及び下側延出部114が一体に形成されている。上側延出部100と車両前方側に対向する位置にはインストルメントパネル10の開口上縁部102が配置されており、かつ両者の間にはピン108及びカラー112が介在されている。下側延出部114と車両前方側に対向する位置には、取付相手部材124に固定された取付片116が配置されており、両者の間にはピン108及びカラー112が介在されている。カラー112は、ニーエアバッグ86の膨張展開時に当該ニーエアバッグ86を介して車両前方側への所定値以上の軸方向荷重が入力されると、圧壊するように設定されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、乗員の膝を保護するための車両用ニーエアバッグ装置に関する。
近年、衝突時の乗員保護性能を向上させる観点から、衝突時にニーエアバッグを膨張展開させて乗員の膝頭(以下、単に「膝」という。)を拘束する車両用ニーエアバッグ装置の車両への搭載が促進されている。
例えば、下記特許文献1に開示された助手席用の車両用ニーエアバッグ装置では、インストルメントパネルにおける着座乗員の膝高さにエアバッグモジュールが配設されており、衝突時には上部チャンバ、中央チャンバ及び下部チャンバに区画されたニーエアバッグが乗員の膝側へ膨張展開するようになっている。
また、下記特許文献2に開示された助手席用の車両用ニーエアバッグ装置では、グラブボックスのグラブドア内にエアバッグモジュールが配設されている。衝突時には、グラブドア内に配設されたインフレータからガスが噴出されて、折り畳み状態でグラブドア内に格納されたニーエアバッグが乗員の膝側へ膨張展開されるようになっている。
特開平11−321539号公報 特開2002−356137号公報 特開2003−40072号公報 特開2005−96576号公報 特開2007−161090号公報
しかしながら、上記先行技術による場合、以下の点において改良の余地がある。すなわち、特許文献1に開示された車両用ニーエアバッグ装置の場合、エアバッグモジュールのモジュールケースが車体側に支持されており、かつニーエアバッグが乗員の脛の上部(膝頭の直ぐ下)付近(以下、単に「脛上部」という。)の高さで膨張展開するため、膝がエアバッグドアに近接した状態又は接触した状態(以下、両者を併せて「近接等した状態」という。)で乗員が車両用シートに着座していると、ニーエアバッグの展開反力によって脛上部が車両後方側へ押圧されて脛に負担がかかることがある。なお、特許文献2に開示された車両用ニーエアバッグ装置の場合でも、エアバッグモジュールを収納したグラブドアがグラブボックス本体を介して車体側に支持されており、かつニーエアバッグが乗員の脛上部の高さで膨張展開するため、同様の課題がある。
本発明は上記事実を考慮し、乗員の膝がエアバッグドアに近接等した状態でニーエアバッグが膨張展開した場合に脛への負担を軽減することができる車両用ニーエアバッグ装置を得ることが目的である。
請求項1の発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、作動することによりガスを発生するガス発生手段と、折り畳み状態で格納されると共に着座状態の乗員の膝の高さに配置されかつガス発生手段から供給されたガスによって乗員の膝側へ向けて膨張展開するニーエアバッグと、を含んで構成されたエアバッグモジュールと、このエアバッグモジュールが収納されたエアバッグモジュール収納部と、このエアバッグモジュール収納部及びこれを支持する支持部材の少なくとも一方側に設けられ、ニーエアバッグの膨張展開時に当該ニーエアバッグを介して車両前方側への所定値以上の荷重がエアバッグモジュール収納部に作用することにより、当該エアバッグモジュール収納部を車体側に対して所定範囲内で車両前方側へ相対移動させる移動手段と、を有している。
請求項2の発明は、請求項1記載の車両用ニーエアバッグ装置において、前記エアバッグモジュール収納部は、インストルメントパネルの助手席側に設けられたエアバッグケース又はグラブボックスのグラブドアである、ことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項2記載の車両用ニーエアバッグ装置において、前記移動手段は、前記支持部材側に設けられ、前記所定値以上の荷重がエアバッグモジュール収納部に作用した際に荷重作用方向に塑性変形する樹脂部材又は荷重作用方向に弾性変形する弾性部材を含んで構成されている、ことを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1記載の車両用ニーエアバッグ装置において、前記エアバッグモジュール収納部は、インストルメントパネルの助手席側に設けられたグラブボックスのグラブドアであり、前記移動手段は、前記支持部材側に設けられると共にグラブドア側へ突出された突出部と、当該グラブドア側に設けられると共に前記所定値以上の荷重がグラブドアに作用した際に当該突出部に押圧されて変形又は破断することによりグラブドアを車両前方側へ相対移動させる脆弱部と、を含んで構成されている、ことを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4記載の車両用ニーエアバッグ装置において、前記移動手段による前記エアバッグモジュール収納部の相対移動ストロークは、当該エアバッグモジュール収納部の上部側よりも下部側の方が大きくなるように設定されている、ことを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項5記載の車両用ニーエアバッグ装置において、前記移動手段は、前記エアバッグモジュール収納部の下部側のみに設定されている、ことを特徴としている。
請求項1記載の本発明によれば、ガス発生手段が作動するとガスが発生し、当該ガスは折り畳み状態で格納されたニーエアバッグ内へ流入される。これにより、ニーエアバッグが乗員の膝側へ膨張展開される。
ここで、本発明では、エアバッグモジュールは着座状態の乗員の膝の高さに配置されているので、仮にエアバッグモジュール収納部に膝を近接等させた状態で乗員が車両用シートに着座していると、ニーエアバッグの膨張展開時にニーエアバッグの展開反力によって脛上部が車両後方側へ強く押圧されることがある。
しかし、本発明では、エアバッグモジュール及びこれを支持する支持手段の少なくとも一方側に移動手段を設けたので、ニーエアバッグの膨張展開時に当該ニーエアバッグを介して車両前方側への所定値以上の荷重がエアバッグモジュール収納部に作用すると、エアバッグモジュール収納部が車体側に対して所定範囲内で車両前方側へ相対移動される。すなわち、本発明では、仮に小柄な乗員が膝をエアバッグモジュール収納部に近接等させた状態で車両用シートに着座していた場合でも、ニーエアバッグが当該乗員の膝側へ膨張展開する初期の段階で、エアバッグモジュール収納部を車両前方側へ相対移動させることができる。このため、ニーエアバッグの車両幅方向及び車両上下方向への展開性が良くなり、その分、乗員の脛上部に作用するニーエアバッグの展開反力が小さくなる。
請求項2記載の本発明によれば、エアバッグモジュール収納部がインストルメントパネルの助手席側に設けられたエアバッグケース又はグラブボックスのグラブドアとされているので、体格が小柄な乗員が助手席に着座した場合に、当該着座乗員の膝がインストルメントパネルにおけるエアバッグケースの配置位置又はグラブドアに近接等した状態になり易い。
請求項3記載の本発明によれば、ニーエアバッグが膨張展開する際に、所定値以上の荷重がエアバッグモジュール収納部に作用すると、支持部材側に設けられた移動手段の樹脂部材が荷重作用方向に塑性変形し、又は弾性部材が荷重作用方向に弾性変形する。これにより、エアバッグモジュール収納部は、車体側に対して所定範囲内で車両前方側へ相対移動される。
請求項4記載の本発明によれば、ニーエアバッグが膨張展開する際に、所定値以上の荷重がエアバッグモジュール収納部であるグラブドアに作用すると、支持部材側に設けられた移動手段の突出部にグラブドア側に設けられた脆弱部が押圧される。これにより、脆弱部が変形又は破断し、グラブドアが車体側に対して所定範囲内で車両前方側へ相対移動される。その結果、エアバッグモジュール収納部は、車両前方側へ相対移動される。
請求項5記載の本発明によれば、移動手段によるエアバッグモジュール収納部の相対移動ストロークは、エアバッグモジュール収納部の上部側よりも下部側の方が大きくなるように設定されているので、脛上部に作用する荷重がより小さくなる。
請求項6記載の本発明によれば、移動手段はエアバッグモジュール収納部の下部側のみに設定されているので、少なくともエアバッグモジュール収納部の下部側における車両前方側への相対移動は確保される。
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、乗員の膝がエアバッグドアに近接等した状態でニーエアバッグが膨張展開した場合に脛への負担を軽減することができるという優れた効果を有する。
請求項2記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、体格が小柄な乗員が助手席に着座した場合に特に効を奏するという優れた効果を有する。
請求項3記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、樹脂部材の強度又は弾性部材の弾性係数の設定を変えることにより、エアバッグモジュール収納部をどの程度の荷重で車両前方側へ相対移動させるか、或いはエアバッグモジュール収納部をどの程度の距離(ストローク)相対移動させるかといったチューニングを容易にすることができるという優れた効果を有する。
請求項4記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、脆弱部の強度の設定を変えることにより、エアバッグモジュール収納部をどの程度の荷重で車両前方側へ相対移動させるか、或いはエアバッグモジュール収納部をどの程度の距離(ストローク)相対移動させるかといったチューニングを容易にすることができるという優れた効果を有する。
請求項5記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、脛への負担をより一層軽減することができるという優れた効果を有する。
請求項6記載の本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置は、必要最小限の構成の追加で充分な効果が得られるという優れた効果を有する。
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
図5には、本実施形態に係るグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置が搭載されたインストルメントパネルの外観正面図が示されている。また、図4には、当該グラブドアと着座乗員との位置関係を車両側方から見て示す概略縦断面図が示されている。さらに、図3には、当該グラブドアの分解斜視図が示されている。また、図1には、非作動時におけるグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置の要部拡大縦断面図(図5の1−1線に沿った拡大断面図)が示されている。最初に、これらの図を用いて、装置全体の構成について説明する。
図5に示されるように、インストルメントパネル10の助手席側で乗員の膝と略対向する位置(より正確には、インストルメントパネル10の下部を構成するインストルメントパネルロア12の上部)には、小物を入れるためのグラブボックス14が配設されている。図1に示されるように、グラブボックス14は、ボックス状に形成された樹脂製のグラブボックス本体16と、このグラブボックス本体16の開口部18を開閉するグラブドア20と、によって構成されている。グラブボックス本体16は、車両後方側(車室内側)に開口部18が臨むように配置されている。
図1及び図3に示されるように、上述したグラブボックス本体16の開口部18を閉塞するグラブドア20には、グラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置40が内蔵されている。グラブドア20は、車室内側に配置されて意匠面を形成する矩形パネル状のグラブドアアウタ24と、このグラブドアアウタ24の車両前方側に配置されてグラブドアアウタ24に被嵌される矩形枠状のグラブドアインナ26と、を備えている。グラブドアアウタ24及びグラブドアインナ26は、いずれも樹脂製とされている。
グラブドアアウタ24は、略矩形パネル状に形成された基材28と、この基材28の車室内側の面を覆う表皮30との二層構造として構成されている。基材28及び表皮30はいずれも樹脂製とされているが、表皮30の方が基材28よりも軟質な樹脂材料で構成されている。基材28の下縁側両サイドには、左右一対のストッパ32が立設されている。各ストッパ32は、基材28の一般部28Aから面直角方向(車両前方側)へ向けて延出されており、グラブドア20が全開状態となったときに先端部がグラブボックス本体16の壁面に干渉してグラブドア20を全開位置に保持する役目を果たしている。
さらに、ストッパ32の内側には、側面視で略L字状に形成されたヒンジ34が設けられている。ヒンジ34の一端部はグラブボックス本体16にビス等で固定されており、グラブドア20が開閉される際には、図1の回転中心Q回りにグラブドア20が回転するようになっている。
また、グラブドアアウタ24の一般部28Aにおける車室外側の面(グラブドアインナ26側の面)には、後述するエアバッグドアリテーナ42を介して所定値以上のバッグ膨張圧が作用すると破断する略「日」の字状のティア部36が設定されている。ティア部36は、一般部28Aの車両上下方向中間部に車両幅方向に沿って延在する横方向中央ティア部36Aと、横方向中央ティア部36Aの両端部から車両上下方向へ延びる左右一対の縦方向ティア部36Bと、これらの縦方向ティア部36Bの先端部同士を繋ぐ横方向上下ティア部36Cと、によって構成されている。
一方、グラブドアインナ26は、グラブドアアウタ24の基材28の一般部28Aと対向する矩形枠状の底壁部26Aと、この底壁部26Aの車両幅方向の両側部に一体に形成された左右一対の側壁部26Bと、これらの左右一対の側壁部26Bのグラブドアアウタ24側の端部から車両幅方向外側へ向けて張出された左右一対の張り出し部26Cと、を含んで構成されている。張り出し部26Cの下縁側には、グラブドアアウタ24のストッパ32と対向する位置に切欠38が形成されている。この切欠38内にストッパ32が挿入されている。
上記構成のグラブドアアウタ24とグラブドアインナ26とは、両者の少なくとも一方に形成された縦方向、横方向のリブ39(図1参照)を介して相互に接合されている。具体的には、リブ39の先端部にて、振動溶着されているが、締結具による締結を利用してもよいし、振動溶着と締結とを併用してもよく、グラブドアアウタ24とグラブドアインナ26とを一体化できる構成であればよい。
図1及び図3に示されるように、上述したグラブドアアウタ24とグラブドアインナ26との間には、略矩形平板状に形成された樹脂製のエアバッグドアリテーナ42が配設されている。エアバッグドアリテーナ42は、矩形平板状の基部44と、この基部44の外周部近傍から立設された矩形枠状の縦壁部46と、を備えている。縦壁部46の上部及び下部には、各々矩形状の開口として構成された複数の係止孔48が所定の間隔で形成されている。なお、基部44の外周部近傍部位と縦壁部46との間には、両者に跨るように配置されかつ側面視で直角三角形状に形成された補強用のリブ50が複数個立設されている。
また、エアバッグドアリテーナ42の基部44の中央部(縦壁部46で囲まれた部分)には、左右一対の縦溝52Aとこれらの縦溝52A同士を繋ぐ横溝52Bとから成る正面視でH形状の溝52が形成されている。この溝52により、上下一対のエアバッグドア54が形成されている。なお、各エアバッグドア54の横溝52B側のコーナー部54Aは、円弧状に形成されている。また、各エアバッグドア54の回転中心側には、側面視で略V字状に形成された弛み部56(図1参照)が形成されている。エアバッグドア54が展開する際には、この弛み部56が伸長されることで、エアバッグドア54が円滑に展開するようになっている。
図1に示されるように、前述したグラブドアインナ26の底壁部26Aにおける中央開口部58の上縁側及び下縁側には、エアバッグドアリテーナ42側へ延出する上下一対のリブ60が一体に形成されている。グラブドア20の組付状態では、これらのリブ60は、エアバッグドアリテーナ42の縦壁部46の上壁部及び下壁部の外側に平行に立設されており、各先端部はエアバッグドアリテーナ42の基部44に溶着(振動溶着)されている。これにより、エアバッグドアリテーナ42の基部44は、グラブドアアウタ24の基材28の一般部28Aとグラブドアインナ26のリブ60とに挟持された状態で固定されている。
また、図1及び図3に示されるように、グラブドアインナ26の中央開口部58には、エアバッグモジュール62が装着されている。エアバッグモジュール62は、金属製のモジュールケース64を備えている。モジュールケース64は、底が浅い箱体形状を成している。モジュールケース64の底壁部64Aの中央下部には、車両前方側から等脚台形状に打ち出されることにより車両後方側へ膨出されたインフレータ固定部66が設けられている。インフレータ固定部66の縦断面形状は山型とされている。このインフレータ固定部66における車両上方側の傾斜部66Aには、左右一対のボルト挿通孔68が形成されている。これらのボルト挿通孔68内へインフレータ70の軸方向中間部から半径方向外側へ突出された一対のスタッドボルト72(図1参照)が挿入されて裏面側からナット74が螺合されることにより、インフレータ70がインフレータ固定部66の傾斜部66Aに締結固定されている。
また、モジュールケース64の両側部の合計4箇所には、中央部にねじ挿通孔76が形成されたL字状の取付片78がそれぞれ取り付けられている。これに対応して、グラブドアインナ26の中央開口部58の両サイドにはねじ挿通孔76と同軸上にねじ挿通孔80が形成されている。そして、各取付片78のボルト挿通孔76をグラブドアインナ26側のねじ挿通孔80に対応させ、図示しないねじ等の締結具で締結固定することにより、モジュールケース64がグラブドアインナ26の中央開口部58に車両前方側から固定されている。
また、モジュールケース64の上部及び下部には、長尺状の係止金具82が取り付けられている。係止金具82の一辺(エアバッグドアリテーナ42側)には、側面視でL字状の係止片84が一体に形成されている。係止片84は、エアバッグドアリテーナ42の縦壁部46に形成された前述した係止孔48に対応して複数個設けられている。そして、各係止孔48に各係止片84を挿入して係止させることにより、エアバッグドアリテーナ42がモジュールケース64に取り付けられている。
図1に示されるように、上記モジュールケース64内には、ガス発生手段としてのインフレータ70と、このインフレータ70から噴出されたガスによって膨張するニーエアバッグ86とが組付けられている。インフレータ70は、モジュールケース64に納まる外径の円柱形状に形成されている。また、インフレータ70の軸方向の一端部には、ガス噴出部88が同軸上に形成されている。さらに、ガス噴出部88の外径はインフレータ70の外径よりも短く、又ガス噴出部88の周壁部には複数のガス噴出孔90が形成されている。
一方、ニーエアバッグ86は、折り畳み状態でモジュールケース64内に収納されている。より具体的には、平面展開状態のニーエアバッグ86の上部及び下部をそれぞれ蛇腹折りして中央部に寄せていくことにより、モジュールケース64に収納可能な大きさに折り畳まれている。そして、ニーエアバッグ86の中央部(高さ方向中間部)に上記インフレータ70が挿入されて、インフレータ70から突出されたスタッドボルト72がニーエアバッグ86を貫通し、前述した要領でモジュールケース64のインフレータ固定部66に固定されている。従って、ニーエアバッグ86はインフレータ70とインフレータ固定部66との間に挟持された状態で組付けられている。また、グラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置40の車両への組付状態で、ニーエアバッグ86のインフレータ70がガス流入部87(図2参照)とされている。
また、グラブドアインナ26の中央開口部58は、エアバッグモジュール62の組付後に矩形平板状に形成された樹脂製の裏面カバー92によって閉塞されている。裏面カバー92の四辺からは、グラブドアインナ26側へ向けて複数の脚部94が一体に形成されている。各脚部94の先端部には爪が形成されている。これに対応して、グラブドアインナ26の底壁部26Aにおける中央開口部58の外周部には複数の矩形状の差込み孔96が形成されている。そして、この差込み孔96内へ脚部94を挿入させ、弾性的に係合させることにより、裏面カバー92がグラブドアインナ26の車両前方側の面に取り付けられている。
次に、本実施形態の要部について説明する。
図1及び図2に示されるように、エアバッグモジュール収納部としてのグラブドア20を支持する支持部材としてのグラブボックス本体16の開口部18側の上端部には、車両斜め後方かつ上方側へ向けて延出する上側延出部100が一体に形成されている。
一方、インストルメントパネル10にはグラブボックス本体16が挿通可能な開口部が形成されており、この開口部の上縁部(以下、「開口上縁部102」という。)は前記上側延出部100の車両前方側に所定距離だけ離間して対向配置されている。さらに、上側延出部100及び開口上縁部102には、同軸上にピン挿通孔104、106が形成されている。これらのピン挿通孔104、106内へグラブドア20側からピン108が挿入されて固定されている。なお、上側延出部100のピン挿通孔104は、ピン108の挿入固定後に閉止部材110によって塞がれている。
補足すると、上記上側延出部100側のピン挿通孔104の内周面には雌ねじが形成されている。これに対応してピン108の外周一部(ピン108の頭部側の外周面)には雄ねじが形成されている。
さらに、ピン108には円筒形状の樹脂部材又は移動手段としてのカラー112が挿通されている。カラー112の一端部は上側延出部100の車両前方側の面に当接係止されており、又カラー112の他端部は開口上縁部102に当接係止されている。このカラー112は、樹脂材料によって構成されており、所定値以上の軸方向荷重が作用すると圧壊する強度に設定されている。また、カラー112の軸方向寸法が、グラブドア20の上端部側の相対移動ストロークを規定している。
なお、ここでいう「所定値」とは、後述する着座乗員の脛上部X(図2参照)に与えるニーエアバッグ86の展開反力の上限値以下の任意の軸方向荷重を意味する。補足すると、図2には、グラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置40が作動した状態が側面視で図示されている。この図2のX線矢視部が乗員の「脛上部」である。脛上部Xは、膝頭(膝関節)Yの直ぐ下あたりの部位のことである。
また、上述したグラブボックス本体16の開口部18側の下端部には、車両斜め前方かつ下方側へ向けて延出する下側延出部114が一体に形成されている。これに対応して、下側延出部114の車両前方側には、平板状の取付片116の上部が車両前方側に所定距離だけ離間して対向配置されている。下側延出部114及び取付片116の上部には、同軸上にピン挿通孔118、120が形成されている。なお、下側延出部114側のピン挿通孔118の内周面には雌ねじが形成されており、これに対応してピン108の外周一部にも雄ねじが形成されている。これらのピン挿通孔118、120内へ上側延出部100側と同一の構成のピン108が挿入及び固定され、かつピン108の外周部にカラー112が挿通されている。
なお、上記取付片116の下部には取付孔122が形成されており、インストルメントパネル10に一体成形されたボス又はインストルメントパネル10の断面内方に配置された図示しないインパネリインフォースやブレース等の車体側構成部材に固定された取付ブラケット等の取付相手部材124にビス126で固定されている。
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
上記構成のグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置40を搭載した車両が前面衝突すると、図示しない衝突検知手段によってその状態が検知され、検知信号がエアバッグECUへ出力される。エアバッグECUでエアバッグ作動と判定されると、運転席側の各種エアバッグ装置が作動する他、助手席側のグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置40も作動する。すなわち、グラブドア20に内蔵されたエアバッグモジュール62のインフレータ70のスクイブに所定電流が通電されてインフレータ70が作動される。これにより、インフレータ70からガスが発生し、当該ガスは折り畳み状態でグラブドア20内に格納されているニーエアバッグ86内へ供給され、これを膨張させる。
折り畳み状態のニーエアバッグ86が膨張し、エアバッグドアリテーナ42を介してティア部36に作用するバッグ膨張圧が所定値に達すると、ティア部36が破断し、一対のエアバッグドア54が上下に展開される。これにより、ニーエアバッグ86は、乗員の膝とグラブドア20(インストルメントパネル10)との間の隙間に膨張展開される。その結果、乗員の膝がニーエアバッグ86によって拘束されて保護される。
ここで、本実施形態では、ニーエアバッグ86が着座状態の乗員の膝の高さに配置されているので、仮にグラブドア20に膝を近接等させた状態で乗員が助手席に着座していると、ニーエアバッグ86の膨張展開時にニーエアバッグ86によって脛上部Xが車両後方側へ強く押圧されることになる。より詳細に説明すると、グラブボックス14はインストルメントパネル10に固定されており、エアバッグドア54に上下を押さえられてかつ左右方向へのガスの流れも近接した乗員の膝Yによって押さえられているため、ニーエアバッグ86の展開反力の逃げ道がないため、展開反力がすべて乗員の脛上部Xに伝達される。
しかし、本実施形態では、グラブドア20を支持するグラブボックス本体16の開口側の上縁部及び下縁部に上側延出部100及び下側延出部114を設けると共に、当該上側延出部100及び下側延出部114をカラー112を介してインストルメントパネル10に固定したので、ニーエアバッグ86の膨張展開時に当該ニーエアバッグ86を介して車両前方側への所定値以上の荷重がグラブドア20に作用すると、図2に示されるように、カラー112がその軸方向に圧壊される。これにより、グラブボックス本体16が車体側に対してカラー112の軸長の範囲内で車両前方側へ相対移動される。すなわち、本実施形態では、仮に小柄な乗員が膝Yをグラブドア20に近接等させた状態で助手席に着座していた場合でも、ニーエアバッグ86が当該乗員の膝Y側へ膨張展開する初期の段階で、グラブドア20を含むグラブボックス14の全体を車両前方側へ相対移動させることができる。このため、乗員の膝Yとグラブドア20との隙間が車両前後方向に拡大され、その分、ニーエアバッグ86の車両幅方向及び車両上下方向への展開性が良くなる。その結果、乗員の脛上部Xに作用するニーエアバッグ86の展開反力が小さくなり、乗員の膝Yがグラブドア20に近接等した状態でニーエアバッグ86が膨張展開した場合に脛(脛上部X)への負担を軽減することができる。
なお、通常着座状態では、乗員の膝とエアバッグドア54との間に所定以上の距離(隙間)が存在するため、ニーエアバッグ86の膨張展開初期においてニーエアバッグ86を介してエアバッグモジュール収納部であるグラブドア20に車両前方側への所定値以上の大きな荷重は作用せず、エアバッグモジュール62が車体側に対して車両前方側へ相対移動することはない。また、ニーエアバッグ86が膨張展開した後に乗員の膝がニーエアバッグ86に突入した際の荷重はグラブドア20(ニーパネル)で受ける。
また、本実施形態では、エアバッグモジュール収納部がインストルメントパネル10の助手席側に設けられたグラブボックス14のグラブドア20とされているので、体格が小柄な乗員が助手席に着座した場合に、当該着座乗員の膝Yがインストルメントパネル10におけるグラブドア20に近接等した状態になり易い。従って、体格が小柄な乗員が助手席に着座した場合に特に効を奏する。
さらに、本実施形態では、ニーエアバッグ86が膨張展開する際に、所定値以上の荷重がグラブドア20に作用すると、グラブボックス本体16側に設けられたカラー112が軸方向に圧壊する構成であるため、カラー112の軸力に対する強度の設定を変えることにより、グラブドア20をどの程度の荷重で車両前方側へ相対移動させるか、或いはグラブドア20をどの程度の距離(ストローク)相対移動させるかといったチューニングを容易にすることができる。
〔第2実施形態〕
以下、図6及び図7を用いて、本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図6及び図7に示されるように、この第2実施形態では、第1実施形態のカラー112の替わりに、広義には付勢手段として把握される圧縮コイルスプリング128を用いた点に特徴がある。
具体的に説明すると、グラブボックス本体16の上側延出部100のピン108には、弾性部材及び移動手段としての圧縮コイルスプリング128が巻装されている。圧縮コイルスプリング128の一端部は上側延出部100の車両前方側の面に当接係止されている。また、圧縮コイルスプリング128の他端部はインストルメントパネル10の開口上縁部102の車両後方側の面に当接係止されている。これにより、圧縮コイルスプリング128は、上側延出部100をグラブドア20側へ常時押圧付勢している。なお、圧縮コイルスプリング128が縮み始めるときの荷重が前述した第1実施形態のカラー112が圧壊し始めるときの荷重に略一致するように、圧縮コイルスプリング128のばね定数が設定されている。
グラブボックス本体16の下側延出部114のピン108にも同様構成の圧縮コイルスプリング128が巻装されている。圧縮コイルスプリング128の一端部は下側延出部114の車両前方側の面に当接係止されており、又圧縮コイルスプリング128の他端部は取付片116の車両後方側の面に当接係止されている。従って、圧縮コイルスプリング128は、下側延出部114をグラブドア20側へ常時押圧付勢している。
(作用・効果)
上記構成によっても、前述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。すなわち、図6に示されるように、仮にグラブドア20に膝を近接等させた状態で乗員が助手席に着座しているときに、図7に示されるように、グラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置40が作動し、ニーエアバッグ86の膨張展開時に当該ニーエアバッグ86を介して車両前方側への所定値以上の荷重がグラブドア20に作用すると、グラブボックス本体16がグラブドア20によって車両前方側へ押圧される。これにより、グラブドア20からグラブボックス本体16へ入力される車両前方側への押圧力が圧縮コイルスプリング128の付勢力を超えると、グラブボックス14の全体が車両前方側へ相対移動する。すなわち、本実施形態では、仮に小柄な乗員が膝Yをグラブドア20に近接等させた状態で助手席に着座していた場合でも、ニーエアバッグ86が当該乗員の膝Y側へ膨張展開する初期の段階で、グラブドア20を含むグラブボックス14の全体を車両前方側へ相対移動させることができる。このため、乗員の膝Yとグラブドア20との隙間が車両前後方向に拡大され、その分、ニーエアバッグ86の車両幅方向及び車両上下方向への展開性が良くなる。その結果、乗員の脛上部Xに作用するニーエアバッグ86の展開反力が小さくなり、乗員の膝Yがグラブドア20に近接等した状態でニーエアバッグ86が膨張展開した場合に脛(脛上部X)への負担を軽減することができる。
また、本実施形態においても、カラー112の替わりに圧縮コイルスプリング128を用いる以外は前述した第1実施形態と同一の構成を採っているので、エアバッグモジュール収納部をグラブボックス14のグラブドア20としたことの効果(体格が小柄な乗員が助手席に着座した場合に特に効を奏する点)が得られる。さらに、圧縮コイルスプリング128のばね定数を変更することにより、グラブボックス本体16を車両前方側へスライドさせる際の荷重をどの程度に設定するかといったチューニングを容易に行うことができる。
なお、上記構成では、圧縮コイルスプリング128を用いたが、これに限らず、板ばねや皿ばね等の他のスプリングを用いてもよいし、硬度が調整されたゴム等の弾性部材を用いてもよい。
また、上記構成では、上下の圧縮コイルスプリング128のばね定数を同一にしたが、これに限らず、下側の圧縮コイルスプリングのばね定数を上側の圧縮コイルスプリングのばね定数よりも小さくしてもよい。この場合、グラブドア20の下部側が上部側よりも低い荷重で車両前方側へ相対移動するので、換言すれば、グラブドア20の相対移動ストロークをグラブドア20の上部側よりも下部側の方が大きくなるので、乗員の脛上部Xへの負荷を効果的に軽減することができる。なお、この点については、後述する第3実施形態で詳述する。
〔第3実施形態〕
以下、図8及び図9を用いて、本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置の第3実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図8及び図9に示されるように、この第3実施形態では、グラブドア20の下部側の相対移動ストロークをグラブドア20の上部側の相対移動ストロークよりも長く設定した点に特徴がある。
具体的に説明すると、図8に示されるように、この第3実施形態では、基本的な構成は圧縮コイルスプリング128を用いた前述した第2実施形態と同一の構成を採っている。そして、グラブボックス本体16の下側延出部114と取付片116との間の距離S1を、グラブボックス本体16の上側延出部100とインストルメントパネル10の開口上縁部102との距離S2よりも長く設定されている。なお、これに伴って、下部側の圧縮コイルスプリング130は、上部側の圧縮コイルスプリング128よりも軸方向寸法が長いものが使用されている。
(作用・効果)
上記構成によれば、ニーエアバッグ86を介してグラブドア20に車両前方側への所定値以上の荷重が入力されると、グラブドア20の上部側にあっては、圧縮コイルスプリング128を縮ませ、グラブドア20の下部側にあっては、圧縮コイルスプリング130を縮ませながら、グラブボックス本体16が車両前方側へ相対移動される。
このとき、本実施形態では、グラブボックス本体16の下側延出部114と取付片116との間の距離S1を、グラブボックス本体16の上側延出部100とインストルメントパネル10の開口上縁部102との距離S2よりも長く設定したので、グラブドア20の下部側の相対移動ストローク(S1)は上部側の相対移動ストローク(S2)よりも長くなる。従って、グラブドア20の下部側の方が上部側よりもより大きく車両前方側へ相対移動する。その結果、本実施形態によれば、脛上部に作用する荷重がより小さくなり、脛への負担をより一層軽減することができる。
〔第4実施形態〕
以下、図10を用いて、本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置の第4実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図10に示されるように、この第4実施形態では、グラブドア20のみを可動部とした点及びグラブドア20の下部側のみを相対移動させるようにした点に特徴がある。
具体的に説明すると、この第4実施形態では、グラブボックス本体16の上側延出部100の車両前方側にインストルメントパネル10の開口上縁部102が当接状態で配置されている。そして、上側延出部100側からクッションゴム132が取り付けられている。クッションゴム132は、所定硬度のゴム部132Aと、その軸芯部から突出されたねじ部132Bとによって構成されている。ねじ部132Bは上側延出部100のピン挿通孔104、開口上縁部102のピン挿通孔106をこの順にグラブドア20側から挿入され、貫通端部にナット134が締め込まれている。クッションゴム132のゴム部132Aには、グラブドア20の上端部の車両前方側の部位が当接されている。
一方、グラブボックス本体16の下側延出部114は、取付相手部材124に直接ビス126で固定されている。そして、グラブドア20側に別途設けられたヒンジ部136の下端部136Aが下側延出部114の車両後方側に対向して配置され、両者の間にカラー112が装着されている。
(作用・効果)
上記構成によれば、ニーエアバッグ86を介してグラブドア20に車両前方側への所定値以上の荷重が入力されると、カラー112が圧壊することで、グラブドア20の下部側が車両前方側へ相対移動される。なお、クッションゴム132が軸方向に弾性変形することで、グラブドア20の上部側も車両前方側へ若干相対移動される。これにより、グラブドア20の全体が、上端部回りに下部側が車両前方側へ相対移動されて、乗員の脛上部との隙間が車両前後方向に拡大される。従って、その分、ニーエアバッグ86の車両幅方向及び車両上下方向(特には車両幅方向と車両下方側)への展開性が良くなる。その結果、乗員の脛上部に作用するニーエアバッグ86の展開反力が小さくなり、乗員の膝がグラブドア20に近接等した状態でニーエアバッグ86が膨張展開した場合に脛(脛上部)への負担を軽減することができる。
また、本実施形態によっても、前述した第3実施形態で説明した作用効果が得られる。つまり、本実施形態の場合、グラブドア20の上部側をクッションゴム132で支持し、グラブドア20の下部側をカラー112で支持する構成としが、この場合も相対移動量という観点からすれば、グラブドア20の上部側よりも下部側の方が相対移動量は大きいといえる。従って、前述した第3実施形態で説明した作用効果も得られる。さらに、本実施形態では、グラブドア20の下部側のみに移動手段としてのカラー112を設定したので、少なくともグラブドア20の下部側における車両前方側への相対移動を確実に確保することができる。その結果、本実施形態によれば、必要最小限の構成の追加で充分な効果が得られる。補足すると、車種ごとのインストルメントパネル10の意匠及びグラブボックス14の高さ方向の位置によっては、グラブドア20の上部側は殆ど車両前方側へ相対移動させる必要がなく、下部側のみを相対移動させればよい、という場合もあるので、このような車両に対して本実施形態の構成を適用すれば、低コストで目的とする効果が得られる。
なお、上記構成では、グラブドア20の上部側にはクッションゴム132を配置し、グラブドア20の下部側にはカラー112を配置したが、これに限らず、クッションゴムとカラーとを軸方向に並べて併用してもよい。なお、この点は、後述する第5実施形態以降についても同様である。
〔第5実施形態〕
以下、図11を用いて、本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置の第5実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図11に示されるように、この第5実施形態では、グラブドア20におけるクッションゴム132の当接部に脆弱部を設けた点に特徴がある。
具体的に説明すると、グラブドアインナ26におけるクッションゴム132のゴム部132Aとの対向部位には、円形の開口部140が形成されている。この開口部140内には、グラブドアインナ26とは別体で構成された円板状の当接部材142が配設されている。ゴム部132Aの先端部と当接部材142とは接触していてもよいし、近接状態で配置されていてもよい。
また、グラブドアアウタ24の基材28における当接部材142との対向部位には、中空円筒形状のリブ144が立設されている。リブ144は基材146の板厚よりも薄い板厚で形成されており、所定値以上の軸方向荷重が作用すると、軸方向の中間部で座屈するようになっている。このリブ144の先端部に当接部材142が固定されている。
なお、上記構成のクッションゴム132のゴム部132Aが突出部に相当し、リブ144が脆弱部に相当する。
(作用・効果)
上記構成によれば、ニーエアバッグ86を介してグラブドア20に車両前方側への所定値以上の荷重が入力されると、クッションゴム132のゴム部132Aが当接部材142をグラブドアアウタ24側に相対的に押圧する。このため、リブ144が軸方向に押圧されて、リブ144への作用荷重が所定値になると、リブ144は軸方向に圧壊していくか、又は軸方向の中間部で座屈する。その結果、当接部材142がグラブドア20内に脱落し、クッションゴム132が開口部140を通ってグラブドア20内に相対的に進入する。これにより、グラブドア20の上部が車両前方側へ相対移動される。また、カラー112が圧壊することで、グラブドア20の下部側も車両前方側へ相対移動される。よって、グラブドア20の全体が車体側に対して車両前方側へ相対移動される。その結果、乗員の脛上部との隙間が車両前後方向に拡大され、その分、ニーエアバッグ86の車両幅方向及び車両上下方向への展開性が良くなる。
上記の結果、乗員の脛上部に作用するニーエアバッグ86の展開反力が小さくなり、乗員の膝がグラブドア20に近接等した状態でニーエアバッグ86が膨張展開した場合に脛(脛上部)への負担を軽減することができる。
また、リブ144の板厚や径方向寸法等の設定を変えることにより、グラブドア20をどの程度の荷重で車両前方側へ相対移動させるか、或いはグラブドア20をどの程度の距離(ストローク)相対移動させるかといったチューニングを容易にすることができる。
さらに、この実施形態の場合、リブ144が圧壊又は座屈する際にエネルギー吸収させることができる。
〔第6実施形態〕
以下、図12を用いて、本発明に係る車両用ニーエアバッグ装置の第6実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図12に示されるように、この第6実施形態も、グラブドア20におけるクッションゴム132の当接部に脆弱部を設けた点に特徴がある点で、前述した第5実施形態と同種の実施形態といえる。
第5実施形態と異なるところを中心に説明すると、グラブドアインナ26におけるクッションゴム132のゴム部132Aとの対向部位の裏面(グラブドアアウタ24側の面)には、ゴム部132Aの外径よりも径が大きい環状の凹溝150が形成されている。これにより、凹溝150の形成部位が薄肉化され、この部分が脆弱部152とされている。なお、説明の便宜上、凹溝150の内部の円板状の板部を「当接部154」と称す。
(作用・効果)
上記構成によれば、ニーエアバッグ86を介してグラブドア20に車両前方側への所定値以上の荷重が入力されると、クッションゴム132のゴム部132Aが当接部154をグラブドアアウタ24側に相対的に押圧する。このため、肉の薄い脆弱部152に応力が集中し、当接部154が脆弱部152から破断してグラブドア20内に脱落する。その結果、クッションゴム132が当接部154の脱落後に形成される開口部を通ってグラブドア20内に相対的に進入する。これにより、グラブドア20の上部が車両前方側へ相対移動されて、乗員の脛上部との隙間が車両前後方向に拡大され、その分、ニーエアバッグ86の車両幅方向及び車両上下方向への展開性が良くなる。
なお、グラブドア20の下端部側では、カラー112が圧壊されることで、グラブドア20の下部が車両前方側へ相対移動される。
上記の結果、乗員の脛上部に作用するニーエアバッグ86の展開反力が小さくなり、乗員の膝がグラブドア20に近接等した状態でニーエアバッグ86が膨張展開した場合に脛(脛上部)への負担を軽減することができる。
また、凹溝150の溝深さ等の設定を変えることにより、グラブドア20をどの程度の荷重で車両前方側へ相対移動させるか、或いはグラブドア20をどの程度の距離(ストローク)相対移動させるかといったチューニングを容易にすることができる。
さらに、この実施形態の場合、構成がグラブドアインナ26側で完結するので、製造が容易であり、コストがかからない。
〔上記実施形態の補足説明〕
(1) 上述した実施形態では、前面衝突時にグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置40が作動するものとして説明したが、これに限らず、プリクラッシュセンサ等の衝突予知手段を車両に搭載させて、衝突予知手段によって衝突することが予知された場合にはグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置を作動させるようにしてもよい。
(2) 上述した実施形態では、グラブドア20内にエアバッグモジュール62が収納されていたが、これに限らず、インストルメントパネルの助手席側に設けられたエアバッグケースにエアバッグモジュールを収納させてもよい。
第1実施形態に係るグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置の要部拡大縦断面図(図5の1−1線に沿った拡大断面図)である。 図1に示されるグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置が作動してニーエアバッグが膨張展開した初期の状態を示す図1に対応する縦断面図である。 グラブドアの分解斜視図である。 グラブドアと着座乗員との位置関係を車両側方から見て示す概略縦断面図である。 本実施形態に係るグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置が搭載されたインストルメントパネルの外観正面図である。 第2実施形態に係るグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置の要部を拡大して示す要部拡大縦断面図である。 図6に示されるグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置が作動してニーエアバッグが膨張展開した初期の状態を示す図6に対応する縦断面図である。 第3実施形態に係るグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置の要部を拡大して示す要部拡大縦断面図である。 図8に示されるグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置が作動してニーエアバッグが膨張展開した初期の状態を示す図8に対応する縦断面図である。 第4実施形態に係るグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置の要部を拡大して示す要部拡大縦断面図である。 第5実施形態に係るグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置の要部を拡大して示す要部拡大縦断面図である。 第6実施形態に係るグラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置の要部を拡大して示す要部拡大縦断面図である。
符号の説明
10 インストルメントパネル(車両用内装部材)
14 グラブボックス
20 グラブドア(エアバッグモジュール収納部)
40 グラブドア内蔵型のニーエアバッグ装置(車両用ニーエアバッグ装置)
62 エアバッグモジュール
70 インフレータ(ガス発生手段)
86 ニーエアバッグ
108 ピン(移動手段)
112 カラー(移動手段)
128 圧縮コイルスプリング(移動手段)
130 圧縮コイルスプリング(移動手段)
132A ゴム部(突出部、移動手段)
140 開口部(移動手段)
142 当接部材(移動手段)
144 リブ(脆弱部、移動手段)
150 凹溝(移動手段)
152 脆弱部(移動手段)
154 当接部(移動手段)
X 脛上部

Claims (6)

  1. 作動することによりガスを発生するガス発生手段と、折り畳み状態で格納されると共に着座状態の乗員の膝の高さに配置されかつガス発生手段から供給されたガスによって乗員の膝側へ向けて膨張展開するニーエアバッグと、を含んで構成されたエアバッグモジュールと、
    このエアバッグモジュールが収納されたエアバッグモジュール収納部と、
    このエアバッグモジュール収納部及びこれを支持する支持部材の少なくとも一方側に設けられ、ニーエアバッグの膨張展開時に当該ニーエアバッグを介して車両前方側への所定値以上の荷重がエアバッグモジュール収納部に作用することにより、当該エアバッグモジュール収納部を車体側に対して所定範囲内で車両前方側へ相対移動させる移動手段と、
    を有する車両用ニーエアバッグ装置。
  2. 前記エアバッグモジュール収納部は、インストルメントパネルの助手席側に設けられたエアバッグケース又はグラブボックスのグラブドアである、
    ことを特徴とする請求項1記載の車両用ニーエアバッグ装置。
  3. 前記移動手段は、前記支持部材側に設けられ、前記所定値以上の荷重がエアバッグモジュール収納部に作用した際に荷重作用方向に塑性変形する樹脂部材又は荷重作用方向に弾性変形する弾性部材を含んで構成されている、
    ことを特徴とする請求項2記載の車両用ニーエアバッグ装置。
  4. 前記エアバッグモジュール収納部は、インストルメントパネルの助手席側に設けられたグラブボックスのグラブドアであり、
    前記移動手段は、前記支持部材側に設けられると共にグラブドア側へ突出された突出部と、当該グラブドア側に設けられると共に前記所定値以上の荷重がグラブドアに作用した際に当該突出部に押圧されて変形又は破断することによりグラブドアを車両前方側へ相対移動させる脆弱部と、を含んで構成されている、
    ことを特徴とする請求項1記載の車両用ニーエアバッグ装置。
  5. 前記移動手段による前記エアバッグモジュール収納部の相対移動ストロークは、当該エアバッグモジュール収納部の上部側よりも下部側の方が大きくなるように設定されている、
    ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の車両用ニーエアバッグ装置。
  6. 前記移動手段は、前記エアバッグモジュール収納部の下部側のみに設定されている、
    ことを特徴とする請求項5記載の車両用ニーエアバッグ装置。
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