JP2010051295A - クロストリジウム属菌並びにセルロソームを含むセルラーゼ及びヘミセルラーゼの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロース系バイオマスを、クロストリジウム・サーモセラム属に属し、弱アルカリ性で生育し、セルロース、フラクトース及びソルビトール資化能を有する微生物であるクロストリジウム・サーモセラムJK−N44又はJK-S14、またはその菌体培養物を用いて処理する。トリコデルマ・リーセイ由来の酵素の少なくとも40分の1以下の酵素量で糸状菌酵素と同等以上の速度でセルロース分解できる。
【選択図】なし
Description
物理的糖化処理にはボールミルや振動ミル又は蒸煮爆砕や加圧熱水処理など物理的に糖化を施す処理があるが、糖化までに多大なエネルギーを必要とすることや、効率が悪く、単独で用いるというよりは、化学的糖化や酵素糖化の前処理として併用されることが多い。化学的糖化処理には、アルカリ、酸または溶媒を利用するものがあるが、古くより酸糖化がよく用いられている。酸糖化は濃硫酸糖化法と希硫酸二段糖化法とがある。しかし、酸糖化は、硫酸を用いるため、廃棄物処理や環境負荷の低減を必要とし、低コスト化及びエネルギー変換効率に限界があるといわれている。
また、トリコデルマ属菌以外のセルロース分解活性を示す微生物として、非特許文献2〜6に示すように、クロストリジウム属(Clostridium)菌が知られている。なお、クロストリジウム属菌が産生する酵素は、複数のサブユニットからなるセルラーゼ複合体、セルロソーム(Cellulosome)を形成していることが報告されている(非特許文献6参照)。
(1)クロストリジウムに属し、弱アルカリ性で生育し且つセルロース、フラクトース及びソルビトール資化能を有する、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE P−627)菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44(NITE P−628)菌株。
(2)クロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE P−627)菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44(NITE P−628)菌株を培養することを特徴とする、セルロソームを含むセルラーゼおよびヘミセルラーゼの製造方法。
(3)クロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE P−627)菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44(NITE P−628)菌株、又はその菌体培養物を用いてセルロース系バイオマスを処理する、セルロース系バイオマスの糖化方法。
本発明者らが単離したクロストリジウム・サーモセラムに属する菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 微生物寄託センターに、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)JK−S14(NITE P−627)菌株、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)JK−N44(NITE P−628)菌株として寄託されている(寄託日:平成20年8月12日)ので、この機関より入手することができる。
桿菌(約1.6〜3.0μm)、胞子形成能あり
好熱性菌
生育温度:50℃〜65℃、至適生育温度60℃
生育pH:6.0〜9.0、至適pH7.0
偏性嫌気性菌 ガスN2及びCO2に生育(CO2の場合、培地に炭酸ナトリウムを0.4%程度加える)
培地上の特徴:酸素が入っている培地では生育不可。生育pH7.0で良好。セルロース、セロビオースに生育する。セルロース培地ではセルロースがクリーム色になり分解する。
糖の資化性:セルロース、マンナン、キトサン、セロビオース、フラクトース及びソルビトール資化能を有する。
コロニー形態:セルロース寒天培地ではハローを形成、コロニーは白く小さい。培養日数が経過するとコロニーの周囲に白い粘性を帯びた輪を形成することもある。胞子を形成。−80℃にて保存可能である。
16srRNA(16リボソームRNAコード配列):クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株との間で99%の相同性を示す。
クロストリジウム・サーモセラムATCC27405やクロストリジウム・サーモセラムATCC31549では、セルロース分解時にイエローアフィニティーサブスタンス(YAS:Yellow Affinity Substance)を生産し、セルロースが黄色またはオレンジ色に着色することが知られているが(非特許文献1)、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株は黄色いYAS様物質を生産しない。
K2HPO4 0.29g
KH2PO4 0.15g
尿素 0.21g
Yeast extract 0.45g
システイン塩酸塩 0.05%
ミネラル溶液20μl (組成:MgCl2・6H2O:1g, CaCl2・2H2O 0.15g, FeSO4・6H2O 0.00125g を水4mlに溶解)
リザズリン(2%溶液) 5μl
炭素源:セルロース(Sigmacell Type 20 又は Avicel) 0.5g又はセロビオース0.5g
桿菌(約1.6〜3.0μm)、胞子形成能あり
好熱性菌
生育温度:55℃〜65℃、至適生育温度60℃
生育pH:6.0〜9.0、至適pH7.0
偏性嫌気性菌 ガスN2及びCO2に生育(CO2の場合、培地に炭酸ナトリウムを0.4%程度加える)
培地上の特徴:酸素が入っている培地では生育不可。生育pH7.0で良好。セルロース、セロビオースに生育する。セルロース培地ではセルロースがクリーム色になり分解する。
糖の資化性:セルロース、マンナン、キトサン、セロビオース、フラクトース及びソルビトール資化能を有する。
コロニー形態:セルロース寒天培地ではハローを形成、コロニーは白く小さい。培養日数が経過するとコロニーの周囲に白い粘性を帯びた輪を形成することもある。胞子を形成。−80℃にて保存可能である。
16srRNA(16リボソームRNAコード配列):クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株との間で99%の相同性を示す。
クロストリジウム・サーモセラムはエタノール0.5%〜2%以下において生育が著しく阻害を受けることが知られている(非特許文献2)。クロストリジウム・サーモセラムJK−N44菌株では3%エタノール存在下において生育することができる。
K2HPO4 0.29g
KH2PO4 0.15g
尿素 0.21g
Yeast extract 0.45g
システイン塩酸塩 0.05%
ミネラル溶液20μl (組成:MgCl2・6H2O:1g, CaCl2・2H2O 0.15g, FeSO4・6H2O 0.00125g を水4mlに溶解)
リザズリン(2%溶液) 5μl
炭素源:セルロース(Sigmacell Type 20 又は Avicel) 0.5g又はセロビオース0.5g
また、本明細書中において、「菌体培養物」とは、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44を培養して得られる培養物を意味し、菌体培養物は、そのままでもあるいは精製して用いてもよい。
また、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44、又は菌体培養物を安定的に保存するために、菌体又は菌体培養物に担体、界面活性剤や補助剤を加えてもよい。担体としては、リン酸緩衝液等の緩衝液や生理食塩水等の液体やカオリン、タルク、珪藻土等の固体を用いることができる。
田畑土壌、バガス、稲わら、籾殻、キノコ廃床、堆肥、木材チップ粕、廃棄パルプ、など農作物残渣[タイ国由来(バンコク県、チョンブリ県、プラチャンブリ県、アユタヤ県、ナコンパトム県、ラチャブリ県、サムットサコン県、ペチャブリ県、ラビ県、アン−トング県、ロプブリ県、ナコンラチャシマ県、カラシン県、コンケン県、サコンナコン県、ムクダハン県、アンナチャローン県)]を含むサンプル約2〜5gと、幅0.5〜1.0cm、長さ4〜5cmに短冊形にカットしたろ紙(ワットマン社製 No.1)及び、結晶性セルロース(シグマセルタイプ20・シグマ社製)とを、BM7培地20〜25mlに懸濁した。得られた懸濁液を窒素(工業用グレード)にて十分にバブリングし、気相を窒素ガスで置換した後、ブチルゴム栓で密閉し、60℃にて培養を行った。
なお、BM7培地の組成は、リン酸二水素カリウム1.5g/L,リン酸水素二カリウム2.9g/L,尿素2.1g/L,酵母エキス(ディフコ社)4.5g/L,システイン塩酸塩0.5g/L、0.2mlミネラル溶液(MgCl2.6H2O 5g; CaCl2.2H2O 0.75g; FeSO4.6H2O 0.0063gを水4mlに溶解)とし、得られたBM7培地をpH7.0に調整した。
3日間から1週間程度培養後、サンプルを加えていない上記培養液と比較し、微生物分解によるろ紙の崩壊、分解、及び結晶性セルロースの添加量の明らかな減少や粉末に粘性が認められ、明らかに様子の相違が認められる培養液を選択した。選択した培養液をよく攪拌懸濁して、その0.5mlの培養液を新しい結晶性セルロースを含むBM7培地へ接種し、再度同条件にて培養を行った。この操作を数回繰り返し、セルロース分解菌を集積培養した。
72時間〜80時間後にコロニーの周りにセルロース分解に伴う透明なハロー(Halo)が認められるコロニーのみ選択し、再度0.5%の結晶性セルロースを含むBM7液体培地に接種して、セルロース分解能を確認した。さらに分離したセルロース分解菌を純化するため、コロニー分離操作を3回繰り返した。
そして、72〜80時間で結晶性セルロースを含む寒天培地において、セルロース分解に伴うハローを形成可能な分離培養物から菌株を単離して、JK−N44及びJK−S14と命名した。
JK−N44及びJK−S14をそれぞれ、0.5%セロビオースを含むBM7液体培地を用いて培養後、4℃にて10,000回転で5分間、遠心分離して菌体を回収した。得られた菌体を溶菌させるために、最終濃度0.5%になるように10%SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)と、5μグラム/mlになるようにプロテナーゼK(1mg/ml)溶液を加え、37℃で1時間反応させた。さらに1%濃度になるように10%臭化セチルトリメチルアンモニウム−0.7M塩化ナトリウム溶液を加え、65℃で10分間反応させた後、等量のクロロフォルム・イソアミルアルコール溶液を加えよく攪拌し、15,000回転で、5分間遠心分離にて水層を得た。この水層に再度フェノール・クロロフォルム・イソアミルアルコール混液を等量加え、攪拌し再度15,000回転、5分間遠心分離にて水層を得た。この水層に対し0.6倍容量のイソプロパノールを加えゲノムDNAを析出させ、再度遠心分離によりゲノムDNAを調製した。このゲノムDNAを70%エタノールで洗浄、乾燥した。
16srRNA増幅用PCRプライマーは27Fオリゴヌクレオチドプライマー(AGAGTTTGATCCTGGCTCAG;配列番号3)及び1492Rオリゴヌクレオチドプライマー(GGCTACCTTGTTACGACTT;配列番号4)を用い、PCRは、ExTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)により16srRNA遺伝子の増幅を行った。PCRの条件は98℃1分間、55℃1分間、72℃2分間を30サイクルの条件において増幅を行なった。
PCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動で増幅されたバンドを確認後、BigDye(登録商標)Terminator v3.1(アプライドバイオシステムズ社)を用い、PRISM(登録商標) 3100 Genetic Analyzer(アプライドバイオシステムズ社)または、PRISM(登録商標)3700 DNA Analyzer(アプライドバイオシステムズ社)によりDNA配列の一部を読み取った。得られた、JK−N44のrRNA遺伝子のDNA塩基配列を図1及び配列番号1に、JK−S14のrRNA遺伝子のDNA塩基配列を図2及び配列番号2に示す。
国立バイオテクノロジー情報センター(NBIC)のホームページ(http://www.Ncbi.nlm.nih.gov/)から得られたDNA配列データを用いて、ホモロジー検索を行なった。その結果、JK−N44及びJK−S14の16srRNA配列は菌株クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株の16srRNA配列に99%の相同性を示したことから、分離菌株はクロストリジウム・サーモセラムに属することが明らかとなった。
図8にJK−N44菌株とクロストリジウム・サーモセラムATCC27405株のDNA配列のアライメントを、図9にJK−S14とクロストリジウム・サーモセラムATCC27405株のDNA配列のアライメントを示す。
その結果、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株及び分離株JK−S14では50℃から65℃で生育するが、分離菌株JK−S44の生育温度は55℃から65℃と若干高い温度であった。いずれの菌株も至適生育温度は60℃であった。
糖質を抜いたBM7培地にはすべての菌株において明確な生育は認められなかったが、既知菌株ではセロビオース、グルコースを炭素源に用いた場合、比較的長いラグが認められた。一方、分離菌株においてはJK−N44株でグルコースを炭素源にした場合にのみ長いラグが認められた。しかし、JK−N44及びJK−S14は、ともにグルコース、フラクトース、ソルビトールといった炭素源においても資化性を示し、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株と異なる糖資化能を有することが明らかとなった。
なお、非特許文献3記載のクロストリジウム・サーモセラムYM4菌株と、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14およびJK−N44菌株とは、クロストリジウム・サーモセラムYM4菌株が二酸化炭素要求性であること、セルロース分解においてオレンジ〜黄色の着色が認められること、生育温度が45〜65℃であること、生育可能pHが5.9〜8.1である点で相違する。なお、クロストリジウム・サーモセラムYM4菌株の二酸化炭素要求性に関しては、「Na2CO3を含まない培地でCO2をN2に置換したガス層では生育が観察されなかった」ことが記載されているが、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14およびJK−N44菌株は共に同じ条件下の培養でも生育する。
クロストリジウム・サーモセラムATCC27405及び分離菌株を用い0.5%セロビオースを含むBM7液体培地で培養後、PBS緩衝液にて培養液1mlを希釈し、メンブランフィルター(ポリカーボネートメンブレン:アドバンテック社製)を通して集菌し、PBS緩衝液で一度洗浄を行った。そのメンブランフィルターは一晩、2.5%グルタルアルデヒドを含むPBS緩衝液に浸し固定化を行った。メンブランフィルターはさらにPBS緩衝液にて洗浄後、1.5%酸化オシミウムを含むPBS緩衝液に1時間浸漬した。そのメンブランフィルターはPBS緩衝液にて洗浄を行った後、50%〜99.5%エタノール濃度の系列で脱水処理を行い、t−ブチルアルコールにより乾燥処理を行った。乾燥処理後、メンブランフィルターは白金パラジウムにてイオンコートを行い走査型電子顕微鏡(日本電子JEOL JSM−5600LV)により観察を行った。
結果を図3に示す。なお、図中の白横線は1μmの大きさを示している。クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株(図中(a)で示す)と、分離株JK−N44(図中(b)で示す)及びJK‐S14(図中(c)で示す)とも桿菌で似たような形態を持っていたが、菌体の長さにおいて、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株は約4〜5μmに対し、JK−N44及びJK‐S14は、ともに長さ約1.6〜3.0μmであり、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株に比べ、短い形態であることがわかる。
なお、非特許文献3にはクロストリジウム・サーモセラムYM4菌株が0.4〜4μmであることが記載されている。
クロストリジウム・サーモセラムATCC27405の培養液を使い、実施例1と同様に結晶性セルロースを0.5%含むBM7寒天培地における結晶性セルロース分解によるコロニー周りのハロー形成を調べた。その結果、分離菌株がハロー形成した72〜80時間ではハローの形成は確認できず、ハロー形成まで90時間〜96時間を要した。
反応は結晶性セルロース粉末3mgに0.5mlの培養液、3mlの0.2M酢酸ナトリウム緩衝液 (pH 6.0)、0.5 mlの1% 塩化カルシウム溶液、0.5 mlの0.1Mジオトレイトール(DTT)、を加え蒸留水にて全量5mlとし、60℃で行なった。
この結果は、これらJK−N44及びJK‐S14がクロストリジウム・サーモセラムATCC31549やクロストリジウム・サーモセラムATCC27405よりも非常に高い結晶性セルロース分解活性を有していることを示している。
各菌株からの酵素複合体の調製は0.5%結晶性セルロースを炭素源としたBM7液体培地にて結晶性セルロースが完全に分解するまで培養を行い、遠心分離により菌体を除いた。
分離菌株の結晶性セルロース分解活性は、対照としたクロストリジウム・サーモセラムATCC27405株に比較し、比活性で約3倍以上の高い活性を示し、前述の培養液を用いた結晶性セルロース分解に伴う濁度消失の結果と同様な傾向であった。キシラナーゼ活性やマンナーゼ活性も分離株でそれぞれ約2倍比活性が高い結果を示し、JK−N44及びJK−S14は優れたセルラーゼ及びヘミセルラーゼの分解活性を有していることが明らかとなった。
分離菌株が産生する酵素が、結晶性セルロース分解活性及びヘミセルロース分解活性の酵素複合体であるかどうか確認するために、各培養液から調製した前述のセルロース吸着酵素画分を用い、ゲル濾過クロマトグラフィーにより溶出パターン及びセルラーゼ活性の検討を行った。
クロストリジウム・サーモセラムATCC27405、分離株JK−N44及びJK‐S14株から調製したセルロース吸着酵素画分5mlを用い、ゲル濾過クロマトグラフィー(セファクリルS−500HR;GEヘルスケアバイオサイエンス社)に供した結果を図5に示す。図中、タンパク質溶出パターンを280nmの吸光度で測定した結果を実線で示し、結晶性セルロース分解活性パターンを点線で示す。図中の矢印及び縦実線は、BDはブルーデキストリン2000(2000キロダルトン)、TGはチオグロブリン(669キロダルトン)、ADはアルドラーゼ(158キロダルトン)の溶出位置をそれぞれ示している。
高い結晶性セルロース分解活性及びヘミセルロース分解活性が高分子量溶出位置に一致していることから、結晶性セルロース分解活性及びヘミセルロース分解活性は酵素複合体による活性と考えられた。
また、ゲル濾過クロマトグラフィーによる溶出パターンを比較すると、既知菌株クロストリジウム・サーモセラムATCC27405からの酵素複合体と分離菌株との溶出パターンが異なることから、分離株と既知菌株との間で、酵素複合体中の酵素サブユニットの種類または構成比が違うことが予想された。
結晶性セルロース粉末3mgに、それぞれの酵素0.05ml、3mlの0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、0.5mlの1% 塩化カルシウム溶液、0.5 mlの0.1Mジオトレイトール(DTT)を加え、蒸留水にて全量5mlとし、60℃で酵素反応を行なった。その結果を図6に示す。クロストリジウム・サーモセラムATCC27405(▲で示す)、分離菌株JK−N44(□で示す)、JK−S14(○で示す)において、結晶性セルロース分解に伴う濁度消失が確認された。さらに、分離菌株の酵素は両方とも、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405の酵素に比較し、アルカリ条件下での分解速度が速く、弱アルカリ条件下でも効率よく分解していることが確認された。
糸状菌トリコデルマ・リーシエ由来の糖化酵素は、ノボザイムズ社製セルクラスト(登録商標)1.5Lを用いた。すなわち、結晶性セルロース粉末3mgに、酵素溶液6.3mg又は12.5mgを加え、3mlの0.2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を加え、蒸留水にて全量5mlとし、50℃で糖化反応を行った。
分離株の酵素の場合、糸状菌の糖化酵素と同様に、結晶性セルロース粉末3mgに調製した酵素液0.03mg、3mlの0.2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)、0.5 mlの1%塩化カルシウム溶液、0.5mlの0.1Mジオトレイトール(DTT)、を加え蒸留水にて全量5mlとし、60℃で糖化反応を行なった。
結果を図7に示す。糸状菌由来の酵素6.3mg(◆で示す)及び12.6mg(◇で示す)を用いた反応においては、ある程度までの結晶性セルロース分解による濁度低下は認められるものの、それ以降の分解は困難であった。これは糸状菌由来酵素では、結晶性セルロースの強固な構造を持った部分を分解できないためと推定される。
一方、分離菌株JK−N44からの酵素0.3mg(○で示す)及びJK−S14からの酵素0.3mg(■で示す)を用いた試験では、96時間以内に結晶性セルロースを完全に分解していた。これらの結果から、分離菌株JK−N44及びJK−S14は、糸状菌由来の酵素の少なくとも40分の1以下の酵素量で糸状菌酵素と同等以上の速度で分解でき、非常に効率的な分解が可能であることを示している。
Claims (4)
- クロストリジウムに属し、弱アルカリ性で生育し且つセルロース、フラクトース及びソルビトール資化能を有する、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE P−627)菌株。
- クロストリジウムに属し、弱アルカリ性で生育し且つセルロース、フラクトース及びソルビトール資化能を有する、クロストリジウム・サーモセラムJK−N44(NITE P−628)菌株。
- 請求項1又は請求項2に記載の微生物を培養する、セルロソームを含むセルラーゼ及びヘミセルラーゼの製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の微生物又はその菌体培養物を用いてセルロース系バイオマスを処理する、セルロース系バイオマスの糖化方法。
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