JP5083735B2 - クロストリジウム属菌並びにセルロソームを含むセルラーゼ及びヘミセルラーゼの製造方法 - Google Patents

クロストリジウム属菌並びにセルロソームを含むセルラーゼ及びヘミセルラーゼの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、クロストリジウム属に属するセルロース分解活性を示す微生物に係り、さらに同菌を用いたセルロソームを含むセルラーゼ及びヘミセルラーゼの製造方法に関する。
バガス、稲わら、籾殻、キノコ廃床、堆肥、木材チップ等のセルロース系バイオマスは、食糧生産を圧迫しないエネルギーや化学工業の原料資源として注目されている。特に、セルロース系バイオマスを燃料エタノールや発酵原料である糖へ変換する糖化技術において、より効率の良い技術の開発が切望されている。
セルロース系バイオマスの糖化方法には、物理的糖化、化学的糖化と酵素糖化の3つの方法がある。
物理的糖化処理にはボールミルや振動ミル又は蒸煮爆砕や加圧熱水処理など物理的に糖化を施す処理があるが、糖化までに多大なエネルギーを必要とすることや、効率が悪く、単独で用いるというよりは、化学的糖化や酵素糖化の前処理として併用されることが多い。化学的糖化処理には、アルカリ、酸または溶媒を利用するものがあるが、古くより酸糖化がよく用いられている。酸糖化は濃硫酸糖化法と希硫酸二段糖化法とがある。しかし、酸糖化は、硫酸を用いるため、廃棄物処理や環境負荷の低減を必要とし、低コスト化及びエネルギー変換効率に限界があるといわれている。
酵素糖化は酸糖化に比べ、低温で処理できること、過分解が起こらずに糖の収率が高い等の利点があるため、澱粉質を多く含むバイオマスの酵素糖化で実用化されている。ところが、セルロース系バイオマスは、(1)セルロースが結晶構造を有していること、(2)結晶性セルロースをヘミセルロースやリグニンが取り囲んだ複雑な構造を形成しているため、澱粉系に比べ、酵素糖化がきわめて困難である。したがって、酵素による糖化処理前に、物理的あるいは化学的前処理による結晶構造の破壊等の前処理や大量のヘミセルラーゼやセルラーゼを必要とする。
現在、セルロース系バイオマスを効率的に糖化できるヘミセルラーゼやセルラーゼを産生する微生物の探索が行われている。特に糸状菌、中でもトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)を用いた酵素糖化が研究されている。例えば、特許文献1には酸性条件下でセルロース分解活性を示すトリコデルマ属菌が開示されている。
また、トリコデルマ属菌以外のセルロース分解活性を示す微生物として、非特許文献2〜6に示すように、クロストリジウム属(Clostridium)菌が知られている。なお、クロストリジウム属菌が産生する酵素は、複数のサブユニットからなるセルラーゼ複合体、セルロソーム(Cellulosome)を形成していることが報告されている(非特許文献6参照)。
特開2007−319040号公報 Current Microbiology 1983 9:195−200 Appl Environ Microbiol. 1980 Sept;40:571−577 Appl Environ Microbiol. 1990 Jan;54:37−42 Appl Environ Microbiol. 1988 Jan;54:204−211 Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Oct 31;103(44):16165−16169 Microbiol Mol Biol Rev. 2005 Mar;69(1):124−54
本発明は、クロストリジウム属に属するセルロース分解活性を示す微生物、そして、セルロソームを含むセルラーゼ及びヘミセルラーゼの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、セルロース系バイオマスを効率的に糖化できるヘミセルラーゼやセルラーゼを産生する微生物の探索を重ねたところ、これまでに知られているクロストリジウム・サーモセラムに属する菌よりも強いセルロース分解活性を示す微生物の単離に成功し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示すクロストリジウム属に属するセルロース分解活性を示す微生物、そして、セルロソームを含むセルラーゼ及びヘミセルラーゼの製造方法を包含する技術である。
(1)クロストリジウムに属し、弱アルカリ性で生育し且つセルロース、フラクトース及びソルビトール資化能を有する、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE P−627)菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44(NITE P−628)菌株。
(2)クロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE P−627)菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44(NITE P−628)菌株を培養することを特徴とする、セルロソームを含むセルラーゼおよびヘミセルラーゼの製造方法。

(3)クロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE P−627)菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44(NITE P−628)菌株、又はその菌体培養物を用いてセルロース系バイオマスを処理する、セルロース系バイオマスの糖化方法。
本発明のクロストリジウム・サーモセラムに属する菌が産生する酵素は、これまでに知られているクロストリジウム・サーモセラムが産生するセルロソームよりも強いセルロース分解活性を示す。また、本発明のクロストリジウム・サーモセラムに属する菌を培養して得られた酵素は、糸状菌トリコデルマ由来の酵素に比べ、セルロース系バイオマスの糖化効率が高いため、低コスト及びエネルギー変換効率の向上につながり有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らが単離したクロストリジウム・サーモセラムに属する菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 微生物寄託センターに、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)JK−S14(NITE P−627)菌株、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)JK−N44(NITE P−628)菌株として寄託されている(寄託日:平成20年8月12日)ので、この機関より入手することができる。
クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株の菌学的性質を以下に記述する。
桿菌(約1.6〜3.0μm)、胞子形成能あり
好熱性菌
生育温度:50℃〜65℃、至適生育温度60℃
生育pH:6.0〜9.0、至適pH7.0
偏性嫌気性菌 ガスN及びCOに生育(COの場合、培地に炭酸ナトリウムを0.4%程度加える)
培地上の特徴:酸素が入っている培地では生育不可。生育pH7.0で良好。セルロース、セロビオースに生育する。セルロース培地ではセルロースがクリーム色になり分解する。
糖の資化性:セルロース、マンナン、キトサン、セロビオース、フラクトース及びソルビトール資化能を有する。
コロニー形態:セルロース寒天培地ではハローを形成、コロニーは白く小さい。培養日数が経過するとコロニーの周囲に白い粘性を帯びた輪を形成することもある。胞子を形成。−80℃にて保存可能である。
16srRNA(16リボソームRNAコード配列):クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株との間で99%の相同性を示す。
クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株は、以下の点において、これまでに報告されているクロストリジウム・サーモセラムに属する微生物と相違する。
クロストリジウム・サーモセラムATCC27405やクロストリジウム・サーモセラムATCC31549では、セルロース分解時にイエローアフィニティーサブスタンス(YAS:Yellow Affinity Substance)を生産し、セルロースが黄色またはオレンジ色に着色することが知られているが(非特許文献1)、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株は黄色いYAS様物質を生産しない。
これまでの報告によると、クロストリジウム・サーモセラムはエタノール0.5%〜2%存在下において生育が著しく阻害を受けることが知られている(非特許文献2)。クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株では3%エタノール存在下において生育することができる。
クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株は、通常のクロストリジウム属菌の培養に用いられる方法により培養することができる。例えば、以下の組成のBM7CL培地でpH7、50℃〜65℃の条件で行なえばよい。
培地の組成(100ml当たり)
HPO 0.29g
KHPO 0.15g
尿素 0.21g
Yeast extract 0.45g
以上の混合溶液をHCL又はNaOHにてpH7.0に調整後、以下の
システイン塩酸塩 0.05%
ミネラル溶液20μl (組成:MgCl・6HO:1g, CaCl・2HO 0.15g, FeSO・6HO 0.00125g を水4mlに溶解)
リザズリン(2%溶液) 5μl
炭素源:セルロース(Sigmacell Type 20 又は Avicel) 0.5g又はセロビオース0.5g
炭素源は市販されているセルロース性物質ならいずれも利用できる。すなわちシグマセルやアビセルはもとより、ワットマンろ紙、クロマトグラフィー用セルロース粉末、綿、バクテリアセルロース等を利用することができる。また結晶性セルロースの代わりに、酸で膨潤したセルロースやボールミルや粉砕機により結晶性を低下させたセルロースでも炭素源として利用することができる。また再生紙、古紙や新聞紙、オフィス廃棄裁断紙やトイレットペーパーも炭素源として利用することができる。さらには、物理的、化学的な前処理を行った稲わら、麦わら、バガス、木材パルプ、芋パルプ、古紙、紙屑、綿屑等、セルロースを含んでいるものならいずれも炭素源として利用することができる。
また菌株の増殖促進のために上記培地成分以外に、ビタミンの混合液や微量金属混合液などを適当量添加してもよい。例えば、イノシトール、パントテン酸、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB1、アミノ安息香酸、リボフラビン、ビオチン、葉酸等の混合液を適量添加してもよい。また鉄、ナトリウム、ヒ素、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、ヨウ素、ニッケル、銅、コバルト等の元素混合液を添加することもできる。さらに酵母エキス、ペプトンなどのアミノ酸やタンパク質加水分解物を豊富に含む窒素又は栄養源を上記培地の濃度以上に添加しても良いが、これら以外にも、例えば、硫酸アンモニウム、コーンスチープリカー、肉エキス、又はグルタミン酸やグリシンなどのアミノ酸であっても構わない。
クロストリジウム・サーモセラムJK−N44菌株の菌学的性質を以下に記述する。
桿菌(約1.6〜3.0μm)、胞子形成能あり
好熱性菌
生育温度:55℃〜65℃、至適生育温度60℃
生育pH:6.0〜9.0、至適pH7.0
偏性嫌気性菌 ガスN及びCOに生育(COの場合、培地に炭酸ナトリウムを0.4%程度加える)
培地上の特徴:酸素が入っている培地では生育不可。生育pH7.0で良好。セルロース、セロビオースに生育する。セルロース培地ではセルロースがクリーム色になり分解する。
糖の資化性:セルロース、マンナン、キトサン、セロビオース、フラクトース及びソルビトール資化能を有する。
コロニー形態:セルロース寒天培地ではハローを形成、コロニーは白く小さい。培養日数が経過するとコロニーの周囲に白い粘性を帯びた輪を形成することもある。胞子を形成。−80℃にて保存可能である。
16srRNA(16リボソームRNAコード配列):クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株との間で99%の相同性を示す。
クロストリジウム・サーモセラムATCC27405やクロストリジウム・サーモセラムATCC31549は、セルロース分解時にイエローアフィニティーサブスタンス(YAS:Yellow Affinity Substance)を生産し、セルロースが黄色またはオレンジ色に着色することが知られているが(非特許文献1)、クロストリジウム・サーモセラムJK−N44菌株は黄色いYAS様物質を生産しない。
また、クロストリジウム・サーモセラムJK−N44菌株は、以下の点において、これまでに報告されているクロストリジウム・サーモセラムに属する微生物と相違する。
クロストリジウム・サーモセラムはエタノール0.5%〜2%以下において生育が著しく阻害を受けることが知られている(非特許文献2)。クロストリジウム・サーモセラムJK−N44菌株では3%エタノール存在下において生育することができる。
クロストリジウム・サーモセラムJK−N44菌株は、通常のクロストリジウム属菌の培養に用いられる方法により培養することができる。例えば、以下の組成のBM7CL培地でpH7、55℃〜65℃の条件で行なえばよい。
培地の組成(100ml当たり)
HPO 0.29g
KHPO 0.15g
尿素 0.21g
Yeast extract 0.45g
以上の混合溶液をHCL又はNaOHにてpH7.0に調整後、以下の成分を添加してもよい。
システイン塩酸塩 0.05%
ミネラル溶液20μl (組成:MgCl・6HO:1g, CaCl・2HO 0.15g, FeSO・6HO 0.00125g を水4mlに溶解)
リザズリン(2%溶液) 5μl
炭素源:セルロース(Sigmacell Type 20 又は Avicel) 0.5g又はセロビオース0.5g
炭素源又は培地添加物等は、上記クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株の菌学的性質の説明で述べたとおりである。
なお、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44の培養において、増殖によるpH低下を抑えるために、HEPES(2−{−(2−ハイドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタネスルフォニック酸:2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl] ethanesulfonic acid)、MOPS(3−モーフォリノプロパネスルフォン酸:3-Morpholinopropanesulfonic acid)等のグッドの緩衝剤を添加してもよい。また炭酸ナトリウムを添加し、気相を炭酸ガスで充填し、pHを6.0〜7.0付近に維持調整しても構わない。また適当な濃度の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ剤の添加により連続的にpH6.0〜7.0付近に維持調整してもよい。
本発明の新菌株は、嫌気性細菌であり分子状酸素が存在する環境下では増殖することが出来ないため、分子状酸素が存在する環境で本菌株を使用する場合は、不活性ガス、例えば窒素、ヘリウム、アルゴンあるいは炭酸ガスなどを用いた曝気を行うことにより培地環境中に存在する酸素の除去を行なう。一般的に培地は、気相や培地に溶存している酸素を置換するため、窒素ガスでバブリングした後、オートクレーブで殺菌することが望ましい。また、硫化ナトリウム、システイン塩酸などの還元剤を添加しても良い。環境中に好気性の微生物が存在する場合は、好気性微生物が利用可能な有機物、例えば生ゴミ、余剰汚泥、し尿、デンプン、グルコースなどを加えることにより、予め環境から酸素を除去しても良い。
本発明は、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44のほか、それらの自然変異株や紫外線等で人為的に変異させた変異株、さらにクロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44の組み換え菌であって、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44と同等のセルロース分解能を有する菌株を含むものである。
また、本明細書中において、「菌体培養物」とは、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44を培養して得られる培養物を意味し、菌体培養物は、そのままでもあるいは精製して用いてもよい。
セルロース系バイオマスの糖化は、バガス、稲わら、籾殻、キノコ廃床、堆肥、木材チップ、芋パルプ、古紙、綿等をクロストリジウム・サーモセラムに属する微生物又は菌体培養物と接触させて行なえばよい。クロストリジウム・サーモセラムに属する微生物を用いる場合には、接触を嫌気性条件下で培養する必要がある。
また、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株又はクロストリジウム・サーモセラムJK−N44、又は菌体培養物を安定的に保存するために、菌体又は菌体培養物に担体、界面活性剤や補助剤を加えてもよい。担体としては、リン酸緩衝液等の緩衝液や生理食塩水等の液体やカオリン、タルク、珪藻土等の固体を用いることができる。
さらに、実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
田畑土壌、バガス、稲わら、籾殻、キノコ廃床、堆肥、木材チップ粕、廃棄パルプ、など農作物残渣[タイ国由来(バンコク県、チョンブリ県、プラチャンブリ県、アユタヤ県、ナコンパトム県、ラチャブリ県、サムットサコン県、ペチャブリ県、ラビ県、アン−トング県、ロプブリ県、ナコンラチャシマ県、カラシン県、コンケン県、サコンナコン県、ムクダハン県、アンナチャローン県)]を含むサンプル約2〜5gと、幅0.5〜1.0cm、長さ4〜5cmに短冊形にカットしたろ紙(ワットマン社製 No.1)及び、結晶性セルロース(シグマセルタイプ20・シグマ社製)とを、BM7培地20〜25mlに懸濁した。得られた懸濁液を窒素(工業用グレード)にて十分にバブリングし、気相を窒素ガスで置換した後、ブチルゴム栓で密閉し、60℃にて培養を行った。
なお、BM7培地の組成は、リン酸二水素カリウム1.5g/L,リン酸水素二カリウム2.9g/L,尿素2.1g/L,酵母エキス(ディフコ社)4.5g/L,システイン塩酸塩0.5g/L、0.2mlミネラル溶液(MgCl.6HO 5g; CaCl.2HO 0.75g; FeSO4.6HO 0.0063gを水4mlに溶解)とし、得られたBM7培地をpH7.0に調整した。
3日間から1週間程度培養後、サンプルを加えていない上記培養液と比較し、微生物分解によるろ紙の崩壊、分解、及び結晶性セルロースの添加量の明らかな減少や粉末に粘性が認められ、明らかに様子の相違が認められる培養液を選択した。選択した培養液をよく攪拌懸濁して、その0.5mlの培養液を新しい結晶性セルロースを含むBM7培地へ接種し、再度同条件にて培養を行った。この操作を数回繰り返し、セルロース分解菌を集積培養した。
約4日間、集積培養を行い、0.5%の結晶性セルロースを完全分解した培養液を選択した。その選択した培養液の一部を、結晶性セルロース0.5%、寒天(ディフコ社)1.5%を含むBM7寒天培地に、適当な希釈倍率にて接種し、60℃、72時間〜80時間培養を行った。
72時間〜80時間後にコロニーの周りにセルロース分解に伴う透明なハロー(Halo)が認められるコロニーのみ選択し、再度0.5%の結晶性セルロースを含むBM7液体培地に接種して、セルロース分解能を確認した。さらに分離したセルロース分解菌を純化するため、コロニー分離操作を3回繰り返した。
分解菌をさらに純化するために、72時間で結晶性セルロース分解によるハローを形成できるコロニーの培養液の一部を、0.5%〜1%セロビオースを含むBM7寒天培地に接種した。出現したコロニーを嫌気条件下で分離し、再度、0.5%結晶性セルロースを含むBM7液体培地に接種し、セルロース分解能を確認した。これらの操作を3度繰り返し、最終的に、分離した培養物が、結晶性セルロース0.5%含むBM7寒天培地において72〜80時間で結晶性セルロース分解によるハローを形成出来るかどうかを確認した。
そして、72〜80時間で結晶性セルロースを含む寒天培地において、セルロース分解に伴うハローを形成可能な分離培養物から菌株を単離して、JK−N44及びJK−S14と命名した。
JK−N44及びJK‐S14(以下、本明細書中で「分離菌」又は「分離菌株」ということもある)の分類学上の特徴を明らかにするために、16srRNAの塩基配列解析を行った。JK−N44及びJK−S14からのゲノムDNAは、以下の手順により抽出した。
JK−N44及びJK−S14をそれぞれ、0.5%セロビオースを含むBM7液体培地を用いて培養後、4℃にて10,000回転で5分間、遠心分離して菌体を回収した。得られた菌体を溶菌させるために、最終濃度0.5%になるように10%SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)と、5μグラム/mlになるようにプロテナーゼK(1mg/ml)溶液を加え、37℃で1時間反応させた。さらに1%濃度になるように10%臭化セチルトリメチルアンモニウム−0.7M塩化ナトリウム溶液を加え、65℃で10分間反応させた後、等量のクロロフォルム・イソアミルアルコール溶液を加えよく攪拌し、15,000回転で、5分間遠心分離にて水層を得た。この水層に再度フェノール・クロロフォルム・イソアミルアルコール混液を等量加え、攪拌し再度15,000回転、5分間遠心分離にて水層を得た。この水層に対し0.6倍容量のイソプロパノールを加えゲノムDNAを析出させ、再度遠心分離によりゲノムDNAを調製した。このゲノムDNAを70%エタノールで洗浄、乾燥した。
16srRNA増幅用PCRプライマーは27Fオリゴヌクレオチドプライマー(AGAGTTTGATCCTGGCTCAG;配列番号3)及び1492Rオリゴヌクレオチドプライマー(GGCTACCTTGTTACGACTT;配列番号4)を用い、PCRは、ExTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)により16srRNA遺伝子の増幅を行った。PCRの条件は98℃1分間、55℃1分間、72℃2分間を30サイクルの条件において増幅を行なった。
PCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動で増幅されたバンドを確認後、BigDye(登録商標)Terminator v3.1(アプライドバイオシステムズ社)を用い、PRISM(登録商標) 3100 Genetic Analyzer(アプライドバイオシステムズ社)または、PRISM(登録商標)3700 DNA Analyzer(アプライドバイオシステムズ社)によりDNA配列の一部を読み取った。得られた、JK−N44のrRNA遺伝子のDNA塩基配列を図1及び配列番号1に、JK−S14のrRNA遺伝子のDNA塩基配列を図2及び配列番号2に示す。
国立バイオテクノロジー情報センター(NBIC)のホームページ(http://www.Ncbi.nlm.nih.gov/)から得られたDNA配列データを用いて、ホモロジー検索を行なった。その結果、JK−N44及びJK−S14の16srRNA配列は菌株クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株の16srRNA配列に99%の相同性を示したことから、分離菌株はクロストリジウム・サーモセラムに属することが明らかとなった。
図8にJK−N44菌株とクロストリジウム・サーモセラムATCC27405株のDNA配列のアライメントを、図9にJK−S14とクロストリジウム・サーモセラムATCC27405株のDNA配列のアライメントを示す。
分離菌株の生理学的特徴を明らかにするために、生育温度範囲、生育可能pH範囲、炭素源の資化性試験を行なった。
生育温度範囲に対する試験は0.5%セロビオースを含むBM7液体培地を用い、30℃から5℃おきに70℃まで生育可能かどうか、菌の生育に伴う菌体濃度の上昇を600nmによる濁度の上昇を指標に測定を行なった。
その結果、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株及び分離株JK−S14では50℃から65℃で生育するが、分離菌株JK−S44の生育温度は55℃から65℃と若干高い温度であった。いずれの菌株も至適生育温度は60℃であった。
生育可能なpHの測定は上記同様に0.5%セロビオースを含むBM7液体培地を用いて、pH4.0からpH10.0まで、pH1.0おきに培地中のpHを塩酸で調整した後、600nmによる濁度の上昇を指標に生育測定を行なった。なお、pH8はTris−HCl緩衝液を培地に添加しpHの調整を行ない、pH9.0〜10.0は炭酸ナトリウム緩衝液を用いpHの調整を行なった。各pHに調整された液体培地はオートクレーブ後、pHメーターを用いて、指定のpHとなっているか確認をした後、菌を培養して試験を行なった。その結果、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株ではpH6.0からpH7.5の範囲で生育を確認できたが、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14菌株及びクロストリジウム・サーモセラムJK−N44はpH6.0からpH9.0まで生育可能であった。すなわち、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株よりも分離菌株はアルカリ側で生育可能であった。
糖の資化性は、セルロース、セロビオース、グルコース、フラクトース、ソルビトールを各0.5%それぞれ含んだBM7液体培地を用いて測定を行なった。不溶性基質であるセルロースは、セルロースの消失により資化性の有無を判定した。またその他の可溶性基質を使用した場合、上記と同様に600nmでの濁度の上昇を測定した。培養は4日間行い、その後生育の有無を測定した。
糖質を抜いたBM7培地にはすべての菌株において明確な生育は認められなかったが、既知菌株ではセロビオース、グルコースを炭素源に用いた場合、比較的長いラグが認められた。一方、分離菌株においてはJK−N44株でグルコースを炭素源にした場合にのみ長いラグが認められた。しかし、JK−N44及びJK−S14は、ともにグルコース、フラクトース、ソルビトールといった炭素源においても資化性を示し、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株と異なる糖資化能を有することが明らかとなった。
クロストリジウム・サーモセラムATCC27405やクロストリジウム・サーモセラムATCC31549では、セルロース分解時にイエローアフィニティーサブスタンス(YAS:Yellow Affinity Substance)を生産し、分解に伴いセルロースが黄色またはオレンジ色に着色することが知られている(非特許文献1:Current Microbiology 1983 9:195−200)。そこで、分離菌株がYASを生産するかを確認するため、0.5%セルロースを含むBM7液体培地によりセルロースの着色を確認した。クロストリジウム・サーモセラムATCC27405は上記培地接種後、48時間以内にセルロースの白色が黄色く変色し、YASが生産されていることが確認できた。一方、分離菌株クロストリジウム・サーモセラムJK−S14およびJK−N44菌株では、培地中のセルロースはクリーム色へ若干の変色は認められたものの、セルロース分解による消失まで黄色い着色は認められなかった。
なお、非特許文献3記載のクロストリジウム・サーモセラムYM4菌株と、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14およびJK−N44菌株とは、クロストリジウム・サーモセラムYM4菌株が二酸化炭素要求性であること、セルロース分解においてオレンジ〜黄色の着色が認められること、生育温度が45〜65℃であること、生育可能pHが5.9〜8.1である点で相違する。なお、クロストリジウム・サーモセラムYM4菌株の二酸化炭素要求性に関しては、「NaCOを含まない培地でCOをNに置換したガス層では生育が観察されなかった」ことが記載されているが、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14およびJK−N44菌株は共に同じ条件下の培養でも生育する。
以上、分離菌株の生理学的特徴をクロストリジウム・サーモセラムATCC27405株と比較して、表1に示す。
クロストリジウム・サーモセラムはセルロースを分解しエタノール、乳酸、酢酸を生産できることから、セルロースからの直接的なエタノール生産技術の開発に期待されている。しかしクロストリジウム・サーモセラムはエタノール耐性が非常に弱く0.5%〜1%以下において増殖が著しく阻害を受けることが知られている(非特許文献2:Appl Environ Microbiol. 1980 Sept;40:571−577)。従ってエタノール耐性は非常に重要な性質と考えられる。そこで分離株のエタノール耐性を検討するため、エタノール3%(v/v)を含み、セロビオースを炭素源にしたBM7液体培地により増殖試験を行った。エタノールの代わりに滅菌水を同量加えたBM7培地を、増殖阻害の起こらない状態として対照に用いた。クロストリジウム・サーモセラムATCC27405および分離菌株をそれぞれの上記培地に接種し、60℃で1週間培養を行った後、600nmでの菌増殖に伴う濁度上昇を測定し比較した。その結果を表2に示した。エタノール3%存在下、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405ではエタノール不在時に比較し84.2%の著しい増殖阻害を受けた。一方、分離株ではエタノール3%存在下では、21.4%〜24.7%の増殖阻害を受けるに止まり、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405よりも強いエタノール耐性能を有していることが明らかとなった。
分離菌株の形態的な特徴を検討するため、走査型電子顕微鏡を用いて形態観察を行った。
クロストリジウム・サーモセラムATCC27405及び分離菌株を用い0.5%セロビオースを含むBM7液体培地で培養後、PBS緩衝液にて培養液1mlを希釈し、メンブランフィルター(ポリカーボネートメンブレン:アドバンテック社製)を通して集菌し、PBS緩衝液で一度洗浄を行った。そのメンブランフィルターは一晩、2.5%グルタルアルデヒドを含むPBS緩衝液に浸し固定化を行った。メンブランフィルターはさらにPBS緩衝液にて洗浄後、1.5%酸化オシミウムを含むPBS緩衝液に1時間浸漬した。そのメンブランフィルターはPBS緩衝液にて洗浄を行った後、50%〜99.5%エタノール濃度の系列で脱水処理を行い、t−ブチルアルコールにより乾燥処理を行った。乾燥処理後、メンブランフィルターは白金パラジウムにてイオンコートを行い走査型電子顕微鏡(日本電子JEOL JSM−5600LV)により観察を行った。
結果を図3に示す。なお、図中の白横線は1μmの大きさを示している。クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株(図中(a)で示す)と、分離株JK−N44(図中(b)で示す)及びJK‐S14(図中(c)で示す)とも桿菌で似たような形態を持っていたが、菌体の長さにおいて、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株は約4〜5μmに対し、JK−N44及びJK‐S14は、ともに長さ約1.6〜3.0μmであり、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405株に比べ、短い形態であることがわかる。
なお、非特許文献3にはクロストリジウム・サーモセラムYM4菌株が0.4〜4μmであることが記載されている。
クロストリジウム・サーモセラムATCC27405の結晶性セルロース分解によるハロー形成を分離菌株と比較した。
クロストリジウム・サーモセラムATCC27405の培養液を使い、実施例1と同様に結晶性セルロースを0.5%含むBM7寒天培地における結晶性セルロース分解によるコロニー周りのハロー形成を調べた。その結果、分離菌株がハロー形成した72〜80時間ではハローの形成は確認できず、ハロー形成まで90時間〜96時間を要した。
JK−N44及びJK−S14が、すでに報告のあるクロストリジウム・サーモセラムATCC31549(非特許文献4:Appl Environ Microbiol. 1988 Jan;54:204−211)やクロストリジウム・サーモセラムATCC27405(非特許文献5:Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Oct 31;103(44):16165−16169)より強い結晶性セルロース分解能を有しているかを確認するため、分離菌株の培養液とクロストリジウム・サーモセラムATCC31549及びクロストリジウム・サーモセラムATCC27405の培養液を用い、その分解活性に伴う結晶性セルロースの濁度低下を指標にした濁度測定法により分解活性の比較を行なった。この濁度測定法は「トゥルー セルラーゼ アクティビティー(True cellulase activity)」(Appl Environ Microbiol. 1982 May;43:1125−1132))と呼ばれ、不溶性基質であるセルロースが分解によって消失していく過程を測定する方法である。この方法は、遊離還元糖を測定する方法よりも、真のセルラーゼ活性の強弱を比較、検討することができるので、またセルラーゼ種類に依存することなく全体のセルラーゼ活性を評価できる。
反応は結晶性セルロース粉末3mgに0.5mlの培養液、3mlの0.2M酢酸ナトリウム緩衝液 (pH 6.0)、0.5 mlの1% 塩化カルシウム溶液、0.5 mlの0.1Mジオトレイトール(DTT)、を加え蒸留水にて全量5mlとし、60℃で行なった。
その結果を図4に示す。グラフの横軸は反応時間を示し、縦軸は660nmの濁度を示している。クロストリジウム・サーモセラムATCC31549株(△で示す)やクロストリジウム・サーモセラムATCC27405株(▲で示す)のセルロース分解活性は緩やかであるのに対し、JK−N44(□で示す)やJK‐S14(■で示す)では96時間以内に濁度が急激に減少し、ほとんど全ての結晶性セルロースが可溶化された。
この結果は、これらJK−N44及びJK‐S14がクロストリジウム・サーモセラムATCC31549やクロストリジウム・サーモセラムATCC27405よりも非常に高い結晶性セルロース分解活性を有していることを示している。
16rSRNA配列解析から分離株はクロストリジウム・サーモセラムに属す微生物であり、分離菌株の持つ高い結晶性セルロース分解活性能はセルロソームと呼ばれる高分子酵素複合体によると考えられた(非特許文献6:Microbiol Mol Biol Rev. 2005 Mar;69(1):124−54参照)ため、分離菌株と既知菌株の酵素活性を比較した。
分離株及びクロストリジウム・サーモセラムATCC27405株から酵素複合体の調製を行い、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ活性の測定を行なった。
各菌株からの酵素複合体の調製は0.5%結晶性セルロースを炭素源としたBM7液体培地にて結晶性セルロースが完全に分解するまで培養を行い、遠心分離により菌体を除いた。
その培養液にセルロース粉末を加え、一晩4℃にて攪拌し酵素複合体をセルロースに吸着させた。攪拌後、空カラムにセルロースが懸濁された培養液を注ぎ、セルロースと培養液を分別した後、数倍量の10mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸ナトリウム緩衝液でセルロース非吸着物を洗浄した。セルロースに吸着させた酵素複合体は超純水約50mlで溶出し、以降使用する酵素溶液(セルロース吸着酵素画分)として用いた。結晶性セルロース分解活性は、60℃で1時間、1%結晶性セルロース粉末(シグマセルタイプ20 シグマ社製)および5mM塩化カルシウムを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)において酵素溶液を反応させ、遊離してきた還元糖量をソモジ・ネルソン法(澱粉・関連糖質酵素実験法 1998 生物化学実験法19:41−42学会出版センター)により測定を行なった。
ヘミセルラーゼ活性としてキシラナーゼ活性及びマンナナーゼ活性を測定した。ヘミセルラーゼ活性は、上記と同様に基質としてセルロース粉末の代わりに1%キシラン(オートスペルトキシラン;シグマ社製)、又は0.2%ローカストビーンガム(シグマ社製)を用い、遊離してくる還元糖量をソモジ・ネルソン法により測定した。1分間に1μモルのグルコースを遊離する酵素の量を1ユニットの定義とした。
セルラーゼ及びヘミセルラーゼ活性の比較結果を表3に示す。
分離菌株の結晶性セルロース分解活性は、対照としたクロストリジウム・サーモセラムATCC27405株に比較し、比活性で約3倍以上の高い活性を示し、前述の培養液を用いた結晶性セルロース分解に伴う濁度消失の結果と同様な傾向であった。キシラナーゼ活性やマンナーゼ活性も分離株でそれぞれ約2倍比活性が高い結果を示し、JK−N44及びJK−S14は優れたセルラーゼ及びヘミセルラーゼの分解活性を有していることが明らかとなった。
酵素複合体はセルロソームを代表とする高分子骨格タンパク質及び酵素サブユニットから構成されており、推定分子量は数十万〜数百万ダルトンになることが知られている(非特許文献6参照)。
分離菌株が産生する酵素が、結晶性セルロース分解活性及びヘミセルロース分解活性の酵素複合体であるかどうか確認するために、各培養液から調製した前述のセルロース吸着酵素画分を用い、ゲル濾過クロマトグラフィーにより溶出パターン及びセルラーゼ活性の検討を行った。
クロストリジウム・サーモセラムATCC27405、分離株JK−N44及びJK‐S14株から調製したセルロース吸着酵素画分5mlを用い、ゲル濾過クロマトグラフィー(セファクリルS−500HR;GEヘルスケアバイオサイエンス社)に供した結果を図5に示す。図中、タンパク質溶出パターンを280nmの吸光度で測定した結果を実線で示し、結晶性セルロース分解活性パターンを点線で示す。図中の矢印及び縦実線は、BDはブルーデキストリン2000(2000キロダルトン)、TGはチオグロブリン(669キロダルトン)、ADはアルドラーゼ(158キロダルトン)の溶出位置をそれぞれ示している。
ゲル濾過クロマトグラフィーの結果、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405と分離株のセルロース吸着酵素画分には、2000キロダルトンから669キロダルトン付近の高分子溶出位置に2つの大きなピークが確認された。このピークのうちチオグロブリンの分子量に一致する位置に溶出したピークには高い結晶性セルロース分解活性が認められた。また結晶性セルロース分解活性と同じパターンでヘミセルラーゼ活性も存在しているのを確認した。
高い結晶性セルロース分解活性及びヘミセルロース分解活性が高分子量溶出位置に一致していることから、結晶性セルロース分解活性及びヘミセルロース分解活性は酵素複合体による活性と考えられた。
また、ゲル濾過クロマトグラフィーによる溶出パターンを比較すると、既知菌株クロストリジウム・サーモセラムATCC27405からの酵素複合体と分離菌株との溶出パターンが異なることから、分離株と既知菌株との間で、酵素複合体中の酵素サブユニットの種類または構成比が違うことが予想された。
分離菌株はアルカリ側でも生育が可能であることから、分離菌株においてアルカリ側でも結晶性セルロース分解活性があることが予想された。そこで弱アルカリ(pH8.0)条件下で濁度法により結晶性セルロース分解活性の測定を行った。
結晶性セルロース粉末3mgに、それぞれの酵素0.05ml、3mlの0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、0.5mlの1% 塩化カルシウム溶液、0.5 mlの0.1Mジオトレイトール(DTT)を加え、蒸留水にて全量5mlとし、60℃で酵素反応を行なった。その結果を図6に示す。クロストリジウム・サーモセラムATCC27405(▲で示す)、分離菌株JK−N44(□で示す)、JK−S14(○で示す)において、結晶性セルロース分解に伴う濁度消失が確認された。さらに、分離菌株の酵素は両方とも、クロストリジウム・サーモセラムATCC27405の酵素に比較し、アルカリ条件下での分解速度が速く、弱アルカリ条件下でも効率よく分解していることが確認された。
従来、セルロース系バイオマス酵素糖化において使用される酵素としては、糸状菌トリコデルマ・リーシエ由来の糖化酵素が多く利用されている。分離株から調製した酵素液と糸状菌トリコデルマ・リーシエ由来の糖化酵素における結晶性セルロース分解活性を比較するために、濁度法により分解活性測定を行った。
糸状菌トリコデルマ・リーシエ由来の糖化酵素は、ノボザイムズ社製セルクラスト(登録商標)1.5Lを用いた。すなわち、結晶性セルロース粉末3mgに、酵素溶液6.3mg又は12.5mgを加え、3mlの0.2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を加え、蒸留水にて全量5mlとし、50℃で糖化反応を行った。
分離株の酵素の場合、糸状菌の糖化酵素と同様に、結晶性セルロース粉末3mgに調製した酵素液0.03mg、3mlの0.2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)、0.5 mlの1%塩化カルシウム溶液、0.5mlの0.1Mジオトレイトール(DTT)、を加え蒸留水にて全量5mlとし、60℃で糖化反応を行なった。
濁度測定は実施例3と同様に660nmで行い、また測定前の酵素タンパク量の測定は、BCAタンパク質定量キット(サーモサイエンティフィック社)により牛血清アルブミンをスタンダードとして各酵素のタンパク量を算出した。
結果を図7に示す。糸状菌由来の酵素6.3mg(◆で示す)及び12.6mg(◇で示す)を用いた反応においては、ある程度までの結晶性セルロース分解による濁度低下は認められるものの、それ以降の分解は困難であった。これは糸状菌由来酵素では、結晶性セルロースの強固な構造を持った部分を分解できないためと推定される。
一方、分離菌株JK−N44からの酵素0.3mg(○で示す)及びJK−S14からの酵素0.3mg(■で示す)を用いた試験では、96時間以内に結晶性セルロースを完全に分解していた。これらの結果から、分離菌株JK−N44及びJK−S14は、糸状菌由来の酵素の少なくとも40分の1以下の酵素量で糸状菌酵素と同等以上の速度で分解でき、非常に効率的な分解が可能であることを示している。
JK−N44のrRNA遺伝子のDNA塩基配列を示す図である。 JK−S14のrRNA遺伝子のDNA塩基配列を示す図である。 クロストリジウム・サーモセラムATCC27405とJK−N44およびJK-S44の形態を示す図である。 JK−N44とJK−S14の結晶性セルロース分解活性を示すグラフである。 酵素複合体のゲル濾過クロマトグラフィー溶出パターンと結晶性セルロース分解活性を示すグラフである。 弱アルカリ(pH8.0)条件における結晶性セルロース分解活性を示すグラフである。 糸状菌酵素と分離菌株酵素の結晶性セルロース分解能の比較を示すグラフである。 JK−N44菌株とクロストリジウム・サーモセラムATCC27405株のDNA配列のアライメントを示す図である。 にJK−S14とクロストリジウム・サーモセラムATCC27405株のDNA配列のアライメントを示す図である。

Claims (4)

  1. クロストリジウムに属し、弱アルカリ性で生育し且つセルロース、フラクトース及びソルビトール資化能を有する、クロストリジウム・サーモセラムJK−S14(NITE P−627)菌株。
  2. クロストリジウムに属し、弱アルカリ性で生育し且つセルロース、フラクトース及びソルビトール資化能を有する、クロストリジウム・サーモセラムJK−N44(NITE P−628)菌株。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の微生物を培養する、セルロソームを含むセルラーゼ及びヘミセルラーゼの製造方法。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の微生物又はその菌体培養物を用いてセルロース系バイオマスを処理する、セルロース系バイオマスの糖化方法。
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