JP2010042936A - シリコン単結晶の育成方法及びシリコンウェーハの製造方法並びにそのシリコンウェーハ - Google Patents

シリコン単結晶の育成方法及びシリコンウェーハの製造方法並びにそのシリコンウェーハ Download PDF

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Abstract

【課題】育成中に破裂することなく、グローイン欠陥の無いシリコン単結晶を提供する。
【解決手段】シリコン単結晶11の中心部及び外周部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配の比Gc1/Geが1.2〜1.3となるように育成中の単結晶11の外周部を冷却する。熱遮蔽体28下端とシリコン融液15表面との間のギャップを40〜100mmに設定し、パーフェクト領域からなるか或いはこのパーフェクト領域の引上げ時よりも引上げ速度が大きい領域からなるように、単結晶11の引上げ速度vと単結晶11中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配Gc2との比v/Gc2を0.16〜0.20mm2/(℃・分)に制御する。さらに、単結晶11の引上げ速度を制御して、固液界面33上の単結晶11中心部での熱応力を50MPa以下とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法という。)によりグローイン欠陥(Grown-in欠陥)の無いシリコン単結晶、或いは後熱処理で消滅させることのできるグローイン欠陥(Grown-in欠陥)を含むシリコン単結晶、特に直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶を引上げて育成する方法と、このシリコン単結晶をスライスした後に表層中の欠陥を消滅させたシリコンウェーハの製造方法と、この方法で製造されたシリコンウェーハに関するものである。
半導体材料のシリコンウェーハの素材である棒状のシリコン単結晶を製造するには、CZ法によるシリコン単結晶の育成方法が広く採用されている。このCZ法によるシリコン単結晶の育成では、一般的に次のように行われる。減圧雰囲気にされた引上げ装置内において、るつぼ内に充填されたシリコン原料を、るつぼを囲繞するヒータにより加熱して融解する。るつぼ内にシリコン融液が貯留されると、るつぼの上方に吊下げられた種結晶を下降させてシリコン融液に浸漬する。この状態から種結晶及びるつぼをそれぞれ所定の方向に所定の回転速度で回転させながら種結晶を徐々に引上げることにより、種結晶からシリコン単結晶が育成される。また近年では、シリコン単結晶をスライスして得られたシリコンウェーハ表面に観察される結晶起因のパーティクル(Crystal Originated Particle、以下、COPという)や転位クラスタといったグローイン欠陥のないシリコン単結晶を効率良く育成するために、シリコン融液の表面から所定のギャップをあけた上方であって育成中のシリコン単結晶の周囲を囲繞する熱遮蔽体を備えた引上げ装置が多く用いられている。
シリコン単結晶の育成では、先ず種結晶の直下に形成されたネック部から所望の直径まで逐次直径を増加させた円錐状のショルダ部が形成され、次いでシリコンウェーハの製品として取扱われる所望の直径の直胴部が形成され、次に育成の最終段階で転位の導入を防止するために直胴部から逐次直径を減少させた逆円錐状のテイル部が形成され、更にテイル部の下端でシリコン単結晶がシリコン融液から切り離される。
ところで、シリコン単結晶を引上げて成長させる際には、シリコン単結晶とシリコン融液との固液界面で点欠陥(原子空孔、格子間シリコン)がシリコン単結晶中に取込まれ、単結晶の冷却過程で種々のグローイン欠陥が形成される。図5には、通常の高速引上げで、空孔が過剰となった場合のシリコン単結晶を成長させる条件での、グローイン欠陥が発生する温度領域を示す。シリコン単結晶がシリコン融液から引上げられながら滞在する時間により、シリコン単結晶に発生する欠陥のサイズが決まる。同一のシリコン単結晶の引上げ装置において、シリコン単結晶の引上げ速度vを低下させていくと、点欠陥の取込まれる濃度が変化していき、図6に示すように、空孔が過剰であった領域から、空孔と格子間シリコンの濃度が釣り合った領域に変化し、更に格子間シリコンが過剰な領域に変化することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、シリコン単結晶中に存在する格子間酸素(Oi)は、熱処理により酸素析出核を経て酸素析出物を形成し、この酸素析出物は半導体デバイス製造過程で汚染のおそれのある金属不純物を捕獲するゲッタリングサイトとなる。金属不純物が半導体デバイスの動作領域に存在すると、半導体デバイスの電気特性の劣化を引起こすため、この金属不純物を捕獲する上記ゲッタリングサイトは有用である。近年、シリコン単結晶の大口径化が推進され、直径300mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶が既に製造されており、また直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶が製造されようとしている(例えば、非特許文献1参照。)。
特開2000−327486号公報(段落[0062]、図4) 『先端LSIが要求するウェーハ技術の現状』最新シリコンデバイスと結晶技術、発行:リアライズ理工センター/リアライズAT株式会社、著者:スーパーシリコン研究所 林信行、発行日:2005年12月29日、第3章「結晶技術」、1.5「450mm径を想定した結晶技術課題」(第243頁及び第244頁)
上記のように、直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶のように、引上げる直胴部の直径が大きくなれば、シリコン単結晶のみならずシリコン単結晶の引上げ装置も大型化し、熱容量が増大して、シリコン単結晶中の温度勾配(G)が小さくなり、シリコン単結晶が徐冷化されることになる。そして、シリコン単結晶が引上げられながらグローイン欠陥の発生する温度領域に滞在する時間が長くなり、欠陥(COP)サイズの粗大化が起こる。これらの欠陥が粗大化すると、ポリッシュドウェーハでは、COPによる大きなくぼみが悪影響を及ぼし、エピタキシャル層を成長させるシリコンウェーハや熱処理ウェーハとしても、そのCOPのくぼみなどのウェーハ表面に存在する欠陥を消失させることが困難になり、ウェーハ表面にくぼみなどの欠陥が形成されてしまう。これを防ぐために、シリコン単結晶の引上げ速度を大きくすることが考えられるけれども、引上げ速度の増大に伴ってシリコンの凝固潜熱が増加することが問題になる。前述のように、シリコン単結晶中の温度勾配(G)が小さくなっているため、発生する潜熱の放逸が進まず、熱収支の均衡を確保するためにシリコン単結晶及びシリコン融液の固液界面が上側に大きく凸となる形状になってしまう。その結果、引上げ中のシリコン単結晶に大きな熱応力が発生し、シリコン単結晶の引上げ中の温度での限界強度を上回ることになり、引上げ中のシリコン単結晶の破壊が生じるおそれがある。
そこで、シリコン単結晶の徐冷化を防ぐため、引上げ中のシリコン単結晶の熱環境を急冷する構成に変更することも考えられる。そのためには、シリコン原料を貯留するるつぼの高さ等を小さくすることが必要である。るつぼの高さを変更した場合のシリコン単結晶の温度分布を図7に示す。図7から明らかなように、るつぼの高さを低くすることで、直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の引上げ中の温度分布を、直径300mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の引上げ中の温度分布とほぼ同等にすることが可能であるけれども、この場合、るつぼに貯留できるシリコン融液の量が制限されてしまう。
一方、引上げるシリコン単結晶の直胴部の直径が大きくなれば、ショルダ部及びテイル部の各寸法や各重量も増大する。そのため、同一形状のるつぼを使用して得られた同一量のシリコン融液からシリコン単結晶を引上げたときの歩留まりは、直胴部の直径の増大に伴って低下する。シリコン単結晶の直胴部の直径に対する歩留まりの変化を図8のグラフに示す。図8において、縦軸の『理想歩留まり』は、次の計算により求められる。先ず所望のシリコン単結晶を引上げた後で、当初のシリコン原料のるつぼへの充填重量から、引上げた後のシリコン単結晶のショルダ部とテイル部とるつぼに残留するシリコン原料の重量を差引いて、外周研削前の直胴部の重量を求める。次いでこの重量から外周研削分を除いた直胴部の重量を求め、これを上記充填重量で除算する。例えば、図8から明らかなように、単結晶の歩留まり(任意単位)として80%を得ようとする場合、直径300mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の初期原料量に対して直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の初期原料量はその3倍程度必要である。また、直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の引上げる場合において、直径300mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶とほぼ同等の温度分布を得るために必要な、るつぼの直径に対するるつぼの高さの比が0.5以下となる条件を満たすには、るつぼの直径が極めて大きくなってしまい現実性がない。
また直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶では、直径300mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶より直径が大きくなり、径方向での温度差が大きくなるため、シリコン単結晶内の温度分布によっては熱応力が大きくなって、結晶割れや有転位化が発生し易くなる。そのため、シリコン単結晶を過度に急冷することが困難であるため、シリコン単結晶の軸方向温度勾配が小さくなり、単結晶の各温度領域を通過する時間が長くなって、単結晶中に生成される結晶欠陥のサイズが大きくなる問題点がある。そこで、引上げ速度が高めである通常の空孔優勢領域でシリコン単結晶を引上げると、先ずCOPが発生するけれども、そのCOP(Void)サイズが大きくなり過ぎて、ウェーハ表面でのCOPによる穴が大きくなリ、半導体デバイス製作時に不具合が生じる。一方、引上げ速度を低めにして転位クラスタを発生させると、半導体デバイスに悪影響を与える。
更にシリコン単結晶内に格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域[P]でグローイン欠陥の無い直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶を引上げる場合、シリコン単結晶中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配が小さくなるため、パーフェクト領域[P]となるシリコン単結晶の引上げ速度の範囲が狭くなり、全長にわたってパーフェクト領域[P]となるシリコン単結晶を引上げることが難しくなる問題点もあった。
本発明の第1の目的は、育成中にシリコン単結晶が破裂することなく、シリコンウェーハにスライスする前からグローイン欠陥の無い高品質のシリコン単結晶を得ることができるか、或いはシリコンウェーハにスライスする前に空孔型点欠陥の凝集体が存在するシリコン単結晶であっても、このシリコン単結晶をスライスしたシリコンウェーハに後熱処理を施すことにより、シリコンウェーハ表層のグローイン欠陥を消滅させることができる、シリコン単結晶の育成方法及びシリコンウェーハの製造方法並びにそのシリコンウェーハを提供することにある。
本発明の第2の目的は、直径450mmのシリコンウェーハを作製可能な直胴部を有するシリコン単結晶の引上げ中に形成されるグローイン欠陥を低減でき、このシリコン単結晶をスライスして得られたシリコンウェーハに後熱処理を施すことにより、表層の結晶欠陥密度が非常に小さいシリコンウェーハを作製できる、シリコン単結晶の育成方法及びシリコンウェーハの製造方法並びにそのシリコンウェーハを提供することにある。
本発明の第3の目的は、パーフェクト領域[P]の引上げ時よりも引上げ速度が若干大きい空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域[V]で引上げたシリコン単結晶をスライスして得られたシリコンウェーハであっても、後熱処理を施すことによって、シリコンウェーハ表層のCOPを消滅させることができ、これにより表層にグローイン欠陥の無いシリコンウェーハを作製できる、シリコンウェーハの製造方法及びそのシリコンウェーハを提供することにある。
請求項1に係る発明は、チャンバに収容されたるつぼにシリコン融液を貯留し、このシリコン融液に種結晶を浸漬して回転させながら引上げることにより、種結晶から無転位のシリコン単結晶を引上げて育成するシリコン単結晶の育成方法の改良である。その特徴ある構成は、シリコン単結晶が直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶であり、育成中のシリコン単結晶中心部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGc1とし、育成中のシリコン単結晶外周部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGeとするとき、比Gc1/Geが1.2〜1.3となるように上記育成中のシリコン単結晶の外周部を冷却し、育成中のシリコン単結晶の外周面を囲繞する熱遮蔽体の下端とシリコン融液の表面との間のギャップを40〜100mmに設定し、シリコン単結晶内での格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在する領域を[I]とし、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域を[V]とし、格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域を[P]とし、シリコン単結晶の引上げ速度をvとし、シリコン単結晶中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配をGc2とするとき、シリコン単結晶がパーフェクト領域[P]からなるか或いはこのパーフェクト領域[P]の引上げ時よりも引上げ速度が大きい領域[V]からなるように比v/Gc2を0.16〜0.20mm2/(℃・分)に制御することにより、シリコン単結晶中に転位クラスタを発生させないようにするか、或いは引上げ初期にシリコン単結晶中に取り込まれる空孔濃度を小さくし小サイズの空孔型点欠陥の凝集体にすることにより後処理で消滅可能なサイズとし、シリコン単結晶の引上げ速度を制御することにより、シリコン単結晶とシリコン融液との固液界面上であってシリコン単結晶の中心部での熱応力を50MPa以下とするところにある。
請求項2に係る発明は、チャンバに収容されたるつぼにシリコン融液を貯留し、このシリコン融液に種結晶を浸漬して回転させながら引上げることにより、種結晶からシリコン単結晶を引上げて育成するシリコン単結晶の育成方法の改良である。その特徴ある構成は、シリコン単結晶が直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶であり、育成中のシリコン単結晶中心部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGc1とし、育成中のシリコン単結晶外周部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGeとするとき、比Gc1/Geが1.2〜1.3となるように上記育成中のシリコン単結晶の外周部を冷却し、育成中のシリコン単結晶の外周面を囲繞する熱遮蔽体の下端とシリコン融液の表面との間のギャップを40〜100mmに設定し、シリコン単結晶内での格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在する領域を[I]とし、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域を[V]とし、格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域を[P]とし、シリコン単結晶の引上げ速度をvとし、シリコン単結晶中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配をGc2とするとき、シリコン単結晶がパーフェクト領域[P]からなるか或いはこのパーフェクト領域[P]の引上げ時よりも引上げ速度が大きい領域[V]からなるように比v/Gc2を0.16〜0.20mm2/(℃・分)に制御することにより、シリコン単結晶中に転位クラスタを発生させないようにするか、或いは引上げ初期にシリコン単結晶中に取り込まれる空孔濃度を小さくし小サイズの空孔型点欠陥の凝集体にすることにより後処理で消滅可能なサイズとし、シリコン単結晶の引上げ速度を制御することにより、育成中のシリコン単結晶外周部であって温度1000℃の位置での熱応力を37MPa以下とするところにある。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の方法で育成されたシリコン単結晶をスライスしてシリコンウェーハを作製し、このウェーハに熱処理を施してウェーハ表面から10μm以内の表層中のグローイン欠陥を消滅させたシリコンウェーハの製造方法である。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明であって、更にシリコンウェーハに施した熱処理が、非酸化性ガス雰囲気又は還元性ガス雰囲気或いはこれらの混合ガス雰囲気中で1100〜1250℃に0〜180分間保持する熱処理であることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明であって、更に非酸化性ガスがAr、He、Ne、Kr、Xe又はRn、或いはこれらの混合ガスであり、還元性ガスがH2であることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項3ないし5いずれか1項に記載の方法で製造され、表面から10μm以内の表層中のグローイン欠陥が消滅した直径450mmのシリコンウェーハである。
請求項1に係る発明では、育成中にシリコン単結晶が破裂することなく、無転位であって、グローイン欠陥が無いか或いは空孔型点欠陥の凝集体のサイズの小さい直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶を得ることができる。また引上げ速度vと軸方向温度勾配Gc2との比であるv/Gc2を調整して、空孔過剰で赤外散乱欠陥(COP)を発生する領域と格子間シリコン過剰で転位クラスタを発生する領域との中間に位置するパーフェクト領域を成長させる条件で、或いはこのパーフェクト領域の引上げ時よりも引上げ速度が若干大きい領域であって引上げ初期にシリコン単結晶中に取り込まれる空孔濃度を小さくし小サイズの空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域を成長させる条件で、直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶を引上げて、このシリコン単結晶をスライスすると、ウェーハ中にCOPの無いシリコンウェーハを作製できるか、或いはスライスしたシリコンウェーハに後熱処理を施すことにより、ウェーハ表面側のCOPを消滅させることができる。この結果、ウェーハ中にグローイン欠陥の無いシリコンウェーハを得ることができるか、或いはウェーハ表層中の結晶欠陥密度の小さいシリコンウェーハを得ることができる。
請求項2に係る発明では、育成途中から有転位化したシリコン単結晶であっても、シリコン単結晶にクラックが発生することなく、グローイン欠陥が無いか或いは空孔型点欠陥の凝集体のサイズの小さい直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶を得ることができる。また上記請求項1と同様に、引上げ速度vと軸方向温度勾配Gc2との比であるv/Gc2を調整して、空孔過剰で赤外散乱欠陥(COP)を発生する領域と格子間シリコン過剰で転位クラスタを発生する領域との中間に位置するパーフェクト領域を成長させる条件で、或いはこのパーフェクト領域の引上げ時よりも引上げ速度が若干大きい領域であって引上げ初期にシリコン単結晶中に取り込まれる空孔濃度を小さくし小サイズの空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域を成長させる条件で、直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶を引上げて、このシリコン単結晶をスライスすると、ウェーハ中にCOPの無いシリコンウェーハを作製できるか、或いはスライスしたシリコンウェーハに後熱処理を施すことにより、ウェーハ表面側のCOPを消滅させることができる。この結果、ウェーハ中にグローイン欠陥の無いシリコンウェーハを得ることができるか、或いはウェーハ表層中の結晶欠陥密度の小さいシリコンウェーハを得ることができる。
請求項3に係る発明では、請求項1又は2に記載の方法で育成された直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶を引上げ、このシリコン単結晶をスライスして得られたシリコンウェーハに熱処理を施すだけで、ウェーハ表層中のグローイン欠陥が消滅する。この結果、ウェーハ表層中のグローイン欠陥を容易に消滅させることができる。
請求項4に係る発明では、請求項3に記載の熱処理の条件、即ち高温アニール処理の条件を規定しており、請求項5に係る発明では、請求項4の熱処理条件のうちの雰囲気ガスを規定しており、上記条件で熱処理するだけでウェーハ表層中のグローイン欠陥が消滅するので、ウェーハ表層中のグローイン欠陥を容易に消滅させることができる。
請求項6に係る発明では、請求項3ないし5いずれか1項に記載の方法で直径450mmのシリコンウェーハを製造したので、表面から10μm以内の表層中にグローイン欠陥の無いシリコンウェーハとなる。
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、シリコン単結晶を育成する装置は、内部を真空可能に構成されたメインチャンバ12と、このチャンバ12内の中央に設けられたるつぼ13とを備える。メインチャンバ12は円筒状の真空容器である。またるつぼ13は、石英により形成されシリコン融液15が貯留される有底円筒状の内層容器13aと、黒鉛により形成され上記内層容器13aの外側に嵌合された有底円筒状の外層容器13bとからなる。外層容器13bの底部にはシャフト14の上端が接続され、このシャフト14の下端にはシャフト14を介してるつぼ13を回転させかつ昇降させるるつぼ駆動手段16が設けられる。更にるつぼ13の外周面は円筒状のヒータ17によりるつぼ13の外周面から所定の間隔をあけて包囲され、このヒータ17の外周面は円筒状の保温筒18によりヒータ17の外周面から所定の間隔をあけて包囲される。
一方、メインチャンバ12の上端には、内部が連通するようにメインチャンバ12より小径の円筒状のプルチャンバ19が接続される。またメインチャンバ12にはプルチャンバ19を通して引上げ軸21が回転可能かつ昇降可能に垂設され、この引上げ紬21の下端には種結晶22がシードチャック23に着脱可能に装着される。この種結晶22の下端をシリコン融液15中に浸漬した後、種結晶22及びるつぼ13をそれぞれ回転させかつ上昇させることにより、種結晶22の下端からシリコン単結晶11を引上げて成長させるように構成される。
メインチャンバ12内にはアルゴンガスのみからなる不活性ガスを流通される。不活性ガスはプルチャンバ19の側壁に接続されたガス供給パイプ26を通ってプルチャンバ19内に導入され、メインチャンバ12の下壁に接続されたガス排出パイプ27を通ってメインチャンバ12外に排出されるように構成される。またメインチャンバ12内には、シリコン単結晶11外周面へのヒータ17の輻射熱の照射を遮るとともに、上記不活性ガスを整流するための熱遮蔽体28が設けられる。この熱遮蔽体28は、下方に向うに従って直径が次第に小さくなりかつシリコン融液15から引上げられるシリコン単結晶11の外周面をこの外周面から所定の間隔をあけて包囲する円錐台状の筒体28aと、この筒体28aの上縁に連設され外方に略水平方向に張り出すフランジ部28bとを有する。筒部28aとフランジ部28bの各内部には断熱材が設けられ、その周囲はカーボンで被覆される。また熱遮蔽体28は、フランジ部28bを保温筒18上にリング板28cを介して載置することにより、筒体28aの下縁がシリコン融液15表面から所定のギャップGをあけて上方に位置するようにメインチャンバ12内に固定される。
一方、シリコン融液15には横磁場29を印加しながらシリコン単結晶11を引上げるように構成される。この横磁場29は、同一のコイル直径を有する第1及び第2コイル31,32を、るつぼ13の外周面から水平方向に所定の間隔をあけた外側方に、るつぼ13を中心として互いに対向するように配設し、これらのコイル31,32にそれぞれ同一向きの電流を流すことにより発生する。また上記横磁場の磁場強度はシリコン融液15表面とるつぼ13の中心軸との交点で測定され、その磁場強度が0.25〜0.45テスラ、好ましくは0.30〜0.40テスラとなるように、第1及び第2コイル31,32に流れる電流が制御される。上記磁場強度を0.25〜0.45テスラの範囲に限定したのは、0.25テスラ未満では融液流れを抑制する効果が薄れ単結晶の直径の制御性が乱れることがあり、また酸素濃度等の結晶品質も一定範囲に制御することが困難となり、0.45テスラを超えると磁場強度が強いため、漏れ磁場が大きくなって、単結晶引き上げの装置や環境に悪影響を与えたり磁場印加装置の設備コストが高くなるからである。
このように構成された装置を用いてシリコン単結晶11を育成する方法を説明する。上記装置により育成されるシリコン単結晶11の直径を例えば458mmに設定する。また上記シリコン単結晶11とシリコン融液15表面との間のギャップGを40〜100mm、好ましくは60〜90mmに設定する。ここで、ギャップGを40〜100mmの範囲に限定したのは、40mm未満では後述するGc2の値が大きくなって引上げ速度を上げることはできるけれども、後述する比Gc1/Geが所定の範囲よりも小さくなってパーフェクト領域がウェーハ全面に広がった領域が得られず、OSFリングが収縮・消滅する前に、転位クラスタが外周から発生してしまい、100mmを超えるとGc2の値が小さくなって引上げ速度が低下し、比Gc1/Geが所定の範囲よりも大きくなってパーフェクト領域がウェーハ全面に広がった領域が得られず、OSFリングが収縮・消滅する前に、転位クラスタが中心から発生してしまうからである。また育成中のシリコン単結晶11中心部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGc1とし、育成中のシリコン単結晶11外周部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGeとするとき、比Gc1/Geが1.2〜1.3、好ましくは1.21〜1.29となるように上記育成中のシリコン単結晶11の外周部を冷却する。ここで、比Gc1/Geを1.2〜1.3の範囲に限定したのは、1.2未満ではギャップGが小さめである場合と同様に、パーフェクト領域がウェーハ全面に広がった領域が得られず、OSFリングが収縮・消滅する前に、転位クラスタが外周から発生してしまい、1.3を超えるとギャップGが大きめである場合と同様に、パーフェクト領域がウェーハ全面に広がった領域が得られず、OSFリングが収縮・消滅する前に、転位クラスタが中心から発生してしまうからである。
またシリコン単結晶11内での格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在する領域を[I]とし、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域を[V]とし、格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域を[P]とし、シリコン単結晶11の引上げ速度をvとし、シリコン単結晶11中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配をGc2とするとき、シリコン単結晶11がパーフェクト領域[P]からなるか、或いはこのパーフェクト領域[P]の引上げ時よりも引上げ速度が大きい領域[V]からなるように比v/Gc2を0.16〜0.20mm2/(℃・分)に制御することにより、シリコン単結晶11中に転位クラスタを発生させないようにするか、或いは空孔型点欠陥の凝集体のサイズが後熱処理で消滅可能なサイズとする、即ち引上げ初期にシリコン単結晶11中に取り込まれる空孔濃度を小さくし小サイズの空孔型点欠陥の凝集体にすることにより後処理で消滅可能なサイズとする。ここで、パーフェクト領域[P]の引上げ時よりも引上げ速度が大きい領域[V]からなるように比v/Gc2を0.16〜0.20mm2/(℃・分)に制御したのは、シリコン単結晶11中に空孔型点欠陥の凝集体が存在しても、空孔型点欠陥の凝集体であるCOPを後熱処理で消滅させることができるからである。また空孔型点欠陥の凝集体(例えば、COP)は、ウェーハの表層10μm厚さの範囲内において、サイズが0.25μm以下であれば、後熱処理で消滅させることができる。
更にシリコン単結晶11の引上げ速度vを制御することにより、シリコン単結晶11とシリコン融液15との固液界面33上であってシリコン単結晶11の中心部での熱応力を50MPa以下、好ましくは48MPa以下とする。ここで、固液界面33上であってシリコン単結晶11の中心部での熱応力を50MPa以下に限定したのは、50MPaを超えると直径450mmシリコンウェーハ用の無転位のシリコン単結晶11が熱応力により引上げ中に破裂するおそれがあるからである。このため直径450mmシリコンウェーハ用の無転位のシリコン単結晶11の引上げ速度は0.77mm/分以下、好ましくは0.75mm/分以下に設定される。なお、引上げ途中でシリコン単結晶が有転位化した直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の場合には、育成中のシリコン単結晶11外周部であって温度1000℃の位置での熱応力を37MPa以下、好ましくは36MPa以下とする。ここで、育成中のシリコン単結晶11外周部であって温度1000℃の位置での熱応力を37MPa以下に限定したのは、37MPaを超えると有転位化した直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン結晶にクラックが発生するおそれがあるからである。このため有転位化した直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶11の引上げ速度は、外径36インチのるつぼ13を用いた場合0.75mm/分以下、好ましくは0.74mm/分以下に設定され、外径40インチのるつぼ13を用いた場合0.52mm/分以下、好ましくは0.51mm/分以下に設定される。シリコン単結晶が有転位化したか否かは晶癖線が消失したか否かにより判断できる。即ち、引上げ中の無転位である(100)面シリコン単結晶の外周面には、晶癖線が引上げ方向に90度毎に出現するけれども、シリコン単結晶が有転位化すると、上記晶癖線が消えるため、シリコン単結晶の晶癖線が消えた部分は有転位化したと判断できる。
このように構成されたシリコン単結晶11の育成方法では、育成中にシリコン単結晶11が破裂することなく、無転位であって、グローイン欠陥が無いか或いは空孔型点欠陥の凝集体のサイズの小さい直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶11を得ることができる。またシリコン単結晶11の引上げ速度vとシリコン単結晶11中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配Gc2との比であるv/Gc2を調整して、空孔過剰で赤外散乱欠陥(COP)を発生する領域(シリコン単結晶11内での空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域[V])と格子間シリコン過剰で転位クラスタを発生する領域(シリコン単結晶11内での格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在する領域[I])との中間に位置するパーフェクト領域[P]を成長させる条件で、直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶11を引上げた後に、このシリコン単結晶11をスライスすると、COPの無いシリコンウェーハが得られる。この結果、ウェーハ中にグローイン欠陥の無いシリコンウェーハを得ることができる。
一方、上記パーフェクト領域[P]の引上げ時よりも引上げ速度が若干大きい領域[V]であって空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域を成長させる条件で、直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶11を引上げ、このシリコン単結晶11をスライスした後に、このウェーハに熱処理を施すと、ウェーハ表面から10μm以内の表層中のCOP等のグローイン欠陥を消滅させることができる。この結果、ウェーハ表層中の結晶欠陥密度が小さいシリコンウェーハを得ることができる。上記シリコンウェーハに施した熱処理は、非酸化性ガス雰囲気又は還元性ガス雰囲気或いはこれらの混合ガス雰囲気中で、1100〜1250℃、好ましくは1150〜1200℃に、0〜180分間、好ましくは30〜120分間保持する熱処理である。ここで、上記熱処理温度を1100〜1250℃の範囲に限定したのは、1100℃未満ではCOPの消滅が不十分となり、1250℃を超えると熱処理部材である石英チューブが変形したり或いはシリコンウェーハとボートとの接触部位よりスリップ転位が発生してしまうからである。また上記熱処理時間を0〜180分間の範囲に限定したのは、0分間未満、即ち所定温度まで上げない熱処理ではCOPの消滅が不十分となり、180分間を超えると熱処理部材であるシリコンウェーハが変形してしまうからである。更に上記熱処理を施すと、ウェーハ表層中のCOP等のグローイン欠陥が消滅するのは、表面酸素濃度の低下によりグローイン欠陥が収縮・消滅するからである。なお、上記熱処理における雰囲気ガスが非酸化性ガスである場合、Ar、He、Ne、Kr、Xe又はRn、或いはこれらの混合ガスを用いることが好ましいが、実際上は入手が容易であることからArが最も好ましい。上記熱処理における雰囲気ガスが還元性ガスである場合、H2を用いることが好ましい。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
コンピュータを用いた伝熱解析シミュレーションにより、外径36インチのるつぼを用いて直径458mmのシリコン単結晶を引上げた。その結晶温度分布を用いて、引上げ速度の変化に対する熱応力の変化を計算により求めた。ここで、熱応力はシリコン単結晶とシリコン融液との固液界面上であってシリコン単結晶の中心部での熱応力である。
<実施例2>
コンピュータを用いた伝熱解析シミュレーションにより、外径36インチのるつぼを用いて直径458mmのシリコン単結晶を引上げた。その結晶温度分布を用いて、引上げ速度の変化に対する熱応力の変化を計算により求めた。ここで、熱応力はシリコン単結晶外周部であって温度1000℃の位置での熱応力である。
<試験1>
実施例1及び実施例2の引上げ速度の変化に対する熱応力の変化を図2にプロットした。なお、シリコン単結晶とシリコン融液との固液界面上であってシリコン単結晶の中心部での熱応力が50MPaを超えると、シリコン単結晶が育成中に破裂することが分かっており、シリコン単結晶外周部であって温度1000℃の位置での熱応力が37MPaを超えると、シリコン単結晶が有転位化した場合、有転位化部位でクラックが発生することが分かっている。図2から明らかなように、シリコン単結晶とシリコン融液との固液界面上であってシリコン単結晶の中心部での熱応力を50MPa以下とするには、引上げ速度を0.77mm/分以下にしなければならないことが分かった。またシリコン単結晶外周部であって温度1000℃の位置での熱応力を37MPa以下とするには、引上げ速度を0.75mm/分以下にしなければならないことが分かった。
<実施例3>
コンピュータを用いた伝熱解析シミュレーションにより、外径40インチのるつぼを用いて直径458mmのシリコン単結晶を引上げた。その結晶温度分布を用いて、引上げ速度の変化に対する熱応力の変化を計算により求めた。ここで、熱応力はシリコン単結晶とシリコン融液との固液界面上であってシリコン単結晶の中心部での熱応力である。
<実施例4>
コンピュータを用いた伝熱解析シミュレーションにより、外径40インチのるつぼを用いて直径458mmのシリコン単結晶を引上げた。その結晶温度分布を用いて、引上げ速度の変化に対する熱応力の変化を計算により求めた。ここで、熱応力はシリコン単結晶外周部であって温度1000℃の位置での熱応力である。
<試験2>
実施例3及び実施例4の引上げ速度の変化に対する熱応力の変化を図3にプロットした。なお、シリコン単結晶とシリコン融液との固液界面上であってシリコン単結晶の中心部での熱応力が50MPaを超えると、シリコン単結晶が育成中に破裂することが分かっており、シリコン単結晶外周部であって温度1000℃の位置での熱応力が37MPaを超えると、シリコン単結晶が有転位化した場合、有転位化部位にクラックが発生することが分かっている。図3から明らかなように、シリコン単結晶とシリコン融液との固液界面上であってシリコン単結晶の中心部での熱応力を50MPa以下とするには、引上げ速度を0.78mm/分以下にしなければならないことが分かった。またシリコン単結晶外周部であって温度1000℃の位置での熱応力を37MPa以下とするには、引上げ速度を0.52mm/分以下にしなければならないことが分かった。
<実施例5>
・(直径200mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の育成)
先ず熱遮蔽体とシリコン融液表面との間のギャップGを45mmに設定した。次にシリコン単結晶中心部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGc1とし、育成中のシリコン単結晶外周部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGeとし、シリコン単結晶中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配をGc2とするとき、Gc2が3.91K/mmとなり、比Gc1/Geが1.051となるようにシリコン単結晶の外周部を冷却しながら、引上げ速度0.75mm/分で直径208mmのシリコン単結晶の引上げた。これによりグローイン欠陥の無いシリコン単結晶を育成できた。
・(直径300mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の育成)
先ず熱遮蔽体とシリコン融液表面との間のギャップGを70mmに設定した。次にシリコン単結晶中心部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGc1とし、育成中のシリコン単結晶外周部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGeとし、シリコン単結晶中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配をGc2とするとき、Gc2が2.40K/mmとなり、比Gc1/Geが1.146となるようにシリコン単結晶の外周部を冷却しながら、引上げ速度0.45mm/分で直径308mmのシリコン単結晶の引上げた。これによりグローイン欠陥の無いシリコン単結晶を育成できた。
・(直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の育成)
直径40インチの石英製の内層容器を有するるつぼを用い、熱遮蔽体とシリコン融液表面との間のギャップGを90mmに設定した。次にシリコン単結晶中心部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGc1とし、育成中のシリコン単結晶外周部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGeとし、シリコン単結晶中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配をGc2とするとき、Gc2が1.80K/mmとなり、比Gc1/Geが1.295となるようにシリコン単結晶の外周部を冷却しながら、引上げ速度0.30〜0.32mm/分(v/Gc2=0.167〜0.177mm2/(℃・分))で、直径458mmのシリコン単結晶の引上げた。これによりグローイン欠陥の無いシリコン単結晶を育成できた。一方、引上げ速度0.32〜0.36mm/分(v/Gc2=0.177〜0.200mm2/(℃・分))で、直径458mmのシリコン単結晶を引上げた。これによりCOPが存在するシリコン単結晶となったけれども、上記シリコン単結晶をスライスして得られたシリコンウェーハ中のCOPのサイズは小さく、後熱処理により消滅させることができた。この後熱処理は次のようして行った。先ず直径450mmのシリコンウェーハを載せたボートを400℃の縦型拡散炉内に導入した後に、炉内の酸素濃度が20ppma以下になるように炉内をArガスで10分間以上パージした後、800℃までを10℃/分の昇温速度で、900℃までを5℃/分の昇温速度で、1000℃までを2℃/分の昇温速度で、1150℃までを1℃/分の昇温速度で、1200℃までを0.5℃/分の昇温速度で炉内を昇温した後に、炉内を1200℃に2時間保持した。次に1150℃までを0.5℃/分の降温速度で、1000℃までを1℃/分の降温速度で、900℃までを2℃/分の降温速度で、800℃までを5℃/分の降温速度で、400℃までを10℃/分の降温速度で炉内を降温した。更にこの冷却された炉内からシリコンウェーハが載置されたボートを取出した。
また直径36インチの石英製の内層容器を有するるつぼを用い、熱遮蔽体とシリコン融液表面との間のギャップGを90mmに設定した。次にシリコン単結晶中心部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGc1とし、育成中のシリコン単結晶外周部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGeとし、シリコン単結晶中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配をGc2とするとき、Gc2が1.66K/mmとなり、比Gc1/Geが1.216となるようにシリコン単結晶の外周部を冷却しながら、引上げ速度0.28〜0.30mm/分(v/Gc2=0.169〜0.181mm2/(℃・分))で、直径458mmのシリコン単結晶の引上げた。これによりグローイン欠陥の無いシリコン単結晶を育成できた。一方、引上げ速度0.30〜0.33mm/分(v/Gc2=0.181〜0.199mm2/(℃・分))で、直径458mmのシリコン単結晶を引上げた。これによりCOPが存在するシリコン単結晶となったけれども、上記シリコン単結晶をスライスして得られたシリコンウェーハ中のCOPのサイズは小さく、後熱処理により消滅させることができた。
上記直径200mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶と直径300mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶と直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の直径に対する比Gc1/Geを図4にそれぞれプロットした。そしてこれら3点を直線で結んだ。この結果、直径450mmシリコンウェーハ用のグローイン欠陥の無いシリコン単結晶を育成するためには、比Gc1/Geを1.2〜1.3の範囲に設定することが良いと分かった。
本発明実施形態のシリコン単結晶を育成する装置の縦断面構成図である。 直径36インチのるつぼを用いて直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶を引上げる場合の引上げ速度及び熱応力の関係を示す図である。 直径40インチのるつぼを用いて直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶を引上げる場合の引上げ速度及び熱応力の関係を示す図である。 直径200mm及び直径300mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の比Gc1/Geと直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶の比Gc1/Geをプロットした図である。 通常の高速引上げで、空孔が過剰となった場合のシリコン単結晶中に発生する結晶欠陥の生成挙動を示す模式図である。 シリコン単結晶での引上げ速度に対する結晶軸を含む縦割り面でのグローイン欠陥の分布を示す模式図である。 るつぼの外径に対する高さの比をパラメータとする、固液界面からの距離とシリコン単結晶の中心部での温度との関係を示す図である。 シリコン融液の貯留量と歩留まりとの関係を示す図である。
符号の説明
11 シリコン単結晶
12 メインチャンバ(チャンバ)
13 るつぼ
15 シリコン融液
22 種結晶
28 熱遮蔽体
33 固液界面
G ギャップ

Claims (6)

  1. チャンバに収容されたるつぼにシリコン融液を貯留し、このシリコン融液に種結晶を浸漬して回転させながら引上げることにより、前記種結晶から無転位のシリコン単結晶を引上げて育成するシリコン単結晶の育成方法において、
    前記シリコン単結晶が直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶であり、
    前記育成中のシリコン単結晶中心部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGc1とし、前記育成中のシリコン単結晶外周部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGeとするとき、比Gc1/Geが1.2〜1.3となるように前記育成中のシリコン単結晶の外周部を冷却し、
    前記育成中のシリコン単結晶の外周面を囲繞する熱遮蔽体の下端と前記シリコン融液の表面との間のギャップを40〜100mmに設定し、
    前記シリコン単結晶内での格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在する領域を[I]とし、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域を[V]とし、前記格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び前記空孔型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域を[P]とし、前記シリコン単結晶の引上げ速度をvとし、前記シリコン単結晶中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配をGc2とするとき、前記シリコン単結晶が前記パーフェクト領域[P]からなるか或いはこのパーフェクト領域[P]の引上げ時よりも引上げ速度が大きい領域[V]からなるように比v/Gc2を0.16〜0.20mm2/(℃・分)に制御することにより、前記シリコン単結晶中に転位クラスタを発生させないようにするか、或いは前記空孔型点欠陥の凝集体のサイズが後熱処理で消滅可能なサイズとし、
    前記シリコン単結晶の引上げ速度を制御することにより、前記シリコン単結晶と前記シリコン融液との固液界面上であって前記シリコン単結晶の中心部での熱応力を50MPa以下とする
    ことを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。
  2. チャンバに収容されたるつぼにシリコン融液を貯留し、このシリコン融液に種結晶を浸漬して回転させながら引上げることにより、前記種結晶からシリコン単結晶を引上げて育成するシリコン単結晶の育成方法において、
    前記シリコン単結晶が直径450mmシリコンウェーハ用のシリコン単結晶であり、
    前記育成中のシリコン単結晶中心部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGc1とし、前記育成中のシリコン単結晶外周部における1370〜1310℃の軸方向温度勾配をGeとするとき、比Gc1/Geが1.2〜1.3となるように前記育成中のシリコン単結晶の外周部を冷却し、
    前記育成中のシリコン単結晶の外周面を囲繞する熱遮蔽体の下端と前記シリコン融液の表面との間のギャップを40〜100mmに設定し、
    前記シリコン単結晶内での格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在する領域を[I]とし、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域を[V]とし、前記格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び前記空孔型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域を[P]とし、前記シリコン単結晶の引上げ速度をvとし、前記シリコン単結晶中心部における融点から1350℃までの軸方向温度勾配をGc2とするとき、前記シリコン単結晶が前記パーフェクト領域[P]からなるか或いはこのパーフェクト領域[P]の引上げ時よりも引上げ速度が大きい領域[V]からなるように比v/Gc2を0.16〜0.20mm2/(℃・分)に制御することにより、前記シリコン単結晶中に転位クラスタを発生させないようにするか、或いは前記空孔型点欠陥の凝集体のサイズが後熱処理で消滅可能なサイズとし、
    前記シリコン単結晶の引上げ速度を制御することにより、前記育成中のシリコン単結晶外周部であって温度1000℃の位置での熱応力を37MPa以下とする
    ことを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法で育成されたシリコン単結晶をスライスしてシリコンウェーハを作製し、このウェーハに熱処理を施して前記ウェーハ表面から10μm以内の表層中のグローイン欠陥を消滅させたシリコンウェーハの製造方法。
  4. シリコンウェーハに施した熱処理が、非酸化性ガス雰囲気又は還元性ガス雰囲気或いはこれらの混合ガス雰囲気中で1100〜1250℃に0〜180分間保持する熱処理である請求項3記載のシリコンウェーハの製造方法。
  5. 非酸化性ガスがAr、He、Ne、Kr、Xe又はRn、或いはこれらの混合ガスであり、還元性ガスがH2である請求項4記載のシリコンウェーハの製造方法。
  6. 請求項3ないし5いずれか1項に記載の方法で製造され、表面から10μm以内の表層中のグローイン欠陥が消滅した直径450mmのシリコンウェーハ。
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