JP2010042337A - フッ素樹脂多孔膜、その製造方法及びフィルター - Google Patents

フッ素樹脂多孔膜、その製造方法及びフィルター Download PDF

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Abstract

【課題】微細で均一な孔を有し、かつ高い気孔率であるとともに、耐薬品性、化学的安定性、耐熱性にも優れ、さらに従来の多孔質膜と比較して、より高速の濾過、より圧力損失の小さい目詰まりの生じにくい濾過を可能にする、フッ素樹脂多孔膜及びそれを製造する方法を提供する。
【解決手段】磁場配向性粒子を分散した熱硬化性フッ素樹脂を製膜する製膜工程、製膜された熱硬化性フッ素樹脂に磁場を印加し、前記磁場配向性粒子を膜の厚み方向に配向させた状態で前記熱硬化性フッ素樹脂を硬化する硬化工程、及び前記熱硬化性フッ素樹脂から、溶剤により磁場配向性粒子を溶出する溶出工程、を有する方法により製造されることを特徴とするフッ素樹脂多孔膜、及びその製造方法。
【選択図】 図4

Description

本発明は、分離膜モジュールを構成する多孔質分離膜(フィルター)等として用いられるフッ素樹脂多孔膜、その製造方法、及び前記フッ素樹脂多孔膜からなるフィルターに関する。
微細な貫通孔を有する樹脂性の多孔質膜は、液体中の不純物粒子を濾過するためのフィルター等として、医薬分野や、半導体製造や食品工業等、様々な分野で用いられている(特許文献1)。このような多孔質膜としては、微細で均一な孔を有しかつ高い気孔率である薄膜が望まれる。さらに、種々の用途の中には、処理気液が腐食性を有する場合もあり、又高温環境下で使用される場合もあるので、耐薬品性、化学的安定性、耐熱性等が要求される場合も多い。
そこで、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等に比較して耐薬品性に優れたフッ素樹脂の使用が考えられ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ素化ビニリデン(PVDF)が使用されており、又、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキル・ビニルエーテル共重合体(PFA)の使用が提案されている。
しかし、これらの熱可塑性のフッ素樹脂は溶融粘度が高いので、溶融押出等によって薄膜を製造することは不可能である。そこで、PTFE、PVDF、PFA等の固体粒子を、300℃あるいはそれ以上の温度で熱融着させて製膜し、このようにして得られたフッ素樹脂膜を延伸して孔を形成することにより、フィルター等として用いられる多孔質膜を得る方法が採用されている。この方法によれば、均一な孔を得やすく、又孔径の制御が容易であり好ましい。
特公平7−22683号公報
しかし近年、多孔質膜のフィルターに対する要求はより高度となり、前記の要請に加えて、より高速の濾過、より圧力損失の小さい目詰まりの生じにくい濾過等が求められるようになった。そして、前記のような従来の多孔質膜では、これらの要求に十分に対応することが困難となってきている。
本発明は、近年の多孔質膜に対する要求を満たすフッ素樹脂多孔膜及びそれを製造する方法を提供することを課題とする。即ち、微細で均一な孔を有し、かつ高い気孔率であるとともに、耐薬品性、化学的安定性、耐熱性にも優れ、さらに従来の多孔質膜と比較して、より高速の濾過、より圧力損失の小さい濾過、より目詰まりの起こりにくい濾過を可能にする、フッ素樹脂多孔膜及びそれを製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、液状の熱硬化性フッ素樹脂を用い、この熱硬化性フッ素樹脂に、所定の溶剤に可溶であるとともに磁場により配向する粒子を分散させ、磁場を印加しながら熱硬化性フッ素樹脂を硬化し、その後、硬化した樹脂中の前記粒子を前記溶剤により溶出する方法により、前記の課題を達成するフッ素樹脂多孔膜が得られることを見出し、本発明を完成した。即ち、前記の課題は、以下に示す構成からなる発明により達成される。
請求項1に記載の発明は、
磁場配向性粒子を分散した熱硬化性フッ素樹脂を製膜する製膜工程、
製膜された前記熱硬化性フッ素樹脂に磁場を印加し、前記磁場配向性粒子を膜の厚み方向に配向させ、その状態で前記熱硬化性フッ素樹脂を硬化する硬化工程、及び
硬化した前記熱硬化性フッ素樹脂から、溶剤により磁場配向性粒子を溶出する溶出工程、を有する方法により製造されることを特徴とするフッ素樹脂多孔膜である。
又、請求項7は、
磁場配向性粒子を分散した熱硬化性フッ素樹脂を製膜する製膜工程、
製膜された前記熱硬化性フッ素樹脂に磁場を印加し、前記磁場配向性粒子を膜の厚み方向に配向させ、その状態で前記熱硬化性フッ素樹脂を硬化する硬化工程、及び
硬化した前記熱硬化性フッ素樹脂から、溶剤により磁場配向性粒子を溶出する溶出工程、を有することを特徴とするフッ素樹脂多孔膜の製造方法を提供するものである。
本発明で用いられる熱硬化性フッ素樹脂は、フッ素を含有すること、及び硬化前は液状であり加熱により硬化すること、を特徴とする。硬化前は液状であるので成形や製膜が容易であり、硬化後は熱可塑性フッ素樹脂と同様の優れた耐薬品性、化学的安定性を有する。熱硬化性フッ素樹脂としては、多官能性のフッ素を含有する多官能性のモノマー及び当該モノマーと縮合反応する多官能性のモノマーを含有する組成物からなるものや、フッ素を含有する重合性のモノマー等、種々のものを挙げることができる。本発明においては、いずれの種類のものも使用することができ、耐薬品性、柔軟性、機械的強度、製造設備等の観点から適切なものが選定される。より具体的には、以下に示す(1)〜(4)を例示することができる。
(1)式:HOOCCF[(OCFCF)p−(OCF)q]−OCFCOOH[式中、p=2〜20でありq=2〜20である。]で表されるパーフルオロポリオキシアルカンジカルボン酸又はその誘導体、及び、前記パーフルオロポリオキシアルカンジカルボン酸又はその誘導体と縮合重合をする多官能性化合物、からなる組成物。前記式で表わされるパーフルオロポリオキシアルカンジカルボン酸の中でも、式中のp、qがそれぞれ2〜10の範囲のものが好ましく、4〜8の範囲がより好ましく、特に平均分子量1500程度となるp、qであるものが好ましい。
前記パーフルオロポリオキシアルカンジカルボン酸又はその誘導体と縮合重合をする多官能性化合物としては、エポキシ化合物が例示される。エポキシ化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFやノボラック樹脂等の多官能のフェノール化合物等のジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、テトラグリシジルエーテルを挙げることができる。中でも、多孔質膜に柔軟性を与える観点からは、下記のエポキシ1、エポキシ2のように柔軟成分を含むエポキシが好ましい。
エポキシ1: 下記の構造式で表されるエポキシ樹脂
Figure 2010042337
エポキシ2: ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル
この熱硬化性フッ素樹脂の組成物には、反応促進のために、ジメチルアミノメチルフェノール、N−アミノエチルピペラジン等の三級アミン類を0.1〜2%程度添加することが好ましい。
(2)式:HOCF−[(OCFCF)p−(OCF)q]−OCFOH[式中、p=2〜20でありq=2〜20である。]で表されるパーフルオロポリオキシアルカンジハイドロキシ又はその誘導体、及び、前記パーフルオロポリオキシアルカンジハイドロキシ又はその誘導体と縮合重合をする多官能性化合物、からなる組成物。式中のp、qがそれぞれ2〜10の範囲のものが好ましく、4〜8の範囲がより好ましく、特に平均分子量1500程度となるp、qであるものが好ましい。
前記パーフルオロポリオキシアルカンジハイドロキシ又はその誘導体と縮合重合をする多官能性化合物としては、メチレンビス(4−1−フェニレン)ジイソシアネート(MDI)等のイソシアネート化合物を挙げることができる。
(3)式:XCF−[(OCFCF)p−(OCF)q]−OCFX[式中、Xはシラン官能基であり、p=2〜20であり、q=2〜20である。]で表される末端にシラン官能基を有するパーフルオロポリオキシアルカン。
式中のp、qがそれぞれ2〜10の範囲のものが好ましく、4〜8の範囲がより好ましく、特に平均分子量1500程度となるp、qであるものが好ましい。シラン官能基Xとしては、−SiH、−SiCl、−SiOR(Rは、CH,C等のアルキル基)が例示される。
(4)下記式(I):
Figure 2010042337

[式中、n=2〜50であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はアルキル基又はアルケニル基であり、但し、R1、R2及びR3の中の少なくとも1つの基、並びに、R4、R5及びR6の中の少なくとも1つの基は、アルケニル基である。]で表されるパーフルオロアルキルエーテルを有するシリコーン化合物。
本発明で用いられる磁場配向性粒子とは、磁場により配向する性質を有する粒子であり、かつ所定の溶剤に可溶な材質からなることを特徴とする。この磁場配向性粒子としては、後に詳述するように、磁場で配向する性質を有する溶剤可溶型の粒子からなるものや、磁性を有しかつ酸等の溶剤で溶解する金属からなるものが挙げられる。
この磁場配向性粒子は、溶出工程において、硬化した熱硬化性フッ素樹脂中から溶剤により溶出され、この溶出により生じた空孔が多孔質膜の貫通孔となる。磁場配向性粒子は、磁場により膜厚方向に連なってあたかも1本の棒となるように垂直配向する。従って、磁場配向性粒子の各粒子が小さい場合であっても、このように垂直配向させ、熱硬化性フッ素樹脂の硬化後に溶出させることにより、ストレートな貫通孔を形成することができる。
一方、磁場配向性粒子が、膜の厚みと比較して小さすぎかつ凝集しない場合は、各磁場配向性粒子が硬化した熱硬化性フッ素樹脂内に孤立した状態で分散され、その結果、溶出工程で溶出されず、又貫通孔が形成されない可能性がある。
又、熱硬化性フッ素樹脂中の磁場配向性粒子の比率が大きい程、貫通孔の密度や気孔率が高くなる。磁場配向性粒子の比率が小さすぎる場合は、磁場配向性粒子が硬化した熱硬化性フッ素樹脂の表面に露出せず、又各磁場配向性粒子が硬化した熱硬化性フッ素樹脂内に孤立した状態で分散され、その結果、溶出工程で溶出されず、又貫通孔が形成されない可能性がある。従って、本発明の実施に際しては、以上の観点から、磁場配向性粒子の大きさ(粒径)や、熱硬化性フッ素樹脂中の磁場配向性粒子の比率等が選定される。
さらに、より高速の濾過、より圧力損失の小さい濾過を可能にするためには、多孔質膜の貫通孔はよりストレートなものが好ましい。磁場配向性粒子の形状は、貫通孔のストレートさに影響を与えるので、この観点から磁場配向性粒子の形状、例えばアスペクト比が選定される。通常アスペクト比が大きい程、磁場により配向しやすく、ストレートな貫通孔が得られやすいが、アスペクト比が大きすぎ、粒子が繊維状となると相互に絡み付き、1本の棒となるように垂直配向しない問題が生じる傾向がある。この観点も考慮して、最適のアスペクト比が選定される。
本発明のフッ素樹脂多孔膜の製造の際には、先ず、前記熱硬化性フッ素樹脂に前記磁場配向性粒子が分散され、分散液が作成される。この分散は、前記熱硬化性フッ素樹脂中に、前記磁場配向性粒子を添加して攪拌することにより行うことができる。均一な分散を達成するために、又、磁場配向性粒子同士の凝集や絡み合い等を防ぐために、分散剤の配合や、磁場配向性粒子の表面処理等を予め行ってもよい。
熱硬化性フッ素樹脂に磁場配向性粒子が均一に分散されて分散液を作成した後、当該分散液は、膜状に成形(製膜)される。製膜方法は特に限定されないが、型を用いる方法、平板上に前記分散液を薄く広げる方法等を挙げることができる。膜は、平面状の膜のみに限定されない。例えば、円筒状の膜も含まれる。
製膜後、液状を保った状態の分散液に、膜の厚み方向の磁場を印加する。印加された磁場により、分散液の膜中の磁場配向性粒子が、磁場の方向(膜の厚み方向)に配向する。前記のように、磁場配向性粒子の各粒子が小さい場合であっても、膜厚方向に連なってあたかも1本の棒となるように垂直配向させることができる。磁場配向性粒子を膜の厚み方向に配向させることにより、この後に行われる硬化工程及び溶出工程を通して形成される貫通孔が、よりストレートなものとなり、より高速の濾過やより圧力損失の小さい濾過を可能にする多孔質膜が得られる。
上記のようにして、磁場配向性粒子を膜の厚み方向に配向させた後、熱硬化性フッ素樹脂を加熱して硬化させる(硬化工程)。磁場配向性粒子の配向を確実にするために、磁場の印加は硬化工程の終了まで継続することが好ましい。
熱硬化性フッ素樹脂の硬化により、膜の厚み方向に配向した磁場配向性粒子を含んだ硬化物が得られる。この硬化物を、磁場配向性粒子を溶解する溶剤と接触させて、磁場配向性粒子を硬化物から溶出させる(溶出工程)。溶剤としては、磁場配向性粒子を溶解するとともに、熱硬化性フッ素樹脂を溶解せずかつ劣化させないものが用いられる。なお、ここで「溶解」とは、化学反応による分解等も含めた意味である。熱硬化性フッ素樹脂等のフッ素樹脂の硬化物は、耐溶剤性に優れているので、熱硬化性フッ素樹脂を溶解せずかつ劣化させない溶剤の選定は容易である。
溶出工程では、磁場配向性粒子の溶解を促進するため、熱硬化性フッ素樹脂の溶解や劣化が生じない範囲で、加熱、振動の付加、超音波の付加等を行ってもよい。磁場配向性粒子が溶出された結果、熱硬化性フッ素樹脂の硬化物からなる膜内には、空孔が形成され、この空孔が貫通孔となる。
上記のようにして製造された本発明のフッ素樹脂多孔膜は、熱硬化性フッ素樹脂の硬化物からなるので、優れた耐薬品性、化学的安定性を有する。又、熱硬化性フッ素樹脂として適当な種類を選定することにより優れた耐熱性も得られる。さらに、磁場配向性粒子の大きさ、形状、その配合(分散)割合等を、適当な範囲内に選定することにより、微細で均一な孔を有し、かつ高い気孔率の多孔膜を得ることもできる。
さらに又、磁場配向性粒子を膜の厚み方向に配向させた状態で熱硬化性フッ素樹脂の硬化が行われるので、多孔質膜中の貫通孔はストレートであり、この多孔質膜により、より高速の濾過や、より圧力損失の小さい濾過が可能となる。そして、これらの優れた特徴を有する本発明のフッ素樹脂多孔膜は、請求項7に記載の製造方法により容易に製造することができる。
磁場配向性粒子が、磁場で配向する性質を有する溶剤可溶型の粒子からなる場合、溶剤可溶型の粒子を、製膜された熱硬化性フッ素樹脂中で十分に配向させるためには、前記分散液の膜に強磁場を印加する必要がある。例えば、溶剤可溶型の粒子がポリイミド繊維である場合は、1.0T以上の磁束密度を有する磁場が望まれる(請求項2)。5.0T以上の磁束密度を有する磁場がより好ましく、さらに10.0T以上の磁束密度を有する磁場が好ましい。
このような強磁場を印加するためには、超伝導磁石が好ましく用いられる。超伝導磁石を用いれば、30T程度の強力な磁場の印加も可能となるが、磁場の強度(磁束密度)を増大させることにより、磁性率の低い材料からなる粒子等、配向しにくい粒子でも使用可能となるので、材料や製造条件の選択の幅が広がり、コストダウン等が容易になる。
請求項3に記載の発明は、磁場配向性粒子が、溶剤可溶型の粒子であり、溶出工程が、前記溶剤可溶型の粒子を溶解する溶剤に、前記熱硬化性フッ素樹脂を浸漬して行われることを特徴とする請求項2に記載のフッ素樹脂多孔膜である。
この溶剤可溶型の粒子には、磁場により配向する性質が求められるので、極性を有する樹脂であり、特に磁化率や反磁化率に大きな異方性を有する樹脂が好ましい。又、熱硬化性フッ素樹脂中に分散された状態で、熱硬化性フッ素樹脂の加熱、硬化が行われるので、この硬化温度では溶融や分解しない樹脂が好ましい。又、ストレートな貫通孔を得るためには、アスペクト比が大きい形状が好ましく、特に繊維状が好ましい。
前記の性質を有する樹脂として具体的には、ポリイミド、ポリアミド等が挙げられ、特に、ポリイミドが好ましい。従って、溶剤可溶型の粒子としては、ポリイミド繊維が特に好ましい(請求項4)。
溶出工程は、溶剤可溶型の粒子を溶解する溶剤に、硬化した前記熱硬化性フッ素樹脂を浸漬して行うことができる。
なお、溶剤可溶型の粒子として、大きな異方性を有し極性が高い樹脂を用いた場合は、磁場を印加する代わりに、膜厚方向の電場を印加する方法でも、前記と同様に、溶剤可溶型の粒子を、膜厚方向に垂直配向させることができる。そして、本発明と同様に、製膜工程、及び溶出工程を行うことにより、本発明と同様な効果、即ち、ストレートな貫通孔が得られ、従来のフッ素樹脂多孔質膜と比較して、より高速の濾過、より圧力損失の小さい濾過を可能にするフッ素樹脂多孔膜を得ることができる。
請求項5に記載の発明は、磁場配向性粒子が、磁性金属の粒子であり、溶出工程が、前記磁性金属を溶解する溶剤に、硬化した前記熱硬化性フッ素樹脂を浸漬して行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフッ素樹脂多孔膜である。
磁性金属としては、磁性を有し、かつ熱硬化性フッ素樹脂の硬化物を溶解せず又劣化させない溶媒に溶解するものであれば、特に限定されず、反磁性体、常磁性体のいずれも用いることができ、合金であってもよい。しかし、強磁性体を用いれば、印加する磁場が弱い場合でも配向させることができ、従って設備費等の低減を図れるので好ましい。この強磁性体としては、鉄、ニッケル、コバルトを挙げることができ、中でも鉄又はニッケルが好ましい(請求項6)。
溶出工程は、磁場配向性粒子である磁性金属を溶解する溶剤に、硬化した前記熱硬化性フッ素樹脂を浸漬して行うことができる。使用できる溶剤として具体的には、磁性金属が鉄の場合は塩酸等を挙げることができる。
請求項8に記載の発明は、前記の本発明のフッ素樹脂多孔膜からなることを特徴とするフィルターを提供するものである。前記の本発明のフッ素樹脂多孔膜は、耐薬品性、化学的安定性、耐熱性に優れるとともに、従来のフッ素樹脂多孔質膜と比較して、より高速の濾過、より圧力損失の小さい濾過を可能にするので、半導体製造や食品工業等の様々な分野で使用されるフィルターとして好適に用いられる。
本発明のフッ素樹脂多孔膜は、耐薬品性、化学的安定性、耐熱性に優れる等の従来のフッ素樹脂多孔質膜が有する優れた性質を有するとともに、貫通孔がストレートであるため、従来のフッ素樹脂多孔質膜と比較して、より高速の濾過、より圧力損失の小さい濾過を可能にする。従って、フィルターとして好適に用いられる。又、このような優れた性質を有するフッ素樹脂多孔膜は、本発明の製造方法により容易に製造することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態について、図を参照しながら説明するが、本発明の範囲はこの形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
[フッ素樹脂多孔膜の製造]
本発明のフッ素樹脂多孔膜の各製造工程を、図1に基づき説明する。
図1は、熱硬化性フッ素樹脂に磁場配向性粒子を分散し分散液を作成する様子(分散液の作成)を示す概念断面図である。図中70は撹拌槽であり、撹拌槽70中で、液状の熱硬化性フッ素樹脂13と磁場配向性粒子15が、撹拌用回転腕71により攪拌されて均一分散がされ、分散液11が作成されている。
図2は、分散液11が製膜され、磁場が印加され、硬化される様子、すなわち製膜工程及び硬化工程を示す概念断面図である。図1で示される工程で作成された分散液11は、製膜用型80に流し込まれて膜状に広がり、液状の膜12が形成される(製膜)。膜の厚みは、多孔質体の用途に応じて選定され、特に限定されない。
形成された液状の膜12には磁場が印加される。図2中では、磁場の方向はNからSへ向かう矢印で示されている。磁場の印加により、磁場配向性粒子15は、磁場の方向、即ち膜の厚み方向に配向する。図中の16は、磁場配向性粒子15が配向し、集合して形成された集合体である。その後、液状の膜12は、加熱され、熱硬化性フッ素樹脂13が硬化し、配向した磁場配向性粒子15を含んだ硬化膜14が形成される。好ましくは、この加熱の際にも磁場が印加され硬化の完了まで継続される。液状の膜12の加熱は、製膜用型80を加熱することにより行うことができる。
図3は、硬化膜14を溶剤に浸漬して、磁場配向性粒子15を溶出する様子、すなわち溶出工程を示す概念断面図である。図中、90は溶出槽であり、91は溶剤である。硬化膜14は、溶出槽90中の溶剤91に浸漬され、この浸漬により、磁場配向性粒子15は溶剤91に溶解される。図3は、磁場配向性粒子15の一部が溶解された結果、集合体16が存在していた位置の一部に空孔17が生じている様子を示している。なお、この溶出工程では、磁場配向性粒子の溶解を促進するため、熱硬化性フッ素樹脂の溶解や劣化が生じない範囲で、加熱、振動の付加、超音波の付加等を行ってもよい。
図4は、本発明のフッ素樹脂多孔膜を示す概念断面図である。図4において、10は本発明のフッ素樹脂多孔膜であり、前記溶出工程において磁場配向性粒子15を全て溶出し、その後全体を純水で洗浄して得られたものである。フッ素樹脂多孔膜10は、熱硬化性フッ素樹脂13の硬化物の膜であるが、磁場配向性粒子15が溶解された結果生じた空孔17を有する。この空孔17は、膜の厚み方向に形成されたストレートな貫通孔である。
本発明のフッ素樹脂多孔膜の製造工程を示す概念断面図である。 本発明のフッ素樹脂多孔膜の製造工程を示す概念断面図である。 本発明のフッ素樹脂多孔膜の製造工程を示す概念断面図である。 本発明のフッ素樹脂多孔膜を示す概念断面図である。
符号の説明
10 フッ素樹脂多孔膜
11 分散液
12 液状の膜
13 熱硬化性フッ素樹脂
14 硬化膜
15 磁場配向性粒子
16 集合体
17 空孔
70 撹拌槽
71 撹拌用回転腕
80 製膜用型
90 溶出槽
91 溶剤

Claims (8)

  1. 磁場配向性粒子を分散した熱硬化性フッ素樹脂を製膜する製膜工程、
    製膜された前記熱硬化性フッ素樹脂に磁場を印加し、前記磁場配向性粒子を膜の厚み方向に配向させ、その状態で前記熱硬化性フッ素樹脂を硬化する硬化工程、及び
    硬化した前記熱硬化性フッ素樹脂から、溶剤により磁場配向性粒子を溶出する溶出工程、を有する方法により製造されることを特徴とするフッ素樹脂多孔膜。
  2. 磁場が、1.0T以上の磁束密度を有する磁場であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂多孔膜。
  3. 磁場配向性粒子が、溶剤可溶型の粒子であり、溶出工程が、前記溶剤可溶型の粒子を溶解する溶剤に、前記熱硬化性フッ素樹脂を浸漬して行われることを特徴とする請求項2に記載のフッ素樹脂多孔膜。
  4. 前記溶剤可溶型の粒子が、ポリイミド繊維であることを特徴とする請求項3に記載のフッ素樹脂多孔膜。
  5. 磁場配向性粒子が、磁性金属の粒子であり、溶出工程が、前記磁性金属を溶解する溶剤に、前記熱硬化性フッ素樹脂を浸漬して行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のフッ素樹脂多孔膜。
  6. 磁性金属が、鉄又はニッケルであることを特徴とする請求項5に記載のフッ素樹脂多孔膜。
  7. 磁場配向性粒子を分散した熱硬化性フッ素樹脂を製膜する製膜工程、
    製膜された前記熱硬化性フッ素樹脂に磁場を印加し、前記磁場配向性粒子を膜の厚み方向に配向させ、その状態で前記熱硬化性フッ素樹脂を硬化する硬化工程、及び
    硬化した前記熱硬化性フッ素樹脂から、溶剤により磁場配向性粒子を溶出する溶出工程、を有することを特徴とするフッ素樹脂多孔膜の製造方法。
  8. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のフッ素樹脂多孔膜からなることを特徴とするフィルター。
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