JP2010040291A - アルカリ一次電池及びアルカリ一次電池の製造方法 - Google Patents

アルカリ一次電池及びアルカリ一次電池の製造方法 Download PDF

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【課題】電気容量を向上することができるアルカリ一次電池及びアルカリ一次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】正極合剤5及び負極合剤7及び電解液をケース8内に収容した扁平形アルカリ一次電池1において、正極合剤5は、主正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含むとともに、副正極活物質として銀・ニッケル複合酸化物、及び電解液を保持する保液剤として架橋型ポリアクリル酸、及び結着剤としてフッ素樹脂粉末を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルカリ一次電池及びアルカリ一次電池の製造方法に関する。
電子腕時計、携帯用電子計算機等の小型電子機器に使用されるコイン形或いはボタン形等の扁平形アルカリ一次電池は、扁平形のケース内に正極合剤と負極合剤とを備えている。ケース内に収容された正極合剤及び負極合剤は、セパレータを介して対向し、正極合剤、負極合剤及びセパレータには電解液が充填されている。
この扁平形アルカリ一次電池として、正極活物質に酸化銀を用いた酸化銀電池や、正極活物質に二酸化マンガンを用いたアルカリマンガン電池が既に一般市場に出回っている。酸化銀電池は、体積エネルギー密度が高い利点を有し、負極活物質を亜鉛とした場合に、その電池電圧が1.56ボルト付近で平坦である。このため、酸素銀電池は、主に終止電圧が1.2ボルト以上の電子腕時計、携帯用電子計算機等の小型電子機器用の電源に適している。
しかしながら、酸化銀は、貴金属である銀が主成分であるため高価であり、銀相場により価格が変動し、製造原価の低減や安定を図る上で使用し難い物質である。これに対し、アルカリマンガン電池は、質量当たりの価格が圧倒的に安価である点で有利である。しかし、アルカリマンガン電池は、酸化銀に比べ、体積エネルギー密度が低く、放電に伴い電圧が大幅に降下する。このため、電子腕時計等、終止電圧が酸化銀電池の電池電圧に合わせて高めに設定されている機器においては、二酸化マンガンの放電に伴う電圧降下から、機器の使用時間が極端に短くなってしまうという問題がある。
その解決策として、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含有する電池が提案されている。オキシ水酸化ニッケルは、電池電圧を酸化銀電池よりも高くすることができ、筒形電池においては既に正極活物質として用いられている(例えば特許文献1〜3参照)。
特開2003−234107号公報 特開2004−6092号公報 特開2005−19349号公報
しかし、オキシ水酸化ニッケルを正極活物質に用いた電池の場合、電池電圧としては酸化銀電池よりも高いものの、オキシ水酸化ニッケルの単位質量当りの理論電気容量が、292mAh/gであり、二酸化マンガン308mAh/g(マンガン1価当り)よりも小さい。
また、オキシ水酸化ニッケル自身の導電性は低く、且つ放電反応でオキシ水酸化ニッケルが還元されて生成する水酸化ニッケルは殆ど導電性がない。さらに、オキシ水酸化ニッケルを用いた正極合剤は、電解液吸収及び放電に伴い体積が増大するといった問題がある。これらの要因により、正極合剤中の体積当たりの導電剤の比率が低くなり、著しく容量及び容量保存性が低下してしまう。また、放電末期に電解液が不足すると、電気容量のさらなる低下を招く。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気容量を向上することができるアルカリ一次電池及びアルカリ一次電池の製造方法を提供することにある。
上記問題点を解決するために、本発明は、正極合剤及び負極合剤及び電解液をケース内に収容したアルカリ一次電池において、前記正極合剤は、主正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含むとともに、副正極活物質として銀・ニッケル複合酸化物、及び前記電解液を保持する保液剤として架橋型ポリアクリル酸、及び結着剤としてフッ素樹脂粉末を含む。
この構成によれば、主正極活物質をオキシ水酸化ニッケルとする場合に、副正極活物質として導電性及び結着力を有する銀ニッケル複合酸化物を用いたので、正極合剤の膨張を抑制し、導電材の比率の低下も抑制することができる。さらに結着剤としてフッ素樹脂粉末を用いるため、少量で十分な結着力を得ることができる。従って、正極合剤における結着力を向上させたため、膨潤しやすいポリアクリル酸を配合することができる。このため、電解液不足を抑制して、容量及び容量保存性を良好にすることができる。従って、放電に伴う容量及び容量保存性の低下を防止することができる。
このアルカリ一次電池において、前記架橋型ポリアクリル酸の前記正極合剤における配合率が、0.05質量%以上、1.0質量%以下である。
この構成によれば、架橋型ポリアクリル酸の保液力により、正極活物質の周囲に電解液を適量保持させるとともに、良好なハンドリング性を得ることができる。
このアルカリ一次電池において、前記銀・ニッケル複合酸化物の前記正極合剤に対する配合率が、5質量%以上、30質量%以下である。
この構成によれば、銀・ニッケル複合酸化物を副極合剤として適量配合することにより、活物質及び導電剤の比率を高めるとともに、結着力により正極合剤の膨張を抑制することができる。
このアルカリ一次電池において、前記フッ素樹脂粉末の前記正極合剤に対する配合率が、0.05質量%以上、5.0質量%以下である。
この構成によれば、フッ素樹脂粉末を適量配合することにより、高い結着力を得ることができるとともに、良好なハンドリング性を得ることができる。
このアルカリ一次電池において、前記オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が、1μm〜20μmである。
この構成によれば、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を1μm〜20μmにすることによって、正極活物質の体積膨張を抑制することができる。
このアルカリ一次電池において、前記銀・ニッケル複合酸化物の平均粒径が、1μm〜20μmである。
この構成によれば、銀・ニッケル複合酸化物の平均粒径を1μm〜20μmにすることにより、活物質及び導電剤の比率を良好にすることができるとともに、結着力により正極合剤の膨張を抑制することができる。
このアルカリ一次電池において、前記フッ素樹脂粉末の平均粒径が、0.1μm〜10.0μmである。
この構成によれば、フッ素樹脂粉末の平均粒径が、0.1μm〜10.0μmであるため、高い結着力を得ることができる。このため、フッ素樹脂粉末の配合率が少量であっても、良好な結着力を得ることができる。
本発明は、正極合剤及び負極合剤及び電解液をケース内に収容したアルカリ一次電池の
製造方法において、前記正極合剤を、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケル、及び副正極活物質として銀ニッケル複合酸化物、及び保液剤として架橋型ポリアクリル酸、及び結着剤としてフッ素樹脂粉末を配合して形成する。
この方法によれば、主正極活物質をオキシ水酸化ニッケルとする場合に、副正極活物質として導電性及び結着力を有する銀ニッケル複合酸化物を用いたので、正極合剤の膨張を抑制し、導電材の比率の低下も抑制することができる。さらに結着剤としてフッ素樹脂粉末を用いるため、少量で十分な結着力を得ることができる。従って、正極合剤における結着力を向上させたため、膨潤しやすいポリアクリル酸を配合することができる。このため、電解液不足を抑制して、容量及び容量保存性を良好にすることができる。従って、放電に伴う容量及び容量保存性の低下を防止することができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1に従って説明する。
図1は、正極合剤及び負極合剤及び電解液を扁平形のケース内に収容した扁平形アルカリ一次電池の概略断面図である。図1において、扁平形アルカリ一次電池1はボタン形の一次電池であって、正極缶2及び負極缶3を有している。正極缶2は、ステンレススチール(SUS)にニッケルメッキを施した材質からなり、カップ状に成型されている。この正極缶2は、正極合剤5を収容するとともに、正極端子として機能する。
負極缶3は、ニッケルよりなる外表面層と、ステンレススチール(SUS)よりなる金属層と、銅よりなる集電体層とを有する3層構造のクラッド材からなり、カップ状に成型されている。また、負極缶3は、その円形の開口部3aが折り返し形成されており、その開口部3aには、例えば、ナイロン製のリング状のガスケット4が装着されている。
そして、正極缶2の円形の開口部2aに、負極缶3を、ガスケット4を装着した開口部3a側から嵌合させ、該正極缶2の開口部2aを該ガスケット4に向かってかしめて封口することによって、円盤状(ボタン形又はコイン形)のケース8が形成される。該ケース8の内部には、密閉空間Sが形成される。
この密閉空間Sには、正極合剤5、セパレータ6、負極合剤7が収容され、セパレータ6を挟んで正極缶2側に正極合剤5、負極缶3側に負極合剤7がそれぞれ配置されている。
(正極合剤)
次に、正極合剤5について説明する。正極合剤5は、主正極活物質、副正極活物質、電解液、保液剤及び結着剤を含有している。主正極活物質は、オキシ水酸化ニッケル粉末を主として含む。オキシ水酸化ニッケルの放電反応は、下記の半反応式(1)で示される。
NiOOH+HO+e → Ni(OH)+OH ・・・(1)
オキシ水酸化ニッケル自身の導電性は低く、放電反応により生成される水酸化ニッケルは殆ど導電性がない。また、放電反応により生成される水酸化ニッケルは、オキシ水酸化ニッケルよりも体積が大きいため、水酸化ニッケルの比率が増大するにつれ正極合剤5は膨張する。
さらに、正極合剤5が過度に膨張すると、正極合剤全体に電解液が十分に行き渡らず、電解液が不足する傾向となる。電解液が不足すると、放電反応に必要な水分が不足し、電池の内部抵抗が増大して、容量及び容量保存性が低下してしまう。
これに対し、本発明では、後述する副正極活物質及び結着剤を適量配合することにより、正極合剤5の膨張を抑制するとともに、正極合剤5に電解液を吸収する保液剤を配合することで容量及び容量保存性の低下を防止している。
また、オキシ水酸化ニッケルは、平均粒径が小さくなるほど体積膨張が大きくなる。このため、平均粒径は、1μm〜20μmであることが好ましい。オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が1μmを下回ると、正極合剤5の膨張が大きくなり、良好な容量が且つ容量保存性が維持できなくなる。また、現時点で工業的にオキシ水酸化ニッケルの平均粒径を20μm以上に製造することは、技術的に困難である。
副正極活物質としては、銀・ニッケル複合酸化物を用いている。銀・ニッケル複合酸化物は、AgNiO等の化合物であって、高容量の活物質であり、高い導電性を有する。このため、正極合剤5に適量配合することにより、活物質量が補充され、容量を向上することができる。また、銀・ニッケル複合酸化物を加えることで、嵩密度が低いグラファイト等の導電剤を高比率で加えずに、正極合剤中の導電剤の比率を高めることができる。
また、銀・ニッケル複合酸化物は、活物質及び導電剤としての機能だけでなく、正極合剤5の結着剤としての機能も有する。このため、正極合剤5に含まれる各粒子を互いに結着させ、放電に伴う正極合剤5の膨張を抑制することができる。
この銀・ニッケル複合酸化物は、その平均粒径を、1μm以上、20μm以下とすることが好ましい。平均粒径が1μmを下回ると、銀・ニッケル複合酸化物の圧縮性が低下し、正極合剤5をペレット状に加工する際の圧力を高くしなければならず、成型治具の変形を来たす虞がある。また、平均粒径が20μmを上回ると銀・ニッケル複合酸化物の単位質量当りの結着力が低下する。
また、銀・ニッケル複合酸化物は、正極合剤5の全体質量に対し、配合率を5質量%以上、30質量%以下とすることが好ましい。銀・ニッケル複合酸化物の配合率が5質量%を下回ると、正極合剤5での結着力が不足する。また、配合率が30質量%を上回ると、電池特性上殆どメリットがないにも拘らず、コスト高になるため好ましくない。
また、保液剤としては、架橋型ポリアクリル酸を用いている。架橋型ポリアクリル酸の強くて早い吸液力により、正極合剤5の混合、造粒、打錠といった前工程でも、必要量の電解液を保持し、容量及び容量保存性に優れた電池を得ることができる。
この架橋型ポリアクリル酸は、放電が進行するに伴い正極合剤中に電解液を放出する。具体的には、放電が進行するに伴い水酸化ニッケルの割合が高くなると、限られた空間の中で正極合剤5の体積が膨張する。正極合剤5の体積が膨張すると、正極合剤5の各粒子が互いに押圧され、粒子の間隙は縮小する。その結果、粒子間に介在する保液剤に応力が加えられ、保液剤に吸収されていた電解液が正極合剤中に放出される。このため、放電反応が進行するに伴い正極合剤中の水分が消費される一方、放電に伴い保液剤中の電解液が放出されるので、正極合剤中の電解液の液量の均衡を取ることができる。このため、電解液不足に起因する容量低下及び容量保存性の低下を防止することができる。
また、保液剤を、架橋型、即ち架橋度が高いポリアクリル酸とすることにより、架橋度が低いポリアクリル酸よりも粘性を高め、製造工程での取り扱いのし易さ、成型し易さといったハンドリング性を向上することができる。また、架橋型ポリアクリル酸の場合、正極合剤中で安定しているため、カルボキシメチルセルロース等のように分解されない。
この架橋型ポリアクリル酸は、正極合剤5に対し配合率を0.05質量%以上、1.0質量%以下とすることが好ましい。架橋型ポリアクリル酸の配合率が0.05質量%を下回ると、正極合剤5の混合、造粒、打錠といった前工程で必要電解液を保持できず、ハンドリング性が低下する。また、架橋型ポリアクリル酸の量が0.05質量%を下回ると、
保液剤中に吸収される電解液も少量となり、上記したように正極合剤中に放出できる電解液量が少なくなって放電末期に近付くにつれ電解液が不足する。また、架橋型ポリアクリル酸の配合率が1.0質量%を上回ると、架橋型ポリアクリル酸の粘性が高いことから、正極合剤の前工程、特に造粒工程でのハンドリング性が著しく低下し、好ましくない。
また、結着剤としては、少量で高い結着性を有するフッ素樹脂粉末を用いている。フッ素樹脂粉末は、主正極活物質や副正極活物質等の間でバインダとして機能し、各粒子を互いに結着させ、各粒子の間隙が拡大されるのを抑止する。また、フッ素樹脂粉末は、撥水性を有するため、電解液を吸収することによる膨潤がないという利点も有する。
従って、正極合剤5に、上記したように電解液を吸収して膨潤する架橋型ポリアクリル酸を配合した場合でも、銀・ニッケル複合酸化物の結着力と、フッ素樹脂粉末の結着力とにより、正極合剤5の膨張を抑制することができる。銀・ニッケル複合酸化物及びフッ素樹脂粉末により、予め正極合剤中の各粒子を結着させることにより、放電反応が進行した際に、各粒子間に介在する保液剤に応力が加わりやすくなり、電解液を正極合剤中に放出し易くなる。
このフッ素樹脂粉末としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等を用いることができる。特に、剪断応力により最も繊維化しやすいPTFEが好ましい。
また、フッ素樹脂粉末は、その平均粒径を0.1μm以上、10.0μm以下とすることが好ましい。フッ素樹脂粉末の平均粒径が0.1μmを下回るよう工業的に製造することは現在の技術では困難である。また、平均粒径が10.0μmを上回ると、フッ素樹脂粉末の単位質量当りの結着性が低下し、正極合剤5への配合比を高くしなければならなくなり、その分、充填できる活物質等を減らさなければならず好ましくない。
また、フッ素樹脂粉末は、正極合剤5に対する配合率を0.05質量%以上、5.0質量%以下とすることが好ましい。結着剤の配合率が0.05質量%を下回ると、正極合剤5での結着力が不足する。また、フッ素樹脂粉末の配合率が5.0質量%を上回ると、その分、充填できる活物質等を減らさなければならず好ましくない。
以上のように、正極合剤5を上記したような構成にすることより、放電に伴う正極合剤5の膨張を抑制し、体積当たりの導電剤の比率が極端に低下してしまうことを防止することができる。また、少量で結着力の高いフッ素樹脂粉末等によって予め各粒子を結着させるので、水酸化ニッケルの比率増加により各粒子間に介在する保液剤に応力が加わりやすくなり、電解液を正極合剤中に放出し易くなる。このため、体積膨張や放電反応に伴う水分の消費等による電解液の不足を抑制し、正極合剤5及び負極合剤7及びセパレータ6に電解液を行き渡らせることができる。このため、筒型電池よりも容量向上が難しい扁平形アルカリ一次電池1において、その放電容量の低下及び容量保存性の低下を抑制することができる。
(負極合剤)
負極合剤7は、ジェル状に形成され、亜鉛又は亜鉛合金粉末、酸化亜鉛、増粘剤、アルカリ電解液及び亜鉛腐食抑制剤等を含有している。負極活物質としての亜鉛又は亜鉛合金の放電反応は、以下の半反応式(2)で表される。
Zn+2OH → ZnO+HO+2e・・・(2)
次に、正極合剤5の組成を変更した実施例及び比較例を行い、当該発明の効果を検証した。
(実施例1)
図1で示す電池構造で、負極缶3を、厚さが0.15mmの上記クラッド材をプレス加工して成型した。正極合剤5を構成する組成物の配合率は、オキシ水酸化ニッケルを78.8質量%、銀・ニッケル複合酸化物を15.0質量%、架橋型ポリアクリル酸を0.2質量%、フッ素樹脂粉末を4.0質量%、濃度45%の水酸化カリウム水溶液を2.0質量%とした。
尚、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径は、10μm、銀・ニッケル複合酸化物(AgNiO)の平均粒径は10μmとした。また、フッ素樹脂粉末の平均粒径は5μmとした。尚、平均粒径は、粒度分布曲線において積算値が50%にあたる粒径(D50)である。
そして、これらをブレンダーで混合した後、打錠機にてペレット状に成型した。この正極合剤5を正極缶2内に挿入した後、水酸化カリウムを含むアルカリ電解液を正極缶2に注入して正極合剤5に電解液を吸収させた。
さらに、正極合剤5上に、円形状であって、微多孔膜6aと不織布6bの2層構造からなるセパレータ6を装填した。この装填したセパレータ6に、37%水酸化カリウム水溶液を含む電解液を滴下して含浸させた。
また負極合剤7を構成する各組成物の配合率は、亜鉛合金粉を61.0質量%、酸化亜鉛を2.68質量%、架橋型ポリアクリル酸ソーダ1.48質量%、カルボキシメチルセルロースを1.48質量%、45%水酸化カリウム水溶液を33.36質量%とした。そして、これらの材料を混合したジェル状の負極合剤7を、正極合剤5の上に装填されたセパレータ6の上に載置した。さらに、負極缶3と正極缶2とを、ガスケット4を介して、かしめることで密封し、扁平形アルカリ一次電池1を作製した。
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同様な構成にするものの、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を10μmから1μmにした。
(実施例3)
実施例3は、実施例1と同様な構成にするものの、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を10μmから20μmにした。
(実施例4)
実施例4は、実施例1と同様な構成にするものの、銀・ニッケル複合酸化物の平均粒径を10μmから1μmにした。
(実施例5)
実施例5は、実施例1と同様な構成にするものの、銀・ニッケル複合酸化物の平均粒径を10μmから20μmにした。
(実施例6)
実施例6は、実施例1と同様な構成にするものの、銀・ニッケル複合酸化物の配合率を15質量%から5質量%にした。
(実施例7)
実施例7は、実施例1と同様な構成にするものの、銀・ニッケル複合酸化物の配合率を15質量%から30質量%にした。
(実施例8)
実施例8は、実施例1と同様な構成にするものの、架橋型ポリアクリル酸の配合率を0.2質量%から0.05質量%にした。
(実施例9)
実施例9は、実施例1と同様な構成にするものの、架橋型ポリアクリル酸の配合率を0.2質量%から1.0質量%にした。
(実施例10)
実施例10は、実施例1と同様な構成にするものの、フッ素樹脂粉末の平均粒径を5μmから0.1μmにした。
(実施例11)
実施例11は、実施例1と同様な構成にするものの、フッ素樹脂粉末の平均粒径を5μmから10μmにした。
(実施例12)
実施例12は、実施例1と同様な構成にするものの、フッ素樹脂粉末の配合率を4質量%から0.05質量%にした。
(実施例13)
実施例13は、実施例1と同様な構成にするものの、フッ素樹脂粉末の配合率を4質量%から5.0質量%にした。
(実施例14)
実施例14は、実施例1と同様な構成にするものの、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を10μmから0.5μmにした。
(実施例15)
実施例15は、実施例1と同様な構成にするものの、銀・ニッケル複合酸化物の平均粒径を10μmから0.5μmにした。
(実施例16)
実施例16は、実施例1と同様な構成にするものの、銀・ニッケル複合酸化物の配合率を15.0質量%から3.0質量%にした。
(実施例17)
実施例17は、実施例1と同様な構成にするものの、架橋型ポリアクリル酸の配合率を0.2質量%から0.03質量%にした。
(実施例18)
実施例18は、実施例1と同様な構成にするものの、架橋型ポリアクリル酸の配合率を0.2質量%から1.5質量%にした。
(実施例19)
実施例19は、実施例1と同様な構成にするものの、フッ素樹脂粉末の平均粒径を5μmから15μmにした。
(実施例20)
実施例20は、実施例1と同様な構成にするものの、フッ素樹脂粉末の配合率を4.0質量%から0.03質量%にした。
(実施例21)
実施例21は、実施例1と同様な構成にするものの、フッ素樹脂粉末の配合率を4.0質量%から6.0質量%にした。
(比較例1)
比較例1は、実施例1に対し、正極合剤5に銀・ニッケル複合酸化物を配合しない点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同じ構成にした。
(比較例2)
比較例2は、実施例1に対し、正極合剤5に架橋型ポリアクリル酸を配合しない点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同じ構成とした。
(比較例3)
比較例3は、実施例1に対し、正極合剤5にフッ素樹脂粉末を配合しない点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同じ構成とした。
<検証>
そして、前記した実施例1〜21、及び比較例1〜3の扁平形アルカリ一次電池1をそ
れぞれ40個作製し、以下の検証を行った。
<検証1>
実施例1〜21及び比較例1〜3の電池をそれぞれ20個ずつ用い、30kΩで定抵抗放電させ、1.2Vの終止電圧とした時の放電容量〔mAh〕を調べた。
<検証2>
実施例1〜21及び比較例1〜3の電池を20個ずつ用い、各電池の容量保存性を検証するために、温度60℃、低湿度の環境下で60日保存した。保存後、30kΩで定抵抗放電させ、終止電圧を1.2Vとしたときの放電容量〔mAh〕を調べた。
<検証3>
実施例1〜21及び比較例1〜3の電池を作製する際に、正極合剤5のハンドリング性を評価した。そして、これらの検証1〜3の結果を図2の表に示した。
・この表の実施例1〜21に対し検証1及び検証2で得られた放電容量は、比較例1〜3の放電容量よりも大きくなった。これにより、正極合剤5の副正極活物質として銀・ニッケル複合酸化物、電解液保液剤として架橋型ポリアクリル酸、結着剤としてフッ素樹脂粉末を用いると、放電容量及び容量保存性に優れた電池となることが示唆された。
・また、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を1μm、20μmとした実施例2及び3の結果では、良好な容量及び容量保存性が得られた。これに対し、平均粒径を0.5μmとした実施例14では、実施例2及び3と比較して容量及び容量保存性が低下した。これにより、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を1μm以上、20μm以下とすることにより、良好な容量及び容量保存性が向上することが示唆された。
・銀・ニッケル複合酸化物の平均粒径を1μm、20μmとした実施例4及び5では良好なハンドリング性が得られたが、0.5μmとした実施例15ではハンドリング性が低下した。この結果から、正極合剤5の副正極活物質として銀・ニッケル複合酸化物の平均粒径を1μm以上、20μm以下とすることにより、ハンドリング性を向上できることが判った。
・銀・ニッケル複合酸化物の配合率を5質量%、30質量%とした実施例6及び7に対し検証1及び検証2で得られた放電容量は、配合率を3質量%とした実施例16に対して得られた放電容量よりも大きくなった。このため、銀・ニッケル複合酸化物の配合率を5質量%以上、30質量%以下とすることにより、容量及び容量保存性が向上できることが示唆された。
・架橋形ポリアクリル酸の配合率を0.05質量%、1.0質量%とした実施例8及び9に対し検証1及び2で得られた放電容量は、配合率を0.03質量%とした実施例17よりも放電容量が大きい傾向となった。実施例17の場合、必要量の電解液を保持できないことにより容量及び容量保存性が低下したと推定される。また、実施例18では、架橋型ポリアクリル酸の配合率を1.5質量%としたが、架橋型ポリアクリル酸の粘性が高いために、ハンドリング性が低下することが明らかとなった。
・フッ素樹脂粉末の平均粒径を15μmとした実施例19では、平均粒径をそれぞれ0.1μm及び10μmとした実施例10及び11に比べ、容量及び容量保存性が低くなった。これにより、フッ素樹脂粉末の平均粒径を0.1μm以上、10μm以下とすることにより、良好な容量及び容量保存性が得られることが示唆された。
・フッ素樹脂粉末の配合率をそれぞれ0.05質量%及び5.0質量%とした実施例12及び実施例13では、配合率をそれぞれ0.03質量%、6.0質量%とした実施例20及び21に比べ、良好な容量及び容量保存性が得られた。これにより、フッ素樹脂粉末
の配合率を0.05質量%以上、5.0質量%以下とすることにより、容量及び容量保存性が向上することが示唆された。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、正極合剤5は、主正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含むとともに、副正極活物質として銀・ニッケル複合酸化物、及び電解液を保持する保液剤として架橋型ポリアクリル酸、及び結着剤としてフッ素樹脂粉末を含む。このため、導電性及び結着力を有する銀ニッケル複合酸化物により、正極合剤5の膨張を抑制し、導電材の比率の低下を抑制することができる。さらに結着剤としてフッ素樹脂粉末を用いるため、少量で十分な結着力を得ることができる。従って、正極合剤5における結着力を向上させたため、膨潤しやすいポリアクリル酸を正極合剤5に配合することができる。このため、放電末期における電解液不足を抑制して、内部抵抗の低下を防止し、容量及び容量保存性を良好にすることができる。従って、放電に伴う容量及び容量保存性の低下を防止することができる。
(2)上記実施形態では、架橋型ポリアクリル酸の正極合剤5における配合率を、0.05質量%以上、1.0質量%以下としたため、正極活物質の周囲に電解液を適量保持させることができる。
(3)上記実施形態では、銀・ニッケル複合酸化物の正極合剤5に対する配合率を、5質量%以上、30質量%以下としたため、活物質及び導電剤の比率を好適な比率に維持するとともに、結着力により正極合剤の膨張を抑制することができる。
(4)上記実施形態では、フッ素樹脂粉末の正極合剤5に対する配合率を、0.05質量%以上、5.0質量%以下としたため、正極活物質に対する高い結着力を得るとともに、容量及び容量保存性を良好に維持することができる。
(5)上記実施形態では、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を、1μm〜20μmとしたため、正極合剤5の体積膨張を抑制することができる。
(6)上記実施形態では、銀・ニッケル複合酸化物の平均粒径を、1μm〜20μmとすることにより、銀・ニッケル複合酸化物の圧縮性を良好にするとともに、正極合剤5における結着力を向上させることができる。
(7)上記実施形態では、フッ素樹脂粉末の平均粒径を、0.1μm〜10.0μmとすることにより、単位質量当たりの結着力を向上することができる。このため、活物質の配合率を減らすことなく、高い結着力を得ることができる。
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・主正極活物質のオキシ水酸化ニッケルは、オキシ水酸化ニッケル単独でもよいし、亜鉛やコバルト等を固溶したオキシ水酸化ニッケルでもよい。
・上記実施形態では、アルカリ一次電池を、より容量向上の効果が発揮できる扁平形アルカリ一次電池1に具体化したが、オキシ水酸化ニッケルを主正極活物質とする円筒状のアルカリ一次電池に具体化してもよい。例えば、このアルカリ一次電池は、正極端子及び負極端子を兼ねるケースと、ケース内に収容される正極合剤及び負極合剤と、負極合剤中に配置される集電棒等を備える。正極合剤は、オキシ水酸化ニッケルを含み、負極合剤は、亜鉛又は亜鉛合金を含む。正極合剤及び負極合剤には、水酸化カリウム水溶液が含浸されている。
扁平形アルカリ一次電池の断面図。 実施例及び比較例の表。
符号の説明
1…扁平形アルカリ一次電池、5…正極合剤、7…負極合剤、8…ケース。

Claims (8)

  1. 正極合剤及び負極合剤及び電解液をケース内に収容したアルカリ一次電池において、
    前記正極合剤は、主正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含むとともに、
    副正極活物質として銀・ニッケル複合酸化物、及び前記電解液を保持する保液剤として架橋型ポリアクリル酸、及び結着剤としてフッ素樹脂粉末を含むことを特徴とするアルカリ一次電池。
  2. 請求項1に記載のアルカリ一次電池において、
    前記架橋型ポリアクリル酸の前記正極合剤における配合率が、0.05質量%以上、1.0質量%以下であることを特徴とするアルカリ一次電池。
  3. 請求項1又は2に記載のアルカリ一次電池において、
    前記銀・ニッケル複合酸化物の前記正極合剤に対する配合率が、5質量%以上、30質量%以下であることを特徴とするアルカリ一次電池。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルカリ一次電池において、
    前記フッ素樹脂粉末の前記正極合剤に対する配合率が、0.05質量%以上、5.0質量%以下であることを特徴とするアルカリ一次電池。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルカリ一次電池において、
    前記オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が、1μm〜20μmであることを特徴とするアルカリ一次電池。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルカリ一次電池において、
    前記銀・ニッケル複合酸化物の平均粒径が、1μm〜20μmであることを特徴とするアルカリ一次電池。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルカリ一次電池において、
    前記フッ素樹脂粉末の平均粒径が、0.1μm〜10.0μmであることを特徴とするアルカリ一次電池。
  8. 正極合剤及び負極合剤及び電解液をケース内に収容したアルカリ一次電池の製造方法において、
    前記正極合剤を、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケル、及び副正極活物質として銀ニッケル複合酸化物、及び保液剤として架橋型ポリアクリル酸、及び結着剤としてフッ素樹脂粉末を配合して形成することを特徴とするアルカリ一次電池の製造方法。
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