JP2010037614A - 燃料電池セパレータ用ステンレス鋼および燃料電池用セパレータ - Google Patents

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Abstract

【課題】接触電気抵抗が低く、エネルギーロスが少ない燃料電池用セパレータ、及び高強度と優れた成形性を有するオーステナイト系ステンレス鋼とその製造方法を提供する。
【解決手段】表面部が、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.01〜2.5%、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Cr:16.0〜30.0%、Ni:12.0〜50.0%、B:0.4〜3.5%、Al:0.001〜0.2%、N:0.01〜0.1%、Mo:7.0%以下およびCu:5.0%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなり、17.0≦Cr+3Mo−2.5Bを満足する化学組成を備え、かつ、硼化物が分散し、厚み方向中心部が、Ni:6.0〜30.0%、B:0.01%以下、N:0.06〜0.3%で、他元素は表面部と同じ化学組成を有し、0.2%耐力YSが300N/mm↑2以上、かつ全伸びElが40%以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は接触電気抵抗が低いことが必要とされる自動車搭載型および家庭据置き型等の小型分散型電源に使用される固体高分子型燃料電池用セパレータに関する。
燃料電池は、水素および酸素を利用して直流電力を発電する電池であり、固体電解質型、溶融炭酸塩型、リン酸型および固体高分子型などの各種の燃料電池がある。これらの中で、現在、商用段階に達している燃料電池は、リン酸型燃料電池および溶融炭酸塩型燃料電池である。これらの燃料電池のおおよその運転温度は、固体電解質型燃料電池で1000℃ 、溶融炭酸塩型燃料電池で650℃ 、リン酸型燃料電池で200℃ であり、固体高分子型燃料電池では80℃ 前後である。
上記のように、固体高分子型燃料電池は運転温度が低く、しかも起動・停止が容易であり、またエネルギー効率も40% 程度が期待できる。従って、小規模事業所、電話局などの非常用分散電源、都市ガスを燃料とする家庭用小型分散電源、水素ガス、メタノールあるいはガソリンを燃料とする低公害電気自動車搭載用電源として、世界的に実用化が期待されている。
図1は、固体高分子型燃料電池(以下、単に「燃料電池」ともいう。)の構造を示す図で、同図の(a)は、燃料電池を構成する単セルの分解図、図1(b)は多数の単セルを組み合わせて作られた燃料電池全体の斜視図である。
図1に示すように、燃料電池1は単セルの集合体(スタック)である。単セルは、図1(a)に示すように固体高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」という。)2の一面にアノード側ガス拡散電極層または燃料電極膜と呼ばれるもの(以下、「アノード」という。)3が、他面にはカソード側ガス拡散電極層または酸化剤電極膜と呼ばれるもの(以下、「カソード」という。)4がそれぞれ積層されており(以下、この積層構造を「膜/電極接合体」または「MEA」という。)、その両面に固体高分子型燃料電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」という。なお、一般的には「バイポーラプレート」とも称される。)5a、5bが重ねられた構造になっている。
なお、上記の単セルと単セルの間、または数個の単セルごとに冷却水の流通路を持つ水セパレータを配した水冷型の燃料電池もある。本発明はそのような水冷型燃料電池をも対象とする。
電解質膜2としては、水素イオン(プロトン)交換基を有するフッ素系プロトン伝導膜が使われている。アノード3およびカソード4には、粒子状の白金触媒と黒鉛粉、および必要に応じて水素イオン(プロトン)交換基を有するフッ素樹脂からなる触媒層が設けられている場合もあり、この場合には、燃料ガスまたは酸化性ガスとこの触媒層とが接触して反応が促進される。
セパレータ5aに設けられている流路6aからは燃料ガス(水素または水素含有ガス)Aが流されてアノード3に水素が供給される。また、セパレータ5bに設けられている流路6bからは空気のような酸化性ガスB が流され、酸素が供給される。これらガスの供給により電気化学反応が生じて直流電力が発生する。
固体高分子型燃料電池のセパレータに求められる主な機能は次のようなものである。
(1)燃料ガス、酸化性ガスを電池面内に均一に供給する“流路”としての機能、
(2)カソード側で生成した水を、反応後の空気、酸素といったキャリアガスとともに燃料電池から効率的に系外に排出する“流路”としての機能、
(3)電極膜(アノード3、カソード4)と接触して電気の通り道となり、さらに単セル間の電気的“コネクタ”となる機能、
(4)隣り合うセル間で、一方のセルのアノード室と隣接するセルのカソード室との“隔壁”としての機能、および
(5)水冷型燃料電池では、冷却水流路と隣接するセルとの“隔壁”としての機能。
膜/電極接合体(MEA)を多層にして出力電圧を高めようとすれば、このようなセパレータは、必然的に多数電池ユニットに組み込まれることなる。このため、このセパレータの電極に対する接触抵抗が大きい場合には、大きなエネルギーロスが発生してしまう。
他方、最近の製品、部品は共に小型・軽量化が進行し、部品用素材は薄板化(断面積減少)が要望され、剛性低下を補うための高強度化が必要とされる。また、製品、部品の形状の複雑・高精度化により、部品用素材には同時に優れた成形性およびそれにともなう優れた形状が必要とされる。ところが、一般の金属材料は高強度化に対応する成形性劣化が避けられず、両特性はトレードオフの関係を示す。
このような背景の下、セパレータの素材としてステンレス鋼を使用することが検討されている。特に、加工性にも優れるオーステナイト系ステンレスの適用が主として検討されている。このステンレス鋼はその表面にクロム酸化物を主体とする安定な不働態皮膜が形成されるため耐食性に優れるものの、この不働態皮膜は電気抵抗が比較的大きい。すなわち、不働態皮膜が厚くなれば耐食性が向上し、ステンレス鋼の最大の特徴である美しい表面、安定した電位抵抗が維持される反面、電気抵抗値は増加するという問題があった。
具体的には、例えば、特許文献1には、不働態皮膜を形成しやすい金属材料を燃料電池用セパレータとして使用する技術が開示されている。なお、同材料としては、ステンレス鋼とともにチタンが挙げられている。しかし、同文献のように不働態被膜を調整した場合には、少なくとも長時間使用で充分な耐食性を維持できず、ステンレス鋼から金属溶出が起こり、電池の性能が劣化する。また、溶出後に生成されるCr−OHやFe−OH等により、セパレータの接触抵抗が増加する問題があった。
このため、特許文献2には、表面に低電気抵抗および優れた耐食性を有する金などの貴金属の薄膜をめっき処理によって施したセパレータ用ステンレス鋼が開示されている。しかし、貴金属めっきは、薄い場合にはピンホールの発生防止が困難であり、同部での耐食性が極端に劣化してしまう、逆に、厚い場合にはコストを度外視したものとなってしまう問題がある。
そこで、特許文献3〜5などには、高い耐食性および高い導電性を有する化合物を分散させたステンレス鋼をセパレータに適用する技術が開示されている。これらは同化合物を介して電気を通すと同時に、母相部での優れた耐食性を維持し、ステンレス鋼にて困難であった低電気抵抗および優れた耐食性を両立したものである。ところが、かかる技術に基づくステンレス鋼は化合物の分散により成形性が劣化する。すなわち、最近の製品、部品の小型・軽量化にともなう形状の複雑・高精度化に際して、素材に必要とされる優れた成形性と形状を維持できない問題が顕在化してきていた。
このため、例えば、特許文献6において、“耐食性を有する表面に導電性介在物が露出する一対の鋼材の間に、上記鋼材よりも高い延性を有する金属材が接合されていることを特徴とする燃料電池用金属セパレータ用素材板(請求項1)”を適用する技術が開示されている。ここで、中間に配される金属材は導電介在物を含まないステンレス鋼板、アルミ材等が挙げられている。すなわち、上述した低電気抵抗および優れた耐食性を両立した素材を板表面に配し、その間に不足する成形性を補う材料を接合するのである。しかし、導電性介在物の分散により延性が劣化する問題は既に認識されており、同材は一般に報告される複合強化による延性低下への対応にしたがって積層構造としたに過ぎない。本質的に言えば、単に延性を回復したに過ぎず、部品としての強度低下が推定される。また、接合が不充分な場合には表面と中間の材料の境界面(界面)に密接合部において、未接合部が実質的に認められない場合であっても接合部に金属間化合物や酸化物等の異物が形成され、優れた成形性が得られない問題が残る。しかも、この成形性の問題とともに必要な導電性が得られないという問題も残る。特許文献6においては、それらを改善することが可能な製造方法について何ら示唆していない。
特開平8−180883号公報 特開平10−228914号公報 特開2000−309854号公報 特開2000−328200号公報 特開2004−002960号公報 特開2004−71319号公報
本発明の目的は前述のような燃料電池用セパレータに最適な電気抵抗、特に接触電気抵抗が低く、エネルギーロスが少なく、かつ最近の小型・軽量化に対応する高強度と優れた成形性を両立した(強度−延性バランスに優れる)高性能のオーステナイト系ステンレス鋼、その製造方法および同セパレータを提供し、それらを安価かつ工業的に安定して提供することを目指したものである。
上記課題を解決するために本発明者が鋭意研究した結果、次の新たな着想を得るに至った。なお、この着想を得るに際して、高導電性を有する化合物の分散は、ステンレス鋼の低い接触電気抵抗および優れた耐食性の両立に不可避であるものの、内部での分散は必ずしも必要ない、との考えを前提とした。
(a)高性能の燃料電池セパレータ用ステンレス鋼は、高い導電性を有する化合物を板表面近傍のみに配して低接触電気抵抗と優れた耐食性とを両立するとともに、板厚中心部には優れた強度−延性バランスを有する材料を配し、さらにその接合部には、空間、異物等の無い連続状態とすることで得られる。
(b)また、高性能の燃料電池セパレータ用ステンレス鋼に必要とされる低い接触電気抵抗、優れた耐食性および強度−延性バランスは、導電性化合物を均一微細に分散させることによりなされる。
(c)上記(b)は、(a)を素材とした減厚加工時変形の表面への分配を促進して、化合物の破砕を進めることで達成される。すなわち、(a)および(b)は両立することが可能である。
そして、こうした着想に基づくことで、積層構造とする場合であっても、表面や内層材として適用される各素材に対して全ての性能、具体的には接触電気抵抗、耐食性および強度−延性バランスを同等以上とすることができると考えた。
上記の着想に基づき完成された本発明は次のとおりである。
(1)表面部が、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.01%以上1.5%以下、Mn:0.01%以上2.5%以下、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Cr:16.0%以上30.0%以下、Ni:12.0%以上50.0%以下、B:0.4%以上3.5%以下、Al:0.001%以下0.2%以上、N:0.01%以上0.1%以下、Mo:7.0%以下およびCu:5.0%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなるとともに、17.0≦Cr+3Mo−2.5Bを満足する化学組成を備え、かつ、硼化物が分散し、厚み方向中心部が、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.01%以上1.5%以下、Mn:0.01%以上2.5%以下、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Cr:16.0%以上30.0%以下、Ni:6.0%以上30.0%以下、B:0.01%以下、Al:0.001%以上0.2%以下、N:0.06%以上0.3%以下、Mo:7.0%以下およびCu:5.0%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、0.2%耐力YSが300N/mm以上、かつ全伸びElが40%以上であることを特徴とする燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
ここで、「表面部」とは、ステンレス鋼の表面から、その全体の厚さの10%以下の深さまでの領域をいう。また、「厚み方向中心部」とは、鋼材の厚み方向中心およびその±5%の部分からなる全体の厚さの10%の部分の領域をいう。
また、この表面部と厚み方向中心部との間の領域の構造は、表面部の化学組成と厚み方向中心部の化学組成とが明確な境界を有していない構造であることが好ましい。また、双方の間に適切な混合層を挟んだ構造でもよいし、表面部の化学組成から厚み方向中心部の化学組成へと化学組成が断続的または連続的に変化する傾斜構造であってもよい。
(2)前記表面部の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、REM、Mg、およびCaからなる群から選ばれる一種または二種以上を合計で0.5%以下含有する上記(1)に記載の燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
(3)前記表面部に分散した硼化物の平均粒径が10μm以下である上記(1)または(2)に記載の燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
(4)前記厚み方向中心部は、前記Ni.bal.が0未満の準安定オーステナイト相である上記(1)から(3)のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
Ni.bal.=30(C+N)+0.5Mn+Ni+8.2−1.1{1.5Si+(Cr−2.5B)+Mo}
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載される燃料電池セパレータ用ステンレス鋼の製造方法であって、複数のステンレス鋼材を積層させ、各々の鋼材の境界を10−2Torr以下に減圧した後、980℃以上、1230℃以下の温度に加熱・保持し、900℃以上の熱間加工で面積減少率20%以上になるように加工することを特徴とする燃料電池セパレータ用ステンレス鋼の製造方法。
ここで、「面積減少率」とは、熱間加工による積層された鋼全体の断面積の減少率をいう。
(6)上記(1)から(4)に記載されるステンレス鋼からなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
本発明によれば、燃料電池用セパレータに最適な、電気抵抗、特に接触電気抵抗が低く、エネルギーロスが少なく、かつ最近の小型・軽量化に対応する高強度および優れた成形性を両立した高性能の通電部品用材料を安価かつ工業的に安定して提供することが可能となる。
また、これにより最近の環境問題にも対応し,小型化・軽量化による資源の有効活用を更に進めることが可能となる。
以下、本発明に係る燃料電池セパレータ用ステンレス鋼、その製造方法、およびそれを用いた燃料電池用セパレータの最良の形態について、実施例をもって詳細に説明する。
なお、本明細書において、鋼成分の含有量に関する「%」は「質量%」を意味するものとする。
1.ステンレス鋼
(1)化学組成
(ア)各元素の個別の含有量
以下に、本発明に係る燃料電池セパレータ用ステンレス鋼の、表面部および厚み方向中心部における含有元素の個別の含有量について説明する。
なお、以下の説明における表面部とは鋼材表面から全体の厚さの10%の部分までの領域、厚み方向中心部とは鋼材の厚み方向中心を含む±5%の部分からなる全体の厚さの10%の部分の領域とする。
C:表面部、厚み方向中心部いずれについても0.03%以下
CはCr23化合物形成によるクロム欠乏相の発生により耐食性を劣化させる。このため、含有量の上限値を0.03%とした。好ましい含有量は、0.025%以下である。
Si:表面部、厚み方向中心部いずれについても0.01%以上1.5%以下
Siは有効な溶製時脱酸元素である。ただし、過度の添加は成形性を劣化する。このため、含有量は0.01%以上、1.5%とした。好ましい含有量は、0.03%以上1.4%以下である。
Mn:表面部、厚み方向中心部いずれについても0.01%以上2.5%以下
Mnは鋼中のSを化合物として固定する作用があり、熱間加工性を改善する。また、溶製時脱酸およびオーステナイト安定度調整のため添加する。これらより、下限値を0.01%以上とした。他方、過度の添加は表面スケール生成量を増加し、表面性状を劣化するため、上限値を2.5%以下とした。好ましい含有量は、0.02%以上2.4%以下である。
P:表面部、厚み方向中心部いずれについても0.035%以下
Pは本発明に係る鋼にとって有害な不純物であり、上限値を0.035%とした。低ければ、低いほど望ましい。
S:表面部、厚み方向中心部いずれについても0.01%以下
SはPと同様に本発明に係る鋼にとって有害な不純物であり、硫化物を形成し、熱間加工性を劣化する。また、腐食環境下での基点となる。これらより、上限値を0.01%とした。好ましい含有量は、0.008%以下である。
Cr:表面部、厚み方向中心部いずれについても16.0%以上30.0%以下
Crはステンレス鋼の基本元素の一つであり、優れた耐食性の確保に必要不可欠である。耐食性は含有量が高いほど向上する。鋼表面部では硼化物形成により母相部のCr含有量が低下するため、下限値を16.0%とした。他方、フェライト安定化元素であり、過度に添加の場合にはフェライト相の残存を招く。また、熱間加工で割れを発生し易くなり、量産困難になる。これらより、上限値を30.0%とした。好ましい含有量は、18.0%以上、29.0%以下である。
Ni:表面部について12.0%以上50.0%以下、厚み方向中心部について6.0%以上30.0%以下
本発明に係る鋼では、Niは鋼の表面部と厚み方向中心部とで含有量が異なるものとする。Niはステンレス鋼の基本元素の一つであり、一般に加工性に優れるオーステナイト相を室温で安定して得るために必要不可避な元素である。鋼の表面部では、性能劣化を招くCr、Feの溶出量を低減させるため、高い含有量であることが望ましい。このため、下限値を12.0%とした。ただし、大量の添加は材料を高価とする。このため、上限値を50.0%とした。好ましい表面部での含有量は、12.6%以上48.0%以下である。
他方、厚み方向中心部では、強度−延性バランス改善のため準安定オーステナイト状態を維持するために、比較的低い含有量であることが望ましい。このため、上限値を30.0%とした。ただし、6.0%以下では室温でオーステナイト相を得ることが難しくなる。このため、下限値を6.0%とした。好ましい厚み方向中心部での含有量は、6.4%以上、28.0%以下である。
B:表面部について0.4%以上3.5%以下、厚み方向中心部について0.01%以下
本発明に係る鋼では、Bも鋼の表面部と厚み方向中心部とで含有量が異なるものとする。鋼の表面では硼化物を形成し、接触電気抵抗を低下する極めて重要な効果をもたらす。このため、下限値を0.4%とした。ただし、3.5%を超える含有は通常の溶解方法での製造が困難になる。また、必要な成形性を維持することが難しくなる。さらに、硼化物が周囲のCrを多量に巻き込んで(含有して)形成されることから、耐食性が劣化しやすい。このため、上限値は3.5%とした。好ましい表面部での含有量は、0.5%以上3.0%以下である。
他方、厚み方向中心部では、化合物分散により延性が劣化する傾向を示す。このため、上限値を0.01%とした。好ましい厚み方向中心部での含有量は、0.003%以下である。
Al:表面部、厚み方向中心部いずれについても0.001%以上0.2%以下
AlはSiと同様に有効な溶製時の脱酸元素である。本発明に係る鋼は、化合物形成を目的にBが添加されるところ、Bは溶鋼中酸素との結合力が強いため、あらかじめAl脱酸により酸素濃度を下げておく必要がある。このため、下限値を0.001%とした。他方、過度の添加は成形性を劣化する。このため、上限を0.2%とした。好ましい含有量は、0.01%以上、0.15%以下である。
N:表面部について0.01%以上0.1%以下、厚み方向中心部について0.06%以上0.3%以下
本発明に係る鋼では、Nも鋼の表面部と厚み方向中心部とで含有量が異なるものとする。NはCと共に有効な固溶強化元素の一つであり、鋼表面部での強度−延性バランスの改善のため下限値を0.01%とした。ただし、過度の添加はCr窒化物を形成し、耐食性を劣化する可能性がある。このため、上限値を0.1%とした。好ましい表面部での含有量は、0.015%以上、0.08%以下である。
他方、厚み方向中心部では、必要な強度を確保するために下限値を0.06%とした。ただし、過度の添加は窒化物を形成し、鋼板などの製造が難しくなる。このため、上限値を0.3%とした。好ましい厚み方向中心部での含有量は、0.062%以上、0.28%以下である。
Mo:表面部、厚み方向中心部いずれについても7.0%以下
MoはCrに比べて少量で耐食性を改善する効果があり、耐食性改善を目的として必要に応じて含有させる。鋼の表面部では、耐食性改善のため、多くの場合に添加する。ただし、多量の添加は金属間化合物を形成し、材料を脆化させる。また、極めて高価な元素でもある。このため、上限値を7.0%とした。好ましい含有量は、6.8%以下である。下限については特に限定されないが、耐食性改善の効果が安定的に確認されるという観点から0.2%以上とすることが好ましい。
Cu:表面部、厚み方向中心部いずれについても5.0%以下
Cuは適量の添加により不働態化が促進され、金属の耐食性を改善する。ただし、5.0%を超えた場合、熱間加工性が劣化する。このため、必要により5.0%を上限値として含有させる。好ましい含有量は、4.8%以下である。下限については特に限定されないが、耐食性改善という観点から0.2%以上とすることが好ましい。
上記成分以外に、工業的側面からの添加元素、例えば溶製時に脱酸剤として使用されるREM(希土類金属)やMg、Caを、必要に応じて0.5%以下含有することができる。
残部はFeおよび不純物である。
(イ)硼化物形成に関与する元素の含有量の関係
表面部に硼化物を分散させるのは、優れた耐食性と低い接触電気抵抗を両立させるためである。ただし、硼化物はその形成に際して周囲のCrを多量に消費する。このため、消費される量に相当するCrとそれを補うMoを溶鋼段階であらかじめ添加しておくことが極めて効果的である。冷却速度等の影響は比較的小さい。すなわち、表面部において、B、CrおよびMoの関係は下記式を満足するものとする。
17.0≦Cr+3Mo−2.5B
(2)構造
(ア)表面部に分散した硼化物の平均粒径
本発明に係るステンレス鋼の表面部は、硼化物を有している。この硼化物の主成分の構造は一般式としてMBで表される。ここで、MBの“M”は金属元素を示す。特定の金属元素ではなく鋼中に含有されているBとの化学的親和力の強い金属元素である。Mは、共存元素との関係より、Cr、Feを主体とし、Ni、Moを微量含有する。
具体的な例として、(Cr、Fe)B、(Cr、Fe、Ni)B、(Cr、Fe、Mo)B、(Cr、Fe、Ni、Mo)B、Cr1.2Fe0.76Ni0.04Bといったものがある。いずれにしても硼化物中の金属元素であるCr、Fe、Mo、Ni、X(ここで、XはCr、Fe、Mo、Ni以外の鋼中金属元素)とB量との間において、“(Cr重量%/Cr原子量+Fe重量%/Fe原子量+Mo重量%/Mo原子量+Ni重量%/Ni原子量+X重量%/X原子量)/(B重量%/B原子量)がほぼ2である”ことが「MB」の意味するところである。
こうした硼化物は、鋼表面に露出し、電気の通り道として機能し、鋼の表面抵抗を低下させる。この機能を発揮させるためには、露出する硼化物の表面露出率(鋼表面における硼化物の露出部分の面積比率であって、単位は面積%である。)には必然的に下限が設定されるが、上記の化学組成を有することで、実用上必要とされる表面露出率が確保され、良好な接触抵抗が実現される。
なお、本発明に係る鋼の表面部分散した硼化物の平均粒径は10μm以下であることが好ましい。10μm以下とすることで、高導電性化合物の分散により低接触電気抵抗と優れた耐食性とが両立される。しかも、その均一微細分散により表面部での強度−延性バランスが改善される。好ましい平均粒径は9.6μm以下である。
(イ)表面部および厚み中心部の組織
本発明に係るステンレス鋼は、優れた強度−延性バランスを有し、具体的には、0.2%耐力YSが300N/mm以上、かつ全伸びElが40%以上である。YSが310N/mm以上、かつElが41%以上であることが好ましい。
かかる特性を実現するためには、硼化物が分散した表面部の母相は、下記式により算出されるNi.bal.(オーステナイト安定度)が0以上のオーステナイト相とすることが好ましい。このようにオーステナイト相とすることで、優れた加工性が安定的に維持される。
Ni.bal.=30(C+N)+0.5Mn+Ni+8.2−1.1{1.5Si+(Cr−2.5B)+Mo}
一方、厚み方向中心部については、上記のNi.bal.が0未満の準安定オーステナイト相とすることが好ましい。準安定オーステナイト系ステンレス鋼は室温での加工によりオーステナイト母相から硬質なマルテンサイト相への変態(加工誘起変態)を起こし、比較的容易に高強度が得られる。また、γ母相が比較的高い伸びを示し、成形性に優れる構造であると共に、上記のように変形部が硬化し、次いで軟質な未変形部が変形していくことで材料全体が均一変形(TRIP効果)し、更に優れた成形性を示す。このように準安定オーステナイト相とすることで、優れた強度−延性バランスが実現されることに加えて、加工誘起マルテンサイト変態を伴う比較的大きな加工硬化により減厚加工による変形時に硬化するため、表層部の硼化物が粉砕され、微細化が促進される。
なお、具体的にJIS規格(JIS−G−4313)にある例で言えば、オーステナイト系ステンレスとはSUS316鋼およびその改良鋼、準安定オーステナイト系ステンレス鋼とはSUS301鋼やSUS304鋼ないしその改良鋼に代表され、後者は前者に比べて高価なNiを初め、耐食性改善が期待されるCr、Mo等の含有量が少ない。
(ウ)表面部と厚み中心部との間の領域
本発明に係る鋼の表面部と厚み方向中心部との間の領域の構造は特に限定されない。表面部の化学組成と厚み方向中心部の化学組成とが明確な境界を有している構造でもよいし、双方の間に混合層を挟んだ構造でもよいし、表面部の化学組成から厚み方向中心部の化学組成へと化学組成が断続的または連続的に変化する傾斜構造であってもよい。
この領域の構造における好ましい構造は、光学顕微鏡において明瞭な境界が確認されない構造であることが最も好ましい。この構造が好適である理由は、明確な境界が確認される場合には、界面の未接合部や金属間化合物、酸化物等の異物の形成により、セパレータに必要とされる、低接触電気抵抗、優れた強度−延性バランスが得られにくくなる可能性があるからである。
3.ステンレス鋼の製造方法
本発明に係るステンレス鋼は、上記のような化学組成上の特徴を備えるとともに表面部には硼化物を有し、所定の機械特性を備え、好ましくはさらに上記の構造上の特徴を有していれば、製造方法には特に限定されない。例えば、冷間または温間での接合圧延、熱間圧延前に積層構造として熱間圧延により接合させる製造方法等によりクラッド材として製造してもよい。
ただし、次のような製造方法を採用すれば、本発明に係るステンレス鋼材を、効率的にかつ安定的に得ることが実現される。
(1)ステンレス鋼の積層
本発明に係る製造方法では、ステンレス鋼を接合することで、表面部と厚み方向中心部との化学組成が異なる鋼を製造する。その積層枚数は最低2枚である。以下に3枚の場合を例にして製造方法を詳説する。
(2)接合対象ステンレス鋼の製造方法
上記の製造方法によって接合される接合対象ステンレス鋼は、それぞれ、通常のステンレス鋼材の製造方法にしたがって製造すればよい。一例を挙げれば次のとおりである。まず、溶解原料を炉内で加熱溶解し、得られた溶鋼を連続鋳造によりスラブとし、これを熱間圧延し、焼鈍する。得られた鋼材を酸洗後、冷間圧延し、焼鈍することで所望の接合対象ステンレス鋼が得られる。なお、連続鋳造を行わずに、溶鋼から造塊してインゴット得て、これを鍛造して熱間圧延に供してもよい。また、熱間圧延後の鋼材を接合対象としてもよいし、熱間圧延後の焼鈍を行ったもの、または冷間圧延まで行ったものを接合対象としてもよい。
このようにして、上記の表面部に対応する化学組成を有するステンレス鋼材を表層材として、および上記の厚み中心部に対応する化学組成を有するステンレス鋼材を内層材として製造する。ここで、「表層材」とは、積層されたときに最も外側になるステンレス鋼材をいい、「内層材」とは、積層されたときに中心部をなすステンレス鋼材をいう。
(3)接合方法
上記の方法により製造された接合対象のステンレス鋼を所定の順序(3枚の場合には、表層材、内層材、表層材の順番)に積層し、各々の境界を10−2Torr以下に減圧した後、980℃以上1230℃以下の温度に加熱、保持し、熱間加工で面積減少率20%以上かつ900℃以上で加工することで各鋼の接合を行う。この接合方法について以下に詳細に説明する。
積層された鋼同士の境界を10−2Torr以下の減圧下とするのは、界面の未接合部の発生を抑制して、界面での金属間化合物や酸化物等の異物の形成を防止するためである。これにより、接合後の材料は極めて優れた性能を示す。好ましくは、10−3Torr以下である。
なお、接合前の各鋼の表面は、公知の方法に従って酸洗して表面性状を高めるとともに異物を除去しておくことが好ましい。
積層対象の各鋼は、積層された状態で仮止めされ、この積層鋼の雰囲気を減圧にすることで各境界を上記の真空度にすることが簡便である。このとき、具体的な方法として、真空槽を用意してこの中に積層鋼を載置し、槽内雰囲気を減圧してもよい。または、積層鋼をさらにステンレス鋼薄板で覆い、これを簡易的な真空槽として内部を減圧してもよい。なお、ステンレス鋼薄板で積層鋼全体を覆う場合には、薄板が上記の表面部に求められる化学組成を有していることが望ましい。
減圧にするための手段は、公知の真空ポンプ、例えば油回転式(ロータリー)ポンプ、油拡散式(ディフュージョン)ポンプ、クライオポンプ、ターボ分子ポンプなどを用いればよい。ロータリーポンプで粗引きしてディフュージョンポンプまたはターボ分子ポンプで所定の真空度まで減圧することが簡便である。
こうして各々の境界を所定の真空度まで減圧させたら、その状態で境界部を密閉する。上記の真空槽に積層鋼を載置して減圧する場合には、積層鋼の積層部分の四周を真空槽内で溶接することで密閉することができる。また、積層鋼を薄板で覆う場合には、内部を真空にした状態で薄板を封じれば積層鋼の境界部が密閉される。
続いて、密閉された積層鋼を、980℃以上1230℃以下の温度に加熱し、保持する。加熱温度を980℃以上とするのは変形抵抗の低下により充分な加工率を確保し、迅速な接合により未接合部や異物の発生を防ぐためである。また、加熱温度を1230℃以下とするのは、δフェライト相等の発生による熱間加工性の劣化、表面の著しい肌荒れを防ぐためである。好ましい加熱・保持温度は、1000℃以上、1200℃以下である。
加熱保持された積層鋼を、面積減少率20%以上になるように、900℃以上で熱間加工する。ここで、「面積減少率」とは熱間加工による積層された鋼全体の断面積の減少率をいう。熱間圧延での面積減少率20%以上とするのは未接合部や異物の発生を防ぐためであり、これ以下では未接合部が残る可能性が高くなる。好ましい面積減少率は22%以上である。上限は特に設定されない。また、加工温度を900℃以上とするのは、それ未満では先述の加工に際して割れが発生する可能性が高いためである。好ましい加工温度の下限は、920℃である。一方、上限は特には設定されない。
以上積層枚数が3枚の場合を例として説明したが、積層枚数は2枚以上であれば何枚であってもよい。2枚の場合には内層材の一方の表面に表層材が積層される構成であり、表面部が一方にのみ形成されたセパレータが得られる。このようなセパレータは、単セル用途のセパレータや、電極に対向しない側の面に冷却構造が形成されるセパレータとして使用される。積層枚数が4枚以上の場合には、積層枚数が3枚のセパレータに対して表層材と内層材との間の枚数が適宜増加する構成のセパレータとなる。
4.ステンレス製セパレータ
上記のような析出物を有する本実施の形態に係るステンレス鋼材をセパレータの構造、およびその加工方法については特に制限されない。
セパレータの構造の一例としては図1に示されるセパレータ5a,5bが挙げられる。
セパレータの製造方法は、ステンレス鋼材を切削加工などによって溝を形成する方法であっても、ステンレス鋼板をプレス加工によって凹凸を形成する方法であってもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
供試鋼の成分を表1に示す。
Figure 2010037614
供試鋼は高周波誘導加熱方式の150Kg真空溶解炉で溶製した。
次いで、発明材は供試鋼を所定の形状に切削加工した後、表層厚さ:中間層厚さ:表層厚さ=1:2:1となるように三層に積層し、固定(仮止め)後、全体を厚さ0.4mmのステンレス鋼薄板で覆い、内部を10−3Torr以下に真空排気した後に密閉して、接合部を真空密閉した。なお、これらに先だって、接合部表面は酸での洗浄の処理を施した。また、真空排気は油回転式(ロータリー)ポンプおよびこれに引き続いて油拡散式(ディフュージョン)ポンプを使用した。
他方、比較材13〜17については、所定の形状に切削加工した後、三層に積層し、固定(仮止め)し、比較材14〜17については接合部を真空排気し、比較材13については真空排気すること無く、次工程に供した。また、比較材18〜25については、所定の形状に切削加工した後、単層のままで次工程に供した。これらは表2にて諸特性と併せて示す。
Figure 2010037614
次いで、これらの発明材および比較材の全てを所定の温度に加熱、30分以上保持した後、熱間加工した。なお、熱間加工中に所定の温度以下になった場合には、再度、同様の加熱、保持を繰り返し、厚み6mmの鋼材に仕上げた。更に、この鋼材を1080℃にて焼鈍後、脱スケール処理をした後、冷間圧延と同様の焼鈍他の工程を繰り返し、厚み2.0mmの焼鈍材とした。
その後、得られた板材から試験片を採取し、以下の諸特性を調査した。
(1)ミクロ組織:圧延方向(R.D.)平行断面を観察できるように試験片を樹脂に埋込み、研磨して観察用試料とした。この試料の組織を光学顕微鏡を用いて観察し、境界部の有無を確認した。また、板表面部近傍に分散した化合物の写真を撮影し、化合物の粒径(μm)を測定し、平均値を算出した。
(2)引張特性:圧延方向(R.D.)と平行に採取したJIS−3B号試験片について、インストロン型試験機を用いて、0.2%耐力(Y.S.:N/mm)と伸び(El.:%)を測定した。
(3)接触電気抵抗:板表面を湿式600番のエメリー研磨し、水洗後、5%HNO+3%HF水溶液中で15分の超音波洗浄(温度:20〜70℃)し、水洗後、直ちに、負荷加重12Kg/cmでの市販のグラッシーカーボン板との接触電気抵抗率(Ωcm)を測定した。この評価におけるステンレス鋼試験片の接触面積は1cmであって、電気抵抗率の測定は4端子法にて行なった。
(4)電圧低下率:CrやFeの溶出等に起因すると考えられる電圧低下を次のようにして計測した。上記の焼鈍材から縦横いずれも80mmの板を切り出し、これを成形加工して、基本的形状は図1の5aに示され、溝深さが0.8mm、溝間隔が1.2mmであるコルゲート形状とした。このコルゲート板の両側の表面をSiC砥粒にて機械的にショット研磨仕上げし、40℃に保持した5%HNO+3%HF水溶液中で15分の超音波洗浄し、さらに試験直前に6%水酸化ナトリウム水溶液を用いたアルカリ噴霧脱脂処理を行いった。処理後のコルゲート板を流水で簡易水洗した後、バッチ型水槽で蒸留水への浸漬洗浄を3回行い、さらに蒸留水噴霧洗浄を4分間行って冷風ドライヤーで乾燥させた。こうして得られたコルゲート板を市販の固体高分子型燃料単セル電池セル(米国Electrochem社製 FC50)に基づくセルに組み込んで、初期(発生)電圧(V)と1時間経過後の電圧(V)を測定し、以下の式により電圧低下率(%)を測定した。
電圧低下率=100−100×(1時間経過後の電圧/初期電圧)
この計測に当たって、アノード極側燃料用ガスとしては99.9999%水素ガスを用い、カソード極側ガスとしては空気を用いた。電池本体は全体を78±2℃に保温すると共に、セル出側の排ガス水分濃度の測定結果に基づいて、電池内部の湿度制御を、入り側で行った。電池内部の圧力は1気圧とした。水素ガス、空気の電池への導入ガス圧は0.04〜0.20barの範囲で調整した。セル性能評価は、単セル電圧で500±20mA/cm−0.62±0.04Vが確認できた状態より継時的に測定を行った。
なお、単セル性能測定用システムとしては、米国スクリブナー社製890シリーズを基本とした燃料電池計測システムを改造して用いた。電池運転状態により、若干の特性に変化があると予想されるが、同一条件での比較評価である。
固体高分子型燃料電池の構造を概念的に示す図である。

Claims (6)

  1. 表面部が、質量%で、
    C :0.03%以下、 Si:0.01%以上1.5%以下、
    Mn:0.01%以上2.5%以下、 P :0.035%以下、
    S :0.01%以下、 Cr:16.0%以上30.0%以下、
    Ni:12.0%以上50.0%以下、 B :0.4%以上3.5%以下、
    Al:0.001%以下0.2%以上、 N :0.01%以上0.1%以下、
    Mo:7.0%以下 およびCu:5.0%以下
    を含有し、残部Feおよび不純物からなるとともに、17.0≦Cr+3Mo−2.5Bを満足する化学組成を備え、かつ、硼化物が分散し、
    厚み方向中心部が、質量%で、
    C :0.03%以下、 Si:0.01%以上1.5%以下、
    Mn:0.01%以上2.5%以下、 P :0.035%以下、
    S :0.01%以下、 Cr:16.0%以上30.0%以下、
    Ni:6.0%以上30.0%以下、 B :0.01%以下、
    Al:0.001%以上0.2%以下、 N :0.06%以上0.3%以下、
    Mo:7.0%以下 およびCu:5.0%以下
    を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
    0.2%耐力YSが300N/mm以上、かつ全伸びElが40%以上であること
    を特徴とする燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
  2. 前記表面部の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、REM、Mg、およびCaからなる群から選ばれる一種または二種以上を合計で0.5%以下含有する請求項1記載の燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
  3. 前記表面部に分散した硼化物の平均粒径が10μm以下である請求項1または2記載の燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
  4. 前記厚み方向中心部は、前記Ni.bal.が0未満の準安定オーステナイト相である
    請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
    Ni.bal.=30(C+N)+0.5Mn+Ni+8.2−1.1{1.5Si+(Cr−2.5B)+Mo}
  5. 請求項1から4のいずれかに記載される燃料電池セパレータ用ステンレス鋼の製造方法であって、
    複数のステンレス鋼材を積層させ、各々の鋼材の境界を10−2Torr以下に減圧した後、980℃以上、1230℃以下の温度に加熱・保持し、900℃以上の熱間加工で面積減少率20%以上になるように加工することを特徴とする燃料電池セパレータ用ステンレス鋼の製造方法。
  6. 請求鋼1から4に記載されるステンレス鋼からなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
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