JP2010037409A - 水性制振塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高度な制振性能を有する水性制振塗料組成物を提供すること。
【解決手段】少なくともマトリックス樹脂とフィラーとを含み、フィラーが高アスペクト比無機フィラーと、低アスペクト比無機フィラーと、有機フィラーとからなる。高アスペクト比無機フィラーは、重量平均アスペクト比が10〜200、含有率が全フィラー成分の35〜70重量%である。低アスペクト比無機フィラーは、重量平均アスペクト比が1〜5、含有率が全フィラー成分の10〜30重量%である。有機フィラーは、使用温度で結晶状態である有機材料であって、融点が40〜200℃、含有率が全フィラー成分の3〜40重量%である。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車、内装材、金属屋根、建材、家電機器、モーター、金属製品等の振動により騒音を発生させる製品に使用され、機械的振動や騒音を減衰させる水性制振塗料組成物に関する。
従来、車体等の鋼板には、制振性を付与するためにアスファルトシート等のシート型制振材が使用されている。このシート型制振材料を貼り付ける工程を自動化したり、作業環境を改善するため、高分子からなる水性制振塗料組成物を用いた制振材料が開発され、使用されている(非特許文献1)。
高分子を用いる制振材料は、高分子の粘弾性を利用するものであり、外部からの振動エネルギーを熱エネルギーに変換し、外部に放出させて振動エネルギーを損失させる機能を利用するものである。しかし、この減衰効果は、高分子のガラス転移温度(Tg)付近の温度領域にのみ制限される。そのため、高分子を用いる従来の制振材料では、振動減衰に必要な高い損失係数(tanδ)を示す使用可能温度範囲が狭いという問題がある。
これに対し、より広い温度範囲で制振性を発現させるために、ガラス転移温度が離れた2種類以上の高分子を混合することが行われている(特許文献1)。しかし、混合された高分子が非相溶性であれば、それぞれのガラス転移温度で損失係数のピーク(以下、損失係数のピークを与える温度範囲をピーク温度域という。)が現れ、幅広いピーク温度域を得ることができない。また、相溶性が良ければ単一のピーク温度となる。そこで、半相溶性の高分子を選択して混合することが試みられている。しかし、ピーク温度域の幅は広くなるが、温度ピークの高さが低くなり制振性能は低下するという問題がある。
また、2つ以上の高分子を相互網目構造にしたり、非相溶性の樹脂に対し相溶化剤を用いる方法も提案されている(特許文献2)。しかし、ピーク温度域の幅は広がるが、ピークの高さが低くなり制振性能が低下するという問題がある。
また、車体の軽量化や、製造コストを低減するため、マイカ等の無機フィラーを用いる方法も提案されている(特許文献3)。しかし、無機フィラーを添加すると、損失係数は上がるが、添加量を多くすると、マトリックス樹脂の制振性が低下するので、添加量を多くできないという問題がある。
特開平9−151335号公報 特開2001−152028号公報 特開平10−060311号公報 「高分子制振材料・応用製品の最新動向」、株式会社シーエムシー発行、1997年、p.21
近年、石油資源等のエネルギーの枯渇の問題や、二酸化炭素等の温暖化ガスの発生の問題に鑑み、自動車についても、消費燃料の低減や排気ガスの低減のため、車体の軽量化が大きな課題となっている。本発明は、上述の従来の水性制振塗料組成物の問題点を解決し、車体の軽量化に寄与する、高度な制振性能を有する水性制振塗料組成物を提供することを目的とした。
上記課題を解決するため、本発明の水性制振塗料組成物は、少なくともマトリックス樹脂とフィラーとを含み、フィラーが高アスペクト比無機フィラーと、低アスペクト比無機フィラーと、有機フィラーとからなり、高アスペクト比無機フィラーが、重量平均アスペクト比が20〜90、含有率が全フィラー成分の35〜70重量%であり、低アスペクト比無機フィラーが、重量平均アスペクト比が1〜5、含有率が全フィラー成分の10〜30重量%であり、有機フィラーが、使用温度で結晶状態である有機材料であって、融点が60〜160℃、軟化点が70〜140℃、含有率が全フィラー成分の3〜40重量%であることを特徴とする。
図1は、非特許文献1に記載されている従来の制振機構を示す模式図であり、横軸に温度、縦軸に損失係数(tanδ)の値を示している。損失係数のピークを与える温度(ピーク温度)が異なるAとBの2種類のポリマーをブレンドすると、相溶性が良い時は、ピーク温度が一つになり、広い温度範囲で制振性を示す。これに対し、相溶性が劣るときは、ピーク温度は一つにならず、損失係数は低下し、制振性が低下する。
これに対し、本発明では、有機フィラーに、使用温度で結晶状態にある有機材料を用いたので、有機フィラーはマトリックス樹脂に非相溶である。そのため、有機フィラーがマトリックス樹脂のピーク温度に影響を与えることがない。有機フィラーが結晶状態のため、剛性が高くなり、硬くて、制振性が大きな制振材料が得られる。
本発明においては、有機フィラーのSP値がマトリックス樹脂のSP値よりも1以上大きいことが好ましい。
ここでSP値とは、溶解度パラメーターの略号であり、物質の溶解性の傾向を表わす指標である。SP値は種々の方法で測定又は計算されるものであり、例えば、「ポリマーハンドブック 第2版(Polymer Handbook, Second Edition)」H. Burrell著:(1975年)に詳述されている。また重合体のSP値の計算については、例えば「塗装技術」第29巻第6号第161頁(1990年)に記載されている。
また、本発明においては、上記有機フィラーが、重量平均分子量が100〜3500の重合体であることが好ましい。
本発明によれば、広い温度範囲で高い損失係数を有する制振材料を製造することのできる水性制振塗料組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の水性制振塗料組成物は、少なくともマトリックス樹脂とフィラーとを含み、フィラーが高アスペクト比無機フィラーと、低アスペクト比無機フィラーと、有機フィラーとからなり、高アスペクト比無機フィラーが、重量平均アスペクト比が10〜200、含有率が全フィラー成分の35〜70重量%であり、低アスペクト比無機フィラーが、重量平均アスペクト比が1〜5、含有率が全フィラー成分の10〜30重量%であり、有機フィラーが、使用温度で結晶状態である有機材料であって、融点が40〜200℃、含有率が全フィラー成分の3〜40重量%であることを特徴とするものである。
マトリックス樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル系共重合体、(メタ)アクリル共重合体、スチレンアクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリイソプレン、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ポリスチレン、スチレンアクリル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等の高分子を用いることができる。好ましくは、(メタ)アクリル共重合体又はスチレンアクリル樹脂である。
本発明で用いる有機フィラーとしては、使用温度で結晶状態である有機材料であって、融点が40〜200℃であるものを用いることができる。より好ましくは、融点が50〜160℃である。有機フィラーの含有率は全フィラー成分の3〜40重量%が好ましい。40重量%を超えると損失係数が低くなり、3%より少ないと損失係数を高くする効果が十分でないからである。
有機フィラーの具体例として、スチレンアクリル系共重合オリゴマー、低分子66ナイロン、エチレンテレフタル酸オリゴマー、ウレタンオリゴマー、官能基を有する石油樹脂やロジン類、そして環状アミンを挙げることができる。ここで、官能基には、カルボン酸基、アミノ基、水酸基、グリシジル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、イミド基が含まれる。
環状アミンの具体例としては、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、(4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N'-イソプロピル-p-フェニレンジアミン等を挙げることができる。
さらに、有機フィラーのSP値がマトリックス樹脂のSP値よりも1以上大きいことが好ましい。高いSP値を持ち、分子容が小さく、蒸発エネルギーが大きなものが好ましい。凝集力が大きく剛性を大きくするからである。
そのため、スチレンアクリル系共重合オリゴマーに用いるモノマーとしては、SP値が大きくなるモノマーを用いる事が好ましい。SP値が大きくなるモノマーとしては、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸、イタコン酸、アクリルアマイド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート等を挙げることができる。なお、共重合体のSP値は、各構成単量体のSP値にその構成単量体の構成モル分率を乗じて合算して算出したものを用いることができる。
また、有機フィラーに重合体を用いる場合、その重量平均分子量は、100〜3500、より好ましくは500〜2000である。3500より大きいと母材の運動を阻害し易くなり、100より小さいとブリードしたり分離したりするからである。
また、有機フィラーは使用温度で結晶状態にある必要がある。結晶状態であることは、示差走査熱量(DSC)測定、X線測定等で確認できる。
なお、有機フィラーをマトリックス樹脂に分散させるには、マトリックス樹脂を含む樹脂エマルションや樹脂溶液に有機フィラーを含むエマルションや樹脂粉体を添加混合する方法を用いることができる。
本発明には、(フィラーの長径/フィラーの厚さ)で規定される重量平均アスペクト比が10〜200である高アスペクト比無機フィラーと、重量平均アスペクト比が1〜5の低アスペクト比無機フィラーを用いることができる。なお、高アスペクト比無機フィラーのアスペクト比はより好ましくは20〜90である。高アスペクト比無機フィラーには、マイカ、黒鉛、タルク等の層状無機フィラーを用いることができる。また、低アスペクト比無機フィラーには、炭酸カルシウム、クレイ、酸化チタン等の球状無機フィラーを用いることができる。
また、高アスペクト比無機フィラーの長径が100μm以下、あるいは厚み又は短径が50μm以下であることが好ましい。
高アスペクト比無機フィラーの添加量は、全フィラー成分の35〜70重量%、より好ましくは50〜65重量%である。35重量%より少ないと効果が充分でなく、70重量%を越えると摩擦効果は上がるが、密になりすぎて、本発明の効果が発現しにくくなるからである。また、低アスペクト比無機フィラーの添加量は、全フィラー成分の10〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%である。
また、マトリックスを架橋させる架橋剤を添加することもできる。一般に、マトリックス樹脂を架橋することにより制振材料の耐熱性を向上させることができるが、同時に損失係数が低下する。本発明では、架橋剤として、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、そして金属酸化物から成る群から選択された少なくとも1種の架橋剤を用いることにより、耐熱性を向上させながら、損失係数の低下を抑制することができる。これら架橋剤は、架橋性反応基として、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基又は酸無水物基を有するマトリックス樹脂と反応する。例えば、マトリックス樹脂に水酸基含有アクリル共重合体を用いる場合には、イソシアネート化合物が好ましい。また、マトリックス樹脂にカルボキシル基含有アクリル共重合体を用いる場合には、エポキシ化合物や金属酸化物が好ましい。
イソシアネート化合物には、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するものであり、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、イソシアノメチルシクロヘキサン等の脂環族ポリイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートを挙げることができる。好ましくは、ジイソシアネート化合物の誘導体である、ポリイソシアネートオリゴマーである。また、エポキシ化合物には、分子内に2個以上のエポキシ基を有する多価エポキシ化合物であり、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ポリグリシジルエーテル類、ポリグリシジルアミン類を挙げることができる。また、酸無水物化合物には、無水フタル酸等の芳香族酸無水物、無水マレイン酸等の脂環族酸無水物、ポリアジピン酸無水物等の脂肪族酸無水物を挙げることができる。架橋剤は、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、マトリックス樹脂と架橋剤との反応性を向上させるため触媒を用いることもできる。
本発明の制振材料用樹脂組成物は、種々の形状に成形して制振材料として用いることができる。例えば、樹脂組成物をホットプレス等により単体でシート状に成形して非拘束型制振材料として用いたり、変形しにくい拘束層の間に積層して拘束型制振材料として用いることもできる。また、塗料タイプの樹脂組成物として用い、種々の形状の基体に塗布して塗膜を形成し、基体との複合化して用いることもできる。
また、塗料タイプの樹脂組成物を用いる場合、マトリックス樹脂及び/又は有機フィラーに、水性樹脂エマルションを用いることが好ましい。水性樹脂エマルションは、乳化重合等公知の重合方法を用いて調製することができる。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜4.
マトリックス樹脂として高圧ガス工業株式会社製エマルジョン(TT−405、スチレンアクリル酸エステル共重合体、固形分50%、SP値約9.1)を用いた。高アスペクト比無機フィラーとして、重量平均粒子径が約90μm、重量平均アスペクト比が約70のマイカを用いた。低アスペクト比無機フィラーとして、重量平均粒子径が3μm、重量平均アスペクト比が約1の重質炭酸カルシウムを用いた。また、有機フィラーとして、SP値が10.5で、重量平均分子量が1800で、マトリックス樹脂と非相溶である結晶性スチレンアクリル系共重合オリゴマー(融点70℃)を用いた。マトリックス樹脂100部に対して、これらのフィラーを150部加えた。そして、常温で乾燥してフィルムを得た。なお、フィラーの配合割合を表1に示した。
実施例5.
有機フィラーをp-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン(融点約143℃)に変えた以外は、実施例4と同様の方法により行った。
実施例6.
高アスペクト比無機フィラーとして、重量平均粒子径が約30μm、重量平均アスペクト比が約20のマイカを用いた以外は、実施例4と同様の方法により行った。
比較例1〜10.
フィラーの配合割合が異なる以外は、実施例1と同様の方法で行った。
比較例11.
有機フィラーに、非晶性で重量平均分子量が4600のスチレンアクリル系共重合オリゴマーを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
比較例12.
高アスペクト比無機フィラーとして、重量平均粒子径が約10μm、重量平均アスペクト比が約5のマイカを用いた以外は、実施例4と同様の方法により行った。
(制振性評価方法)
試験法には中央加振法を用い、B&K社製の損失係数測定装置で測定した。
300×30×0.8mmの鋼板(SPCC)に塗布型制振材を面密度が2.4kg/mになるように塗布して、試験片を作製した。損失係数と曲げ剛性比はインピーダンス法で算出した。200Hzに換算した45℃の結果を表1に示す。
Figure 2010037409
ポリマーブレンド系における典型的な動的tanδ挙動を示す模式図である。

Claims (3)

  1. 少なくともマトリックス樹脂とフィラーとを含み、
    フィラーが高アスペクト比無機フィラーと、低アスペクト比無機フィラーと、有機フィラーとからなり、
    高アスペクト比無機フィラーが、重量平均アスペクト比が10〜200、含有率が全フィラー成分の35〜70重量%であり、
    低アスペクト比無機フィラーが、重量平均アスペクト比が1〜5、含有率が全フィラー成分の10〜30重量%であり、
    有機フィラーが、使用温度で結晶状態である有機材料であって、融点が40〜200℃、含有率が全フィラー成分の3〜40重量%である、水性制振塗料組成物。
  2. 上記有機フィラーのSP値が上記マトリックス樹脂のSP値よりも1以上大きい請求項1記載の水性制振塗料組成物。
  3. 上記有機フィラーが、重量平均分子量が100〜3500の重合体である請求項1又は2に記載の水性制振塗料組成物。
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