以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一態様に係る積層品を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す積層品の一部を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す積層品のIII−III線に沿った断面図である。図4は、図2に示す積層品のIV−IV線に沿った断面図である。
この積層品1aは、転写箔である。図1及び図2では、転写箔1aをその背面側から観察した様子を描いている。また、図1乃至図4では、この背面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、X方向及びY方向に対して垂直な方向をZ方向としている。
この転写箔1aは、図3及び図4に示すように、表示体層10aと支持体20aと接着層30aとを含んでいる。支持体20aは、表示体層10aの一方の主面を剥離可能に支持している。接着層30aは、表示体層10aの他方の主面を被覆している。
表示体層10aの一部は、物品、例えば真正品であることが確認されるべき物品に支持させる表示体又はラベルとして使用する。図2において一点鎖線L0で囲んだ領域は、表示体層10aのうち表示体又はラベルとして使用する部分、即ち表示体部に相当している。また、図2において一点鎖線L0で囲んだ領域と隣接した領域は、表示体部と隣り合った周辺部に相当している。
表示体層10aは、保護層11と第1光透過層12と複屈折性層13と第2光透過層14と反射層15とを含んでいる。
保護層11は、この転写箔1aを用いて得られる表示体の最表面層として使用する層である。保護層11は、支持体20aに支持されている。例えば、保護層11は、支持体20a上に形成される。
保護層11は、光透過性であって、例えば透明である。保護層11は、僅かに光散乱性を有していてもよいが、典型的には無色透明である。保護層11は、例えば樹脂からなる。
典型的には、この転写箔1aにおいて、保護層11と支持体20aとは層間接着強さが最も小さい。即ち、この保護層11は、剥離層を兼ねている。表示体層10aと支持体20aとの層間接着強さが最も小さければ、保護層11は省略してもよい。
第1光透過層12は、保護層11を間に挟んで支持体20aに支持されている。光透過層12は、光透過性であって、例えば透明である。光透過層12は、僅かに光散乱性を有していてもよいが、典型的には無色透明である。光透過層12は、例えば熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂からなる。
光透過層12の背面は、長さ方向が揃った複数の溝が設けられた界面部と、この界面部とは異なるレリーフ構造が設けられているか又はレリーフ構造が設けられていない界面部とを含んでいる。具体的には、光透過層12の背面は、図3及び図4に示す界面部IF1乃至IF4を含んでいる。
界面部IF1は、図2に示す破線L1によって囲まれた星形の領域に対応している。これら界面部IF1は、Y方向に配列している。ここでは、一例として、各界面部IF1には、長さ方向がY方向に揃った複数の溝が設けられているとする。
界面部IF2は、図2に示す破線L1と破線L2との間に挟まれた領域に対応している。即ち、各界面部IF2は、星型の界面部IF1を取り囲み、円形の外周を有している領域である。ここでは、一例として、界面部IF2は平坦面であるとする。
界面部IF3は、図2に示す破線L2と破線L3との間に挟まれた領域に対応している。即ち、界面部IF3は、破線L2によって囲まれた円形の領域に対応した開口と破線L3によって囲まれた十字形状の領域に対応した開口とが設けられた領域である。ここでは、一例として、界面部IF3には、長さ方向がX方向に揃った複数の溝が設けられているとする。
界面部IF4は、図2に示す破線L3によって囲まれた十字形の領域に対応している。界面部IF4には、これと隣接した界面部IF3とは異なるレリーフ構造が設けられている。ここでは、一例として、界面部IF4には、長さ方向がY方向に揃った複数の溝が設けられているとする。
界面部IF1、IF3及びIF4の溝は、後述する複屈折性層13が含んでいるメソゲンを溝の長さ方向に配向させる役割を果たしている。これら溝には、様々な配置を採用することができる。例えば、界面部IF1、IF3及びIF4には、複数の溝を幅方向に等間隔で平行に並べた構造を採用することができる。
界面部IF1、IF3及びIF4の各々において、これら溝は、完全に平行でなくてもよい。但し、これらの溝が平行に近いほど、界面部IF1、IF3及びIF4に対応した複屈折性層13の各々の部分において、メソゲンの長軸が揃い易くなる。これらの溝が為す角度は、例えば5°以下とし、好ましくは3°以下とする。
界面部IF1、IF3及びIF4の各々において、これら溝は、縦横に並べてもよい。また、溝の長さは、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。また、長さ方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。更に、幅方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。
例えば、界面部IF1、IF3及びIF4の各々には、互いに長さが等しい溝を縦横に並べてもよい。溝を略平行とし且つピッチを適宜設定することなどにより、これら溝で回折格子を構成することができる。
或いは、界面部IF1、IF3及びIF4の各々には、様々な長さの溝をランダムに並べてもよい。この場合、これら溝で一方向性拡散パターンを形成することができる。なお、この一方向性拡散パターンは、溝の長さ方向に垂直な面内での拡散能が、Z方向及び溝の長さ方向に平行な面内での拡散能と比較してより大きい光拡散特性、即ち、光散乱異方性を示すパターンである。ここでは、一例として、界面部IF1、IF3及びIF4の各々に設けられた溝は、回折格子を構成していることとする。
界面部IF1乃至IF4は、図2を参照しながら説明したのとは異なるパターンを有していてもよい。例えば、界面部IF4の各々は、同心円状のパターンを有していてもよい。或いは、界面部IF4の各々は、頂点が互いに接するように配置された複数の多角形からなるパターン、例えば、対角線が平行になるように互いの頂点を接触させた2つの直角四角形からなるパターンを有していてもよい。
光透過層12の背面は、界面部IF1、IF3及びIF4とは異なるレリーフ構造が設けられた1つ以上の界面部を更に含んでいてもよい。例えば、光透過層12の背面は、界面部IF1、IF3及びIF3に設けられた溝とは異なる方向に長さ方向が揃った複数の溝が設けられた1つ以上の界面部を更に含んでいてもよい。また、光透過層12の背面から、界面部IF1乃至IF4の1つ又は2つを省略してもよい。
光透過層12のレリーフ構造は、例えば、感光性樹脂材料に、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法や、電子ビームによってパターンを描画する方法により形成することができる。或いは、表面レリーフ型ホログラムの製造で行われているように、微細な線状の凸部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、このレリーフ構造は、支持体20a上に保護層11と熱可塑性樹脂層とをこの順に形成し、熱可塑性樹脂層の表面に、線状の凸部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、即ち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、支持体20a上に保護層11を形成し、この保護層11上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら支持体20a側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法を利用することも可能である。
なお、通常は、原版のレリーフ構造を転写して反転版を製造し、この反転版のレリーフ構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版を製造し、この反転版のレリーフ構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
これらの方法によれば、1つの面内に、溝の長さ方向、ピッチ、深さ、幅及び長さの少なくとも1つが異なる複数の領域を形成することができる。
先の原版は、例えば、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法、電子ビームによってパターンを描画する方法、又はバイトによって切削する方法により得られた母型の電鋳を行うことにより得られる。
これら溝の深さは、例えば0.05μm乃至1μmの範囲とし、典型的には0.1μm乃至1μmの範囲とする。また、溝の長さは、例えば0.1μm乃至1μmの範囲内とし、典型的には0.5μm乃至1μmの範囲内とする。溝のピッチは、例えば0.1μm以上であり、典型的には0.75μm以上である。また、溝のピッチは、例えば10μm以下であり、典型的には2μm以下である。メソゲンを高い秩序度で配向させるには、溝のピッチは小さいことが有利である。
界面部IF1、IF3及びIF4は、それらに設けられている溝のピッチ、幅及び深さの少なくも1つが更に異なっていてもよい。
界面部IF1、IF3及びIF4間で溝のピッチ、幅及び深さの少なくも1つが更に異なっている場合、界面部IF1、IF3及びIF4は、それらに設けられている溝の長さ方向が等しくてもよい。
溝によってメソゲンの配向方向を制御する代わりに、ラビング処理及び光配向処理などの配向処理を施してもよい。即ち、界面部IF1、IF3及びIF4の1つ以上から溝を省略してもよい。
複屈折性層13は、光透過層12の背面を被覆している。複屈折性層13の光透過層12と向き合った主面には、上記の溝に対応したレリーフ構造が設けられている。
複屈折性層13は、光透過層12の背面全体を被覆していてもよく、光透過層12の背面の一部のみを被覆していてもよい。ここでは、一例として、複屈折性層13は、光透過層12の背面全体を被覆しているとする。
複屈折性層13は、液晶材料を固化してなる。典型的には、複屈折性層13は、流動性を有する重合性液晶材料を紫外線又は熱により硬化させてなる高分子複屈折性層である。この液晶材料は、例えばネマチック液晶材料である。
複屈折性層13のうち、界面部IF1を被覆している部分と、界面部IF2を被覆している部分と、界面部IF3を被覆している部分とは、メソゲンの配向構造及び/又は配向方向が互いに異なっている。そして、複屈折性層13のうち、界面部IF3を被覆している部分と、界面部IF4を被覆している部分とは、メソゲンの配向構造及び/又は配向方向が互いに異なっている。
複屈折性層13のうち界面部IF1を被覆している部分では、メソゲンの配向方向は、界面部IF1に設けられている溝の長さ方向に対してほぼ平行である。ここでは、複屈折性層13のうち界面部IF1を被覆している部分において、メソゲンはY方向に対してほぼ平行に配向している。
複屈折性層13のうち界面部IF2を被覆している部分では、メソゲンは、界面部IF1を被覆している部分ほど高い秩序度で配向していないか、又は、配向していない。ここでは、一例として、この部分では、メソゲンは配向していないこととする。即ち、この部分は、光学的に等方性であるとする。なお、この部分では、例えば、界面部IF2にラビング処理などの配向処理を施すことにより、メソゲンを比較的高い秩序度で配向させることができる。
複屈折性層13のうち界面部IF3を被覆している部分では、メソゲンの配向方向は、界面部IF3に設けられている溝の長さ方向に対してほぼ平行である。ここでは、複屈折性層13のうち界面部IF3を被覆している部分において、メソゲンはX方向に対してほぼ平行に配向している。
複屈折性層13のうち界面部IF4を被覆している部分では、メソゲンの配向方向は、界面部IF4に設けられている溝の長さ方向に対してほぼ平行である。ここでは、複屈折性層13のうち界面部IF4を被覆している部分において、メソゲンはY方向に対してほぼ平行に配向している。
複屈折性層13のうち界面部IF1、IF3及びIF4を被覆した部分の各々は、メソゲンが配向しているので、複屈折性を有している。複屈折性層13のうち界面部IF1及びIF4を被覆した部分ではメソゲンはY方向に配向しているので、それらのX方向についての屈折率は常光線屈折率noであり、Y方向についての屈折率は異常光線屈折率neである。他方、複屈折性層13のうち界面部IF3を被覆した部分ではメソゲンはX方向に配向しているので、そのX方向についての屈折率は異常光線屈折率neであり、Y方向についての屈折率は常光線屈折率noである。屈折率neは屈折率noよりも大きいので、複屈折性層13のうち界面部IF1及びIF4を被覆した部分の遅相軸はY方向と平行であり、進相軸はX方向と平行である。そして、複屈折性層13のうち界面部IF3を被覆した部分の遅相軸はX方向と平行であり、進相軸はY方向と平行である。
複屈折性層13は、例えば、以下の方法により形成することができる。まず、上述したレリーフ構造が設けられた光透過層12に、光重合性を有するネマチック液晶材料を塗布する。次いで、液晶材料に紫外線を照射して、それらの重合を生じさせる。これにより、メソゲンの長軸の向きが固定された複屈折性層13を得ることができる。
複屈折性層13を支持体20aと光透過層12との間に介在させてもよく、転写箔1aから光透過層12を省略してもよい。例えば、上述したレリーフ構造が設けられた下地層上に複屈折性層13を形成し、この複屈折性層13を、その平坦面が支持体20aと向き合うように接着剤を介して支持体20aに貼り付ける。この下地層を光透過層12として用いた場合には、複屈折性層13が支持体20aと光透過層12との間に介在した構造が得られる。また、複屈折性層13から光透過層12を剥離した場合には、光透過層12を省略した構造が得られる。
複屈折性層13の材料として、ネマチック液晶材料の代わりに、他の液晶材料を使用してもよい。例えば、複屈折性層13の材料として、コレステリック液晶材料又はスメクチック液晶材料を用いてもよい。
第2光透過層14は、複屈折性層13の背面を被覆している。光透過層14は、光透過性であって、典型的には無色である。光透過層14は、透明であってもよく、光散乱性を有していてもよい。光散乱層14は、例えば熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂からなる。光散乱層14は、省略してもよい。
光透過層14の背面には、複数の凹部及び/又は凸部からなる光散乱構造がレリーフ構造として設けられている。このレリーフ構造は、光透過層12に関して上述したのと同様の方法により形成することができる。
この光散乱構造は、光透過層14の背面全体に設けられていてもよく、光透過層14の背面の一部のみに設けられていてもよい。後者の場合、光透過層14の背面は、光散乱構造と回折構造とがレリーフ構造として設けられていてもよい。或いは、光透過層14の背面は、光散乱構造がレリーフ構造として設けられた部分と、レリーフ構造が設けられていない部分とを含んでいてもよい。或いは、光透過層14の背面は、光散乱構造がレリーフ構造として設けられた部分と、回折構造がレリーフ構造として設けられた部分と、レリーフ構造が設けられていない部分とを含んでいてもよい。
典型的には、光透過層14の背面のうち、後述する潜像に対応した部分の少なくとも一部、例えばアライメントマークとして使用する潜像に対応した部分の少なくとも一部に光散乱構造を設ける。即ち、典型的には、この積層品1aのうち、後述する潜像に対応した部分の少なくとも一部、例えばアライメントマークとして使用する潜像に対応した部分の少なくとも一部に光散乱性を付与する。
光透過層14の背面のうち、光散乱構造が設けられている部分は、その全体に亘って光散乱構造の光学特性が一定であってもよく、光散乱構造の光学特性が異なる複数の領域を含んでいてもよい。また、光透過層14の背面のうち、回折構造が設けられている部分は、その全体に亘って回折構造の光学特性が一定であってもよく、回折構造の光学特性が異なる複数の領域を含んでいてもよい。ここでは、一例として、光透過層14の背面全体に等方的な光散乱特性を示す光散乱構造が設けられており、その光学特性は、光透過層14の背面全体に亘って一定であるとする。
反射層15は、光透過層14の背面の一部を被覆している。具体的には、反射層15は、図2に示す破線L1によって囲まれた領域内で星形に開口している。反射層15は、他の位置で開口していてもよい。或いは、反射層15は、光透過層14の背面全体を被覆していてもよい。或いは、反射層15は、省略してもよい。
反射層15は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法によって得られる金属層である。
反射層15として金属層を使用する代わりに、単層又は多層の誘電体層を使用してもよい。多層の誘電体層、即ち誘電体多層膜は、例えば、硫化亜鉛などの高屈折率材料とフッ化マグネシウムなどの低屈折率材料とを交互に蒸着することによって得られる。
反射層15として金属層を使用する代わりに、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる層を使用していてもよい。
光透過性樹脂としては、例えば、天然ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂、ニトリルゴム、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリベンゾイミダゾール、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、メラミン樹脂、レゾルシノール樹脂、又はそれらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
金属粒子は、金属又は合金からなる。この金属又は合金としては、例えば、アルミニウム、白金、金、銀、銅、チタン、ビスマス、ゲルマニウム、インジウム、錫、又はそれらの1つ以上を含んだ合金を使用することができる。これらの中でも、アルミニウムは、可視域、赤外域及び近紫外域の全体に亘って反射率が高い。しかも、アルミニウムは、酸化に対する耐性が高い。従って、金属粒子として、アルミニウム粒子を使用することが好ましい。
光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる反射層15は、偏光を照射した場合、この偏光を、その偏光性をほぼ維持したまま反射する。即ち、この反射層15は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法によって得られる金属層とほぼ同様に機能させることができる。
加えて、この場合、反射層15として金属層を使用した場合と比較して、隣接した層との接触部においてより高い層間接着強さを達成できる。即ち、この場合、反射層14として金属層を使用した場合と比較して、光透過層14と反射層15との界面及び/又は反射層15と接着層30aとの界面における剥離を生じ難くすることができる。
また、アルミニウムなどの金属は、アルカリ溶液に可溶である。そのため、反射層15として金属層を使用した場合は、その端面から金属が溶解する可能性がある。これに対し、反射層15として光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる層を使用した場合、金属粒子の溶解は樹脂によって防止される。即ち、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる反射層15は劣化を生じ難い。
しかも、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる反射層15は、例えば、金属粒子の粒径、形状及び含有率の少なくとも1つを変更すると、その光散乱能が変化する。
反射層15として金属層を使用する代わりに、上記の光透過性樹脂と非金属粒子とを含んだ混合物からなる層を使用していてもよい。この場合、反射層15として光透過性樹脂と非金属粒子とを含んだ混合物からなる層を使用した場合と同様に、光透過層14と反射層15との界面及び/又は反射層15と接着層30aとの界面における剥離を生じ難くすることができる。また、この場合、反射層15として光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる層を使用した場合と比較して、より高い光散乱性を達成できる。非金属粒子の材料としては、例えば、シリカなどの無機材料又はアクリル樹脂などの有機材料を使用することができる。
この表示体層10aは、他の層を更に含んでいてもよい。例えば、表示体層10aは、印刷パターンなどの着色パターンを更に含んでいてもよい。
以下、表示体層10aのうち、反射層15の開口に対応した部分を表示部DA1aと呼び、界面部IF1と反射層15とが向き合っている部分を表示部DA1bと呼ぶ。そして、表示体層10aのうち、界面部IF2乃至IF4に対応した部分をそれぞれ表示部DA2乃至DA4と呼ぶ。
支持体20aは、表示体層10aの前面を剥離可能に支持している。支持体20aは、例えば、樹脂層を含んだフィルム又はシートである。この樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリスチレン又はエポキシ樹脂を使用することができる。支持体20aは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
支持体20aは、光透過性を有していてもよく、光透過性を有していなくてもよい。支持体20aが光透過性を有している場合、例えば、支持体20aが透明である場合、前面側から支持体20aを介して表示体層10aを観察することができる。また、支持体が高い反射率を有している場合、例えば、支持体が鏡面反射性であるか又は白色である場合、複屈折性層13の観察に反射光を利用することが容易である。
接着層30aは、表示体層10aの背面を被覆している。接着層30aは、例えば熱可塑性樹脂などの感熱接着剤からなる。
接着層30aは、表示体層10aの背面全体を被覆していてもよく、表示体層10aの背面の一部のみを被覆していてもよい。後者の場合、接着層30aは、表示体層10aの背面のうち一点鎖線L0によって囲まれた領域を被覆するように設ける。接着層30aは、省略することができる。
図5は、図1乃至図4に示す積層品を用いて得られるラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図である。
このラベル付き物品は、ID(identification)カードである。このラベル付き物品は、物品50と表示体10’と図示しない接着層とを含んでいる。
表示体10’は、図1乃至図4に示す転写箔1aが含んでいる表示体層10aのうち、図2の一点鎖線L0で囲まれた部分に相当している。表示体10’は、その反射層15が物品50と向き合うようにこれに貼り付けられている。
接着層は、図1乃至図4に示す転写箔1aが含んでいる接着層30aのうち、図2の一点鎖線L0で囲まれた部分に相当している。この接着層は、表示体10’と物品50との間に介在している。
物品50は、カードである。この物品50は、カード基材51と印刷層52とを含んでいる。カード基材51は、例えば、プラスチックからなる。印刷層52は、カード基材51上に形成されている。
なお、図5には、ラベル付き物品としてIDカードを例示しているが、ラベル付き物品は、これに限られない。例えば、ラベル付き物品は、IC(integrated circuit)カード、磁気カード及び無線カードなどの他のカードであってもよい。或いは、ラベル付き物品は、商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、ラベル付き物品は、紙幣又は預金若しくは貯金通帳であってもよい。このように、表示体10’は、様々な印刷物に適用することができる。
また、ラベル付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品に表示体10’を支持させてもよい。例えば、表示体10’は、美術品などの高級品に支持させてもよい。
次に、この表示体10’に白色光を照射し、これを肉眼で観察した場合に見える像について説明する。なお、白色光とは、可視領域内の全ての波長の非偏光からなる光である。また、ここでは、物品50の表面のうち表示体10’が貼り付けられている領域は、光吸収性であるとする。
図6は、図5に示すラベル付き物品の表示体が肉眼で観察した場合に表示する像の一例を概略的に示す平面図である。
表示体10’に略正面方向から白色光を照射し、これを正面から肉眼で観察した場合、図6に示すように、表示部DA1aは表示部DA1b、DA2及びDA3からの判別が容易であり、表示部DA1b、DA2及びDA3は互いからの判別が不可能又は困難である。これについて、より詳細に説明する。
表示部DA1aに入射した照明光としての白色光は、図3に示す保護層11、光透過層12、複屈折性層13、光透過層14及び接着層30aをこの順に透過する。そして、この光の一部は図5及び図6に示す物品50の表面によって吸収され、残りの一部は物品50の表面によって反射される。この反射光は、図3に示す接着層30a、光透過層14、複屈折性層13、光透過層12及び保護層11をこの順に透過する。観察者は、この反射光を表示光として知覚する。従って、表示部DA1aは、物品50の表面とほぼ等しい色に見える。
表示部DA1bに入射した照明光としての白色光は、図3に示す保護層11及び光透過層12をこの順に透過して、界面部IF1に入射する。界面部IF1に設けられた溝は、回折格子を構成している。従って、これら入射光の一部は、回折光として複屈折性層13に入射する。
複屈折性層13を透過した回折光は、光透過層14を透過し、反射層15によって反射される。反射層15は光散乱性を有しているので、この反射光は散乱光である。
この散乱光は、光透過層14と複屈折性層13とをこの順に透過する。界面部IF1には回折格子が設けられているが、反射層15からの反射光が散乱光であるのに加え、通常の環境中では照明光の入射角も様々である。それゆえ、反射層15からの反射光は、散乱光として光透過層12及び保護層11をこの順に透過する。観察者は、これら散乱光を表示光として知覚する。従って、表示部DA1bは銀白色に見える。
表示部DA2は、その平面形状を除き、下地面に溝が設けられておらず、メソゲンが配向していない点でのみ、表示部DA1bとは異なっている。先の説明から明らかなように、表示部DA2bを肉眼で観察した場合、回折格子は表示色や明るさに影響を与えない。従って、表示部DA2も銀白色に見える。
表示部DA3と表示部DA1bとは、その平面形状を除き、回折格子を構成している溝の長さ方向のみが異なっている。先の説明から明らかなように、表示部DA1bを肉眼で観察した場合、回折格子は表示色や明るさに影響を与えない。従って、表示部DA3も銀白色に見える。
このように、表示部DA1aは物品50の表面とほぼ等しい色に見え、表示部DA1b、DA2及びDA3は銀白色に見える。そして、表示部DA1b、DA2及びDA3は、明るさがほぼ等しい。従って、表示体10’に白色光を照射し、これを正面から肉眼で観察した場合、図6に示すように、表示部DA1aは表示部DA1b、DA2及びDA3からの判別が容易であり、表示部DA1b、DA2及びDA3は互いからの判別が不可能又は困難である。
なお、表示体10’に白色光を照射し、これを肉眼で観察する場合、表示部DA1a、DA1b、DA2及びDA3の表示色は、観察角度を変化させても変化しない。また、観察角度を傾けたまま、表示体10’をその法線の周りで回転させても、表示部DA1a、DA1b、DA2及びDA3の表示色は変化しない。
次に、偏光子を介して表示体10’を観察した場合に見える像について説明する。ここでは、一例として、偏光子として直線偏光フィルムを使用することとする。
図7は、図5に示すラベル付き物品の表示体と直線偏光フィルムとを重ねた場合に観察可能な像の一例を概略的に示す平面図である。
図7では、図5に示すラベル付き物品と吸収型の直線偏光フィルム70とを、偏光フィルム70側から表示体10’を見た場合に、偏光フィルム70の透過軸がX方向に対して反時計回りに45°の角度を為すように重ねている。このような配置を採用し、これを正面から観察すると、図7に示すように、表示部DA1b及びDA3は表示部DA1a及びDA2からの判別が容易であり、互いからの判別が不可能又は困難である。そして、表示部DA1a及びDA2は、互いからの判別が容易である。これについて、より詳細に説明する。
直線偏光フィルム70に照明光として白色光を照射すると、直線偏光フィルム70は、その透過軸に平行な偏光面(電場ベクトルの振動面)を有する直線偏光を透過させ、その透過軸に垂直な偏光面を有する直線偏光を吸収する。
表示部DA1aにおいて、複屈折性層13は光学的に等方性である。従って、表示部DA1aは、肉眼で観察した場合と同様に、物品50の表面とほぼ等しい色に見える。
表示部DA1bに入射した直線偏光は、図3に示す保護層11及び光透過層12をこの順に透過し、界面部IF1に入射する。界面部IF1に設けられた溝は、回折格子を構成している。従って、これら直線偏光の一部は、回折光として複屈折性層13に入射する。
複屈折性層13のうち表示部DA1b内に位置した領域では、メソゲン基はY方向と略平行に配向している。即ち、表示部DA1b内では、複屈折性部分130aの遅相軸は、偏光フィルム70側から見て、偏光フィルム70の透過軸に対して反時計回りに45°回転させた方向に平行である。そして、この入射光は、散乱光であるので、正面方向へ進行する光成分と、斜め方向へ進行する光成分とを含んでいる。従って、例えば、先の直線偏光は、表示部DA1bにおける複屈折性層13の複屈折性と光路長とに応じて、円偏光、楕円偏光又は直線偏光へと変換される。ここでは、複屈折性層13が射出した光のうち、右円偏光及び右楕円偏光についてのみ説明する。
これら右偏光及び右楕円偏光は、光透過層14を透過し、反射層15によって反射される。右円偏光及び右楕円偏光は、それぞれ、反射層15によって反射されることにより、左円偏光及び左楕円偏光へと変換される。また、反射層15は光散乱性を有しているので、この反射光は散乱光である。
この散乱光としての左円偏光及び左楕円偏光は、光透過層14を透過し、複屈折性層13に入射する。この入射光は、散乱光であるので、正面方向へ進行する光成分と、斜め方向へ進行する光成分とを含んでいる。正面方向へ進行する光成分のうち、特定波長λ0の右円偏光は、複屈折性層13のうち表示部DA1b内に位置した領域を透過することにより偏光面が偏光フィルム70の透過軸に対して垂直な直線偏光へと変換される。そして、残りの光成分は、複屈折性層13のうち表示部DA1b内に位置した領域を透過することにより、右楕円偏光若しくは右円偏光又は左楕円偏光若しくは円偏光へと変換される。
複屈折性層13が射出した反射層15からの反射光は、光透過層12と保護層11とをこの順に透過する。界面部IF1には回折格子が設けられているが、反射層15からの反射光が散乱光であるのに加え、通常の環境中では照明光の入射角も様々である。それゆえ、反射層15からの反射光は、散乱光として表示部DA1bから射出される。
これから明らかなように、偏光フィルム70の透過軸に対して平行な偏光面を有する光成分のみに着目した場合、表示部DA1bに入射する光成分の強度に対する表示部DA1bが射出する光成分の強度の比は、波長依存性を有することとなる。換言すれば、偏光フィルム70に入射する照明光の強度に対する偏光フィルム70が射出する表示光の強度の比は、波長依存性を有することとなる。従って、表示部DA1bは、着色して見える。なお、表示部DA1bが着色して見える理由については、後で数式を参照しながら説明する。
表示部DA2は、その平面形状を除き、配向層12に溝が設けられておらず、メソゲンが配向していない点でのみ、表示部DA1bとは異なっている。従って、表示部DA2が射出する光は、理想的には、偏光フィルム70によって吸収されることなく、偏光フィルム70を透過する。それゆえ、表示部DA2は、銀白色に見える。
表示部DA3と表示部DA1bとは、その平面形状を除き、回折格子を構成している溝の長さ方向が90°異なっている点でのみ相違している。それゆえ、表示部DA3は、円偏光又は楕円偏光の偏光面の回転方向が逆であること以外は、表示部DA1bについて説明したのと同様に振舞う。従って、表示部DA3は、表示部DA1bと同様に着色して見える。
このように、表示部DA1aは物品50の表面とほぼ等しい色に見え、表示部DA1b及びDA3は着色して見え、表示部DA2は銀白色に見える。そして、表示部DA1b及びDA3は、明るさがほぼ等しい。従って、表示体10’に偏光フィルム70を重ね、これに白色光を照射して正面から観察した場合、図7に示すように、表示部DA1b及びDA3は、表示部DA1a及びDA2からの判別が容易であり、互いからの判別が不可能又は困難である。そして、表示部DA1a及びDA2は、互いからの判別が容易である。
ここで、表示部DA1bが着色して見える理由について、数式を参照しながら説明する。なお、複屈折性層13のうち表示部DA1b内に位置した領域は、波長λ0の光に対して四分の一波長板としての役割を果たすとする。
偏光フィルム70が法線方向に射出した波長λ0の直線偏光は、偏光面がX方向に垂直な直線偏光成分と偏光面がY方向に垂直な直線偏光成分との和であると考えることができる。上記の通り、複屈折性層13のうち表示部DA1b内に位置した領域のX方向についての屈折率は常光線屈折率noであり、Y方向についての屈折率は異常光線屈折率neである。従って、この領域は、これら直線偏光成分に、往路と復路との各々でλ0/4の位相差を与える。即ち、複屈折性層13のうち表示部DA1b内に位置した領域は、これら直線偏光成分に合計でλ0/2の位相差を与える。そのため、表示部DA1bが法線方向に射出する波長λ0の光は、偏光フィルム70を透過できない。
ところで、リターデイションReは、下記等式(1)に示すように、複屈折性層の膜厚dとその複屈折性Δnとに依存する。
Re=Δn×d …(1)
ここで、Δn=ne−noである。
一対の直線偏光フィルムをそれらの透過軸が直交するように向かい合わせ、それらの間に複屈折性層をその光学軸が直線偏光フィルムの透過軸に対して角度θを為すように介在させる。一方の直線偏光フィルムをその法線方向から波長λの光で照明した場合、複屈折性層に入射する光の強度をI0とし、他方の直線偏光フィルムを透過する光の強度をIとすると、強度Iは、下記等式(2)で表すことができる。
I=I0×sin2(2θ)×sin2(Re×π/λ) …(2)
複屈折性Δnは波長依存性を有しており、複屈折性Δnと波長nとは比例関係にはない。それゆえ、等式(2)から明らかなように、透過光のスペクトルは、入射光のスペクトルとは異なるプロファイルを有することとなる。
このように、複屈折性層を一対の直線偏光フィルムで挟むと、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる透過光を得ることができる。これと同様に、複屈折性層を直線偏光フィルムと反射層とで挟んだ場合にも、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる反射光を得ることができる。このような理由で、表示部DA1bは着色して見える。
図8は、図5に示すラベル付き物品の表示体と直線偏光フィルムとを重ねた場合に観察可能な像の他の例を概略的に示す斜視図である。
図8に示すように、図7に示す状態から観察方向をX方向に垂直な面内で傾けると、表示部DA1b及びDA3の表示色が互いに異なる色へと変化する。その結果、表示部DA1b及びDA3の互いからの判別が容易になる。例えば、法線方向から観察した場合に表示部DA1b及びDA3はオレンジ色に見えていたとすると、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けることにより、表示部DA1bは緑色へと変化し、表示部DA3は赤色へと変化する。表示部DA1b及びDA3で生じる色変化の理由を以下に説明する。
観察角度θを傾けると、複屈折性層の実効的な複屈折性Δn’が複屈折性Δnから変化するのに加え、以下の等式(3)に示す複屈折性層の実効的な膜厚d’が複屈折性層の実際の膜厚dの2倍よりも大きくなる。
d’=2d/cosθ …(3)
即ち、観察角度に応じて、上記等式(1)に示すリターデイションReが変化し、それゆえ、上記等式(2)に示す強度Iが変化する。その結果、観察角度に応じて、表示光のスペクトルのプロファイルが変化する。
複屈折性Δn’は、照明光の入射角と、照明光の伝搬方向に平行な直線の複屈折性層主面上への投影が複屈折性層の光学軸に対して為す角度とに依存する。具体的には、表示部DA3では、複屈折性層13の複屈折性Δn’は、その光学軸はX方向と平行であるので、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けても変化しない。これに対し、表示部DA1bでは、複屈折性層13の複屈折性Δn’は、その光学軸はY方向に平行であるので、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けるのに伴って変化する。
このように、表示部DA3は、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けた場合、実効的な膜厚d’の変化に起因した色変化を生じる。これに対し、表示部DA1bは、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けた場合、実効的な膜厚d’の変化と実効的な複屈折性Δn’の変化とに起因した色変化を生じる。このため、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けると、表示部DA1b及びDA3の表示色は互いに異なる色へと変化し、その結果、表示部DA1b及びDA3の互いからの判別が容易になる。
図9は、図5に示すラベル付き物品の表示体と直線偏光フィルムとを重ねた場合に観察可能な像の更に他の例を概略的に示す斜視図である。
図9には、図8に示す状態から、ラベル付き物品を偏光フィルム70と重ねたまま、その法線の周りで90°回転させた場合に観察可能な像を描いている。
表示部DA1b及びDA3は、この回転角を変化させると、回折格子の実効的な格子定数が変化する。そして、観察方向を斜めとしたまま、ラベル付き物品を偏光フィルム70と共にその法線の周りで90°回転させると、表示部DA1bと表示部DA3との間で表示色が入れ替わる。なお、図9を参照しながら説明した色変化は、図8に示す状態から、ラベル付き物品のみをその法線の周りで90°回転させた場合にも生じる。
このように、表示体10’は、光学的特徴を有している。それゆえ、例えば、図5のラベル付き物品を真正品とした場合、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することは容易である。また、この表示体10’を偽造することは困難であり、表示体10’を物品50から剥がして再使用することも困難である。表示体10’を使用すると、高い偽造防止効果を達成できる。
次に、転写箔1aの製造方法について説明する。
図10は、図1乃至図4に示す積層体の製造に使用可能なパターン形成装置の一例を概略的に示す図である。
このパターン形成装置100は、巻取機110とレジスト塗布装置120と露光装置130と現像装置140とエッチング装置150と光源160と光学系とイメージセンサ180とコントローラ190とを含んでいる。
巻取機110は、支持体20aとその一方の主面上に設けられた複屈折性層13とを含んだ帯状の積層体を巻き取る。この積層体は、例えば、接着層30aを省略し、反射層15がパターニングされていない連続膜であること以外は、図1乃至図4を参照しながら説明した転写箔1aと同様である。巻取機110の巻取動作に伴い、この積層体は、レジスト塗布装置120、露光装置130、現像装置140及びエッチング装置150内をこの順に走行する。
即ち、巻取機110は、複屈折性層13を含んだ積層体を後述するフォトマスクに対して相対的に移動させる移動機構又はその一部を構成している。移動機構は、例えば、先の積層体に対するフォトマスクの相対的な位置をこの積層体の幅方向に変化させる機構、露光装置130内において先の積層体の走行速度を変化させる機構、先の積層体を露光装置130内で順方向へ間欠的に移動させる機構、及び先の積層体を露光装置130内で逆方向へ移動させる機構の少なくとも1つを更に含んでいてもよい。
レジスト塗布装置120は、先の積層体の反射層上にフォトレジストを塗布して、レジスト膜を形成する。反射層には、液状のフォトレジストを塗布する代わりに、感光性ドライフィルムを貼り付けてもよい。
露光装置130は、光源とフォトマスクとを含んでいる。このフォトマスクは、先の積層体と向き合うように設置される。露光装置130は、その光源が放射する光、例えば紫外線を、フォトマスクを介してレジスト膜に照射する。
現像装置140は、露光後のフォトレジスト膜に、アルカリ現像液などの現像液を供給する。これにより、フォトレジスト膜の露光部又は未露光部を除去し、レジストパターンを形成する。なお、通常、現像装置とエッチング装置との間にはヒータを設置し、レジストパターンを乾燥させる。
エッチング装置140は、例えば、ウェットエッチング装置又はドライエッチング装置である。エッチング装置140は、レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、反射層をエッチングする。これにより、パターニングされた反射層15を得る。
光源160は、照明光として、例えば白色光を放射する。この照明光を現像前のフォトレジスト膜に照射する場合、光源160としては、フォトレジストによる吸収が小さい光を放射するものを使用する。
光学系は、偏光子170を含んでいる。光学系は、光源160が放射した照明光を偏光子170に透過させることによって第1偏光へと変換し、この第1偏光で先の積層体を支持体20a側から照明する。そして、この光学系は、この積層体が射出する透過光及び/又は反射光を偏光子170に入射させ、偏光子170が射出する第2偏光をイメージセンサ180の受光面へと導く。
ここでは、光学系には、反射層をパターニングした後の積層体に支持体20a側から第1偏光を照射し、この積層体が射出する反射光を偏光子170に入射させる構成を採用している。これにより、図7を参照しながら説明した像と表示部DA4に対応した像とが、イメージセンサ180の受光面上に結像されるようにしている。表示部DA4に対応した像は、表示部DA1aに対応した像と同じ色を表示する。
なお、この光学系では、同一の偏光子170に照明光と先の積層体からの光との双方を入射させているが、これら光は別々の偏光子に入射させてもよい。
イメージセンサ180は、二次元イメージセンサである。イメージセンサ180は、その受光面上に結像された像に対応した画像情報を出力する。
コントローラ190は、移動機構と露光装置130とイメージセンサ180とに接続されている。コントローラ190は、イメージセンサ180の出力に基づいて移動機構の動作を制御する。
例えば、表示部DA1aが表示する像の表示部DA1b及びDA2乃至DA4の少なくとも1つが表示する像に対する相対位置を、予め記憶している目標相対位置と比較する。そして、この相対位置の目標相対位置からのずれに対応した位置誤差信号を生成し、位置誤差信号が許容範囲内となるように移動機構の動作を制御する。即ち、先の積層体をフォトマスクに対して相対的に位置合わせする。
このように、この装置100では、潜像を可視化して位置合わせに利用する。こうすると、アライメントマークとしての印刷パターンを形成することなしに、高い位置決め精度を達成することができる。即ち、少ない工程数で高い位置決め精度を達成することが可能となる。
特に、表示部DA4は、その形状などに制約がない。従って、表示部DA4が表示する像を位置合わせに用いると、少ない工程数で極めて高い位置決め精度を達成することが可能となる。
このパターン形成装置100には、様々な変形が可能である。
ここでは、先の積層体に支持体20a側から第1偏光を照射する構成を採用しているが、他の構成を採用してもよい。例えば、先の積層体に支持体20a側から第1偏光を照射するのに加え、反射層15側から自然光又は偏光を照射してもよい。
また、ここでは、反射層をパターニングした後の積層体が表示する像を撮影する構成を採用しているが、反射層をパターニングする前の積層体が表示する像を撮影する構成を採用してもよい。この場合、表示部DA1a及びDA1bの組み合わせ、表示部DA2、表示部DA3及び表示部DA4の少なくとも1つが表示する像に基づいて、露光装置130及び/又は移動機構の動作を制御する。
このパターン形成装置100は、エッチング装置を含んでいなくてもよい。そのような装置100において、例えば、顔料及び/又は染料を含んだフォトレジストを使用すると、レジストパターンとして着色パターンを形成することができる。
このパターン形成装置100は、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により薄膜を形成する成膜装置を更に含んでいてもよい。そのような成膜装置は、レジスト塗布装置120の上流に設置してもよく、現像装置140とエッチング装置150との間に設置してもよい。後者の場合、リフトオフプロセスを利用した薄膜のパターニングが可能である。
パターン形成装置100が先の成膜装置を更に含んでいる場合、レジスト塗布装置120、露光装置130、現像装置140及びエッチング装置150は省略してもよい。マスクを用いた成膜を行えば、フォトリソグラフィ技術を利用したパターニングを行うことなしに、薄膜パターンを形成することができる。なお、この場合、露光装置130内のフォトマスクについて上述した位置合わせは、成膜装置内のマスクに対して行う。
このパターン形成装置100は、露光装置130の代わりに、光ビーム又は粒子ビーム、例えばレーザビーム又は電子ビームでパターンを描画する描画装置を含んでいてもよい。この場合、コントローラ190には、イメージセンサ180の出力に基づいて描画装置の動作と必要に応じて移動機構の動作とを制御させる。なお、光ビーム又は粒子ビームを用いたパターンの描画は、先の積層体上に設けるフォトレジスト膜に対して行ってもよく、この積層体が含んでいる部材に対して行ってもよい。後者の場合、照射部に状態変化を生じさせることができるため、例えば、照射部と非照射部との間に光学特性の相違を生じさせることができる。
このパターン形成装置100からレジスト塗布装置120、露光装置130、現像装置140及びエッチング装置150を省略し、その代わりに、印刷版を使用するか又はインクジェットヘッドを含んだ印刷装置を設けてもよい。この場合、移動機構には、先の積層体を印刷版又はインクジェットヘッドに対して相対的に移動させる構成を採用する。そして、コントローラ190には、イメージセンサ180の出力に基づいて移動機構の動作を制御させる。このようなパターン形成装置100は、例えば、着色パターンやパターニングされた反射層の形成に利用することができる。
次に、ラベル付き物品の製造方法について説明する。
図11は、図5に示すラベル付き物品の製造に使用可能な転写装置の一例を概略的に示す側面図である。図12は、図11に示す転写装置の一部を示す上面図である。
図11及び図12に示す転写装置200は、アップダウン式熱転写機である。この転写装置200は、テーブル210と箔押しダイ220と昇降機構230と送り機構と搬送機構と光源260と光学系とイメージセンサ280とコントローラ290とを含んでいる。
テーブル210は、物品50を支持する支持面を含んでいる。物品50は、例えば、テーブル210上に載置される。テーブル210には、テーブル210に対して物品50を位置決めするための構造、例えば、物品50と嵌め合う凹部が設けられていてもよい。
箔押しダイ220は、テーブル210の支持面と向き合うように設置されている。箔押しダイ220のテーブル210との対向面は、図2に示す一点鎖線L0で囲まれた領域とほぼ等しい形状を有している。また、箔押しダイ220は、ヒータを内蔵している。
箔押しダイ220は、支持体20aが表示体層10aを間に挟んで物品50と向き合うように転写箔1aを物品50に対して押し当てると共に、転写箔1aを加熱する。これにより、テーブル210と箔押しダイ220との間で、接着層30aを物品50に接着させる。
昇降機構230と送り機構と搬送機構とは、移動機構を構成している。
昇降機構230は、箔押しダイ220を昇降可能に支持している。昇降機構230は、箔押しダイ220の昇降位置を変更可能であってもよい。
送り機構は、巻出機と案内ロール240と巻取機とを含んでいる。巻出機は、図1乃至図4を参照しながら説明した転写箔1aを巻き出す。案内ロール240は、巻出機から巻き出された転写箔1aを、接着層30aがテーブル210と向き合うようにその正面へと案内する。巻取機は、転写に使用した転写箔1aを巻き取る。
搬送機構は、テーブル210上に転写前の物品50を搬送し、転写後の物品50をテーブル210上から搬出する。物品50の搬送方向は、例えば、図11及び図12に示すようにテーブル210の正面における転写箔1aの送り方向と一致させるか、又は、テーブル210の正面における転写箔1aの送り方向と略直交させる。
光源260は、照明光として、例えば白色光を放射する。
光学系は、偏光子270a及び270bを含んでいる。光学系は、光源260が放射した照明光を偏光子270aに透過させることによって第1偏光へと変換し、この第1偏光で転写箔1aを照明する。そして、この光学系は、転写箔1aが射出する透過光及び/又は反射光を偏光子270bに入射させ、偏光子270bが射出する第2偏光をイメージセンサ280の受光面へと導く。
ここでは、光学系には、転写位置において転写箔1aに支持体20a側から第1偏光を照射し、転写箔1aが射出する反射光を偏光子170に入射させる構成を採用している。これにより、図7を参照しながら説明した像と表示部DA4に対応した像とが、イメージセンサ280の受光面上に結像されるようにしている。
なお、この光学系では、2つ偏光子270a及び270bにそれぞれ照明光と転写箔1aからの光とを入射させているが、これら光は同一の偏光子に入射させてもよい。
イメージセンサ280は、二次元イメージセンサである。イメージセンサ280は、その受光面上に結像された像に対応した画像情報を出力する。
コントローラ290は、移動機構とイメージセンサ280とに接続されている。コントローラ290は、イメージセンサ280の出力に基づいて移動機構の動作を制御する。
例えば、表示部DA1a、DA1b及びDA2乃至DA4の少なくとも1つが表示する像の位置を、予め記憶している目標位置と比較する。そして、それらのずれに対応した位置誤差信号を生成し、位置誤差信号が許容範囲内となるように移動機構の動作を制御する。これにより、転写箔1aを物品50に対して位置合わせする。
この転写機200を用いた転写プロセスでは、例えば、巻き出しロールに巻かれている転写箔1aを巻き出し、これを、図3及び図4に示す接着層30aがテーブル210と向き合うようにその正面へと案内する。テーブル210の正面へと案内した転写箔1aは、その表示体部、即ち、図2に示す一点鎖線L0で囲まれた領域が、テーブル210の上方に昇降可能に設置された箔押しダイ220と正対するように位置合わせする。
また、テーブル210上には、物品50を搬送する。物品50は、テーブル210上の所定の位置に載置する。
次に、箔押しダイ220を下降させ、転写箔1aを物品50に押し当てると共に、転写箔1aを加熱する。転写箔1aを加熱すると、その加熱部で、図3及び図4に示す接着層30aは粘着性を発現する。その結果、表示体層10aの物品50に押し当てられた部分は、接着層30aを介して物品50に接着する。
その後、箔押しダイ220を上昇させ、次いで、転写箔1a、特には支持体20aを物品50から剥離する。この剥離は、例えば、物品50を静止させたまま、転写箔1aを巻き取ることにより行う。こうすると、図3及び図4に示す表示体層10aは、図11及び図12に示す箔押しダイ220によって加熱された部分の輪郭に沿って破断する。
表示体層10aの破断が終了すると、表示体層10aの加熱部を物品50上に残したまま、転写箔1aは物品50から剥がれる。これにより、1回の転写動作が終了し、図5に示すラベル付き物品が得られる。
その後、ラベル付き物品をテーブル210上から搬送する。そして、上述した動作を繰り返すことにより、複数のラベル付き物品を製造する。
このように、この装置200では、潜像を可視化して位置合わせに利用する。こうすると、アライメントマークとしての印刷パターンを形成することなしに、位置合わせを行うことができる。従って、少ない工程数で高い位置決め精度を達成することが可能となる。
特に、表示部DA4は、その形状などに制約がない。従って、表示部DA4が表示する像を位置合わせに用いると、少ない工程数で極めて高い位置決め精度を達成することが可能となる。
この転写装置200には、様々な変形が可能である。
ここでは、転写位置において転写直前の転写箔1aが表示する像を撮影する構成を採用しているが、表示体部を剥離した転写箔1aが表示する像を撮影する構成を採用してもよい。この場合、例えば、表示体部を除去した領域の表示部DA4が表示する像に対する相対位置を、予め記憶している目標相対位置と比較する。そして、この相対位置の目標相対位置からのずれに対応した位置誤差信号を生成し、位置誤差信号が許容範囲内となるように移動機構の動作を制御する。このような制御を行った場合でも、高い位置決め精度を達成できる。
なお、ここでは、アップダウン式熱転写機について説明したが、上述した技術は、ロール式熱転写機及び真空プレス転写機などの他の転写機に適用することも可能である。
また、先の説明では、積層品として転写箔1aを例示したが、積層品は台紙付き粘着ラベルであってもよい。
図13は、本発明の他の態様に係る積層品を概略的に示す平面図である。図14は、図13に示す積層品のXIV−XIV線に沿った断面図である。
図13及び図14に示す積層品1bは、台紙付き粘着ラベルである。この台紙付き粘着ラベル1bは、表示体層10bと支持体20bと粘着層30bとを含んでいる。
表示体層10bは、保護層11と第1光透過層12と複屈折性層13と第2光透過層14と反射層15と基材16とを含んでいる。表示体層10bの前面側は保護層11側であり、背面側は基材16側である。
基材16は、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネートなどの樹脂からなる。表示体層10bは、例えば、基材16上に、光透過層14、反射層15、光透過層12、複屈折性層13及び保護層11をこの順に形成することにより得られる。保護層11、光透過層12、複屈折性層13、光透過層14及び反射層15は、図1乃至図4の転写箔1aについて説明したのと同様の方法により形成することができる。表示体層10bからは、例えば、保護層11、光透過層12、光透過層14及び反射層15の1つ以上を省略してもよい。
なお、ここでは、一例として、この台紙付き粘着ラベル1bの保護層11、光透過層12、複屈折性層13及び光透過層14は、積層順が異なること以外は、図1乃至図4を参照しながら説明した転写箔1aのそれらと同様であるとする。また、この台紙付き粘着ラベル1bの反射層15は、パターニングされていないこと以外は、図1乃至図4を参照しながら説明した転写箔1aのそれと同様であるとする。
表示体層10bは、表示部DA1乃至DA4を含んでいる。表示体層10bの表示部DA1は、図1乃至図9を参照しながら説明した表示体層10aの表示部DA1bと同様の光学特性を有している。表示体層10bの表示部DA2乃至DA4は、それぞれ、図1乃至図9を参照しながら説明した表示体層10aの表示部DA2乃至DA4と同様の光学特性を有している。
支持体20bは、例えば剥離紙である。支持体20bは、粘着層30bを介して基材16と貼り合わされている。
この台紙付き粘着ラベル1bにおいて、表示体層10bは、実線L0に沿って切断されている。台紙付き粘着ラベル1bの使用時には、表示体層10bのうち実線L0で囲まれた表示体部、即ちラベル又は表示体を、その下方の粘着剤と共に支持体20bから剥離する。そして、この粘着ラベルを、物品に貼り付ける。このようにして、ラベル付き物品を得る。
この台紙付き粘着ラベル1bの製造においては、表示部DA1乃至DA4の少なくとも1つに記録された潜像を可視化して位置合わせに利用することができる。例えば、表示部DA4に記録された潜像を可視化し、これをアライメントマークとして用いて、表示体層10bを実線L0に沿って打ち抜くか、又は、着色パターンなどの薄膜パターンを形成することができる。
従って、アライメントマークとしての印刷パターンを形成することなしに、高い位置決め精度を達成することができる。即ち、少ない工程数で高い位置決め精度を達成することが可能となる。
1a…転写箔、1b…台紙付き粘着ラベル、10’…表示体、10a…表示体層、10b…表示体層、11…保護層、12…光透過層、13…複屈折性層、14…光透過層、15…反射層、16…基材、20a…支持体、20b…支持体、30a…接着層、30b…接着層、50…物品、51…カード基材、52…印刷層、70…偏光フィルム、100…パターン形成装置、110…巻取機、120…レジスト塗布装置、130…露光装置、140…現像装置、150…エッチング装置、160…光源、170…偏光子、180…イメージセンサ、190…コントローラ、200…転写装置、210…テーブル、220…箔押しダイ、230…昇降機構、240…案内ロール、260…光源、270a…偏光子、270b…偏光子、280…イメージセンサ、290…コントローラ、DA1…表示部、DA1a…表示部、DA1b…表示部、DA2…表示部、DA3…表示部、DA4…表示部、IF1…界面部、IF2…界面部、IF3…界面部、IF4…界面部、L0…線、L1…線、L2…線、L3…線。