JP2010029948A - 長尺細丸形状ワークの研削方法、及び長尺細丸形状ワークの工作機械 - Google Patents

長尺細丸形状ワークの研削方法、及び長尺細丸形状ワークの工作機械 Download PDF

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Abstract

【課題】長尺細丸形状のワークの研削において、振止め装置を用いることなく、みかけ上のワークWの剛性を大きくして研削することができる、長尺細丸形状ワークの研削方法、及び長尺細丸形状ワークの工作機械を提供する。
【解決手段】長尺細丸形状ワークを長手方向のワーク回転軸回りに回転させながら加工工具を用いて研削する研削方法であって、長尺細丸形状ワークWの両端部を支持するステップと、支持した両端部から長尺細丸形状ワークWを挟み込む方向に、更に挟持力を加え、支持した長尺細丸形状ワークWを加工工具Tの側に凸状となるように湾曲させるステップと、湾曲させた状態を維持しながら湾曲に沿ったワーク回転軸WZ回りに長尺細丸形状ワークWを回転させて、加工工具Tに対する長尺細丸形状ワークWの剛性を、長尺細丸形状ワークWを直線状に支持している場合よりも大きくして研削するステップとを有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、長尺細丸形状ワークを研削する研削方法、及び当該研削を行う工作機械に関する。
従来より、図5(C)の例に示すような長尺細丸形状ワークWを研削する場合、例えば図5(A)及び(B)に示す工作機械100が用いられている。なお、図5(A)は工作機械100の概略平面図を示しており、図5(B)は工作機械100の概略側面図(心押装置140等、一部の部材を省略)を示している。また、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交しており、Y軸は鉛直方向を示し、X軸とZ軸は水平方向を示している。
工作機械100は、基台2上に、砥石テーブル10と、主軸テーブル20とを備えている。なお、数値制御装置等の制御手段は記載を省略している。
砥石テーブル10は、砥石テーブル駆動モータ10Mと送りネジ10B、及び砥石テーブル10に設けられたナット(図示省略)により、基台2に対してX軸方向に往復移動可能であり、制御手段は、エンコーダ等の検出手段10Eの検出信号によって、基台2に対する砥石テーブル10のX軸方向の位置を検出できる。また、砥石テーブル10には砥石駆動モータ11によって回転する略円筒形状の砥石Tが載置されている。
主軸テーブル20は、主軸テーブル駆動モータ20Mと送りネジ20B、及び主軸テーブル20に設けられたナット(図示省略)により、基台2に対してZ軸方向に往復移動可能であり、制御手段は、エンコーダ等の検出手段20Eの検出信号によって、基台2に対する主軸テーブル20のZ軸方向の位置を検出できる。また、主軸テーブル20には、主軸台130Dと心押台140Dが載置されている。
主軸台130Dには、主軸装置130をZ軸方向に往復移動可能な主軸移動モータ30Mが設けられており、制御手段は、エンコーダ等の検出手段30Eの検出信号によって、主軸台130Dに対する主軸装置130のZ軸方向の位置を検出できる。また、主軸装置130には、センタ部材130Cを回転させる主軸回転モータが設けられており、一対のセンタ部材130C、140C(一対の支持部材に相当)にて挟持したワークWを主軸回転軸CZ(支持軸に相当)回りに回転させる。
心押台140Dには、心押装置140をZ軸方向に往復移動可能な心押駆動手段140Pが設けられており、心押装置140の先端には、主軸装置130のセンタ部材130Cと一対となるセンタ部材140Cが設けられている。
ワークWは、一対のセンタ部材130C、140Cに挟持され、主軸回転軸CZ回りに回転させられる。主軸回転軸CZ回りに回転するワークWに対して、砥石テーブル10を(すなわち砥石Tを)X軸方向に進退移動させて、定寸装置50にてワークWの径を測定しながらワークWを研削する。
ここで、ワークWが長尺細丸形状である場合、砥石Tの押付けに対するワークWの剛性が小さく、湾曲し易いので、従来の工作機械100では、振止め装置60にて砥石Tの反対側からワークWを支持している。
例えば、特許文献1に記載された従来技術では、長尺ワークを挟んで砥石と対向する位置にレストシュー(振止め装置)を配置し、プランジ研削及びトラバース研削において、長尺ワークが湾曲しないように砥石の反対側から長尺ワークの研削面を支持する、振止め装置を有する研削盤が開示されている。
また例えば、特許文献2に記載された従来技術では、ワークの剛性や、荒研削や仕上げ研削等の除去量に応じて、ワークを挟持するセンタ部材の加圧力(挟持力)を調整してワークが湾曲しないようにする、加圧力制御心押台が開示されている。
特開平06−344260号公報 特開平10−277932号公報
長尺のワークの形状にも種々の形状があり、例えば、図5(C)に示すように、長尺細丸形状であり、且つ長手方向に溝WMを備えているワークの場合、特許文献1に記載された研削盤では、回転するワークWの溝WMと振止め装置との接触によってワークWのX軸方向の位置が変化し、溝WMの影響が加工面に転写され、真円度等の加工精度に影響を及ぼす場合がある。
ワークWの溝WMの影響を回避するには、特許文献2に記載された従来技術のように、振止め装置を用いなければよいが、特許文献2に記載された加圧力の調整だけでは、砥石Tを押付けた際の長尺ワークWの湾曲を回避するには、砥石Tの押付け力を充分小さくしなければならず、研削時間が長くなる。また、ワークWの剛性が小さすぎる場合は、特許文献2の方法で加工することは非常に困難である。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、長尺細丸形状のワークの研削において、振止め装置を用いることなく、みかけ上のワークWの剛性を大きくして研削することができる、長尺細丸形状ワークの研削方法、及び長尺細丸形状ワークの工作機械を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの長尺細丸形状ワークの研削方法である。
請求項1に記載の長尺細丸形状ワークの研削方法は、長尺細丸形状ワークを長手方向のワーク回転軸回りに回転させながら加工工具を用いて研削する長尺細丸形状ワークの研削方法であって、以下のステップを有する。
前記長尺細丸形状ワークの両端部を支持するステップ。
支持した両端部から前記長尺細丸形状ワークを挟み込む方向に、更に挟持力を加え、支持した前記長尺細丸形状ワークを前記加工工具の側に凸状となるように湾曲させるステップ。
湾曲させた状態を維持しながら前記湾曲に沿った前記ワーク回転軸回りに前記長尺細丸形状ワークを回転させて、前記加工工具に対する前記長尺細丸形状ワークの剛性を、前記長尺細丸形状ワークを直線状に支持している場合よりも大きくして研削するステップ。
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの長尺細丸形状ワークの研削方法である。
請求項2に記載の長尺細丸形状ワークの研削方法は、請求項1に記載の長尺細丸形状ワークの研削方法であって、以下のステップを有する。
湾曲させた状態を維持しながら前記湾曲に沿った前記ワーク回転軸回りに前記長尺細丸形状ワークを回転させて、前記加工工具を用いて研削するステップ。
研削した長尺細丸形状ワークの形状を測定するステップ。
次の長尺細丸形状ワークから、前記測定の結果に基づいて前記加工工具の位置を補正して研削するステップ。
また、本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの長尺細丸形状ワークの研削方法である。
請求項3に記載の長尺細丸形状ワークの研削方法は、請求項1に記載の長尺細丸形状ワークの研削方法であって、以下のステップを有する。
研削を開始する前に、定寸装置を用いて、湾曲させて支持した前記長尺細丸形状ワークの長手方向に沿う任意の位置における前記長尺細丸形状ワークの径方向の中心位置を測定するステップ。
前記加工工具の側に凸状となるように湾曲させて支持した前記長尺細丸形状ワークの長手方向に沿う任意の位置に対して、前記測定の結果に基づいて前記加工工具の位置を補正しながら研削するステップ。
また、本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの長尺細丸形状ワークの工作機械である。
請求項4に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械は、長尺細丸形状ワークの両端部を支持するともに、前記長尺細丸形状ワークの長手方向のワーク回転軸回りに前記長尺細丸形状ワークを回転させる一対の支持部材と、前記長尺細丸形状ワークの前記ワーク回転軸に交差する方向に進退移動して前記長尺細丸形状ワークを研削する加工工具と、を備えた長尺細丸形状ワークの工作機械である。
前記一対の支持部材の一方は、前記工作機械の基台上の主軸装置に設けられており、前記一対の支持部材の他方は、前記基台上の心押装置に設けられている。
そして、前記主軸装置と前記心押装置の少なくとも一方は、双方の支持部材の回転中心を通る支持軸に沿って移動可能であり、前記長尺細丸形状ワークの両端部を前記一対の支持部材で支持し、更に、前記一対の支持部材が近接する方向に前記主軸装置または前記心押装置の少なくとも一方を移動させて、支持している前記長尺細丸形状ワークを前記加工工具の側に凸状となるように湾曲させて前記加工工具で研削する、長尺細丸形状ワークの工作機械である。
また、本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりの長尺細丸形状ワークの工作機械である。
請求項5に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械は、請求項4に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械である。
前記主軸装置または前記心押装置の少なくとも一方には、前記支持軸よりも所定距離だけ離れた位置に挟持力付与位置が設けられている。
そして、前記長尺細丸形状ワークの両端部を前記一対の支持部材で支持し、更に、前記一対の支持部材が近接する方向に前記主軸装置または前記心押装置の少なくとも一方の前記挟持力付与位置に前記長尺細丸形状ワークを挟み込む方向に挟持力を付与し、支持している前記長尺細丸形状ワークを前記加工工具の側に凸状となるように湾曲させて前記加工工具で研削する、長尺細丸形状ワークの工作機械である。
また、本発明の第6発明は、請求項6に記載されたとおりの長尺細丸形状ワークの工作機械である。
請求項6に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械は、請求項5に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械であって、前記挟持力付与位置は、前記支持軸に対して前記加工工具と反対の側に配置されている、長尺細丸形状ワークの工作機械である。
また、本発明の第7発明は、請求項7に記載されたとおりの長尺細丸形状ワークの工作機械である。
請求項7に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械は、請求項6に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械であって、前記主軸装置と前記心押装置の双方が、前記挟持力付与位置を有している。
そして、前記主軸装置または前記心押装置における一方は、ボールジョイントを介して前記挟持力付与位置に前記挟持力が付与される、または前記ボールジョイントを介して前記挟持力付与位置にて前記一対の支持部材が近接する方向に対して支持される構造を有し、前記主軸装置または前記心押装置における他方は、弾性部材を介して前記挟持力付与位置に前記挟持力が付与される、または前記弾性部材を介して前記挟持力付与位置にて前記一対の支持部材が近接する方向に対して支持される構造を有する、長尺細丸形状ワークの工作機械である。
請求項1に記載の長尺細丸形状ワークの研削方法では、長尺細丸形状ワークを両端部で支持して挟持し、更に、長尺細丸形状ワークが加工工具側に凸状に湾曲するように、挟持力を与える。強制的に加工工具の側に湾曲させることで、加工工具に対するワークの剛性をみかけ上大きくする(直線状に支持している場合よりも剛性を大きくする)ことができる。
これにより、振止め装置を用いることなく、加工工具に対するみかけ上のワークの剛性を大きくして研削することができる。
また、請求項2に記載の長尺細丸形状ワークの研削方法では、湾曲させた状態のワークをワーク回転軸回りに回転させながら研削し、研削したワークの形状を、例えば3次元測定器等を用いて測定し、その測定結果から加工工具の位置を補正する補正量を求め、次のワークからは、求めた補正量を用いて研削する。
これにより、適切な加工精度を確保することができる。
また、請求項3に記載の長尺細丸形状ワークの研削方法では、研削を開始する前に、湾曲したワークの形状(湾曲状態)を測定しておき、測定したワーク形状に合わせて加工工具の位置を補正しながら研削するので、ワークを湾曲させても、適切に加工精度を確保することができる。
また、請求項4に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械によれば、一対の支持部材で長尺細丸形状ワークの両端を支持し、更に、支持部材の少なくとも一方を支持部材が近接する方向に移動させて、長尺細丸形状ワークを強制的に加工工具の側に湾曲させることで、加工工具に対するワークの剛性をみかけ上大きくする(直線状に支持している場合よりも剛性を大きくする)ことができる。
これにより、振止め装置を用いることなく、加工工具に対するみかけ上のワークの剛性を大きくして研削することができる。
また、請求項5に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械によれば、適切に長尺細丸形状ワークを加工工具の側に湾曲させることができる。
また、請求項6に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械によれば、より適切に長尺細丸形状ワークを加工工具の側に湾曲させることができる。
また、請求項7に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械によれば、更に適切に長尺細丸形状ワークを加工工具の側に湾曲させることができる。
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1(A)は、本発明の長尺細丸形状ワークの工作機械1を、砥石Tを備えた工作機械1(いわゆる研削盤)に適用した一実施の形態における概略外観図(平面図)を示している。また、図1(B)は、図1(A)に示す工作機械1の右側面図の例を示している。なお、図1(B)では心押装置40等の記載を省略している。また、長尺細丸形状ワークW(以下、ワークWと記載する)の外観の例は、図5(C)に示すとおりである。
なお、本実施の形態の説明では、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Y軸は鉛直上方を示しており、X軸とZ軸は水平方向を示している。また、X軸は砥石TがワークWに切り込む方向を示しており、Z軸は一対のセンタ部材30C、40Cをとおる主軸回転軸方向を示している。
●[工作機械1の概略構成(図1)]
工作機械1は、基台2と、主軸テーブル20と、砥石テーブル10とを備えている。なお、各検出手段からの信号を取り込むとともに各モータに駆動信号を出力する数値制御装置等の制御手段は記載を省略している。
主軸テーブル20は、基台2に設けられた主軸テーブル駆動モータ20M(Z軸駆動装置)と送りネジ20B、及び主軸テーブル20に設けられたナット(図示省略)により、基台2に対してZ軸方向に移動可能であり、制御手段は、エンコーダ等の検出手段20Eの検出信号によって、基台2に対する主軸テーブル20のZ軸方向の位置を検出できる。なお、Z軸は、一対のセンタ部材30C、40C(一対の支持部材に相当)をとおる主軸回転軸CZ(支持軸に相当)に平行な軸であり、送りネジ20BがZ軸である。
主軸テーブル20の上には、主軸台30Dと心押台40Dが載置されている。
主軸台30Dには、主軸装置30をZ軸方向に往復移動可能な主軸移動モータ30Mが設けられており、制御手段は、エンコーダ等の検出手段30Eの検出信号によって、主軸台30Dに対する主軸装置30のZ軸方向の位置を検出できる。また、主軸装置30の先端には、心押装置40のセンタ部材40Cと一対となるセンタ部材30Cが設けられている。また、主軸装置30には、センタ部材30Cを回転させる主軸回転モータが設けられており、一対のセンタ部材30C、40Cにて挟持したワークWを主軸回転軸CZ回りに回転させる。そして、主軸回転モータには、ワークWの回転角度または回転速度を検出する検出手段(エンコーダ等)が設けられている。
心押台40Dには、心押装置40をZ軸方向に往復移動可能な心押移動モータ40Mが設けられており、制御手段は、エンコーダ等の検出手段40Eの検出信号によって、心押台40Dに対する心押装置40のZ軸方向の位置を検出できる。また、心押装置40の先端には、主軸装置30のセンタ部材30Cと一対となるセンタ部材40Cが設けられている。なお、本実施の形態では支持部材の例としてセンタ部材を用いた例を示しているが、チャック等を用いてもよい。
なお、工作機械1は、ワークWを仮置きする仮置台やクーラントノズル等を備えているが、これらについては説明及び図示を省略する。
砥石テーブル10には、略円筒状の砥石T(加工工具に相当)を備えている。砥石Tは、例えば鉄製のコアの外周にCBNチップ砥石が貼り付けられて整形されており、砥石テーブル10に載置された砥石駆動モータ11により、Z軸に平行な砥石回転軸TZを中心に回転する。
また、砥石テーブル10は、基台2に設けられた砥石テーブル駆動モータ10M(X軸駆動装置であり、切込み手段)と送りネジ10B、及び砥石テーブル10に設けられたナット(図示省略)により、基台2に対してX軸方向に往復移動可能であり、主軸回転軸CZに交差する方向に砥石Tを進退移動させる。なお、X軸は、前記Z軸に直交する方向の軸であり、送りネジ10BがX軸である。
また、砥石テーブル駆動モータ10Mには砥石テーブル10のX軸方向の位置を検出する検出手段10E(エンコーダ等)が設けられている。
なお、図1(A)及び(B)の例では、砥石駆動モータ11には検出手段を設けていないが、砥石駆動モータ11にも速度検出手段等を設け、砥石駆動モータ11の回転速度をフィードバック制御することも可能である。
数値制御装置(図示省略)は、ワークWの回転角度(あるいは回転速度)を検出する検出手段(図示省略)からの信号、砥石テーブル10のX軸方向の位置を検出する検出手段10Eからの信号、主軸テーブル20のZ軸方向の位置を検出する検出手段20Eからの信号、ワークWの外径を測定する定寸装置50からの検出信号等と、加工データ及び加工プログラム等に基づいて、主軸回転モータ(図示省略)、砥石テーブル駆動モータ10M、主軸テーブル駆動モータ20M、砥石駆動モータ11を制御する。
なお、ワークWの被加工部の外径等を測定可能な定寸装置(測定手段)50の詳細については後述する。
●[主軸装置30と心押装置40の詳細と、ワークWの剛性を大きくして研削する研削方法(図2)]
次に図2(A)〜(C)を用いて、主軸装置30と心押装置40の詳細と、ワークWの剛性を大きくして研削する研削方法について説明する。
図2(A)は、一対のセンタ部材30C、40CにてワークWを直線状に挟持している状態の平面図を示しており、図2(B)は、図2(A)の状態から更に心押装置40を主軸装置30に近接する方向に移動させてワークWを強制的に湾曲させた状態を示している。
図5に示す従来の工作機械100では、長尺細丸形状のワークWの長手方向に交差する方向から砥石Tを押付けて研削すると、ワークWの剛性が小さいためにワークWが砥石Tの反対方向に湾曲してしまうため、砥石Tの反対側から振止め装置60にて湾曲しないように押さえていたが、図5(C)のように溝WMを有するワークWでは、ワークWが回転すると溝WMと振止め装置60にてワークWのX軸方向の位置が変化するとともに振動等が発生するので、研削精度に影響を及ぼす可能性がある。
本実施の形態の工作機械1では、ワークWを砥石Tの側に凸状となるように強制的に湾曲させて(砥石Tの側に曲げモーメントを発生させて)、砥石Tから見たワークWの剛性をみかけ上大きくすることで、振止め装置60を省略して研削する。
主軸装置30と心押装置40の少なくとも一方は、主軸回転軸CZに沿って移動可能である。以下、研削方法の手順を説明する。
最初のステップでは、図2(A)に示すように、一対のセンタ部材30C、40Cにて、ワークWの両端部を支持し、ワークWを直線状に支持する。これは従来と同様の支持であり、この状態では、主軸回転軸CZとワーク回転軸WZは一致している。
次のステップでは、図2(B)に示すように、主軸装置30と心押装置40の少なくとも一方を、一対のセンタ部材30C、40Cが近接する方向に移動させて、ワークWが砥石Tの側に凸状となるように湾曲させる。この場合、ワークWを支持した両端部からワークWを挟み込む方向に、更に挟持力を加え、支持したワークWを砥石Tの側に凸状となるように湾曲させる。この状態では、主軸回転軸CZとワーク回転軸WZとは一致しない状態となる。なお、「支持した両端部からワークWを挟み込む方向」に更に挟持力を加える際、主軸回転軸方向に対して湾曲させる方向に向かって若干斜め方向の力が加えられるように、例えば図4(A)及び(B)に示すように傾斜角θを有するように支持すると、より適切にワークWを湾曲させることができる。
そして次のステップでは、ワークWを湾曲させた状態を維持しながら、(湾曲に沿った)ワーク回転軸WZ回りにワークWを回転させて、砥石Tに対するワークWの剛性を見かけ上大きくして(ワークWを直線状に支持している場合よりも剛性を大きくして)研削する。
また、図2(C)は心押装置40の側面図の例を示しており、心押装置40は、心押台40Dに設けられた案内部材40Gに沿ってZ軸方向に移動可能である。また、主軸装置30についても同様であるため、主軸装置30の側面図は省略する。
なお、ワークWを湾曲させる際に砥石Tの側に凸状となるようにするために、以下の構造とすることが好ましい。
主軸装置30または心押装置40の少なくとも一方は、主軸回転軸CZに対して砥石Tと反対の側に、主軸回転軸CZよりも所定距離D30だけ離れた位置となる挟持力付与位置PF30、PF40に、挟持力(一対のセンタ部材30C、40Cを近接させる方向に移動させる力、ワークWを両端部から挟み込む力)が付与される構成を有する。
主軸装置30は、挟持力伝達部材31からボールジョイント32を介して挟持力付与位置PF30に、一対のセンタ部材30C、40Cを近接させる方向の力が付与される(または、その位置でボールジョイント32を介して支持(固定)される)。主軸回転軸CZに対して砥石Tと反対の側に所定距離D30離れた挟持力付与位置PF30にボールジョイント32を介して挟持力を付与(または近接する方向に対して支持)することで、主軸装置30が微細な角度でワークWの側に傾斜することを許容し、適切にワークWを砥石Tの側に湾曲させることができる。
心押装置40は、挟持力伝達部材41から弾性部材42(この場合、バネ)を介して挟持力付与位置PF40に、一対のセンタ部材30C、40Cを近接させる方向の力が付与される(または、その位置で弾性部材42を介して支持(固定)される)。主軸回転軸CZに対して砥石Tと反対の側に所定距離D40離れた挟持力付与位置PF40に弾性部材42を介して挟持力を付与(または近接する方向に対して支持)することで、心押装置40に適切な挟持力を持たせるとともに、適切にワークWを砥石Tの側に湾曲させることができる。
なお、主軸装置30と心押装置40の一方がボールジョイント32を有し、他方が弾性部材42を有するように構成する。
図5(A)に示す従来の工作機械100では、挟持力付与位置PF130、PF140が主軸回転軸CZ上に配置されていた。しかし、本実施の形態にて説明する工作機械1では、図2(A)〜(C)に示すように、挟持力付与位置PF30、PF40は、主軸回転軸CZに対して所定距離D30、D40離れた位置、且つ砥石Tと反対の側の位置である点が特徴である。
●[ワークWの湾曲形状に対する加工工具の位置の補正方法]
以上に説明したように、本実施の形態ではワークWを砥石Tの側に凸状となるように湾曲させて研削するので、ワークWの湾曲形状に合わせて砥石Tの位置を補正する必要がある。
まず、上記に説明したように、ワークWを砥石Tの側に凸状となるように湾曲させ、湾曲させた状態を維持しながら、湾曲に沿ったワーク回転軸WZ回りにワークを回転させて(図2(B)参照)、砥石Tを用いて研削する(補正量を求めるために試研削する)。
そして、次のステップにて、研削したワークW(補正量を求めるために試研削したワークW)の形状を、例えば3次元測定器等を用いて測定する。
更に次のステップでは、次に研削するワークから、前記測定の結果に基づいて砥石Tの位置を補正して研削する(数値制御装置等にて、ワークWのZ軸方向の各位置に対する、砥石TのX軸方向の位置を補正して研削する)。例えば、測定した形状を元に、補正加工NCデータ(数値制御装置等で用いる加工プログラム用のデータ)を作成して研削する。また、測定したワークW(試研削したワークW)の形状が許容誤差範囲内に収まっていない場合、そのワークWは破棄する。
なお、研削したワークWの形状の測定は、研削する毎に行う必要は特になく、製造ロットの最初のワークWを研削した場合にのみ測定してもよいし、研削するワークWの種類を変更した際の最初のワークWや、所定数毎(例えばワークWを100本研削する毎)や、砥石Tの磨耗状態を測定する毎等、適切なタイミングを設定して測定すればよい。
●[定寸装置50の構造と、定寸装置50を用いた、ワークWの湾曲形状に対する加工工具の位置の補正方法(図3)]
次に、図3(A)及び(B)にて、定寸装置50の構造と、定寸装置50を用いて、ワークWの湾曲形状に合わせて砥石Tの位置を補正する補正方法について説明する。
このため、定寸装置50を用いて、湾曲させたワークWの長手方向の任意の位置における、ワークWの径方向の中心位置(すなわち、図2(B)におけるワーク回転軸WZ)を、研削開始前に測定する。なお、前記任意の位置におけるワークWの径は、研削開始前に測定(前記中心位置と同時に測定)してもよいし、研削を開始してから、研削しながら測定してもよい。
図1(A)及び(B)に示すように、定寸装置50は、ワークWに対して砥石Tと反対の側に設けられており、例えば、基台2に固定された支持部材53、52に載置されている。定寸装置50は、支持部材52に固定された進退移動手段54、ピストン54Pを介してワークWに近接する方向(この場合、X軸方向)に進退移動する定寸本体51、定寸本体51に設けられた測定アーム50A、50B、測定アーム50A、50Bの先端に対向するように設けられた一対の接触子50S、一対の接触子50SにてワークWを挟持した際の測定アーム50A、50Bの開き角等を検出するセンサ(図示省略)等にて構成されている。制御手段は、前記センサの検出信号に基づいて、一対の接触子50Sにて挟持したワークWの径DWを測定することが可能であり、定寸本体51の進退方向の位置を検出するセンサ(図示省略)からの検出信号に基づいて、接触子50SのX軸方向の位置(例えば、主軸回転軸CZからの距離ΔX)を測定することが可能である。
距離ΔXを測定する場合は、図3(B)に示す状態において定寸本体51をX軸方向に微細に往復移動させて、最も大きな径DWを測定できる位置を求めればよい。
そして、この測定結果に基づいて、ワークWの長手方向の位置に対して、砥石TのX軸方向の位置に、ワークWの長手方向の各位置に対応した距離ΔXの補正を加えればよい。
このように、研削する前に、定寸装置50を用いて、湾曲させて支持したワークWの長手方向の任意の位置におけるワークWの径方向の中心位置(すなわち、ワーク回転軸WZの位置)を測定するステップと、ワークWの長手方向に沿う任意の位置に対して、前記測定の結果に基づいて砥石Tの位置を補正しながら研削するステップにて研削する。なお、測定は1度でもよいし、複数回測定して平均を求めてもよい。このように、湾曲させた実際のワークWの形状に合わせて研削することで、ワークW毎に湾曲形状が異なっていても精度よく研削することができる。
●[チャック30Cを備えた主軸装置30の例(図4)]
以上に説明した実施の形態では、支持部材として一対のセンタ部材30C、40Cを用いた例を説明したが、支持部材の少なくとも一方を、複数のチャック爪にてワークWの側面から挟んで支持するチャックで構成してもよい。
図4(A)の例では、主軸装置30に設けた支持部材をチャック30Cとしている。更にチャックを用いた場合、傾斜角θにて、支持方向が砥石Tの側に傾斜するようにチャックの角度を設定すると、より効果的にワークWを砥石Tの側に凸状となるように湾曲させることができる。なお、図4(A)における心押装置40のセンタ部材40Cについては傾斜角θを特に設定しなくてもよい。
更に、心押装置40の支持部材もチャックとして、傾斜角θを設定すれば、非常に適切にワークWを砥石Tの側に凸状となるように湾曲させることができる。
また、図4(A)に示す例では、主軸装置30の挟持力付与位置PF30と、心押装置40の挟持力付与位置PF40と、が主軸回転軸CZ上にある場合の例を示している。
挟持力付与位置PF30、PF40の少なくとも一方の位置を、図4(B)の例に示すように、主軸回転軸CZに対して、砥石Tと反対の側に所定距離D30、D40だけ離れた位置に設定すると、ワークWをより適切に、砥石Tの側に凸状となるように湾曲させることができる。
また、図5(A)及び(B)の例に示した従来の工作機械100から、振止め装置60を省略し、且つ主軸装置130のセンタ部材130Cをチャックに交換して、更に図4(A)及び(B)に示すようにワークWを湾曲させる方向に向けて傾斜角θとなるようにチャックの方向を設定するようにしてもよい。
この構成から、更に、図4(A)に示すように、ボールジョイント32を介して主軸装置30に挟持力を付与し、弾性部材42を介して心押装置40に挟持力を付与する(心押装置140を心押装置40と交換する)構成とすると、より適切にワークWを湾曲させることができる。
また、更に、図4(B)に示すように、ボールジョイント32を介して主軸装置30に挟持力を与える位置である挟持力付与位置PF30を、主軸回転軸CZに対して砥石Tの反対の側に所定距離D30だけ離れた位置に設定し、弾性部材42を介して心押装置40に挟持力を与える位置である挟持力付与位置PF40を、主軸回転軸CZに対して砥石Tの反対の側に所定距離D40だけ離れた位置に設定すると、更に適切にワークWを湾曲させることができる。
更に、心押装置40のセンタ部材40Cをチャックに交換してもよい。また、交換した心押装置40のチャックを、ワークWを湾曲させる方向に向けて傾斜角θとなるようにチャックの方向を設定すると、更に適切にワークWを湾曲させることができる。
本発明の長尺細丸形状ワークWの研削方法、及び工作機械1は、本実施の形態で説明した研削方法、外観、構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
また、本実施の形態では加工工具の例として砥石Tを用いたが、バイトやエンドミル等の刃具を用いてもよく、種々の加工工具を用いた工作機械に適用することができる。
本発明の長尺細丸形状ワークの工作機械1の一実施の形態における概略外観図(平面図、側面図)を説明する図である。 主軸装置30と心押装置40の詳細と、ワークWの剛性を大きくして研削する研削方法について説明する図である。 定寸装置50の構造と、定寸装置50を用いた、ワークWの湾曲形状に対する加工工具の位置の補正方法を説明する図である。 チャック30Cを備えて傾斜角θに設定した主軸装置30の例を説明する図である。 従来の工作機械100の構造の例を説明する図である。
符号の説明
1 工作機械
2 基台
10 砥石テーブル
10M 砥石テーブル駆動モータ
10B 送りネジ
11 砥石駆動モータ
20 主軸テーブル
20M 主軸テーブル駆動モータ
20B 送りネジ
30 主軸装置
30C センタ部材(支持部材)
30D 主軸台
30M 主軸移動モータ
32 ボールジョイント
40 心押装置
40C センタ部材(支持部材)
40D 心押台
40M 心押移動モータ
42 弾性部材
50 定寸装置
D30、D40 所定距離
PF30、PF40 挟持力付与位置
T 砥石(加工工具)
W ワーク
CZ 主軸回転軸(支持軸)
TZ 砥石回転軸
WZ ワーク回転軸

Claims (7)

  1. 長尺細丸形状ワークを長手方向のワーク回転軸回りに回転させながら加工工具を用いて研削する長尺細丸形状ワークの研削方法であって、
    前記長尺細丸形状ワークの両端部を支持するステップと、
    支持した両端部から前記長尺細丸形状ワークを挟み込む方向に、更に挟持力を加え、支持した前記長尺細丸形状ワークを前記加工工具の側に凸状となるように湾曲させるステップと、
    湾曲させた状態を維持しながら前記湾曲に沿った前記ワーク回転軸回りに前記長尺細丸形状ワークを回転させて、前記加工工具に対する前記長尺細丸形状ワークの剛性を、前記長尺細丸形状ワークを直線状に支持している場合よりも大きくして研削するステップとを有する、
    長尺細丸形状ワークの研削方法。
  2. 請求項1に記載の長尺細丸形状ワークの研削方法であって、
    湾曲させた状態を維持しながら前記湾曲に沿った前記ワーク回転軸回りに前記長尺細丸形状ワークを回転させて、前記加工工具を用いて研削するステップと、
    研削した長尺細丸形状ワークの形状を測定するステップと、
    次の長尺細丸形状ワークから、前記測定の結果に基づいて前記加工工具の位置を補正して研削するステップとを有する、
    長尺細丸形状ワークの研削方法。
  3. 請求項1に記載の長尺細丸形状ワークの研削方法であって、
    研削を開始する前に、定寸装置を用いて、湾曲させて支持した前記長尺細丸形状ワークの長手方向に沿う任意の位置における前記長尺細丸形状ワークの径方向の中心位置を測定するステップと、
    前記加工工具の側に凸状となるように湾曲させて支持した前記長尺細丸形状ワークの長手方向に沿う任意の位置に対して、前記測定の結果に基づいて前記加工工具の位置を補正しながら研削するステップとを有する、
    長尺細丸形状ワークの研削方法。
  4. 長尺細丸形状ワークの両端部を支持するともに、前記長尺細丸形状ワークの長手方向のワーク回転軸回りに前記長尺細丸形状ワークを回転させる一対の支持部材と、
    前記長尺細丸形状ワークの前記ワーク回転軸に交差する方向に進退移動して前記長尺細丸形状ワークを研削する加工工具と、を備えた長尺細丸形状ワークの工作機械であって、
    前記一対の支持部材の一方は、前記工作機械の基台上の主軸装置に設けられており、
    前記一対の支持部材の他方は、前記基台上の心押装置に設けられており、
    前記主軸装置と前記心押装置の少なくとも一方は、双方の支持部材の回転中心を通る支持軸に沿って移動可能であり、
    前記長尺細丸形状ワークの両端部を前記一対の支持部材で支持し、更に、前記一対の支持部材が近接する方向に前記主軸装置または前記心押装置の少なくとも一方を移動させて、支持している前記長尺細丸形状ワークを前記加工工具の側に凸状となるように湾曲させて前記加工工具で研削する、
    長尺細丸形状ワークの工作機械。
  5. 請求項4に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械であって、
    前記主軸装置または前記心押装置の少なくとも一方には、前記支持軸よりも所定距離だけ離れた位置に挟持力付与位置が設けられており、
    前記長尺細丸形状ワークの両端部を前記一対の支持部材で支持し、更に、前記一対の支持部材が近接する方向に前記主軸装置または前記心押装置の少なくとも一方の前記挟持力付与位置に前記長尺細丸形状ワークを挟み込む方向に挟持力を付与し、支持している前記長尺細丸形状ワークを前記加工工具の側に凸状となるように湾曲させて前記加工工具で研削する、
    長尺細丸形状ワークの工作機械。
  6. 請求項5に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械であって、
    前記挟持力付与位置は、前記支持軸に対して前記加工工具と反対の側に配置されている、
    長尺細丸形状ワークの工作機械。
  7. 請求項6に記載の長尺細丸形状ワークの工作機械であって、
    前記主軸装置と前記心押装置の双方が、前記挟持力付与位置を有しており、
    前記主軸装置または前記心押装置における一方は、ボールジョイントを介して前記挟持力付与位置に前記挟持力が付与される、または前記ボールジョイントを介して前記挟持力付与位置にて前記一対の支持部材が近接する方向に対して支持される構造を有し、
    前記主軸装置または前記心押装置における他方は、弾性部材を介して前記挟持力付与位置に前記挟持力が付与される、または前記弾性部材を介して前記挟持力付与位置にて前記一対の支持部材が近接する方向に対して支持される構造を有する、
    長尺細丸形状ワークの工作機械。

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