JP2010029203A - 血小板凝集を阻害するためのヒト起源の抗体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】血小板凝集を阻害し、活性状態の血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaへの親和性が、非活性コンフォメーションの血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaへの親和性よりも高いことを特徴とする、ヒト起源の単鎖抗体断片(scFv)を含む抗体。
【選択図】なし
Description
−特に、Abciximabでの治療下で、重篤な血小板減少症の増大した罹患率が存在する(約1%)(非特許文献5)。
−費用がかかる生産のために、治療のコストが、特にAbciximabについて、相当に高い。(非特許文献6)。
−GPIIb/IIIa-ブロッカーが血栓溶解と合わされる場合、特に重要である出血の合併症の増大がある。
−経口投与される合成GPIIb/IIIa-ブロッカーは、その薬物動態学的特性、特にレセプターに対するやや低い親和性、のために期待はずれの結果をもたらした。(非特許文献7)。
−GPIIb/IIIa-ブロッカー、特に低分子薬剤が、結合後にレセプターと相互作用する証拠がある。これは、逆説的内因性活性化効果を生じるかもしれない(非特許文献8)
−Abciximabの効果の可逆性は非常に低い(>12時間)
−Abciximabでの処置した患者の約6%は抗ヒトキメラ抗体(AHAC)を発生した;繰り返し処置した患者の場合には11%(非特許文献9)。
〔1〕血小板凝集を阻害し、活性状態の血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaへの親和性が、非活性コンフォメーションの血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaへの親和性よりも高いことを特徴とする、ヒト起源の単鎖抗体断片(scFv)を含む抗体、
〔2〕該断片が配列番号4に示されるアミノ酸配列または配列番号4の配列に少なくとも60%相同であるアミノ酸配列を含むことを特徴とする〔1〕記載の抗体、
〔3〕該抗体が、配列番号4のアミノ酸配列の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、〔1〕記載の抗体、
〔項4〕該単鎖抗体断片の軽鎖がCLLYYGGGQQGVFGGGまたはCLLYYGGAWVFGGGからなる軽鎖CDR配列を含む、〔1〕記載の抗体、
〔5〕二価または多価scFv抗体構築物であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕いずれか記載の抗体断片、
〔6〕重鎖および軽鎖可変ドメインを含む単鎖抗体断片をコードする配列を含む核酸のライブラリーを提供する工程;
該単鎖抗体断片のCDR3領域に少なくとも1つの無作為化されたヌクレオチド配列を導入する工程
該核酸ライブラリーからファージライブラリーを作製する工程;
該ファージライブラリーを逐次、非活性血小板、活性血小板、非活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞、および活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞と反応させる工程;および
該ファージライブラリーから活性インテグリンレセプター分子に結合するファージを溶出することによって、該血小板または活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞に結合したファージを得る工程
を含む方法によって得られ得る、
血小板凝集を阻害し、活性状態の血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaへの親和性が、非活性コンフォメーションの血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaへの親和性よりも高いことを特徴とする、ヒト起源の単鎖抗体断片(scFv)、
〔7〕〔1〕〜〔5〕いずれか記載の抗体をコードする配列からなるDNA分子、
〔8〕〔7〕記載のDNA分子を含有してなる発現ベクター、
〔9〕〔7〕記載のDNA分子または〔8〕記載の発現ベクターを含有してなる細胞株、
〔10〕〔1〕〜〔5〕いずれか記載の抗体、〔7〕記載のDNA分子または〔8〕記載の発現ベクターを含有してなる医薬組成物、
〔11〕血小板上の血小板インテグリンレセプターをブロックするための医薬組成物の調製のための、〔1〕〜〔5〕いずれか記載の抗体、〔7〕記載のDNA分子または〔8〕記載の発現ベクターの使用、
〔12〕活性化血小板の数を決定するための診断組成物の調製のための、〔1〕〜〔5〕いずれか記載の抗体、〔7〕記載のDNA分子または〔8〕記載の発現ベクターの使用、
〔13〕非活性状態の血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaに結合しない、〔1〕〜〔5〕いずれか記載の抗体
に関する。
−候補物の配列をコードする核酸のライブラリーを提供する工程;
−かかる核酸ライブラリーからファージライブラリーを作製する工程;
−該ファージライブラリーを、逐次(successively)、非活性血小板、活性血小板、非活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞、および活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞と連続して反応させる工程;および
該血小板または活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞に結合したファージを溶出する工程
を含む。
−ヒトドナーから全RNAを単離する工程;
−抗体ポリペプチドをコードする全RNAに含まれるmRNAを単離する工程;
−cDNAの作製;および
−抗体ポリペプチドをコードするcDNA分子から単鎖断片をコードするDNA分子を引き出す(derive)工程
を含む。
−重鎖および軽鎖可変ドメインを含む単鎖抗体断片の配列を含む核酸を提供する工程;および
−該単鎖抗体断片の領域に少なくとも1つの無作為化されたヌクレオチド配列を導入する工程
を含む。
薬学的有効量の本発明の医薬組成物を患者に投与すること
を含む、患者を処置する方法に関する。
単鎖抗体断片(scFv)のディスプレーのためのファージライブラリーは、ヒトIgM抗体遺伝子から作製される。あるいは、合成ライブラリーは、ヒト起源の2つのscFvマスターフレームワークの重鎖のCDR3領域の無作為化により作製される。両方のライブラリーは、活性血小板における選択のためにそれらを使用する前に、休止血小板におけるインキュベーションにより活性化特異的でないバインダーについて減算される。GPIIbIIIaレセプターにおける選択に焦点を合わせるために、さらなるラウンドの選択が、組換えGPIIbIIIaレセプターを発現するインビトロで培養された細胞において行われる。
RNAおよびcDNA調製
16例のヒトドナーの脾臓試料および5例の健常ヒトドナーの末梢血リンパ球(PBL)(それぞれ約1〜5×108 PBL、RNeasy (TM) Midiprep. Kit, Qiagen)から全RNAを単離する。全RNAからRNAポリA+-RNAを調製し(Oligotex mRNA Kit, Qiagen)、cDNA合成に使用する(SuperScriptTM Preamplifications System, Gibco BRL/LIFE Technologies)。
図8のヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域の増幅ためのPCRに使用したオリゴヌクレオチド。重鎖を、単一のIgM特異的定常プライマーおよび可変領域に特異的ないくつかの異なるプライマー(VH-1〜VH-7)の1つを用いて別々のPCR反応において増幅する。相応して、λおよびκ軽鎖を、単一のλおよびκ特異的定常プライマーおよびいくつかの可変プライマー(Vλ-1〜Vλ-10およびVκ-1〜6)のうちの1つを用いて別々のPCR反応において増幅する。PCRを、50μlの容量で、0.5μl cDNA、1単位のVent exo--DNAポリメラーゼ(New England Biolab)および0.5μMの各プライマーを、以下の条件:3分95℃、20×[30秒95℃、1分55℃、1分72℃]5分72℃で用いて行う。第1回のPCRの産物を、PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製し、クローニングのための制限部位を導入するための図9のオリゴヌクレオチドプライマーの対応する組を用いる第2回のPCRの鋳型として使用する。第2回のPCRは、各プライマー組について、第1回のPCRにしたがって別個に行うが、アニーリングには1分間57℃を使用する。重鎖の第2回のPCRの産物、λ軽鎖およびκ軽鎖をプールし、PCR精製キット(Qiagen)により精製する。
供給元の指示書にしたがって、重鎖断片をNcoIおよびHindIIIで、軽鎖断片をMluIおよびNotI(それぞれNew England Biolab)で消化し、最後に、ゲル抽出キット(Qiagen)を用いて1%アガロースゲルからのゲル抽出により精製する。サブライブラリーを作製するため、まず重鎖を、stuffer scFvを含有するファージディスプレーベクターpEXHAM1(図1)にクローン化する。ベクターDNAをNcoIおよびHindIIIで切断し、ゲル抽出により精製し、異なるドナー起源の重鎖断片で別々にライゲートする。50ngベクター、9ng重鎖断片および1単位のT4 DNAリガーゼ(Roche)を用い、20μlの容量でライゲーションを3時間室温で行う。エレクトロポレーションのため、供給元の指示書にしたがって、ライゲーション混合物を沈殿させ、10μlの水に再懸濁し、35μlのエレクトロコンピテント(electrocompetent)大腸菌XL1 blue細胞(Stratagene)と混合する。形質転換細胞を、50mMグルコース、100μg/mlアンピシリンおよび20μg/mlテトラサイクリンを含有する選択LB培地にプレーティングし、30℃で一晩インキュベートする。適切な希釈物のプレーティングにより測定したサブライブラリーのサイズは1.5×106〜7.1×107の範囲内である。
scFvのファージディスプレイのため、50mMグルコース、100μg/mlアンピシリンおよび20μg/mlテトラサイクリンを補給したLB培地のアリコート250ml中にライブラリーを、細胞数の複雑度が10倍を超えることを確実にする0.025の開始OD600で播種する。OD600が0.2まで細胞を37℃で200rpmでインキュベートし、M13K07ヘルパーファージで感染多重度が10で感染させる37℃での1時間のインキュベーション後、細胞を遠心分離により回収し、250mlのグルコース無含有培地に再懸濁し、一晩30℃で200rpmにてインキュベートする。ファージをPEG沈殿(PEG6000 20%、NaCl 2.5M)により単離し、ファージ希釈バッファー(Tris 10mM pH 7.5、NaCl 20mM、EDTA 2mM)に再溶解する。
非活性化血小板を結合するscFvのライブラリーの枯渇:
ヒト静脈血5mlを、25μlプロスタグランジンE10(10mM)を含有するS-Monovette(Sarstedt)に回収し、110gで10分間遠心分離する。血小板に富む血漿(上相)の1mlを新たなチューブに移し、9mlのCGSバッファー(クエン酸ナトリウム10mM、デキストロース30mM、NaCl 120mM)と混合し、1000gで10分間遠心分離する。ペレットを、2%のスキムミルクパウダーを含有する4mlのタイロードバッファー(NaCl (150mM)、NaHCO3 (12mM)、KCl、MgCl (各2mM)、グルコース、BSA (各1mg/ml)、pH 7.4))に再懸濁し、1.75×1012のバクテリオファージ(複雑度1000倍)とともに2時間、室温でインキュベートする。血小板を1000gで10分間遠心分離し、上清みを除去し、4℃で保存する。
ヒト静脈血5mlを、S-Monovette(Sarstedt)に回収し、110gで10分間遠心分離する。血小板に富む血漿(上相)の1mlを新たなチューブに移し、9mlのCGSバッファーと混合し、1000gで10分間遠心分離する。ペレットを、CaCl2、MgCl2 (各2mM)、ADP(15μM)を含有する4mlの枯渇ファージ溶液に再懸濁し、2時間、室温でインキュベートする。血小板を遠心分離(1000g、10分間)により2回洗浄し、14mlのタイロードバッファーに再懸濁する。
結合ファージの溶出のため、血小板を遠心分離(1000g、10分間)し、1mlのグリシンバッファー(0.1M、pH 2.2)に再懸濁し、10分間室温で遠心分離する。遠心分離(1000gで10分間)後、Tris(2M、pH 8.0)の添加により上清みを中和する。
溶出したファージを10mlの対数成長期の大腸菌XL1 blue細胞と混合し、37℃で30分間インキュベートする。遠心分離(10分間、6000g)後、細胞を400μlのLBGAT 培地(50mMグルコース、100μg/mlアンピシリンおよび20μg/mlテトラサイクリンを含有するLG培地)に再懸濁し、LBGAT 寒天培地上にプレーティングし、一晩37℃でインキュベートする。
2回5mlのLBGAT 培地を用いてコロニーを寒天プレートから掻き集め、0.1のOD600で20mlのLBGAT 培地の播種に使用する。細胞を37℃で200rpmにて1時間インキュベートし、約1×1010M13K07ヘルパーファージで再感染させる。37℃で1時間後、細胞を遠心分離(5分間、6000g)により回収し、アンピシリン(100μg/ml)およびカナマイシン(50μg/ml)を補給したLB培地に再懸濁し、一晩30℃で200rpmでインキュベートする。ファージを、PEG沈殿により回収し、1mlのファージ希釈バッファー(ライブラリーレスキューで記載)に再懸濁する。
非活性化GPIIb/IIIaを結合するscFvのライブラリーの枯渇:
非活性化GPIIb/IIIaレセプターを発現するチャイニーズハムスター卵細胞(CHO)(A5細胞;Peterら, Blood, Vol 9, 1998, pp.3240-3249)をトリプシン処理し、遠心分離(10分間、140g)し、5×106細胞/mlでタイロードバッファー中に再懸濁する。第1回目の選択由来の約109のパッケージファージを4mlの細胞権懸濁液と混合し、1時間室温でインキュベートする。細胞を20分間140gで遠心分離し、再度遠心分離(20分間、3200g)により上清みを透明にする。
活性GPIIb/IIIaを提示するCHO細胞(C13細胞、Peter KおよびO'Toole TE, J Exp Med. 1995, 181 (1): 315-326)をトリプシン処理により回収し、遠心分離し、1mlのタイロードバッファーを用いて1回洗浄する。4×106細胞を、4mlの枯渇ファージ溶液とともに30分間室温でインキュベートする。
細胞を10分間140gで遠心分離し、50mlのタイロードバッファーに再懸濁し、20分間700gで3回遠心分離し、1mのタイロードバッファーに再懸濁し、最後に200μlのReopro(2mg/ml)に再懸濁する。室温で20分後、ベンチトップ(benchtop)遠心機において13000rpmで10分間の遠心分離により細胞を除去する。
細胞を10分間140gで遠心分離し、50mlの改変タイロードバッファー(HepesでpH6に調製し、CaCl2、MgCl2 (各2mM)および1mg/ml BSAを含有するタイロードバッファー)に再懸濁し、20分間700gで2回遠心分離し、1mlの改変タイロードバッファーに再懸濁し、最後に1mlのグリシン(pH 2.2)に再懸濁する。室温で15分後、混合物を、100μlのTris(2M、pH8)の添加により中和し、ベンチトップ遠心機において13000rpmで10分間の遠心分離により透明にする。
製造者(Qiagen)の推奨にしたがってDNAスピンカラムを用い、選択実験由来のクローンのDNAを調製する。DNAをBstNI(New England Biolab)で消化し、1%アガロースゲルで解析する。
5mlのLBGAT 培地に250μlの一晩培養物を播種し、37℃で180rpmにて4時間インキュベートする。細胞を遠心分離(5分間、6000g)により回収し、アンピシリン(10μg/ml)およびIPTG(100μM)を含むLB培地に再懸濁し、一晩28℃で180rpmでインキュベートする。遠心分離により細胞を再度回収し、500μlのショック溶液(50mM Tris HCl pH 8.0, 20%サッカロース、1mM EDTA)に再懸濁し、8℃で1時間インキュベートする。遠心分離(10分間、13000rpmベンチトップ遠心機)により細胞を除去し、上清みを4℃でPBSに対して3時間2回透析する。
FACSCalibur装置(Becton Dickinson)を用いてFACS解析を行う。
完全クエン酸化血液(S-Monovette, Sarstedt)を、ADP(20μM)を含有または非含有タイロードバッファー50μl中で1/50に希釈し、10μlのペリプラズムscFv抽出物とともに20分間室温でインキュベートする。第二抗体としてFITC標識抗His抗体(Dianova)を添加し、20分間インキュベートし、Cellfix(1×)で固定する。
完全クエン酸化血液(S-Monovette, Sarstedt)を、ADP(20μM)を含有または非含有タイロードバッファー50μl中で1/50に希釈し、Cellfix(1×, Becton Dickinson)での固定前のペリプラズムscFv抽出物20μlの存在下または非存在下で、FITC標識抗フィブリノーゲン抗体(WAK-Chemie Medical)とともに20分間インキュベートする。
アグレゴメトリーを、製造者の推奨にしたがってBiodata PAP-アグレゴメーター(aggergometer)を用いて行った。10分間37℃でのscFvとのインキュベーション後、20μMの添加により凝集を誘導した。
GPIIb/IIIa結合scFvの選択
脾臓およびPBL起源のヒトscFvファージディスプレーライブラリーを、1回の活性化ヒト血小板に関する選択により、GPIIb/IIIa特異的クローンについてスクリーニングする。非活性化特異的結合体を除去するため、非活性化血小板に関してライブラリーを事前に枯渇させる。第2および第3回目の選択を、非活性化バリアントを提示する細胞において、枯渇後に、組換え活性化GPIIa/IIIbレセプターを発現するCHO細胞において行う。溶出を、酸により、またはReoproとの競合のいずれかにより行う。第3回目の選択後、クローンを無作為に選出し、BstNI消化による富化および血小板に対する活性化特異的結合に関して最初に解析する(表1)。1つのクローンMB9は、酸性溶出および競合的溶出を用いると、それぞれ、80クローンのうち10、60クローンのうち10に富化されることがわかる。また、MB9は、血小板結合において非常に活性化特異的であり、図1に示すFACS解析により示されるように、血小板へのフィブリノーゲンの結合を阻害する。そこでは、以下のこと:左側ヒストグラム:MB9 scFvは、活性化ヒト血小板には結合する(黒)が、非活性化ヒト血小板には結合しない(灰)こと:右側ヒストグラム:フィブリノーゲンは、活性化血小板には結合する(黒)が、非活性化血小板には結合しない(灰)ことを示す。活性化血小板へのフィブリノーゲンの結合は、MB9 scFvの存在下では阻害される(明灰色曲線)。
ヒトscFvマスターフレームワークの起源
重鎖のCDR3領域のランダム化による合成ライブラリーの作製のため、大腸菌細胞での優れた産生特性により2つのヒトマスターフレームワーク(C9およびE4、図3)を選択する。両scFvは、大ヒトファージディスプレー抗体ライブラリーに由来し(Little, M.ら、J. Immunol. Methods 1999, 231: 3-9)、それぞれ、B型肝炎ウイルス抗原(C9)およびエストラジオール(E4)に特異的である。
C9およびE4 scFvを、NcoIおよびNotIクローニングサイトを用い、標準的組換えクローニング技術を用いることにより、stuffer scFvを置換するpEXHAM1ベクターDNAにクローン化する。
元の配列の変化を伴わずに重鎖のCDR3のランダム化を可能にするベクターを調製するため、この領域を、IIS型酵素BbsI(BpiI)の制限酵素認識部位を含有するstuffer DNA断片と置換する。図4に示すようなオリゴヌクレオチドプライマーを用い、標準的PCR反応を行い、図5に概略を示した特有のNpiIクローニングサイトを含む重鎖CDR3の3'および5'のscFv領域のDNA断片を作製する。図5は、pEXHAM4/C9およびpEXHAM4/E4の構築のために使用したオリゴヌクレオチドのアニーリング位置の概略図である。pEXHAM1でクローン化したscFv C9およびE4の遺伝子をボックスで示す。黒で塗った部分は、CDR領域を示し、オリゴヌクレオチドは矢印で示し、番号で識別する(cp. 配列定義)。BpiI制限エンドヌクレアーゼ認識部位を示す。
ライブラリーを作製するため、NNKコドンによる4〜7つのランダムアミノ酸をコードする合成オリゴヌクレオチド(VHCDR3#3.4/cutからVHCDR3#3.7/cutまで;各1μM)を、オリゴヌクレオチドVHCDR3#for/cutおよびVHCDR3#back/cut(0.2μM)(図4)を使用し、1単位のVent exo--DNAポリメラーゼ(New England Biolab)を用いて以下のPCR条件:100μlの容量で2分94℃、5×[1分94℃、1分40℃、1分72℃]10分72℃で別々に埋め込む。PCR産物を、PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製する。物質の2/3を100単位のBbsIで6時間切断し、上記のキットで再度精製する。VHCDR3#3.4/cutおよびVHCDR3#3.5/cutの場合は、ベクターDNA pEXHAM4/C9およびpEXHAM4/E4をBbsIで切断し(1単位/μgで6時間)、両ベクター断片(3.8および0.5kb)を、1%アガロースゲル(ゲル抽出キット、Qiagen)からのゲル溶出により精製する。VHCDR3#3.6/cutおよびVHCDR3#3.7/cutでは、pEXHAM6/C9およびpEXHAM6/E4を使用し、したがって、たった1つのベクター断片を精製しなければならなかった。すべての断片を等モル比ですべての場合においてライゲーションを行う。その後、本質的に実施例1に記載のようにして、ライゲーション混合物を沈殿させ、Tris 10mM、pH 8.5に再溶解し、XL1 blue細胞の形質転換に使用する。
合成ライブラリーのパッケージングを、天然ライブラリー(実施例1)で記載のようにして行う。
合成ライブラリーのスクリーニングを、1.75×1011のバクテリオファージ(複雑度1000倍)で開始し、天然ライブラリー(実施例1)で記載したのと全く同様にして行う。
ヒトscFvフレームワーク(C9およびE4)由来の合成ライブラリーを、GPIIb/IIIa特異的クローンについて、実施例1で記載したのと全く同様にしてスクリーニングする。第3回目の選択後、クローンを無作為に選出し、VH-CDR3領域のDNA配列を決定した(表2参照)。
ベクター構築:
pEXHAM1におけるC9およびE4 scFvの軽鎖の可変領域のCDR3配列を、図16に概略を示した隣接BbsI制限部位を導入する合成stufferと置換した。標準的PCR反応を、図17に示すオリゴヌクレオチドを用いて行い、軽鎖CDR3の3'および5'方向のscFv領域のDNA断片を増幅した。PCR断片を精製し、BbsIで切断した。表示したオリゴのハイブリダイゼーションによりstuffer CDR3断片を直接作製した。すべての3つの断片を、BbsI消化pEXHAM1ベクターDNAにライゲートし、それぞれ、pEXHAM9/C9およびpEXHAM9/E4を作製した。さらなるBbsI部位を除去するため、pEXHAM9/C9およびpEXHAM9/E4の軽鎖断片を、MluIおよびNotI部位を用いてpEXHAM6/C9およびpEXHAM6/E4に再クローン化した。ランダム化VLCDR3配列のクローニングを容易にするため、1.5kb DNA断片をバクテリオファージλDNA(bp 15629-17152)から標準PCR反応を用いて増幅し、プライマーLAM1およびLAM2(図17)を、pEXHAM10誘導体のstuffer領域のBbsI間のSacIにより導入し、pEXHAM11(C9)およびpEXHAM11/(E4)を作製した(E4)。
VLラブラリーを作製するため、NNKコドンによる4〜6つのランダムアミノ酸をコードする合成オリゴ(C9VLCDR3#4/cutからC9VLCDR3#6/cutまでおよびE4VLCDR3#4/cutからE4VLCDR3#6/cutまで、図17)を、オリゴC9VLCDR3#for/cutおよびC9VLCDR3#back/cutまたはE4VLCDR3#for/cutおよびE4LCDR3#back/cut(図17)を使用し、本質的に実施例2に記載のようにして別々に埋め込む。本質的に実施例1に記載のようにして、PCR産物をBbsIで切断し、pEXHAM11/C9およびpEXHAM11/E4それぞれのBbsI消化ベクターDNA断片にライゲートし、大腸菌XL1 blue細胞の形質転換に使用した。
実施例2に記載のscFvクローンSA2、SA3、SA8、SA10およびSA11をチェインシャッフリングのために選択した。これらのクローンのVL遺伝子を、標準的クローニング手順を用い、MluIおよびNotI部位を介して、E4 VLライブラリー由来ランダム化VL遺伝子で置換した。大腸菌XL1 blue細胞の形質転換の反復により、2.6×107から6.5×107までの別々のサブライブラリーを作製した。
サブライブラリーのパッケージングを、実施例1に記載のようにして行なった。
GPIIb/IIIa特異的ライブラリーのスクリーニング
5回のパンニングを活性化GPIIb/IIIa発現CHO細胞において、本質的に実施例1に記載のようにして行なったが、CHO細胞は105だけ使用した。最初の4回は、結合したファージを低pHにより溶出し、5回目は、Eptifibatide(0.1〜1000μg/ml)の濃度を増加させることにより溶出した。100μg/mlで溶出したファージをさらに調べた。
合成ライブラリーから単離し、重鎖のCDR3内にRXDモチーフを示した5つのscFvクローン(SA2、SA3、SA8、SA10およびSA11、実施例2参照)を、チェインシャッフリングにより親和性成熟のために選択した。各クローンについて、定常軽鎖ドメインを、ランダム化合成または天然CDR3領域を有するE4軽鎖ライブラリーと置換した。これらのサブライブラリーを、4回のパンニングについて酸性溶出を用い、GPIIb/IIIa提示CHO細胞に関して再度スクリーニングした。5回目では、低分子量GPIIb/IIIaインヒビター(RGD-擬態)であるEptifibatideの濃度を増加させることにより溶出を行ない、親和性が増大したクローンを選択した。単一のクローンを、活性化血小板への結合について最初にFACSにより解析した。クローンのほとんどが、増加したが不均一な活性化血小板への結合を示した。続くDNA配列決定により、単一クローンの強い富化は観察されなかった。2つのクローン、SCE5およびSCE18が同定され、すべての活性化血小板を均一に染色した(図18)。両クローンは、SA2フレームワークに由来し、類似の軽鎖CDR3配列(SCE5: CLLYYGGGQQGVFGGG, SCE18: CLLYYGGAWVFGGG)を有する。
MB9 scFvを異なる組換え抗体形式に変換し、おそらく改良された(例えば、大きさ、安定性または親和性)バリアントを作製した。
MB9のサイズを増大するため、例えばVHとVLとの間のリンカーを縮小することによりダイアボディを作製し、機能的scFvを形成することはできないが、2つの抗原結合部位を有する非共有結合により連結したホモダイマーを形成することができる分子を作製し得る。かかるダイアボディは、標準的PCR法を用い、元のリンカーを3個のアミノ酸に短縮することにより作製した(図19)。scFvモノマーの非存在およびダイマー(およびマルチマー)形態の存在は、このMB9誘導体に関するサイズ排除クロマトグラフィーおよび活性化血小板へのフィブリノーゲン結合の阻害により示された。
MB9 scFvをFab形式に変換するため、重鎖および軽鎖の可変領域をPCRにより別々に増幅し、FabベクターpREFAB9(図20)に、それぞれCH1およびClambdaの前にクローン化した。配列を図22に示す。MB9 Fabのペリプラズム調製物のFACS解析は、活性化ヒト血小板へのMB9 Fabの特異的結合を示した(図21)。
[1]活性状態の血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaへの実質的に排他的な結合により有効であることを特徴とする、血小板凝集を阻害するためのヒト起源の抗体またはその誘導体。
[2]抗体誘導体が、その軽鎖および重鎖の可変ドメインを含有する免疫グロブリンの断片であることを特徴とする[1]記載の抗体。
[3]断片が単鎖抗体断片(scFv)またはFabであることを特徴とする[2]記載の抗体。
[4]断片が単鎖抗体断片(scFv)の組換え構築物であることを特徴とする[2]または[3]記載の抗体。
[5]単鎖抗体断片がIgMまたはIgG抗体に由来することを特徴とする[2]または[3]記載の抗体。
[6]該断片が図2のアミノ酸またはそれに少なくとも60%相同であるアミノ酸配列を含有することを特徴とする[3]または[4]記載の抗体。
[7]活性化状態の血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaに特異的に結合する抗体の可変ドメインを含有する二価または多価抗体構築物であることを特徴とする[1]〜[6]いずれか記載の抗体。
[8]抗体の配列をコードする核酸のライブラリーを提供する工程;
該核酸ライブラリーからファージライブラリーを作製する工程;
該ファージライブラリーを逐次、非活性血小板、活性血小板、非活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞、および活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞と反応させる工程;および
該血小板または活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞に結合したファージ結合を溶出する工程
を含む、血液血小板の活性化インテグリンレセプターへの結合により血小板凝集を阻害するための抗体を同定および/または単離する方法。
[9]ヒトドナーから全RNAを単離する工程;
全RNAに含まれるmRNAを単離する工程;
cDNAの作製;
抗体ポリペプチドをコードするcDNA分子から単鎖断片をコードするDNA分子を引き出す工程
を含む、ライブラリーを提供する工程を特徴とする[8]記載の方法。
[10]重鎖および軽鎖可変ドメインを含む単鎖抗体断片の配列を含む核酸を提供する工程;および
該単鎖抗体断片の領域に少なくとも1つの無作為化されたヌクレオチド配列を導入する工程
を含むライブラリーを提供する工程を特徴とする[8]記載の方法。
[11]少なくとも1つの無作為化されたヌクレオチド配列が導入される領域がCDR3領域であることを特徴とする[10]記載の方法。
[12][1]〜[7]いずれか記載の抗体をコードするDNA配列。
[13][12]記載のDNA配列を含有してなる発現ベクター。
[14][12]記載のDNA配列または[13]記載の発現ベクターを含有してなる細胞株。
[15][1]〜[7]いずれか記載の抗体、[12]記載のDNA配列または[13]記載の発現ベクターを含有してなる医薬組成物。
[16]血小板上の血小板インテグリンレセプターをブロックするための医薬組成物の調製のための、[1]〜[7]いずれか記載の抗体、[12]記載のDNA配列または[13]記載の発現ベクターの使用。
[17]活性化血小板の数を決定するための診断組成物の調製のための、[1]〜[7]いずれか記載の抗体、[12]記載のDNA配列または[13]記載の発現ベクターの使用。
Claims (13)
- 血小板凝集を阻害し、活性状態の血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaへの親和性が、非活性コンフォメーションの血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaへの親和性よりも高いことを特徴とする、ヒト起源の単鎖抗体断片(scFv)を含む抗体。
- 該断片が配列番号4に示されるアミノ酸配列または配列番号4の配列に少なくとも60%相同であるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1記載の抗体。
- 該抗体が、配列番号4のアミノ酸配列の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、請求項1記載の抗体。
- 該単鎖抗体断片の軽鎖がCLLYYGGGQQGVFGGGまたはCLLYYGGAWVFGGGからなる軽鎖CDR配列を含む、請求項1記載の抗体。
- 二価または多価scFv抗体構築物であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の抗体断片。
- 重鎖および軽鎖可変ドメインを含む単鎖抗体断片をコードする配列を含む核酸のライブラリーを提供する工程;
該単鎖抗体断片のCDR3領域に少なくとも1つの無作為化されたヌクレオチド配列を導入する工程
該核酸ライブラリーからファージライブラリーを作製する工程;
該ファージライブラリーを逐次、非活性血小板、活性血小板、非活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞、および活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞と反応させる工程;および
該ファージライブラリーから活性インテグリンレセプター分子に結合するファージを溶出することによって、該血小板または活性インテグリンレセプター分子を発現する他の細胞に結合したファージを得る工程
を含む方法によって得られ得る、
血小板凝集を阻害し、活性状態の血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaへの親和性が、非活性コンフォメーションの血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaへの親和性よりも高いことを特徴とする、ヒト起源の単鎖抗体断片(scFv)。 - 請求項1〜5いずれか記載の抗体をコードする配列からなるDNA分子。
- 請求項7記載のDNA分子を含有してなる発現ベクター。
- 請求項7記載のDNA分子または請求項8記載の発現ベクターを含有してなる細胞株。
- 請求項1〜5いずれか記載の抗体、請求項7記載のDNA分子または請求項8記載の発現ベクターを含有してなる医薬組成物。
- 血小板上の血小板インテグリンレセプターをブロックするための医薬組成物の調製のための、請求項1〜5いずれか記載の抗体、請求項7記載のDNA分子または請求項8記載の発現ベクターの使用。
- 活性化血小板の数を決定するための診断組成物の調製のための、請求項1〜5いずれか記載の抗体、請求項7記載のDNA分子または請求項8記載の発現ベクターの使用。
- 非活性状態の血小板インテグリンレセプターGPIIb/IIIaに結合しない、請求項1〜5いずれか記載の抗体。
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