JP2010025992A - 画像形成装置用エンドレスベルト及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーよりなる熱可塑性ポリマー成分を主成分とし、該熱可塑性ポリマー成分とカーボンブラックとを加熱混合、押出成形して得られる画像形成装置用エンドレスベルト。熱可塑性ポリマー成分の弾性率が2000MPa以上であり、熱可塑性ポリマー成分とカーボンブラックとの加熱混合に先立ち、カーボンブラックにシリコーンが添着されており、シリコーンの含有量がカーボンブラック100重量部に対して1〜10重量部、シリコーンの平均分子量が1000以上10万未満。
【選択図】図1
Description
また、弾性率が大きいポリマーは、成形時の加熱温度が高く、導電性フィラー等を配合すると著しく割れやすくなり、耐屈曲性に問題があった。
(1) エンドレスベルトにフッ素樹脂を用いる(特許文献5)
(2) エンドレスベルト表面に潤滑性を有する物質をまぶす(特許文献6)
(3) エンドレスベルトをフッ素系塗料にてコーティングする(特許文献7)
(4) エンドレスベルト成形時に長鎖脂肪酸などを混合する(特許文献8)
(5) エンドレスベルトに鎖状シリコーン樹脂を加える(特許文献9)
(6) エンドレスベルトのフィラーであるカーボンブラックにシリコーンで表面処理を施す(特許文献10)
本発明はまた、このような画像形成装置用エンドレスベルトを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明は上記知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
しかしながら、芳香族ポリエステルを使用すると加熱混合時やエンドレスベルト成形時に高温になりやすく、シランカップリング剤やアルキルシランのような低分子量成分を添加すると、せっかくカーボンブラックに添着しても分解してブリードするため、好ましくない。また、芳香族ポリエステルはシランカップリング剤やアルキルシランのような低分子量成分を添加すると、機械的な耐久性能が著しく低下しやすい。さらに、従来より芳香族ポリエステルは脂肪族ポリエステルと比して溶融粘度の剪断依存性が大きく、シリコーンやアルキルシランなどの低表面張力の材料を加熱混合すると、シリコーンやアルキルシランの影響によりさらに溶融粘度が下がり、カーボンブラックなどが分散しない問題があった。
本発明において、カーボンブラックに添着するシリコーンの平均分子量は1000以上10万未満である。シリコーンの平均分子量が高いと相対的に官能基当量が上がる(官能基が少なくなる)ため、カーボンブラックへ添着しにくくなりグラフト効率が低下し、添着せずにブリードアウトしやすくなるため好ましくない。また、シリコーンの分子量が小さすぎると該熱可塑性ポリマー成分とのインターペネトレート効果が発揮されず、シリコーンの分子量が大きいと上述のようにカーボンブラックに添着されないため、いずれにしても耐屈曲性を向上させることができず好ましくない。また、低分子量のシリコーンは、シロキサンガスが発生し易く、加熱混合、加熱押し出しの際に発泡傷の原因となったりするので好ましくない。また、通常シリコーンは鎖状で存在しているが、低分子量になると環状になりやすく、環状になるとカーボンブラックに添着できないだけでなく、揮発して電子機器部品のスイッチ部などに付き、それらがスイッチ部の熱でシリカ(絶縁)になることでスイッチング不良を起こすため、好ましくない。特に、プリンターなどの製品として使用する際に揮発するようなオリゴマーなどは感光体を汚染する可能性もあり好ましくない。従って、カーボンブラックに添着でき、かつエンドレスベルトとして使用した場合に好適なシリコーンの平均分子量は1000以上10万未満であり、より好ましくは3000以上5万未満である。
これらのシリコーンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
そのため、添着されるシリコーンの最適量はカーボンブラックの種類や量、目的とするトナー離型性のための表面張力にて決定されるが、カーボンブラックを10〜50重量%程度含有するエンドレスベルトにおいては、上述の如くカーボンブラック100重量部に対してシリコーンを1〜10重量部添加すると好適である。
カーボンブラックは、エンドレスベルトにした際の機械特性、電気特性、寸法特性、化学特性を考慮して混合されるものであるが、本発明において、シリコーンを添着して用いるカーボンブラックは、加熱混合前にシリコーンを混合するため、粉体品、もしくは粒状品であることが好ましく、また粉体は均一であることが好ましい。
シリコーンを添着させる際、カーボンブラックのpHが低いとシリコーンが加水分解を起こし、シリコーンの分子量が低下し、シリコーンの主鎖であるシロキサン結合が分解されてシラノール基が増える。そのため、熱可塑性ポリマー成分とカーボンブラックを加熱混合する時に分解して低分子量のシロキサンガスが発生し、発泡の原因となるため好ましくない。また、シリコーンが加水分解を起こしカーボンブラックの表面に添着できずにブリードし、サージングを起こしたり、ブリードしたシリコーンが低分子量だと発泡の原因になったりする。また、加熱混合時、又は押出成形時にpHを調整し中性にしたとしても、添着時に生成したシラノール基が脱水縮合するため、水を発生し成形機内で蒸気となってこれも発泡の原因となるため好ましくない。従って加熱混合前にカーボンブラックのpHを高くすることが望ましく、好ましくはpHは4以上がよい。また、カーボンブラックのpHの上限は12以下であることが好ましい。
また、カーボンブラックのpHが4以上10未満であればシリコーンの加水分解が抑制され、重縮合が起こるため、シリコーンがカーボンブラック表面に添着されやすく好ましい。
また、カーボンブラックのpHが10以上の場合は、シリコーンの加水分解よりも重縮合が進行し易くなるものの、pH4以上10未満である場合に比べて加水分解される傾向があるため、処理条件などを勘案する必要がある。
従って、シリコーンを添着させるカーボンブラックのpHは4以上12以下、特に4以上10未満であることが好ましい。
なお、カーボンブラックのpHは、例えばビーカーにカーボンブラック1gにつき水10mgを加え、15分間煮沸したものを室温まで冷却した後、傾斜法、又は遠心分離法にて上澄み液を除去した後の泥状物にガラス電極pH計の電極を挿入してJIS Z8802に従って計測される。
カーボンブラックのDBP吸油量が大きいほど、カーボンは数珠状に連なった連鎖(カーボンストラクチャクチャー)を形成しやすく、カーボン凝集体が発生しにくい利点と、少ない添加量で導電性を発現しやすいため低コストな利点があったが、その反面、材料配合から成形加工の過程においてカーボンブラックを配合した樹脂に加えられる様々な剪断力によりカーボン連鎖が壊れて電気抵抗率がばらつきやすく、安定しないといった問題点がある。
反対にカーボンブラックのDBP吸油量が少なすぎると、カーボン連鎖を形成しにくいため導電性を発現させるためのカーボンブラック添加量が多くなりすぎ、材料の耐屈曲性を損なう問題点がある。
また、シリコーンを加熱混合前に添着させる場合、カーボンブラックのDBP吸油量が多いほど、シリコーンを物理吸着できるため好ましいが、多すぎるとシリコーンによって覆われないカーボンの表面官能基が多くなり、熱可塑性樹脂との加熱混合時における熱可塑性ポリマー成分の劣化の原因となり好ましくない。
従って、好ましいカーボンブラックのDBP吸油量は、50〜300cm3/100gである。
カーボンブラックの比表面積が大きいほど、少ない添加重量で導電性が発現するため、機械的強度を割れにくさの点で有利となる反面、カーボンブラック添加量により導電性が急激に変化する傾向にあるため半導電領域にコントロールするためには±0.05%以内の配合精度が必要であり、エンドレスベルトの抵抗ばらつきを±1オーダー以内で均一にすることが難しい。また、比表面積が大きいカーボンブラックは一般に粒径が小さいため、樹脂中に分散させる場合にカーボンブラック粒子がだまになりやすく、その結果、カーボンの凝集体が成形品に混在し、カーボンの凝集体の箇所に電気が集中し、部分的な絶縁破壊を発生させやすい。また、カーボンブラックの比表面積が小さすぎる(カーボン粒子が大きすぎる)と、カーボン凝集体を形成しにくいため成形品の外観は平滑な反面、カーボン粒子間の接触により導電性発現が左右されやすく電気抵抗率がばらつきやすい。従って、最適化したカーボン粒子径を選択することが重要である。
また、シリコーンを添着させるためには、カーボンブラックの比表面積が小さすぎると添着する官能基が相対的に減少し、シリコーンがカーボンブラックに結合されずブリードするおそれがある。また、カーボンブラックの比表面積が大きすぎると未添着の官能基が存在するため、主成分の熱可塑性ポリマー成分を劣化させたり、吸着水分量が多くなるため、成形前に乾燥する時間が長くなり好ましくない。
従って、好ましいカーボンブラックの平均一次粒径は20〜50nmであり、比表面積は35〜500m2/gである。
カーボンブラックの揮発分が多いほど、その表面特性によりカーボンの分散性は良好になる反面、加熱混練中にガスを発生させるため、成形上不利である。逆に、カーボンブラックの揮発分が少ないほど、加熱混練中のガスが発生しにくいため成形性は良好である反面、カーボンの分散性は悪化する傾向にある。
従って、好ましいカーボンブラックの揮発分量は、0〜20%である。
式(i):LogY≧−X+20
式(ii):LogY≦−X+30
ただし、X,Yは次の通り。
X:エンドレスベルト中のカーボンブラックの含有量(重量%)
Y:エンドレスベルトの100V印加電圧,10秒での表面電気抵抗率(Ω)
logY≧−X+21
logY≦−X+29
であることが好ましい。
本発明において、熱可塑性ポリマー成分は、熱可塑性エラストマー及び/又は熱可塑性樹脂よりなる。
本発明のエンドレスベルトに用いる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度,中密度,低密度,直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロック又はランダム共重合体、ゴム又はラテックス成分、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール(POM)、ポリアリレート(Par)、ポリカーボネート(PC)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレンオキシド(PPE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリオキシベンジレン(POB)、ポリイミド(PI)、液晶性ポリエステル、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリビスアミドトリアゾール、ポリアミノビスマレイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル、ポリフッ素化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ素化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリウレタン共重合体等の1種又はこれらの2種以上の混合物からなるものが使用できる。
本発明で用いられる熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、塩ビ系等の熱可塑性エラストマー等が使用できる。
熱可塑性ポリマー成分として、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとのアロイ材料を用いる場合、熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性樹脂と共通の官能基を持つなど、熱可塑性樹脂との親和性の高い熱可塑性エラストマーを用いることにより、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーのアロイ分散性が良くなり、耐クラック性の飛躍的な向上や引張り弾性率の調整が可能となり、優れた表面平滑性や、カーボンブラック等の導電性物質分散性が得られるため、好ましい。
ポリエステルポリエーテルブロック共重合体は、(a)炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、(b)芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステル、及び(c)重量平均分子量が400〜6,000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応、又は、エステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させたものである。炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、好ましくは、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールを主成分とするものであり、これらの1種又は2種以上を併用したものを使用することができる。
ポリエステルポリエステルブロック共重合体は、上記(c)重量平均分子量が400〜6,000のポリアルキレンエーテルグリコールのかわりに、(d)脂肪族又は脂環式ジカルボン酸と脂肪族ジオールとが縮合したポリエステルオリゴマー、(e)脂肪族ラクトン又は脂肪族モノオールカルボン酸から合成されたポリエステルオリゴマーと、前記(a)炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、(b)芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させたものである。
熱可塑性ポリマー成分として、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとのアロイ材料を用いる場合、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの重量比に特に制限はない。ただし、一般に熱可塑性樹脂の中で結晶性樹脂は耐薬品性、耐屈曲性に優れ、非晶性樹脂は成形寸法安定性に優れるので、使用目的に応じ、熱可塑性エラストマーとの比率を設定することができるが、本発明では、熱可塑性ポリマー成分の弾性率を2000MPa以上とするために弾性率が小さい熱可塑性エラストマーの含有量を抑えることが好ましく、なかでも、熱可塑性樹脂/熱可塑性エラストマーの重量比が70/30より熱可塑性樹脂を多く、熱可塑性樹脂/熱可塑性エラストマーの重量比が75/25〜100/0が更に好ましく、80/20〜100/0が特に好ましく、85/15〜100/0がとりわけ好ましい。
熱可塑性ポリマー成分として、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとのアロイ材料を用いる場合、両材料の粘度差が大きすぎると、製造条件を調整しても良好な分散が得られず、また、特にシリコーンを添着したカーボンブラックも、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーのいずれか一方の相に分散することとなり、不均一分散となりやすいことがあるので、粘度差は小さい方が好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーを同一条件でMFR測定したときの比が1/20〜20/1程度の範囲に収まることが好ましく、1/10〜10/1の範囲となれば更に好ましい。
本発明においては、熱可塑性ポリマー成分として以下のDSC測定による融点が130℃以上、260℃以下のものを用いることが好ましい。
(DSC(示差走査熱量)測定)
セイコー電子工業(株)製SSC−5200(商品名)を使用し、試料を昇温速度20℃/minにて400℃まで昇温させ、融解ピーク温度をDSC測定による融点とする。
本発明で用いる熱可塑性ポリマー成分は、弾性率が2000MPa以上であることを必須とする。
熱可塑性ポリマー成分の弾性率が2000MPa未満では、画像形成装置用のエンドレスベルトとして2本以上のロールに張架される際に、伸びてしまい、画像を悪化させてしまう。従って、熱可塑性ポリマー成分の弾性率は高いほど好ましく、特に2500MPa以上であることが好ましい。
ただし、熱可塑性ポリマー成分の弾性率の上限は、通常ロールに張架されたときの耐屈曲性によって決定され、ポリイミドなどの熱硬化性ポリマー成分では通常6000MPa以下、ポリエステルなどの熱可塑性ポリマー成分の場合であると3000MPa以下である。
なお、この熱可塑性ポリマー成分の弾性率はJIS−K7127(フィルムの引張弾性率)により測定された値である。
本発明のエンドレスベルトには、各種目的に応じて任意の配合成分を配合することができる。ただし、耐熱エンプラなどには加熱混練時に揮発しないよう、付加的成分の耐熱性に考慮する必要があり、配合の必要が無い場合もある。
更に、用途に要求される性能を満たすものであれば、導電性物質として、カーボンブラックのほかに、カーボンファイバー、グラファイトやカーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、フラーレンなどのカーボン系フィラーや各種金属フィラー、金属酸化物系導電性フィラーなどの導電性フィラーを配合してもよく、導電性フィラーのほかに、イオン導電性物質、例えば4級アンモニウム塩などを用いてもよいが、これらの導電性物質の中でも特にカーボンブラックを用いることが電気抵抗率の湿度依存性が小さくなるため好ましいことから、本発明ではカーボンブラックを必須成分とする。
シリコーンをカーボンブラックに添着させるには、カーボンブラックの表面官能基とシリコーンの官能基が化学的に結合されることが望ましく、そのため、官能基の種類によっては添着させる際に一定の加熱を行った方が結合させやすい。また、添着の方法としてはスプレー塗布、ミキサーでの混合などの乾式や、溶液にカーボンブラックとシリコーンを分散混合させ、乾燥して溶液をとばす湿式の方法がある。乾式法はコストに優れ、湿式法は均一に添着できるメリットがあるため、用途によって使い分けるとよい。
また、混合形態としては乾式法としてミキサー類での攪拌混合だけでなく、湿式法として各種溶剤にてシリコーンを希釈し、その溶液中にカーボンブラックを投入して混合した後、溶剤を各種乾燥機などで除去する方法などもあり、これに限らない。
本発明においては熱可塑性ポリマー成分と、シリコーンを添着したカーボンブラックとを加熱混合して樹脂組成物とした後にエンドレスベルトを成形することも、熱可塑性ポリマー成分とシリコーンを添着したカーボンブラックを加熱混合してそのままエンドレスベルトを得ることもできる。
成形方法については、特に限定されるものではなく、連続溶融押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、あるいはインフレーション成形法など公知の方法を採用して得ることができるが、特に望ましいのは、連続溶融押出成形法である。特に押し出したチューブの内径を高精度で制御可能な下方押出方式の内部冷却マンドレル方式あるいはバキュームサイジング方式が好ましく、内部冷却マンドレル方式が最も好ましい。
本発明によれば、以下のような物性を有するエンドレスベルトを得ることができる。
エンドレスベルトの表面張力が高いとトナーとの親和性が上昇し、付着しやすくなるため好ましくない。
エンドレスベルトの表面張力は35dyne/cm以下であれば、トナー、その他の構成によってはエンドレスベルトとして使用可能であるが、実用的には33dyne/cm以下が好ましく、30dyne/cm以下であれば特に好ましい。
ただし、表面張力が小さ過ぎると感光体とベルトとの摩擦が少なくなりすぎ、トナー一次転写効率が悪くなるため、表面張力は27dyne/cm以上であることが好ましい。
エンドレスベルトの表面張力は、和光純薬製などの各種濡れ試薬を綿棒用いてベルト表面に塗り(約6cm2を0.5秒)、塗布2秒後のベルト表面を観察して、濡れているか否かを以下の濡れの判断基準を参考に判断し、2秒間ぬらすのに最も近い標準液を見つけ、その表面張力をもって、試料の表面張力とする。
(1) 濡れている場合:液膜が破れを生じないで、塗布された時の状態を保っている
(2) 濡れていない場合:液膜がその周辺で収縮する
エンドレスベルトの表面粗さRaは0.02μm<Ra<0.25μmであることが好ましい。表面粗さRaが0.02μm未満であるとトナーの一次転写効率が悪化してしまう。エンドレスベルトの表面粗さRaが大きいとクリーニングブレードによるクリーニング性が低下しトナーがすり抜けるため好ましくない。従って本発明のエンドレスベルトは0.02μm<Ra<0.25μmが好ましく、0.02μm<Ra<0.15μmであると特に好ましい。
エンドレスベルトの表面粗さRaは例えばキーエンス製VK8500などの非接触式共焦点レーザー顕微鏡などで測定できる。具体的には100倍のレンズ倍率を使用し、任意の単位面積あたりの表面粗さを測定することができ、例えば面積40μm2においての表面粗さを測定し、その平均値をとることができる。
本発明のエンドレスベルトを例えば中間転写ベルトとして画像形成装置に用いる場合には、耐屈曲性が悪いとクラックが発生して画像が得られなくなるので、耐屈曲性の良好なエンドレスベルトであることが好ましい。具体的な数値としては、耐折曲げ回数が500回以上あれば一応エンドレスベルトとして機能を発揮して使用することはできるものの、エンドレスベルトに耐屈曲性を補うための補強テープなどの2次加工が必要となり、コスト的に好ましくない。実用的には5000回以上が好ましく、10000回以上であればさらに好ましく、30000回以上であれば特にクラックが発生しにくくなるので好ましい。
耐屈曲性の程度は、JIS P−8115の耐折曲げ回数の測定方法に従うことで定量的に評価でき、耐折曲げ回数の大きいエンドレスベルトほどクラックが入りにくく、耐屈曲性に優れていると判断することができる。
本発明のエンドレスベルトはカーボンブラックを配合することにより導電性を得ることができる。
抵抗領域は目的により異なるが、表面抵抗率1〜1×1016Ω/□の範囲から選定することが好ましい。
また、エンドレスベルト1本中の表面抵抗率の分布は狭い方が好ましく、それぞれの好ましい表面抵抗率領域において、1本中の最大値と最小値の差が1桁以内であることが好ましい。
エンドレスベルトの表面抵抗率は例えばダイヤインスツルメント(株)製ハイレスタ,ロレスタやアドバンテスト(株)製R8340Aなどにより容易に測定することができる。
エンドレスベルトの厚みは50〜1000μmが好ましく、80〜500μmが更に好ましく、100〜200μmであれば特に好ましい。
本発明のエンドレスベルトは、電子写真式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ機等の画像形成装置に中間転写ベルト,搬送転写ベルト,感光体ベルトなどとして用いられる。エンドレスベルトはそのままベルトとして使用しても良いし、ドラムあるいはロール等に巻き付けて使用しても良い。
更に蛇行防止や端面補強等の目的のために、所定の寸法のエンドレスベルトの内側及び/又は外側端部近傍に耐熱テープを貼り付けたり、或いはウレタンゴムやシリコンゴム等のテープをベルト内側の端部近傍に貼り合わせても良い。
原料は下記のものを用い、配合割合は表1の通りとした。
・PBT:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバデュラン5040ZS」
重量平均分子量=40,000
PS換算重量平均分子量=122,000
MFR(240℃、2.16kgf荷重)=3g/10分
結晶融点=224℃
・PEER:東洋紡積(株)製 ポリエステル−ポリエステルエラストマー
「ペルプレンS3001」
MFR(240℃、2.16kgf荷重)=19g/10分
結晶融点=216℃
・カーボンブラック1:電気化学(株)製アセチレンブラック「デンカブラック粒状品」
pH=9
DBP吸油量=180ml/100g
比表面積=65m2/g
揮発分=0%
平均一次粒径=39nm
・カーボンブラック2:デグサ(株)製チャンネルブラック「NIpex150」
pH=4
DBP吸油量=110ml/100g
比表面積=110m2/g
揮発分=5%
平均一次粒径=25nm
クラリアントジャパン(株)製 リン系酸化防止剤「PEPQ」
・シリコーン1:東レダウコーニング(株)製シリコーンオイル「SH200」
平均分子量=4400
熱可塑性ポリマー成分とカーボンブラックを合計で100重量部として配合し、酸化防止剤とシリコーンは外添とした。また、カーボンブラック濃度はおおよその抵抗値を示す範囲を目標にカーボンブラックの種類ごとに設定した。
150℃に加熱された300Lのヘンシェルミキサー(FM300E/I 三井鉱山(株)製)にカーボンブラック30kgを投入し、続いてカーボンブラックが含浸する程度にイソプロピルアルコールを投入し、カーボンブラック100重量部に対し表1に示す量のシリコーンを投入して20分間攪拌加熱混合した。その後、カーボンブラックを棚式乾燥機にて200℃にて10時間乾燥しカーボンにシリコーンを添着した。
各原料を、二軸混練押出機(IKG(株)製 PMT32)を用いて材料ペレット化した。
該押出機はL/D=32、2ベント式のものであり、各々のベントより原料投入側にニーディングを配し、原料投入側のベントは開放するのみ、溶融樹脂吐出側は真空ポンプにて−760mmHg(−100kPa)まで減圧した。樹脂の吐出量は14kg/時間とし、シリンダーの温度はホッパーに一番近いシリンダーから原料投入側のベントがついたシリンダーまでを250℃、それ以外を220℃とし、回転数は140rpmで実施し、吐出された溶融樹脂をストランド状にして水槽を通過させたのち、ペレタイズして所定の大きさのペレットを作成した。
加熱混練により得られた材料ペレットを130℃で12時間乾燥し、φ190mm、ダイスリップ幅1.0mmの6条スパイラル型環状ダイつき40mmφの押出機により、環状ダイ下方に溶融チューブ状態で押し出し、押出した溶融チューブを、環状ダイと同一軸線上に支持棒を介して装着した外径184mmの冷却マンドレルの外表面(温度90℃)に接しめて冷却固化させつつ、次に、エンドレスベルトの中に設置されている円筒形の中子と外側に設置されている4点式ベルト引取機により、エンドレスベルトを円筒形に保持した状態で引き取りつつ、300mm長の長さで輪切りにして、厚み140μm、表面抵抗値が1×107〜1×1012Ωになるように押出し量と引き取り速度、押出温度を調整しつつ、シリンダーの温度とダイスの温度は260℃とし、内径183mm、厚さ0.14mmのシームレスベルトとした。
評価は必要に応じ、シームレスベルトを必要な大きさに切り開いて実施した。
ダイヤインスツルメント製「ハイレスタUP(UR端子)」を使用し、500Vで10秒間と、100Vで10秒間を、それぞれ20mmピッチでベルト円周方向に20点づつ印加して測定した平均値とした。
電圧依存性は、表面電気抵抗率の100V値/500V値を計算して求めた。
JIS P−8115に準拠し、試験片を幅15mm、長さ100mmの大きさに切断し、MIT試験機にて折り曲げ速度175回/分、回転角度135°左右、引張荷重1.0kgfの条件にて、折り曲げ治具の先端部の曲率半径をR=0.38mmとして破壊に至る折り曲げ回数を測定した。
表面張力は和光純薬製などの各種濡れ試薬を綿棒用いてベルト表面に塗り(約6cm2を0.5秒)、塗布2秒後のベルト表面を観察して、濡れているか否かを以下の濡れの判断基準を参考に判断し、2秒間ぬらすのに最も近い標準液を見つけ、その表面張力をもって、試料の表面張力とした。
(濡れの判断基準)
濡れている場合:液膜が破れを生じないで、塗布された時の状態を保っている
濡れていない場合:液膜がその周辺で収縮する
◎:問題なし
○:ややサージング
△:サージング
×:著しいサージング
○:発泡なし(ベルト表面に発泡の後が見られないもの。)
△:微発泡(ベルト表面の一部に発泡の後が見られるものの、流れ方向に2,3
箇所以内であり、画像形成装置用エンドレスベルトとして使用した
際に画質を悪化させないもの。)
×:発泡あり(ベルト全面に発泡の後が見られ、画像形成装置用エンドレスベル
トとして使用した際に画質を悪化させるもの。)
○:ブツなし(ベルト表面に高さ10μm以上のブツがないもの。)
△:小ブツあり(ベルト表面に高さ10μm以上20μm以下の小さなブツがあ
り、鮫肌状で光沢がないが、画像形成装置用エンドレスベルト
として使用した際に画質を悪化させないもの。)
×:大きなブツあり(ベルト表面に高さ20μm以上の大きなブツがあり、画像
形成装置用エンドレスベルトとして使用した際に画質を悪
化させるもの。)
評価結果を表1に示す。
なお、表1には、用いた熱可塑性ポリマー成分の弾性率をJIS−K7127(フィルムの引張弾性率)により測定した値を併記した。
表1より、次のことが分かる。
PBTのみをベースポリマーとして使用した。実施例1〜3では、カーボンブラックはNIpex150を使用し、シリコーン添着量をカーボンブラック100重量部に対して2、5、又は10重量部と変更したところ、いずれの配合量においても発泡やブツは見られず、成形性も良好であり、シリコーン添着なしの比較例1,7と比べて、耐屈曲性の向上と発泡、ブツの抑制、カーボン粉体の流動性が改善することによる加熱混合時の原料フィードのばらつきを抑えることができた。
PBTのみをベースポリマーとして使用した。実施例4では、カーボンブラックはデンカブラック粒状品を使用し、シリコーン添加量をカーボンブラック100重量部に対して2重量部とした。シリコーン添着なしの比較例2,5と比して耐屈曲性が向上している。
PBTとPEERを9対1(重量比)の割合でベースポリマーとして使用した実施例5,6では、カーボンブラックはデンカブラック粒状品と又はNIpex150を使用し、シリコーン添着量をカーボンブラック100重量部に対して2又は5重量部とした。いずれも耐屈曲性が向上し、NIpex150においては成形性、発泡、ブツも改善した。一方、PBTとPEERとを7対3(重量比)の割合でベースポリマーとして用いると弾性率が2000MPaを下回り、伸びてしまう。また、シリコーンを用いなかった比較例8、9では表面張力が36以上になってしまうため、トナー離型性を悪化させる。
PBTのみをベースポリマーとして使用した。カーボンブラックはデンカブラック粒状品と又はNIpex150を使用し、シリコーン添着量をカーボンブラック100重量部に対して15重量部とした。シリコーン添着量が多すぎるため、ブリードしサージングを起こすため、フィルム化できなかった。
2 帯電器
3 露光光学系
4 現像器
5 クリーナー
6 導電性エンドレスベルト
7,8,9 搬送ローラ
Claims (9)
- 画像形成装置に用いられるシームレスベルトであって、熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーよりなる熱可塑性ポリマー成分を主成分とし、該熱可塑性ポリマー成分とカーボンブラックとを加熱混合し、押出成形してなる画像形成装置用エンドレスベルトに於いて、
該熱可塑性ポリマー成分の弾性率が2000MPa以上であって、
該熱可塑性ポリマー成分とカーボンブラックとの加熱混合に先立ち、該カーボンブラックにシリコーンが添着されており、
該シリコーンの含有量がカーボンブラック100重量部に対して1〜10重量部であり、
該シリコーンの平均分子量が1000以上10万未満であることを特徴とする画像形成装置用エンドレスベルト。 - 請求項1において、該熱可塑性ポリマー成分がエステル結合を有することを特徴とする画像形成装置用エンドレスベルト。
- 請求項2において、該熱可塑性ポリマー成分のうち少なくとも一成分が芳香族ポリエステルであることを特徴とする画像形成装置用エンドレスベルト。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、該カーボンブラックが、DBP吸油量50〜300cm3/100g、比表面積35〜500m2/g、揮発分0〜20%、平均一次粒径20〜50nmを満たすことを特徴とする画像形成装置用エンドレスベルト。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、耐折曲げ回数が3万回以上であることを特徴とする画像形成装置用エンドレスベルト。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、表面張力が35dyne/cm以下であることを特徴とする画像形成装置用エンドレスベルト。
- 請求項1ないし6のいずれか1項において、該熱可塑性ポリマー成分がポリアルキレンテレフタレートを含むことを特徴とする画像形成装置用エンドレスベルト。
- 請求項1ないし7のいずれか1項において、該熱可塑性ポリマー成分は、熱可塑性樹脂よりなるか或いは、熱可塑性エラストマーの含有量が30重量%未満の熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとの混合物よりなることを特徴とする画像形成装置用エンドレスベルト。
- 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の画像形成装置用エンドレスベルトを含むことを特徴とする画像形成装置。
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