JP2010025162A - 流体封入式防振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】空気圧や電力等の外部エネルギによるアクチュエータを用いることなく、複数の防振効果が有効に発揮されて、構造の簡単化やコンパクト化、軽量化、低コスト化等が図られ得る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供する。
【解決手段】中間室50と受圧室38を仕切る隔壁部分30に受圧室側可動ゴム膜52を配設し、中間室50と平衡室40を仕切る隔壁部分30に平衡室側可動ゴム膜54を配設する一方、中間室50から受圧室38への流体流動を許容し且つ受圧室38から中間室50への流体流動を阻止する一方向弁78を設けると共に、中間室50を受圧室38又は平衡室40に連通させて中間室50の静圧を回復させる静圧回復用通路84を設けた。
【選択図】図1
【解決手段】中間室50と受圧室38を仕切る隔壁部分30に受圧室側可動ゴム膜52を配設し、中間室50と平衡室40を仕切る隔壁部分30に平衡室側可動ゴム膜54を配設する一方、中間室50から受圧室38への流体流動を許容し且つ受圧室38から中間室50への流体流動を阻止する一方向弁78を設けると共に、中間室50を受圧室38又は平衡室40に連通させて中間室50の静圧を回復させる静圧回復用通路84を設けた。
【選択図】図1
Description
本発明は、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づく防振効果を利用する流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体等の防振装置の一種として、流体封入式防振装置が知られている。流体封入式防振装置は、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、それぞれ非圧縮性流体が封入されて壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成された受圧室と壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室を形成して、両室をオリフィス通路を通じて相互に連通させた構造とされている。このような構造によれば、受圧室に振動が入力されて、受圧室と平衡室の相対的な圧力変動によりオリフィス通路を通じて流動する流体の共振作用等の流動作用によって防振効果が発揮され得る。かくの如き流体封入式防振装置は、例えば、自動車用のエンジンマウントやボデーマウント、デフマウント、サスペンションメンバマウントの他、サスペンションブッシュ等への適用が検討されている。
ところで、自動車用のエンジンマウント等では、自動車の走行状態に応じて異なる周波数域や振幅の振動が入力されることから、複数の異なる振動に対して防振性能が要求される。しかし、上述のオリフィス通路による防振効果は、オリフィス通路がチューニングされた周波数域においてのみ有効に発揮され得るのであって、複数の異なる振動に対する有効な防振性能の範囲が狭い問題があった。
このような問題に対処するために、本出願人は、特許文献1(特開2007−263301号公報)や特許文献2(特開2004−150546号公報)において、第一のオリフィス通路と該第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路を設けると共に、第二のオリフィス通路に弁体を設けて、弁体の開閉作動により第二のオリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換え制御することによって、複数のオリフィス通路による防振効果を発揮し得る構造を提案した。
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の流体封入式防振装置においては、弁体の作動制御に際して、空気圧や電力等の外部エネルギを用いたアクチュエータを特別に組み込む必要があることから、構造の複雑化や重量増加、大型化、アクチュエータの稼動コストの負担等が生じるおそれがあった。
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、空気圧や電力等の外部エネルギによるアクチュエータを用いることなく、複数の防振効果が有効に発揮されて、構造の簡単化やコンパクト化、軽量化、低コスト化等が図られ得る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様及び技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明の特徴とするところは、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成された受圧室と壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室とを形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けた流体封入式防振装置において、前記受圧室および前記平衡室に加えて中間室を形成して該中間室に非圧縮性流体を封入し、該中間室と該受圧室とを仕切る隔壁部分に受圧室側可動ゴム膜を配設すると共に、該中間室と該平衡室とを仕切る隔壁部分に平衡室側可動ゴム膜を配設する一方、該中間室から該受圧室への流体流動を許容し且つ該受圧室から該中間室への流体流動を阻止する一方向弁を設けると共に、該中間室を該受圧室又は該平衡室に連通せしめて該中間室の静圧を回復させる静圧回復用通路を設けた流体封入式防振装置にある。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、第一の取付部材と第二の取付部材の間に振動が入力されると受圧室に圧力変動が惹起される。その結果、受圧室と平衡室との間及び受圧室と中間室との間に、それぞれ、相対的な圧力変動が惹起される。そして、受圧室と平衡室の相対的な圧力差に基づいてオリフィス通路を通じての流体流動が生ぜしめられる。また、受圧室と中間室の相対的な圧力差に基づいて、一方向弁を通じての中間室から受圧室への流体流動が生ぜしめられると共に、受圧室側可動ゴム膜に弾性変形が生ぜしめられる。更にまた、中間室と平衡室の圧力差に基づいて平衡室側可動ゴム膜に弾性変形が生ぜしめられる。
具体的には、例えばオリフィス通路がチューニングされたエンジンシェイク等の低周波大振幅振動の入力時には、受圧室と中間室との間および受圧室と平衡室との間にそれぞれ大きな圧力変動が惹起される。この圧力差に基づいてオリフィス通路を通じての流体流動が生ぜしめられて、かかる流体の共振作用に基づいて高減衰効果等の防振効果が発揮される。
ここにおいて、受圧室と中間室に繰り返し惹起される大きな圧力変動は、受圧室側可動ゴム膜と一方向弁にも作用する。受圧室が中間室に対して正圧になると、一方向弁は閉塞維持されて中間室の容積は変化しないで、受圧室側可動ゴム膜の中間室側への膨出変形が平衡室側可動ゴム膜の平衡室側への膨出変形によって許容される。反対に、受圧室が中間室に対して負圧になると、一方向弁は開口状態となって中間室から一方向弁を通じて受圧室に向けて流体が流動する。この際、受圧室側可動ゴム膜も受圧室側に膨出変形するが、受圧室側可動ゴム膜自体が弾性(ばね剛性)を有するが故にかかる受圧室側可動ゴム膜の受圧室側への膨出変形によって受圧室の負圧が解消されてしまうことがなく、一方向弁を通じての中間室から受圧室への流体流動が効果的に生ぜしめられる。そして、振動入力により受圧室の圧力変動が繰り返されるに伴い、中間室の容積が、一方向弁を通じての中間室から受圧室への流体流動によって次第に減少する。この中間室の容積減少は、受圧室側可動ゴム膜および平衡室側可動ゴム膜の中間室側への膨出変形によって補償されることとなり、その結果、受圧室の壁部の一部を構成する受圧室側可動ゴム膜のばね剛性が、中間室側への膨出変形量が大きくなることに伴って増大せしめられる。それ故、低周波大振幅振動の入力時における受圧室の圧力変動が、受圧室側可動ゴム膜の弾性変形に伴う吸収を抑えて、より一層効率的に惹起されるのであり、その結果、前述のオリフィス通路を通じての流体流動量が増大せしめられて、かかる流体流動作用に基づく防振効果がより一層効果的に発揮されるのである。
一方、例えばアイドリング振動や走行こもり音等の、オリフィス通路における流体の共振周波数よりも高周波数域の振動が入力されると、オリフィス通路が、流体の反共振作用等に起因して実質的に目詰まり状態になる。しかし、かかる状態下では、受圧室側可動ゴム膜および平衡室側可動ゴム膜の弾性変形に基づいて、受圧室の圧力変動が中間室を介して平衡室に逃がされることにより、著しい高動ばね化が抑えられて、優れた防振性能が維持され得るのである。
すなわち、高周波数域の小振幅振動では、低周波大振幅振動の入力時に比して受圧室と中間室の間に惹起される圧力変動が小さいことから、受圧室側可動ゴム膜の中間室から受圧室側への膨出変形と平衡室側可動ゴム膜の平衡室から中間室側への膨出変形によって、受圧室の圧力変動が吸収される。それ故、もともと受圧室と中間室の圧力変動が小さいことから一方向弁を通じての流体流動が発生したとしても流動量が小さいことに加えて、受圧室と中間室の圧力変動が上述の受圧室側可動ゴム膜と平衡室側可動ゴム膜の弾性変形によって吸収されてしまうことから一方向弁を通じての流体流動自体が発生し難い。従って、中間室の容積減少による受圧室側可動ゴム膜のばね剛性の増大が問題とならず、受圧室の圧力変動の吸収作用による低動ばね効果が発揮されるのである。
なお、前述の低周波大振幅振動の入力に際しての中間室の容積減少は、低周波大振幅振動が入力されなくなった際に、静圧回復用通路により回復する。即ち、低周波大振幅振動の入力時には、中間室から受圧室への一方向弁を通じての流体流動に伴って中間室の容積が減少することとなるが、低周波大振幅振動が入力されなくなると、中間室は、容積減少に伴う受圧室側可動ゴム膜および平衡室側可動ゴム膜の弾性変形に伴う復元力に基づいて、受圧室や平衡室に対して相対的に負圧状態となる。この中間室と受圧室や平衡室との圧力差を利用して、中間室には静圧回復用通路を通じて流体が流入することとなり、中間室の容積が回復されて、平衡室と略同じ略大気圧状態にまで回復する。その結果、受圧室側可動ゴム膜および平衡室側可動ゴム膜における弾性変形も回復されてばね剛性の増大が解消される。そして、このように弾性変形状態が回復した受圧室側可動ゴム膜および平衡室側可動ゴム膜の弾性変形に基づいて、上述の如き高周波数域の小振幅振動に対する良好な防振効果が発揮され得るのである。
また、上述の説明から明らかなように、本発明における静圧回復用通路は、低周波大振幅振動の入力時に中間室への流体流入を阻止し得るだけの流動抵抗を有するものであって、且つ、低周波大振幅振動が入力されていない状態下で、受圧室側可動ゴム膜および平衡室側可動ゴム膜の弾性復元力に基づいて中間室への流体流動を許容して中間室の容積回復を許容し得るものであれば良い。例えば、中間室を受圧室又は平衡室に対して直接に、或いはオリフィス通路等を介して間接的に接続するように形成される。
而して、上述の説明から明らかなように、本発明に従えば、外部からのエネルギー供給を必要とするアクチュエータを設けることなく、低周波大振幅振動に対するオリフィス通路による防振効果と、高周波小振幅振動に対する受圧室側可動ゴム膜および平衡室側可動ゴム膜の弾性変形に基づく防振効果とが、何れも効果的に発揮され得る、流体封入式防振装置が実現可能となるのである。
また、本発明の流体封入式防振装置では、前記受圧室側可動ゴム膜および前記平衡室側可動ゴム膜の少なくとも一方に対して、その前記中間室側への膨出変形方向に離隔して対向配置されており、該受圧室側可動ゴム膜又は該平衡室側可動ゴム膜が該中間室に向かって膨出変形されることにより該受圧室側可動ゴム膜又は該平衡室側可動ゴム膜が当接せしめられてその弾性変形量を制限する拘束部材を設けた態様が、採用されても良い。
このような態様によれば、低周波大振幅振動の入力時に、受圧室側可動ゴム膜及び/又は平衡室側可動ゴム膜の中間室側に向かう変形変位が、拘束部材への当接によって一層確実に制限されて、中間室のばね剛性が増大される。それ故、低周波大振幅振動の入力時において、受圧室の圧力変動量が一層大きく確保され得て、オリフィス通路の流体流動量が更に増大されることとなり、オリフィス通路による防振性能の更なる向上が図られ得る。なお、拘束部材は、例えば、受圧室側可動ゴム膜や平衡室側可動ゴム膜に対して、中間室の内方に所定距離を隔てて対向位置する硬質の当接部を設けること等によって、実現され得る。
また、本発明の流体封入式防振装置では、前記第二の取付部材に筒状部を設けて該筒状部の一方の開口部側に前記第一の取付部材を離隔配置し、該第一の取付部材と該第二の取付部材を弾性連結する前記本体ゴム弾性体によって該筒状部の該一方の開口部を閉塞する一方、該筒状部の他方の開口部を前記可撓性膜で閉塞して、該本体ゴム弾性体と該可撓性膜の間に非圧縮性流体の流体封入領域を画成し、更に該第二の取付部材に仕切部材を支持させて該仕切部材で該流体封入領域を仕切り、該仕切部材と該本体ゴム弾性体との間に前記受圧室を形成すると共に、該仕切部材と該可撓性膜との間に前記平衡室を形成して、該仕切部材の内部に前記中間室を形成し、該仕切部材において該中間室と該受圧室の隔壁部分に前記受圧室側可動ゴム膜を配設すると共に、該中間室と該平衡室の隔壁部分に前記平衡室側可動ゴム膜を配設した態様が、採用されても良い。
このような態様を採用することにより、受圧室と平衡室および中間室の3つの流体封入室を、第二の取付部材の筒状部内を巧く利用して、軸方向への積層状態で効率的に且つ簡単な構造で形成することが可能となる。
また、本発明の流体封入式防振装置では、前記中間室における前記受圧室側可動ゴム膜と前記平衡室側可動ゴム膜の間に内部流体流路を形成して、該内部流体流路を前記オリフィス通路よりも高周波数域にチューニングした態様が、採用されても良い。このような態様によれば、内部流体流路を流動する流体の共振作用等を利用して、高周波小振幅振動に対する防振効果がより効果的に発揮され得る。
ここにおいて、中間室に内部流体流路を形成するに際しては、例えば、前記受圧室側可動ゴム膜と前記平衡室側可動ゴム膜の少なくとも一方が弾性特性が相互に異なる中周波ゴム膜と高周波ゴム膜とを含んで構成されており、前記中間室において該中周波ゴム膜を介して前記受圧室と前記平衡室の少なくとも一方に面すると共に前記オリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第一の流体流路と、該高周波ゴム膜を介して該受圧室と該平衡室の少なくとも一方に面すると共に該第一の流体流路よりも高周波数域にチューニングされた第二の流体流路とを含んで、前記内部流体流路が構成されている態様が、採用されても良い。
かくの如き態様では、第一の流体流路と第二の流体流路とによって、互いに異なる高周波数域の振動に対してそれぞれ流体流動作用に基づく防振効果を得ることが可能となる。また、かかる態様において、中周波ゴム膜と高周波ゴム膜との弾性特性の相違は、例えば、材料やゴム膜厚さやゴム膜面積やゴム膜形状等を相互に異ならせることによって中周波ゴム膜よりも高周波ゴム膜の方が壁ばね剛性が大きくなるようにさせる他、各ゴム膜に対して帆布等を被着したり各ゴム膜に対して所定距離を隔てて対向位置する硬質当接部を設けたりすることによって中周波ゴム膜よりも高周波ゴム膜の方が弾性変形許容量を小さく抑えたりすることなどによって、有利に設定される。かかる弾性特性の相違を設定することにより、流体流動抵抗が大きくなりがちな第二の流体流路において、そのチューニング周波数域の振動入力時における流体流動量を一層効果的に確保することが可能となる。
また、本発明の流体封入式防振装置では、前記一方向弁において、前記中間室から前記受圧室への流体流動を許容する条件として該中間室と該受圧室の圧力差が設定されるようになっている態様が、採用され得る。
このような圧力差が設定されることにより、オリフィス通路による防振効果が要求されない高周波小振幅振動の入力時における一方向弁の不必要な開口が抑えられる。これにより、高周波小振幅振動の入力時における中間室の容積減少と、それに伴う受圧室側可動ゴム膜および平衡室側可動ゴム膜のばね剛性の増大が抑えられて、それら可動ゴム膜の弾性変形に基づく高周波小振幅振動に対する防振効果が一層安定して発揮されるのである。なお、一方向弁における連通条件としての圧力差の設定は、例えば、公知のチェックバルブのように、弁体が閉状態に保持されるように所定の付勢力を及ぼすバネ等の付勢手段を設けること等によって実現され得る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1,2には、本発明の流体封入式防振装置に関する一実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。自動車用エンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で互いに連結された構造を有している。この第一の取付金具12が自動車のパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付金具14が車両ボデーに取り付けられることにより、パワーユニットが車両ボデーに対して防振連結されるようになっている。
なお、図1では、自動車に装着する前の自動車用エンジンマウント10の単体での状態が示されているが、自動車への装着状態では、パワーユニットの分担支持荷重がマウント軸方向(図1中、上下)に入力されることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14がマウント軸方向で相互に接近する方向に変位して、本体ゴム弾性体16が弾性変形する。また、かかる装着状態下、防振すべき主たる振動は、略マウント軸方向に入力される。以下の説明中、特に断りのない限り、上下方向は、マウント軸方向となる図1中の上下方向をいう。
詳細には、第一の取付金具12は、円柱形状や逆向き円錐形状等とされて、螺子穴18を備えている。螺子穴18が図示しない固定ボルトを用いてパワーユニット側に螺着固定されることによって、第一の取付金具12がパワーユニットに取り付けられるようになっている。
一方、第二の取付金具14は、大径の略円筒形状を有しており、図示しないブラケット金具等を介して車両ボデーに取り付けられるようになっている。この第二の取付金具14の上方の開口部側に第一の取付金具12が離隔配置されて、第一の取付金具12と第二の取付金具14の対向面間に本体ゴム弾性体16が配設されている。
本体ゴム弾性体16は、略円錐台形状を有していて、その小径側端面に第一の取付金具12の外周面が固着されていると共に、大径側端部の外周面に第二の取付金具14の内周面が固着されている。それによって、第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16を介して弾性的に連結されていると共に、第二の取付金具14の上側開口部が本体ゴム弾性体16で流体密に閉塞されている。また、本体ゴム弾性体16の大径側端面には、逆すり鉢状の大径凹所20が第二の取付金具14の内側に開口して形成されていると共に、第二の取付金具14の内周面には、薄肉のシールゴム層22が被着形成されている。また、第二の取付金具14の下端部には、可撓性膜としてのダイヤフラム24が配設されている。
ダイヤフラム24は、全体として略円形状を有する変形容易な薄肉のゴム膜からなり、外周縁部に大径リング状の固定金具26が固着されている。固定金具26が第二の取付金具14の下端部に内挿されて、第二の取付金具14に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、固定金具26がシールゴム層22を介して第二の取付金具14に密着状態で固定されている。これにより、ダイヤフラム24が第二の取付金具14に固定されて、第二の取付金具14の下側開口部がダイヤフラム24で流体密に閉塞されている。
すなわち、全体構造が筒状部とされた第二の取付金具14の上下の開口部が、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム24でそれぞれ流体密に閉塞されていることによって、第二の取付金具14の内側における本体ゴム弾性体16とダイヤフラム24の軸方向対向面間には、流体封入領域としての流体室28が形成されている。かかる流体室28には、例えば、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールなどの粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体からなる非圧縮性流体が封入されている。また、流体室28の軸方向中間部分には、仕切部材としての仕切金具30が配設されている。
仕切金具30は、全体として略円形ブロック状を有していると共に、厚肉円板形状の仕切金具本体32に対して薄肉円板形状の上板金具34と下板金具36が上方と下方からそれぞれ重ね合わされた構造とされている。この仕切金具30が、ダイヤフラム24の第二の取付金具14への組み付けに先立って、第二の取付金具14に内挿されて、第二の取付金具14に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、仕切金具30がシールゴム層22を介して第二の取付金具14に密着状態で固定されている。それによって、流体室28が仕切金具30で流体密に二分されている。
流体室28における仕切金具30を挟んだ一方の側(図1中、上側)には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力に伴い圧力変動が惹起される受圧室38が形成されていると共に、仕切金具30を挟んだ他方の側(図1中、下側)には、壁部の一部がダイヤフラム24で構成されて容積変化が容易に許容される平衡室40が形成されている。これら受圧室38や平衡室40には、流体室28の非圧縮性流体が封入されている。
また、仕切金具30の外周部分には、オリフィス通路としての低周波オリフィス通路42が形成されている。低周波オリフィス通路42は、仕切金具本体32の外周面に開口形成されて周方向に螺旋状に所定の長さで延びる周溝44がシールゴム層22を介して第二の取付金具14に流体密に閉塞されていることで、構成されている。この低周波オリフィス通路42の一方の端部が、上板金具34に形成された開口部46を通じて受圧室38に接続されていると共に、低周波オリフィス通路42の他方の端部が、下板金具36に形成された開口部48を通じて平衡室40に接続されている。それによって、受圧室38と平衡室40が低周波オリフィス通路42を通じて相互に連通されて、振動入力による受圧室38と平衡室40の圧力差に応じて低周波オリフィス通路42を通じての流体流動が生じることとなり、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が発揮されるようになっている。なお、低周波オリフィス通路42を通じて流動する流体の共振周波数は、通路断面や通路長さ等に基づいて設定されており、本実施形態では、自動車のエンジンシェイク等に相当する5〜10Hz程度の低周波数域に設定されている。
さらに、仕切金具30における低周波オリフィス通路42よりも内側の径方向中央部分には、中間室50が形成されている。中間室50は、受圧室38と平衡室40の間に位置して、内部に受圧室38や平衡室40と同じ非圧縮性流体を封入した流体室とされている。
そこにおいて、中間室50と受圧室38を仕切る隔壁部分としての仕切金具30の径方向中央の上端部分には、受圧室側可動ゴム膜としての第一ゴム膜52が配設されていると共に、中間室50と平衡室40を仕切る隔壁部分としての仕切金具30の径方向中央の下端部分には、平衡室側可動ゴム膜としての第二ゴム膜54が配設されている。これら第一ゴム膜52や第二ゴム膜54は、小径の略円板形状を有するゴム弾性材からなり、何れもダイヤフラム24に比して大きな変形剛性とされている。また、仕切金具本体32と上板金具34乃至は下板金具36との径方向中央の各重ね合わせ面間において略円形状を有する第一収容領域56と第二収容領域58が形成されており、これら第一収容領域56と第二収容領域58に対して、第一ゴム膜52と第二ゴム膜54が各別にマウント10の軸直角方向に広がるようにして収容配置されていると共に、各ゴム膜52,54の外周縁部が、仕切金具本体32と上板金具34乃至は下板金具36の間に圧縮変形しつつ挟み込み支持されている。更に、第一ゴム膜52および第二ゴム膜54とマウント軸方向でそれぞれ対向位置する上下の板金具34,36の各径方向中央部分には、透孔60,62が形成されている。
すなわち、中間室50が第一ゴム膜52を挟んで受圧室38と流体密に仕切られていると共に、第一ゴム膜52の一方の面に上板金具34の透孔60を通じて受圧室38の圧力が及ぼされ、且つ第一ゴム膜52の他方の面に中間室50の圧力が及ぼされており、第一ゴム膜52が、受圧室38と中間室50の圧力差に応じて弾性変形することとなる。また、中間室50が第二ゴム膜54を挟んで平衡室40と流体密に仕切られていると共に、第二ゴム膜54の一方の面に中間室50の圧力が及ぼされ、且つ第二ゴム膜54の他方の面に下板金具36の透孔62を通じて平衡室40の圧力が及ぼされていることで、第二ゴム膜54の弾性変形が、中間室50と平衡室40の圧力差に応じて許容され得る。
また、第一ゴム膜52と第二ゴム膜54は、中間室50側への各膨出変形方向に離隔して仕切金具本体32の第一収容領域56の底壁部や第二収容領域58の底壁部と対向配置されており、これら第一ゴム膜52や第二ゴム膜54が中間室50側に膨出変形して仕切金具本体32に当接することで、かかる膨出変形が制限されるようになっている。このことからも明らかなように、本実施形態では、第一ゴム膜52や第二ゴム膜54の中間室50側への膨出変形を抑える拘束部材が、仕切金具本体32を含んで構成されている。
また、中間室50における第一ゴム膜52と第二ゴム膜54の間には、内部流体流路64が形成されている。内部流体流路64は、低周波オリフィス通路42に比して通路長さが短くされていたり、ダイヤフラム24に比して変形剛性の大きな第一ゴム膜52と第二ゴム膜54を介して受圧室38と平衡室40の間に設けられていたりすること等に基づいて、受圧室38と平衡室40の間における流体の流動抵抗に関して、内部流体流路64が低周波オリフィス通路42よりも大きくされている。それによって、内部流体流路64を流動する流体の共振周波数が、低周波オリフィス通路42に比して高周波数域に設定されている。
特に本実施形態では、内部流体流路64が、各別に独立形成された第一の流体流路としての中周波オリフィス通路66と第二の流体流路としての高周波オリフィス通路68を含んで構成されている。高周波オリフィス通路68は、中周波オリフィス通路66と比較して、通路断面が大きくされていると共に、通路長さが短くされている。また、中周波オリフィス通路66および高周波オリフィス通路68の各一方の端部が、ともに第二収容領域58を介して第二ゴム膜54に面している。
さらに、第一ゴム膜52における上板金具34および仕切金具本体32の間に挟圧保持された外周縁部よりも径方向内側の中央領域の一部が、仕切金具30に設けられた仕切突部70を介して、上板金具34および仕切金具本体32の両側から仕切金具30に挟圧保持されている。仕切突部70は、第一ゴム膜52を適当な大きさに二分する方向(本実施形態では、図2中、上下に延びる第一ゴム膜52の一直径方向)に延びている。これにより、本実施形態の第一ゴム膜52が、中周波ゴム膜72と高周波ゴム膜74とに二分されている。
中周波ゴム膜72と高周波ゴム膜74は、相互にばね特性や変形許容量等の弾性特性が異ならされている。具体的には、例えば形状や大きさ、仕切金具本体32の第一収容領域56の底壁部との離隔距離や上板金具34との離隔距離の少なくとも一つが相互に異ならされていることによって、高周波ゴム膜74の弾性特性が中周波ゴム膜72の弾性特性よりも硬くされている。そして、中周波オリフィス通路66の他方の端部が、第一収容領域56を介して中周波ゴム膜72に面している一方、高周波オリフィス通路68の他方の端部が、第一収容領域56を介して高周波ゴム膜74に面している。
従って、高周波オリフィス通路68を流動する流体の共振周波数が、中周波オリフィス通路66のそれよりも高周波数域に設定されている。本実施形態では、中周波オリフィス通路66が、自動車のアイドリング振動等に相当する20〜40Hz程度の中周波数域にチューニングされていると共に、高周波オリフィス通路68が、自動車の走行こもり音等に相当する50〜100Hz程度の高周波数域にチューニングされている。
また、中間室50には、仕切金具本体32をトンネル状に延びて、上板金具34の上端面と内部流体流路64の壁面に開口して受圧室38と接続する、接続流路76が形成されている。接続流路76は、中間室50の内部流体流路64に比して、通路長さが短くされていることによって流体流動抵抗が小さくされている。更に、接続流路76の受圧室38側の開口部には、一方向弁78が設けられている。
一方向弁78は、薄肉板状の金属材等からなる板ばね80に対してシールゴム82が固設された構造とされており、受圧室38側から仕切金具30に重ね合わされて、板ばね80が、上板金具34に溶接や固定ボルト等で部分的に固定されていると共に、シールゴム82が、上板金具34における接続流路76の開口部の全体を覆うようにして該開口部の周りに重ね合わされている。この付勢手段としての板ばね80がシールゴム82を仕切金具30に押さえ付ける方向に付勢しており、かかる付勢力に基づいて、接続流路76の受圧室38側の開口部がシールゴム82で流体密に閉塞されて、受圧室38と中間室50における接続流路76を通じての連通状態が、遮断された状態に保持され得る。
要するに、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に振動が入力されて、第一及び第二の取付金具12,14が接近する方向に変位して、受圧室38の圧力が高まる際に、一方向弁78のシールゴム82は仕切金具30に常時当接していることから、一方向弁78を通じての受圧室38と中間室50の遮断状態は、振幅の大きさに関係なく保持されている。一方、第一及び第二の取付金具12,14が離隔する方向に変位して、受圧室38の圧力が低下する際に、シールゴム82を仕切金具30から離隔する方向に変形変位させる力が板ばね80による付勢力よりも大きくなると、シールゴム82が仕切金具30から離隔変位して、中間室50と受圧室38が連通状態とされ得る。
本実施形態の一方向弁78における中間室50から受圧室38への流体流動を許容する一条件として、エンジンシェイク等に相当する低周波大振幅振動の入力時にシールゴム82が板ばね80の付勢力に抗して仕切金具30から離隔変位することで、かかる流体流動が許容されるように、中間室50と受圧室38の圧力差が設定されている一方、アイドリング振動等に相当する中周波中振幅振動や走行こもり音等に相当する高周波小振幅振動の入力時にシールゴム82が付勢力に基づいて仕切金具30に当接していることで、かかる流体流動が阻止されるように、中間室50と受圧室38の圧力差が設定されている。
また、仕切金具30には、静圧回復用通路84が形成されている。静圧回復用通路84は、一方向弁78による受圧室38と中間室50の連通状態と遮断状態の如何に関わらず、中間室50と受圧室38又は平衡室40を連通する流路とされ、本実施形態では、静圧回復用通路84の一方の端部が低周波オリフィス通路42に接続されていると共に、他方の端部が中間室50の接続流路76に接続されている。これにより、中間室50が、静圧回復用通路84と低周波オリフィス通路42を通じて受圧室38と平衡室40に連通されている。
特に、静圧回復用通路84は通路断面積が充分に小さくされたり、通路長さが充分に大きくされたり、屈曲形状等が採用されたりすること等で、低周波オリフィス通路42や接続流路76に比して流体流動抵抗が充分に大きく設定されている。
上述の如き構造とされた自動車用エンジンマウント10においては、自動車の停車状態下のアイドリング振動等に相当する中周波振動や自動車の走行状態下の走行こもり音等に相当する高周波振動が入力されると、それよりも低周波数域にチューニングされた低周波オリフィス通路42が、流動する流体の反共振作用等に起因して実質的に閉塞状態になる。
ここで、上述の中周波振動や高周波振動は、低周波オリフィス通路42がチューニングされたエンジンシェイク等の低周波大振幅振動に比して振幅が小さい。それ故、受圧室38と中間室50との間に惹起される相対的な圧力振幅も小さいから、一方向弁78が遮断状態に維持される。また、たとえ一方向弁78が仕切金具30から離隔して受圧室38と中間室50が短絡したとしても、一方向弁78の仕切金具30からの離隔変位が小さく、一方向弁78の開口量が小さいことから、受圧室38と中間室50の遮断状態が実質的に維持される。
それ故、受圧室38と中間室50の相対的な圧力変動に基づいて、第一ゴム膜52が弾性変形して受圧室38の圧力変動に対して吸収機能が発揮される。また、受圧室38の圧力変動が第一ゴム膜52を介して中間室50に及ぼされるのに伴い、中間室50と平衡室40との間に相対的な圧力変動が生ぜしめられる。この相対的な圧力変動に基づいて、第二ゴム膜54が弾性変形せしめられる。要するに、これら第一及び第二ゴム膜52,54の弾性変形を介して、受圧室38の圧力変動が中間室50を介して平衡室40に逃がされて、受圧室38の圧力変動が抑えられる。その結果、低周波オリフィス通路42の実質的な閉塞化に伴う著しい動的ばね定数の増大が回避されて、防振性能の向上が図られるのである。
また、本実施形態では、中間室50を介して受圧室38から平衡室40に圧力変動が逃がされる際、中間室50内には、中周波ゴム膜72を介して受圧室38に面する中周波オリフィス通路66や高周波ゴム膜74を介して受圧室38に面する高周波オリフィス通路68において、流体流動が生ぜしめられることとなる。
そして、アイドリング振動の入力時には、中周波ゴム膜72の弾性変形に伴って中周波オリフィス通路66を通じての流体流動量が効果的に確保されて、中周波オリフィス通路66を通じて流動する流体の共振作用等の流動作用に基づいて優れた防振効果が発揮される。なお、その際、高周波ゴム膜74は、中周波ゴム膜72よりも壁ばね剛性が大きく設定されて弾性変形量が制限されることにより、高周波オリフィス通路68を通じての流体流動量の逃げが抑えられる。
また一方、走行こもり音の振動入力時には、中周波オリフィス通路66を通じての流体流動が反共振作用で実質的に阻止されることにより、高周波ゴム膜74の弾性変形に基づいて、高周波オリフィス通路68を通じての流体流動量が確保される。そして、この高周波オリフィス通路68を流動する流体の共振作用等の流動作用に基づいて優れた防振効果が発揮されるのである。
また、自動車の走行状態下のエンジンシェイク等に相当する低周波大振幅振動の入力に際しては、受圧室38の平衡室40や中間室50に対する相対的な圧力変動が、上述のアイドリング振動や走行こもり音等の振動入力時に比して充分に大きくなる。この受圧室38と平衡室40の相対的な圧力差に基づいて、低周波オリフィス通路42を通じての流体流動が生ぜしめられ、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づいて高減衰効果等の防振効果が発揮される。
ここにおいて、受圧室38に惹起される大きな圧力変動は、第一ゴム膜52に対しても直接及ぼされると共に、中間室50を介して第二ゴム膜54にも及ぼされる。更に、受圧室38に惹起される中間室50との相対的な圧力変動は、一方向弁78にも作用する。
そして、受圧室38における中間室50に対する相対的な負圧は、一方向弁78を開放させることとなり、中間室50から受圧室38への流体流出を生ぜしめる。なお、受圧室38における中間室50に対する相対的な負圧は、第一ゴム膜52にも作用して、第一ゴム膜52が受圧室38側に膨出変形するが、第一ゴム膜52の膨出変形に対しては第一ゴム膜52の変形剛性が作用するから、受圧室38における中間室50に対する相対的な負圧は、第一ゴム膜52の変形よりも、一方向弁78を通じての中間室50から受圧室38への流体流出を促進する。
その結果、低周波大振幅振動が連続的に入力されている間、中間室50から受圧室38への流体流出が進む。それに伴い、中間室50の容積が減少し続けて、第一ゴム膜52およひ第二ゴム膜54が中間室50内に向かって次第に膨出し続ける。そして、本実施形態では、これら第一ゴム膜52及び第二ゴム膜54の中間室50内への膨出変形が、拘束部材としての仕切金具本体32への当接で制限されるまで進行すると、図3にモデル図として示されているように、第一ゴム膜52及び第二ゴム膜54の弾性変形が仕切金具本体32によって略阻止された状態となる。
かかる状態下では、低周波大振幅振動が入力されることにより、第一ゴム膜52及び第二ゴム膜54の弾性変形に伴う受圧室38の圧力吸収機能が実質的に阻止される。それ故、受圧室38に対して効率的に圧力変動が惹起され、この圧力変動に基づいて低周波オリフィス通路42を通じての流体流動量が充分に確保されることにより、目的とする防振効果が一層効果的に発揮されるのである。
なお、低周波大振幅振動の入力時において、受圧室38に対して中間室50及び平衡室40に対する相対的な正圧が惹起された状態では、第一ゴム膜52に対して中間室50側に押し込む方向の押圧力が及ぼされる。しかし、かかる受圧室38の正圧は、一方向弁78に対しても、一方向弁78を仕切金具本体32に向かって押し付けて接続流路76を閉塞する方向に作用する。それ故、受圧室38の正圧状態下でも、接続流路76を通じての受圧室38から中間室50への流体流入が阻止される。
また、静圧回復用通路84は、防振をすべき振動の周波数域の圧力変動に対して追従する流体流動が惹起され得ない程に、断面積が小さくされること等で流体流動抵抗が大きく設定されている。それ故、上述の如き低周波大振幅振動の入力時において、静圧回復用通路84を通じての中間室50の圧力漏れが問題となることもない。
尤も、上述の如き低周波大振幅振動時における受圧室38の負圧に際して、中間室50から受圧室38への流体流動により減少した中間室50の容積は、低周波大振幅振動が入力されなくなった状態で、静圧回復用通路84および低周波オリフィス通路42を通じての受圧室38又は平衡室40から中間室50への流体流動作用に基づき回復され得る。これにより、高周波小振幅振動の入力時における第一及び第二ゴム膜52,54の弾性特性が安定して発揮され得る。
それ故、本実施形態の自動車用エンジンマウント10においては、空気圧式アクチュエータや電磁式アクチュエータ等を備えたオリフィス通路切り換え型の従来構造を採用せずとも、エンジンシェイクやアイドリング振動、走行こもり音等の複数の振動に対する防振効果が有効に発揮され得て、かかるアクチュエータを備えた従来構造に比して、構造の簡単化やコンパクト化、軽量化、低コスト化等が効果的に図られ得るのである。
因みに、上述の実施形態に従う構造とされた自動車用エンジンマウント10における具体的な防振特性を例示する。かかる具体例は、自動車用エンジンマウント10に対してパワーユニットの分担支持荷重に相当する静的荷重を中心軸上で第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に及ぼした状態下、それら第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に振動を入力した場合の特性をシミュレートによる計算式に基づいて示すものである。
第一の具体的な例示においては、エンジンからの振動入力に伴い振幅が±0.05mmの振動が第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に入力された場合を想定した防振特性を示す。ここで、低周波オリフィス通路42は、エンジンシェイクに相当する5〜10Hz程度の低周波大振幅振動にチューニングした。また、中周波オリフィス通路66においては、アイドリング振動に相当する20〜40Hz程度の中周波中振幅振動の入力時に中周波ゴム膜72の変形変位による流体の共振作用に基づく防振効果(低動ばねによる振動絶縁効果)が、発揮されるように、且つエンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動に対しては一方向弁78の開放に伴う中周波ゴム膜72の仕切金具30への当接や第二ゴム膜54の仕切金具30への当接による中周波オリフィス通路66の流量制限が機能することに基づいて、発揮されないようにチューニングした。更に、高周波オリフィス通路68においては、走行こもり音に相当する50〜100Hz程度の高周波小振幅振動の入力時に高周波ゴム膜74の変形変位による流体の共振作用に基づく防振効果(低動ばねによる振動絶縁効果)が、発揮されるように、且つエンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動に対しては一方向弁78の開放に伴う高周波ゴム膜74の仕切金具30への当接や第二ゴム膜54の仕切金具30への当接による高周波オリフィス通路68の流量制限が機能することに基づいて、発揮されないようにチューニングした。このようなチューニングを施した防振特性の結果を図4に示す。
また、第二の具体的な例示においては、自動車の走行状態で路面からの振動入力に伴い振幅が±0.5mmの振動が第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に入力された場合を想定した防振特性を示す。低周波オリフィス通路42や中周波オリフィス通路66、高周波オリフィス通路68の各チューニングは第一の具体例と同じである。このようなチューニングを施した防振特性の結果を図5に示す。
図4,5に示された結果からも、エンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動に対しては、低周波オリフィス通路42による高減衰効果が発揮されて、優れた防振効果が得られることが明らかであり、このことからも、低周波大振幅振動の入力時に中周波及び高周波ゴム膜72,74からなる第一ゴム膜52や第二ゴム膜54が充分に拘束変形され得ることが推し量られる。また、アイドリング振動に相当する中周波中振幅振動や走行こもり音に相当する高周波小振幅振動に対しては、第一ゴム膜52や第二ゴム膜54の変形変位による流体の共振作用に基づいて低動ばねによる優れた防振効果(振動絶縁効果)が発揮され得ることが認められる。
要するに、本発明に従って構成された自動車用エンジンマウント10においては、構造の簡単化や軽量化、低コスト化等が図られつつ、複数の周波数域で要求される防振効果に対して効果的に対応することが可能となるのである。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、前記実施形態では、第一ゴム膜52や第二ゴム膜54の中間室50側の膨出変形を制限する拘束部材が、仕切金具本体32により構成されていたが、ゴム膜に固着した帆布等で構成されても良い。更に、第一ゴム膜52や第二ゴム膜54が中間室50側に膨出変形する際に仕切金具本体32に当接する必要は必ずしもなく、換言すれば、拘束部材は本発明の必須の構成要件でない。
また、前記実施形態では、仕切金具30の外周部分に低周波オリフィス通路42が形成されると共に、第一ゴム膜52と第二ゴム膜54の間に中周波オリフィス通路66と高周波オリフィス通路68が設けられることによって、3つのオリフィス通路が採用されていたが、例えば第一ゴム膜と第二ゴム膜の間に設けるオリフィス通路を一つ又は三つ以上としたり、仕切金具の外周部分にオリフィス通路を二つ以上設けても良い。
また、第一ゴム膜52を二つに分割することは必須の構成要件でなく、第一ゴム膜を第二ゴム膜と同様に一つの構造としたり、或いは三つ以上に分割しても良い。また、第一ゴム膜を分割することに代えて或いは加えて、第二ゴム膜を複数に分割することも可能である。
さらに、静圧回復用通路84の設ける位置は特に限定されるものでなく、前記実施形態では、低周波オリフィス通路42を介して受圧室38と平衡室40に開口しているが、例えば受圧室と平衡室の少なくとも一方に対して直接に開口していても良い。
また、一方向弁に静圧回復用通路を設定しても良い。即ち、一方向弁において、受圧室から中間室への流体流動を大きな流動抵抗のもとに僅かに許容する隙間や細孔等を設けて、それを静圧回復用通路とする等しても良い。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用エンジンマウントに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、自動車用ボデーマウントやデフマウント、サスペンションメンバマウント、サスペンションブッシュ等の他、自動車以外の各種振動体を防振する流体封入式防振装置に対して、何れも、適用可能である。
10:自動車用エンジンマウント、12:第一の取付金具、14:第二の取付金具、16:本体ゴム弾性体、24:ダイヤフラム、30:仕切金具、38:受圧室、40:平衡室、42:低周波オリフィス通路、50:中間室、52:第一ゴム膜、54:第二ゴム膜、78:一方向弁、84:静圧回復用通路
Claims (6)
- 第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成された受圧室と壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室とを形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けた流体封入式防振装置において、
前記受圧室および前記平衡室に加えて中間室を形成して該中間室に非圧縮性流体を封入し、該中間室と該受圧室とを仕切る隔壁部分に受圧室側可動ゴム膜を配設すると共に、該中間室と該平衡室とを仕切る隔壁部分に平衡室側可動ゴム膜を配設する一方、該中間室から該受圧室への流体流動を許容し且つ該受圧室から該中間室への流体流動を阻止する一方向弁を設けると共に、該中間室を該受圧室又は該平衡室に連通せしめて該中間室の静圧を回復させる静圧回復用通路を設けたことを特徴とする流体封入式防振装置。 - 前記受圧室側可動ゴム膜および前記平衡室側可動ゴム膜の少なくとも一方に対して、その前記中間室側への膨出変形方向に離隔して対向配置されており、該受圧室側可動ゴム膜又は該平衡室側可動ゴム膜が該中間室に向かって膨出変形されることにより該受圧室側可動ゴム膜又は該平衡室側可動ゴム膜が当接せしめられてその弾性変形量を制限する拘束部材を設けた請求項1に記載の流体封入式防振装置。
- 前記第二の取付部材に筒状部を設けて該筒状部の一方の開口部側に前記第一の取付部材を離隔配置し、該第一の取付部材と該第二の取付部材を弾性連結する前記本体ゴム弾性体によって該筒状部の該一方の開口部を閉塞する一方、該筒状部の他方の開口部を前記可撓性膜で閉塞して、該本体ゴム弾性体と該可撓性膜の間に非圧縮性流体の流体封入領域を画成し、更に該第二の取付部材に仕切部材を支持させて該仕切部材で該流体封入領域を仕切り、該仕切部材と該本体ゴム弾性体との間に前記受圧室を形成すると共に、該仕切部材と該可撓性膜との間に前記平衡室を形成して、該仕切部材の内部に前記中間室を形成し、該仕切部材において該中間室と該受圧室の隔壁部分に前記受圧室側可動ゴム膜を配設すると共に、該中間室と該平衡室の隔壁部分に前記平衡室側可動ゴム膜を配設した請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
- 前記中間室における前記受圧室側可動ゴム膜と前記平衡室側可動ゴム膜の間に内部流体流路を形成して、該内部流体流路を前記オリフィス通路よりも高周波数域にチューニングした請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
- 前記受圧室側可動ゴム膜と前記平衡室側可動ゴム膜の少なくとも一方が弾性特性が相互に異なる中周波ゴム膜と高周波ゴム膜とを含んで構成されており、前記中間室において該中周波ゴム膜を介して前記受圧室と前記平衡室の少なくとも一方に面すると共に前記オリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第一の流体流路と、該高周波ゴム膜を介して該受圧室と該平衡室の少なくとも一方に面すると共に該第一の流体流路よりも高周波数域にチューニングされた第二の流体流路とを含んで、前記内部流体流路が構成されている請求項4に記載の流体封入式防振装置。
- 前記一方向弁において、前記中間室から前記受圧室への流体流動を許容する条件として該中間室と該受圧室の圧力差が設定されるようになっている請求項1乃至5の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
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