JP2010024530A - 転がり軸受及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】内部起点破壊が生じにくく長寿命な転がり軸受及びその製造方法を提供する。
【解決手段】円筒ころ軸受の内輪1及び外輪2は、炭素の含有量が0.7質量%以上の鋼で構成されており、転動体3はSUJ3等の軸受鋼で構成されている。内輪1及び外輪2には高周波焼入れを含む熱処理が施されていて、該熱処理により硬化されてなる硬化層が軌道面1a,2aに形成されている。この硬化層はマルテンサイト組織からなるが、硬化層の内側には、前記熱処理によりパーライト組織層が形成されており、さらにその内側には、硬化されておらず球状化組織からなる芯部が形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は転がり軸受及びその製造方法に関する。
転がり軸受には、寿命と靱性が要求される。特に、高荷重や衝撃的荷重が負荷されることが多い産業用の転がり軸受に関しては、両者のバランスが重要視される。
転がり軸受の転動寿命の原因となる剥離は、内部起点型の剥離と表面起点型の剥離とに大別される。前者は、鋼中に含まれる非金属介在物を起点とするため、鋼材の酸素含有量を低減する方法により長寿命化を図ることができる。一方、後者は、潤滑剤中に含まれる金属粉などの異物の噛み込みによって生じる圧痕の縁部への応力集中により生じるため、残留オーステナイト量を制御して応力集中を緩和する方法により長寿命化を図ることができる。
一般に、表面起点型の剥離は内部起点型の剥離に比べて明らかに短寿命であることから、長寿命な転がり軸受の開発は、表面起点型の剥離を抑制することにより行われることが多い。ところが、残留オーステナイトを多量に析出させるためには、表面に炭素や窒素の富化領域を形成させる必要があり、そのためには浸炭処理や浸炭窒化処理などの特殊なガス雰囲気下での焼入れが必要となる。さらに、多量の残留オーステナイトの析出は、転がり軸受に最も必要な表面硬さの低下をもたらすので、これを硬質の炭窒化物で補う必要があり、そのためにモリブデンなどの高価な合金元素が添加される場合もある。よって、生産コストの増大という問題が生じるおそれがあった。
一方、靱性に関しては、材料の硬さと二律背反の関係にある。したがって、靱性を向上させるためには、基本的には、硬さの低い領域をできるだけ多く確保することが必要となる。このような考え方から、低・中炭素鋼に浸炭処理又は浸炭窒化処理を施して、表面のみを硬化させた浸炭軸受が開発されている。ただし、浸炭鋼は、鉄鋼機械用の転がり軸受などの比較的大型の転がり軸受に使用されることが多い。また、焼入れ性を確保するためにニッケル,モリブデン,クロム等の比較的高価な合金元素の添加が主流であり、浸炭処理などの熱処理の煩雑さと併せて、生産コストの増大を招いている。
これに対して、近年では、硬さが必要な表面部分のみを焼入れし硬化する高周波熱処理が注目されている(特許文献1,2を参照)。この手法は、1つの部品の中に焼入れされ硬化された表面部分と焼入れされない高靱性の芯部とを作ることにより、寿命と靱性とを両立させる手法である。また、焼入れされない芯部を有することにより、焼入れされ硬化された表面部分に圧縮の残留応力が付与されるので、寿命の向上やクラック発生の抑制に有効である。
さらに、熱処理の有無で硬さを制御できるので、高合金の低炭素鋼ではなく、清浄度の優れた汎用の軸受鋼に代表される高炭素鋼を使用することができる。さらに、表面損傷に対して残留オーステナイトが有効であることは前述したが、高周波焼入れの特性上、電流密度は表面が高いので、母材の炭素濃度が0.7質量%程度であれば極表層のみに浸炭鋼並みの残留オーステナイトを確保することもできる。
多量の残留オーステナイトは寸法変化の要因ともなるが、深さ方向で見ると急激に残留オーステナイト量が低下するので、最大剪断応力深さよりも表面側の部分に多量に存在させつつ全体の量は低く抑えられるという利点もある。すなわち、軸受鋼に高周波焼入れを施すことによって、内部疲労,表面疲労のいずれの破損形態に対しても優れた寿命を有し、耐割れ強度の優れた転がり軸受を得ることができる。
特開平11−37163号公報 特開平14−256336号公報
しかしながら、高周波焼入れは、浸炭処理に比べると、焼入れされた表面部分と焼入れされない芯部との境界領域の硬さ勾配が急激となるので、高い応力が作用する用途では強度の弱い内部に応力が作用して内部起点破壊(いわゆるケースクラッシュ)が発生するという問題点を有している。
つまり、産業用の転がり軸受は自動車用転がり軸受等と比べて高い荷重が負荷される場合が多く、剪断応力は内部にまで作用するので、靱性を確保するために芯部の硬さを低くすると、必要以上に硬化層深さを大きくする必要性が生じ、十分な靱性を得るための芯部の量を確保できなくなるおそれがある。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、内部起点破壊が生じにくく長寿命な転がり軸受及びその製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転がり軸受は、軌道面を有する内輪と、前記内輪の軌道面に対向する軌道面を有する外輪と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、を備える転がり軸受において、前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方は、炭素含有量が0.7質量%以上の鋼で構成されており、その軌道面には、高周波焼入れを含む熱処理により硬化されてなる硬化層が形成されているとともに、マルテンサイト組織からなる前記硬化層の内側には、前記熱処理によりパーライト組織層が形成されており、さらにその内側には、硬化されておらず球状化組織からなる芯部が形成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る請求項2の転がり軸受は、請求項1に記載の転がり軸受において、前記硬化層のうち硬さがHv650の部分と前記芯部のうち硬さがHv300の部分との間の深さ方向の硬さ勾配を、最小二乗法で求めた値が95以下であることを特徴とする。 さらに、本発明に係る請求項3の転がり軸受は、請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受において、前記熱処理が施された前記軌道面の残留オーステナイト量が26体積%以上であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項4の転がり軸受は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受において、前記熱処理が施された前記軌道面における前記転動体の転走方向の残留応力が−204MPa以下であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項5の転がり軸受は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の転がり軸受において、前記硬化層の最大剪断応力深さまでの部分における深さ方向の残留応力が−210MPa以下であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項6の転がり軸受の製造方法は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の転がり軸受を製造するに際して、球状化焼鈍しを施した後に、必要硬化層深さよりも深い部分までA1変態点以上に加熱して徐冷し、次いで、必要硬化層深さまでA1変態点以上に高周波加熱して前記高周波焼入れを施すことを特徴とする。
本発明の転がり軸受は、内部起点破壊が生じにくく長寿命である。また、本発明の転がり軸受の製造方法は、内部起点破壊が生じにくく長寿命な転がり軸受を製造することができる。
本発明に係る転がり軸受及び該転がり軸受の製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る転がり軸受の一実施形態である円筒ころ軸受の構造を示す部分縦断面図である。
この円筒ころ軸受は、軌道面1aを外周面に有する内輪1と、内輪1の軌道面1aに対向する軌道面2aを内周面に有する外輪2と、両軌道面1a,2a間に転動自在に配された複数の転動体(円筒ころ)3と、内輪1及び外輪2の間に転動体3を保持する保持器4と、を備えていて、両軌道面1a,2aと転動体3の転動面3aとの間の潤滑が、グリース,潤滑油等の潤滑剤(図示せず)により行われている。なお、保持器4は備えていなくてもよい。また、シール,シールド等の密封装置を備えていてもよい。
この円筒ころ軸受においては、内輪1及び外輪2は、炭素の含有量が0.7質量%以上の鋼(例えばSUJ2,SUJ3等の軸受鋼)で構成されており、転動体3はSUJ3等の軸受鋼で構成されている。内輪1及び外輪2には高周波焼入れを含む熱処理が施されていて、該熱処理により硬化されてなる硬化層(図示せず)が軌道面1a,2aに形成されている。この硬化層はマルテンサイト組織からなるが、硬化層の内側には、前記熱処理によりパーライト組織層が形成されており、さらにその内側には、硬化されていない芯部(芯部は球状化組織からなる)が形成されている。
このように、内輪1及び外輪2は、硬質な硬化層と軟質な芯部との間に中程度の硬さのパーライト組織層が挟まれた3層構造を有しており、硬化層と芯部との境界領域の硬さ勾配が緩やかとされているため、寿命と高靱性とが両立しており、高い応力が作用する用途で使用されても、円筒ころ軸受は内部起点破壊が生じにくく長寿命である。よって、この円筒ころ軸受は、産業用の転がり軸受に好適であり、特に外輪の外径が200mm以上の大型の転がり軸受に好適である。
なお、硬化層のうち硬さがHv650の部分と、芯部のうち硬さがHv300の部分との間の深さ方向の硬さ勾配を、最小二乗法で求めた値が95以下とされていることが好ましい。そうすれば、前記硬さ勾配が、内輪1や外輪2に作用する剪断応力の分布(剪断応力の勾配)よりも緩やか又は同程度となるので、寿命と高靱性とを両立することができる。
また、軌道面1a,2aの残留オーステナイト量は、26体積%以上であることが好ましい。さらに、亀裂の発生及び進展を抑制するためには、軌道面1a,2aにおける転動体3の転走方向の残留応力は−204MPa以下(残留圧縮応力が204MPa以上)とすることが好ましい。さらに、亀裂の発生及び進展を抑制するためには、硬化層の最大剪断応力深さまでの部分における深さ方向(径方向)の残留応力は−210MPa以下(残留圧縮応力が210MPa以上)とすることが好ましい。
このような円筒ころ軸受を製造するための前記熱処理としては、例えば、鋼材に球状化焼鈍しを施した後に、必要硬化層深さよりも深い部分までA1変態点以上に加熱して徐冷(例えば空冷)し、次いで、必要硬化層深さまでA1変態点以上に高周波加熱し急冷して焼入れを施すという熱処理があげられる。
球状化組織を出発組織とし、必要硬化層深さよりも深い部分(例えば、必要硬化層深さの1.2〜2.5倍の深さ)まで高周波加熱等の方法によりA1変態点以上に加熱して徐冷すると、加熱された部分はパーライト化される。加熱されない芯部は、球状化組織のままである。
次に、必要硬化層深さまでA1変態点以上に高周波加熱し急冷して高周波焼入れを施すと、表面にマルテンサイト組織からなる硬化層が形成される。その結果、表面側から順に、マルテンサイト組織、パーライト組織、球状化組織となり、硬化層と芯部との境界領域の硬さ勾配が緩やかとなる。
パーライト組織は、マルテンサイト組織と球状化組織とのほぼ中間の硬さを有している。また、パーライト組織は、球状化組織に比べて炭化物間の距離が短いことから、高周波焼入れにより硬化層を形成する際の前組織がパーライト組織であると、短時間の加熱でも炭素が速やかに拡散して残留オーステナイトを確保しつつ均一な組織が得られやすい。
境界領域の硬さ勾配を緩やかにする熱処理としては、全体に焼入れ及び焼戻しを施す処理である調質処理も有効であるが、全体を相変態点以上の温度に加熱するため変形量が大きくなりやすいという問題点を有している。
転動体3については特に限定されるものではなく、一般的なものを問題なく使用できる。例えば、浸炭窒化処理又は窒化処理を含む熱処理が施されていて、該熱処理により硬化されてなる窒化層が転動面3aに形成されているものがあげられる。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては転がり軸受の例として円筒ころ軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、深溝玉軸受,アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,自動調心ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
〔実施例〕
本実施形態の円筒ころ軸受とほぼ同様の構成の円筒ころ軸受(呼び番号NU2210ET)を用意して、その寿命を評価した。ただし、本発明は外輪の外径が200mm以上である産業用の大型軸受に好適であるので、該大型軸受の平均的な肉厚を再現するために、内輪の内径は30mm、外径は60mm、肉厚(径方向の幅)は15mmとした。まず、試験に用いた円筒ころ軸受の製造方法について説明する。
内輪は、SUJ3製の球状化焼鈍し材を粗加工によって所定の形状に成形した後、高周波加熱により表面から深さ5mm又は10mmまでA1変態点以上に加熱し空冷して、加熱部分をパーライト化した。なお、パーライト化深さは、後述する組織観察により求めた。また、この高周波加熱の条件は、周波数10kHz、加熱時間20〜60秒、ワーク回転速度60min-1である。
次いで、高周波焼入れ及び焼戻しを施し、さらに研磨等の後加工を施すことにより内輪を完成した。この高周波焼入れの条件は、周波数100kHz、加熱時間5〜200秒、ワーク回転速度60min-1、固定焼である。また、焼戻しの条件は、180℃に保持した後に放冷するというものである。
なお、比較例1は、SUJ3製の球状化焼鈍し材を粗加工によって所定の形状に成形した後に、ズブ焼入れを施して内輪を製造したものである。また、比較例2は、SUJ3製の球状化焼鈍し材を粗加工によって所定の形状に成形した後に、パーライト化を行うことなくすぐに高周波焼入れを施して軌道面に硬化層を形成したものである。
ここで、このようにして得られた内輪の分析を行った。まず、表面(軌道面)からの種々の深さでの硬さHv(硬さプロファイル)を測定した。結果を表1及び図2のグラフに示す。なお、図2のグラフには、84kN(P/C=0.6)のラジアル荷重を付与した際に生じる剪断応力の分布を、耐久硬さHvに変換して示した。
そして、硬さHv650の部分と硬さHv300の部分との間の深さ方向の硬さ勾配を、最小二乗法で算出した。結果を表2に示す。なお、芯部の硬さがHv300を超える場合は、硬さHv650の部分と高周波焼入れによる全硬化層深さとの間の深さ方向の硬さ勾配を、最小二乗法で計算する。
図2のグラフから分かるように、軌道面から深さ11mmの部分までの硬さは、比較例1はほとんど変化していないのに対して、実施例1,2及び比較例2は徐々に低下している。そして、その勾配は、比較例2が最も急であり、実施例2が最も緩やかであることが分かる。
Figure 2010024530
Figure 2010024530
また、残留オーステナイト量及び転動体の転走方向(周方向)の残留応力は、X線回折法により測定した。その際には、内輪の表面(軌道面)を電解研磨して加工影響層を取り除いて測定を行った。さらに、内輪を切断して、その切断面を鏡面仕上げ及び腐食処理を行った後に、切断面の顕微鏡観察により組織を特定した。また、組織観察を行った試料を用いて、X線回折法により深さ方向の残留応力を測定した。すなわち、深さ0.15mmの部分を中心とする直径0.1mmの円状範囲について、残留応力を測定した。結果を表2及び図3に示す。
図3は、各試料の表面(軌道面)から深さ10mmまでの組織構成を模式的に示したものである。比較例1は、全体がマルテンサイト組織となっており、比較例2は、表面から約2mmまでがマルテンサイト組織で、芯部は球状化組織となっている。一方、実施例1,2は、表面から順にマルテンサイト組織、パーライト組織、球状化組織となっており、パーライト組織層の厚さは実施例1よりも実施例2の方が厚い。表1や図2の硬さプロファイルは、このような組織構成をよく反映している。
上記のようにして得られた内輪とSUJ2製の一般的な外輪及び転動体とを組み立てて、円筒ころ軸受を製造した。そして、これらの円筒ころ軸受の回転試験を、潤滑剤に異物混入のない清浄な潤滑環境下(以降は清浄潤滑環境下と記す)及び潤滑剤に異物が混入している潤滑環境下(以降は異物混入潤滑環境下と記す)のそれぞれで行い、剥離が生じるまでの時間を測定した。
そして、1種の軸受につき7個の回転試験を行ってワイブルプロットを作成し、ワイブル分布の結果からL10寿命を求め、これを寿命とした。結果を表2に示す。なお、表2の寿命は、それぞれの潤滑環境下での比較例1の寿命を1とした場合の相対値で示してある。回転試験の条件は下記の通りである。
(清浄潤滑環境下での回転試験)
ラジアル荷重:84kN(P/C=0.6)
回転速度 :1000min-1
潤滑剤 :ISO粘度グレードがISO VG68である潤滑油
(異物混入潤滑環境下での回転試験)
ラジアル荷重:25kN(P/C=0.3)
回転速度 :1000min-1
潤滑剤 :ISO粘度グレードがISO VG68である潤滑油
異物 :潤滑剤中に異物を混入する代わりに、内輪の軌道面の幅方向中央に、ロックウェル硬度計を用いて8点の疑似圧痕を形成した。
まず、清浄潤滑環境下での回転試験の結果について説明する。比較例2は、約半数の試料で芯部からの破壊が発生し、短寿命となった。これは、図2から分かるように、芯部に負荷される応力が材料の硬さを上回ったために生じたと考えられる。一方、実施例1,2は、比較例2に見られたような内部からの破壊は認められなかった。内部からの破壊を十分に抑制するためには、負荷される応力よりも素材の硬さの方が大きいという関係を満たす必要があり、そのためには、硬さHv650の部分と硬さHv300の部分との間の深さ方向の硬さ勾配を、最小二乗法で求めた値が95以下である必要があることが判明した。また、このときの軌道面の表面硬さはHv650以上であることが好ましい。
さらに、実施例1,2は、比較例1よりも長寿命であった。これは、清浄潤滑環境下では、高い応力が加わる表面付近(深さ1.5mm以内の領域)に存在する介在物を起点とした剥離が生じるためであると考えられる。比較例1の回転試験後の破損品を調査したところ、軌道面に平行な方向のクラックが介在物から発生し、これが剥離の原因となったことが判明した。つまり、実施例1,2では、径方向の残留圧縮応力が軌道面に平行なクラックの発生を抑制したため、長寿命となったと考えられる。そして、軌道面に平行なクラックの発生を抑制するためには、径方向の残留圧縮応力は210MPa以上であることが好ましいことが分かる。
次に、異物混入潤滑環境下での回転試験の結果について説明する。残留オーステナイトは異物混入潤滑環境下での長寿命化に有効であるが、実施例1,2は残留オーステナイト量が26体積%を超えているため、比較例1に比べて長寿命となったと考えられる。実施例1,2で多量の残留オーステナイトが容易に得られた原因としては、一度パーライト化しているため、球状化炭化物に比べて炭化物が微細であり、且つ、炭化物の溶解を抑制するクロム等の合金元素が球状化炭化物ほど濃化していないことが考えられる。
一方、異物による圧痕からの剥離に関しては、クラックは周方向に対して直交する方向に発生する。すなわち、周方向に圧縮の残留応力が発生すると、クラックの発生が抑制される。比較例2に着目すると、残留オーステナイト量は比較例1と大差ないが、周方向の残留圧縮応力が発生したために長寿命となったと考えられる。そして、クラックの発生を抑制するためには、周方向の残留圧縮応力は204MPa以上であることが好ましいことが分かる。
次に、靱性を評価するための圧砕試験について説明する。ワイヤーカットにより内輪の軌道面に深さ1mmまで予亀裂を形成し、予亀裂の延びる方向を水平にして内輪を圧砕試験装置に装着して、上方から荷重を負荷し内輪を圧縮した。そして、予亀裂からクラックが伝播した荷重を圧砕強度とした。結果を表2に示す。なお、表2の圧砕強度は、比較例1の圧砕強度を1とした場合の相対値で示してある。
実施例1,2及び比較例2は、比較例1と比べて圧砕強度が優れていた。圧砕強度に影響を及ぼす因子としては、高靱性の芯部の存在と周方向の残留圧縮応力の効果とが考えられ、周方向の残留圧縮応力は亀裂の抑制に効果があると考えられるが、本試験では予亀裂が導入してあることから、主に芯部の影響により圧砕強度が決定したと考えられる。
本発明に係る転がり軸受の一実施形態である円筒ころ軸受の構造を示す部分縦断面図である。 硬さプロファイルの測定結果を示すグラフである。 内輪の組織構成を模式的に示した図である。
符号の説明
1 内輪
1a 軌道面
2 外輪
2a 軌道面
3 転動体
3a 転動面

Claims (6)

  1. 軌道面を有する内輪と、前記内輪の軌道面に対向する軌道面を有する外輪と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、を備える転がり軸受において、
    前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方は、炭素含有量が0.7質量%以上の鋼で構成されており、その軌道面には、高周波焼入れを含む熱処理により硬化されてなる硬化層が形成されているとともに、
    マルテンサイト組織からなる前記硬化層の内側には、前記熱処理によりパーライト組織層が形成されており、さらにその内側には、硬化されておらず球状化組織からなる芯部が形成されていることを特徴とする転がり軸受。
  2. 前記硬化層のうち硬さがHv650の部分と前記芯部のうち硬さがHv300の部分との間の深さ方向の硬さ勾配を、最小二乗法で求めた値が95以下であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記熱処理が施された前記軌道面の残留オーステナイト量が26体積%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受。
  4. 前記熱処理が施された前記軌道面における前記転動体の転走方向の残留応力が−204MPa以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受。
  5. 前記硬化層の最大剪断応力深さまでの部分における深さ方向の残留応力が−210MPa以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の転がり軸受。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の転がり軸受を製造するに際して、球状化焼鈍しを施した後に、必要硬化層深さよりも深い部分までA1変態点以上に加熱して徐冷し、次いで、必要硬化層深さまでA1変態点以上に高周波加熱して前記高周波焼入れを施すことを特徴とする転がり軸受の製造方法。
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