JP2010024517A - 錫の精製システム及び精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉛を含有している「はんだ」から錫を回収し、以って、鉛を除去することができる錫の精製システム及び精製方法の提供。
【解決手段】錫の精製装置(10)と、該精製装置(10)に冷却媒体(例えば冷却水等の液相冷却媒体)を供給する冷却媒体供給機構(冷却媒体循環機構50)とを備え、精製装置(10)は、はんだの溶湯を(保温しつつ)貯留する溶融炉(8)と、はんだの溶湯内に浸漬されて表面に錫が晶出される回転冷却体(1)とを備え、回転冷却体(1)の側面部(2a)は、晶出するべき錫の晶出核が残留可能で且つ回転冷却体(1)に応力集中が生じないような形状(2c)に加工されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉛を含有する「はんだ」から錫を晶出させることにより、錫を精製して鉛を除去する技術に関する。
周知の通り、「はんだ」は錫と鉛の合金である。
近年、環境保護に対する意識が高まり、鉛に対する規制が厳しくなっている。そして、「はんだ」についても、鉛を含有しない「はんだ」、いわゆる「鉛フリーのはんだ」にすることが要請されている。
そのような「はんだ」を製造するに当たって、鉛に対する規制が厳しくなる以前の「はんだ」、すなわち原材料として鉛を含有している「はんだ」から、錫を回収して、当該錫を鉛フリーのはんだの原料とすることが要請されている。
しかし、既存の(鉛を含有する)「はんだ」から錫のみを回収し、鉛を除去するための有効な技術は、現時点では提案されていない。
その他の従来技術として、偏析凝固の原理を用いて、回転冷却体を回転させながら内壁側を冷却し、回転冷却体外側表面に純度の高いアルミニウムを晶出させて、アルミニウムと共晶を生成する不純物を取り除いて、高純度のアルミニウムを得る技術が存在する(特許文献1参照)。この技術によれば、高純度シリコン(珪素)も晶出することが可能である。
また、作業時において晶出した高純度アルミニウムの剥離を防止するため、回転冷却体の表面に幅が狭く、深さ寸法が大きい溝を多数形成する技術も存在する(特許文献2)。
さらに、パッキンの性能を長期間にわたって維持するべく、回転冷却体の側面部の冷却効率を向上させる技術も存在する(特許文献3)。
しかし、特許文献1〜3の技術は、アルミニウムやシリコンの精製に関する技術であり、鉛に対する規制が厳しくなる以前に製造された「はんだ」、すなわち鉛を含有する「はんだ」から錫を回収し、以って、鉛を除去する旨については何等開示していない。
そのため、特許文献1〜3の技術により、鉛フリーの「はんだ」の原材料である錫を確保し、鉛フリーの「はんだ」の製造コストを低減することは不可能である。
また、アルミニウム精製に係る特許文献1〜3の技術は、鉛に対する規制が厳しくなる以前に製造された「はんだ」から、鉛が完全に除去された状態の錫を回収し、係る錫によって鉛による各種弊害を防止することはできない。
また、特許文献1〜3の技術は、精製の対象となる技術はアルミニウム、シリコンであり、これらは何れも溶融温度が非常に高温であり、且つ、化学的活性が高い。そのため、晶出に用いられる回転冷却体の材料としては、耐高温及び耐エロージョン(耐食性)を考慮しなければならず、カーボン或いはセラミック以外には使用することができなかった。そして、カーボン、セラミックは材料価格が高価であり、機械的な加工が困難な材料であり、且つ、セラミックスやカーボン製の回転子は、その寿命が短いため、交換頻度が高いという問題を有している。
さらに、溶融温度が高い(660℃)アルミニウムの精製を対象とする特許文献1〜3の技術では、シール材料としてO−リング等を選択することができないので、液相の冷却媒体を使用することができない。換言すれば、特許文献1〜3の技術では、回転子の冷却媒体として気相の冷却媒体(例えば、冷却用空気)を使用せざるを得ない。
ここで、例えば空気のような気体を冷却媒体として用いる場合には、圧縮機(コンプレッサ)で圧縮し、圧力を上昇して昇温した気体を回転子に供給する以前に冷却する必要がある。そのような圧縮及び冷却のために、多大なエネルギが費やされてしまう。
そして、圧縮された空気が回転子を冷却した後に、アルミニウム精製作業を行っている作業現場に排出されると、高温の空気が作業現場に排出されるために、精製作業現場の作業環境が悪化してしまう。
さらに、圧縮された空気を精製作業現場で排出すると、排出する際に大きな排出音を発生し、その排出音(騒音)のため、精製作業現場の環境が益々悪くなってしまう。
これに加えて、特許文献2に開示されているように、回転子に幅が狭く、深い溝を多数設けると、応力集中が生じてしまうので、回転子に熱衝撃が作用したり、機械的衝撃が作用した際に、容易に破損してしまうという問題を有している。
冷却後の圧縮空気をそのまま排出することは、圧縮、冷却でエネルギを消費した空気を排出することになり、コストがかさんでしまう。
特開昭57−82437号公報 特開平6−2054号公報 特開平9−48608号公報
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、鉛を含有している「はんだ」から錫を回収し、以って、鉛を除去することができる錫の精製システム及び精製方法の提供を目的としている。
本発明の錫の精製システムは、錫の精製装置(10)と、該精製装置(10)に冷却媒体(例えば冷却水等の液相冷却媒体)を供給する冷却媒体供給機構(冷却媒体循環機構50)とを備え、精製装置(10)は、はんだの溶湯を(保温しつつ)貯留する溶融炉(8)と、はんだの溶湯内に浸漬されて表面に錫が晶出する回転冷却体(1)とを備え、回転冷却体(1)の側面部(2a)は、晶出するべき錫の晶出核が残留可能で且つ回転冷却体(1)(が熱膨張した際や外力或いは衝撃作用時)に応力集中が生じないような形状に加工されていることを特徴としている(請求項1)。
ここで、「晶出するべき錫の晶出核が残留可能で且つ回転冷却体(1)(が熱膨張した際や外力或いは衝撃作用時)に応力集中が生じないような形状」としては、回転冷却体(1)の側面部(2a)の垂直方向(縦方向)及び水平方向(横方向)について互い違いとなるように千鳥状に配置された多数の凹部(盲穴2c)が好ましい。
また、回転冷却体(1)の側面部(2a)の垂直方向(縦方向)及び水平方向(横方向)について互い違いとなるように千鳥状に配置された多数の凸部(突起)であってもよいし、或いは、エンボス加工であってもよい。
本発明の実施に際して、精製装置(10)の溶融炉(8)で貯留される「はんだ」としては、いわゆる「鉛フリー」のはんだは含まれない。
本発明において、冷却媒体として液相冷却媒体(例えば、冷却水)が用いられ、該液相冷却媒体は冷却媒体供給機構(50)のライン(L1)を介して回転冷却体(1)に供給され、液相冷却媒体のシール材としてはんだ溶湯の温度(185℃〜250℃)に耐える耐熱性材料から成るパッキン(例えば、O−リング5)が用いられ、回転冷却体(1)ははんだ溶湯と反応し難い材質により中空体として構成されており、その中空領域(2b)には液相冷却媒体を噴射するためのノズル部材(4)が収容され、ノズル部材(4)に設けたノズル(4f)から回転冷却体側面部(2a)の内壁面(2d)に向かって液相冷却媒体が噴射されるのが好ましい(請求項2)
ここで、冷却媒体供給機構(50)は、回転冷却体(1)を冷却した直後の液相冷却媒体を冷却する冷却媒体冷却装置(70)を介装しており、閉鎖系として構成された回路であるのが好ましい(図1)。しかし、冷却媒体供給機構(50)として、冷却媒体冷却装置(70)を介装せずに、開放系として構成された回路であってもよい(図14)。
また、「はんだ溶湯の温度に耐える耐熱性材料」としては、合成樹脂或いはシリコンゴムが好ましい。
さらに、回転冷却体(1)の「はんだ溶湯と反応し難い材質」としては、例えば、「鋳鉄」、「チタン」を用いることができる。
本発明(請求項1、2の何れかの錫の精製システム)において、回収された錫を溶融状態で貯留する第2の溶融炉(80)を設け、回転冷却体(1)は、その側面部(2a)に錫を晶出した後に、第2の溶融炉(80)内に貯留されている錫の溶湯(Msn)中に浸漬されて、晶出した錫(Sn)を錫の溶湯(Msn)により溶融する機能を有するのが好ましい(請求項3)。
上述した本発明の錫の精製システム(請求項1、2の何れか1項の錫の精製システム)を用いた錫の精製方法において、溶融炉(8)に貯留されているはんだ溶湯(M)に回転冷却体(1)を浸漬して錫を回転冷却体の側面部(2a)に晶出させる晶出工程(S11−2、S12−2、S13−2)と、該晶出工程の際に回転冷却体(1)は冷却媒体供給機構(50)から供給された冷却媒体で冷却され、回転冷却体(1)の側面部(2a)に残留した錫を晶出核として錫が晶出することを特徴としている(請求項4)。
ここで(請求項4の錫の精製方法において)、回収された錫(Sn)を溶融状態で貯留する第2の溶融炉(80)が設けられており、回転冷却体の側面部(2a)に錫が晶出した後に、当該回転冷却体(1)を第2の溶融炉(80)内に貯留されている錫の溶湯(Msn)中に浸漬し、晶出した錫(Sn)を錫の溶湯(Msn)により溶融する工程(S12−4)を有しているのが好ましい(請求項5)。
或いは(請求項4の錫の精製方法において)、回収された錫(Sn)を貯留する錫容器(回収容器82)が設けられており、回転冷却体の側面部(2a)に錫(Sn)が晶出した後に、(例えばバーナーのような)加熱装置(90)によって晶出した錫を溶融し、溶融した錫を錫容器(82)内に受領する工程(S13−3)を有しているのが好ましい(請求項6)。
上述する構成を具備する本発明によれば、精製装置(10)は、はんだの溶湯(M)に回転冷却体(1)を浸漬して回転冷却体側面部(2a)に錫が晶出し、晶出した錫(Sn)を回収している。鉛の精製効率(実効分配系係数)は0.26〜0.48であり、鉛を除去することができる。
それと共に、鉛に対する規制が厳しくなる以前に製造された「はんだ」から錫を有効に回収することができるので、鉛フリーのはんだの原材料である錫が確保し易くなり、鉛フリーのはんだの製造コストが低減する。
そして、鉛に対する規制が厳しくなる以前に製造された「はんだ」から回収された錫からは鉛が完全に除去されているので、鉛が環境に及ぼす各種の悪影響(弊害)が完全に防止される。
また、はんだ溶湯(M)から錫を晶出させることにより錫を精製する本発明では、はんだ溶湯の温度(はんだの融点)が185℃〜250℃であり、従来のアルミニウム精製技術で用いられるアルミニウム溶湯の温度(660℃:アルミニウムの融点)に比較して遥かに低温である。
そのため、本発明において冷却媒体の漏出防止用のシール部材(パッキン:O−リング5等)は185℃〜250℃の温度に耐える程度の耐熱性があればよく、合成樹脂やシリコンゴム等でパッキンを構成することが可能となる。そして、合成樹脂やシリコンゴム等でパッキンを構成することが可能であるため、本発明によれば、液相の冷却媒体(例えば冷却水)を用いることが可能である。
液相の冷却媒体を用いることができる本発明によれば、圧縮機(コンプレッサ)で圧縮する必要がなく、高温の空気を作業現場に排出することによる作業環境の悪化が防止されると共に、圧縮された空気を精製作業現場で排出する場合のように大きな排出音を発生することもない。
また、液体の冷却効果は気体よりも高いので、冷却循環機構の冷却効果を向上することができる。
特に循環系(或いは、閉鎖系)で液相冷却媒体(例えば冷却水)を供給することができれば、環境に対する影響を低くすることが可能となる(いわゆる「ロー・インパクト」)。
本発明で回転冷却体(1)が浸漬される「はんだ」の溶湯(M)は、アルミニウムの溶湯に比較して低温であり、アルミニウム溶湯のように化学的活性が高くはない。そのため、本発明における回転冷却体(1)の材料としては、従来のアルミニウム精製技術における回転子の材質のような耐熱性及び耐エロージョン(耐食性)を必要としない。
そのため、本発明の回転冷却体(1)の材質としてはセラミックスやカーボンを使用する必要がなく、例えばチタンや鋳鉄のように比較的安価で、耐衝撃性が高い材料を用いることができる。そのため、コストダウンが可能であり、回転冷却体(1)の寿命が長期化される。
さらに本発明によれば、回転冷却体(1)の側面部(2a)が、晶出するべき錫の晶出核が残留可能で且つ回転冷却体が熱膨張した際に応力集中が生じないような形状に構成されている。そのため、晶出核が回転冷却体側面部(2a)から脱落してしまうことが防止されるので、錫の晶出が確実に行われる。また、従来技術における「溝」のように応力集中が生じることがないので、「はんだ」の溶湯に浸漬された回転冷却体(1)が膨張し、或いは、回転冷却体(1)に衝撃が作用したとしても、回転冷却体(1)の表面部分(2a)が破損してしまうことが防止される。
さらに、錫を回収する本発明では、アルミニウム精製の場合とは異なり、アルミニウムの融点(660℃)まで加熱しなくても晶出した錫を溶融することが可能である。そのため、例えばバーナーのような加熱装置(90)により晶出した錫を溶融して、回転冷却体(1)から分離して回収することが可能である。
また、溶融した錫(錫の溶湯)はアルミニウムのように化学的活性が高くないので、溶融した錫が、回収された錫を貯留する容器(80)と反応してしまう恐れが少ない。そのため、錫の溶湯(Msn)を貯留した第2の溶融炉(80)を用意して、晶出した錫と共に回転冷却体(1)を錫の溶湯に浸漬すれば、晶出した錫が直ちに溶融して回転冷却体(1)から分離されて、第2の溶融炉(80)に貯留されて、回収される。係る回収の態様は、化学的活性が高く、溶湯が容器と化学反応を起こしてしまうアルミニウムでは、困難である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に、図1〜図13を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1において、全体を符号100で示す本発明の錫精製システムは、精製装置10と、冷却媒体循環機構50とから構成されている。
精製装置10は、溶融はんだから錫を晶出し、以って錫を精製して鉛を除去する手段として構成されており、回転冷却体1を具備している。
冷却媒体循環機構50では、精製装置10において錫が晶出する際に回転冷却体(図2〜図4)を冷却する液相の冷却媒体(例えば、冷却水)が循環している。冷却媒体循環機構50には、冷媒循環ラインLと、圧力・流量制御装置60と、冷却媒体冷却装置(冷却装置)70と、冷媒ポンプ51(冷却水ポンプ)とが設けられている。
循環ラインLは、ラインL1〜L5を有している。
ラインL1は、分岐点(或いは合流点)Bと精製装置10の後述する吸込みアダプタ7とを接続している。ラインL2は、精製装置10の後述する排出アダプタ6と冷却装置70の吸入側70aとを接続している。ラインL3は、冷却装置70の排出側70bと冷媒ポンプ51の吸入側51aとを接続している。ラインL4は、開閉弁V2を介装しており、冷媒ポンプ51の吐出側51bと分岐点Bを接続している。ラインL5は、分岐点Bの近傍で開閉弁V3を介装しており、分岐点Bと図示を省略した冷却媒体供給源(例えば、水道)とを接続している。
ラインL1には、圧力・流量制御装置60が介装されている。ラインL1における分岐点Bと圧力・流量制御装置60との間の領域には、開閉弁V1、ラインフィルタ52、圧力計53が介装されている。
ラインL1における圧力・流量制御装置60と精製装置10の吸込みアダプタ7との間の領域には、流量計54と圧力ゲージ55が介装されている。
ここで、冷却媒体としては、水、純水、油、その他の各種液相冷媒が使用可能である。冷却媒体循環機構50を構成するラインを腐食しないような液相冷媒であれば、冷却媒体として使用可能である。
また、冷却媒体冷却装置70としては、公知・市販の冷却装置が使用可能である。冷却媒体の種類によって、適切な冷却装置を冷却媒体冷却装置70として採用すればよい。
循環ラインLに介装された開閉弁V1〜V3は、通常の錫精製システム運転時には、開閉弁V1、V2は開放し、開閉弁V3は閉鎖されている。
循環ラインLを流過する冷却媒体の流量が不足している場合は、開閉弁V3を開放して、図示しない冷却媒体供給手段から、循環ラインLに冷却媒体を補填する。例えば、冷却媒体が冷却水の場合には、上水から冷却水を補充するのである。
従来のアルミニウムの精製では、アルミニウム溶湯の温度(660℃)が高いので、シール手段としてパッキンは使用することができなかった。そして、シール手段としてパッキンは使用できないため、従来のアルミニウムの精製においては、液体をシールすることができず、冷却媒体として液体を使用することが不可能であり、そのため、気体、例えば空気(アルゴンその他の不活性ガスで冷却することも可能)で冷却していた。
ここで、従来のアルミニウムの精製では、液相の冷却媒体をシールすることができないため、空気と水との混合流体やミストは、冷却媒体としては使用不可能であった。
これに対して、図示の実施形態では、溶融した「はんだ」から錫が晶出しており、はんだ溶湯の温度(185℃〜250℃)はアルミニウム溶湯の温度(660℃)に比較して遥かに低温であるので、後述するように、合成樹脂(例えば、市販品)やシリコンゴム等でシール材或いはパッキンを構成することが可能である。
そして、O−リング(図示の実施形態では符号「5」で示す)等がシール材として使用可能な図示の実施形態(錫の晶出に係る技術)においては、上述したように、液相の冷却媒体(例えば、冷却水)を用いても、パッキンにより液相冷却媒体の漏洩を防止できる。
そして、液相冷却媒体を使用することにより、液相冷却媒体を閉鎖系の循環機構で連続的に使用することが可能である。
図1で示すようにいわゆる「閉鎖系(クローズド・サーキット)」として構成されている冷却媒体循環機構50は、冷却媒体を系外に排出せずに、連続的に使用(再使用)することができる。
従来のアルミニウムの精製のように気体で冷却する場合には、冷却した気体は系外に排出されている。それに比較して、図1で示すように、冷却媒体を系外に排出せずに連続的に使用(再使用)する閉鎖系の冷却媒体循環機構50を採用する図1で示す実施形態は、環境に対する影響は少ない。すなわち、図1の冷却媒体循環機構50を採用することにより、環境に対して優しい(いわゆる「ロー・インパクト」)構成とすることが可能である。
また、従来のアルミニウムの精製の場合は、冷却気体は高温となり、且つ、排気する際に非常に大きな騒音が発生してしまう。仮に、高温の冷却気体をアルミニウムの精製作業を行っている環境に放出してしまうと、当該環境が高温化してしまい、且つ、放出時の騒音によって、作業環境が劣悪になってしまう。
これに対して、図1で示す実施形態では、閉鎖系の冷却媒体循環機構50内を液相冷却媒体が循環しているので、加熱された冷却媒体を系外に放出して環境に悪影響を与えることがない。同様に、加熱された冷却媒体を作業現場中に放出して、作業現場を高温と騒音による劣悪な環境にすることもない。
さらに、従来のアルミニウムの精製において、空気を冷却媒体にするに際しては、先ずコンプレッサで圧縮し、圧縮の結果として空気の温度が上昇したならば、回転子に送る前の段階で冷却している。そして、冷却後の圧縮空気を回転子の冷却に使用した後、直ちに排出している。
しかし、圧縮、冷却でエネルギを消費した空気を直ちに排出してしまうため、空気の圧縮、冷却に費やされた分のコストは浪費されている。
これに対して、閉鎖系の冷却媒体循環機構50内を液相冷却媒体が循環している図1の実施形態では、冷却媒体冷却装置70で冷却された液相冷却媒体が回転冷却体1の冷却に連続して利用(再利用)されるので、冷却媒体冷却装置70で費やされたエネルギは再利用されることになり、冷却媒体冷却装置70で液相冷却媒体を冷却するコストは、浪費されることにはならない。
また、液体の冷却効果は気体の冷却効果よりも高いので、冷却媒体循環機構50の冷却効率を向上する効果も期待できる。
精製装置10については、図2〜図7で示されている。
図2において、精製装置10は、回転冷却体1、排出アダプタ6、吸入アダプタ7、溶融炉8、加熱用コイル9を有している。
溶融炉8内には溶融した「はんだ」M(はんだ溶湯)が貯留されており、溶融炉内の「はんだ」Mから錫が晶出し、以って、「はんだ」中の鉛を除去しつつ錫を精製するように構成されている。
ここで、溶融炉8内に貯留される「はんだ」Mとしては、いわゆる「鉛フリー」のはんだは包含されない。「鉛フリー」のはんだであれば、錫を精製し以って鉛を除去する必要性がないからである。
溶融炉8の周囲には加熱用のコイル9が複数条設けられており、当該コイル9で加熱することにより、貯留されている「はんだ」Mが溶融している状態が維持される。
ただし、溶融炉8を誘導加熱以外の方法で加熱することも可能である。
図2で示す状態では、貯留されている「はんだ」M内に、回転冷却体1が浸漬している。より詳細には、回転冷却体1の外殻部2が溶融炉8内の溶融した「はんだ」Mに浸漬している。
図2で示すように、二重管ロッド状に構成されている回転冷却体1の本体部3の先端(図2では下端)に、先端側ほど直径が小さくなる円錐台形状の外殻部2が設けられている。
本体部3は回転可能に構成されており、従って、本体部3に設けられている外殻部2も本体部3と一体に回転する。
図2において、本体部3は、回転冷却体1が設けられている部材3Aと、液相冷却媒体の排出アダプタ6及び吸入アダプタ7を設けた側の部材3Bとを有しており、部材3A及び3Bはフランジ3Af、3Bfによって一体に接続されている。
本体部3における部材3Bの端部(図2では上端部)には、排出アダプタ6及び吸入アダプタ7が接続されている。
吸入アダプタ7の吸入口7aには、冷媒循環ラインLのラインL1(図1参照)が接続され、排出アダプタ6の排出口6aには、冷媒ラインLのラインL2(図1参照)が接続されている。
上述したように、回転冷却体1の本体部3は二重管ロッドとして構成されている。そして、二重管の内管側が吸入アダプタ7に連通し、二重管の外管側が排出アダプタ6に連通している。
その結果、回転冷却体1は、冷却媒体循環機構50のラインL1から、吸入アダプタ7及び本体部3の内管側を経由して冷却媒体が供給される。そして、回転冷却体1を冷却することにより加熱された冷却媒体は、本体部3の外管側及び排出アダプタ6を経由して、ラインL2から冷却媒体循環機構50側に排出される。
ここで、後述するように、回転冷却体1は回転するので、吸入アダプタ7の吸入口7a及び排出アダプタ6の排出口6aと、回転冷却体1の本体部3とは、相対的に回転が可能な機構でなければならない。
相対的に回転が可能で、ラインL1により供給され且つラインL2で排出される冷却媒体が漏洩しないような機構としては、例えば、スイベルジョイントその他の公知の構造を用いればよい。
図2で示すように、吸入アダプタ7の吸入口7a及び排出アダプタ6の排出口6aと、回転冷却体1の本体部3とは、相対的に回転が可能であり、且つ、冷却媒体が漏洩しないように、スイベルジョイントを設けて構成されている。
図3は、図2におけるO部を拡大して示している。
図3及び図4(回転冷却体1の分解図)で後述するように、回転冷却体1は、外殻部(いわゆる、スティック)2、本体部3、ノズル部材4及びOリング5を有している。
図3で示す矢印は、冷却媒体(例えば、冷却水)の流れを示している。
なお、冷却媒体の流れと、外殻部2の側面部2aにおける錫の晶出については、後述する。
回転冷却体1の分解図である図4を参照すれば明らかなように、外殻部2は先端(図2では下端)に近づくにつれて外径が小さくなる円錐台形状である。外殻部2内部には、外殻部2と概略相似している円錐台形状の空間(内部空間)2bが形成されている。
外殻部2の側面部2aには、多数の凹部(盲穴)2cが、図3及び図4における縦方向及び横方向について互い違いとなるように、いわゆる千鳥状に、等ピッチpで配置されている。
望ましくは、当該ピッチは20mmであり(p=20mm)、凹部(盲穴)2cの直径が1mm(φ=1mm)で、深さが2mm(h=2mm)である。
そのような凹部(外殻部2の側面部2aに、いわゆる千鳥状に配置された多数の盲穴)2cを設けることにより、図11〜図13を参照して後述する錫の回収工程「S11‐4」、「S12‐4」、「S13−3」を経た後においても、図5で示すように、当該凹部(盲穴)2c内に晶出した錫Snが残留する。
回転冷却体1の外殻部2を再び溶融炉8内に浸漬した際に、穴2c内に残留した錫Snが初晶(核、或いは、「アンカー」)となり、溶湯はんだM中の錫が当該残留した晶出核(初晶)を核(或いはアンカー)として晶出する。その結果、錫Snが付着し易くなり、錫Snの精製が効率的に行われる。
ここで、回転冷却体1の外殻部2の側面部2aに形成した複数の凹部(盲穴)2cは、錫Snを残留するための構成の一例である。複数の凹部(盲穴)2cに代えて、多数の突起を設け、或いは、側面部2aにエンボス加工を施しても、晶出した錫が残留して、晶出核(初晶)を構成する。
また、回転冷却体1の外殻部2の側面部2aに形成した複数の凹部(盲穴)2cは、従来技術における「溝」のように応力集中が生じることがなく、熱膨張や外力或いは衝撃の作用により回転冷却体1の外殻部2を破損することもない。
換言すれば、「複数の凹部(盲穴)」、「多数の突起」、「エンボス加工」は、「精製するべき錫が残留するが、熱膨張時(外力或いは衝撃作用時も含む)には応力集中が生じないような形状」等の例示である。
多数の凸部或いは突起Tを、外殻部2の側面部2aに形成した場合が、図6で示されている。
側面部2aに突起Tを形成した場合(図6)には、晶出した錫(Sn)は突起T上方の一部分にしか残存せず、錫の残存量は、多数の穴2cを形成した場合(図5)に比較して、明らかに少なくなる。そして、残存する錫の量が少ない分だけ、突起Tを形成した場合(図6)は、多数の穴2cを形成した場合(図5)に比較して、晶出核(初晶)が少ない分だけ錫が付着し難くなる。
しかし、実用に際しては、図6で示すように、多数の突起Tを外殻部2に形成することも可能である。
上述したように、従来のアルミニウム精製技術では、回転子に溝を形成して、当該溝内に精製するべきアルミニウムを残留せしめて、アルミニウム溶湯に浸漬した際に新たなアルミニウムが付着するアンカーとしての役割を、溝内に残留したアルミニウムに奏させている。
ここで、アルミニウム溶湯の高温(660℃)の高温に耐えるために、アルミニウムの精製で用いられる回転子はセラミックやカーボンを材質としており、当該セラミックやカーボンに溝を加工している。そのような従来技術において、回転子をアルミニウム溶湯に浸漬すると、回転子が熱膨張し、熱応力が発生し、溝部分で応力集中が発生する、という問題が存在する。
それに対して図示の実施形態では、図3、図4で示すように、図3及び図4における縦方向及び横方向について互い違いとなるように、いわゆる千鳥状に配置された凹部(盲穴)2cを形成している。係る構成であれば、回転冷却体1が熱膨張しても、当該凹部(盲穴)2cには応力集中は生じない。多数の突起やエンボス加工を回転冷却体表面に形成した場合においても、同様である。
また、図示の実施形態では、はんだ溶湯から錫が晶出しているが、はんだ溶湯の温度(185℃〜250℃)は、アルミニウム(Al)の融点(660℃)に比較して、遥かに低温である。
そのため、上述したように、図示の実施形態では後述するパッキン(Oリング)5の材質についても、広範囲に選択できる。
そのため、図3、図4で示すように、図示の実施形態で用いられる回転冷却体1においては、シール材として、合成樹脂(例えば、市販品)製パッキン5やシリコンゴムパッキンが使用可能である。
これに対して、アルミニウム溶湯からアルミニウムの精製を行う場合には、その温度が高温であるため(660℃)、パッキン類を使用することはできない。
また、はんだ溶湯とは異なり、アルミニウム溶湯は化学的な活性が高く、エロージョン(浸食)が発生し易い。そのため、従来のアルミニウム精製技術では、回転子の材質として、金属を使用することができず、セラミックスやカーボン製の回転子を使用しなければならなかった。そして、セラミックスやカーボンは機械的な加工が困難な材料であり、且つ、セラミックスやカーボン製の回転子は、その寿命が短いという問題を有している。
それに対して、図示の実施形態では、回転冷却体の材質についても、従来のアルミニウムの精製の場合に比較して、広範囲に選択可能である。例えば、回転冷却体1を鋳鉄やチタンで構成することが可能である。そして、鋳鉄、チタンは機械的な加工が容易であり、且つ、鋳鉄製やチタン製の回転冷却体は、半永久的に使用が可能である。そのため、セラミックやカーボン製の回転子を使用する場合に比較して、大幅なコストダウンが可能となる。
ここで、「鋳鉄」、「チタン」というのは、はんだ溶湯と反応し難い材料の例示である。換言すれば、図示の実施形態では、回転冷却体の材質としては、はんだ溶湯と化学反応を起こし難い材料であれば、全て使用可能である。
図4を参照して、回転冷却体1を更に詳しく説明する。
図4において、外殻部2の内部空間2bの下方、すなわち底部2eは閉塞している。一方、内部空間2bの上方には、雌ねじ2fが形成されている。雌ねじ2fを形成した外殻部2の上端面2t側には、本体部3の雄ねじ付け根に形成された「アール(或いは面取り)」31gと干渉しないための面取り部2gが形成されている。
外殻部2の上端面2tにおける面取り部2gの近傍には、O−リング5を収容する溝2hが形成されている。
図4において、符号2dは、外殻部2の内部空間2bにおけるテーパー状の内壁面を示している。
以下において、単に「内壁面」と記載する場合はテーパー状の内壁面2dを意味しており、「底部2eを含む内壁面」と記載する場合は、外殻部2の内部空間2bの内壁面全面を意味する。
本体部3は、外筒部材31(二重管の外管)と内筒部材32(二重管の内管部)とを有している。
外筒部材31と内筒部材32とは同芯に配置されており、内筒部材32の中空部が吸入アダプタ7に連通して、冷媒吸入路32nを構成している。そして、外筒部材31の内周と内筒部材32の外周は均一の環状空間(二重管の外管)が形成され、排出アダプタ6と連通して冷媒排出路31nを構成している。
内筒部材32の中空部で、図4の下端側にはテーパー部32eが形成されている。
外筒部材31の下端近傍にはフランジ31fが形成され、このフランジ31fの下端面31tが、前記外殻部2の上端面2tに当接する。
フランジ31fの下端面31tの中心部には、接続用突起31dが形成されており、接続用突起31dの外周には雄ねじ31eが形成されている。そして、接続用突起31dの雄ねじ31eが外殻部2の雌ねじ2fと螺合することにより、外殻部2と本体部3とが堅固に接続される。
接続用突起31dの付け根には、応力集中を防止するための「アール(或いは面取り)」31gが形成されている。
ノズル部材4は、先端側(図4における下端側)が閉塞した円筒形状に構成されており、上端面には円筒状の突起4cが形成されている。
この円筒状突起4cの先端はテーパー形状(テーパー部)4eとなっており、このテーパー部4eは、本体部3の内筒部材32のテーパー部32eと係合する。
ノズル部材4の外周面には、複数のノズル(孔)4fが形成されている。
図2、図3において、吸入アダプタ6及び本体部3の内筒部材32における冷媒吸入路32nを経由してノズル部材4に流入した冷媒(冷却水)は、複数のノズル4fから、内壁面2dに向かって噴射され、外殻部2の側面部2aを冷却する。
側面部2aを冷却した冷媒は、本体部3の冷媒排出路31n及び排出アダプタ7を経由して、ラインL2に排出される。
上述したように、図示の実施形態では、液相冷却媒体は、外殻部2の側面部2aの裏側に相当する内壁面2dに向かって、ノズル4fから噴射されている。図7で示すように、液相冷却体が外殻部2の内部空間2b内を循環して、内部空間2bの内壁面全面(底部2eを含む)を冷却するわけではない。
これは、外殻部2の底部2eに純度の低い錫が付着してしまうことを防止するためである。図7〜図9を参照して、その理由を説明する。
図7で示すように、外殻部2の内部空間2bに液相冷却媒体を流過させる構成では、外殻部2の内部空間2bにおける内壁面全体(底部2eを含む)が均一に冷却されてしまう。
ここで、外殻部2の底部2eに晶出する錫は、外殻部2の側面部2aに晶出する錫よりも純度が低く、不純物含有量が多くなることが知られている。回転冷却体1が回転している場合には、溶湯との相対速度が大きい個所に晶出した錫の方が純度は高く、溶湯との相対速度が小さい個所に晶出した錫は不純物を多く含むことによる。
そのため、外殻部2の底部2eには錫を晶出させたくない、という要請が存在する。
しかし、図7で示すように、回転冷却体1の外殻部2の内部空間2bにおける内壁面全体(底部2eを含む)を均一に冷却してしまうと、錫溶湯との相対速度が小さい底部2eに錫が晶出し易いので、底部2eに純度の低い錫が晶出してしまう。
これに対して、図8で示すように、ノズル4fにより冷却液を外殻部2の側壁2sの内壁面2dに向かって噴射すれば、噴流効果により、溶湯との相対速度差が大きい外殻部2の側壁2sが優先的に冷却され、優先的に冷却された側面部2aには錫が晶出し易くなる。また、外殻部2の底部2eは冷却され難くなり、錫が晶出し難くなる。
そのため、図示の実施形態では図7で示す構成は採用せず、図8で示す構成を採用し、ノズル4fから外殻部2の側部2sの内壁面2dに向けて液相冷却媒体を噴射して、外殻部2の側壁2sのみを冷却している。
図8で示すような構成を採用した結果、図9で示すように、錫Snは外殻部2の側面部2aのみに晶出する。そして、外殻部2の側面部2aは溶湯との相対速度差が大きいため、晶出した錫の純度が高くなる。
明確には図示されていないが、回転冷却体1により錫を晶出させる際には、溶融炉8内部の溶湯に渦を発生しないように、回転冷却体1を一定な周期で正回転、逆回転する制御を行う必要がある。
溶融炉8内で溶湯が渦を形成しないようにするためである。
溶融炉8内で溶湯Mが渦を形成すると、溶湯Mの表面形状は、図10の破線Bで示すように傾斜する。一方、溶湯Mが渦を形成しない場合の表面形状(図10の実線A)は平坦である。
破線Bの湯面と実線Aの湯面とを比較すれば明らかなように、溶融炉8内で溶湯Mが渦を形成した場合(図10の破線Bの湯面)は空気と溶湯とが接触する面積が大きくなる。そして、はんだ溶湯Mの錫は酸化し易いので、空気との接触面積が大きくなると、酸素と接触して酸化する可能性が高くなる。
錫の酸化物が生成した場合に、溶湯Mに渦が形成されてしまうと、錫酸化物が溶湯Mに混ざってしまい、溶湯Mに混入するので、晶出した錫の品質も低下してしまう。
従って、溶融炉8内で溶湯Mが渦を形成することは、防止されなければならない。明確には図示されていないが、図示の実施形態では、回転冷却体1を一定な周期で正回転、逆回転する制御を行っている。
晶出した錫を、回転冷却体1の外殻部2から取り除いて回収する態様が、図11〜図13で、3通り示されている。
図11で示す錫の回収態様では、機械的な外力を付加することにより、晶出した錫を、回転冷却体1の外殻部2から取り除いている。
図11において、「S11−1」で示すように、回転冷却体1を溶融炉8の上方にセットし、溶融炉8に向かって下降させる。ここで、溶融炉8内のはんだMは、既に溶融した常態で溶融炉8内に貯留されている。
そして「S11−2」で示すように、回転冷却体1を溶融炉8内に浸漬させ、溶融炉8内で正転・逆転を繰り返す。そして、回転冷却体1の外殻部2の側面部2aに、錫が晶出している。
図11の「S11−3」では、外殻部2の側面部2aに錫Snを晶出させた回転冷却体1を溶融炉8から引き上げて、図示しない回収容器の上方まで移動する。
そして「S11−4」で示す工程では、錫掻き取り工具200を、外殻部2の側面部2aに晶出した錫Snの上端に係合させ、錫掻き取り工具200を下方に引き下げる。外殻部2の側面部2aは、図11の下方に行くにしたがって縮径するテーパーがついているので、錫掻き取り工具200を下方に引き下げることにより、側面部2aに晶出した錫Snは、側面部2aから容易に分離する。そして外殻部2から分離した錫は、下方に位置している回収容器(図示せず)に回収される。
上述した図11の錫回収の態様では、回転冷却体1に晶出した錫を機械的に回収している。
これに対して、図12で示す態様では、特に「S12−4」で示すように、回転冷却体1に晶出した錫を、別の溶融炉80で溶解させて回収している。
図12で示す錫回収の態様では、「S12−4」で示すように、晶出した錫を回転冷却体1から取り除くに際して、錫溶湯Msnを貯留した容器80を別途用意している。そして、別途用意した容器80の錫溶湯Msnに、錫Snが晶出した状態の回転冷却体1を浸漬すれば、晶出した錫Snは溶湯Msnにより溶融して、回転冷却体1から分離される。
なお、図12における「S12−1」〜「S12−3」は、図11における「S11−1」〜「S11−3」と同様である。
ここで、図12で示す回収方法を、従来のアルミニウムの精製技術に適用することは困難である。
溶融したアルミニウムは化学的活性が高いので、アルミニウム溶湯を貯留した容器の材質と化学反応を起こしてしまうため、アルミニウム溶湯を貯留した容器を別途用意することが困難だからである。
図示の実施形態では、図11、図12で示す錫回収の態様に加えて、図13で示すように、晶出した錫Snをバーナー90で加熱して溶融することにより、回転冷却体1から分離して、回収することが可能である。
図13の「S13−3」において、符号82は、錫の回収容器を示す。
ここで、例えばアルミニウムの精製技術では、アルミニウムの融点(660℃)は高いので、バーナー加熱によって回転子から除去することが難しい。これに対して、錫の融点(230℃)は遥かに低温であるため、バーナー90で加熱して溶融せしめることにより、容易に回転冷却体1から除去することができる。
なお、図13における「S13−1」〜「S13−2」は、図11における「S11−1」〜「S11−2」と同様である。
図11〜図13で示すように回収された錫について、出願人の実験によれば、鉛の精製効率(実効分配係数)は0.28〜0.46であり、鉛の含有量は0.1質量%以下であった。従って、実質的に鉛は除去されている。
そのため、図示の実施形態により「はんだ」から錫を回収することにより、現在激しく規制されている鉛を、「はんだ」原料から除去することができる。
それと共に、鉛に対する規制が厳しくなる以前に製造された「はんだ」から錫を有効に回収することができるので、鉛フリーのはんだの原材料である錫が確保し易くなり、鉛フリーのはんだの製造コストが低減される。
図示の実施形態により、鉛に対する規制が厳しくなる以前に製造された「はんだ」から回収された錫は、鉛が完全に除去されている。そのため、係る錫を原材料にして製造された「はんだ」によれば、鉛による各種弊害は完全に防止され、例えば、ROHS規制等をクリアすることができる。
それと共に、鉛による環境の影響を完全に排除することが可能であり、鉛除去による環境へのよい影響を実現することが可能になる。
図14は、本発明の第2実施形態を示している。
図1で示すように、第1実施形態では、冷却水循環機構50は閉鎖系として構成されているが、図14では、冷却媒体(例えば冷却水)の供給が、いわゆる開放系で行われている。
図14において、第2実施形態に係る錫の精製システムは、全体が符号102で示されている。
図14のシステム102は、図1のシステム100とは異なり、冷却水循環機構50Aのライン(冷媒排出ライン)L2の先端が系外に開放されており、いわゆる「開放系(オープン・サーキット)」を構成している。
開放系の冷却水循環機構50Aの冷媒排出ラインLには、図1のシステム100とは異なり、冷却媒体冷却装置70、冷媒ポンプ51、開閉弁V1、V2及びラインL3、L4が介装されていない。
その結果、構成を簡略化することが可能である。このような開放系の冷却水循環機構50Aであっても、高温のガスが系外に放出されたり、大きな放出音が発生することはないので、作業環境の悪化を防止することができる。
図14の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図13の第1実施形態と同様である。
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記載ではないことを付記する。
本発明の第1実施形態のブロック図。 第1実施形態の精製装置10の構成を示す部分断面図。 図2のO部拡大図。 第1実施形態の回転冷却体の構成を説明する分解図。 回転冷却体外殻部に形成された複数の凹部を説明する部分断面図。 回転冷却体外殻部に突起を形成した場合を説明する部分断面図。 回転冷却体外殻部における冷却効果を説明する断面図。 第1実施形態の回転冷却体外殻部の冷却効果を説明する断面図。 第1実施形態の回転体外殻部における錫の晶出を説明する説明図。 回転冷却体を一方向のみに回転した場合の錫の溶湯液面と、回転冷却体に正転及び逆転を繰り返した場合の溶湯液面とを比較して示す図。 第1実施形態における錫回収の1態様を説明する工程図。 図11とは異なる錫回収態様を説明する工程図。 図11、図12とは異なる錫回収態様を説明する工程図。 本発明の第2実施形態のブロック図。
符号の説明
1・・・回転冷却体
2・・・外殻部/スティック
3・・・本体部
4・・・ノズル部材
5・・・シール部材/O−リング
6・・・排出アダプタ
7・・・吸入アダプタ
8・・・溶融炉
9・・・加熱用コイル
50・・・冷却媒体循環機構
51・・・冷媒ポンプ
60・・・圧力・流量制御装置
70・・・冷却媒体冷却装置
L・・・冷媒循環ライン

Claims (6)

  1. 錫の精製装置(10)と、該精製装置(10)に冷却媒体を供給する冷却媒体供給機構(50)とを備え、精製装置(10)は、はんだの溶湯を貯留する溶融炉(8)と、はんだの溶湯内に浸漬されて表面に錫が晶出する回転冷却体(1)とを備え、回転冷却体(1)の側面部(2a)は、晶出するべき錫の晶出核が残留可能で且つ回転冷却体(1)に応力集中が生じないような形状に加工されていることを特徴としているとする錫の精製システム。
  2. 冷却媒体として液相冷却媒体が用いられ、該液相冷却媒体は冷却媒体供給機構(50)のライン(L1)を介して回転冷却体(1)に供給され、液相冷却媒体のシール材としてはんだ溶湯の温度に耐える耐熱性材料から成るパッキン(5)が用いられ、回転冷却体(1)ははんだ溶湯と反応し難い材質により中空体として構成されており、その中空領域(2b)には液相冷却媒体を噴射するためのノズル部材(4)が収容され、ノズル部材(4)に設けたノズル(4f)から回転冷却体側面部(2a)の内壁面(2d)に向かって液相冷却媒体が噴射される請求項1の錫の精製システム。
  3. 回収された錫を溶融状態で貯留する第2の溶融炉(80)を設け、回転冷却体(1)は、その側面部(2a)に錫が晶出した後に、第2の溶融炉(80)内に貯留されている錫の溶湯(Msn)中に浸漬されて、晶出した錫(Sn)を錫の溶湯(Msn)により溶融する機能を有する請求項1、2の何れかの錫の精製システム。
  4. 請求項1、2の何れか1項の錫の精製システムを用いた錫の精製方法において、溶融炉(8)に貯留されているはんだ溶湯(M)に回転冷却体(1)を浸漬して錫を回転冷却体の側面部(2a)に晶出させる晶出工程(S11−2、S12−2、S13−2)と、該晶出工程の際に回転冷却体(1)は冷却媒体供給機構(50)から供給された冷却媒体で冷却され、回転冷却体(1)の側面部(2a)に残留した錫を晶出核として錫が晶出することを特徴とする錫の精製方法。
  5. 回収された錫(Sn)を溶融状態で貯留する第2の溶融炉(80)が設けられており、回転冷却体の側面部(2a)に錫が晶出した後に、当該回転冷却体(1)を第2の溶融炉(80)内に貯留されている錫の溶湯(Msn)中に浸漬し、晶出した錫(Sn)を錫の溶湯(Msn)により溶融する工程(S12−4)を有している請求項4の錫の精製方法。
  6. 回収された錫(Sn)を貯留する錫容器(82)が設けられており、回転冷却体の側面部(2a)に錫(Sn)が晶出した後に、加熱装置(90)によって晶出した錫を溶融し、溶融した錫を錫容器(82)内に受領する工程(S13−3)を有している請求項4の錫の精製方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2013192065A1 (en) * 2012-06-20 2013-12-27 Honeywell International Inc. Refining process for producing low alpha tin

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