JP2010024397A - ポリエステルフィルムロール - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた寸法安定性を有するフィルムの特性を変えることなく、シワやタルミといった欠点の抑えられたポリエステルフィルムロールの提供。
【解決手段】(i)ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%未満の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および50モル%を超え95モル%以下の他の芳香族ジカルボン酸成分を含有し、(ii)ジオール成分が90〜100モル%の炭素数2〜10のアルキレングリコール成分を含有するポリエステルからなる二軸配向フィルムがコアに巻かれたフィルムロールであって、該ロールの直径をロール幅方向に測定し、得られたロール直径の曲線に対しその両端を結ぶ直線を引き、該直線より凸部側の最大長さ(最大凸)が300μm以下であり、かつ該直線より凹部側の最大長さ(最大凹)が200μm以下であるポリエステルフィルムロール。
【選択図】なし

Description

本発明はポリエステルフィルムロールに関し、更に詳しくは優れた環境変化に対する寸法安定性を有しながらも、ロールから巻きだしたときに、フィルムにシワやタルミの発生の抑えられたポリエステルフィルムロールに関する。
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに代表される芳香族ポリエステルは、優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有するのでフィルムなどに幅広く使用されている。特にポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、ポリエチレンテレフタレートよりも優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有し、それらの要求の厳しい用途、例えば高密度磁気記録媒体などのベースフィルムなどに使用されている。しかしながら、近年の高密度磁気記録媒体などでの寸法安定性の要求はますます高くなってきており、さらなる特性の向上が求められている。
一方、特許文献1〜4には6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を主とする酸成分と、ジオール成分とのエステル単位からなるポリエステルが提案されている。該文献には、結晶性で、融点が294℃のポリエステルが開示されている。これらの特許文献1〜4に開示されたポリエステルは、融点が非常に高く、また結晶性も非常に高く、フィルムなどに成形しようとすると、溶融状態での流動性が乏しく、押出しが不均一化したり、押出した後に延伸しようとしても結晶化が進んで高倍率で延伸すると破断したりするなどの問題があった。
また、特許文献5では、塗布や蒸着等の加工での不具合を抑えるために、ロールの直径をロール幅方向に測定したときの最大値と最小値の差を特定範囲とすることが提案されている。
特開昭60−135428号公報 特開昭60−221420号公報 特開昭61−145724号公報 特開平6−145323号公報 国際公開第2001/048061号パンフレット
本発明者らは、まず寸法安定性、特に温度や湿度が変化したときの環境変化に対する寸法安定性を高めるために、αt(温度膨張係数)およびαh(湿度膨張係数)が低いフィルムを提供することを鋭意検討した結果、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などをジカルボン酸成分とするポリエステルに、所定量の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸(以下、ANAと称することがある。)を共重合させたポリエステルは、製膜性に優れ、該共重合ポリエステルから外観および機械的強度に優れたフィルムが得られ、しかもANAの特性である低いαh値を有し、かつαtも低い値を示すことを見出し、先に出願した。
ただ、このように優れた寸法安定性を有するフィルムではあるものの、共重合によるためか、フィルムロールから巻き出そうとすると、シワやタルミといった欠点が生じやすいという新たな問題が潜在していることを見出し、それを解消したのが本発明である。
したがって、本発明の課題は、かかる問題を改善し、優れた寸法安定性を有するフィルムの特性を変えることなく、シワやタルミといった欠点の抑えられたポリエステルフィルムロールを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルフィルムとしてANAを共重合したフィルムを用い、かつロールの形状を特定範囲にすることで、課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の目的は、本発明によれば、
〔1〕 ポリエステルフィルムがコアに巻かれてなるフィルムロールであって、該ポリエステルフィルムが、芳香族ジカルボン酸成分およびジオール成分からなるポリエステルであって、(i)ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%未満の下記式(A)および50モル%を超え95モル%以下の下記式(B)で表される繰り返し単位を含有し、(ii)ジオール成分が90〜100モル%の下記式(C)で表される繰り返し単位を含有するポリエステルからなる二軸配向フィルムであること、そして該ロールの直径をロール幅方向に測定し、得られたロール直径の曲線に対しその両端を結ぶ直線を引き、該曲線から該直線に垂直に引いた線が該直線と交差するまでの長さの中で、該直線より凸部側の最大長さ(最大凸)が300μm以下であり、かつ該直線より凹部側の最大長さ(最大凹)が200μm以下であることを特徴とするポリエステルフィルムロール。
Figure 2010024397
(式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基、式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基、式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である。)
〔2〕 前記式(A)で表されるジカルボン酸成分が、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分である〔1〕記載のポリエステルフィルムロール。
〔3〕 前記式(B)で表されるジカルボン酸成分が、2、6−ナフタレンジカルボン酸成分である〔1〕記載のポリエステルフィルムロール。
〔4〕 前記式(C)で表されるジオール成分が、エチレングリコール成分である〔1〕記載のポリエステルフィルムロール。
〔5〕 二軸配向フィルムの長手方向および幅方向のヤング率が、ともに5GPa以上である〔1〕記載のポリエステルフィルムロール。
〔6〕 ポリエステルフィルムの表面粗さRaが0.1nm以上10nm以下である〔1〕記載のポリエステルフィルムロール。
〔7〕 ポリエステルフィルムの厚みが2μm以上10μm以下である〔1〕記載のポリエステルフィルムロール。
〔8〕 フィルムロールの巻き硬度が90以上100以下である〔1〕記載のポリエステルフィルムロール。
〔9〕 ポリエステルフィルムが磁気記録媒体の支持体に用いられるフィルムである〔1〕記載のポリエステルフィルムロール。
〔10〕 磁気記録媒体の磁性層が強磁性金属薄膜層からなる磁気記録媒体である〔9〕記載のポリエステルフィルムロール。
〔11〕 磁気記録媒体の磁性層が塗布型磁性層である〔9〕記載のポリエステルフィルムロールにより達成される。
本発明によれば、環境変化に対する優れた寸法安定性を有し、しかも経時で発生するシワやタルミがなくて、細幅スリット品の幅などが正確に確保できるポリエステルフィルムロールを提供することができ、工業的価値の高いものである。
以下、本発明のポリエステルフィルムロールについて説明する。
本発明におけるポリエステルフィルムは、特に長手方向(縦方向)、幅方向(横方向)に延伸配向された二軸配向フィルムであることが好ましい。未延伸もしくは一軸配向フィルムでは、後述のANA成分を共重合しているためか、フィルムが伸びやすく、シワやタルミの発生を抑制することが難しい。
そのような観点から、二軸配向フィルムの長手方向のヤング率は4.5GPa以上、さらに,5GPa以上、特に5.5GPa以上であることが好ましい。なお、長手方向のヤング率の上限は特に制限されないが、幅方向に十分なヤング率を持たせる観点から、通常10GPa以下であることが好ましい。一方、二軸配向フィルムの幅方向のヤング率は、フィルムの幅方向に、温湿度変化に対する優れた寸法安定性を具備させる観点から、5GPa以上、さらに6GPa以上、特に7GPa以上であることが好ましい。なお、幅方向のヤング率の上限は特に制限されないが、長手方向に十分なヤング率を持たせる観点から、通常12GPa以下であることが好ましい。
本発明のフィルムロールを形成するポリエステルとしては、下記の芳香族ジカルボン酸成分およびジオール成分からなるポリエステルを用いる。
即ち、芳香族ジカルボン酸成分およびジオール成分からなるポリエステルであって、(i)ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%未満の前記式(A)および50モル%を超え95モル%以下の前記式(B)で表される繰り返し単位を含有し、(ii)ジオール成分が90〜100モル%の前記式(C)で表される繰り返し単位を含有するポリエステルである。
〔ジカルボン酸成分〕
式(A)で表される繰り返し単位の含有量の上限は、50モル%(50モル%は含まず)であることが必要であり、好ましくは45モル%、より好ましくは40モル%、さらに好ましくは35モル%、特に好ましくは30モル%である。下限は、5モル%、好ましくは7モル%、さらに好ましくは10モル%、特に好ましくは15モル%である。従って、式(A)で表される繰り返し単位の含有量は、好ましくは5モル%以上50モル%未満であることが必要であり、好ましくは5〜45モル%、より好ましくは7〜40モル%、さらに好ましくは10〜35モル%、特に好ましくは15〜30モル%である。
式(A)で表される繰り返し単位は、好ましくは6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸由来の単位が好ましい。これらの中でも式(A)におけるRの炭素数が偶数のものが好ましく、特に6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸由来の単位が好ましい。
本発明におけるポリエステルは、ジカルボン酸成分として、式(A)で示される単位を上記範囲内で含有することを特徴とする。式(A)で示される単位の割合が下限未満では湿度膨張係数の低減効果などが発現し難い。また上限よりも少なくすることで製膜性を向上でき、しかも湿度膨張係数の低減効果も上限を超えるものと同程度で発現されるという利点もある。
つぎに、式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基である。式(B)で表される繰り返し単位として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸に由来する単位、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
〔ジオール成分〕
ジオール成分は、90〜100モル%の前記式(C)で表される繰り返し単位を含有する。式(C)で表される繰り返し単位の含有量は、好ましくは95〜100モル%、より好ましくは98〜100モル%である。
式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である。Rのアルキレン基として、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。これらの中でも式(C)で表されるジオール成分として、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等に由来する単位が好ましく挙げられる。ジオール成分のエチレングリコール由来の単位の含有量は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%、最も好ましくは98〜100モル%である。
〔ポリエステル〕
本発明におけるポリエステルは、式(A)で表される繰り返し単位と、式(C)で表される繰り返し単位で構成されるエステル単位(−(A)−(C)−)の含有量は、全繰り返し単位の好ましくは5モル%以上50モル%未満、より好ましくは5〜45モル%、さらに好ましくは10〜40モル%である。
他のエステル単位として、エチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートなどのアルキレンテレフタレート単位、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、トリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのアルキレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が好ましく挙げられる。これらの中でも機械的特性などの点からエチレンテレフタレート単位やエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が好ましく、特にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が好ましい。
本発明におけるポリエステルは、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度が0.4〜3、好ましくは0.4〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.5〜1.2dl/gである。
本発明におけるポリエステルの融点は、200〜260℃の範囲、好ましくは205〜257℃の範囲、より好ましくは210〜255℃の範囲である。融点はDSCで測定する。 融点が上限を越えると、溶融押出して成形する際に、流動性が劣り、吐出などが不均一化しやすくなる。一方、下限未満になると、製膜性は優れるものの、ポリエステルの持つ機械的特性などの損なわれやすくなる。
一般的に共重合体は単独重合体に比べ融点が低く、機械的強度が低下する傾向にある。しかし、本発明のポリエステルは、式(A)の単位および式(B)の単位を含有する共重合体であり、式(A)の単位を有する単独重合体に比べ、融点が低いが機械的強度は同じ程度であるという優れた特性を有する。
本発明におけるポリエステルのDSCで測定したガラス転移温度(以下、Tgと称することがある。)は、好ましくは80〜125℃、より好ましくは95〜123℃、さらに好ましくは110〜123℃の範囲にある。Tgがこの範囲にあると、耐熱性および寸法安定性に優れたフィルムが得られる。融点やガラス転移温度は、共重合成分の種類と共重合量、そして副生物であるジアルキレングリコールの制御などによって調整できる。
本発明におけるポリエステルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、それ自体公知の他の共重合成分を共重合しても良いし、また、ポリエーテルイミドや液晶性樹脂などをブレンドした組成物としてもよい。
本発明におけるポリエステルフィルムは単層フィルムでも、二層以上の積層フィルムでもよい。
ポリエステルフィルムの中には、ポリエステル重合時に析出させた内部析出粒子や、製膜までに添加した不活性粒子例えば、炭酸カルシウム粒子、アルミナ粒子、球状シリカ粒子、酸化チタン粒子に代表される不活性無機粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル樹脂粒子、架橋スチレン−アクリル樹脂粒子、ポリイミド粒子、メラミン樹脂粒子等に代表される有機粒子等を含んでいても良い。
これら不活性粒子の平均粒径は0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましい。平均粒径の下限は、更に好ましくは0.05μm、更になお好ましくは0.1μmであり、一方上限は更に好ましくは1.0μm、更になお好ましくは0.7μmである。また不活性粒子の含有量は0.001wt%以上2.0wt%以下が好ましい。含有量の下限は更に好ましくは0.005wt%、更になお好ましくは0.01wt%であり、一方上限は更に好ましくは1.0wt%、更になお好ましくは0.5wt%である。
[ポリエステルフィルム]
本発明におけるポリエステルフィルムは、前述のポリエステルを含有する、2軸に配向したフィルムであることが好ましい。2層以上のフィルム層を有する積層フィルムの場合は、これを構成する少なくとも1層が本発明のフィルムからなる層であればよい。
このようなポリエステルフィルムは、前述のポリエステル組成物を溶融製膜して、シート状に押出し、延伸することで得られる。そして、前述のポリエステルは、溶融時の流動性、その後の結晶性、製膜性に優れ、厚み斑の均一なフィルムとなる。さらに本発明のフィルムは、6、6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸以外の芳香族ジカルボン酸を含有する芳香族ポリエステルの優れた機械的特性を有する。
ポリエステルフィルムの厚みは2μm以上10μm以下であり、さらには3μm以上6μm以下、特に3.5μm以上4.8μm以下であることが好ましい。厚みが下限未満のフィルムは剛性が極端に低下するために巻取り性が劣り、一方上限を超えるフィルムではフィルムの剛性が高く、本発明の効果は発現しにくい。
また、ポリエステルフィルムの表面粗さ(Ra)は0.1nm以上10nm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.3nm以上8nm以下、特に好ましくは1nm以上7nm以下である。このRaが下限未満では、フィルムの滑性が劣り、極めて巻き姿の劣るフィルムロールしか得られないため、好ましくない。一方、Raが上限を超える粗いフィルムは、ロール形状が本発明の条件を満たさなくともシワは発生しにくく、本発明の対象にはなりにくい。なお、表面粗さ(Ra)は両方の表面が上記範囲内にあることが好ましい。
本発明において、フィルムの面方向とはポリエステルフィルムの厚みに直交する面の方向である。フィルムの製膜方向(縦方向)をMachine Direction(MD)という。フィルムの幅方向(横方向)とはフィルムの製膜方向(MD)に直交する方向であり、Transverse Direction(TD)方向という。
[温度膨張係数:αt]
本発明におけるポリエステルフィルムは、フィルムの幅方向の温度膨張係数(αt)が、好ましくは14×10−6/℃以下、より好ましくは10×10−6/℃以下、さらに好ましくは7×10−6℃以下、特に好ましくは5×10−6/℃以下の範囲であることが、雰囲気の温度変化による寸法変化に対して優れた寸法安定性を発現できることから好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムの幅方向の温度膨張係数(αt)の下限は、好ましくは−15×10−6/℃、より好ましくは−10×10−6/℃、さらに好ましくは−7×10−6/℃である。フィルムの幅方向の温度膨張係数が上記範囲であることで、磁気テープにしたときの寸法変化を抑制しやすくなる。
なお、特許文献3によれば、ポリアルキレン−6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエートを共重合したポリエステルフィルムの温度膨張係数(αt)は大きくなることが予想される。しかし、本発明によれば、特定の共重合比のポリエステルを採用し、かつ延伸することにより、温度膨張係数(αt)を小さくすることができる。
[湿度膨張係数:αh]
本発明におけるポリエステルフィルムは、フィルムの幅方向の湿度膨張係数(αh)が1×10−6〜7×10−6/%RH、さらに1×10−6〜6×10−6/%RHの範囲にあることが好ましい。αhがこの範囲にあると、磁気記録テープにしたときの寸法安定性が良好となる。
[ヤング率:Y]
本発明におけるポリエステルフィルムは、フィルムの製膜方向のヤング率が、好ましくは4.5GPa以上、より好ましくは5GPa以上であることが、高温加工時の伸びを抑制する点から好ましい。フィルムの製膜方向のヤング率(Y)の上限は12GPa程度がフィルムの幅方向にも十分なヤング率を具備させやすいことから好ましい。
一方、本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの幅方向のヤング率が、6〜14GPa、より好ましくは7〜12GPaの範囲にあることが、フィルムの幅方向の温度膨張係数や湿度膨張係数を上記範囲内に調整しやすいことから好ましい。
<ポリエステルフィルムの製造方法>
(ポリエステルの製造方法)
本発明におけるポリエステルは、以下の方法で製造することができる。例えば、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸(以下、ANAと略すことがある)およびナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体を含有するジカルボン酸成分と、エチレングリコール等のジオール成分とを反応させポリエステル前駆体を製造する。そして、得られたポリエステル前駆体を重合触媒の存在下で重合して製造できる。その後、必要に応じて固相重合などを施しても良い。
(押出工程)
まず、前述のポリエステルを乾燥後、該ポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+50)℃の温度に加熱された押出機に供給して溶融し、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出す工程である。
(冷却工程)
この押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化して未延伸フィルムとする工程である。
前述のαt、αh、ヤング率などを達成するためには、その後の延伸を進行させやすくすることが必要であり、そのような観点から冷却ドラムによる冷却は非常に速やかに行なうことが好ましい。そのような観点から、特許文献3に記載されるような80℃といった高温ではなく、20〜60℃という低温で行なうことが好ましい。このような低温で行うことで、未延伸フィルムの状態での結晶化が抑制され、その後の延伸をよりスムーズに行うことが可能となる。
(延伸工程)
得られた未延伸フィルムを二軸延伸する工程である。二軸延伸としては、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもよい。ここでは、逐次二軸延伸で、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行う製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸は芳香族ポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜10倍、好ましくは3〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜8倍に延伸し、さらに熱処理としてポリマーの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒間、さらに1〜15秒間、熱固定処理するのが好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムは、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が共重合されていることから極めて延伸性に富む反面、同じ延伸倍率ではヤング率が低くなる傾向があり、目的とするヤング率を得るにはより高めの延伸倍率で延伸することが必要である。通常であれば、延伸倍率を上げると製膜安定性が損なわれるが、本発明では6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が共重合されているので延伸性が非常に高く、そのような問題は無い。
本発明におけるポリエステルフィルムは縦延伸と横延伸とを同時に行う同時二軸延伸でも製造できる。その条件は前述の延伸倍率や延伸温度などを参考にすればよい。
また、本発明におけるポリエステルフィルムが積層フィルムの場合、2種以上の溶融ポリエステルをダイ内で積層してからフィルム状に押出すことができる。また2種以上の溶融ポリエステルをダイから押出した後に積層し、急冷固化して積層未延伸フィルムとすることもできる。押し出し温度は、好ましくはそれぞれのポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度である。
ついで前述の単層フィルムの場合と同様な方法で二軸延伸および熱処理を行うとよい。また、塗布層を設ける場合、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムの片面または両面に所望の塗布液を塗布し、後は前述の単層フィルムの場合と同様な方法で二軸延伸および熱処理を行うことが好ましい。
そして、このようにして得られるポリエステルフィルムを、後述の巻取り条件の説明にしたがって、本発明で規定する範囲内となるように調整すればよい。
〔ポリエステルフィルムロール〕
本発明のポリエステルフィルムロールには、ポリエステルフィルムがコアに巻かれてなるフィルムロールであって、該ロールの直径をロール幅方向に測定し、得られたロール直径の曲線に対しその両端を結ぶ直線を引き、該曲線から該直線に垂直に引いた線が該直線と交差するまでの長さの中で、該直線より凸部側の最大長さ(最大凸)が300μm以下、好ましくは250μm以下、特に好ましくは220μm以下であり、かつ該直線より凹部側の最大長さ(最大凹)が200μm以下、好ましくは150μm以下、特に好ましくは120μm以下である。
上記最大凸が上限を超える場合は、その部分のフィルムが伸ばされてベコシワ(タルミ)が発生し、平面性が悪くなり、均一に塗布できなかったり、カレンダー時にシワが発生し、均一にカレンダーがかけなくなったり、また磁気テープにスリットした場合、スリット幅が所望の幅より狭くなり、問題となる。また、上記最大凹が上限を超えると、ロール幅方向のその部分にエアー溜まりができ、エアーが抜ける際に、縦シワとなり、均一に塗布できなかったり、カレンダー時、均一にカレンダーがかけなくなったりし、問題となる。
上記ポリエステルフィルムロールは、その製法については特に限定されないが、連続的に製膜される走行フィルムの厚みを高精度に測定したり、巻き取ったフィルムロールの幅方向のロール形状値(直径)を測定し、本発明のロール形状を満足するようダイリップ温度や間隙の調整にフィードバックしてフィルム厚薄を調整する方法を組合わせて用いるのが好ましい。前者の高精度測定法は制御の応答を速くでき、最も理想的であるが、後者は従来の厚み斑調整方法と組み合せて行うことができ、該方法の精度不足をカバーし、かつコスト上昇を押さえる、という利点がある。前者の走行フィルムの厚み測定には、オンラインで一般に用いられる非接触方式であるβ線透過減衰方式の厚み計、赤外線透過減衰方式の厚み計、光干渉分光方式の厚み計などが用いられる。また後者のロール形状については触針式や非接触のレーザー型厚み計などが用いられる。
本発明におけるポリエステルフィルムロールの巻き硬度は90以上100以下であることが好ましく、更に好ましくは95以上100以下である。この巻き硬度が90未満であると、経時でシワが発生しやすく、また巻きずれを起こしやすい。
本発明におけるポリエステルフィルムの幅、長さは特に限定されないが、工業的規模での生産性からして、幅は0.300〜1.500m、長さは3000〜30000mのものが一般的である。本発明の効果が特に顕著なのは、幅が0.400m以上、長さが5000m以上のフィルムを巻いたロールである。
本発明におけるポリエステルフィルムロールのコアは、ロール形状の外径について特に限定されないが、通常80〜400mm、好ましくは100〜200mmのものが用いられる。そして、コアのロール直径をフィルムが巻かれる部分についてコア幅方向に測定し、得られたコア直径の曲線に対しその両端を結ぶ直線を引き、該曲線から該直線に垂直に引いた線が該直線と交差するまでの長さの中で、該直線より凸部側の最大長さ(最大凸)が400μm以下、好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下であり、かつ該直線より凹部側の最大長さ(最大凹)が200μm以下、好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下であるコアを使用することが好ましい。この最大凸が400μmを超えると、また、最大凹が200μmを超えると、例えポリエステルフィルムの厚み斑が少なくとも、コアの影響でフィルムロールに縦シワやタルミが発生するので好ましくない。コアのロール直径をコア幅方向に測定したときの最大値と最小値の差(Rc)が300×10−6m以下であることが好ましく、更に好ましくは200×10−6m以下である。この差(Rc)が300×10−6mを超えると、例えポリエステルフィルムの厚み斑が小さくとも、コアの影響でフィルムロールにシワやタルミが発生するので好ましくない。コアのロール形状は、コア幅方向の中央部が太く、両端部が細いクラウン形状であることが望ましい。クラウン形状であるとポリエステルフィルムを巻き取る際にフィルム間のエアーが外に抜けやすくなり、シワの発生を抑制しやすい。クラウン形状のコアでは、中央部の径と両端部の径の差が0〜300×10−6mの範囲にあることが好ましい。
上記コアの材質としては紙やプラスチックなどを用いることができるが、強度の観点から繊維強化プラスチックを用いることがより好ましい。繊維強化プラスチックコアとしては、例えば炭素繊維あるいはガラスフィラメントを巻きまわして円筒形とし、これに不飽和ポリエステル樹脂のような熱硬化性樹脂を含浸せしめ、硬化させたコアなどが挙げられる。
上記コアは円周方向曲げ弾性率が13GPa以上であることが好ましく、更に好ましくは14GPa以上である。かかる範囲に満たないコアを使用すると、ポリエステルフィルムを巻き取る際にかかる張力と接圧によりコアが変形してしまうことがある。コアの強度をかかる範囲とするための方法は特に限定されないが、例えば炭素繊維強化プラスチックコアでは炭素繊維の量を適宜選ぶことによっても調節でき、またコアの厚みを調節することによっても所望の強度が得られる。
上記コアの表面粗度Racは0.6μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.3μm以下である。かかる範囲に満たないコアを使用すると、コアの表面凹凸がポリエステルフィルムの表面に転写されるので、例えばフィルムの平坦性が厳しく要求される高記録密度磁気テープ用フィルムしては電磁変換特性を著しく悪化させてしまうことがある。コアの表面粗度をかかる範囲とするための方法は特に限定されないが、例えばコア表面に樹脂層を設け、表面を精度よく研削することにより所望の表面粗さが得られる。
上記コアの表面硬度は65度以上であることが好ましく、更に好ましくは70度以上である。かかる範囲に満たないコアを使用すると、ポリエステルフィルムを巻き取る際にかかる張力と接圧によりコアが変形し、その変形がフィルムへ転写し、平面不良を生じさせることもある。コアの表面高度をかかる範囲とするための方法は特に限定されないが、例えばコア表面にエポキシ樹脂などの硬い樹脂を用い、その厚みを適宜選ぶことにより調整できる。
本発明におけるポリエステルフィルムロールは、平坦性を要求される磁気記録媒体用フィルムロールとして特に有効である。中でもデジタル記録方式の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールとして有効である。その中でも、スリットしたときの幅が極めて均一であることが要求されるリニア記録方式の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールとして有効である。
本発明におけるポリエステルフィルムロールは、前述の通り、経時シワや巻きずれを防止するために、巻き硬度を90以上100以下とすることが好ましいが、このような硬度のロールを得るためには、巻取張力5〜20kg/m、巻取接圧50〜200kg/m、巻取速度20〜200m/分の条件で、好ましくは40〜200m/分の条件で巻き取ることが好ましい。
(ポリエステルフィルムロールの用途)
本発明では、上記説明から理解されるように、本発明のポリエステルフィルムロールから得られるポリエステルフィルムは、磁気記録媒体用、コンデンサー用、包装用、印写材料用等の支持体(ベースフィルム)として、特に高密度の磁気記録媒体(ビデオテープ、オーディオテープ、コンピューター用テープ等)用の支持体として有利に使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各特性値は下記の方法によって測定した。
(1)中心面平均粗さ(Ra)
Zygo社製 非接触三次元表面構造解析顕微鏡(NewView5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトにより中心面平均粗さRaを以下の式より求めた。
Figure 2010024397
Zjkは測定方法(283μm)、それと直行する方法(213μm)をそれぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における2次元粗さチャート上の高さである。
(2)ポリエステルフィルムロール、コアの幅方向の形状
(2−1)直径の最大値と最小値の差R(m)
キタノ企画(株)製バルク形状測定器を用いてフィルムロールを幅方向にロール形状を測定し、直径の最大値と最小値の差R(m)を求める。円周方向に120度間隔で3個所測定し、これらの平均値で表す。尚、フィルムロールについてはフィルム端面のハイエッジの影響を除外するために、両端から0.010mのデータは削除する。
(2−2)最大凸と最大凹
キタノ企画(株)製バルク形状測定器を用いてフィルムロールを幅方向にロール形状を測定し、直径の変動を表す曲線を求める。円周方向に120度間隔で3個所測定し、その曲線の両端を結んで得られた直線に凸部から垂直に引いた線が交差する最大凸と、また凹部から垂直に引いた線が交差する最大凹を求め、これらの平均値で表す。尚、フィルムロールについてはフィルム端面のハイエッジの影響を除外するために、両端から0.01mのデータは削除する。
このフィルムロールを巻くコアについても、フィルムを巻く部分について上記と同様の測定を行い、最大凸と最大凹を求める。
(3)ポリエステルフィルムロールの表面硬度
高分子計器(株)製のハードネステスター、タイプCを押しあてて測定する。測定点はポリエステルフィルムロールの幅方向に5点ずつ(但し、ロール両端部0.010mずつは除いた全幅を5等分して、各等分の中央部を測定する)、円周方向に120度間隔で3個所、合計15個所の平均で表す。
(4)コアの円周方向曲げ弾性率
万能試験機においてリング状のテストピース(幅50mm)に円周方向に荷重を負荷させたときのタワミを測定し、以下の式で弾性率を求める。
Eγ=0.149Pr3/(δI)*10−3
Eγ;円周方向弾性率(GPa)
P;荷重(N)
r;中心半径(mm)
δ;たわみ(mm)
t;コア厚み(mm)である。
(5)コアの表面粗度Rac
JIS B0601に準じ、東京精密(株)の表面粗さ計サーフコム111Aを使用して、幅方向で中心部及び、両端部から0.050m部の合計3個所の中心線平均粗さをカットオフ0.25mmにて測定し、その平均値で表す。
(6)コアの表面硬度
JIS K7215に準じ、高分子計器(株)製のハードネステスター、タイプDを押しあてて、幅方向で中心部及び、両端部から0.050m部の合計3個所を測定し、その平均値で表す。
(7)ヤング率
フィルムを試料幅10mm、長さ150mmに切り、チャック間100mmにして、引張り速度10mm/分、チャート速度500mm/分でインストロンタイプの万能引張り試験装置にて引張る。得られる荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を算出する。
(8)固有粘度
ポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
(9)ガラス転移点および融点
ガラス転移点および融点はDSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:Q100)により昇温速度20℃/minで測定した。
(10)温度膨張係数(αt)
得られたフィルムを、フィルムの幅方向が測定方向となるように幅4mmに切り出し、セイコーインスツル株式会社製、商品名TMA/SS6000に測定長20mmでセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、80℃で30分前処理し、その後室温まで降温させた。その後30℃から80℃まで2℃/minで昇温して、各温度でのサンプル長を測定し、次式より温度膨張係数(αt)を算出した。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
αt={(L60−L40)}/(L40×△T)}+0.5×10−6
ここで、上記式中のL40は40℃のときのサンプル長(mm)、L60は60℃のときのサンプル長(mm)、△Tは20(=60−40)℃、0.5×10−6(/℃)は石英ガラスの温度膨張係数(αt)である。
(11)湿度膨張係数(αh)
得られたフィルムを、フィルムの幅方向が測定方向となるように幅5mmに切り出し、ブルカー・エイエックスエス株式会社製、商品名TMA4000SAに測定長15mmでセットし、30℃の窒素雰囲気下で、湿度20%RHと湿度80%RHにおけるそれぞれのサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数(αh)を算出した。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαhとした。
αh=(L80−L20)/(L20×△H)
ここで、上記式中のL20は20%RHのときのサンプル長(mm)、L80は80%RHのときのサンプル長(mm)、△H:60(=80−20)%RHである。
(12)共重合量
(グリコール成分)試料10mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに80℃で溶解し、イソプロピルアミンを加えて十分に混合した後に、600MHzのH−NMRを日本電子株式会社製、JEOL A600を用いて80℃で測定し、それぞれのグリコール成分量を求めた。
(酸成分)試料60mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、150MHzの13C−NMRを日本電子株式会社製、JEOL A600を用いて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を求めた。
(13)添加粒子の平均粒径
島津製作所製CP-50型セントリフュグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線をもとに算出する各粒子の粒径とその存在量との累積曲線から、50マスパーセント(mass percent)に相当する粒径を読み取り、この値を上記平均粒径とする。
(14)ロール巻き姿
得られたフィルムロールをまず目視判定で縦シワとタルミの有無を確認し、さらにフィルムを巻きだしたときのフィルムの状態を再度目し判定で縦シワとタルミの有無を確認し、以下の基準で判定した。
非常に良好:フィルムロールの状態および巻きだしたフィルムの状態の両方で観察されなかった。
良好:フィルムロールの状態でわずかに確認されるが、巻きだしたときに解消された。
不良:フィルムロールの状態および巻きだしたフィルムの状態の両方で確認された。
[参考例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、酸成分の30モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の70モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(PB1)を得た。
[参考例2]
6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を加えなかった以外は参考例2と同様な操作を繰り返して、固有粘度0.62dl/gで、酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(PA1)を得た。
[参考例3]
テレフタル酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、酸成分の80モル%がテレフタル酸成分、酸成分の20モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(PC1)を得た。
[実施例1]
参考例1および2で得られた芳香族ポリエステル(PA1)と(PB1)とを、表1に示す組成となるように押し出し機に供給して295℃(平均滞留時間:20分)で30mmの間隔で吐出量を調整するためのヒーターを有するダイから溶融状態で回転中の温度55℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。なお、PA1とPB1には、それぞれ重縮合反応の段階で平均粒径0.3μmの球状シリカ粒子と平均粒径0.1μmの球状シリカ粒子とをそれぞれ0.02重量%と0.2重量%となるように含有させた。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が133℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度135℃で横延伸倍率8.3倍、熱固定処理(202℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ5.0μmの二軸延伸フィルムを得た。この二軸に延伸されたフィルムの厚みはオンラインでβ線透過減衰方式の厚み計によって幅方向に走査しながら測定し、ダイリップ温度にフィードバックして第1段のフィルムの厚薄調整を実施した。そして、得られる二軸配向フィルムを、長さが1.2m、幅方向の最大凸が100μm、最大凹が100μm、円周方向の曲げ強度が15.7GPa、表面粗度が0.2μm、表面硬度が85度の繊維強化プラスチック(FWP)コアに、スリッターにより巻取張力10kg/m、巻取接圧140kg/m、巻取速度100m/分、オシレーション幅200mm、オシレーション速度0.010m/分の条件で、幅1.0m、長さ5000mの形状測定用のフィルムロールを巻き上げた。このとき、フィルムロールの巻き硬度は99度とした。そして、得られた形状測定用のフィルムロールの幅方向の形状をキタノ企画(株)製バルク形状測定器を用いて測定し、得られたロール形状の曲線の凸部および凹部の位置に相当するダイのリップヒータを調整し、オンラインでのβ線透過減衰方式の厚み計の自動制御にあわせて最終のフィルムロールを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、表1に示す組成となるようにPA1とPB1の割合を変更し、押し出し機の温度を300℃、縦方向の延伸におけるフィルム表面温度を125℃にまた延伸倍率を6.2倍に変更し、横方向の延伸における横延伸温度を125℃にまた横延伸倍率9.5倍、熱固定処理を190℃で10秒間に変更し、得られる二軸延伸フィルムの厚さを4.5μmに変更したほかは実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、表1に示す組成となるようにPA1とPB1の割合を変更し、押し出し機の温度を300℃、縦方向の延伸におけるフィルム表面温度を135℃にまた延伸倍率を5.0倍に変更し、横方向の延伸における横延伸温度を135℃にまた横延伸倍率8.5倍、熱固定処理を205℃で10秒間に変更し、得られる二軸延伸フィルムの厚さを4.5μmに変更したほかは実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、表1に示す組成となるようにPA1とPB1の割合を変更し、押し出し機の温度を300℃、縦方向の延伸におけるフィルム表面温度を136℃にまた延伸倍率を5.2倍に変更し、横方向の延伸における横延伸温度を138℃にまた横延伸倍率8.2倍、熱固定処理を212℃で10秒間に変更し、得られる二軸延伸フィルムの厚さを5.0μmに変更したほかは実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、表1に示す組成となるようにPA1とPB1の割合を変更し、押し出し機の温度を300℃、縦方向の延伸におけるフィルム表面温度を130℃にまた延伸倍率を5.7倍に変更し、横方向の延伸における横延伸温度を130℃にまた横延伸倍率8.3倍、熱固定処理を194℃で10秒間に変更し、得られる二軸延伸フィルムの厚さを5.0μmに変更したほかは実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、PA1とPB1の代わりにPC1を用い、押し出し機の温度を290℃、縦方向の延伸におけるフィルム表面温度を105℃にまた延伸倍率を5.0倍に変更し、横方向の延伸における横延伸温度を115℃にまた横延伸倍率5.0倍、熱固定処理を210℃で3秒間に変更し、得られる二軸延伸フィルムの厚さを10.0μmに変更したほかは実施例1と同様な操作を繰り返した。なお、PC1には、重縮合反応の段階で平均粒径0.3μmの球状シリカ粒子と平均粒径0.1μmの球状シリカ粒子とをそれぞれ0.02重量%と0.2重量%となるように含有させた。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[実施例7]
実施例1において、オシレーションの幅を150mmに変更したほかは同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[実施例8]
PA1とPB1とを、表1に示す組成となるように2つの押し出し機に供給する。このとき、平坦面側には重縮合反応の段階で平均粒径0.1μmの球状シリカ粒子を0.05重量%、粗面側には重縮合反応の段階で平均粒径0.3μmの球状シリカ粒子と平均粒径0.1μmの球状シリカ粒子とをそれぞれ0.1重量%ずつ含有させた。そして、平坦面側と粗面側とが厚み比(前者:後者)が1:2となるように溶融状態で積層してダイから押し出したほかは、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[比較例1]
バルク形状測定によって得られた形状曲線の結果をダイリップヒーターの調整に用いず、ダイとしてリップヒーターの間隔が60mmのものを用い、オシレーションの幅を50mmに変更したほかは実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[比較例2]
オシレーションの幅を100mmに変更したほかは比較例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[比較例3]
ダイとしてリップヒーターの間隔が60mmのものを用い、オシレーションの幅を150mmに変更したほかは実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[比較例4]
バルク形状測定によって得られた形状曲線の結果をダイリップヒーターの調整に用いず、オシレーションの幅を100mmに変更したほかは実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[比較例5]
PA1とPB1の代わりにPB1を用い、押し出し機の温度を290℃、縦方向の延伸におけるフィルム表面温度を140℃にまた延伸倍率を3.0倍に変更し、横方向の延伸における横延伸温度を140℃にまた横延伸倍率4.3倍、熱固定処理を200℃で10秒間に変更し、得られる二軸延伸フィルムの厚さを5.0μmに変更したほかは実施例1と同様な操作を繰り返した。なお、PB1には、重縮合反応の段階で平均粒径0.3μmの球状シリカ粒子と平均粒径0.1μmの球状シリカ粒子とをそれぞれ0.02重量%と0.2重量%となるように含有させた。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびフィルムロールの特性を表1に示す。
[比較例6]
PA1とPB1の代わりにPA1のみを用い、押し出し機の温度を300℃、縦方向の延伸におけるフィルム表面温度を120℃にまた延伸倍率を4.5倍に変更し、横方向の延伸における横延伸温度を120℃にまた横延伸倍率9.0倍、熱固定処理を210℃で10秒間に変更し、得られる二軸延伸フィルムの厚さを5.0μmに変更したほかは実施例1と同様な操作を繰り返した。なお、PA1には、重縮合反応の段階で平均粒径0.3μmの球状シリカ粒子と平均粒径0.1μmの球状シリカ粒子とをそれぞれ0.02重量%と0.2重量%となるように含有させた。ただ、製膜中の切断が多く、フィルムロールでの採取は断念した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
Figure 2010024397
表1中の、ENAは6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、NAは2,6−ナフタレンジカルボン酸、EGはエチレングリコール、温度膨張係数および湿度膨張係数はフィルムの幅方向の値をしめす。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムにシワの発生のない、巻き姿が良好なポリエステルフィルムロールであることから、さまざまな用途に利用でき、磁気記録媒体用、コンデンサー用、包装用、印写材料用等の支持体(ベースフィルム)として、特に高密度の磁気記録媒体(ビデオテープ、オーディオテープ、コンピューター用テープ等)用の支持体として、特に高密度磁気記録媒体の支持体として有利に使用することができる。

Claims (11)

  1. ポリエステルフィルムがコアに巻かれてなるフィルムロールであって、該ポリエステルフィルムが、芳香族ジカルボン酸成分およびジオール成分からなるポリエステルであって、(i)ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%未満の下記式(A)および50モル%を超え95モル%以下の下記式(B)で表される繰り返し単位を含有し、(ii)ジオール成分が90〜100モル%の下記式(C)で表される繰り返し単位を含有するポリエステルからなる二軸配向フィルムであること、そして該ロールの直径をロール幅方向に測定し、得られたロール直径の曲線に対しその両端を結ぶ直線を引き、該曲線から該直線に垂直に引いた線が該直線と交差するまでの長さの中で、該直線より凸部側の最大長さ(最大凸)が300μm以下であり、かつ該直線より凹部側の最大長さ(最大凹)が200μm以下であることを特徴とするポリエステルフィルムロール。
    Figure 2010024397
    (式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基、式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基、式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である。)
  2. 前記式(A)で表されるジカルボン酸成分が、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分である請求項1記載のポリエステルフィルムロール。
  3. 前記式(B)で表されるジカルボン酸成分が、2、6−ナフタレンジカルボン酸成分である請求項1記載のポリエステルフィルムロール。
  4. 前記式(C)で表されるジオール成分が、エチレングリコール成分である請求項1記載のポリエステルフィルムロール。
  5. 二軸配向フィルムの長手方向および幅方向のヤング率が、ともに5GPa以上である請求項1記載のポリエステルフィルムロール。
  6. ポリエステルフィルムの表面粗さRaが0.1nm以上10nm以下である請求項1記載のポリエステルフィルムロール。
  7. ポリエステルフィルムの厚みが2μm以上10μm以下である請求項1記載のポリエステルフィルムロール。
  8. フィルムロールの巻き硬度が90以上100以下である請求項1記載のポリエステルフィルムロール。
  9. ポリエステルフィルムが磁気記録媒体の支持体に用いられるフィルムである請求項1記載のポリエステルフィルムロール。
  10. 磁気記録媒体の磁性層が強磁性金属薄膜層からなる磁気記録媒体である請求項9記載のポリエステルフィルムロール。
  11. 磁気記録媒体の磁性層が塗布型磁性層である請求項9記載のポリエステルフィルムロール。
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