書類等を綴じる綴じ具をファイル本体に着脱する場合、ユーザの利便性を考慮するとその着脱のための操作をファイル本体の内側か外側の何れか一方側での作業で綴じ具の固定が完結するのが好ましい。
また、ユーザのファイル本体の一方側からのアクセスによって綴じ具の着脱をしようとすると、該ファイル本体の他方側からの着脱作業に対するサポートがないため、従来技術においては綴じ具を固定するための固定装置の構成を簡潔なものとすることで、ユーザの作業性を担保せざるを得ない。その結果、固定装置による綴じ具の固定力が十分とは考えられない構成が、従来技術には散見される。すなわち、従来の構成は、書類等を綴じた状態で書庫等に立てかけられた場合に、書類等の重さにより固定装置がファイル本体から外れてしまったり固定装置が破損してしまったりし、また、書類等が綴じられた状態でテーブル等の高さから落下したときに綴じ具の固定部分に作用する衝撃力に十分に耐えられなかったりするため、実用化に至っていなかった。
本発明では、上記した問題に鑑み、書類等を綴じる綴じ具をファイル本体の一方側からの作業のみで着脱自在に固定することを可能とするとともに、実用品としての十分な固定強度を有するファイルのための綴じ具固定装置、それを含むファイルを提供することを目的とする。
本発明に係る綴じ具固定装置は、上記した課題を解決するために、綴じ具とファイル本体とを固定するために設けられたファイル本体側の孔部と綴じ具側の孔部とに対して、異なる係合方向での係合を可能とする2つの係合部を挿入させ且つファイル本体もしくは綴じ具に対する係合、およびその解除を可能とする構成が採用されている。そして、この2つの係合部の挿入方向は、ファイル本体の内側もしくは外側の何れか一方側からに設定されている。このような構成を採用することで、ユーザの操作性と十分な固定強度の確保の両立が可能となる。
詳細には、本発明に係る綴じ具固定装置は、書類等を綴じる綴じ具に設けられた固定用孔部とファイル本体に設けられたファイル側孔部とを用いて、該綴じ具と該ファイル本体とを固定する綴じ具固定装置であって、ファイル本体に配置される固定装置本体部と、固定装置本体部に設けられ、固定用孔部とファイル側孔部が重なって形成された連通孔に挿入される一対の挿入部と、連通孔に一対の挿入部が挿入された際にファイル本体及び綴じ具のうち該挿入部の挿入方向奥側の部材を被係合部材とし、当該被係合部材に対して係合及び該係合の解除が可能である、一対の挿入部のそれぞれに設けられた第一係合部および第二係合部と、を備える。そして、第一係合部により係合された被係合部材の係合方向である第一係合方向は、第二係合部により係合された被係合部材の係合方向である第二係合方向と異なるように設定される。
本発明に係る綴じ具固定装置では、ファイル本体に設けられたファイル側孔部と、綴じ具側に設けられた固定用孔部とが重なって形成された連通孔に、一対の挿入部が挿入される。そして、挿入された状態において、各挿入部に設けられた第一係合部と第二係合部が、ファイル本体と綴じ具のうち、挿入部の挿入方向において奥側に位置する一方(本発明に係る被係合部材)に対して、係合およびその解除が可能な状態に配置される。そして、この各係合部が被係合部材に対して係合状態となると、その係合部分と綴じ具固定装置の固定装置本体部とによって綴じ具とファイル本体が固定された状態になり、該係合状態が解除された係合解除状態となると綴じ具とファイル本体との固定状態が解除されることになる。その結果、綴じ具のファイル本体への着脱が自在となる。なお、この連通孔の形成について、ファイル側孔部と固定用孔部とは形状が異なっていてもよく、要は、挿入部が被固定部材側の孔部を通り、係合部による被係合部材との係合が可能なように両孔部が連なればよい。
ここで、上記綴じ具固定装置での連通孔へのアクセスは、ファイル本体の内側と外側の何れからでも可能である。すなわち、ファイル本体の内側に配置された綴じ具のさらに内側に添設される場合には、一対の挿入部が固定用孔部、ファイル側孔部の順に挿入され、各挿入部に設けられた第一、第二係合部が被係合部材としてのファイル本体と係合する。またファイル外側に添設される場合には、一対の挿入部がファイル側孔部、固定用孔部の順に挿入され、各挿入部に設けられた第一、第二係合部が被係合部材としての綴じ具と係合する。これにより、ユーザの操作性は格段と向上する。より好ましくは、ユーザによる綴じ具の固定作業は、綴じ具が設置される側、すなわちファイル本体の内側から行う形態を採用すべきであろう。これは、ファイル本体の背表紙部分には、見出し用のカバー(通常は、見出しユーザから可視状態となるように透明な樹脂カバー等)が設けられていることが多く、そのためファイル本体の外側からユーザに綴じ具固定のための作業を行わせる
のは困難である場合が多いからである。
そして、これらの第一係合部と第二係合部の係合による被係合部材の係合方向である第一係合方向と第二係合方向とは異なるように設定されることで、各係合部による係合を解除させようとする外力に対して十分に抗し、綴じ具とファイル本体とをより確実に固定することが可能となる。特に、書類等を綴じるファイルにおいては、ユーザの使用状態によって、様々な方向から外力が作用する可能性があるため、本発明に係る綴じ具固定装置のように異なる複数の係合方向を有する固定装置と構成することで、実用品としてのファイルの固定強度を十分に担保することが可能となる。
なお、各係合部は、被係合部材のいずれの部分に対しても係合を行うように設計してもよい。例えば綴じ具固定装置がファイル内側からのアクセスによって固定を行う機構である場合、ファイル側孔部が貫通孔である場合には、一対の挿入部が綴じ具側の孔部、ファイル側孔部の順に挿入され、各係合部がファイル本体の外側に至った状態で該ファイル本体と係合するように設計できる。また、一対の挿入部がファイル側孔部に挿入されている状態において、該ファイル側孔部の途中部分において各係合部がファイル本体と係合するようにしてもよい。要約すると、各係合部の被係合部材への係合は、一対の挿入部の挿入がファイル本体の一方の側から行われるのが肝要であり、被係合部材との係合箇所は綴じ具がファイル本体に固定される限り、何れの箇所であってもよい。したがって、被係合部材側の孔部は貫通孔でなくてもよく、例えば、窪み部と当該窪みに連通して設けられる各係合部との被係合空間とを備えたファイル側孔部を備えたファイル本体に適用することもできる。
また、以上の構成は、ファイルの外側(透明樹脂製シートで覆われる見出し部が設けられている場合がある。)に部材が残らない綴じ具のファイルへの着脱を実現することが可能であり、ユーザの手を入れることが困難な見出し部に固定装置のパーツが残らない等、極めて良好な操作性が得られる。
また、第一係合方向及び第二係合方向は、被係合部材の表面に沿って、互いに逆向きであってもよい。このように両係合方向を逆向きとすることで、綴じ具とファイル本体とが固定されたときに作用する外力に対して、第一係合部及び第二係合部の係合による固定状態を、効果的に維持することが可能となる。すなわち、一方の係合部に対して係合を緩める(解除する)方向の力が印加された場合であっても、他方の係合部に対しては係合を強める(締め付ける)方向の力が印加されるため、一対の挿入部がファイル側孔部から抜けてしまうという、ファイル本体に対して片側からの操作で綴じ具の着脱を実現する構成の実用化を阻んでいた問題を解決することが可能となる。
そして、好ましくは、ファイル側孔部は、ファイル本体の背表紙部に設けられ、第一係合方向と第二係合方向は、背表紙部の天地方向に沿って互いに逆向きに設定される。ユーザが綴じ具に書類等を綴じて使用する場合において、綴じ具とファイル本体との固定部分に強大な外力が作用する可能性の1つとして、書類等が綴じられたファイルがその天地方向から床面等に落下した場合が考えられる。そのような落下形態を考慮したとき、落下によって作用する外力を第一係合部及び第二係合部で確実に受けることで、綴じ具とファイル本体との固定状態を維持し、又綴じ具固定装置の破損を回避することが可能となる。
また、ファイルが書庫等に収納された際、綴じ具に綴じられた書類等の自重は綴じ具をファイル本体から引き離す方向に働くため、ファイルの一方側からのみの操作で着脱を行おうとする従来の固定機構では係合部がファイル側孔部から抜け落ちてしまう場合があり、このような操作性の固定機構の実用化が阻まれていたのに対し、本構成では、当該書類等による自重により一対の挿入部のうちの一方の係合部に係合解除方向の力が印加されて
も、他方の挿入部には係合を強める方向の力が印加されることになる。そのため、「一対の挿入部」によるファイル本体との係合力は十分に保たれ、書庫等に収納された状態で勝手に(ユーザが意図せず)綴じ具がファイル本体と分離してしまい、当該綴じ具に収納されていた書類等がばらまかれてしまうといった問題を防ぎ、一方側からのみの着脱操作で綴じ具とファイル本体とを着脱する機構の実用化を可能としている。
また、このようなファイルを実用化するに当たっては、綴じ具固定装置の性能だけではなくファイル全体の性能を、従来の他の固定機構を備えたファイルと同等若しくはそれ以上にする必要があるため、同じ書類等収納力を備えた従来のファイルに対しては同等の背表紙の幅にする必要がある。すなわち、ファイル本体の背表紙部の幅は、天地方向の高さと比べて狭いものとなる。そこで、係合方向を上記したように設定することで、係合方向を幅方向とする場合と比べて係合部の大きさ・形状の設定に自由度を持たせて実用に耐えうる十分な設計を行うことが可能となる。また、係合方向を背表紙の幅方向としてしまうと、各係合部の被係合部材との係合・解除操作が背表紙の幅方向となることがあるが、上記したように当該方向は最小限に設定されるため操作性が悪くなってしまう。上記構成では着脱操作の操作性も十分に担保し得る。
ここで、上述までの綴じ具固定装置においては、好ましくは第一係合部及び第二係合部の被係合部材との係合が解除された状態では、一対の挿入部は、連通孔に対して、ファイル本体の内側もしくは外側から挿入自在であり、且つ該ファイル本体の内側もしくは外側に抜出自在である。第一係合部及び第二係合部の係合解除状態と、一対の挿入部の挿入及び抜出自在状態を連動させることで、本発明に係る綴じ具固定装置のユーザによる操作性が向上する。特に、該綴じ具固定装置は、ファイル本体の一方側のみからのアクセスによって綴じ具の着脱作業が行われるため、作業性の向上はユーザ利益に大きく貢献する。
ここで、上述までの綴じ具固定装置において、固定装置本体部は、相対的にスライドする第一スライド部材と第二スライド部材を有し、一対の挿入部のうち一方の挿入部は第一スライド部材に設けられ、他方の挿入部は第二スライド部材に設けられるようにしてもよい。そして、このとき、第一スライド部材と第二スライド部材が相対的なスライドにより係合位置に至ると、第一係合部および第二係合部による被係合部材との係合状態が形成され、また、第一スライド部材と第二スライド部材が、係合位置に至るスライドとは逆方向の相対的なスライドにより係合解除位置に至ると、第一係合部および第二係合部による被係合部材との係合状態が解除される。
このように固定装置本体部を、第一スライド部材と第二スライド部材によって構成することで、ユーザは両スライド部材のスライド操作を行い、それにより第一係合部および第二係合部の係合状態の形成およびその解除が行われることになる。ここで、該係合状態およびその解除を成立させるために、第一スライド部材と第二スライド部材は、係合位置と係合解除位置との間を相対的にスライドされ、両スライド部材による当該スライドを、本明細書においては単に「相対的スライド」とも言う。したがって、綴じ具をファイル本体に固定したいユーザは、ファイル本体の内側もしくは外側の一方側から、綴じ具固定装置の一対の挿入部をファイル側孔部と固定用孔部が重なって形成される連通孔に挿入させ、更に上記相対的スライドを行えばよく、ユーザに課される作業は極めて簡潔となり且つ第一係合部及び第二係合部による強固な綴じ具の固定が実現される。
そして、係合位置に至る相対的なスライドでの第一スライド部材のスライド方向と第一係合方向は一致し、係合位置に至る相対的なスライドでの第二スライド部材のスライド方向と第二係合方向は一致するように設定されてもよい。各スライド部材のスライド方向と係合部の係合状態による係合方向とを一致させることで、綴じ具の固定作業や固定の解除作業時に、各係合部の被係合部材との係合やその解除を認識しやすくなり、以て作業性の
向上に資する。
ここで、上記第一スライド部材と第二スライド部材を有する綴じ具固定装置において、第一スライド部材と第二スライド部材が相対的なスライドにより係合位置に至った際に、所定のスライド制限位置に至ることで第一スライド部材と第二スライド部材の相対的なスライドを制限するロック部材を、更に備えるようにしてもよい。
上述のように第一スライド部材と第二スライド部材は、相対的スライドを行うことで各係合部の係合による綴じ具とファイル本体との固定が行われる。ここで、各係合部による係合をより確実に維持するために上記ロック部材が備えられ、且つこのロック部材の操作は、挿入部の挿入および相対的スライドの場合と同様に、ユーザの作業容易性を考慮して、各スライド部材のスライド操作を行うファイル本体の内側もしくは外側の一方側からユーザがアクセスすることで行われる。具体的には、ユーザが各スライド部材の相対的スライドを行い各係合部による被係合部材との係合を行った後、ロック部材が相対的スライドを制限する所定のスライド制限位置に至らしめることで、該スライド部材の相対的スライドが制限され、以て各係合部による係合が確実に維持されることになる。
ロック部材の一例として、次の形態が挙げられる。例えば、ロック部材は、第一スライド部材及び第二スライド部材のうち少なくとも一方のスライド部材にヒンジ接続部を介して接続され、且つ該接続されたスライド部材に対して該ヒンジ接続部による回転移動が可能である部材とする。そして、第一スライド部材と第二スライド部材が相対的なスライドにより係合位置に至ったとき、両スライド部材の間に所定のスライド制限位置に相当する間隙が形成され、ロック部材が回転移動により該間隙を塞ぐことで該両スライド部材の相対的なスライドを制限するようにしてもよい。このようにロック部材をスライド部材に対して回転移動可能となるように接続する形態以外にも、直線的な相対的な移動等が可能な状態にスライド部材に連結されているロック部材の形態も採用可能である。更には、ロック部材を、スライド部材とは切り離し、独立した部材として構成してもよい。このような場合でも、独立したロック部材は、ファイル本体の内側もしくは外側の一方側から上記間隙に至り、そこを塞ぐように設定される。
ここで、上述の綴じ具固定装置を有するファイルにおいて、第一スライド部材と第二スライド部材が係合解除位置に至ったとき、両スライド部材の相対位置関係を維持する係合解除位置維持部を、更に備えるようにしてもよい。このように係合解除位置維持部を有することで、係合解除位置にある第一スライド部材と第二スライド部材との相対位置関係を維持することが可能となる。その結果、ユーザの固定作業時における綴じ具固定装置の姿勢等に影響されることなく、第一係合部と第二係合部とが設けられた一対の挿入部の相対的な位置関係も維持されることになるため、ファイル側孔部と固定用孔部が重ねられて形成された連通孔への該一対の挿入部の挿入およびそこからの抜出を円滑に行うことが可能となる。
また、第一スライド部材と第二スライド部材が係合位置に至ったとき、両スライド部材の相対位置関係を維持する係合位置維持部を、更に備えるようにしてもよい。このように係合位置維持部を有することで、係合位置にある第一スライド部材と第二スライド部材との相対位置関係を維持することが可能となる。その結果、ユーザの固定作業時における綴じ具固定装置の姿勢等に影響されることなく、第一係合部と第二係合部の係合による綴じ具とファイル本体との固定状態を円滑に形成することが可能となる。特に、上記ロック部材を用いて相対的スライドを制限しようとする場合に形成される上記間隙を確保するために、この係合位置維持部による相対位置関係の維持は有用である。
なお、本発明に係る綴じ具固定装置においては、必ずしも係合位置維持部と係合解除位
置維持部を同時に備える必要はなく、ユーザのニーズを考慮して必要な一方の維持部を備えるようにしてもよい。
そして、係合位置維持部と係合解除位置維持部の構成については、次に示す一例が挙げられる。例えば、第一スライド部材は、相対的なスライドのスライド方向に沿って形成された維持用溝部と、該維持用溝部を2つの維持用領域に区切る突起部と、を有し、また、第二スライド部材は、相対的なスライドのスライド方向に沿って形成され、且つ突起部を乗り越えて2つの維持用領域の何れにも収まる収容突起部を有する。そして、このとき、係合位置維持部は、収容突起部が2つの維持用領域のうち一方に収容されることで、第一スライド部材と第二スライド部材が係合位置に至ったときの両スライド部材の相対位置関係を維持し、係合解除位置維持部は、収容突起部が2つの維持用領域のうち他方に収容されることで、第一スライド部材と第二スライド部材が係合解除位置に至ったときの両スライド部材の相対位置関係を維持するようにしてもよい。
すなわち、第一スライド部材側に設けられた維持用溝部と第二スライド部材側に設けられた収容突起部の相対移動関係にしたがって、該維持用溝部内の突起部を係合位置維持部による相対位置関係の維持と、係合解除位置維持部による相対位置関係の維持の切替の境界とすることで、第一スライド部材と第二スライド部材の相対的スライドが行われる。これにより、収容突起部が2つに区切られた維持用領域の何れかに収まることで、係合位置維持部及び係合解除位置維持部による相対位置関係の維持が実現される。
また、上述の綴じ具固定装置を有するファイルにおいて、更に、第一スライド部材と第二スライド部材が係合解除位置を外れた位置にあるとき、両スライド部材が所定の移動範囲内で制限された相対移動が許容されるように、該両スライド部材の相対位置関係を形成する相対移動許容部を備えるようにしてもよい。
このように相対移動許容部を有することで、両スライド部材が係合解除位置を外れた位置にあるときは、両スライド部材の相対位置関係は維持されず、両者の相対的スライドが許容される。そのため、両スライド部材を有する綴じ具固定装置を使って綴じ具とファイル本体との固定を行おうとするユーザは、該綴じ具固定装置を触るとすぐに、両スライド部材の相対位置関係が係合解除位置にあるか否かを容易に判断することができる。そして、必要があれば両スライド部材を係合解除位置に位置させるべく相対的スライドを行うことで、円滑な綴じ具とファイル本体との固定を実現することができる。また、上記係合解除位置維持部を有する構成とすることで、係合解除位置にある第一スライド部材と第二スライド部材との相対位置関係を維持することが可能となる。
そして、上記のファイルの場合における係合解除位置維持部と相対移動許容部の構成については、次に示す一例が挙げられる。例えば、第一スライド部材は、相対的なスライドのスライド方向に沿って形成された溝部と、該溝部を2つの領域に区切る第一突起部と、を有し、第二スライド部材は、相対的なスライドのスライド方向に沿って形成され、且つ第一突起部を乗り越えて2つの領域の何れにも収まる第二突起部を有する。このとき、係合解除位置維持部は、第二突起部が2つの領域のうち一方に収容されることで、第一スライド部材と第二スライド部材が係合解除位置に至ったときの両スライド部材の相対位置関係を維持し、相対移動許容部は、第二突起部を2つの領域のうち他方に収容し、且つ該第二突起部の該他方の領域内での移動を可能とすることで、両スライド部材が所定の移動範囲内での制限された状態での相対移動を実現するようにしてもよい。
すなわち、第一スライド部材側に設けられた溝部と第二スライド部材側に設けられた第二突起部の相対移動関係にしたがって、該溝部内の第一突起部を係合解除位置維持部による相対位置関係の維持と、相対移動許容部による相対移動許容の切替の境界とすることで
、第一スライド部材と第二スライド部材の相対的スライドが行われる。これにより、第二突起部が2つに区切られた領域の何れかに収まることで、両スライド部材の相対位置関係の維持と、限られた所定の範囲内での相対移動が可能とされる。
また、上述の綴じ具固定装置において、第一スライド部材は、更に、ユーザが第二スライド部材との相対的なスライドを行うための操作部と、操作部の近傍に設けられた被阻害部と、を有し、また、第二スライド部材は、更に、相対的なスライドにおいて第一スライド部材の操作部が、両スライド部材が係合位置と係合解除位置の何れかの位置に至り該第二スライド部材における端部の内近傍に配置される端部に対する距離が近接状態となったとき、被阻害部に対して該被阻害部と重なる位置に至り、第一スライド部材の上方への変位に対して該被阻害部を介して該変位を阻害し得る阻害部を有してもよい。
上述の綴じ具固定装置においては、相対的スライドにおいて第一スライド部材の操作部が近接状態となったとき、被阻害部と阻害部とが、第一スライド部材の上方への変位に対して互いに阻害する位置関係となることで、相対的スライドのために操作部を操作するユーザに対して、両スライド部材をその上方に強制的に操作することは被阻害部と阻害部の存在により制限されていることを明示的に知らしめることが可能となる。すなわち、両スライド部材が係合位置又は係合解除位置にある場合、ユーザがそれらを上方に強制的に相対移動させようとすると阻害部が被阻害部とが接触するため、その接触動作を介してその強制的な相対移動は適切ではないとユーザは知ることになる。その結果、ユーザを適切な相対的スライドのための操作に導くことが可能となる。また、阻害部が被阻害部側の上記方向への移動を邪魔するだけでなく阻止するように構成してもよい。このように構成すれば、ユーザから正しくない方向へ付与された力が第一スライド部材に悪影響及ぼすことを防止できる。
そして、上記の被阻害部と阻害部については、次に示す一例が挙げられる。例えば、第一スライド部材の操作部は、該第一スライド部材の端部のうち第二スライド部材とは接触しない端部に設けられ、且つ被阻害部は、該操作部に隣接して設けられ、阻害部は、第二スライド部材の端部のうち第一スライド部材に対向する端部に設けられるようにしてもよい。なお、各部分の具体的な構成はこの形態に限られず、好ましくは両スライド部材の相対的スライドに影響を及ぼすことなく、且つユーザに対してその存在を知らしめやすい場所に設けられる。
ここで、上述の綴じ具固定装置において、第一スライド部材は、第二スライド部材の上面に沿って相対的なスライドを行い、そして、第二スライド部材の一部は、第一スライド部材の上面の一部を覆い、該第一スライド部材の上方への変位を制限するように両スライド部材が構成されてもよい。すなわち、第一スライド部材と第二スライド部材とが、相対的スライドのスライド方向とは異なる綴じ具固定装置の上方において、互いに重なり合う構成とされることで、相対的スライドのためのユーザの操作によって上側に位置する第一スライド部材が反り上がってしまうのを防止するとともに、相対的スライドがより円滑に行われることを促進させることが可能となる。すなわち、このような第一スライド部材と第二スライド部材の重なり合いは、ユーザの作業性向上に大いに資する。
そして、上記綴じ具固定装置での第一スライド部材と第二スライド部材の重なり合いについては、次に示す一例が挙げられる。例えば、第一スライド部材は、相対的なスライドのスライド方向に沿った側辺の一部に切り欠き部を有し、第二スライド部材は、第一スライド部材が該第二スライド部材の上面をスライドするために該第一スライド部材を収めるスライド用窪み部と、スライド用窪み部に突出する突出片と、を有する。そして、突出片は、第一スライド部材がスライド用窪み部に収められた状態において切り欠き部の内部に収められることで、該第一スライド部材の上面の一部を覆い、且つ該切り欠き部の内部を
相対的なスライドにしたがって変位自在であってもよい。このような構成により、両スライド部材の相対的スライドと、綴じ具固定装置の上方における両スライド部材の重なり合いを実現できる。
また、上述の綴じ具固定装置において、ファイル本体及び綴じ具のうち固定装置本体部と被係合部材との間に挟持される部材を被固定部材とする場合、固定装置本体部は、更に、第一係合部と第二係合部が被係合部材に対する係合が解除された状態であるとき、被固定部材に対する一対の挿入部の相対位置を位置決めする位置決め部を有するようにしてもよい。すなわち、相対的スライド以外の動作によって第一係合部と第二係合部による係合およびその解除を行う綴じ具固定装置においても、上述した理由と同様の理由で、各係合部による係合が解除される状態で、被固定部材に対する一対の挿入部の相対位置を位置決めする位置決め部は有用である。
特に、上述の綴じ具固定装置において、第一スライド部材が、配置される被固定部材、すなわち係合部による係合の対象となる被係合部材と綴じ具固定装置との間に挟まれる被固定部材(綴じ具もしくはファイル本体)と接するその裏面上に第一位置決め突起部を有し、第二スライド部材が、上記と同様に配置される被固定部材(綴じ具もしくはファイル本体)と接するその裏面上に第二位置決め突起部を有する場合、第一スライド部材と第二スライド部材が被固定部材上に配置されたとき、被固定部材側に設けられた位置決め用孔部に、第一位置決め突起部と第二位置決め突起部とが収められ、且つ各スライド部材の相対的なスライドによって、第一位置決め突起部と第二位置決め突起部が、位置決め用孔部の縁に接触すると、第一スライド部材と第二スライド部材が係合解除位置に位置するように構成されてもよい。なお、スライド部材側に孔部が設けられ、綴じ具側に設けられた突起に対して以上のように孔部の縁への突起の接触による位置決めが行われるよう構成してもよい。また、第一位置決め突起部と第二位置決め突起部は、互いに同じ位置決めよう孔部に挿入されるように構成してもよく、異なる孔部に挿入されるように構成してもよい。
すなわち、上記綴じ具固定装置では、相対的スライドを行う第一スライド部材と第二スライド部材にそれぞれ位置決め用の突起部(第一位置決め突起部と第二位置決め突起部)もしくは孔部が設けられ、それらの突起部(孔部)と被固定部材側の位置決め用孔部(突起部)との接触関係によって、両スライド部材の相対位置関係が決定される。特に、位置決め用突起部と位置決め用孔部が接触することで、相対的スライド動作が規制され、その結果、両スライド部材の位置が係合解除位置に半ば自動的に特定されることになる。この係合解除位置は、ユーザにとっては、一対の挿入部を連通孔から抜出を行いたい位置でもある。そこで、このように位置決め用突起部と位置決め用孔部によって、両スライド部材の位置が自動的に特定されると、ユーザの上記抜出操作が比較的容易に行われ得る。
そして、上述までの綴じ具固定装置を含んで構成されるファイルも本発明の一態様となる。即ち、本発明に係るファイルは、上述までの綴じ具固定装置と、綴じ具と、ファイル本体とを含むファイルであって、ファイル本体及び綴じ具のうち固定装置本体部と被係合部材との間に挟持される部材が被固定部材として、綴じ具固定装置によって該被係合部材に対して固定される、ファイルである。このように当該ファイルは、綴じ具固定装置によって被係合部材と被固定部材とが固定されることで形成されるが、これらの構成以外の構成を含んでも構わない。
また、上述の綴じ具固定装置を有するファイルにおいて、被係合部材には、被固定部材の内側と接触し、且つ綴じ具の固定時に第一スライド部材及び第二スライド部材が配置されるベース部材と、ベース部材上に設けられ、第一スライド部材及び第二スライド部材による相対的なスライドのスライド方向に沿って延在する突状部と、が設けられており、綴じ具固定装置は、更に、第一スライド部材及び第二スライド部材のうち少なくとも一方に
設けられ、突状部に嵌り、相対的なスライド時に該突状部上をスライドするスライド凹部を、備えるようにしてもよい。
上述した挿入部の固定用孔部とファイル側孔部で形成された連通孔への挿入が、ファイル本体の内側から為される場合、各係合部が被係合部材に相当するファイル本体と係合し、それにより綴じ具固定装置とファイル本体との間で綴じ具が挟持、固定される。このとき、固定装置本体部を構成する第一スライド部材と第二スライド部材は、綴じ具のベース部材上に配置されて、上述した各連通孔への挿入と、その後の相対的スライドが行われる。ここで、ベース部材上に設けられた突状部と、少なくとも一方のスライド部材に設けられたスライド凹部は嵌りあっており、且つ相対的スライドにおいて、スライド凹部が突状部上をスライドすることが可能となっている。すなわち、突状部が両スライド部材の相対的スライドのガイドとして役割を担うように構成されており、その結果、係合部の係合およびその解除をユーザは円滑に行うことが可能となる。また、両スライド部材を綴じ具上に配置させる際に、その配置場所を位置決めするためにも、スライド凹部と突状部との嵌め合いは有用である。一方で、綴じ具がファイル本体の内側に配置され且つ連通孔への挿入がファイル本体の外側から為される場合は、各係合部が被係合部材に相当する綴じ具と係合し、それにより綴じ具固定装置と綴じ具との間でファイル本体が挟持、固定される。この場合、ファイル本体の外側に上記突状部を形成すればよい。具体的には、ファイル本体を樹脂で形成すれば、この突状部の形成が容易となる。
ここで、上述までのファイルにおいて、綴じ具固定装置は、更に、一対の挿入部の固定用孔部及びファイル側孔部への挿入方向に沿って、固定装置本体部と各係合部との間に延在する位置決め平板部であって、該位置決め平板部の面部分は相対的なスライドのスライド方向に沿って形成される位置決め平板部を備えるようにし、そして、第一係合部と第二係合部が、相対的なスライドにより被係合部材に対して係合する状態となると、位置決め平板部は、固定用孔部と連通する綴じ具側位置決め孔部と、ファイル側孔部と連通するファイル側位置決め孔部に挿入された状態となるように構成してもよい。
すなわち、上記綴じ具固定装置では、固定装置本体部と係合部との間に、挿入部に加えて位置決め平板部が備えられる。この位置決め平板部は、係合部の係合状態において、上記綴じ具側位置決め孔部とファイル側位置決め孔部とに挿入された状態となるので、係合部が係合状態に至る過程での、その係合部の位置決めを行う機能を果たす。特に、固定装置本体部が第一スライド部材と第二スライド部材とで構成される場合、相対的スライドに従って上記位置決め平板部が綴じ具側位置決め孔部とファイル側位置決め孔部とに挿入されるように構成されているため、その相対的スライドにおける各係合部の位置決め機能を果たすことになる。また、各スライド部材の相対的スライドのスライド方向に交差する方向における各係合部の位置決めを行うべく、位置決め平板部の、綴じ具側位置決め孔部及びファイル側位置決め孔部に対する相対的位置関係を決定するのが好ましい。
また、本発明を、綴じ具とファイル本体とを固定するための固定方法の側面から捉えることも可能である。すなわち、本発明は、書類等を綴じる綴じ具に設けられた固定用孔部とファイル本体に設けられたファイル側孔部とを用いて、該綴じ具と該ファイル本体とを固定するための固定方法であって、固定装置本体部に設けられた一対の挿入部を、ファイル本体の内側もしくは外側から、固定用孔部とファイル側孔部が重なって形成された連通孔に挿入する第一ステップと、連通孔に一対の挿入部が挿入された際にファイル本体及び綴じ具のうち該一対の挿入部の挿入方向奥側の部材を被係合部材とし、当該被係合部材に対する係合および該係合の解除が可能である、該一対の挿入部の一方に設けられた第一係合部を、該被係合部材に対して第一係合方向に沿って係合させる第二ステップと、被係合部材に対する係合および該係合の解除が可能である、一対の挿入部の他方に設けられた第二係合部を、該被係合部材に対して第一係合方向とは異なる第二係合方向に沿って係合さ
せる第三ステップと、を含む。また、上記固定方法に対しても、上記綴じ具固定装置において開示された様々な技術的思想を、適宜採用することは可能である。また、第二ステップにおける第一係合部による係合と、第三ステップにおける第二係合部による係合の順序は不問であり、また両者が同時に行われるようにしてもよい。
書類等を綴じる綴じ具をファイル本体の一方側からの作業のみで着脱自在に固定することを可能とするとともに、実用品としての十分な固定強度を有するファイルのための綴じ具固定装置等を提供することができる。
ここで、本発明に係る綴じ具の固定装置(以下、単に「固定装置」という。)の実施の形態について図面に基づいて説明する。なお、本発明に係る固定装置は、書類等を綴じるための綴じ具を備えるファイルに適用されるものであり、本発明が有する技術的思想が同一の範囲である限り、特定の綴じ具や特定のファイリング装置に限定適用されるものではない。なお、本明細書においては、固定装置の使用時において、ユーザ側に面する側を表側、その反対を裏側と表現するとともに、相対的に裏側から表側に向かう方向を上向きの方向と設定し、その逆の向きを下向きの方向と設定する。
図1は、本発明に係る固定装置1と、それによってファイル本体80に固定される綴じ具60が示されている。なお、図1に示す綴じ具60の状態は、実際に固定装置1によって綴じ具60が固定されるときの状態ではなく、該綴じ具60の概略構成が把握しやすいように例示的に示される状態である。ここで、固定装置1、綴じ具60、ファイル本体80の概略的な構成を示すと、固定装置1は第一スライド部材10と第二スライド部材30を有しており、ファイル本体80は、ファイルとして使用されるときの背表紙に相当する背表紙部80aと、表表紙に相当する表表紙部80bと、裏表紙に相当する裏表紙部80cを有し、各表紙部間は、折り曲げ形成される。また、綴じ具60は、ベース部材61、第一綴じ部材70、第二綴じ部材75を有しており、第一綴じ部材70と第二綴じ部材75が組み合わされた状態でベース部材61に取り付けられることで、書類等の綴じ込みが行われることになる。なお、これらの部品の詳細は、順次説明していく。
先ず、固定装置1を構成する第一スライド部材10と第二スライド部材30の構成について、図2A−図5Bに基づいて説明する。第一スライド部材10と第二スライド部材30は、後述する図3A、3B等に示すように組み合わせられことで、互いが相対的にスライドすることが可能となり、当該スライドが可能な状態において本発明に係る固定装置1としての機能を発揮する。なお、この両スライド部材による相対的なスライドを、以下「相対的スライド」と言う。
ここで、図2Aは、第一スライド部材10の構成を示す図であり、図中左側が第一スライド部材10の上面図、図中右側がその背面図となっている。図2Bは、第二スライド部材30の構成を示す図であり、図中左側が第二スライド部材30の上面図、図中右側がその背面図となっている。また、図3Aは、第一スライド部材10と第二スライド部材30を組み合わせて固定装置1を形成したときの、該固定装置1の上方斜視図であり、図3Bは、その固定装置1の下方斜視図である。次に、図4Aは、固定装置1が綴じ具60を固定するために採る、後述する「係合状態」を固定装置1の上方から示す図であり、図4Bは、図4Aに示す係合状態の断面図である。また、図5Aは、固定装置1が綴じ具60の固定を解除するために採る、後述する「係合解除状態」を固定装置1の上方から示す図であり、図5Bは、図5Aに示す係合状態の断面図である。
先ず、第一スライド部材10について、図2Aに基づいて説明する。第一スライド部材10の表側の構成については、該第一スライド部材10は、長手方向に延びる二本の平行な縦フレーム11を、三本の平行な横フレーム14a、14b、14cで連結するとともに、縦フレーム11の一方の端部に操作部16が設けられた形状を有している。なお、横フレーム14cは、操作部16が設けられた縦フレーム11の端部とは逆の端部に位置する。ここで、縦フレーム11上には、同じように長手方向に延びる二本の平行な上側縦フレーム12が設けられている。したがって、縦フレーム11及び横フレーム14a〜14cの上面と、上側縦フレーム12の上面とは同一面には位置せず、段差形状を形成するこ
とになる。また、上側縦フレーム12の端部12aは被阻害部としての端部であって、横フレーム14cの外側の辺よりも第一スライド部材10の外側に若干量飛び出して形成されている。
ここで、二本の縦フレーム11と操作部16及び横フレーム14aとで囲まれることで、第一スライド部材10の表側と裏側を貫通する貫通領域15aが形成され、同様に二本の縦フレーム11と横フレーム14a及び横フレーム14bとで囲まれることで、第一スライド部材10の表側と裏側を貫通する貫通領域15bが形成され、同様に二本の縦フレーム11と横フレーム14b及び横フレーム14cとで囲まれることで、第一スライド部材10の表側と裏側を貫通する貫通領域15cが形成されている。そして、上側縦フレーム12の一部が貫通領域15c上に突出するように形成されるスライド突起部13が、その上面が各上側縦フレーム12の上面と面一となるように設けられている。したがって、横フレーム14a〜14cの上面と、スライド突起部13の上面とは面一にはならない。なお、このスライド突起部13は上記収容突起部に相当し、後述するスライド溝部32とともに、係合解除位置維持部や相対移動許容部として機能し得る。
また、操作部16は、ユーザが第一スライド部材10をスライド操作するときにその指をかけて当該操作をし易いように、その中央に貫通孔を有している。更に、この貫通孔の左右両側に窪み部17が設けられることで、更にユーザの指が操作部16に掛かり易く工夫されている。更に、操作部16において、その貫通孔と貫通領域15aとを連通するように窪み部18が設けられている。
次に、第一スライド部材10の裏側の構成について説明する。縦フレーム11の下面は、円柱形状の位置決め突起部21を除いて、面一の平面となっている。この位置決め突起部21は、スライド突起部13の近傍に設けられ、後述する綴じ具60側の位置決め孔部64に対応する。そして、貫通領域15aのうち各縦フレーム11に沿う辺に、段差部20がそれぞれ設けられている。この段差部20の下面は縦フレーム11の下面より固定装置1の表側に下がって形成される。同様に、縦フレーム11の下面より固定装置1の表側に下がって形成される段差部19が、貫通領域15cのうち各縦フレーム11の横フレーム14c側の端部にそれぞれ設けられている。なお、段差部19および段差部20の長さは、概ね同一である。
また、横フレーム14a及び横フレーム14cの各々には、綴じ具60をファイル本体80に対して固定するための該ファイル本体80への係合を行う係合爪22、23が、裏側に突出するように設けられている。各係合爪の詳細な構造については、後述する。また、横フレーム14bには、その下面が弧状に窪んだスライド凹部24が、第一スライド部材10の長手方向に沿って形成され、その結果、貫通領域15bと15cは、スライド凹部24によって連通された状態となる。なお、係合爪22、23の第一スライド部材10の長手方向に沿った中心軸及びスライド凹部24の延在方向に沿った中心軸は一致するように、各構成がそれぞれに対応する横フレーム上に配置される。
次に、第二スライド部材30について、図2Bに基づいて説明する。該第二スライド部材30は、長手方向に延びるベース部31を有している。そして、ベース部31の一方の端部には、ベース部31の本体側から延びる二本の連結部31aを介して操作部38が設けられており、上記操作部16と同様に、操作部38は、ユーザが第二スライド部材30をスライド操作するときにその指をかけて当該操作をし易いように、その中央に貫通孔を有している。更に、この貫通孔の左右両側に窪み部39が設けられることで、更にユーザの指が操作部38に掛かり易く工夫されている。また、操作部38と連結部31aとの接続部位の近傍に、第二スライド部材30の外側に飛び出した平面状の突出部であって阻害部としての平面突出部40が設けられている。この平面突出部40の上面は、ベース部3
1の上面より固定装置1の裏側に下がって形成され、また該平面突出部40の下面は、ベース部31の下面と面一に形成される。
更に、連結部31aとベース部31との接続部位の近傍に、第二スライド部材30の外側に飛び出したスライド突起部44が、ベース部31の長手方向に沿って設けられている。このスライド突起部44の上面は、ベース部31の上面より固定装置1の裏側に下がって形成され、また該スライド突起部44の下面は、ベース部31の下面と面一に形成される。
ここで、二本の連結部31aと、ベース部31及び操作部38によって囲まれることで、第二スライド部材30の表側と裏側とを貫通する貫通領域34が形成される。そして、この貫通領域34のうちベース部31側の辺に対してヒンジ結合され、該ヒンジ結合部を軸としてベース部31に対して相対的に回転し貫通領域34内に出入り自在のロック部材36が設けられている。このロック部材36の詳細な構成については、後述する。
また、ベース部31の長手方向の端部のうち、上記操作部38が設けられた端部とは反対側の端部に、連結部31aと同様に、ベース部31の本体側から延びる二本の連結部31bを介してスライド突起部45が設けられている。このスライド突起部45は、二本の連結部31bの端部のうち、ベース部31と連結される端部とは反対側の端部を横フレームとして連結するとともに、第二スライド部材30の外側に飛び出して形成される。そして、このスライド突起部45の上面は、ベース部31の上面より固定装置1の裏側に下がって形成され、また該スライド突起部45の下面は、上記スライド突起部44の下面と同一平面上に位置するように形成される。
ここで、二本の連結部31bと、ベース部31及びスライド突起部45によって囲まれることで、第二スライド部材30の表側と裏側とを貫通する貫通領域35が形成される。そして、この貫通領域35のうちベース部31側の辺に対してヒンジ結合され、該ヒンジ結合部を軸としてベース部31に対して相対的に回転し貫通領域35内に出入り自在のロック部材37が設けられている。なお、このロック部材37の構成は上記ロック部材36と同一であり、その詳細な構成については後述する。
更に、ベース部31の上面において、長手方向に延びる二本の側辺を、それぞれ、該長手方向に沿って切り欠くことでスライド溝部32が形成されている。このスライド溝部32の深さは、ベース部31の裏面まで到達しない深さである。そして、スライド溝部32の中央部分には、このスライド溝部32内の領域を二つの分割領域32a、32bに分割するように突起部33が設けられている。
次に、第二スライド部材30の裏側の構成について説明する。ベース部31には、裏側において環状のフレーム部31cが、表側において上述したスライド溝部32が設けられた場所を含むように、ベース部31の裏側に設けられている。フレーム部31cが配置されたベース部31においてはその厚さが厚くなるため、スライド溝部32を形成するために切り欠いた分だけベース部31の強度が低下するのを、フレーム部31cで強度を補うことができる。そして、このフレーム部31cを形成する辺のうち第二スライド部材30の長手方向の辺の下面には、固定装置1の裏側に突出する円柱形状の位置決め突起部41が設けられており、これは、上記位置決め突起部21と同様に、後述する綴じ具60側の位置決め孔部64に対応する。
また、フレーム部31cを形成する辺のうち第二スライド部材30の幅方向(長手方向に垂直な方向)の辺には、その下面が弧状に窪んだスライド凹部46が、第二スライド部材30の長手方向に沿って形成され、その結果、フレーム部31cで囲まれた内側の領域
とその外側の領域とが、スライド凹部46によって連通された状態となる。更に、第二スライド部材30の裏側において、スライド突起部44と45の近傍に、それぞれ、綴じ具60をファイル本体80に対して固定するための該ファイル本体80への係合を行う係合爪42、43が、裏側に突出するように設けられている。これらの係合爪の構成は上記の係合爪22、23と同じであり、その詳細な構造については後述する。また、係合爪42、43の第二スライド部材30の長手方向に沿った中心軸及びスライド凹部46の延在方向に沿った中心軸は一致するように、各構成が設けられている。
このように構成される第一スライド部材10と第二スライド部材30は、樹脂製である。そこで、樹脂の弾性変形等を利用して、第一スライド部材10と第二スライド部材30とを組み合わせることで本発明に係る固定装置1が形成され、その固定装置1の構成を図3A及び図3Bに示す。そこで、第一スライド部材10と第二スライド部材30との組み合わせ手順について説明する。
先ず、第一スライド部材10の縦フレーム11を、貫通領域15cの近傍で外側に引っ張り、該縦フレーム11をやや拡幅させる。その状態で、第二スライド部材30の係合爪42を貫通領域15c内に通すとともに、該係合爪42近傍のスライド突起部44が、第一スライド部材10の段差部19に接触するように、両スライド部材を組み合わせる。このとき、第一スライド部材10のスライド突起部13は、第二スライド部材30のスライド溝部32内の領域に収められる。その後、第一スライド部材10の貫通領域15aに対して、第二スライド部材30の係合爪43を挿入するとともに、該係合爪43近傍のスライド突起部45が、第一スライド部材10の段差部20に接触するように、両スライド部材を更に組み合わせる。
このように第一スライド部材10と第二スライド部材30とが組み合わされた固定装置1では、第二スライド部材30が、第一スライド部材10の横フレーム14a〜14c上に位置するとともに(図3Bを参照)、該横フレーム14a〜14cと上側縦フレーム12とで概ね形成される、第一スライド部材10の長手方向に延在するスライド空間内を、該第一スライド部材10に対して相対的にスライド(上記相対的スライド)を行うことが可能となる(図3Aを参照)。このとき、図3A、3Bに示すように、第二スライド部材30は、第一スライド部材10の横フレーム14a〜14cとスライド突起部13とによって上下方向で挟まれた状態となるため、上記スライド空間内における相対的スライドを円滑に行うことができる。また、図3Bに示すように、第二スライド部材30は、そのスライド突起部44、45が第一スライド部材10の段差部19、20によってスライド方向にガイドされることになるため、第二スライド部材30と第一スライド部材10の分離を抑制しながら、円滑な相対的スライドを担保することができる。
ここで、第一スライド部材10に設けられる係合爪22、23と、第二スライド部材30に設けられる係合爪42、43は、各々の形状は同一である。そこで、係合爪22を代表として、各係合爪の具体的な構成を説明する。図3Bに示すように、係合爪22は、(1)第一スライド部材10の横フレーム14aから、固定装置1の裏側に延出する板状の挿入片であって、挿入部としての挿入片22bと、(2)該挿入片22bの先端部分において該挿入片22bに対して直交し第一スライド部材10の長手方向に平行な係合片であって、係合部としての係合片22aと、(3)係合片22aから垂直に立設し横フレーム14aにまで至る板状の部材であって、第一スライド部材10の長手方向に沿って該板状の平面部が延在し且つ挿入片22bに対しても直交する位置決め片であって、位置決め平板部としての位置決め片22cとを有する。また、上述のように係合爪22以外の係合爪についても、該係合爪22と同一の構成を有しており、図面には参照番号は記載していないが、係合爪23、42、43の各々において、係合片、挿入片、位置決め片を指し示す場合には、それぞれ各係合爪の参照番号の後に、a、b、cを添える。
このように構成される係合爪22では、係合爪22が重ねられた綴じ具60とファイル本体80の方向に相対的に近づくと、該係合片22aと第一スライド部材10(特に、横フレーム14a)との間に綴じ具60やファイル本体80とが収められ、その結果、係合爪22が該綴じ具60及びファイル本体80を係合することで、該綴じ具60の固定を行うことになる。ここで、係合爪22において係合片22aと第一スライド部材10との間の開口部分(挿入片22bに対向する部分)を、係合爪22の「開口部」と称し、該開口部から挿入片22bの方に向かって綴じ具60等を収め、該綴じ具60等を係合するときの係止爪22による係合方向(挿入片22bから開口部に向かう方向)を本発明に係る「係合方向」と定義する。また、係合爪22によって綴じ具60等の係合が行われるとき、位置決め片22cは、係合爪22が係合を行うべき所定の位置に該係合爪22を導く。このような固定装置1による綴じ具60の固定については、後述にて詳細に説明する。
また、第一スライド部材10の係合爪22、23の係合方向は同一であり、第二スライド部材30の係合爪42、43の係合方向は同一であるが、係合爪22、23の係合方向は、係合爪42、43の係合方向と逆向きとなっている。そして、固定装置1では、図3Bに示すように、係合爪23と係合爪42が互いの係合方向が逆となった状態で一対の係合爪を形成し、同様に、係合爪22と係合爪43が互いの係合方向が逆となった状態で一対の係合爪を形成している。
ここで、各一対の係合爪においては、一方の係合爪と他方の係合爪との距離(正確には、両係合爪が有する挿入片間の間隔。以下、「爪間距離」という。)は、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドに伴って変動する(なお、図3A、3Bに示す状態は、爪間距離が最も広がった状態を示し、後述する「係合状態」に相当する。)。そして、係合爪の爪間距離が最も広がった状態で、第二スライド部材30側に設けられたロック部材36、37を回転変位させることで、その係合爪の間に形成された空間(以下、「挿入空間」と言う。)にロック部材36、37の一部又は全部が入り込み、その結果、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドが制限され、上記「係合状態」が維持されることになる。また、再び、相対的スライドを行いたい場合は、このロック部材36、37を先とは逆方向に回転変位させることで、係合爪の間に形成された空間から該ロック部材を取り除けばよい。
ここで、ロック部材36、37の詳細な構成について、図3Aに基づいて説明する。なお、ロック部材36及び37は同一の構成であるため、代表としてロック部材36についてのみ説明する。ロック部材36は、第二スライド部材30のベース部31に対してヒンジ結合される板状の操作板部36dと、該操作板部36dに対して垂直に立設し板状の部材であって、その板状の平面がベース部31の幅方向に延びる第一板部36aと、該操作板部36dに対して垂直に立設し板状の部材であって、第一板部36aに対しても直交する第二板部36bと、第一板部36aの板状の平面上であって該第二板部36bとの結合箇所とは反対側の平面上に、操作板部36dに対して垂直となるように半円柱状の接触部36cとを有している。また、上述のようにロック部材37についても、ロック部材36と同一の構成を有しており、図面には参照番号は記載していないが、ロック部材37において、第一板部、第二板部、接触部、操作板部を指し示す場合には、それぞれの参照番号は37a、37b、37c、37dとする。これらロック部材36、37の機能については、後述にて詳細に説明する。
また、図3Bに示すように、第一スライド部材10と第二スライド部材30が組み合わされた固定装置1においては、各スライド部材の裏側に設けられた位置決め突起部21、41は隣接して配置されることになる。なお、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドに伴って、位置決め突起部21と位置決め突起部41の相対位置関
係は変化することになる。そして、これらの突起部は、上述のように、綴じ具60側の位置決め孔部64内で変位することで、両スライド部材の位置決めを行う機能を有するが、この点については後述する。
また、図3Bに示すように、固定装置1の裏側において、第一スライド部材10のスライド凹部24と第二スライド部材のスライド凹部46は、それぞれの中心軸が一致し、一列に並ぶ関係となる。なお、これらのスライド凹部については、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドに伴って、スライド凹部24とスライド凹部46の相対位置関係は変化することになる。
ここで、固定装置1においては、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドによって、両スライド部材が採る位置によって、上述した一対の係合爪の状態が変化し、その結果、各係合爪を介した綴じ具60等の係合状態が変化することで、綴じ具60の固定またはその取り外しが行われることになる。そこで、本発明に係る固定装置1及びそれを用いたファイルの構成の理解を助けるために、先ずは、固定装置1における係合状態について図4A及び4Bに基づいて、係合解除状態については図5A及び5Bに基づいて説明する。
固定装置1の係合状態では、図4Aに示すように、相対的スライドによって第一スライド部材10の操作部16と第二スライド部材30の操作部38とが互いに最も近接した相対位置関係、換言すると、第二スライド部材30が第一スライド部材上に形成される上記スライド空間内で最も奥までスライドした状態となる。この係合状態にある固定装置1において各スライド部材が採る位置を「係合位置」と称する。固定装置1が係合状態にあるときの特徴は、図4Bに示すように、対をなす第一スライド部材10側の係合爪22、23と、第二スライド部材30側の係合爪43、42とがそれぞれ最も離間した状態(爪間距離が最大)となる。その結果、各係合爪が図4Bには図示されていない綴じ具60等に対して係合することで、綴じ具60のファイル本体80への固定が行われることになる。また、第一スライド部材10のスライド突起部13は、第二スライド部材30の分割領域32aに収まっている。
一方で、固定装置1の係合解除状態では、図5Aに示すように、相対的スライドによって第一スライド部材10の操作部16と第二スライド部材30の操作部38とが互いに最も離間した相対位置関係、換言すると、第二スライド部材30が第一スライド部材上に形成される上記スライド空間から最も多く飛び出した状態となる。この係合解除状態にある固定装置1において各スライド部材が採る位置を「係合解除位置」と称する。固定装置1が係合解除状態にあるときの特徴は、図5Bに示すように、対をなす第一スライド部材10側の係合爪22、23と、第二スライド部材30側の係合爪43、42とがそれぞれ最も近接した状態(爪間距離が最小)となる。その結果、各係合爪が図4Bには図示されていない綴じ具60等に対して係合しないため(係合位置から係合解除位置へ各係合爪が移動するためファイル本体80と係合しなくなるため)、綴じ具60のファイル本体80への固定が解除されることになる。また、第一スライド部材10のスライド突起部13は、第二スライド部材30の分割領域32bに収まっている。
次に、綴じ具60の構成について、図6A〜6Cに基づいて説明する。綴じ具60は、上述したようにベース部材61、第一綴じ部材70、第二綴じ部材75を有しており、第一綴じ部材70と第二綴じ部材75が組み合わされた状態でベース部材61に取り付けられることで、書類等の綴じ込みが行われる。なお、綴じ具60は、書類等を綴じるという機能の観点からは、従来の綴じ具と本質的に同質であるので、当該観点に基づく構成の説明は割愛する。一方で、本発明に係る固定装置1は綴じ具60をファイル本体80に固定するためのものであるから、当該固定に関する構成の説明を重点的に行う。
ここで、図6Aは、第一綴じ部材70と第二綴じ部材75が組み合わされ、それをベース部材61に取り付けられたときの状態の上面図である。図6Bは、図6Aに示す状態を裏側から見たときの図である。図6Cは、第一綴じ部材70および第二綴じ部材75の構成を示す図である。
先ず、ベース部材61は、二つの側壁部61b(図1参照)と、該側壁部61bのそれぞれに設けられた綴込爪部61aと、ファイル本体80と接触することになるベース部材としてのベースプレート61cを有する。また、図6Cに示すように、第一綴じ部材70は、側壁部71と、該側壁部71の中央部分に設けられた窪み部72と、該側壁部71から延出する二本のパイプ管73を有し、第二綴じ部材75は、側壁部76と、該側壁部76の中央部分に設けられた窪み部77と、該側壁部76から延出する足管78を有している。足管78がパイプ管73に挿入されることで、第一綴じ部材70と第二綴じ部材75が組み合わされ、そしてその組み合わされた状態で、ベース部材61のそれぞれの側壁部61bに第一綴じ部材70の側壁部71と第二綴じ部材75の側壁部76が設置されることで、ベース部材61のそれぞれの綴込爪部61aが、第一綴じ部材70の窪み部72と第二綴じ部材75の窪み部77に引っ掛かり、図6Aに示す状態に至る。なお、この第一綴じ部材70、第二綴じ部材75、ベース部材61の組合せによる綴じ具の形成は、従来からの技術による。
ここで、ベース部材61のベースプレート61c上には、複数種類の孔部等が設けられている。先ず、ベースプレート61cの中央部分に、該ベースプレート61cの長手方向に延びる突状部65が設けられている。この突状部65は、ベースプレート61cを裏面側から表面側に向かって盛り上げて形成される。そして、この突状部65を挟んで、左右それぞれに2個ずつ且つ該突状部65に沿って爪付位置決め孔部62が設けられる。この爪付位置決め孔部62は概ね矩形形状をしているが、図6Aに示すその上下の辺においては、ベースプレート61cの一部を裏側に折り曲げることで形成される位置決め爪63が設けられている。この結果、図6Bに示すように、位置決め爪63は、ベースプレート61cの裏面から垂直に立設された状態となる。
次に、図6Aにおいて、突状部65の右側に位置する二つの爪付位置決め孔部62の間に、位置決め孔部64が設けられている。この位置決め孔部64は、ベースプレート61cを貫通する略矩形状の孔部であり、上述した固定装置1における第一スライド部材10の位置決め突起部21と第二スライド部材30の位置決め突起部41とに対応する。
更に、ベースプレート61cには、突状部65の延長上に、且つ該突状部65を挟んで両側に、該ベースプレート61cの貫通孔として形成される係合孔部66と係合時位置決め孔部67が設けられている。係合孔部66は略矩形状の貫通孔であり、この係合孔部66を挟んでベースプレート61cの長手方向に二つの係合時位置決め孔部67が、該係合孔部66と連通するように設けられている。これらの係合孔部66と係合時位置決め孔部67は、上記係合爪22、23、42、43の位置決め片に対応する。
次に、ファイル本体80の構成について、図7に基づいて説明する。ファイル本体80の背表紙部80aにおいて、綴じ具60が固定されるべき位置にそれを位置決めするために、ファイル側位置決め孔部82が四つ設けられている。このファイル側位置決め孔部82は、矩形状の貫通孔であり、その一つに対して、綴じ具60側の一つの爪付位置決め孔部62が有する二つの位置決め爪63が嵌り込むように配置されることで、綴じ具60の背表紙部80a上への位置決めが行われる。
そして、その綴じ具60の位置決めが行われた状態で、綴じ具60側の係合孔部66と
係合時位置決め孔部67に対応する背表紙部80aの位置に、貫通孔であるファイル側係合孔部86とファイル側係合時位置決め孔部87が設けられている。したがって、ファイル側係合孔部86は略矩形状の貫通孔であり、このファイル側係合孔部86を挟んで背表紙部80aの長手方向に二つのファイル側係合時位置決め孔部87が、該ファイル側係合孔部86と連通するように設けられている。
このように構成される固定装置1を用いて、綴じ具60をファイル本体80に固定するための流れについて、図8A〜図8Gに基づいて説明する。図8Aは、ファイル本体80に対して上述のように綴じ具60を位置決め配置した状態を示している。なお、本発明に係る固定装置1は、ファイル本体80の内側(綴じられる書類等が位置する側)に綴じ具60を固定するものであり、ユーザによる該固定装置1による綴じ具60の固定作業も、ファイル本体80の内側からのみ行われる。なお、図8Aに示す状態は、ファイル本体80、綴じ具60、固定装置1の相対関係を把握しやすいように、ファイル本体80の外側から俯瞰し、且つ該ファイル本体80を透明な状態で記載している。
図8Aに示す状態では、ファイル本体80のファイル側位置決め孔部82に、綴じ具60の位置決め爪63が嵌りこんでいる。なお、図においては当業者の理解のために位置決め爪63を強調して記載しているが、この位置決め爪63はファイル側位置決め孔部82に嵌りこんでいる状態では、その孔部から背表紙部80aの表側には飛び出してはいない。そして、図からも分かるように、綴じ具60側の係合孔部66と係合時位置決め孔部67が、ファイル本体80側のファイル側係合孔部86とファイル側係合時位置決め孔部87にそれぞれ対応して重なった状態となっている。また、図8Aにおいて、綴じ具60の位置決め孔部64が記載されているが、綴じ具60がファイル本体80に対して位置決めされた状態では、ファイル本体80の外側からこの状態を俯瞰するとこの位置決め孔部64は背表紙部80aによって覆われた状態になる。
なお、図8Aに示された固定装置1は、上述した係合解除状態に置かれた上で、隣接している一対の係合爪23、42と、同様に隣接している一対の係合爪22、43が、ファイル本体80の内側から、上述のように重ねられた状態にある係合孔部66とファイル側係合孔部86に挿入されるべく一点鎖線で示すように位置合わせされている。したがって、固定装置1は、裏返された状態となっている。
そして、重ねられた状態にある係合孔部66とファイル側係合孔部86に、係合解除状態にある固定装置1の各係合爪22、23、42、43が挿入された状態が、換言すると各係合爪を構成する挿入片22b、23b、42b、43bがファイル本体80の内側から両孔部に挿入されるようにユーザによって固定装置1が操作された状態が、図8Bに断面図として示されている。なお、この状態では、ロック部材36、37は一対の係合爪の間に広がる所定の挿入空間が形成されていないため、図に示すように、各スライド部材10、30に対して立設した状態となっている。また、図8Bに示す状態をファイル本体80の外側から見た図が、図8Cに示されている。図8Cに示すように、ファイル側位置決め孔部82には綴じ具60の位置決め爪63が嵌り合っており、また二つあるファイル側係合孔部86に対しては、対をなす係合爪22、43および23、42のそれぞれがただ挿入された状態となっており、各係合爪とファイル本体80との係合は行われていない。したがって、このときは、ファイル側位置決め孔部87にも、各係合爪の位置決め片が嵌り合っていないため、図8Cに示すようにファイル本体80の外側からファイル側位置決め孔部87を視認することができる。
そして、固定装置1を図8A〜8Cに示す係合解除状態から図8D及び8Eに示す係合状態に移行させることで、該固定装置1による綴じ具60のファイル本体80への固定が行われることになる。図8Dは、図8Aと同様に、ファイル本体80の外側から、固定装
置1が係合状態となることで綴じ具60がファイル本体80に固定された状態を示す。図8Dに示す状態では、固定装置1を構成する第一スライド部材10と第二スライド部材30が相対的スライドを行うことで、対をなす係合爪の爪間距離が最大とされる。これにより、各係合爪の係合片22a、23a、42a、43aと各スライド部材10、30との間に重なり合った綴じ具60とファイル本体80が挟まった状態となり、以て各係合片によるファイル本体への係合が行われる。そして、このように固定装置1が係合状態に至ったとき、対をなす係合爪間には、図8Dに示すように各ロック部材のための挿入空間が形成される。
また、固定装置1が係合状態に至るとき、各係合爪の位置決め片22c、23c、42c、43cは、重ねられた状態にある係合孔部66とファイル側係合孔部86の領域から、同様に重ねられた状態にある係合時位置決め孔部67とファイル側係合時位置決め孔部87に挿入されることになる。なお、代表として係合爪22について、その位置決め片22cがファイル側係合時位置決め孔部87に挿入された状態を図9に示しているので、参照されたい。このように係合爪22に設けられた位置決め片22cが、ファイル側係合時位置決め孔部87に挿入されることで、固定装置1が係合解除状態から係合状態に至るときに、重なり合った状態にある綴じ具60及びファイル本体80に対して、固定装置1を常に決められた所定の位置に導き、その所定の位置でファイル本体80と各係合爪との係合を行わせることができる。そのため、固定装置1による綴じ具60の固定が、安定的に且つ確実に行われる。また、この構成により、ファイル背表紙上における係合方向とは異なる方向における固定装置1の相対位置を一定にすることもできる。さらに、固定装置1に対して当該係合方向とは異なる方向の力が加わった場合などでも、係止爪22から綴じ具60やファイル本体80と当該方向における接触面積が大きいため、ファイル本体80等への衝撃を分散させることができる。特にファイル本体80は、一般に紙等で作成されることが多いため、このような力が加わった場合に係止爪22によって破損してしまうことがあり、また係止爪22の強度等によっては係止爪22が破損してしまうことがあるが、それを好適に防止できる。
そして、図8Dに示す固定装置1、綴じ具60、ファイル本体80の固定状態の断面図を図8Eに示し、更に図8Cと同様にファイル本体80の外側から該固定状態を見たときの状態を図8Fに示す。これらに示す状態では、対をなす係合爪22と43の間に、また係合爪23と42の間にそれぞれ対応するロック部材37、36が挿入されるべき挿入空間が形成されている。そこで、図8Gに示すように、各ロック部材37、36をヒンジ結合部分を軸として回転移動させて該挿入空間に対して挿入することで、固定装置1における第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドを制限させる。これにより、各係合爪がファイル本体80と係合する状態が維持されることになる。
ここで、図10A〜図10Cに基づいて、代表としてロック部材36による上記相対的スライドの制限の様子について説明する。図10Aは、係合状態にある固定装置1における、第二スライド部材30側の操作部38近傍の拡大図を示す。第一フレーム部材10の横フレーム14cに沿って、貫通領域15c側に傾斜する傾斜部14dが設けられている。また、第二スライド部材30にヒンジ結合されたロック部材36には、第一板部36aの縁に沿って、該第一板部36aを面取りされるように形成される傾斜部36eが設けられる。
そこで、係合状態にある固定装置1において、ロック部材36を所定の挿入空間に挿入させるべく、該ロック部材36を回転移動させる。すると図10Aに示す状態の断面図である図10Bで示されるように、第一スライド部材10側の傾斜部14dとロック部材36側の傾斜部36eが接触する。両傾斜部の傾斜面は、ロック部材36が挿入空間に導かれやすくなるように形成されているため、当該接触後、ユーザが若干の力をロック部材3
6に加えることで、両傾斜部に促されながら、第一スライド部材10と第二スライド部材30との間で弾性変形が生じ、その結果ロック部材36は円滑に挿入空間の中に収められる(図10Cに示す状態)。なお、図10Cに示す状態では、ロック部材36の接触部36cが、第一スライド部材10側の係合爪23の挿入片23bに接触した状態となり、且つ該ロック部材36の第二板部36bの先端部分(第一板部36aと繋がっていない部分であって該第一板部36aの反対側端部)が、第二スライド部材30側の係合爪42の挿入片42bに接触した状態となっている。すなわち、係合爪23と係合爪42との間にロック部材36が嵌まり込むことで、両係合爪の相対的な動き、すなわち第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドを制限することになる。また、ロック部材37についても、ロック部材36の場合と同様に、係合爪22と係合爪43の相対的な動きを制限することができる。
ここで、図11に基づいて、固定装置1における各係合爪の形状について説明する。なお、図11においては、代表的に係合爪23及び係合爪42を記載しているが、同様の技術的思想が係合爪22、43にも適用される。各係合爪が図8D〜8Fで示すように綴じ具60及びファイル本体80に係合する際に、各係合片がファイル本体80等に接触し各係合片と各スライド部材との間にファイル本体80等が円滑に挟まれるように、対をなす係合爪23、42の係合片23a、42aの先端部分には、傾斜部23a1、42a1が設けられている。これにより、図8B、Cに示す状態から図8D〜8Fに移行させるべく、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドが容易となる。
そして、このように構成される固定装置1では、重なり合った綴じ具60の係合孔部66およびファイル本体80のファイル側係合孔部86に対して挿入される、対をなす係合爪23、42は、それぞれの係合方向が互いに逆方向となっている。本実施例の場合は、ファイル本体80を基準とすると、ファイル本体80の天地方向において、係合爪23、42の係合方向は互いに逆向きとなる。この点については、対をなす係合爪22、43についても同様である。
このように、重なり合った一つの係合孔部66およびファイル側係合孔部86に対して挿入された係合爪の係合方向が互いに異なり、好ましくは互いに逆方向となることで、ファイルの落下等によって綴じ具60の固定部分に外力が作用したとき、その外力の向きにかかわらず、固定装置1による綴じ具60の係合状態を良好に維持することが可能となる。ファイル本体80に対して片側からの操作のみで着脱可能な固定装置では、わずかな衝撃や綴じている書類等の重さによって固定装置が変形するなどして係合爪がファイル側係合孔部から抜け落ちてしまう(係合が勝手に解除されてしまう)可能性が極めて高いのに対し、本構成を採用すれば、一つのファイル側係合孔部に挿入された一方の係合爪に対して上記作用が働いても、他方の係合爪にはそれと反対の作用(締め付ける作用/係合力を強める作用)が働くため、「一つのファイル側係合孔部に対する固定装置の係合力」はどのような場合であっても良好に働くからである。したがって、係合爪の係合方向は、好ましくは、一方に係合解除方向の力が加わったとしても他方に係合強化方向の力が加わるように、互いに逆方向とされる。本実施例のようにファイル本体80の天地方向において互いに逆向きとすることで、実用的なファイルの使用時における落下や、特に書庫等に立て掛けられて収納される場合など、一方の係合爪に対して係合解除方向の力が加わりやすく、従来提案されてきた「片側からのみのアクセスで綴じ具のファイル本体に対するアクセスを可能にする技術」では固定装置が抜け落ちてしまい実用化に至らない原因となっていた問題を解決した上で、係合爪の大きさや形状の設計自由度をより高めることができるため、綴じ具60のファイル本体80への固定をより確実なものとすることができる。
次に、本発明に係る固定装置1での位置決め突起部21と41の機能について、図12A〜12Cに基づいて説明する。図12Aは、係合解除状態にある固定装置1と綴じ具6
0との相対関係をファイル本体80の外側から見たときの状態を示している。また、図12Cは、係合状態にある固定装置1と綴じ具60との相対関係をファイル本体80の外側から見たときの状態を示しており、更に図12Bは、図12Aと図12Cに示す状態の中間状態、すなわち固定装置1において第一スライド部材10と第二スライド部材30の位置が、係合位置と係合解除位置との中間の位置となっている状態を示している。なお、図12A〜12Cにおいては、ファイル本体80は二点鎖線で透明状態に記載されている。
ここで、固定装置1が係合解除状態にあるとき、図12Aに示すように、綴じ具60の位置決め孔部64の中に収められる位置決め突起部21、41について、該位置決め突起部21が位置決め孔部64の上側の辺64aに接触し、位置決め突起部41が位置決め孔部64の下側の辺64bに接触していることで、係合解除状態を形成する第一スライド部材10と第二スライド部材30の綴じ具60に対する相対位置が一義的に決定される。そして、このとき対をなす係合爪22、43、及び係合爪23、42は、それぞれに対応する係合孔部66等に対して接触していない状態である。
以上より、固定装置1側の位置決め突起部21、41と綴じ具60側の位置決め孔部64との相関関係によって、固定装置1が係合解除状態とされるときには、各係合爪が、対応する係合孔部66に対して非接触状態となるように、固定装置1と綴じ具60との相対位置関係が一義的に決定されることになる。その結果、ユーザは、第一スライド部材10と第二スライド部材30を操作して固定装置1を係合解除状態とすると、必然的に各係合爪が係合孔部66等に対して非接触状態とされるため、固定装置1を綴じ具60から容易に抜き出すことが可能となる。これは、綴じ具60をファイル本体80から取り外すときの、ユーザの作業性向上に大いに資するものである。
また、係合解除状態にある固定装置1を係合状態に移行させたときは、図12Bに示すように位置決め突起部21、41が、位置決め孔部64の何れの辺64a、64bにも接触しない状態を経て、図12Cに示す状態に至る。このときは、位置決め突起部21が位置決め孔部64の下側の辺64bに接触し、位置決め突起部41が位置決め孔部64の上側の辺64aに接触している。これによって、係合解除状態の場合と同様に、係合状態においても、固定装置1と綴じ具60との相対位置関係が一義的に決定されることになる。
次に、本発明に係る固定装置1でのスライド突起部13とスライド溝部32の機能について、図13A及び13Bに基づいて説明する。図13Aは、係合状態にある固定装置1において、各係合爪の状態と、スライド突起部13及びスライド溝部32との関係を示し、図13Bは、係合解除状態にある固定装置1において、各係合爪の状態と、スライド突起部13及びスライド溝部32との関係を示す。なお、図13A、13Bのうち左側は固定装置1の上面図であり、右側はその断面図である。
上述したように、固定装置1において係合位置と係合解除位置との間でユーザの操作により相対的スライドが行われると、第一スライド部材10に設けられたスライド突起部13は、突起部33を乗り越えながらスライド溝部32内の分割領域32aと32bの間を行き来する。ここで、図13Aに示すように分割領域32aは、スライド突起部13をほぼ隙間無く収容する形状を有している。これにより、固定装置1が係合状態にあるときは、ロック部材36、37によって上記相対的スライドが制限されていない場合であっても、スライド突起部13が突起部33によってスライド溝部32内での移動が制限されるため、該スライド突起部13が突起部33を乗り越える外力が作用しない限り、第一スライド部材10と第二スライド部材との相対位置関係は維持されることになる。したがって、仮にロック部材36、37の挿入空間への挿入が不十分であっても、綴じ具60のファイル本体80への固定はある程度維持されることになる。
一方で、図13Bに示すように分割領域32bの形状は、スライド突起部13を収容したとき該スライド突起部13がまだある程度スライド可能な程度に余分な隙間を有する形状である。すなわち、分割領域32bは分割領域32aよりも広く、その分割領域32b内という限られた範囲で、スライド突起部13はある程度スライドできる。この結果、今から綴じ具60をファイル本体80に固定しようとする状態(例えば、図8Aに示す状態)では、固定装置1を操作しようとするユーザは、第一スライド部材10と第二スライド部材30とが上記限られた範囲でのスライドを行うことができることを触感によって感じることで、固定装置1が係合解除状態にあることを認識することができ、以てユーザのその後の作業を円滑に行うことができる。換言すると、今から綴じ具60をファイル本体80に固定しようとするときに、ユーザが触感にて第一スライド部材10と第二スライド部材30との上記限られた範囲でのスライドを感じることができない場合には、固定装置1が係合解除状態ではなく係合状態になっているため、直ちに係合解除状態に変更した後、綴じ具60の固定作業へと円滑に移行することができる。
また、上記実施例とは異なり、分割領域32bの形状を、分割領域32aと同様に、スライド突起部13をほぼ隙間無く収容する形状としてもよい。この場合は、固定装置1が係合解除状態にあるときでも、スライド突起部13が突起部33によってスライド溝部32内での移動が制限されるため、該スライド突起部13が突起部33を乗り越える外力が作用しない限り、第一スライド部材10と第二スライド部材との相対位置関係は維持されることになる。したがって、固定装置1を重ねられた係合孔部66等に挿入/抜き出ししようとするとき各係合爪が動かないため、各係合爪が係合位置等にずれて配置されてしまうなどして綴じ具に引っかかってしまい着脱作業が阻害されてしまうといったことを防止することもできるため、ユーザの作業性が向上するとも言える。
次に、突状部65の機能について図14に基づいて説明する。図14は、係合状態にある固定装置1と綴じ具60を、ファイル本体80に取り付けられた状態での該ファイル本体80の外側から見た状態を、突状部65を中心として記載した図であり、その際固定装置1の裏側の様子が把握しやすいように、該突状部65周辺のベースプレート61cを切断した状態で表している。
ここで注視すべきは、綴じ具60の突状部65に対する、第一スライド部材10に設けられたスライド凹部24と第二スライド部材30に設けられたスライド凹部46(例えば、図3Bを参照。)の相関関係である。具体的には、固定装置1による綴じ具60の固定が行われる場合には、両スライド凹部が、それぞれの窪み形状が突状部65を覆いかぶさるように、固定装置1と綴じ具60の相対位置関係が決定されている。すなわち、上述したように位置決め突起部21、41が位置決め孔部64に挿入された係合解除状態においても、又図14に示すように固定装置1が係合状態に置かれるときでも、両スライド凹部の窪み形状は突状部65を覆いかぶさっている。
したがって、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドが行われるときは、各スライド部材のスライド凹部が、綴じ具60の突状部65の上を、該突状部65の延在方向に滑っていくことになる。換言すると、ユーザが第一スライド部材10と第二スライド部材30を操作して相対的スライドを行わせるとき、突状部65は該相対的スライドのガイドとして機能する。そのため、ユーザが、両スライド部材を係合位置又は係合解除位置に至らしめることが、より円滑に行われることになり、以てユーザの作業性が向上する。
ここで、第二スライド部材30は、図3Aに示すように、実質的に第一スライド部材30の上側に配置された状態で、上記相対的スライドを行うものである。しかし、第二スライド部材30が上側に位置することにより、使用するユーザによっては操作部16と18
を把持して各スライド部材を持ち上げようとする動作を行う可能性がある。勿論、この持ち上げ動作によっては両スライド部材は相対的スライドを行うことができないが、ユーザの力が大き過ぎるとこの持ち上げ動作によって固定装置1が破損してしまう可能性がある。固定装置1が係合解除状態にあるときは、各係合爪はファイル本体80等と係合はしてはいないため、仮にユーザが持ち上げ動作を行ったとしても、固定装置1が係合孔部66等から引き出されるだけで、固定装置1の破損へと至る可能性は低い。
しかし、固定装置1が係合状態にあるときは、各係合爪はファイル本体80と係合しているため、ユーザが持ち上げ動作を行ってしまうと第一スライド部材10と第二スライド部材30との組合せが外れ、固定装置1が破損してしまう可能性が高い。そこで、本発明に係る固定装置1では、それが係合状態にあるときに、ユーザの操作が行われる操作部38の隣接した部位に、仮に第一スライド部材10と第二スライド部材30とに対して持ち上げ動作が行われたときに両者が互いにその持ち上げ動作を阻害し合う構成が、第二スライド部材30の平面突出部40と、第一スライド部材10の上側縦フレーム12の端部12aによって提供されており、その状態の詳細を、図15に示す。
図15からも明確に分かるように、係合状態にある固定装置1においては、第二スライド部材30は第一スライド部材10の上側に位置しているが、該第二スライド部材30側の操作部38に隣接して設けられている平面突出部40は、第一スライド部材10側の上側縦フレーム12の端部12aの下に潜り込んだ状態となっている。したがって、図15に示す状態で、ユーザが固定装置1に対して操作部38を介して持ち上げ動作を誤って行ってしまっても、直ちに平面突出部40が端部12aと引っ掛かり、ユーザに対して違和感を与えることができる。その結果、ユーザの誤操作によって操作部38が不用意に上側に持ち上げられてしまうのを回避することが可能となる。
<変形例>
本発明に係る固定装置の実施例の開示は、上述した実施例に限られない。すなわち、一つの係合孔部66等に挿入される係合爪の係合によるファイル本体の係合方向が、少なくとも異なる二つの方向に設定される固定装置である限り、本発明に係る固定装置の実施例である。したがって、例えば、一つの係合孔部66等に挿入される係合爪の数は三つ以上でも構わない。また、一方の係合孔部66等に挿入される係合爪の数が二つ以上であれば、もう一方の係合孔部等に挿入される係合爪は、一つであってもよい。
なお、上述においては綴じ具60やファイル本体80に設けられる係合孔部66等の数は二つであることを前提としているが、当然にその数は二つに限られるものではなく、一つの場合や三つ以上の場合でも、本発明に係る固定装置1の範疇に含まれる。
また、ロック部材36、37のように相対的スライドを行う二つのスライド部材の動きを制限する構成は、必ずしも本発明に係る固定装置として必要な構成ではない。少なくともスライド部材が係合位置に至ったときに、ファイル本体80との係合状態が維持され綴じ具60がファイル本体80に固定されればよい。当然に、ロック部材を設ける場合でも、その数は二つに限定されるものではなく、相対的スライドを行うスライド部材の動きを制限できる適切な数であれば、一つでもよく、また三つ以上でもよい。
更には、位置決め突起部21、41及び位置決め孔部64による固定装置1の位置決めに関する技術的思想、スライド突起部13及びスライド溝部32によるスライド部材10、30の係合状態等の維持に関する技術的思想、スライド凹部24、46及び突状部65による相対的スライドのガイドに関する技術的思想、平面突出部40と上側縦フレーム12の端部12との引っ掛かりに関する技術的思想については、出願人は上記実施例において一堂に開示しているが、これらは適宜組み合わせてもよく、それらの任意の組合せも出
願人の開示の範囲に含まれる。また、上記した各技術要素や以下に記す各技術要素は、それぞれ発明であって、それぞれ単独でも十分に作用効果を奏するものであり、また、組み合わせれば単なる作用効果の積み重ねではない優れた作用効果を奏するものであることは言うまでもない。
次に、本発明に係る固定装置の第二の実施例について、図16〜図24に基づいて説明する。本実施例における固定装置100は、実施例1に示す固定装置1と比べて書類等の綴じる量が大きい綴じ具160をファイル本体180に綴じるためのものである。
図16は、図1と同じように、本実施例に係る固定装置100と、それによってファイル本体180に固定される綴じ具160が示されている。ここで、固定装置100、綴じ具160、ファイル本体180の概略的な構成を示すと、固定装置100は第一スライド部材110と第二スライド部材130を有しており、ファイル本体180は、ファイルとして使用されるときの背表紙に相当する背表紙部180aと、表表紙に相当する表表紙部180bと、裏表紙に相当する裏表紙部180cを有し、各表紙部間は、折り曲げ形成される。また、綴じ具160は、ベース部材161、第一綴じ部材170、第二綴じ部材175を有しており、第一綴じ部材170と第二綴じ部材175が組み合わされた状態でベース部材161に取り付けられることで、書類等の綴じ込みが行われることになる。なお、上記理由により、背表紙部180aの厚さ(横幅/背表紙部180aに沿った方向における天地方向と直交する方向の幅)は、実施例1における背表紙部80aの厚さより厚いものであり、対応するように綴じ具160の幅も、実施例1における綴じ具60の幅より大きい。
先ず、固定装置100を構成する第一スライド部材110と第二スライド部材130の構成について、図17A−図20Bに基づいて説明する。第一スライド部材110と第二スライド部材130は、後述する図18A、18B等に示すように組み合わせられことで、互いが相対的にスライドすることが可能となり、当該スライドが可能な状態において本発明に係る固定装置100としての機能を発揮する。なお、この両スライド部材による相対的なスライドも実施例1の場合と同様に「相対的スライド」と言う。
ここで、図17Aは、第一スライド部材110の構成を示す図であり、図中左側が第一スライド部材110の上面図、図中右側がその背面図となっている。図17Bは、第二スライド部材130の構成を示す図であり、図中左側が第二スライド部材130の上面図、図中右側がその背面図となっている。また、図18Aは、第一スライド部材110と第二スライド部材130を組み合わせて固定装置100を形成したときの、該固定装置100の上方斜視図であり、図18Bは、その固定装置100の下方斜視図である。次に、図19Aは、固定装置100が綴じ具160を固定するために採る、後述する「係合状態」を固定装置100の上方から示す図であり、図19Bは、図19Aに示す係合状態の断面図である。また、図20Aは、固定装置100が綴じ具160の固定を解除するために採る、後述する「係合解除状態」を固定装置100の上方から示す図であり、図20Bは、図20Aに示す係合状態の断面図である。
先ず、第一スライド部材110について、図17Aに基づいて説明する。第一スライド部材110の表側の構成については、該第一スライド部材110は、長手方向に延びる二本の平行な縦フレーム111を、三本の平行な横フレーム114a、114b、114cで連結するとともに、縦フレーム111の一方の端部に操作部116が設けられた形状を有している。なお、横フレーム114cは、操作部116が設けられた縦フレーム111の端部とは逆の端部に位置する。ここで、縦フレーム111上には、同じように長手方向に延びる二本の平行な上側縦フレーム112が設けられている。したがって、縦フレーム
111及び横フレーム114a〜114cの上面と、上側縦フレーム112の上面とは同一面には位置せず、段差形状を形成することになる。また、上側縦フレーム112の端部112aは、横フレーム114cの外側の辺よりも第一スライド部材の外側に若干量飛び出して形成されている。
ここで、二本の縦フレーム111と操作部116及び横フレーム114aとで囲まれることで、第一スライド部材110の表側と裏側を貫通する貫通領域115aが形成され、同様に二本の縦フレーム111と横フレーム114a及び横フレーム114bとで囲まれることで、第一スライド部材110の表側と裏側を貫通する貫通領域115bが形成され、同様に二本の縦フレーム111と横フレーム114b及び横フレーム114cとで囲まれることで、第一スライド部材110の表側と裏側を貫通する貫通領域115cが形成されている。そして、上側縦フレーム112の一部が貫通領域115c上に突出するように形成されるスライド突起部113が、その上面が各上側縦フレーム112の上面と面一となるように設けられている。したがって、横フレーム114a〜114cの上面と、スライド突起部113の上面とは面一にはならない。
また、操作部116は、実施例1における操作部16と同様である。更に、操作部116において、その中央に設けられた貫通孔と貫通領域115aとを連通するように窪み部118が設けられている。
次に、第一スライド部材110の裏側の構成について説明する。縦フレーム111の下面は、円柱形状の位置決め突起部121を除いて、面一の平面となっている。この位置決め突起部121は、機能的には実施例1における位置決め突起部21と同じであり、スライド突起部113の各々近傍に一つずつ設けられ、後述する綴じ具160側の位置決め孔部164に対応する。そして、貫通領域115aのうち各縦フレーム111に沿う辺に、段差部120がそれぞれ設けられている。この段差部120の下面は縦フレーム111の下面より固定装置100の表側に下がって形成される。同様に、縦フレーム111の下面より固定装置100の表側に下がって形成される段差部119が、貫通領域115cのうち各縦フレーム111の横フレーム114c側の端部にそれぞれ設けられている。なお、段差部119および段差部120の長さは、概ね同一である。
また、横フレーム114a及び横フレーム114cの各々には、綴じ具160をファイル本体180に対して固定するための該ファイル本体180への係合を行う係合爪122、123が、裏側に突出するように設けられている。係合爪122、123は、実施例1における係合爪22、23と機能的に同一である。第一スライド部材110においては、横フレーム114aに二つの係合爪122が設けられ、横フレーム114cに二つの係合爪123が設けられる。
また、横フレーム114bには、実施例1におけるスライド凹部24と機能的に同一の、下面が弧状に窪んだスライド凹部124が、第一スライド部材110の長手方向に沿って形成されている。なお、一の係合爪122と一の係合爪123の第一スライド部材110の長手方向に沿った中心軸及び一のスライド凹部124の延在方向に沿った中心軸は一致し、もう一方の係合爪122、係合爪123、スライド凹部124においても同様に各中心軸が一致するように、各構成がそれぞれに対応する横フレーム上に配置される。
次に、第二スライド部材130について、図17Bに基づいて説明する。該第二スライド部材130は、長手方向に延びるベース部131を有している。そして、ベース部131の一方の端部には、ベース部131の本体側から延びる二本の連結部131aを介して操作部138が設けられており、上記操作部116と同様に、操作部38は、ユーザが第二スライド部材130をスライド操作するときにその指をかけて当該操作をし易いように
、その中央に貫通孔を有している。更に、この貫通孔の左右両側に窪み部139が設けられることで、更にユーザの指が操作部138に掛かり易く工夫されている。
更に、連結部131aとベース部131との接続部位の近傍に、第二スライド部材130の外側に飛び出したスライド突起部144が、ベース部131の長手方向に沿って設けられている。このスライド突起部144の上面は、ベース部131の上面より固定装置100の裏側に下がって形成され、また該スライド突起部144の下面は、ベース部131の下面と面一に形成される。
ここで、二本の連結部131aと、ベース部131及び操作部138によって囲まれることで、第二スライド部材130の表側と裏側とを貫通する貫通領域134が形成される。そして、この貫通領域134のうちベース部131側の辺に対してヒンジ結合され、該ヒンジ結合部を軸としてベース部131に対して相対的に回転し貫通領域134内に出入り自在のロック部材136が設けられている。このロック部材136の詳細な構成については、後述する。
また、ベース部131の長手方向の端部のうち、上記操作部138が設けられた端部とは反対側の端部に、連結部131aと同様に、ベース部131の本体側から延びる二本の連結部131bを介してスライド突起部145が設けられている。このスライド突起部145は、二本の連結部131bの端部のうち、ベース部131と連結される端部とは反対側の端部を横フレームとして連結するとともに、第二スライド部材130の外側に飛び出して形成される。そして、このスライド突起部145の上面は、ベース1部31の上面より固定装置100の裏側に下がって形成され、また該スライド突起部145の下面は、上記スライド突起部144の下面と同一平面上に位置するように形成される。
ここで、二本の連結部131bと、ベース部131及びスライド突起部145によって囲まれることで、第二スライド部材130の表側と裏側とを貫通する貫通領域135が形成される。そして、この貫通領域135のうちベース部131側の辺に対してヒンジ結合され、該ヒンジ結合部を軸としてベース部131に対して相対的に回転し貫通領域135内に出入り自在のロック部材137が設けられている。なお、このロック部材137の構成は上記ロック部材136と同一であり、その詳細な構成については後述する。
更に、ベース部131の上面において、長手方向に延びる二本の側辺を、それぞれ、該長手方向に沿って切り欠くことでスライド溝部132が形成されている。このスライド溝部132は、実施例1におけるスライド溝部32と機能的に同一である。そして、スライド溝部132の中央部分には、このスライド溝部132内の領域を二つの分割領域132a、132bに分割するように突起部133が設けられている。
次に、第二スライド部材130の裏側の構成について説明する。ベース部131には、裏側において環状のフレーム部131cが、表側において上述したスライド溝部132が設けられた場所を含むように、ベース部131の裏側に設けられている。フレーム部131cが配置されたベース部131においてはその厚さが厚くなるため、スライド溝部132を形成するために切り欠いた分だけベース部131の強度が低下するのを、フレーム部131cで強度を補うことができる。そして、このフレーム部131cを形成する辺のうち第二スライド部材130の長手方向の辺の下面には、固定装置100の裏側に突出する円柱形状の位置決め突起部141が設けられており、これは、実施例1における位置決め突起部41と機能的に同一である。
また、フレーム部131cを形成する辺のうち第二スライド部材130の幅方向(長手方向に垂直な方向)の辺には、実施例1におけるスライド凹部46と機能的に同一の、下
面が弧状に窪んだスライド凹部146が、第二スライド部材130の長手方向に沿って二つ形成されている。更に、第二スライド部材130の裏側において、スライド突起部144と145の近傍に、それぞれ、実施例1における係合爪42、43と機能的に同一の係合爪142、143が、裏側に突出するようにそれぞれ二つずつ設けられている。また、一の係合爪142と一の係合爪143の第二スライド部材130の長手方向に沿った中心軸及び一のスライド凹部146の延在方向に沿った中心軸は一致し、もう一方の係合爪142、係合爪143、スライド凹部146においても同様に各中心軸が一致するように、各構成がそれぞれに対応する横フレーム上に配置される。
このように構成される第一スライド部材110と第二スライド部材130は、実施例1の第一スライド部材10と第二スライド部材の場合と同様に樹脂製であり、その樹脂の弾性変形等を利用して、第一スライド部材110と第二スライド部材130とを組み合わせることで本発明に係る固定装置100が形成される。
このように第一スライド部材110と第二スライド部材130とが組み合わされた固定装置100では、第二スライド部材130が、第一スライド部材110の横フレーム114a〜114c上に位置するとともに(図18Bを参照)、該横フレーム114a〜114cと上側縦フレーム112とで概ね形成される、第一スライド部材110の長手方向に延在するスライド空間内を、該第一スライド部材110に対して相対的にスライド(上記相対的スライド)を行うことが可能となる(図18Aを参照)。このとき、図18A、18Bに示すように、第二スライド部材130は、第一スライド部材110の横フレーム114a〜114cとスライド突起部113とによって上下方向で挟まれた状態となるため、上記スライド空間内における相対的スライドを円滑に行うことができる。また、図18Bに示すように、第二スライド部材130は、そのスライド突起部144、145が第一スライド部材110の段差部119、120によってスライド方向にガイドされることになるため、第二スライド部材130と第一スライド部材110の分離を抑制しながら、円滑な相対的スライドを担保することができる。
ここで、第一スライド部材110に設けられる係合爪122、123と、第二スライド部材130に設けられる係合爪142、143は、各々の形状は同一であり、また実施例1における係合爪22等とも同一である。したがって、各係合爪の詳細な構成の説明は割愛する。また、第一スライド部材110の係合爪122、123の係合方向は同一であり、第二スライド部材130の係合爪142、143の係合方向は同一であるが、係合爪122、123の係合方向は、係合爪142、143の係合方向と逆向きとなっている。そして、固定装置100では、図18Bに示すように、係合爪123と係合爪142が互いの係合方向が逆となった状態で一対の係合爪を形成し、同様に、係合爪122と係合爪143が互いの係合方向が逆となった状態で一対の係合爪を形成している。
ここで、各一対の係合爪においては、一方の係合爪と他方の係合爪との爪間距離は、第一スライド部材110と第二スライド部材130の相対的スライドに伴って変動する。そして、係合爪の爪間距離が最も広がった状態では、第二スライド部材130側に設けられたロック部材136、137が回転変位することで、その係合爪の間に形成された挿入空間に入り込み、その結果、第一スライド部材110と第二スライド部材130の相対的スライドが制限され、固定装置100の係合状態が維持されることになる。また、再び、相対的スライドを行いたい場合は、このロック部材136、137を先とは逆方向に回転変位させることで、係合爪の間に形成された空間から該ロック部材を取り除けばよい。
ここで、ロック部材136、137の詳細な構成について、図17B、18Aに基づいて説明する。なお、ロック部材136及び137は同一の構成であるため、代表としてロック部材136についてのみ説明する。ロック部材136は、第二スライド部材130の
ベース部131に対してヒンジ結合される板状の操作板部136dと、該操作板部136dに対して垂直に立設する板状の部材であって、その板状の平面がベース部31の幅方向に延びる第一板部136aと、該操作板部136dに対して垂直に立設する板状の部材であって、第一板部136aに対しても直交する平行な二つの第二板部136bと、第一板部136aの板状の平面上であって該第二板部136bとの結合箇所とは反対側の平面上に、操作板部136dに対して垂直となるように設けられた半円柱状の、二つの接触部136cとを有している。
ここで、固定装置100においては、実施例1に示す固定装置1と同様に、第一スライド部材110と第二スライド部材130の相対的スライドによって、両スライド部材が採る位置によって、上述した一対の係合爪の状態が変化し、その結果、各係合爪を介した綴じ具160等の係合状態が変化することで、綴じ具160の固定またはその取り外しが行われることになる。そこで、本発明に係る固定装置100及びそれを用いたファイルの構成の理解を助けるために、先ずは、固定装置100における係合状態について図19A及び19Bに基づいて、係合解除状態については図20A及び20Bに基づいて説明する。
固定装置100の係合状態では、図19Aに示すように、相対的スライドによって第一スライド部材110の操作部116と第二スライド部材130の操作部138とが互いに最も近接した相対位置関係となる。このとき、図19Bに示すように、対を構成する第一スライド部材110側の係合爪122、123と、第二スライド部材130側の係合爪143、142とがそれぞれ最も離間した状態(爪間距離が最大)となる。その結果、各係合爪が図19Bには図示されていない綴じ具160等に対して係合することで、綴じ具160のファイル本体180への固定が行われることになる。また、第一スライド部材110のスライド突起部113は、第二スライド部材130の分割領域132aに収まっている。
一方で、固定装置100の係合解除状態では、図20Aに示すように、相対的スライドによって第一スライド部材110の操作部116と第二スライド部材130の操作部138とが互いに最も離間した相対位置関係となる。このとき、図20Bに示すように、対を構成する第一スライド部材110側の係合爪123、122と、第二スライド部材130側の係合爪142、143とがそれぞれ最も近接した状態(爪間距離が最小)となる。その結果、各係合爪が図19Bには図示されていない綴じ具160等に対して係合しないため、綴じ具160のファイル本体180への固定が解除されることになる。また、第一スライド部材110のスライド突起部113は、第二スライド部材130の分割領域132bに収まっている。
次に、綴じ具160の構成について、図21に基づいて説明する。綴じ具160は、上述したようにベース部材161、第一綴じ部材170、第二綴じ部材175を有しており、第一綴じ部材170と第二綴じ部材175が組み合わされた状態でベース部材161に取り付けられることで、書類等の綴じ込みが行われる。なお、綴じ具160は、書類等を綴じるという機能の観点からは、従来の綴じ具と本質的に同質であるので、当該観点に基づく構成の説明は割愛する。一方で、本発明に係る固定装置100は綴じ具160をファイル本体180に固定するためのものであるから、当該固定に関する構成の説明を重点的に行う。更に、第一綴じ部材170と第二綴じ部材175は、実施例1における第一綴じ部材70と第二綴じ部材75と同質のものであるから、その説明は割愛する。
ここで、図21は、ベース部材161の構成を示す図である。ベース部材161は、二つの側壁部161bと、該側壁部161bのそれぞれに設けられた綴込爪部161aと、ファイル本体180と接触することになるベースプレート161cを有する。ここで、ベース部材161のベースプレート161c上には、複数種類の孔部等が設けられている。
先ず、ベースプレート161cの中央部分には、該ベースプレートの長手方向に沿って、実施例1における爪付位置決め孔部62に機能的に同一の二つの爪付位置決め孔部162が、一の爪付位置決め孔部162につき二つの位置決め爪163とともに設けられている。そして、その爪付位置決め孔部162の左右のそれぞれに、実施例1における突状部65に相当する突状部165と、それを長手方向において挟んだ位置に、実施例1における係合孔部66及び係合時位置決め孔部67に相当する係合孔部166と係合時位置決め孔部167が設けられている。更に、二つの突状部165のそれぞれの横には、実施例1における位置決め孔部64に相当する位置決め孔部164が設けられている。
次に、ファイル本体180の構成について、図22に基づいて説明する。ファイル本体180の背表紙部180aにおいて、綴じ具160が固定されるべき位置にそれを位置決めするために、ファイル側位置決め孔部182が二つ設けられている。このファイル側位置決め孔部182は、矩形状の貫通孔であり、その一つに対して、綴じ具160側の一つの爪付位置決め孔部162が有する二つの位置決め爪163が嵌り込むように配置されることで、綴じ具160の背表紙部180a上への位置決めが行われる。
そして、その綴じ具160の位置決めが行われた状態で、綴じ具160側の係合孔部166と係合時位置決め孔部167に対応する背表紙部180aの位置に、貫通孔であるファイル側係合孔部186とファイル側係合時位置決め孔部187が設けられている。したがって、ファイル側係合孔部186は略矩形状の貫通孔であり、このファイル側係合孔部186を挟んで背表紙部180aの長手方向に二つのファイル側係合時位置決め孔部187が、該ファイル側係合孔部186と連通するように設けられている。
このように構成される固定装置100を用いて、綴じ具160をファイル本体180に固定するための流れは、実施例1に示す固定装置1の場合と本質的に同一である。すなわち、重ねられた状態にある綴じ具160の係合孔部166とファイル本体180のファイル側係合孔部187に、ファイル本体180の内側から固定装置100の各係合爪を挿入し、更に同内側におけるユーザの操作により、第一スライド部材110と第二スライド部材130を係合位置になるように相対的スライドさせることで、綴じ具160をファイル本体180に固定することができる。また、相対的スライドにより第一スライド部材110と第二スライド部材130を係合解除位置にすることで、綴じ具160をファイル本体180から取り外すことができる。
なお、図23に、固定装置100によって綴じ具160がファイル本体180の背表紙部180aに固定された状態を示す。また、その固定状態を、ファイル本体180の外側から見た状態を、図24に示す。図24に示す状態においては、ロック部材136、137が、それぞれに対応する対をなす係合爪の間に嵌まり込んでおり、その結果、第一スライド部材110と第二スライド部材130の相対的スライドが制限されている状態となっている。
また、実施例1において開示された技術的思想は、本実施例における固定装置100にも適用することが可能である。
次に、本発明に係る固定装置の第三の実施例について、図25〜図29に基づいて説明する。本実施例における固定装置は、実施例2に示す固定装置100と比べて、更に書類等の綴じる量が大きい綴じ具260をファイル本体280に綴じるためのものであり、その固定のために、実施例1に示す固定装置1が同時に二つ利用される。したがって、本実施例においては、固定装置1そのものの説明は割愛する。
図25は、図1、図16と同じように、本実施例に係る二つの固定装置1と、それによってファイル本体280に固定される綴じ具260が示されている。ここで、綴じ具260、ファイル本体280の概略的な構成を示すと、ファイル本体280は、ファイルとして使用されるときの背表紙に相当する背表紙部280aと、表表紙に相当する表表紙部280bと、裏表紙に相当する裏表紙部280cを有し、各表紙部間は、折り曲げ形成される。また、綴じ具260は、ベース部材261、第一綴じ部材270、第二綴じ部材275を有しており、第一綴じ部材270と第二綴じ部材275が組み合わされた状態でベース部材261に取り付けられることで、書類等の綴じ込みが行われることになる。なお、上記理由により、背表紙部280aの厚さは、実施例2における背表紙部180aの厚さより厚いものであり、対応するように綴じ具260の幅も、実施例2における綴じ具160の幅より大きい。
ここで、綴じ具260の構成について、図26に基づいて説明する。綴じ具260は、上述したようにベース部材261、第一綴じ部材270、第二綴じ部材275を有しており、第一綴じ部材270と第二綴じ部材275が組み合わされた状態でベース部材261に取り付けられることで、書類等の綴じ込みが行われる。なお、綴じ具260は、書類等を綴じるという機能の観点からは、従来の綴じ具と本質的に同質であるので、当該観点に基づく構成の説明は割愛する。一方で、本発明に係る固定装置1は綴じ具260をファイル本体280に固定するためのものであるから、当該固定に関する構成の説明を重点的に行う。更に、第一綴じ部材270と第二綴じ部材275は、実施例1、2における第一綴じ部材と第二綴じ部材と同質のものであるから、その説明は割愛する。
ここで、図26は、ベース部材261の構成を示す図である。ベース部材261は、二つの側壁部261bと、該側壁部261bのそれぞれに設けられた綴込爪部261aと、ファイル本体280と接触することになるベースプレート261cを有する。ここで、ベース部材261のベースプレート261c上には、複数種類の孔部等が設けられている。先ず、ベースプレート261cの中央部分には、実施例1における爪付位置決め孔部62に機能的に同一の四つの爪付位置決め孔部262が、一の爪付位置決め孔部262につき二つの位置決め爪263とともに設けられている。そして、その爪付位置決め孔部262の左右のそれぞれに、実施例1における突状部65に相当する突状部265と、それを長手方向において挟んだ位置に、実施例1における係合孔部66及び係合時位置決め孔部67に相当する係合孔部266と係合時位置決め孔部267が設けられている。更に、二つの突状部165のそれぞれの図中の右横には、実施例1における位置決め孔部64に相当する位置決め孔部264が設けられている。
次に、ファイル本体280の構成について、図27に基づいて説明する。ファイル本体280の背表紙部280aにおいて、綴じ具260が固定されるべき位置にそれを位置決めするために、ファイル側位置決め孔部282が二つ設けられている。このファイル側位置決め孔部282は、矩形状の貫通孔であり、その一つに対して、綴じ具260側の一つの爪付位置決め孔部262が有する二つの位置決め爪263が嵌り込むように配置されることで、綴じ具260の背表紙部280a上への位置決めが行われる。
そして、その綴じ具260の位置決めが行われた状態で、綴じ具260側の係合孔部266と係合時位置決め孔部267に対応する背表紙部280aの位置に、貫通孔であるファイル側係合孔部286とファイル側係合時位置決め孔部287が設けられている。したがって、ファイル側係合孔部286は略矩形状の貫通孔であり、このファイル側係合孔部286を挟んで背表紙部280aの長手方向に二つのファイル側係合時位置決め孔部287が、該ファイル側係合孔部286と連通するように設けられている。
以上より、二つの固定装置1を用いて綴じ具260をファイル本体280に固定するた
めの流れは、実施例1に示す一つの固定装置1を用いる場合と本質的に同一である。すなわち、重ねられた状態にある綴じ具260の係合孔部266とファイル本体280のファイル側係合孔部287に、ファイル本体280の内側からそれぞれの固定装置1の各係合爪を挿入し、更に同内側におけるユーザの操作により、第一スライド部材10と第二スライド部材30を係合位置になるように相対的スライドさせることで、綴じ具260をファイル本体280に固定することができる。また、相対的スライドにより第一スライド部材10と第二スライド部材30を係合解除位置にすることで、綴じ具260をファイル本体280から取り外すことができる。
なお、図28に、二つの固定装置1によって綴じ具260がファイル本体280の背表紙部280aに固定された状態を示す。また、その固定状態を、ファイル本体280の外側から見た状態を、図29に示す。図29に示す状態においては、ロック部材36、37が、それぞれに対応する対をなす係合爪の間に嵌まり込んでおり、その結果、第一スライド部材10と第二スライド部材30の相対的スライドが制限されている状態となっている。
また、上述までの実施例において開示された技術的思想は、本実施例における固定装置にも適用することが可能である。
次に、本発明に係る固定装置の第四の実施例について、図30A〜図32Bに基づいて説明する。本実施例における固定装置300は、上述までの固定装置と同様に、二つのスライド部材310、330が相対的スライドを行うことで、綴じ具のファイル本体への固定を行う。なお、本実施例においては、固定の対象である綴じ具及び該綴じ具が固定されるファイル本体として、実施例1に示す綴じ具60およびファイル本体80に基づいて説明を行うが、これは本実施例に係る固定装置300が当該綴じ具60の固定に限定されることを意味するのではなく、あくまでも例示的に示されるものである。
先ず、第一スライド部材310は、長手方向に延在するベース部311と、その一端に固定作業を行うユーザの指を掛けるための操作部316とを有する。操作部316は、概ね矩形状を有しており、その内側には貫通部317が設けられている。また、該操作部316はベース部311との連結部位においてはヒンジ結合され、該ベース部311に対して回転移動が可能となっている。また、ベース部311と操作部316の連結部位の近傍に、実施例1におけるスライド突起部44に相当するスライド突起部312が設けられている。
また、スライド突起部312の近傍には、実施例1における係合爪22に相当する係合爪328が設けられている。さらに、ベース部材311の長手方向における中心軸上に、実施例1におけるスライド凹部24に相当するスライド凹部324が、係合爪328の近傍とベース部311の概ね中央部分に、二箇所設けられている。したがって、このスライド凹部324は、綴じ具60の固定時においては、綴じ具60の突状部65上に嵌り合い、その上で相対的スライドが行われることになる。また、一のスライド凹部324の近傍には、実施例1における位置決め突起部21に相当する位置決め突起部321が設けられ、後述する第二スライド部材330の位置決め突起部341とともに、綴じ具60の位置決め孔部64内に収められることになる。
また、図30Aに示すように、ベース部311の表側の一部においては、他部よりも盛り上がって形成されたバネ収納部313が設けられ、その裏側においては後述するバネが収納される収納溝325が、ベース部311の長手方向に沿って設けられている。そして、この収納溝の端部に第一スライド部材310の表側と裏側とを貫通する貫通孔315が
設けられ、その貫通孔315の部位に、上記バネの一端を固定するための固定部314が設置されている。
更に、収納溝325の左右両側に、上記スライド突起部312と機能的に同一のスライド突起部326が、ベース部311の外側に飛び出すように設けられている。そして、実施例1における係合爪23に相当する係合爪323が、ベース部311の端部であって、上記操作部316が設けられている端部とは反対の端部に設けられ、その左右両側に実施例1におけるスライド突起部45に相当するスライド突起部327が設けられている。
次に、図30Bに示すように、第二スライド部材330は、矩形環状のフレーム部331を有しており、その端部は、引っ掛け用突起部334が設けられている。この引っ掛け用突起部334は、後述するように、操作部316の貫通部317が引っ掛けられる構成となっており、したがって、その形状は貫通部317の形状に対応する。また、環状のフレーム331には、その内部の貫通領域を三つの貫通領域333、337、339に分割するべく、横フレーム335、338が設けられている。そして、貫通領域333を構成するフレーム部331の左右両側には、実施例1におけるスライド突起部13に相当するスライド突起部332が設けられ、貫通領域337を構成する横フレーム335には、上記バネのもう一端を固定するための固定部336が設けられている。
更に、貫通領域333を構成するフレーム部331の裏側には、実施例1における段差部20に相当し、上記スライド突起部312が相対的スライド時に接触することになる段差部340が設けられ、貫通領域339を構成するフレーム部331の裏側には、実施例1における段差部19に相当し、上記スライド突起部327が相対的スライド時に接触することになる段差部346が設けられる。また、貫通領域333を構成するフレーム部331の裏側にも、上記スライド突起部326が相対的スライド時に接触することになる段差部344が設けられている。
そして、第二スライド部材330においては、引っ掛け用突起部334の裏側に、実施例1における係合爪42に相当する係合爪342が設けられ、横フレーム338の裏側には実施例1における係合爪43に相当する係合爪343が設けられる。更に、横フレーム335の裏側には、実施例1におけるスライド凹部46に相当するスライド凹部345が設けられ、このスライド凹部345は、上記スライド凹部324とともに綴じ具60の固定時においては、綴じ具60の突状部65上に嵌り合い、その上で相対的スライドが行われることになる。
このように構成される第一スライド部材310と第二スライド部材330は、第一スライド部材310側の、スライド突起部312、326、327が、それぞれ第二スライド部材330側の段差部340、344、339に対応するように組み合わされるとともに、固定部315、336を介して両スライド部材間にバネ346が接続されることで、固定装置300が形成される。そこで、固定装置300においては、両スライド部材が実施例1と同様の相対的スライドを行い、両スライド部材が係合位置もしくは係合解除位置に至ることで、固定装置300による係合状態又は係合解除状態が形成されることになる。
そして、固定装置300の係合状態を表面および裏面から見た図を、それぞれ図31A、図31Bに示し、その係合解除状態を表面および裏面から見た図を、それぞれ図32A、図32Bに示す。なお、固定装置300においては、第一スライド部材310が第二スライド部材330上をスライドすることになり、そして第一スライド部材310と第二スライド部材330が相対的スライドを行う時には、バネ346による付勢力が両スライド部材に作用することになる。
固定装置300の係合状態においては、バネ346の付勢力により第一スライド部材310と第二スライド部材330の距離が最も接近した状態(固定装置300の長手方向における端部同士の距離が最も接近した状態)であり、その結果、対をなす係合爪323と343及び係合爪328と342の爪間距離が最大となる。ここで、この係合状態においては、バネ346は、図31Bに示すように、押縮められた状態から自然長に戻った状態となっているので、該バネ346からの付勢力で、第一スライド部材310と第二スライド部材330の相対的位置関係はある程度維持されることになる。したがって、この状態でも比較的安定的に綴じ具60を固定することが可能ではあるが、本実施例においては該相対的位置関係の維持をより確実にするために、第一スライド部材310側の操作部316の貫通孔317が、第二スライド部材330側の引っ掛け用突起部334に引っ掛けられた状態となる(図31Aを参照。)。
また、固定装置300を係合状態から係合解除状態に至らしめるには、先ず、貫通孔317と引っ掛け用突起部334の引っ掛け状態を解除すべく、操作部316をヒンジ連結部位を中心として回転させる。そして、この操作部316を利用して、バネ346を縮める方向に第一スライド部材310をスライドさせる。図32Aには、この操作部316が第一スライド部材310のベース部311に対してほぼ垂直となるまで回転させた後、該第一スライド部材310が、第二スライド部材330の引っ掛け用突起部334の近傍まで引っ張られた状態が示されている。
そして、この係合解除状態では、図32Bに示すように対をなす係合爪323、343及び係合爪328、342の爪間距離は最小となり、綴じ具60の係合孔部66等からこれらの係合爪を抜き出すことが可能となる。なお、固定装置300を係合解除状態から係合状態に至らしめるには、操作部316に加えている引張り力を取り除けば、バネ346の付勢力によって固定装置300は係合状態に至ることになる。
本実施例に係る固定装置300は、係合爪323、343及び係合爪328、342は対をなしているが、係合爪342については単独で綴じ具60の係合孔部66等に挿入され、係合を行う。上述したように、固定装置300が、このように対をなさずに一の係合孔部66等に挿入される係合爪を有していても、本発明に係る固定装置の範疇に属する。なお、固定装置300において、係合爪342に対応する係合爪を、例えば第一スライド部材310側に設けるようにしてもよい。
また、上述までの実施例において開示された技術的思想は、本実施例における固定装置にも適用することが可能である。
次に、本発明に係る固定装置の第五の実施例について、図33〜図35Bに基づいて説明する。本実施例における固定装置400は、上述までの固定装置と同様に、二つのスライド部材が相対的スライドを行うことで、綴じ具のファイル本体への固定を行うものであるが、使用されるスライド部材は同一種類のみである。なお、本実施例においては、固定の対象である綴じ具及び該綴じ具が固定されるファイル本体として、実施例1に示す綴じ具60およびファイル本体80に基づいて説明を行うが、これは本実施例に係る固定装置400が当該綴じ具60の固定に限定されることを意味するのではなく、あくまでも例示的に示されるものである。
ここで、本実施例に係る固定装置400を構成するスライド部材410について、図33に基づいて説明する。図33の左側には、スライド部材410の表側の構成が記載され、その右側には、スライド部材410の裏側の構成が記載されている。スライド部材410は、長手方向に延びる縦フレーム411と、該縦フレーム411の一の先端から該縦フ
レーム411に対して垂直に延びる横フレーム412と、該縦フレーム411の他の先端から該縦フレーム411に対して垂直に延びる横フレーム415と、該縦フレーム411の途中部であって該横フレーム411寄りの途中部から該縦フレーム411に対して垂直に伸びるL字形状の横フレーム414とを有する。更に、横フレーム412には、その先端から横フレーム414の方に向かって延び、且つ該横フレーム414には至らない長さを有する縦フレーム413が設けられ、また該横フレーム412の中央部分近傍において、該横フレーム412から縦フレーム413とは反対方向に延在する操作部417が設けられている。
更には、横フレーム415には、その先端から横フレーム414の方に向かって延び、且つ該横フレーム414には至らない長さを有する板状の縦フレーム416が設けられ、また横フレーム414には、横フレーム412に向かって後述するバネ430を取り付けることが可能な取付部418が設けられている。
次に、スライド部材410の裏側の構成について説明する。横フレーム412の裏側に、実施例1における係合爪22等に相当する係合爪421が二つ並べられており、また横フレーム415の裏側には、同様に係合爪22等に相当する係合爪420が二つ並べられている。これらの係合爪420、421は、全て同一の形状を有し、且つ該係合爪によるファイル本体の係合方向も、同一の方向(横フレーム412から横フレーム415への方向)である。
そして、横フレーム414のL字形状の一辺(縦フレーム411に平行な辺)には、縦フレーム411の延在方向に延びる溝部419が設けられ、該溝部419は、横フレーム415に対向するように開口し且つ該横フレーム414の他の一辺の近傍まで延びている。この溝部419には、後述するようにスライド部材410を二つ組み合わせて固定装置400を形成するとき、一方のスライド部材410の縦フレーム413が挿入されることになる。
このように構成されるスライド部材410を二つ利用し、互いの横フレーム418(418’)が対向し、且つ固定装置400が転対象となるように組み合わされることで、本実施例に係る固定装置400が形成される。固定装置400の具体的な構成については、図34A等に示すが、その説明にあたり、一方のスライド部材410に関する構成を説明する場合には、その参照番号にダッシュを添付せず、もう一方のスライド部材410’に関する構成を説明する場合には、その参照番号にはダッシュを添付する。固定装置400は一方のスライド部材410の縦フレーム416が他方のスライド部材410’の横フレーム412’に乗り上げ、操作部417が横フレーム415’に乗り上げた状態となる。同様に、縦フレーム416’が横フレーム412に乗り上げ、操作部417’が横フレーム415に乗り上げた状態となる。
更に、一方のスライド部材410の縦フレーム413が他方のスライド部材410’の溝部419’に挿入され、同様に、他方のスライド部材410’の縦フレーム413’が一方のスライド部材410の溝部419に挿入された状態となる。そして、対向する横フレーム418と418’のそれぞれに設けられた取付部418、418’を介して、二つのスライド部材410、410’の間に付勢力を作用させるバネ430が取り付けられる。このように形成される固定装置400においては、両スライド部材が実施例1と同様の相対的スライドを行い、両スライド部材が係合位置もしくは係合解除位置に至ることで、固定装置400による係合状態又は係合解除状態が形成されることになる。
ここで、固定装置400の係合状態を表面および裏面から見た図を、それぞれ図34A、図34Bに示し、その係合解除状態を表面および裏面から見た図を、それぞれ図35A
、図35Bに示す。なお、固定装置400においては、第一スライド部材410と第二スライド部材410’が相対的スライドを行う時には、バネ430により固定装置400が係合状態にあろうとする付勢力が作用している。
先ず、固定装置400の係合状態においては、バネ430の付勢力によりスライド部材410とスライド部材410’の距離が引き離された状態(固定装置400のバネ430による付勢方向の長さが最も長い状態)であり、その結果、対をなす係合爪420と421’の爪間距離等が最大となる。このとき、バネ430は、図34Bに示すように、押縮められた状態から自然長に戻った状態となっており且つ各スライド部材の縦フレーム413(413’)が対応する溝部419’(419)の奥に突き当たった状態となっている。そのため、バネ430からの付勢力で、両スライド部材の相対的位置関係はある程度維持されることになる。
また、固定装置400を係合状態から係合解除状態に至らしめるには、バネ430を縮める方向に両スライド部材をスライドさせる。具体的には、ユーザが、その指で横フレーム414と414’を摘むように操作を行えばよい。そのようにすることで、固定装置400は係合解除状態に至り、図35Bに示すように対をなす係合爪420、421’等の爪間距離は最小となり、綴じ具60の係合孔部66等からこれらの係合爪を抜き出すことが可能となる。なお、固定装置300を係合解除状態から係合状態に至らしめるには、バネ430を縮めている力を取り除けば、バネ430の付勢力によって固定装置400は係合状態に至ることになる。
また、上述までの実施例において開示された技術的思想は、本実施例における固定装置にも適用することが可能である。
次に、本発明に係る固定装置の第六の実施例について、図36A〜図39に基づいて説明する。本実施例における固定装置500は、実施例2で示された綴じ具160をファイル本体180に固定するために使用される固定装置であって、上述までの固定装置とは異なり、二つのスライド部材の相対的スライドによる綴じ具160の固定は行うものではなく、図36A及び図36Bに示す一体の固定装置によって綴じ具160の固定を行う。
固定装置500は、板状の装置本体501と、該装置本体501から垂直に延び、実施例1における挿入片22bに相当する二つの挿入片503とを有する。二つの挿入片503との間には、矩形上に切り欠かれた切り欠き部506が設けられることで、二つの挿入片503の間の連結は比較的に弾性的な連結となっている。また、各挿入片503には、実施例1における係合片22aと位置決め片22cに相当する係合片504と位置決め片505が設けられており、これら挿入片503、係合片504、位置決め片505によって、実施例1における係合爪22に相当する係合爪を形成している。
また、装置本体501は、挿入片503との連結部位から係合片504が延在する方向に、更に長く延在し、その先端に、ユーザが当該固定装置500を使用する際に指を掛けるための操作部502が、突起状に形成されている。そして、図36Bに示すように、装置本体501の裏面側であって、切り欠き部506に対向する位置に該装置本体501の裏面から突起した係止突起部507が設けられている。
このように構成される固定装置500を、図37に示すように、その挿入片503から綴じ具160のベースプレート161c上の係合孔部166とそれに重ねられたファイル本体180のファイル側係合孔部186に挿入させ、その後固定装置500を、該係合孔部166に連通する係合時位置決め孔部167側に引くことで、該固定装置500の係合
片503によるファイル本体180との係合が行われる。また、本実施例におけるベースプレート161cには、その一部が切り起こされて形成された係止部561が設けられている。そこで、上記のように固定装置500によるファイル本体180への係合が行われるべく該固定装置500が引かれると、固定装置500側の係止突起部507が、該係止部561を乗り越えることで、ファイル本体180と係合をした固定装置500が動き出し、その係合が不用意に解除されてしまうことを防止することができる。なお、固定装置500によるファイル本体180との係合を解除するためには、係止突起部507が係止部561を乗り越える外力を、該固定装置500に作用させればよい。
また、上述したように、一の係合孔部166(ファイル側係合孔部186)には、該係合孔部を挟んで二つの係合時位置決め孔部167(ファイル側係合時位置決め孔部187)が設けられている。そこで、固定装置500を用いて綴じ具160をファイル本体180に固定する場合は、図38に示すように、固定装置500が有する係合爪(挿入片503で形成される係合爪)の向きを逆にして、重ねられた一つの係合孔部166とファイル側係合孔部186には、二つの固定装置が使用される。このようにすることで、固定装置500を用いて、綴じ具160及びファイル本体180を異なる係合方向で係合することが可能となる。
ここで、固定装置500を使用して綴じ具160をファイル本体180に固定した状態を図39に示す。本実施例に係る綴じ具160には係合孔部166が二つ備えられているので、綴じ具160をファイル本体180に固定する場合には、全体で四つの固定装置500が使用されることになる。
次に、本発明に係る固定装置の第七の実施例について、図40〜図43に基づいて説明する。本実施例における固定装置は、上述の実施例で示したように、相対的スライドを行う二つのスライド部材によって綴じ具の固定を行うのではなく、ファイル本体の内側において相対的な回転運動を行う二つの回動部材によって綴じ具の固定を行う。
図40は、本実施例に係る固定装置600を側面から見たときの構成を示す図である。図40及び41に示される固定装置600は、二つの板状の回動部材601、602で構成される。この回動部材601と602は回転軸603を中心として、回動自在である。そして、両回動部材601、602の先端には、実施例1における係合爪22に相当する係合爪622が、それらの幅方向に二つずつ並べられている。
また、図41に示すように、固定の対象である綴じ具のベースプレート661cには、上述までの実施例と同様に、上記係合爪622が挿入され、ファイル本体との係合を行うための係合孔部666が四つ設けられ、更に各係合孔部666に対して、上記係合時位置決め孔部67に相当する、一つの係合時位置決め孔部667が、該係合孔部666に連通するように設けられている。なお、説明の簡略化のため、図41にはファイル本体の構成を省略しているが、上述までの実施例の場合と同様に、綴じ具側に設けられた係合孔部666と係合時位置決め孔部667に対応する孔部が、ファイル本体に設けられている。
このように構成される固定装置600では、綴じ具をファイル本体に固定しようとするときは、その姿勢は図40に示すように、回転軸603を中心として、「く」の字形状をしている。この状態で、各回動部材の先端に設けられた係合爪622を係合孔部666等に挿入し、その後、各回動部材を回転軸603を中心として回転させて、回動部材601と602を概ね一直線状とする。これにより、各係合爪の図示しない位置決め片が係合時位置決め孔部667等に嵌りこみ、予め決められた所定の位置で、各係合爪によるファイル本体との係合が行われることになる。一方で、固定装置600による綴じ具の固定を解
除する場合には、一直線状になっている回動部材601、602を図40に示す「く」の字形状になるように持ち上げればよい。
また、図42、43には、同様に二つの回動部材から構成される固定装置であるが、上記固定装置600とは回動部材の回転方向が異なっている固定装置700の実施例を示す。図42は、固定装置700を上方から見たときの構成を示す図である。すなわち、この固定装置700では、回動部材701と702が水平面内で回転軸703を中心として回転することで(図42内の矢印方向の回転)、各回動部材の先端に設けられた、実施例1における係合爪22に相当する係合爪722によるファイル本体との係合が行われる。
このように水平面内で回動部材を回転させる場合、回動部材701、702に取り付けられ、係合爪722を形成する挿入片722b、係合片722a、位置決め片722cが、円弧状の軌跡を辿ることになる。特に、位置決め片722cは、回動部材の回転方向に沿って延在する面を有するため、その軌跡は明確な円弧状となる。そこで、固定装置700においては、位置決め片722cの形状を図43に示すように円弧状に形成し、更に綴じ具およびファイル本体に設けられる係合時位置決め孔部およびファイル側係合時位置決め孔部の形状を、この位置決め片722cに沿った形状とする。これにより、水平面内で回転する回動部材を有する固定装置700を使用しても、綴じ具をファイル本体に適切に固定することができる。
<その他の実施例>
上述した実施例に開示された固定装置は、ファイル本体の内側においてユーザに操作されることで、係合爪がファイル本体の内側から外側に向かって挿入され、そして背表紙部の外側表面と接触することで、該ファイル本体と係合爪との係合が実現される。したがって、係合爪と背表紙部との接触を繰り返すと、一般的に強度の弱い背表紙部が破損してくる可能性がある。そこで、図44に示す背表紙部の外側表面を覆う樹脂製の背表紙カバーであって、固定装置の係合爪によって綴じ具とファイル本体の背表紙部とともに係合される背表紙カバー800が、該背表紙部の保護に有用である。
そこで、実施例1に示す綴じ具60をファイル本体80に固定する場合における、背表紙カバー800の具体的な構成を図44、45に示す。背表紙カバー800は、板状の本体部801と、該本体部801の一端に設けられた見出し部802と、該本体部801をファイル本体80の背表紙部80aの上辺に引っ掛けるための引っ掛け部803を有している。そして、引っ掛け部803を介して背表紙カバー800をファイル本体80に引っ掛けたとき、ファイル本体80に設けられたファイル側係合孔部86やファイル側係合時位置決め孔部87に対応する本体部801上に、同様の形状を有するカバー側係合孔部806、カバー側係合時位置決め孔部807が設けられている。
したがって、背表紙カバー800を引っ掛け部803を介してファイル本体80に取り付けた状態で、ファイル本体80の内側から上述した固定装置1の各係合爪を挿入し、そして背表紙カバー800を含めてファイル本体80と係合させることで、ファイル本体の外表面を破損させることなく、綴じ具60を固定することができる。
なお、ファイル本体80には、一般的にその背表紙部80aの外表面には、見出し用のビニール製のカバー等が装着されていることが多い(図45を参照。)。このようなファイル本体80に対しても、図45に示すように背表紙カバー800をビニールカバーの上方の開口部から滑り込ませることで、上述のようにファイル本体80の背表紙部の保護を行わせることが可能となる。