JP2010022123A - 電動車両の駆動制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便且つ安価な手段により、電動機等の回転電機(それに接続されるインバータ等のシステムも含む)の耐電圧性能を確保することが可能な電動車両の駆動制御装置を提供することである。
【解決手段】電動車両の駆動制御装置10は、電動車両の駆動系に接続された電動機11、発電機17と、電動機11及発電機17の温度を検出する温度センサ20と、電動機11及発電機17の回転数を検出する回転速度センサ19と、電動機11及発電機17の温度に基いて出力を制御する電動機出力制御部30、発電機出力制御部とを備え、電動機出力制御部30は、電動機11の温度が所定の温度以下であるか否かを判定する電動機温度判定部31と、電動機11の回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数を超えているか否かを判定する電動機回転数判定部32と、低温域トルク制御マップに基いて電動機11のトルクを制限する電動機トルク制限制御部33とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電動車両の駆動制御装置に係り、特に電動機等の回転電機の温度に基いて回転電機の出力を制限する電動車両の駆動制御装置に関する。
ハイブリッド車両等の電動車両には、車両を駆動する電動機やエンジンによって駆動される発電機など電動車両の駆動系に接続された回転電機が搭載されている。一般的に、これらの回転電機(以下、主に電動機を例に挙げて説明する)やそれに接続されるインバータ等には、電動車両を駆動させるために高い電圧が印加される。特に電動機の回転速度が速くなると誘導起電力(逆起電力)が大きくなるので、電動機に印加する電圧をさらに高くする必要がある。従って、耐電圧性能を十分に考慮して部材の選定や構造設計等を行う必要があり、具体的には、導体間に所定の間隔を設け、導体を耐電圧性能の高い部材(絶縁体)で被覆する等の対策が施されている。ここで要求される耐電圧性能とは、所定時間・所定電圧を印加した場合に、絶縁破壊等を引き起こすことなく高い絶縁性能を確保することができる性能を意味し、電動機に印加される最大電圧や印加時間を基準に決定される。
電動車両には、電動機の温度に基いて電動機の出力を制限する制御装置が搭載されている。例えば、特許文献1には、少なくとも道路の標高情報を含む道路情報に基いて、車両が目的地に至るまでに走行する走行経路を演算し、この走行経路に含まれる標高情報に基いて、走行経路を走行した際の原動機の温度を所定の区間毎に予測し、予測された原動機の温度が所定温度を超過することが予測された場合に、原動機の温度が所定温度を超過すると予測された区間より前の区間を走行する際に、原動機の出力制限を行うか、又は原動機を冷却する原動機温度制御装置が開示されている。
特開2004−324613号公報
後述するように、電動機等の回転電機の温度が所定温度よりも低温になれば、温度の低下に伴って逆起電力定数が大きくなることが判明した。従って、回転電機の温度が所定温度以下の低温である場合において、同一の回転速度を得ようとすれば、0℃を超える温和な条件よりも印加電圧を高くする必要がある。印加電圧の上昇は、特に回転電機の回転速度が速くなるとより顕著になる。
特許文献1の装置は、電動機の温度上昇を抑制することを目的とする装置であり、電動機の温度と耐電圧との関係は全く考慮されておらず、電動機の温度が低温である場合には電動機の出力は制限されない。即ち、特許文献1の装置によれば、例えば−30〜−40℃以下といった低温環境において電動機等を高速駆動させた場合には、十分な耐電圧性能を確保できないおそれがある。一般的には、あらゆる運転条件においても十分な耐電圧性能を確保すべく、部材選定や構造設計を行うことになるので、大部分の運転条件において耐電圧性能がオーバースペックとなる。従って、コスト削減等の観点から大いに改良の余地がある。
本発明の目的は、簡便且つ安価な手段により、電動機等の回転電機(それに接続されるインバータ等のシステムも含む)の耐電圧性能を確保することが可能な電動車両の駆動制御装置を提供することである。
本発明は、電動機等の回転電機が、低温環境において駆動されたときの印加電圧の特性について、種々実験する中で、一つの知見を得たことに基づく。なお、回転電機に印加される電圧は、次式によって算出でき、回転電機の回転速度が速くなると大きな逆起電力が発生するため高い印加電圧が必要になることがわかる。
V=Ke×ω+i×R
ここで、V;印加電圧、Ke;逆起電力定数、ω;回転数、i;電流、R;回路抵抗成分である。回転電機の種類によっても多少異なるが、一般的に、回転数が高い場合にはKe×ωの項はi×Rの項よりも大きく、V=Ke×ωのように近似することができる。
低温における印加電圧の特性に係る上記の知見とは、回転電機の温度が所定温度よりも低温になれば、温度の低下に伴って逆起電力定数(Ke)が大きくなることに気づいたことである。即ち、同一の回転速度を得ようとすれば、温度が低いほど高い電圧が必要になる。上記のように、印加電圧の上昇は、回転電機の回転速度が速くなるとより顕著になり、特に低温且つ高速回転時において耐電圧性能が問題となる。ここで所定温度とは、0℃以下であり、より具体的には0℃〜−40℃であり、特に−30〜−40℃においては逆起電力定数(Ke)が大きくなる傾向が高く、このような低温環境における回転電機の高速駆動を考慮した耐電圧性能確保の必要性が判明した。
本発明に係る電動車両の駆動制御装置は、上記知見に基いて開発された装置であり、電動車両の駆動系に接続された回転電機と、回転電機の温度を検出する回転電機温度センサと、回転電機の回転数を検出する回転速度センサと、回転電機の温度に基いて出力を制御する回転電機出力制御部と、を備え、回転電機出力制御部は、回転電機の温度が所定の温度以下であるときに、回転電機の上限回転数を低下させることを特徴とする。
また、所定温度以下の低温における回転電機温度に対する上限回転数を規定する低温域回転数制御マップを有し、回転電機の回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数を超えるときには、回転電機の回転数を低温域回転数制御マップの上限回転数以下に低下させることが好ましい。
また、回転電機は電動機であり、低温域回転数制御マップによる回転数制限を実行するための指令トルク値を規定する低温域トルク制御マップを有し、電動機の回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数を超えるときには、電動機による発生トルクを低温域トルク制御マップの指令トルク以下に制限して、電動機の回転数を低温域回転数制御マップの上限回転数以下に低下させることが好ましい。
本発明に係る電動車両の駆動制御装置によれば、回転電機出力制御部が、回転電機の温度が所定の温度以下であるときに、回転電機の上限回転数を低下させるので、所定温度以下の低温環境における回転電機の高速駆動を抑制して、低温時に回転電機及び周辺システム(インバータ等)に高電圧が加わることを防止することができる。上記のように、回転電機の温度が低いほど高電圧が必要になるが、このような構成とすれば、所定温度以下の低温環境における回転電機の高速駆動を考慮して回転電機等の耐電圧設計を行う必要がなく、コストの削減等が可能になる。即ち、簡便且つ安価な手段により、回転電機等の耐電圧性能を確保することができる。
また、所定温度以下の低温における回転電機温度に対する上限回転数を規定する低温域回転数制御マップを有し、回転電機の回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数を超えるときには、回転電機の回転数を低温域回転数制御マップの上限回転数以下に低下させる構成とすれば、さらに精度の高い駆動制御が可能になり、必要以上の回転数制限等を防止することができる。
また、回転電機は電動機であり、低温域回転数制御マップによる回転数制限を実行するための指令トルク値を規定する低温域トルク制御マップを有し、電動機の回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数を超えるときには、発生トルクを低温域トルク制御マップの指令トルク以下に制限して、電動機の回転数を低温域回転数制御マップの上限回転数以下に低下させる構成とすれば、電動機において、さらに精度の高い駆動制御が可能になり、燃費性能や走行安定性能等の向上を図ることができる。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1は、電動車両の駆動制御装置の構成を示すブロック図である。図2は、電動機温度が所定温度以下の低温である場合及び0℃を超える温度(以下、常温(0〜50℃程度)或いは高温とする)である場合について、電動機回転数と電動機の印加電圧との関係を示す図である。図3は、所定温度以下の低温における電動機温度に対する上限回転数を規定する低温域回転数制御マップである。図4は、低温域回転数制御マップによる回転数制限を実行するための指令トルク値を規定する低温域トルク制御マップである。
図1に示すように、電動車両の駆動制御装置10(以下、駆動制御装置10とする)は、駆動系に接続された回転電機である電動機11を主要構成要素として備えている。ここで駆動系とは、電動機11等の回転力を駆動輪21に伝達する部分であり、駆動軸22、動力分配機構23、減速機24等が含まれる。電動機11とは、駆動軸22や減速機24等を介して駆動輪21に連結され、電動車両を駆動する回転電機である。また、減速時には駆動輪21の回転エネルギーを利用して回生発電させる構成とすることもできる。
電動車両には、バッテリ12(ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、及びリチウムイオン電池等の二次電池)が搭載され、そのバッテリ12から供給される直流電流がインバータ13によって交流電流に変換されて、電動機11に供給される。一般的に、電動機11の出力制御は、インバータ13のスイッチング素子をON/OFFして電動機11への供給電力を調整することにより行われている。後述するように、インバータ13に制御信号を与えて電動機11の出力を制御するのがMG−ECU14であり、MG−ECU14に制御信号を与えるのがHV−ECU15である。
駆動制御装置10が搭載される電動車両としては、電動機11のみで駆動する電気自動車や電動機11及びエンジン16により駆動するハイブリッド車両などが挙げられる。以下では、駆動制御装置10が搭載される電動車両としては、エンジン16を備えるハイブリッド車両として説明するがこれに限定されるものではない。
駆動制御装置10は、電動機11に供給するための電力を発電する回転電機である発電機17を備えることができる。発電機17は、エンジン16によって駆動され、また、エンジン16を始動させる電動機としても動作することができる。発電機17は、その回転軸が、動力分配機構23を介してエンジン16の出力軸と連結されている。動力分配機構23は、エンジン16、発電機17、及び電動機11に結合されて、これらの間で動力を分配する機構であり、例えば、エンジン16が発生する駆動力を車輪の駆動分と発電機17の発電分とに分配する機能を有する。
インバータ13とは、上記のように、バッテリ12からの直流電流をスイッチング素子(トランジスタ)の動作により交流に変換して電動機11に交流電流を供給する装置(回路)である。さらに、インバータ13は、電動機11によって回生発電された交流電流を直流に変換してバッテリ12に回生する機能も備える。同様にして、発電機17によって発電された電力は、インバータ13を介してバッテリ12に充電され、電動機11の駆動に使用される。なお、インバータ13としては、電動機11及び発電機17のそれぞれに対応して二つ設けることもできるが、以下では、一つの装置として説明する。
バッテリ12には、バッテリ12の効率的な使用、或いはバッテリ12の劣化防止等の観点から、所定の充電率を上下限値とするSOC(State Of Charge;充電率)管理幅が設定されるのが一般的である。このSOCを測定(推定)する機能を有するのが、バッテリECU18である。バッテリECU18は、SOC測定(推定)装置とも称され、バッテリ12の端子間電圧や、バッテリ12とインバータ13との間を流れる電流値、さらにバッテリ12の温度等、バッテリ12の状態をモニタして、SOC(充電率)を測定する。バッテリ12のSOC制御は、バッテリECU18により測定されたSOC情報に基いて、後述するHV−ECU15がMG−ECU14を介して、バッテリ12の過充電或いは過放電が発生しないように、電動機11、発電機17等の消費電力及び発電電力(回生電力)を調整することにより行われる。
図1に示すように、駆動制御装置10は、電動機11の回転数、具体的には、図示しない電動機11の回転軸速度を検出する電動機回転速度センサ19m(以下、回転速度センサ19mとする)、電動機11の温度を検出する電動機温度センサ20m(以下、温度センサ20mとする)を備えている。発電機17についても同様に、発電機回転速度センサ19g(以下、回転速度センサ19gとする)、発電機温度センサ20g(以下、温度センサ20gとする)が設置される。なお、ハイブリッド車両には、図示しない電流センサや回転速度センサ、温度センサなど、上記のSOC等のバッテリ12情報や後述の電動機11の出力を制御するための情報を測定する各種センサが搭載されている。これらのセンサとしては、公知のセンサを使用することができる。
上記のように、MG−ECU14(モータジェネレータ電子制御ユニット)は、後述するHV−ECU15(ハイブリッド電子制御ユニット)からの制御信号に従ってインバータ13等の動作を制御することにより、電動機11等の駆動を制御する機能を有する。具体的には、MG−ECU14は、回転速度センサ19(19は、19m、19gの両者を示す。以下同様)や温度センサ20、図示しない電流センサ等の各種センサにより測定される情報を取得して、これらの情報に基いてインバータ13等の動作を制御し、HV−ECU15からの制御命令を実行する。
MG−ECU14による電動機の出力制御方法としては、インバータ13により印加電圧を可変(パルスで電圧を印加)して電流量(電力)を制御する方法、具体的には、印加電圧の大きさ(振幅)を変えるパルス振幅変調(PAM)やパルス幅を変えるパルス幅変調(PWM)方式等が挙げられる。PWM制御では、インバータ13のスイッチング素子を高速でON/OFFしてデューティー比を制御し、デューティー比が高くなると単位時間あたりの印加電圧(平均電圧)は高くなる。上記のように、電動機11等に要求される耐電圧性能は、所定時間・所定電圧を印加した場合に、絶縁破壊等を引き起こすことなく高い絶縁性能を確保することができる性能であるから、PWM制御の場合、耐電圧性能は平均電圧の大きさによって決定される。
図1に示すように、ハイブリッド車両には、車両のシステムを総合的に制御するHV−ECU15が備えられる。HV−ECU15は、各種センサや各ECUからの情報や信号、運転者の出力要求などにより、電動機11、エンジン16、発電機17の出力制御等を総合的に行う機能を有する。なお、HV−ECU17を含む各ECUは、CPU、入出力ポート、メモリ等を備えるマイクロコンピュータ(以下、マイコンとする)で構成されている。
一般的に、ハイブリッド車両は、発進時や低速走行時には、電動機11のみにより車両を駆動し、通常走行時には、上記のように、動力分割機構23によりエンジン16の動力を二経路に分け、一方で駆動輪21を駆動し、他方で発電機17を駆動して発電を行う。また、減速時には、回生発電を行い回収した電力をバッテリ12に蓄える。
駆動制御装置10は、回転電機の温度が所定温度以下の低温である場合に、上限回転数を低下させて出力を制限し、回転電機及び周辺システム(インバータ13等)の耐電圧性能を確保することを目的とする装置である。上述のように、回転電機の温度が所定温度よりも低温になれば、温度の低下に伴って逆起電力定数(Ke)が大きくなり、図2に示すように、同一の回転速度を得ようとすれば、温度が低いほど高い電圧が必要になる。同じく図2に示すように、印加電圧の上昇は、回転電機の回転速度が速くなるとより顕著になり、特に低温且つ高速回転時において耐電圧性能が問題となる。駆動制御装置10は、電動機温度が所定温度以下の低温である場合に、上限回転数を低下させる機能を有し、その機能を発現するための主要構成要素である電動機出力制御部30を備える。さらに、図示しない発電機出力制御部を備えることもできる。
電動機11の上限回転数を低下させて出力を制限する方法としては、図示しないブレーキをかけて回転数を制限する方法や発生トルクを制限することにより回転数を制限する方法等が挙げられる。燃費性能や走行安定性能の向上等の観点から、発生トルクを制限する方法を適用することが好ましく、以下ではこの方法を例に挙げて説明する。
電動機出力制御部30は、電動機11の温度に基いて、その出力を制御する装置であり、図1に示すように、HV−ECU15の一部として構成することができる。電動機出力制御部30は、アクセル開度と電動機回転数(又は車速)から要求トルクを算出(抽出)して電動機11に供給する電力(出力)を決定する機能を有する。また、一般的に、電動機出力制御部30は、電動機11やインバータ13の過熱を防止するためのトルク制御マップ(以下、高温域トルク制御マップとする)を備えている。例えば、要求トルク及び電動機回転数が高温域トルク制御マップの上限値(上限トルク、上限回転数)を超える場合には、高温域トルク制御マップに規定される指令トルク値以下に電動機11の発生トルクが制限され、そして電動機11の出力が制限される。
電動機出力制御部30は、電動機温度が所定温度以下の低温である場合に、上限回転数を低下させるため、高温域トルク制御マップに加えて、図3に示す低温域回転数制御マップ、及び図4に示す低温域トルク制御マップを備えている。いずれのマップも電動機11の温度が所定温度以下の低温である場合に適用される。
低温域回転数制御マップは、所定温度以下の低温における回転電機温度に対する上限回転数を規定するマップである。図3に示すように、電動機11の温度が常温であれば、電動機11の回転数は制限されないが、後述する所定温度を臨界点として、温度が低下するに伴い上限回転数は低下する。上記のように、電動機11の回転速度が速くなると大きな逆起電力が発生し、電動機11の温度が所定温度以下の低温であって温度が低下するに伴って特に高い印加電圧が必要になるため、このような低温条件における電動機回転数を制限する必要がある。即ち、電動機回転数を制限するための指標となるのが、低温域回転数制御マップである。
図4に示す低温域トルク制御マップは、低温域回転数制御マップによる回転数制限を実行して、最終的に電動機11の出力を制限するための指令トルク値を規定するマップである。低温域トルク制御マップは、電動機11の温度が所定温度以下の低温であり、且つ電動機11の回転数が低温域回転数制御マップに規定された上限回転数を超える場合に適用される。即ち、低温域トルク制御マップは、電動機回転数を低温域回転数制御マップに規定された上限回転数以下に低下させることを目的とした指標である。図4に示すように、例えば、所定温度以下の低温である電動機温度T1において、電動機11の要求トルク、回転数が×で示される値である場合に、低温域トルク制御マップは、○で示す指令トルク値を規定する。低温域トルク制御マップは、電動機温度が低下するほど(例えば、T1→T2→T3、いずれも所定温度以下の低温でT3が最も低温)、図4に点線で示す形状となり、本マップによれば温度の低下に伴って電動機11の出力を低下させることができる(電動機出力=トルク×回転数)。
電動機出力制御部30は、低温域回転数制御マップ、及び低温域トルク制御マップを指標として、電動機温度が所定温度以下の低温である場合に、上限回転数を低下させ、電動機11の出力を制限する機能を分担する、電動機温度判定部31、電動機回転数判定部32、電動機トルク制限制御部33から構成される。なお、電動機出力制御部30は、さらに機能を分担した複数の制御部或いは単一の制御部から構成することもできる。
電動機温度判定部31は、電動機11の温度が所定の温度以下であるか否かを判定する機能を有する。具体的には、温度センサ20によって検出された電動機11の温度情報を、MG−ECU14を介して取得し、取得された温度が予め登録された所定の温度以下であるかを判定する機能を有する。さらに、取得された温度が予め登録された所定の温度以下であると判定すれば、その情報を電動機回転数判定部32に送信する機能を有する。予め登録された所定の温度とは、回転数制限前における電動機11の最大回転数が図2に示すシステム耐電圧を超える温度であり、電動機11の回転数・出力の制限制御が必要となる温度である。即ち、所定の温度は、低電圧性能確保の観点から電動機11の回転数・出力の制限制御を開始する温度であり、0℃以下であることが好ましく、より好ましくは0〜−40℃であり、特に好ましくは−30〜−40℃である。
電動機回転数判定部32は、電動機温度判定部31からの情報を受けて、電動機11の回転数が図3に示す低温域回転数制御マップの上限回転数を超えているか否かを判定する機能を有する。具体的には、低温域回転数制御マップを制御指標として採用し、回転速度センサ19mによって検出された電動機11の回転数の情報を、MG−ECU14を介して取得して、取得された回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数を超えているかを判定する機能を有する。さらに、上限回転数を超えると判定すれば、その情報を電動機トルク制御部33に送信する機能を有する。
電動機トルク制限制御部33は、電動機回転数判定部32からの情報を受けて、電動機11のトルクを制限する、即ち要求トルクよりも低いトルクに制限する機能を有する。具体的には、低温域トルク制御マップに従って上限回転数を低下させるための指令トルク値を抽出し、その指令トルクをMG−ECU14に出力して、電動機11の発生トルクを指令トルク値以下の制限トルクとする機能を有する。電動機トルク制限制御部33の機能によって電動機11のトルクを制限することにより、電動機11の回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数以下となり、電動機11の出力を制限することができる。即ち、電動機11等に高電圧が印加されることを防止して耐電圧性能を確保することが可能になる。
また、駆動制御装置10は、図示しない発電機出力制御部を備えることが好ましい。発電機出力制御部は、電動機出力制御部30と同様に、発電機温度判定部と、発電機回転数判定部と、発電機トルク制限制御部とを有する。発電機温度判定部は、電動機温度判定部31と同様の機能を有し、発電機17の温度が所定の温度以下であるか否かを判定する。発電機回転数判定部は、電動機回転数判定部32と同様の機能を有し、発電機温度判定部からの情報を受けて、発電機17の回転数が、発電機用の低温域回転数制御マップの上限回転数を超えているか否かを判定する。発電機トルク制限制御部は、発電機17自体ではなく、駆動源であるエンジン16のトルクを制限する機能を有する。
上記構成の駆動制御装置10の作用、特に電動機出力制御部30の機能について、図5を加えて詳細に説明する。図5は、電動機出力制御部30による制御手順を示すフローチャートである。以下では、主に電動機11のみでハイブリッド車両が駆動している場合について説明するが、駆動制御装置10の作用はこれに限定されるものではない。
運転者がアクセルを踏み込むと、アクセル開度サンサによりアクセル開度が検出され、また、電動機11の回転数が検出され、それらの情報がHV−ECU15に入力される。これらの情報に基いて要求トルクが算出されるが、この際に高温域トルク制御マップにより電動機11の出力制御が実行される。電動機11の温度が高温域トルク制御マップによって出力が制限されない温度である場合、要求トルクがMG−ECU14に出力され、要求トルク及び電動機回転数に応じた電力が電動機11に供給される。
要求トルクに従って電動機11が回転駆動した状態をSTARTとして説明する。まず、初めに電動機11の温度が所定の温度以下であるか否かを判定する(S10)。温度センサ20mによって検出された電動機11の温度情報を、MG−ECU14を介して取得し、取得された温度が予め登録された所定の温度以下であるかを判定する。この手順は、電動機出力制御部30の電動機温度判定部31の機能によって実行される。ここで電動機11の温度が所定の温度を超える場合(常温である場合)には、トルク・回転数は制限されず要求トルクに従った電動機11の出力が発生する。
S10において、電動機11の温度が所定温度以下の低温であると判定された場合には、低温域回転数制御マップから、電動機11の回転数が上限回転数を超えているか否かを判定する(S11)。回転速度センサ19mによって検出された電動機11の回転数の情報を、MG−ECU14を介して取得して、取得された回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数を超えているかを判定する。この手順は、電動機出力制御部30の電動機回転数判定部32の機能によって実行される。ここで電動機11の回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数以下である場合には、トルク・回転数は制限されず要求トルクに従った電動機11の出力が発生する。
S11において、電動機11の回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数を超えると判定された場合には、電動機11のトルクが制限される(S12)。低温域トルク制御マップに従って指令トルクを抽出し、その指令トルクをMG−ECU14に出力して、電動機11による発生トルクを指令トルク値以下の制限トルクとする。トルクの制限は、車両の走行性能向上の観点から、要求トルクから制限トルクまで急激に制御するのではなく、段階的に低いトルクを設定して、徐々にトルクを低下させる制御設定とすることが好ましい。この手順は、電動機出力制御部30の電動機トルク制限部33の機能によって実行される。
電動機11による発生トルクを制限することより、電動機11の回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数以下に制限され、電動機11の出力が制限される。即ち、電動機11やそれに接続される周辺システム(インバータ13等)に印加される電圧(PWM制御の場合は平均電圧)が制限される。
以上のように、駆動制御装置10によれば、電動機機出力制御部30が、電動機11の温度が所定の温度以下であるときに、電動機11による発生トルクを制限して、電動機11の回転数を低温域回転数制御マップの上限回転数以下に低下させるので、所定温度以下の低温環境における電動機11の高速駆動を抑制して、電動機11等に高電圧が加わることを防止することができる。所定温度以下の低温環境における電動機11の高速駆動を考慮して、電動機11等の耐電圧設計を行う必要がなく、コストの低減等が可能になる。即ち、簡便且つ安価な手段により、電動機11等の耐電圧性能を確保することができる。
なお、発電機出力制御装置を備え、発電機17の出力を制限する場合も、電動機11の制御手順と同様に、発電機17の温度の判定、発電機17の回転数の判定、発電機17のトルク制御による回転数、そして出力の制限の手順により実行することができる。発電機17の回転数が所定の上限回転数を超えると、エンジン16のトルクを制限して、エンジン16の回転数を低下させることにより、発電機17の回転数を低下、そして出力を低下させる。従って、電動機11だけでなく、発電機17においても、所定温度以下の低温環境における高速駆動を考慮して、耐電圧設計を行う必要がなく、コストの低減等が可能になる。
電動車両の駆動制御装置の構成を示すブロック図である。 電動機温度が所定温度以下の低温である場合及び常温である場合について、電動機回転数と電動機の印加電圧との関係を示す図である。 所定温度以下の低温における電動機温度に対する上限回転数を規定する低温域回転数制御マップである。 低温域回転数制御マップによる回転数制限を実行するための指令トルク値を規定する低温域トルク制御マップである。 電動機出力制御部による制御手順を示すフローチャートである。
符号の説明
10 電動車両の駆動制御装置、11 電動機、12 バッテリ、13 インバータ、14 MG−ECU、15 HV−ECU、16 エンジン、17 発電機、18 バッテリECU、19m 電動機回転速度センサ、19g 発電機回転速度センサ、20m 電動機温度センサ、20g 発電機温度センサ、21 駆動輪、22 駆動軸、23 動力分配機構、24 減速機、30 電動機出力制御部、31 電動機温度判定部、32 電動機回転数判定部、33 電動機トルク制限制御部。

Claims (3)

  1. 電動車両の駆動系に接続された回転電機と、回転電機の温度を検出する回転電機温度センサと、回転電機の回転数を検出する回転速度センサと、回転電機の温度に基いて出力を制御する回転電機出力制御部と、を備え、
    回転電機出力制御部は、
    回転電機の温度が所定の温度以下であるときに、回転電機の上限回転数を低下させることを特徴とする電動車両の駆動制御装置。
  2. 請求項1に記載の電動車両の駆動制御装置において、
    所定温度以下の低温における回転電機温度に対する上限回転数を規定する低温域回転数制御マップを有し、
    回転電機の回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数を超えるときには、回転電機の回転数を低温域回転数制御マップの上限回転数以下に低下させることを特徴とする電動車両の駆動制御装置。
  3. 請求項2に記載の電動車両の駆動制御装置において、
    回転電機は電動機であり、
    低温域回転数制御マップによる回転数制限を実行するための指令トルク値を規定する低温域トルク制御マップを有し、
    電動機の回転数が低温域回転数制御マップの上限回転数を超えるときには、電動機による発生トルクを低温域トルク制御マップの指令トルク以下に制限して、電動機の回転数を低温域回転数制御マップの上限回転数以下に低下させることを特徴とする電動車両の駆動制御装置。
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