JP2010021154A - 正極用ペースト状活物質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水のみで混練をすることができ、且つ、活物質の利用率が高い正極用ペースト状活物質の製造方法を提供する。
【解決手段】酸化鉛を主成分とする鉛粉と、鉛丹と、三塩基性硫酸鉛あるいは一塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して製造する。
【選択図】 図7
【解決手段】酸化鉛を主成分とする鉛粉と、鉛丹と、三塩基性硫酸鉛あるいは一塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して製造する。
【選択図】 図7
Description
本発明は、鉛蓄電池の製造に使用をする正極用ペースト状活物質の製造方法に関するものである。
鉛蓄電池は、安価で信頼性が高いという特徴を有するために、自動車用のバッテリ、ゴルフカート等の電動車両の動力源、更には無停電電源装置等の産業機器用の蓄電池として広く使用をされている。
これらの鉛蓄電池の電極板には、鉛合金製の集電体にペースト状活物質が充填されているペースト式電極板が主に使用されている。そして、このペースト式電極板は、鉛合金製の集電体に、鉛粉と水と希硫酸等とを混練したペースト状活物質を充填して製造されている。すなわち、従来のペースト式電極板の製造には、主に酸化鉛を含む鉛粉を主成分として用い、希硫酸等を加えて混練した負極用ペースト状活物質及び正極用ペースト状活物質が用いられていた(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、希硫酸を用いて混練してペースト状活物質の製造をする従来の方法では、その製造工程において、希硫酸によって製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点が認められていた。そこで、製造装置や床面に十分な防食処理を施す必要があった。特に、製造装置の材質は主に鉄鋼でできており、希硫酸によって腐食がされやすく、その腐食対策には多大な費用が必要であった。
一方、ペースト式電極板の活物質層には、適度な空隙が必要であることも一般的に知られている。すなわち、鉛蓄電池において電解液である硫酸は活物質としても働くために、ペースト式電極板の内部に適度な空隙を設けて、硫酸を保持させておかないと、充放電時において硫酸が不足し、その結果、活物質の利用率が低下する。そこで、ペースト状活物質中に多量の水分を含ませておき、熟成・乾燥時において、水分の蒸発をさせて活物質層に適度な空隙を形成する手法が従来から用いられている。
しかしながら、ペースト状活物質中に多量の水分を含ませると、ペースト状活物質の粘度が小さくなり、鉛合金製の集電体にペースト状活物質が充填されにくくなったり、充填後においても活物質層が鉛合金製集電体から脱落しやすくなるという製造上の問題点があった。
本発明の目的は、ペースト状活物質の混練時に希硫酸を用いることなく、ペースト状活物質の充填が容易であり、充填後には脱落がしにくく、充放電時には活物質の利用率が高い鉛蓄電池に用いるペースト状活物質の製造方法を提供することである。
参考例である鉛蓄電池用の負極板は、活物質の主成分として鉛粉と、一塩基性硫酸鉛あるいは三塩基性硫酸鉛を使用し、水のみで混練をしてペースト状活物質を製造し、該ペースト状活物質を鉛合金製の集電体に充填して製造をする。
他の参考例である鉛蓄電池用の正極板は、活物質の主成分として鉛粉と、一塩基性硫酸鉛あるいは三塩基性硫酸鉛を使用し、水のみで混練をしてペースト状活物質を製造し、該ペースト状活物質を鉛合金製の集電体に充填して製造する。
本発明に係わる鉛蓄電池用の正極板は、活物質の主成分として鉛粉と、一塩基性硫酸鉛あるいは三塩基性硫酸鉛に、鉛丹を加えて、水のみで混練をしてペースト状活物質を製造し、該ペースト状活物質を鉛合金製の集電体に充填して製造するものである。
第1の参考例は、負極用ペースト状活物質の製造方法において、酸化鉛を主成分とする鉛粉と、三塩基性硫酸鉛と、硫酸バリウムと、有機エキスパンダとを混合した混合物に、水を加えて混練して製造するものである。
第2の参考例は、負極用ペースト状活物質の製造方法において、酸化鉛を主成分とする鉛粉と、一塩基性硫酸鉛と、硫酸バリウムと、有機エキスパンダとを混合した混合物に、水を加えて混練して製造するものである。
第3の参考例は、正極用ペースト状活物質の製造方法において、酸化鉛を主成分とする鉛粉と、三塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して製造するものである。
請求項1の発明は、正極用ペースト状活物質の製造方法において、酸化鉛を主成分とする鉛粉と、鉛丹と、三塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して製造することを特徴とするものである。
第4の参考例は、正極用ペースト状活物質の製造方法において、酸化鉛を主成分とする鉛粉と、一塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して製造するものである。
請求項2の発明は、正極用ペースト状活物質の製造方法において、酸化鉛を主成分とする鉛粉と、鉛丹と、一塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して製造することを特徴とするものである。
本発明の効果として、ペースト状活物質を水のみで混練をしているために、硫酸により製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がない。また、一塩基性硫酸鉛や三塩基性硫酸鉛は、鉛粉よりもかさ密度が低いために、ペースト状活物質の針入度が同程度であっても、鉛合金製集電体に充填時には、水分量の多いペースト活物質にできる。
その結果、活物質層に空隙の多いペースト式電極を製造でき、活物質利用率が高い鉛蓄電池用極板を得ることができる。また、定量的な評価は難しいものの、従来に比べて鉛合金製の集電体にペースト状活物質が充填されやすく、充填後においても活物質層が鉛合金製集電体から脱落しにくくできる。さらに、正極用ペースト状活物質には鉛丹を加えることによって、化成時の充電が入りやすくできるとともに、正極活物質の利用率をさらに高くすることができる。
本発明では、以下において詳細に説明をするように、あらかじめ酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉から、三塩基性硫酸鉛を製造しておく。そして、その三塩基性硫酸鉛を使用して鉛蓄電池用のペースト状活物質を製造して用いている。
一方、一塩基性硫酸鉛については、堺化学製の市販品を使用して、後述する同様の手法で鉛蓄電池用のペースト状活物質を製造した。
1.負極板の作製
後述する仕様で作製した各種の従来品と同程度の針入度の負極用ペースト状活物質を、l70mm×w45mm×t1.2mmの鉛−カルシウム−錫合金からなる集電体格子に充填をして、温度40°C、湿度98RH%の雰囲気下で24時間熟成させ、50°Cの雰囲気温度で16時間乾燥させて未化板とした。この未化成の負極板を、比重が1.050の希硫酸中で24時間の通常の化成をして負極板とした。
後述する仕様で作製した各種の従来品と同程度の針入度の負極用ペースト状活物質を、l70mm×w45mm×t1.2mmの鉛−カルシウム−錫合金からなる集電体格子に充填をして、温度40°C、湿度98RH%の雰囲気下で24時間熟成させ、50°Cの雰囲気温度で16時間乾燥させて未化板とした。この未化成の負極板を、比重が1.050の希硫酸中で24時間の通常の化成をして負極板とした。
2.正極板の作製
後述する仕様で作製した各種の従来品と同程度の針入度の正極用ペースト状活物質を、l69mm×w44mm×t2.0mmの鉛−カルシウム−錫合金からなる集電体格子に充填をして、温度45°C、湿度98RH%の雰囲気下で48時間熟成させ、50°Cの雰囲気温度で16時間乾燥させて未化板とした。この未化板の正極板を、比重が1.050の希硫酸中で24時間の通常の化成をして正極板とした。
後述する仕様で作製した各種の従来品と同程度の針入度の正極用ペースト状活物質を、l69mm×w44mm×t2.0mmの鉛−カルシウム−錫合金からなる集電体格子に充填をして、温度45°C、湿度98RH%の雰囲気下で48時間熟成させ、50°Cの雰囲気温度で16時間乾燥させて未化板とした。この未化板の正極板を、比重が1.050の希硫酸中で24時間の通常の化成をして正極板とした。
3.負極活物質及び正極活物質の利用率の測定
作製した負極板1枚を、セパレータを介して従来から使用している正極板2枚で挟み込み、負極板の容量支配とした。次に、比重が1.28(20°C)の希硫酸電解液を150ml注液し、電解液が多量に存在する0.9Ah−2Vの鉛蓄電池を作製した。そして、40℃、0.2CAの定電流値で放電終止電圧が1.75Vまで放電をして容量を測定し、負極活物質の充填量から利用率を測定した。
作製した負極板1枚を、セパレータを介して従来から使用している正極板2枚で挟み込み、負極板の容量支配とした。次に、比重が1.28(20°C)の希硫酸電解液を150ml注液し、電解液が多量に存在する0.9Ah−2Vの鉛蓄電池を作製した。そして、40℃、0.2CAの定電流値で放電終止電圧が1.75Vまで放電をして容量を測定し、負極活物質の充填量から利用率を測定した。
一方、作製した正極板1枚を、セパレータを介して従来から使用している負極板2枚で挟み込み、正極板の容量支配とした。次に、比重が1.28(20°C)の希硫酸電解液を150ml注液し、電解液が多量に存在する0.9Ah−2Vの鉛蓄電池を作製した。そして、40℃、0.2CAの定電流値で放電終止電圧が1.75Vまで放電をして容量を測定し、正極活物質の充填量から利用率を測定した。
以下に、本発明の実施例について説明する。
1.三塩基性硫酸鉛の作製
乳鉢に従来から使用をしている酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉100質量部を入れ、30質量部の水を加えて30分間混錬をする。その後に、比重が1.26の希硫酸を71質量部を加えて混練し、ろ過し、乾燥し、粉砕して三塩基性硫酸鉛の粉末を得た。
乳鉢に従来から使用をしている酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉100質量部を入れ、30質量部の水を加えて30分間混錬をする。その後に、比重が1.26の希硫酸を71質量部を加えて混練し、ろ過し、乾燥し、粉砕して三塩基性硫酸鉛の粉末を得た。
なお、この方法で作製した三塩基性硫酸鉛のかさ密度を測定したところ、原料の鉛粉に比べて約1/3程度と、かさ密度が低いことがわかった。なお、上述した市販の堺化学製の一塩基性硫酸鉛も三塩基性硫酸鉛と同様に、原料の鉛粉に比べて約1/3程度と、かさ密度が低いものであった。
2.三塩基性硫酸鉛を用いた負極用ペースト状活物質の製造
(参考例1〜7)
第1の参考例である負極用ペースト状活物質の製造方法を、図1を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、三塩基性硫酸鉛と、硫酸バリウムと、有機エキスパンダとしてリグニンスルホン酸塩の粉末とを混合した混合物に、水を加え、混練して負極用のペースト状活物質を製造した。この負極用のペースト状活物質は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がない。
(参考例1〜7)
第1の参考例である負極用ペースト状活物質の製造方法を、図1を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、三塩基性硫酸鉛と、硫酸バリウムと、有機エキスパンダとしてリグニンスルホン酸塩の粉末とを混合した混合物に、水を加え、混練して負極用のペースト状活物質を製造した。この負極用のペースト状活物質は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がない。
ここで、鉛粉と三塩基性硫酸鉛の混合物100質量部に、硫酸バリウムを1質量部と、有機エキスパンダの粉末を0.2質量部を添加した。なお、鉛粉、三塩基性硫酸鉛及び水の組成比の詳細は、後述する表1に示すとうりである。
(比較例1)
比較例1に係わる負極用ペースト状活物質の製造方法を、図3を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、硫酸バリウムと、有機エキスパンダとしてリグニンスルホン酸塩の粉末とを混合した混合物に、水を加え、混練して負極用のペースト状活物質を製造した。比較例1に係わる負極用のペースト状活物質は、水のみで混練しているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がないが、後述するように負極活物質の利用率が低い。
(比較例1)
比較例1に係わる負極用ペースト状活物質の製造方法を、図3を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、硫酸バリウムと、有機エキスパンダとしてリグニンスルホン酸塩の粉末とを混合した混合物に、水を加え、混練して負極用のペースト状活物質を製造した。比較例1に係わる負極用のペースト状活物質は、水のみで混練しているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がないが、後述するように負極活物質の利用率が低い。
ここで、鉛粉100質量部に、硫酸バリウムを1質量部と、有機エキスパンダの粉末を0.2質量部を添加した。なお、鉛粉及び水の組成比の詳細は、後述する表1に示すとうりである。
(比較例2)
従来から使用されている比較例2に係わる負極用ペースト状活物質の製造方法を、図4を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、硫酸バリウムと、有機エキスパンダとしてリグニンスルホン酸塩の粉末とを混合した混合物に、水と希硫酸を加え、混練して負極用のペースト状活物質を製造した。比較例2に係わる負極用のペースト状活物質は、水と希硫酸で混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がある。
(比較例2)
従来から使用されている比較例2に係わる負極用ペースト状活物質の製造方法を、図4を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、硫酸バリウムと、有機エキスパンダとしてリグニンスルホン酸塩の粉末とを混合した混合物に、水と希硫酸を加え、混練して負極用のペースト状活物質を製造した。比較例2に係わる負極用のペースト状活物質は、水と希硫酸で混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がある。
ここで、鉛粉100質量部に、硫酸バリウムを1質量部と、有機エキスパンダの粉末を0.2質量部を添加した。なお、鉛粉、水及び希硫酸の組成比の詳細は、後述する表1に示すとうりである。
表1に負極用のペースト状活物質組成及び負極活物質の利用率を示す。参考例1〜7は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食したり、床面を汚すという問題点がないことに加えて、負極活物質の利用率が高く優れていることがわかる。この理由の詳細は不明であるが、三塩基性硫酸鉛は鉛粉に比べてかさ密度が低く、ペースト状活物質中の水分量を多くすることができ、その結果、負極の活物質層に多量の希硫酸電解液を保持できる空隙が形成されているためと考えられる。また、定量的な評価は難しいものの、本参考例では鉛合金製の集電体にペースト状活物質が充填されやすく、充填後においても活物質層が鉛合金製集電体から脱落しにくくできることも明らかになった。
3.一塩基性硫酸鉛を用いた負極用ペースト状活物質の製造
(参考例8〜14)
三塩基性硫酸鉛に替えて、上述した堺化学製の一塩基性硫酸鉛を用いた負極用ペースト状活物質の製造し、同様の試験をした。すなわち、図1において、三塩基性硫酸鉛に替えて、一塩基性硫酸鉛を用いた。すなわち、酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、一塩基性硫酸鉛と、硫酸バリウムと、有機エキスパンダとしてリグニンスルホン酸塩の粉末とを混合した混合物に、水を加え、混練して負極用のペースト状活物質を製造した。本発明に係わる負極用のペースト状活物質は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がない。
(参考例8〜14)
三塩基性硫酸鉛に替えて、上述した堺化学製の一塩基性硫酸鉛を用いた負極用ペースト状活物質の製造し、同様の試験をした。すなわち、図1において、三塩基性硫酸鉛に替えて、一塩基性硫酸鉛を用いた。すなわち、酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、一塩基性硫酸鉛と、硫酸バリウムと、有機エキスパンダとしてリグニンスルホン酸塩の粉末とを混合した混合物に、水を加え、混練して負極用のペースト状活物質を製造した。本発明に係わる負極用のペースト状活物質は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がない。
ここで、鉛粉と一塩基性硫酸鉛の混合物100質量部に、硫酸バリウムを1質量部と、有機エキスパンダの粉末を0.2質量部を添加した。なお、鉛粉、一塩基性硫酸鉛及び水の組成比の詳細は、後述する表2に示すとうりである。
表2に負極用のペースト状活物質組成及び負極活物質の利用率を示す。本参考例では、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がないことに加えて、表1の比較例1,2に比べて負極活物質の利用率が高く優れていることがわかる。この理由の詳細は不明であるが、一塩基性硫酸鉛は三塩基性硫酸鉛と同様に鉛粉に比べてかさ密度が低く、ペースト状活物質中の水分量を多くすることができ、その結果、負極の活物質層に多量の希硫酸電解液を保持できる空隙が形成されているためと考えられる。また、定量的な評価は難しいものの、本参考例では鉛合金製の集電体にペースト状活物質が充填されやすく、充填後においても活物質層が鉛合金製集電体から脱落しにくくできることも明らかになった。
4.三塩基性硫酸鉛を用いた正極用ペースト状活物質の製造
(参考例15〜21)
第3の参考例である正極用ペースト状活物質の製造方法を、図2を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、三塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して正極用のペースト状活物質を製造した。この正極用のペースト状活物質は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がない。なお、鉛粉、三塩基性硫酸鉛及び水の組成比の詳細は、後述する表3に示すとうりである。
(実施例1〜3)
本発明に係わる正極用ペースト状活物質の製造方法を、図7を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、鉛丹と、三塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して正極用のペースト状活物質を製造した。本発明に係わる正極用のペースト状活物質は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がない。なお、鉛粉、鉛丹、三塩基性硫酸鉛及び水の組成比の詳細は、後述する表3に示すとうりである。
(比較例3)
比較例3に係わる正極用ペースト状活物質の製造方法を、図5を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉に、水を加えて混練して正極用のペースト状活物質を製造した。比較例3に係わる正極用のペースト状活物質は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がないが、後述するように正極活物質の利用率が低い。なお、鉛粉及び水の組成比の詳細は、後述する表3に示すとうりである。
(比較例4)
従来から使用されている比較例4に係わる正極用ペースト状活物質の製造方法を、図6を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉に、水と希硫酸を加えて混練して正極用のペースト状活物質を製造した。比較例4に係わる正極用のペースト状活物質は、水と希硫酸で混練しているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がある。なお、鉛粉、水及び希硫酸の組成比の詳細は、後述する表3に示すとうりである。
(参考例15〜21)
第3の参考例である正極用ペースト状活物質の製造方法を、図2を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、三塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して正極用のペースト状活物質を製造した。この正極用のペースト状活物質は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がない。なお、鉛粉、三塩基性硫酸鉛及び水の組成比の詳細は、後述する表3に示すとうりである。
(実施例1〜3)
本発明に係わる正極用ペースト状活物質の製造方法を、図7を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉と、鉛丹と、三塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して正極用のペースト状活物質を製造した。本発明に係わる正極用のペースト状活物質は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がない。なお、鉛粉、鉛丹、三塩基性硫酸鉛及び水の組成比の詳細は、後述する表3に示すとうりである。
(比較例3)
比較例3に係わる正極用ペースト状活物質の製造方法を、図5を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉に、水を加えて混練して正極用のペースト状活物質を製造した。比較例3に係わる正極用のペースト状活物質は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がないが、後述するように正極活物質の利用率が低い。なお、鉛粉及び水の組成比の詳細は、後述する表3に示すとうりである。
(比較例4)
従来から使用されている比較例4に係わる正極用ペースト状活物質の製造方法を、図6を用いて説明する。酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉に、水と希硫酸を加えて混練して正極用のペースト状活物質を製造した。比較例4に係わる正極用のペースト状活物質は、水と希硫酸で混練しているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がある。なお、鉛粉、水及び希硫酸の組成比の詳細は、後述する表3に示すとうりである。
表3に正極用のペースト状活物質組成及び正極活物質の利用率を示す。参考例15〜21及び本発明を用いた実施例1〜3は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がないことに加えて、正極活物質の利用率が高く優れていることがわかる。この理由の詳細は不明であるが、三塩基性硫酸鉛は鉛粉に比べてかさ密度が低く、正極の活物質層に多量の希硫酸電解液を保持できる空隙が形成されているためと考えられる。また、定量的な評価は難しいものの、本発明を用いると鉛合金製の集電体にペースト状活物質が充填されやすく、充填後においても活物質層が鉛合金製集電体から脱落しにくくできることも明らかになった。
ここで、鉛丹を添加した実施例1〜3は、正極活物質の利用率がさらに高く、より優れていることがわかる。なお、三塩基性硫酸鉛は導電性を有さない活物質であるために、正極に使用すると化成性が悪いとされている。そして、鉛丹を添加することによって化成性能が向上し、その結果、正極活物質の利用率が高くなっているためと考えられる。
上記した参考例20と比較例4の熟成・乾燥後の未化板の正極板の活物質粒子を、図中に示されているように5000倍の倍率で、SEM観察をした結果をそれぞれ図8、図9に示す。希硫酸を使って混錬した活物質粒子には(図9、比較例4)、三塩基性硫酸鉛の粒子成長が確認され、柱状の結晶粒子が多く点在している。一方、水のみで混錬した活物質粒子には(図8、参考例20)、柱状の結晶は見られなかった。三塩基性硫酸鉛に替えて一塩基性硫酸鉛を仕様した場合についてもほぼ同様の活物質粒子形態であった。
5.一塩基性硫酸鉛を用いた正極用ペースト状活物質の製造
(参考例22〜28、実施例4〜6)
三塩基性硫酸鉛に替えて、一塩基性硫酸鉛を用いた正極用ペースト状活物質の製造し、参考例15〜21及び実施例1〜3と同様の試験をした。すなわち、図7の三塩基性硫酸鉛に替えて、一塩基性硫酸鉛を用いた。なお、鉛粉、鉛丹、一塩基性硫酸鉛及び水の組成比の詳細は、後述する表4に示すとうりである。
(参考例22〜28、実施例4〜6)
三塩基性硫酸鉛に替えて、一塩基性硫酸鉛を用いた正極用ペースト状活物質の製造し、参考例15〜21及び実施例1〜3と同様の試験をした。すなわち、図7の三塩基性硫酸鉛に替えて、一塩基性硫酸鉛を用いた。なお、鉛粉、鉛丹、一塩基性硫酸鉛及び水の組成比の詳細は、後述する表4に示すとうりである。
表4に正極用のペースト状活物質組成及び正極活物質の利用率を示す。参考例22〜28及び本発明を用いた実施例4〜6は、水のみで混練をしているために、製造装置が腐食をしたり、床面を汚すという問題点がないことに加えて、表3の比較例3,4に比べて正極活物質の利用率が高く優れていることがわかる。この理由の詳細は不明であるが、一塩基性硫酸鉛は鉛粉に比べてかさ密度が低く、正極の活物質層に多量の希硫酸電解液を保持できる空隙が形成されているためと考えられる。また、定量的な評価は難しいものの、本発明を用いると鉛合金製の集電体にペースト状活物質が充填されやすく、充填後においても活物質層が鉛合金製集電体から脱落しにくくできることも明らかになった。
ここで、鉛丹を添加した実施例4〜6は、正極活物質の利用率がさらに高く、より優れていることがわかる。なお、一塩基性硫酸鉛は導電性を有さない活物質であるために、正極に使用をすると化成性が悪いとされている。そして、鉛丹を添加することによって化成性能が向上し、その結果、正極活物質の利用率が高くなっているためと考えられる。
本発明は、鉛合金製の集電体格子にペースト状活物質を充填して電極板を作製して使用するペースト式電極板を用いた鉛蓄電池の製造に使用をすることができる。
Claims (4)
- 正極用ペースト状活物質の製造方法において、酸化鉛を主成分とする鉛粉と、鉛丹と、三塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して製造することを特徴とする正極用ペースト状活物質の製造方法。
- 正極用ペースト状活物質の製造方法において、酸化鉛を主成分とする鉛粉と、鉛丹と、一塩基性硫酸鉛とを混合した混合物に、水を加えて混練して製造することを特徴とする正極用ペースト状活物質の製造方法。
- 請求項1又は2記載の方法により製造したペースト状活物質を用いた鉛蓄電池用極板。
- 請求項3記載の極板を用いた鉛蓄電池。
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