JP2010018856A - 塗装後耐食性に優れた高強度自動車部材およびホットプレス用めっき鋼板 - Google Patents

塗装後耐食性に優れた高強度自動車部材およびホットプレス用めっき鋼板 Download PDF

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【課題】塗装後耐食性が従来の防錆鋼板であるGAと同等となり、かつ1500MPa急の高強度を有する高強度自動車部品およびそれに用いるホットプレス用めっき鋼板を提供する。
【解決手段】鋼成分として質量%でC:0.1〜0.4%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.5〜3%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、Cr:0.01〜1%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼板の最表面に、FeAl、FeAlを主体とする相を10μm以上有し、その底部にAl濃度が40%以下の相を有することを特徴とする、塗装後耐食性に優れた高強度自動車部材。該FeAl、FeAlを主体とする相中に40%以下の相が分散していてもよい。
【選択図】図3

Description

本発明は、電着塗装後の耐食性に優れた高強度自動車部材およびそれに用いるホットプレス用めっき鋼板に関する。
近年、自動車用鋼板の用途(例えば、自動車のピラー、ドアインパクトビーム、バンパービーム等)などにおいて、高強度と高成形性を両立する鋼板が望まれており、これに対応するものの1つとして、残留オーステナイトのマルテンサイト変態を利用したTRIP(Transformation Induced Plasticity)鋼がある。このTRIP鋼により、成形性の優れた1000MPa級程度の強度を有する高強度鋼板を製造することは可能であるが、さらに高強度、例えば1500MPa以上といった超高強度鋼で成形性を確保することは困難である。
このような状況で、高強度及び高成形性を両立するものとして最近注目を浴びているのが、ホットプレス(熱間プレス、ホットスタンプ、ダイクエンチ、プレスクエンチ等とも呼称される。)である。このホットプレスは、鋼板を800℃以上のオーステナイト域で加熱した後に熱間で成形することにより高強度鋼板の成形性を向上させ、成形後の冷却により焼きを入れて所望の材質を得るというものである。
ホットプレスは、超高強度の部材を成形する方法として有望であるが、通常は大気中で鋼板を加熱する工程を有しており、この際、鋼板表面に酸化物(スケール)が生成するため、スケールを除去する工程が必要であった。ところが、このような後工程には、スケールの除去能や環境負荷等の観点からの対応策の必要性等の問題があった。
これを改善する技術として、ホットプレス用の鋼板としてAlめっき鋼板を使用することにより、加熱時のスケールの生成を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
特開平9−202953号公報 特開2004−2932号公報 特開2004−244704号公報
上記特許文献2にはスポット溶接性を向上させる技術が、また特許文献3には塗装後耐食性を向上させる技術がそれぞれ開示されている。ここにはAlを40%以上含有する表面組成とすることで塗装後耐食性が向上する旨が記載されている。しかしながら、ここで開示されているのは組成のみに関する情報であり、その量に関しては何ら記載されていない。また加熱条件と量の関係も何ら記載されていない。
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、ホットプレス工法を用いて塗装後耐食性に優れた高強度自動車部品およびそれに用いるホットプレス用めっき鋼板を効率よく得ることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、塗装後耐食性への影響因子を明確化させ、更に塗装後耐食性を向上さしめる製造方法を案出することで本発明を完成させた。
すなわち、塗装後耐食性を担保するのはAlを約50%含有する、FeAlあるいはFeAlであるため、この相を最表面に有する必要がある。これらの相の表面に0.5μm以下の酸化皮膜も生成しているが、ここでは酸化皮膜は含めずに実際に腐食に寄与する相を考慮することとする。これらの相を10μm以上含有することで通常防錆鋼板として使用されるGA(合金化溶融亜鉛めっき鋼板)と同等以上の塗装後耐食性を得ることができる。加熱条件により、これらの相が単独の相として存在する場合と、その内部に40%以下のAl濃度の相を包含する場合とがありうる。
本発明の要旨とするところは、特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)鋼成分として質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.5〜3%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、Cr:0.01〜1%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼板の最表面に、FeAl、FeAlを主体とする相を10μm以上有し、その底部にAl濃度が40%以下の相を有することを特徴とする、塗装後耐食性に優れた高強度自動車部材。
(2)鋼成分として質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.5〜3%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、Cr:0.01〜1%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼板の最表面に、FeAl、FeAlを主体とし、内部にAl濃度が40%以下の相が分散した相をFeAl、FeAl厚みとして10μm相当厚み以上有し、その底部にAl濃度が40%以下の相を有することを特徴とする、塗装後耐食性に優れた高強度自動車部材。
(3)鋼成分として質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.5〜3%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、Cr:0.01〜1%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、表面粗度をRaで0.3〜1.2μmに調整した鋼板の最表面に、Si:3〜15質量%を含有するAlめっきを施すことを特徴とする、請求項1または2に記載の高強度自動車部材を製造に用いるホットプレス用めっき鋼板。
本発明によれば、ホットプレス工法により作成した高強度部材の塗装後耐食性をGA同等以上とすることができ、防錆部品として使用することが可能となるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明者らは、塗装後耐食性に影響する因子を種々検討し、表面にFeAlあるいはFeAlを10μm以上有することで塗装後耐食性を向上さしめたものである。そこでAlめっき鋼板を加熱合金化した後のめっき層構造について図1を参照しながら説明する。Fe−Al合金層は、一般に5層構造となることが多い。これら5層を図1(a)では、めっき鋼板表面から順に、1層〜5層で表している。第1層、第3層の層中のAl濃度は約50質量%、第2層中のAl濃度は約30質量%、第4層、第5層中のAl濃度はそれぞれ15〜30質量%、1〜15質量%の幅を持つ組成となる。残部はFe及びSiである。第4層と第5層の界面付近にボイドの生成が観察されることもある。このような合金層の耐食性はAl含有量にほぼ依存し、Al含有量が高いほど耐食性に優れる。従って、第1層、第3層が最も耐食性に優れている。なお、第5層の下部の組織は鋼素地であり、マルテンサイトを主体とする焼入組織となっている。
図2に、Fe−Alの二元系状態図を示す。この図2を参照すれば、第1層、第3層はFeAl、FeAlを主成分とし、第4層、第5層はそれぞれFeAl、αFeに対応するものと判断できる。また、第2層はFe−Al二元系状態図から説明できないSiを含有する層でその詳細な組成は明らかではないが、本発明者らは、FeAlとFe−Al−Si化合物が微細に混じりあったようなものであると推定している。
一方、図1(b)は(a)とは異なり、明確な5層とはなっていない。Alめっき鋼板を昇温する際の昇温速度により合金化後の組織が変化することが分かっており、昇温速度が大きいと(b)のような組織となりやすくなる。また付着量にも依存し、Alめっき量が多いほど(b)のような組織となりやすい。このときには、(a)の第2層に該当する部位が分散していることがEPMAによる組成分析から分かっている。図(b)には(a)と対比させるために、第1層、第4層、第5層として表示している。
本発明者らはこれらの組織を有する試料の腐食解析より、以下の知見を得た。すなわち、図1(a)の第1層、第3層に該当する部位はよりAl濃度が高く、塩害環境下においてより腐食を受けやすい部位となり、まず第1層が腐食する。ところが5層となっているときには、第1層の底部の第2層で腐食が停止し、腐食は第1層を水平方向に進行する。第1層が腐食すると、その表面に付着している塗膜は密着力を失い、腐食生成物による堆積膨張もあり、塗膜膨れとして目視される。
ところが合金層が図1(b)のような構造を有する時には、腐食は第1層に該当する約50%Alの部位を進行する。このときには、腐食が深さ方向に進行しやすい分だけ、水平方向には進み難くなる。つまり図1(b)のような構造を有するときには塗膜膨れは起こり難くなる。これは図1(a)において第3層は防食に殆ど寄与しなかったが、図1(b)では防食に寄与するようになったためとも言える。
すなわち、図1(a)のような形態の時には、塗装後耐食性は第1層の厚みでほぼ決定される。これに対して図1(b)のような形態を有する時には、塗装後耐食性は第2層に相当する分散相を有する第1層の厚みで決まる。より正確には、第1層の厚みにFeAl、FeAlに該当する部位の分率を乗じた正味の約50%Alの相当厚みで決定される。
以下、上述したような被覆層を有する急速加熱ホットプレス用めっき鋼板の製造に用いられる本発明に係るAlめっき鋼板の構成について詳細に説明する。
(鋼板について)
ホットプレスが金型によるプレスと焼入を同時に行うものであることから、本発明に係る急速加熱ホットプレス用めっき鋼板としては、焼入されやすい成分である必要がある。具体的には、鋼板中の鋼成分として、質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.5〜3%、P:0.005〜0.05%、S:0.002〜0.02%、Al:0.005〜0.1%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、Cr:0.01〜1%であることが好ましい。C量については、焼入性の向上という観点から0.1%以上であることが好ましく、また、C量が多過ぎると鋼板の靭性の低下が著しくなるため、0.4質量%以下であることが好ましい。また、Siを0.6%超添加するとAlめっき性が低下し、0.01%未満とすると疲労特性が劣るため好ましくない。また、Mnは焼入性に寄与する元素で0.5%以上の添加が有効であるが、焼入後の靭性の低下という観点からは3%を超えることは好ましくない。また、Tiはアルミめっき後の耐熱性を向上させる元素で0.01%以上の添加が有効であるが、過剰に添加するとCやNと反応して鋼板強度を低下させてしまうため、0.1%を超えることは好ましくない。また、Bは焼入性に寄与する元素で0.0001%以上の添加が有効であるが、熱間での割れの懸念があるため、0.01%を超えることは好ましくない。Crは強化元素であるとともに焼入れ性の向上に有効である。しかし、0.01%未満ではこれらの効果が得られ難い。逆に、1%超含有すると製造時および熱延時の製造性に悪影響を及ぼすため好ましくない。Pは過剰に添加すると鋼板の脆性を引き起こすため、0.05%以下が好ましい。SはMnSとして鋼中の介在物になり、MnSが多いと破壊の起点となり、延性、靭性を阻害するため0.05%以下が好ましい。Alはめっき性阻害元素であるため、0.1%以下が好ましい。また、鋼板中の成分として、他に、Mo、Nb、Ni、Cu、V、Sn、Sb等が含有されうる。通常は、質量%で、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下である。
(Alめっきについて)
本発明の高強度自動車部品をの製造に係るホットプレス用めっき鋼板は、鋼板表面にAlめっきが施すことにより製造されるが、本発明における鋼板へのAlめっきの方法については特に限定するものでなく、溶融めっき法を初めとして電気めっき法、真空蒸着法、クラッド法等が可能である。現在工業的に最も普及しているのは溶融めっき法であり、通常、めっき浴として、Alに3質量%〜15質量%のSiを含有するものを使用することができる。SiはAlめっき時の合金層成長を抑制する働きがある。ホットプレス用途に限れば合金層成長を抑制する必然性は小さいが、溶融めっき法においては、1つの浴で種々の用途の製品を製造するため、Alめっきの加工性を要求される用途においては合金層成長を抑制する必要がある。Si量が3質量%未満においては、合金層が成長するため、Alめっき鋼板としての加工性が低下する。一方、Si量が多すぎるとFeAl、FeAlが残存し難くなる。これは、FeAl、FeAlともにSiを含有しない化合物で、Siは約30%Alの相中に濃化しており、全体のSi量が増大した結果、Siの農家したは約30%Al相が成長しやすくなる現象と解釈できる。
これに不可避的不純物のFe等が混入している。これ以外の添加元素として、Mn、Cr、Mg、Ti、Zn、Sb、Sn、Cu、Ni、Co、In、Bi、ミッシュメタル等があり得るが、めっき層がAlを主体とする限り、適用可能である。Zn、Mgの添加は赤錆を発生し難くするという意味で有効であるが、蒸気圧の高いこれら元素の過剰な添加はZn、Mgのヒューム発生、表面へのZn、Mg起因の粉体状物質の生成等があり、Zn:60質量%以上、Mg:10質量%以上の添加は好ましくない。
また、本発明において、Alめっきのめっき前処理、後処理等については特に限定するものではない。めっき前処理としてNi、Cu、Cr、Feプレめっき等もありうるが、これも適用可能である。また、めっき後処理としては一次防錆、潤滑性を目的としてクロメート処理、樹脂被覆処理等を施してもよい。ただし、クロメート処理については、近年の6価クロム規制を考慮すると、電解クロメート等の3価の処理皮膜が好ましい。その他、無機系のクロメート以外の後処理も適用可能である。潤滑性を付与するため、アルミナ、シリカ、MoS等を用いて予め表面処理することも可能である。
本発明に係る高強度自動車部材は、表面にAl−Fe合金層を有する。このときAl−Fe合金層全体の厚みは10〜45μmとすることが望ましい。表面にFeAl、FeAlを10μm以上有するため、全体厚みは当然10μm以上となる。厚みが大きいほど耐食性上は優位に働く傾向にあるが、耐食性に寄与するFeAl、FeAl以外の相の厚みが増えても耐食性上の効果は無い。一方、Alめっき層の厚みとFe−Al合金層の厚みの和が大きいほど、加熱工程により生成された被覆層が加工時に欠落し易くなるため、被覆層の厚みは45μm以下であることが好ましい。
[本発明に係る高強度自動車部材の製造方法]
なお、上述したようにして得られたAlめっき鋼板は、その後のホットプレス工程において加熱される。加熱方式については特に限定せず、通常の炉加熱や輻射熱を用いる近赤外線方式の加熱方式を使用することも可能であるが、昇温速度50℃/秒以上の急速加熱を行うことが可能な、通電加熱や高周波誘導加熱等の電気を用いる加熱方式を使用することも可能である。昇温速度の上限は特に規定しないが、上記の通電加熱や高周波誘導加熱等の加熱方式を使用する場合には、その装置の電源容量に依存し、経済的には200℃/秒程度が上限となる。
また、この加熱工程において、最高到達板温を850℃以上とすることが好ましい。最高到達板温をこの温度とするのは、鋼板をオーステナイト域まで加熱するとともに、表面まで十分に合金化を進行させるためである。
保定時間が長い場合、あるいは到達板温が高い場合には、その分めっきと鋼板の拡散が進行する。このときの組織変化の模式図を図3に示す。昇温速度により、5層となる場合(図1の(a)に相当)と分散となる場合(図1の(b)に相当)がある。いずれの場合でも拡散が進行すると約30%Alの組成を有する部位の分率が増大する。これは換言するとFe濃度の高い相が成長することを意味し、その分めっき中のFe濃度が増大している。そのときには、耐食性を担保する50%Al(FeAl、FeAl)が減少するため耐食性は低下する傾向を示す。
つまり塗装後耐食性を確保するためには、所定量のFeAl、FeAl厚みが必要である。できるだけこれらの相の厚みを確保しようとすると、加熱された時にこれらの相が約30%Alに変化しないことが望ましい。これは言葉を変えるとFeとAlの拡散速度が小さい方が望ましいことを意味する。FeとAlの拡散速度は、鋼板、めっきの成分、鋼板の組織等に依存するが、鋼板、めっき成分は他の制約条件から定められるため、本発明においては鋼板の表面形状でこれを制御するものとする。すなわち表面粗度が大きいと反応表面積が大きいために見かけの拡散速度が大きくなる効果を持つ。従って本発明においては、鋼板表面積をできるだけ小さくすることで耐食性に寄与する相を極力残そうとするものである。具体的にはRaとして0.3〜1.2μmにすることで、同じ熱履歴を付与しても所定量のFeAl、FeAl厚みが残存しやすくなる。0.3μm未満とすると、圧延時の焼付きが起こりやすくなるため好ましくなく、1.2μm超では、拡散速度を小さくする効果が得られ難くなり、好ましくない。
ホットプレス後の鋼板は、溶接、化成処理、電着塗装等を経て最終製品となる。通常は、カチオン電着塗装が用いられることが多く、その膜厚は1〜30μm程度である。電着塗装の後に中塗り、上塗り等の塗装が施されることもある。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
通常の熱延工程及び冷延工程を経た、表1に示すような鋼成分の冷延鋼板(板厚1.2mm)を材料として、溶融Alめっきを行った。このとき冷延のロール粗度を調整することで、鋼板表面粗度を調整した。溶融Alめっきは無酸化炉−還元炉タイプのラインを使用し、めっき後ガスワイピング法でめっき付着量を片面20〜100g/mまで調節し、その後冷却した。この際のめっき浴組成としてはAl−9%Si−2%Feであった。浴中のFeは、浴中のめっき機器やストリップから供給される不可避のものである。めっき外観は不めっき等がなく良好であった。
こうして作成した試料の特性を評価した。ホットプレス相当条件の加熱として、大気中で200×200mm大の試験片を900℃以上に加熱し、約700℃の温度まで大気中で冷却して、その後、厚さ50mmの金型間で圧着することで急冷した。このときの金型間での冷却速度は約150℃/秒であった。なお、加熱速度の影響を見るために加熱方法としては、通電加熱、近赤外線加熱、電気炉輻射加熱という3種類の方法を使用した。このときの加熱速度は、通電加熱で約60℃/秒、近赤外線加熱で約25℃/秒、電気炉輻射加熱で約5℃/秒であった。
Figure 2010018856
これらの試料の塗装後耐食性を評価した。また、加熱した後の鋼板について、垂れによるめっきの厚みの不均一性を評価するため、加熱前後の板厚変化を測定した。
塗装後耐食性の評価に当たっては、日本パーカライジング(株)製化成処理液PB−SX35Tで化成処理を施し、その後、日本ペイント(株)製カチオン電着塗料パワーニクス110を約20μm厚みで塗装した。その後、カッターで塗膜にクロスカットを入れ、自動車技術会で定めた複合腐食試験(JASO−M609)を180サイクル(60日)行ない、クロスカットからの膨れ幅(片側最大膨れ幅)を測定した。
表2に、加熱条件と組織並びに特性評価結果をまとめた。近赤外線加熱や通電加熱により昇温速度を上昇させると、分散型の組織となる。また炉加熱であっても、付着量が多いと分散型の組織となった。分散型の組織となったときには第1層に該当する約50%Alの厚みと分率を断面写真から読み取り、その乗を相当厚みとした。5層型の組織のときには、第1層の厚みを同じく断面写真から読み取った。めっき付着量、到達板温を変動させて塗装後耐食性を評価した結果を比較材のGAの結果と共に示している。GAを凌駕する塗装後耐食性を示すためには、約50%Alの厚みとして、5層型、分散型を問わず約10μmが必要であった。付着量が少ない場合、到達板温が高い場合には約50%Alの量を確保できず、耐食性は低下していた。また冷延鋼板の粗度を大きくすると、特に耐食性確保の上限温度付近において影響が認められ、粗度を低下させることで、ホットプレスの製造可能範囲が拡大していた。
Figure 2010018856
(実施例2)
第3表に示した様々な鋼成分を持つ冷延鋼板(板厚1.2mm)に実施例1と同じ要領で溶融Alめっきを施した。めっき付着量は片面60g/mとした。
次に通電加熱により600〜890℃間の昇温速度60℃/秒,到達温度900℃で加熱し、その後金型焼入した。焼入後の硬度(ビッカース硬度、荷重10kg)を測定した結果も第3表に示しているが,鋼中C量が低いと焼入後の硬度が低下するため,C量として0.05質量%以上あることが好ましいことがわかる。なおこのときには、全ての試験片で垂れは起こっていなかった。
Figure 2010018856
(実施例3)
第1表に示した鋼成分を有する冷延鋼板(板厚1.4m、Ra0.67μm)に溶融Alめっきを施した。このときの浴組成はAl−18%−2%Feで、Feは不可避的不純物であった。付着量を80g/m2とし、この素材をホットプレス相当条件で再度加熱し、大気炉中で900℃まで到達させた後、1分保定し、金型内で急冷し、実施例1と同じ条件で評価した。その結果、5層組織で、約50%Alの厚みは8μmであった。塗膜膨れ幅は8mmとなり塗装後耐食性不良であった。実施例1の番号4との対比より、Siが悪影響を及ぼしていると判断される。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
Alめっき鋼板を加熱合金化した後の断面組織の構造を示す光学顕微鏡写真である。 Fe−Alの二元系状態図を示す説明図である。 本発明に係る被覆層の断面組織の構造の模式図である。

Claims (3)

  1. 鋼成分として質量%で、
    C:0.1〜0.4%、
    Si:0.01〜0.6%、
    Mn:0.5〜3%、
    P:0.005〜0.05%、
    S:0.002〜0.02%、
    Al:0.005〜0.1%、
    Ti:0.01〜0.1%、
    B:0.0001〜0.01%、
    Cr:0.01〜1%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼板の最表面に、FeAl、FeAlを主体とする相を10μm以上有し、その底部にAl濃度が40%以下の相を有することを特徴とする、塗装後耐食性に優れた高強度自動車部材。
  2. 鋼成分として質量%で、
    C:0.1〜0.4%、
    Si:0.01〜0.6%、
    Mn:0.5〜3%、
    P:0.005〜0.05%、
    S:0.002〜0.02%、
    Al:0.005〜0.1%、
    Ti:0.01〜0.1%、
    B:0.0001〜0.01%、
    Cr:0.01〜1%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼板の最表面に、FeAl、FeAlを主体とし、内部にAl濃度が40%以下の相が分散した相をFeAl、FeAl厚みとして10μm相当厚み以上有し、その底部にAl濃度が40%以下の相を有することを特徴とする、塗装後耐食性に優れた高強度自動車部材。
  3. 鋼成分として質量%で、
    C:0.1〜0.4%、
    Si:0.01〜0.6%、
    Mn:0.5〜3%、
    P:0.005〜0.05%、
    S:0.002〜0.02%、
    Al:0.005〜0.1%、
    Ti:0.01〜0.1%、
    B:0.0001〜0.01%、
    Cr:0.01〜1%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、表面粗度をRaで0.3〜1.2μmに調整した鋼板の最表面に、Si:3〜15質量%を含有するAlめっきを施すことを特徴とする、請求項1または2に記載の高強度自動車部材を製造に用いるホットプレス用めっき鋼板。
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