JP2010018821A - 蒸気機関用鋼製部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明は、このような実情に鑑み、フェライト系耐熱鋼による650℃を越える高温でも使用可能な蒸気機関用鋼製部品を提供することを課題とする。
【解決手段】
発明1の蒸気機関用鋼製部品は、その鋼が、重量%で、C:1×10−3〜1×10−1%、Cr:13〜30%、N:1×10−3〜1×10−1%、Ni>10(C+N)を含有し、フェライト相が70体積%以上を占めると共に、金属間化合物や炭化物および窒化物の1種以上の析出によって強化されている高クロムフェライト耐熱鋼からなることを特徴とする。
【選択図】なし
本発明は、このような実情に鑑み、フェライト系耐熱鋼による650℃を越える高温でも使用可能な蒸気機関用鋼製部品を提供することを課題とする。
【解決手段】
発明1の蒸気機関用鋼製部品は、その鋼が、重量%で、C:1×10−3〜1×10−1%、Cr:13〜30%、N:1×10−3〜1×10−1%、Ni>10(C+N)を含有し、フェライト相が70体積%以上を占めると共に、金属間化合物や炭化物および窒化物の1種以上の析出によって強化されている高クロムフェライト耐熱鋼からなることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、蒸気機関用鋼製部品に関し、伝熱鋼管、および管寄せ等のボイラー用高温部材、主蒸気管および再熱蒸気管等の蒸気配管、ローターやケーシング、高温ボルトや動翼および静翼等のタービン用高温部材とその附属部品等、650℃を越える高温で使用されるものに関する。
文献1に示すように、650℃を越える高温で使用される蒸気機関用鋼製部品は、従来のフェライト系鋼では、クリープ特性が不十分であるから、これを越えるものとして、オーステナイト系鋼あるいはNi基等の超合金を用いる必要が有るとされていた。
しかし、これらの材料は、フェライト系鋼に比べ、製造工程が極めて複雑であり、生産性が悪いものであった。また、これらの材料は、フェライト系鋼に比べて熱伝導度が小さく、熱膨張係数が大きいため、高温プラントの起動、停止に伴う温度変動により、大きな熱応力が発生し、耐熱疲労特性に劣るという欠点を有する。さらに、これらの材料はフェライト系鋼に比べて高価であるため、従来のフェライト系鋼よりも優れた高温強度を有するフェライト系鋼の開発が望まれていた。
〔文献1〕
岩崎淳他,A-USCボイラ材料の開発,火力原子力発電,58(2007), 649.
しかし、これらの材料は、フェライト系鋼に比べ、製造工程が極めて複雑であり、生産性が悪いものであった。また、これらの材料は、フェライト系鋼に比べて熱伝導度が小さく、熱膨張係数が大きいため、高温プラントの起動、停止に伴う温度変動により、大きな熱応力が発生し、耐熱疲労特性に劣るという欠点を有する。さらに、これらの材料はフェライト系鋼に比べて高価であるため、従来のフェライト系鋼よりも優れた高温強度を有するフェライト系鋼の開発が望まれていた。
〔文献1〕
岩崎淳他,A-USCボイラ材料の開発,火力原子力発電,58(2007), 649.
本発明は、このような実情に鑑み、フェライト系耐熱鋼による650℃を越える高温でも使用可能な蒸気機関用鋼製部品を提供することを課題とする。
発明1の蒸気機関用鋼製部品は、その鋼が、重量%で、C:1×10−3〜1×10−1%、Cr:13〜30%、N:1×10−3〜1×10−1%、Ni>10(C+N)を含有し、フェライト相が70体積%以上を占めると共に、金属間化合物や炭化物および窒化物の1種以上の析出によって強化されている高クロムフェライト耐熱鋼からなることを特徴とする。
発明2は、発明1の蒸気機関用鋼製部品において、前記高クロムフェライト耐熱鋼が、さらに、Mo:5×10−1〜5%、W:5×10−1〜1×10%、V:5×10−2〜4×10−1%、Nb:1×10−2〜1×10−1%、Co:1×10−1〜1×10%、N:1×10−3〜1×10−1%、Ni:1×10−1〜2.5%かつCあるいはNの添加量が1×10−2重量%以上である場合にNi>10(C+N)、B:2×10−3〜4×10−3%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする蒸気機関用鋼製部品。
発明3は、発明2の蒸気機関用鋼製部品において、前記高クロムフェライト耐熱鋼が、さらにMoおよびWを5×10−1重量%以上含有し、Mo+0.5W≧3.0重量%以上含有することを特徴とする。
発明4は、発明1〜3のいずれかの蒸気機関用鋼製部品の製造方法であって、1×103℃以上で焼きなまし熱処理をした後、焼きなまし温度から4×102℃以下の温度まで1×102℃/min(毎分1×102℃)以上の速度で冷却することを特徴とする。
この出願の発明者は、ボイラー、火力発電装置、原子力発電装置、化学工業装置等々の高温構造部材として好適なクリープ強度、耐熱性、耐酸化性および靭性を有するフェライト耐熱鋼を得るために、化学組成や成形後の冷却速度を種々変化させ、各種フェライト耐熱鋼を製造した。製造したフェライト耐熱鋼の特性を測定した結果、フェライト耐熱鋼のクリープ強度、耐熱性、耐酸化性および靭性の向上にとって、次の(イ)(ロ)(ハ)の点が重要であるとの知見を見出したのである。
(イ)Crを13重量%以上含有させることで耐酸化性を向上させるとともに、MoおよびWを0.5重量%以上含有させることが、クリープ強度の増大に特に効果的である。しかも、MoとWの配合比をMo+0.5W≧3.0重量%の範囲にすることによって、その効果はさらに増大する。これは、MoおよびWを0.5重量%以上含有することによって、クリープ強度に必要な金属間化合物や炭化物および窒化物の1種以上の析出量が確保されるためであると考えられる。
(ロ)靭性を向上させるためにはNi、C、Nを適量含有させることが有効であり、それらの元素は、CあるいはNの添加量が0.01重量%以上の場合には、Ni>10(C+N)とすることが特に好ましい。
(ハ)靭性を向上させるためには、1000℃以上で焼きなまし熱処理を行った後の冷却は、空冷以上の冷却速度、具体的には、焼きなまし温度から400℃以下の温度まで、100℃/min(毎分100℃)以上の冷却速度にすることが好ましい。空冷以上の冷却速度にすることによってフェライト相が70体積%以上のフェライト耐熱鋼を効果的に製造し、靭性を飛躍的に向上させることが可能になる。
(イ)Crを13重量%以上含有させることで耐酸化性を向上させるとともに、MoおよびWを0.5重量%以上含有させることが、クリープ強度の増大に特に効果的である。しかも、MoとWの配合比をMo+0.5W≧3.0重量%の範囲にすることによって、その効果はさらに増大する。これは、MoおよびWを0.5重量%以上含有することによって、クリープ強度に必要な金属間化合物や炭化物および窒化物の1種以上の析出量が確保されるためであると考えられる。
(ロ)靭性を向上させるためにはNi、C、Nを適量含有させることが有効であり、それらの元素は、CあるいはNの添加量が0.01重量%以上の場合には、Ni>10(C+N)とすることが特に好ましい。
(ハ)靭性を向上させるためには、1000℃以上で焼きなまし熱処理を行った後の冷却は、空冷以上の冷却速度、具体的には、焼きなまし温度から400℃以下の温度まで、100℃/min(毎分100℃)以上の冷却速度にすることが好ましい。空冷以上の冷却速度にすることによってフェライト相が70体積%以上のフェライト耐熱鋼を効果的に製造し、靭性を飛躍的に向上させることが可能になる。
本発明の部品を構成する鋼は、以下のような各成分にて調整された高クロムフェライト耐熱鋼である。(以下%は、別途断りがない限り、重量%で示す)
C:1×10−3〜1×10−1%
クリープ強度向上のために、1×10−3%以上の添加が必要である。また、過剰添加は靭性を低下させるため、上限は1×10−1%とするとともに、1×10−2%以上添加する場合は、Ni>10(C+N)を満足する必要がある。
Cr:13〜30%
Crは13%以上であることが欠かせないが、実際的にはフェライト相を70体積%以上確保するとともに、耐酸化性向上のために13.5%以上が好ましい。また、30%以上では靭性の低下が著しいため、上限を30%とする。
N:1×10−3〜1×10−1%
クリープ強度向上のために、1×10−3%以上の添加が必要である。また、過剰添加は靭性を低下させるため、上限は1×10−1%とするとともに、1×10−2%以上添加する場合は、Ni>10(C+N)を満足する必要がある。
Ni:1×10−1〜2.5%
靭性向上のために1×10−1%以上の添加が好ましい。とくに、CあるいはNの添加量が1×10−2重量%以上である場合は、靭性確保のため、Ni>10(C+N)の添加が必要である。また、過剰添加はフェライト相の体積率を低下させるため、上限は2.5%とする。表2から明らかなように、Niの添加量がNi>10(C+N)未満の比較鋼6〜9は、冷却速度の違いによらずシャルピー衝撃値は小さいが、本発明鋼の水冷材は高いシャルピー衝撃値を示す。
フェライト相が70体積%以上を占める
焼き戻しマルテンサイト組織は、高温で不安定である。これに対してフェライト相は高温での組織安定性が高い。そのため、クリープ強度向上のためにフェライト相が70体積%以上含有されていることが望ましい。表2から明らかなように、本発明鋼3〜5を炉冷するとフェライト相の体積率は70%未満となるが、水冷によりフェライト相の体積率は70%以上となり、図1から明らかなように、本発明鋼3〜5の水冷材は炉冷材よりも約10倍の長いクリープ破断時間を示す。また図2から明らかなように、クロム量が13重量%未満で、フェライト相の体積率が70%未満の比較鋼10〜16に対して、本発明鋼の方が長いクリープ破断時間を示す。
金属間化合物や炭化物および窒化物の1種以上の析出によって強化されている。
クリープ強度を高めるためには、金属間化合物や炭化物および窒化物の1種以上を析出させることが有効である。図3から明らかなように、本発明鋼1はW添加量が多く、金属間化合物の析出量が多いため、W添加量が少ない比較鋼6よりも約100倍の長いクリープ破断時間を示す。
C:1×10−3〜1×10−1%
クリープ強度向上のために、1×10−3%以上の添加が必要である。また、過剰添加は靭性を低下させるため、上限は1×10−1%とするとともに、1×10−2%以上添加する場合は、Ni>10(C+N)を満足する必要がある。
Cr:13〜30%
Crは13%以上であることが欠かせないが、実際的にはフェライト相を70体積%以上確保するとともに、耐酸化性向上のために13.5%以上が好ましい。また、30%以上では靭性の低下が著しいため、上限を30%とする。
N:1×10−3〜1×10−1%
クリープ強度向上のために、1×10−3%以上の添加が必要である。また、過剰添加は靭性を低下させるため、上限は1×10−1%とするとともに、1×10−2%以上添加する場合は、Ni>10(C+N)を満足する必要がある。
Ni:1×10−1〜2.5%
靭性向上のために1×10−1%以上の添加が好ましい。とくに、CあるいはNの添加量が1×10−2重量%以上である場合は、靭性確保のため、Ni>10(C+N)の添加が必要である。また、過剰添加はフェライト相の体積率を低下させるため、上限は2.5%とする。表2から明らかなように、Niの添加量がNi>10(C+N)未満の比較鋼6〜9は、冷却速度の違いによらずシャルピー衝撃値は小さいが、本発明鋼の水冷材は高いシャルピー衝撃値を示す。
フェライト相が70体積%以上を占める
焼き戻しマルテンサイト組織は、高温で不安定である。これに対してフェライト相は高温での組織安定性が高い。そのため、クリープ強度向上のためにフェライト相が70体積%以上含有されていることが望ましい。表2から明らかなように、本発明鋼3〜5を炉冷するとフェライト相の体積率は70%未満となるが、水冷によりフェライト相の体積率は70%以上となり、図1から明らかなように、本発明鋼3〜5の水冷材は炉冷材よりも約10倍の長いクリープ破断時間を示す。また図2から明らかなように、クロム量が13重量%未満で、フェライト相の体積率が70%未満の比較鋼10〜16に対して、本発明鋼の方が長いクリープ破断時間を示す。
金属間化合物や炭化物および窒化物の1種以上の析出によって強化されている。
クリープ強度を高めるためには、金属間化合物や炭化物および窒化物の1種以上を析出させることが有効である。図3から明らかなように、本発明鋼1はW添加量が多く、金属間化合物の析出量が多いため、W添加量が少ない比較鋼6よりも約100倍の長いクリープ破断時間を示す。
さらに、上記成分に加え、以下のものを含有させることが望ましい。
Mo:5×10−1〜5%
クリープ強度を高めるために必要な金属間化合物を析出させるために、5×10−1%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加は靭性を低下させるため、上限は5%とする。
W:5×10−1〜1×10%
クリープ強度を高めるために必要な金属間化合物を析出させるために、5×10−1%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加は靭性を低下させるため、上限は1×10%とする。
V:5×10−2〜4×10−1%
クリープ強度向上に有効な炭化物、窒化物を形成させるために、5×10−2%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加は炭化物、窒化物の形成に有効ではないので、上限は4×10−1%とする。
Nb:1×10−2〜1×10−1%
クリープ強度向上に有効な炭化物、窒化物を形成させるために、1×10−2%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加は炭化物、窒化物の形成に有効ではないので、上限は1×10−1%とする。
Co:1×10−1〜1×10%
炭化物、窒化物及び金属間化合物などの析出物を微細化し、クリープ強度向上に有効なため、1×10−1%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加はフェライト相の体積率を低下させるため、上限は1×10%とする。
B:2×10−3〜4×10−3%
析出物を微細化かつ安定化させるとともに、粒界強化に有効なため、2×10−3%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加は窒化ボロンを生成してしまい、クリープ強度の向上に有効ではないので、上限は4×10−3%とする。
Mo:5×10−1〜5%
クリープ強度を高めるために必要な金属間化合物を析出させるために、5×10−1%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加は靭性を低下させるため、上限は5%とする。
W:5×10−1〜1×10%
クリープ強度を高めるために必要な金属間化合物を析出させるために、5×10−1%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加は靭性を低下させるため、上限は1×10%とする。
V:5×10−2〜4×10−1%
クリープ強度向上に有効な炭化物、窒化物を形成させるために、5×10−2%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加は炭化物、窒化物の形成に有効ではないので、上限は4×10−1%とする。
Nb:1×10−2〜1×10−1%
クリープ強度向上に有効な炭化物、窒化物を形成させるために、1×10−2%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加は炭化物、窒化物の形成に有効ではないので、上限は1×10−1%とする。
Co:1×10−1〜1×10%
炭化物、窒化物及び金属間化合物などの析出物を微細化し、クリープ強度向上に有効なため、1×10−1%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加はフェライト相の体積率を低下させるため、上限は1×10%とする。
B:2×10−3〜4×10−3%
析出物を微細化かつ安定化させるとともに、粒界強化に有効なため、2×10−3%以上含有するのが好ましい。また、過剰添加は窒化ボロンを生成してしまい、クリープ強度の向上に有効ではないので、上限は4×10−3%とする。
又さらに、上記成分に加え、以下のものを含有させることが望ましい。
クリープ強度を高めるために必要な金属間化合物の析出量を十分に確保するため、MoおよびWをそれぞれ5×10−1重量%以上含有し、Mo+0.5W≧3.0重量%以上含有する。図3から明らかなように、Mo+0.5Wが3重量%以上の本発明鋼1は、Mo+0.5Wが3.0重量%未満の比較鋼6に比べて約100倍のクリープ破断時間を示している。
クリープ強度を高めるために必要な金属間化合物の析出量を十分に確保するため、MoおよびWをそれぞれ5×10−1重量%以上含有し、Mo+0.5W≧3.0重量%以上含有する。図3から明らかなように、Mo+0.5Wが3重量%以上の本発明鋼1は、Mo+0.5Wが3.0重量%未満の比較鋼6に比べて約100倍のクリープ破断時間を示している。
さらに、1×103℃以上で焼きなまし熱処理された後、空冷以上の冷却速度、具体的には、焼きなまし温度から400℃以下の温度まで、1×102℃/min(毎分1×102℃)以上の冷却速度で冷却されることが望ましい。
本発明鋼1〜5と比較鋼6〜9について、100℃でシャルピー衝撃試験を行った。その結果を表2に示す。比較鋼6〜9は、焼きなまし熱処理後の冷却速度の大小によらず衝撃値は小さいのに対し、本発明鋼1〜5は冷却速度が小さい炉冷では衝撃値が小さいが、冷却速度が大きい水冷では衝撃値が224J/cm2以上と炉冷熱処理材および比較鋼6〜9に比べて桁違いに大きいことが示されている。また、図1から明らかなように、本発明鋼3〜5の水冷材は炉冷材よりも約10倍の長いクリープ破断時間を示す。このように高いシャルピー衝撃値とクリープ強度を得るためには、焼ならし温度から4×102℃以下の温度まで、1×102℃/min(毎分100℃)以上の速度(空冷に相当する)で冷却することが望ましい。冷却速度が小さいと、冷却中に金属間化合物や炭化物および窒化物等がまばらに析出してしまい、シャルピー衝撃特性やクリープ強度を向上させる効果が減少してしまう。そのため、高いシャルピー衝撃値とクリープ強度を得るためには、金属間化合物や炭化物および窒化物が比較的短時間で析出する温度域を急速に冷却する必要がある。そこで、短時間では金属間化合物や炭化物および窒化物等の析出がほとんど生じない低温度(通常は、4×102℃。添加物の種類や量などによりこの温度は変化する)までを、1×102℃/min(毎分100℃)以上の速度(空冷に相当する)で冷却することが望ましい。
なお、冷却速度は、5×103℃/minが本発明出願時の上限であるが、これを越えて冷却することを否とする理由は存在しない。
また、必要な冷却速度も、添加物の種類や量などにより変化するので具体的にはこれらに対応した温度に設定することとなる。
冷却速度はエネルギー効率や鋼材の生成速度などに対応して適度な速度にすることが一般に行われている。
本発明鋼1〜5と比較鋼6〜9について、100℃でシャルピー衝撃試験を行った。その結果を表2に示す。比較鋼6〜9は、焼きなまし熱処理後の冷却速度の大小によらず衝撃値は小さいのに対し、本発明鋼1〜5は冷却速度が小さい炉冷では衝撃値が小さいが、冷却速度が大きい水冷では衝撃値が224J/cm2以上と炉冷熱処理材および比較鋼6〜9に比べて桁違いに大きいことが示されている。また、図1から明らかなように、本発明鋼3〜5の水冷材は炉冷材よりも約10倍の長いクリープ破断時間を示す。このように高いシャルピー衝撃値とクリープ強度を得るためには、焼ならし温度から4×102℃以下の温度まで、1×102℃/min(毎分100℃)以上の速度(空冷に相当する)で冷却することが望ましい。冷却速度が小さいと、冷却中に金属間化合物や炭化物および窒化物等がまばらに析出してしまい、シャルピー衝撃特性やクリープ強度を向上させる効果が減少してしまう。そのため、高いシャルピー衝撃値とクリープ強度を得るためには、金属間化合物や炭化物および窒化物が比較的短時間で析出する温度域を急速に冷却する必要がある。そこで、短時間では金属間化合物や炭化物および窒化物等の析出がほとんど生じない低温度(通常は、4×102℃。添加物の種類や量などによりこの温度は変化する)までを、1×102℃/min(毎分100℃)以上の速度(空冷に相当する)で冷却することが望ましい。
なお、冷却速度は、5×103℃/minが本発明出願時の上限であるが、これを越えて冷却することを否とする理由は存在しない。
また、必要な冷却速度も、添加物の種類や量などにより変化するので具体的にはこれらに対応した温度に設定することとなる。
冷却速度はエネルギー効率や鋼材の生成速度などに対応して適度な速度にすることが一般に行われている。
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。(なお、以下に示す℃の数値は50℃単位とした)
表1に示されている1〜9の組成の材料について、それぞれ10kgの鋼塊を作製し、熱間鍛造により直径15mmの丸棒に成形して、1,200℃で焼きなまし熱処理後、それぞれを、炉冷及び水冷により冷却した。また、表1に示されている10〜16の組成の材料は既存のフェライト系耐熱鋼であり、比較鋼として用いた。
このようにして成形した試験片について、100℃でシャルピー衝撃試験を行った。その結果を示したものが表2である。Ni量が少なく、本発明鋼の範囲外である比較鋼6〜9は、焼きなまし熱処理後の冷却速度の大小によらず衝撃値は小さいのに対し、本発明鋼1〜5は冷却速度が小さい炉冷では衝撃値が小さいが、冷却速度が大きい水冷では衝撃値が224J/cm2以上と炉冷熱処理材および比較鋼6〜9に比べて桁違いに大きい。
図1は本発明鋼3〜5の、650℃でのクリープ破断時間に及ぼす冷却速度の影響を示したものであり、冷却速度の小さな炉冷材に比べて、冷却速度の大きな水冷材は約10倍の長いクリープ破断時間を示すことがわかる。
図2は650℃でのクリープ試験結果を例示した図である。クロム量が13重量%未満で、フェライト相の体積率が70%未満の比較鋼10〜16に対して、本発明鋼2〜5の方が高いクリープ強度を有することがわかる。
図3は650℃でのクリープ試験結果を例示した図である。Mo+0.5Wが3重量%以上の本発明鋼1は、Mo+0.5Wが3.0重量%未満の比較鋼6に比べて約100倍のクリープ破断時間を示すことがわかる。
図4は700℃、応力100MPaでのクリープ速度と時間との関係を例示した図である。本発明鋼3および5は未破断であり、試験進行中であるが、比較鋼10〜12に比べて約1000分の1の小さなクリープ速度を示し、約100倍以上の長いクリープ破断時間を示すことがわかる。
図5は750℃、応力50MPaでのクリープ速度と時間との関係を例示した図である。本発明鋼3および5は未破断であり、試験進行中であるが、比較鋼10および14に比べて100分の1以下の小さなクリープ速度を示し、約100倍以上の長いクリープ破断時間を示すことがわかる。
図6は750℃におけるクリープ破断時間を例示した図である。本発明鋼3および5は、応力50および30MPaでの試験は未破断であり、進行中のクリープ試験時間である。応力80および50MPaでは、本発明鋼3および5のクリープ破断時間は、比較鋼10〜16の約100倍以上も長く、オーステナイト耐熱鋼であるSUS316よりも長いクリープ破断時間を示す。また、応力30MPaでも本発明鋼3および5は、オーステナイト耐熱鋼であるSUS316と同等以上のクリープ破断時間を示すことがわかる。
以上、詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、650℃を越える高温でも優れた高温強度、耐熱性、耐酸化性、高靭性を有し、高温高圧下での長期間使用においても強度の低下が抑制できる蒸気機関用鋼製部品が提供できる。
Claims (5)
- 650℃を越える高温で使用される蒸気機関用鋼製部品であって、その鋼が、重量%で、C:1×10−3〜1×10−1%、Cr:13〜30%、N:1×10−3〜1×10−1%、Ni>10(C+N)を含有し、フェライト相が70体積%以上を占めると共に、金属間化合物や炭化物および窒化物の1種以上の析出によって強化されている高クロムフェライト耐熱鋼からなることを特徴とする蒸気機関用鋼製部品。
- 請求項1に記載の蒸気機関用鋼製部品において、前記高クロムフェライト耐熱鋼が、さらに、Mo:5×10−1〜5%、W:5×10−1〜1×10%、V:5×10−2〜4×10−1%、Nb:1×10−2〜1×10−1%、Co:1×10−1〜1×10%、N:1×10−3〜1×10−1%、Ni:1×10−1〜2.5%かつCあるいはNの添加量が1×10−2重量%以上である場合にNi>10(C+N)、B:2×10−3〜4×10−3%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする蒸気機関用鋼製部品。
- 請求項2に記載の蒸気機関用鋼製部品において、前記高クロムフェライト耐熱鋼が、さらにMoおよびWを5×10−1重量%以上含有し、Mo+0.5W≧3.0重量%以上含有することを特徴とする蒸気機関用鋼製部品。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の蒸気機関用鋼製部品の製造方法であって、1×103℃以上で焼きなまし熱処理をした後、金属間化合物や炭化物および窒化物等が実質的に析出しない低温度になるまで、その析出が生じない高速度で冷却することを特徴とする蒸気機関用鋼製部品の製造方法。
- 請求項4に記載の蒸気機関用鋼製部品の製造方法において、前記低温度が4×102℃で、冷却速度が1×102℃/min以上とすることを特徴とする蒸気機関用鋼製部品の製造方法。
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Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH08170154A (ja) * | 1994-12-15 | 1996-07-02 | Nippon Steel Corp | 溶接性に優れたフェライト系ステンレス鋼 |
JP2001158947A (ja) * | 1999-09-24 | 2001-06-12 | Natl Research Inst For Metals Ministry Of Education Culture Sports Science & Technology | 高Crフェライト系耐熱鋼 |
JP2003253402A (ja) * | 2002-02-28 | 2003-09-10 | National Institute For Materials Science | 高クロムフェライト耐熱鋼 |
-
2008
- 2008-07-08 JP JP2008177542A patent/JP2010018821A/ja active Pending
Patent Citations (3)
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