JP2010018552A - ソヤサポニンiを含有するレニン阻害剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】血圧上昇因子の1つであるレニンを阻害することによって血圧降下作用をもたらす、副作用の恐れの少ない食物由来のレニン阻害物質を精製し、構造を決定するとともに、長期にわたって継続できるレニン阻害剤を提供する。
【解決手段】ダイズの胚軸を加熱処理し、胚軸由来の抽出液をクロマトグラフィー処理したソヤサポニンIまたは医薬として許容されるその塩よりなるレニン阻害剤およびソヤサポニンIを有効成分として含有する血圧降下剤。
【選択図】図1

Description

本発明は、医薬および飲食品の分野に属し、特に、血圧上昇因子の1つであるレニンを阻害することによって血圧降下作用をもたらす、食物由来のレニン阻害物質を有効成分として含むレニン阻害剤またはこれを製造する方法に関する。
レニン・アンギオテンシン系は、ヒトを含む哺乳類全般において最も重要な血圧調節系である。レニンは、主に腎臓の傍糸球体細胞で生合成され様々な刺激で血中に放出される。血中のレニンは、肝臓で合成された基質タンパクであるアンギオテンシノーゲンに作用してアンギオテンシンIを遊離する。アンギオテンシンIは、主に肺循環中にアンギオテンシン変換酵素によりアンギオテンシンIIに変換される。生じたアンギオテンシンIIは、直接血管壁に作用して血管を収縮させ血圧を上昇させる。また、副腎に作用してアルドステロンの分泌を促進する。その結果、腎臓でのナトリウムの再吸収が促進され、その作用で血液中の体液量が増加し、これも血圧上昇を引き起こす要因となる。以上のことから、レニン・アンギオテンシン系の制御が血圧調節上非常に重要である。
また、降圧療法は原則として長期にわたって継続する必要があるので、副作用の恐れの少ない食物由来の化学物質による降圧効果が従来より期待されていた。これまで、食物由来のアンギオテンシン変換酵素阻害物質を含む商品の開発が進んでおり、例えば、カルピス株式会社のアミールS(登録商標)などが商品化されている(特許文献1)。
特開平11−98978号公報
しかしながら、これまでの標的酵素は、もっぱらアンギオテンシン変換酵素(ACE)に限定され、食物由来の化学物質によるレニン阻害効果は研究の対象外とされていた。その理由として、第1に、標的となるヒトレニンの入手が困難であること、また、第2の理由として、レニンの酵素活性の測定方法が煩雑であることが挙げられる。
本発明の目的は、食物由来のレニン阻害物質を精製し、構造を決定するとともに、該物質を含むレニン阻害剤を提供することにある。
本発明は、ソヤサポニンIまたは医薬として許容されるその塩を有効成分として含有するレニン阻害剤を提供する。
また、本発明は、ダイズの胚軸を準備する工程と、前記胚軸を加熱処理し、胚軸由来の抽出液を得る工程と、前記抽出液をクロマトグラフィー処理し、ソヤサポニンIを得る工程と、を含む、レニン阻害剤を製造する方法を提供する。
本発明によって、食物由来のレニン阻害物質としてソヤサポニンIが同定され、該ソヤサポニンIまたは医薬として許容されるその塩を有効成分として含有するレニン阻害剤が提供される。
以下、本発明の実施態様について説明する。なお、以下に示す実施態様は、本発明の構成を詳細に説明するために例示的に示したものに過ぎない。従って、本発明は、以下の実施態様に記載された説明に基づいて限定解釈されるべきではない。本発明の範囲には、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内にある限り、以下の実施態様の種々の変形、改良形態を含む全ての実施態様が含まれる。
図1
図1は、ソヤサポニンIのレニン阻害効果を示したグラフである。本発明によって、ダイズ由来レニン阻害物質(Soybean Renin Inhibitor;以下、「SRI」ともいう)の実体がソヤサポニンIであることが明らかになった。図1をみると、ソヤサポニンI(SRI)の濃度が増加するにつれて、相対レニン活性(%)が低下していることがわかる。
ソヤサポニンIは、マメ類、特にダイズ(大豆、学名Glycine max)に多量に含まれる成分である。図6には、ソヤサポニンIの構造を示した。今回、ソヤサポニンIにレニン阻害作用があることを初めて見出した。図7には、レニン・アンギオテンシン系を示した。レニンは、レニン・アンギオテンシン系の最上流に位置し、アンギオテンシノーゲンを特異的に分解し、アンギオテンシンIを産生するタンパク質分解酵素である。アンギオテンシンIは、さらにアンギオテンシン変換酵素によって切断され、昇圧物質であるアンギオテンシンIIが産生される。レニン阻害物質を生体に投与した場合、レニンによるアンギオテンシノーゲンの分解が抑制されるため、結果としてその下流に位置するアンギオテンシンI、IIの産生が抑制され、血圧の上昇が抑制される。
図2
図2は、ソヤサポニンIを含むダイズ抽出液の生成方法を示したフローチャートである。ソヤサポニンIは、第1に、マメ類、特に、ダイズ、またはダイズの子葉部位もしくは胚軸部位(以下、ダイズ材料という)を準備する工程(21)と、第2に、ダイズ材料を加熱抽出する工程(22)と、第3に、加熱抽出液をクロマトグラフィー処理し、ソヤサポニンIを分離し取得する工程(23)から製造される。
第1の工程(21)では、先ず、マメ類、特にダイズを準備する。ダイズは、ダイズの子葉部位および/または胚軸部位を使用するとよい。ダイズ内でのレニン阻害物質の局在性を調査および研究した結果、ダイズの胚軸内に最も高濃度でレニン阻害物質が存在することを初めて見出した。具体的には、ダイズを子葉と胚軸に分別し、それぞれの抽出液を調製した後、各抽出液ごとにレニン阻害活性を測定した。その結果、胚軸の抽出液に子葉の抽出液の約3倍の阻害物質が存在することを見出した。したがって、ダイズの胚軸の抽出液からレニン阻害物質を精製することによって、より少量のダイズ材料からより大量のレニン阻害物質を産生することができる。
ダイズの胚軸は、ダイズ豆を割って、中にある胚軸を取り出すことによって集められる。ダイズの胚軸は、ダイズ豆の全体積の1〜3%程度と非常に小さく、胚軸のみを取り出すのは非常に手間がかかる。一方、ダイズの胚軸は、「ひきわり納豆」を製造する際に大量に廃棄されることが知られている。「ひきわり納豆」は、ダイズを1/4〜1/16に破砕した大豆を浸漬・蒸煮後、納豆菌で発酵した納豆である。本発明者は、鋭意研究の結果、廃棄されていた大量のダイズの胚軸からレニン阻害物質であるソヤサポニンIを抽出および精製することに成功した。
第2の工程(22)では、第1の工程(21)で準備したダイズ材料を加熱抽出処理する。加熱抽出処理は、例えば、オートクレーブ内にダイズ試料を静置し、高圧条件下で蒸すことによって行われる。加熱処理条件は、特に制限されないが、例えば、温度条件を80℃〜140℃、好ましくは90℃〜130℃、さらに好ましくは100℃〜120℃とし、圧力条件を1気圧〜3気圧、好ましくは1気圧〜2気圧、さらに好ましくは1気圧〜1.5気圧とし、処理時間を1分〜1時間、好ましくは3分〜30分、さらに好ましくは5分〜15分とする。
次に、加熱処理されたダイズ試料を粉砕し、粉砕液を得る。粉砕の方法に特に制限はないが、例えば市販の一般的なフードプロセッサーなどを利用して粉砕を行ってもよい。粉砕液を得た後、これを遠心分離機にかける。遠心処理条件は、ダイズ試料の量にもよるが、5,000×g〜12,000×gで20〜60分間行うとよい。遠心処理後、上清を回収する。
第3の工程(23)では、第2の工程(22)で得られた加熱抽出液(遠心処理後の上清)をクロマトグラフィーにかけてソヤサポニンIを分離し取得する。具体的には、回収された上清を逆相カラム (Sep-Pak Vac C18, 35cc, ウォーターズ社製)に添加し、蒸留水と50%メタノールで十分洗浄した後、吸着画分を100 mlの100%メタノールで溶出する。ソヤサポニンIを含むメタノール溶出画分を減圧乾固した。この減圧乾固したメタノール溶出画分は、ソヤサポニンIを高濃度で含有する。したがって、これを蒸留水に溶解してソヤサポニンIを含むダイズ抽出液として調製することができる。
図3
図3は、ダイズ由来レニン阻害物質(SRI)の精製方法を示したフローチャートである。上述したソヤサポニンIを含むダイズ抽出液から、ソヤサポニンIを精製するために、多段階からなるクロマトグラフィー処理が行われる。具体的には、例えば、胚軸熱水抽出液を調製し(31)、セップパックカラム(Sep-Pak Vac C18, 35cc)で処理を行う(32)。ここまでは、前記ソヤサポニンIを含むダイズ抽出液の調製手順と同じである。その後、ゲル濾過クロマトグラフィー(Bio-Gel P-2)処理によってレニン阻害活性画分を回収し(33)、最後に、逆相クロマトグラフィー(ODS column)処理を行い(34)、前記レニン阻害活性画分からダイズ由来レニン阻害物質(SRI)であるソヤサポニンIを精製する(35)。逆相クロマトグラフィーによる処理では、高速タンパク分離装置(FPLC, Fast Protein Liquid Chromatography)を用いて吸着した阻害物質を0%〜100%メタノールの直線濃度勾配で溶出し、最後に、阻害活性画分を減圧乾燥することによってソヤサポニンIが精製される。
本発明のソヤサポニンIは、その置換基の種類により、必要に応じて医薬として許容される酸との付加塩または金属等の陽イオンとの塩に変換することができ、これらの塩も本発明の範囲内に含まれる。酸付加塩としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩類、または酢酸、コハク酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸などの有機酸との塩類が挙げられる。また、陽イオンの塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの金属塩、またはアンモニウム塩、有機および無機の四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩などが挙げられる。
本発明のソヤサポニンIまたは医薬として許容される塩を有効成分として含有するレニン阻害剤は、例えば、顆粒剤、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、シロップ剤、縣濁液剤など、医薬製剤として製造可能な全ての剤型として提供することができる。また、投与経路としては、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下または関節腔などの種々の投与経路において投与することが可能である。
本発明のレニン阻害剤は、ソヤサポニンIまたは医薬として許容されるその塩を薬効成分として含有する他に、必要に応じ、薬学的に許容される希釈剤または担体を含有することができる。さらにまた、補助剤、安定化剤、乳化剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤、香料、甘味料、またはその他の常用添加剤を配合してもよい。本発明のレニン阻害剤は、好ましくは、希釈剤または担体を含有する。例えば、ソヤサポニンIまたは医薬として許容されるその塩を、レニン阻害剤を基準として、約0.1〜99.5重量%、好ましくは約0.5〜95重量%、さらに好ましくは約1〜90重量%の範囲で含む。
本発明のレニン阻害剤の投与量は、治療に用いるのか予防に用いるのか、あるいは治療する症状の種類と程度および個人差(年令、性別、感受性など)によって、変えるのが望ましい。本発明のレニン阻害剤の投与量は、ソヤサポニンIを基準として、1日当り、成人1人当り、経口内投与では、例えば0.1〜2,000mg、好ましくは1〜1,000mg、またはさらに好ましくは10〜500mgの範囲の量で投与すればよい。また、ソヤサポニンIを完全に精製することなく、ソヤサポニンIを含む粗精製物であるダイズ抽出液を使用する場合、例えば体重1kg当り1〜500mg、好ましくは5〜200mg、さらに好ましくは10〜100mgの範囲の量で投与すればよい。また、投与回数は、1日1回、あるいは1日数回に分けて行うことができる。
また、本発明は、上記レニン阻害剤を有効成分として含有する血圧降下剤を製造することもできる。この場合についても、上述したレニン阻害剤の剤型、常用添加剤、投与量および投与方法などが適用される。
また、本発明によれば、ソヤサポニンIをマメ類、例えばダイズから抽出して用いる場合、このソヤサポニンIは天然物であり、長期間投与しても副作用もないことから、ソヤサポニンIを含有する食品、特に高血圧症の予防に有効な食品が提供される。具体的には、マメ類、例えばダイズから抽出されたソヤサポニンIを含有し、血圧降下作用を有する旨の表示を付した飲食品、すなわち、特定保健用食品としても提供することができる。対象とする食品の種類は特に制限されないので、投与を受ける人の好みの食品に含有させることができる。ソヤサポニンIの含有量は、上述した医薬製剤と同程度かあるいは少なめに設定し、主に予防効果を重視した量に設定するとよい。
以下、実施例を示して、本発明を説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
1.材料
組換え型ヒトレニンは、高橋らの方法1)によって調製した。
ブタ腎臓レニンおよびヒト尿カリクレインは既存の方法2,3)によって調製した。
ブタ胃由来ペプシン、牛膵臓由来トリプシン、ウサギ肺由来アンギオテンシン変換酵素は、シグマ社(セントルイス、米国)から購入した。
パパイン(パパイヤ由来)は、MPバイオメディカル社(イルクリク、フランス)から購入した。
アミノペチダーゼMは、ピアス社(ロックフォード、米国)より購入した。
ブロメライン(パイナップル由来)は、(株)和光純薬(大阪)より購入した。
MCA合成基質、ロイシン-パラニトロアニリン(Leu-pNA)、ヒトおよびブタレニン用蛍光消光基質は、(株)ペプチド研究所より購入した。
ヒトおよびブタレニン用蛍光消光基質の構造は、それぞれ、2-メチルアミノベンゾイル(Nma)-イソロイシン(Ile)-ヒスチチン(His)-プロリン(Pro)-フェニルアラニン(Phe)-ヒスチジン(His)-ロイシン(Leu)-バリン(Val)-イソロイシン(Ile)-ヒスチジン(His)-トレオニン(Thr)-[Nε-(2, 4-ジニトロフェニル)-リシル][Lys(Dnp)]-[D-アルギニン(Arg)]-[D-アルギニン(Arg)]-アミド(NH2)、および、2-メチルアミノベンゾイル(Nma)-ヒスチジン(His)-プロリン(Pro)-フェニルアラニン(Phe)-ヒスチジン(His)-ロイシン(Leu)-ロイシン(Leu)-バリン(Val)-チロシン(Tyr)-[Nε-(2, 4-ジニトロフェニル)-リシル][Lys(Dnp)] -[D-アルギニン(Arg)]-[D-アルギニン(Arg)]-アミド(NH2)である。
標準のソヤサポニンIは、北川らの方法4、5)によって精製されたものを使用した(京都薬科大学の吉川教授より恵与)。
2.方法
(1)レニン阻害活性の測定
蛍光消光基質のLeu-ValおよびLeu-Leu結合の分解は、蛍光分光光度系を用いて計測した。反応溶液は、39μlの50 mMリン酸緩衝液(pH 6.5)、0.1 M NaCl、0.02% NaN3、0.02% ツイーン20、ジメチルスルフォキシドに溶解した1μlの1mMの蛍光消光基質、5μlの組換え型ヒトレニンもしくは精製ブタ腎臓レニン、および5μlの阻害剤溶液の計50μlの系で反応した。
反応溶液を37℃で30分間保温したのち、0.2 mlの0.1 Mトリエタノールアミン(pH 9.5)を添加し、反応を停止した。その後、励起波長340 nmおよび蛍光波長440 nmで蛍光強度を測定した。IC50値は、上記反応条件でレニン活性が50%阻害される阻害剤濃度を示す。阻害様式は、ラインウエーバー・バークプロットおよびディクソンプロットにより求めた。
(2)その他の酵素活性の測定
ペプシン活性は、(7-メトキシクマリン 4-リル)アセチル(MOCAc)-アラニル(Ala)-プロリル(Pro)-アラニル(Ala)-リシルLys)-フェニルアラニル(Phe)-フェニルアラニル(Phe)-アルギニル(Arg)-ロイシル(Leu)-[Nε-(2, 4-ジニトロフェニル)-リシル](Lys(Dnp)-アミド(NH2)を基質として使用し、近藤らの方法6)によって測定した。
トリプシン、パパインおよびブロメラインの活性は、ベンゾイル(Bz)-アルギニン(Arg) 4-メチルクマリル-7-アミド (MCA)を基質として用いて森田らの方法7)によって測定した。
アンギオテンシン変換酵素活性は、ベンゾイル(Bz)-グリシル(Gly)-グリシル(Gly)-グリシン(Gly)を基質としてFriedmanとSilverstainの方法8)によって測定した。
アミノペチダーゼ活性は、ロイシン(Leu)-p-ニトロアニリド(pNA)を基質としてPfleidererの方法9)によって測定した。
3.精製
(1)ダイズの胚軸からのレニン阻害物質の精製
先ず、750 gのダイズの胚軸を4,500 mlの蒸留水に浸漬し、一夜室温で放置した。次に、この胚軸を121℃で15分間にわたってオートクレーブした(加熱処理)。放冷後、加熱処理された胚軸をフードプロセッサーで粉砕し、粉砕液を得た。次に、この粉砕液を10,000×gで30分間にわたって遠心分離し(遠心処理)、上清を回収した。そして、この回収した上清(100 ml)を逆相カラム (Sep-Pak Vac C18, 35cc, ウォーターズ社製)に添加し、蒸留水と50%メタノールで十分洗浄した後、吸着画分を100 mlの100%メタノールで溶出した。この操作を繰り返し行うことによって全量を処理した。
続いて、前記メタノール溶出画分を減圧乾固した。乾燥試料1.56 gを10%エタノールに溶解し、沈殿を遠心分離で除去後、10%メタノールで平衡化したBio-Gel P-2カラム(5 x 80 cm)に添加した。10%メタノールで溶出し、阻害活性画分を集めた。阻害画分を逆相カラムに添加し、高速タンパク分離装置(FPLC, Fast Protein Liquid Chromatography)を用いて吸着した阻害物質を0%〜100%メタノールの直線濃度勾配で溶出した。阻害活性画分を減圧乾燥し、約70mgの阻害物質(Soybean Renin Inhibitor, SRI)を取得した。
4.構造解析
(1)ダイズ由来のレニン阻害物質(SRI)の構造解析
精製したSRIの1Hおよび13C NMRスペクトルより、SRIはソヤサポゲノールB(Soyasapogenol B)部分と3糖(グルクロン酸、ガラクトース、ラムノース)糖鎖をもつことが示唆された。そこで、標準のソヤサポニンI(Soyasaponin I)とダイズ由来レニン阻害物質(SRI)の[α]D、混合融点、IRおよび1HNMRスペクトルを比較した。その結果、SRIはソヤサポニンIと同定された。ソヤサポニンIの構造は、図5に示した。
5.ソヤサポニンIによるヒトレニン活性の阻害様式
図1にソヤサポニンIによるヒトレニンの阻害曲線を示した。この阻害曲線より、IC50値は30μg/mlと算出された。一方、阻害様式は部分的非拮抗阻害 (partial non-competitive inhibition)であることが明らかとなった。
6.ソヤサポニンIのレニン特異的阻害能
図4は、ソヤサポニンIの各種酵素に対する阻害結果を示した表である。ソヤサポニンIは、ヒトレニンの活性だけではなく、ブタレニンの活性も強く阻害し、そのIC50値はヒトレニンの場合と同様に30μg/mlと算出された。また、阻害定数(Ki)は、37μMと算出された。最終濃度0.1 mg/mlのソヤサポニンIでは、ヒトレニンの活性を74%、ブタレニンの活性を85%阻害し、極めて高い阻害能を示した。一方、同濃度のソヤサポニンIは、ブタペプシン、パパイン、およびブロメラインの活性に対しても阻害能を示したが、その活性阻害能はそれぞれ15%、25.5%、および22%と低く、レニン活性の阻害能には及ばなかった。そして、ウシトリプシン、ヒト尿カリクレイン、ウサギ肺由来アンギオテンシン変換酵素、およびアミノペプチダーゼの活性に対する阻害能はいずれも認められなかった。以上の結果から、ソヤサポニンIは、ヒトおよびブタレニンを特異的に阻害することが示された。
7.ソヤサポニンIの血圧降下作用
(1)実験方法
(試料の調製)
大豆胚軸を蒸留水に浸漬し、一夜室温で放置した。その試料を121℃、15分間オートクレーブし、放冷後、フードプロセッサーで粉砕した。粉砕液を10,000×g、30分間遠心分離し、上清を回収した。100m1上清を逆相カラム(Sep-Pak Vac C18, 35cc, ウォーターズ社製)に添加し、蒸留水と50%メタノールで十分洗浄した後、吸着画分を100m1の100%メタノールで溶出した。ソヤサポニンIを含むメタノール溶出画分を減圧乾固し、40mg/mlとなるように蒸留水に溶解し、これを動物実験用ダイズ抽出液とした。
(動物実験)
5週齢の雄性高血圧自然発症ラット(SHR)を市販固形飼料で7週間飼育した。飼育期間中、対照群には体重1kgあたり1m1の蒸留水を、試験群には体重1kgあたり1mlの大豆抽出液を1日1回経口投与した。大豆抽出液には、40mg/m1の抽出物が含まれているため、試験群には体重1kgあたり40mgの抽出物を毎日投与していることになる。対照群および試験群としてそれぞれ7匹のSHRを用いた。
7週間経過後、小動物用非観血式自動血圧測定装置で血圧を測定した。
(2)実験の結果
結果を図5に示す。ソヤサポニンIを含むダイズ抽出液を7週間投与後のSHRの体重および脈拍数は、対照群と有意差は認められなかった。血圧に関しては、大豆抽出液投与群(217±3.6mmHg、平均値±標準誤差)が対照群(228±1.8mmHg、平均値±標準誤差)に比べ有意に低下が認められた。したがって、ソヤサポニンIを含むダイズ抽出液が血圧降下作用を持つことが確認された。
[参考論文]
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ソヤサポニンIのレニン阻害効果を示したグラフ ソヤサポニンIを含むダイズ抽出液の生成方法を示したフローチャート ダイズ由来レニン阻害物質(SRI)の精製方法を示したフローチャート 各種酵素に対する阻害結果を示した表 ダイズ抽出液を投与したマウスにおける血圧抑制効果を示した棒グラフ ソヤサポニンIの構造を示す図 レニン・アンギオテンシン系の反応経路を示す図

Claims (6)

  1. ソヤサポニンIまたは医薬として許容されるその塩を有効成分として含有するレニン阻害剤。
  2. 前記ソヤサポニンIが、マメ類から抽出されたものである、請求項1に記載のレニン阻害剤。
  3. 前記ソヤサポニンIが、ダイズから抽出されたものである、請求項1に記載のレニン阻害剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のレニン阻害剤を有効成分として含有する血圧降下剤。
  5. ダイズの胚軸を準備する工程と、
    前記胚軸を加熱処理し、胚軸由来の抽出液を得る工程と、
    前記抽出液をクロマトグラフィー処理し、ソヤサポニンIを得る工程と、
    を含む、レニン阻害剤を製造する方法。
  6. ダイズの胚軸を準備する工程と、
    前記胚軸を加熱処理し、胚軸由来の抽出液を得る工程と、
    前記抽出液をクロマトグラフィー処理し、ソヤサポニンIを得る工程と、
    を含む、血圧降下剤を製造する方法。
JP2008180633A 2008-07-10 2008-07-10 ソヤサポニンiを含有するレニン阻害剤 Pending JP2010018552A (ja)

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