JP2010014500A - 金属材料の簡易成分分析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 透明なハイドロゲル、金属成分と反応して発色する発色剤、および酸を含み、該発色剤および酸が該ゲル中に坦持されている金属材料の簡易成分分析用組成物、これを利用した金属材料の簡易成分分析用シートおよび簡易成分分析方法。
【選択図】 図1
Description
たとえば銅は、鉄、アルミニウムに次ぐ需要の大きい金属であるにもかかわらず、クラーク指数(地球の表面より地殻16kmまでの岩石の中の元素量を100分率で示したもの)が0.01%で25位の希少金属である。従って、市場より発生した銅スクラップを回収して再利用することは、非常に有効な手段である。
銅は比較的再利用しやすい金属であり、リサイクルは古くから行われているが、銅スクラップを利用し、目的とする組成の材料を製造するためには、溶解段階での組成調製が不可欠となる。従来、オンサイトで材種を判定するものとして、ポータブル蛍光X線分析装置があるが、工場などの生産現場では、コスト的に使用するのが難しい場合が多い。そのため、スクラップの材種判定を、その場で、簡易的に行うことができれば、リサイクル率及びリサイクル製品の品質の向上が図れる。
好ましい態様においては、前記の透明なハイドロゲルは、ポリビニルアルコールおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性高分子を架橋させたハイドロゲルである。前記水溶性高分子は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド及び天然多糖類誘導体から選ばれる少なくとも1種をさらに含むこともできる。すなわち、透明なゲルは、ポリビニルアルコールおよび/またはヒドロキシプロピルセルロースを架橋させたハイドロゲルであることができ、さらには、ポリエチレンオキサイドおよび/またはヒドロキシプロピルセルロースに加え、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、及びメチルセルロースのような天然多糖類誘導体を含む混合物を架橋させたハイドロゲルであることができる。特に好ましくは、透明なゲルはポリビニルアルコールハイドロゲルである。
好ましくは前記の酸は、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸およびフッ酸からなる群から選択される少なくとも1つの酸である。
本発明はその一態様として、ポリビニルアルコールおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性高分子を含む水溶液にγ線、X線、または電子線である放射線を照射して架橋させることにより透明なゲルを形成し、得られたゲルを酸および発色剤を含む水溶液と接触させることを含む、本発明の金属材料の簡易成分分析用組成物の製造方法を提供する。
また本発明は、本発明の金属材料の簡易成分分析用組成物を被分析材料の表面に付着させ、組成物の発色を評価することを含む、金属材料の簡易成分分析方法を提供する。
本発明はさらに透明なハイドロゲル、金属成分と反応して発色する発色剤、および酸を含み、該発色剤および酸が該ゲル中に坦持され、該ハイドロゲルがシート形状であり、該シートの両面がフィルムで被覆された、金属材料の簡易成分分析用シートを提供する。
また本発明の組成物は、発色剤による呈色の、金属の量にともなう変化を観察できるように透明であることが望ましい。観察に支障がない程度の若干の着色は許容されるが、好ましくは無色透明である。
ゲル膜の厚さは、0.1mm〜10mmが好適であり、より好ましくは1〜7mmである。
また水溶性高分子の水溶液にポリアクリル酸、そのナトリウム塩、そのエステル、および/またはシクロデキストリンのような粘着性付与物質を含有させてもよい。
またゲルの全体をフィルムで覆うかまたは水分非透過性のフィルムなどで包装することにより、ゲル内の水分の蒸散を防ぐことができ、長期間の保存が可能となる。ゲルを被覆するためのシートとしては、一般的な熱可塑性樹脂フィルムを使用でき、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレンが使用できる。
所定時間経過後、あらかじめ濃度の知られたサンプルについて測定を行って作製された標準見本の色とゲルの発色を目視により比較することにより簡便に金属濃度を半定量的に測定することができる。またゲルシートについて吸光度などの光学的性質を機器分析することにより、金属濃度を定量的に測定することができる。
株式会社クラレ製のPVAの20gを精製水80gに溶解し、20%のPVA水溶液を調製した。この水溶液を厚さ約3mmになるようシャーレに流し込んだ後、電子線を 50kGy 照射して、発色剤の担持体となる透明なゲル膜を得た。得られたゲル膜を適当な大きさにカットし、1,10−フェナントロリンを含む酸性溶液中に浸漬した。一日膨潤させた後、液より取り出し、表面の溶液を取り除き、発色シートとした。なお、酸性溶液の量により、ゲル内が、約pH3になるように調製した。
1,10−フェナントロリンを含む酸性溶液の調整は、以下のようにして行った。硝酸1mlと塩酸1mlを超純水400mlに加え、0.03mol/L HNO3+0.03mol/L HClの混酸を調製した。硝酸と塩酸は、関東化学(株)製の特級品を使用した。混酸35mlに、(株)共立理化学研究所製の鉄用パックテスト(登録商標)WAK−Fe、1gを溶かし、酸性溶液とした。WAK−Feは、1,10−フェナントロリン(発色試薬)、L−アスコルビン酸ナトリウム(還元剤)、緩衝剤を含む。
作製した発色シートを用いて、予め化学組成を原子吸光分析法で決定した表1の銅合金試料に対して、鉄についての判定を行った。研磨した試験片の表面に、発色シートを貼付し、目視で観察し、橙赤色への変色有無(鉄含有の有無)を調査した。
図3に、10分間貼付後の発色シートの吸収スペクトルを示す。鉄を含まないCuFe0以外では、約510nmに鉄(II)・1,10フェナントロリン錯体による吸収が確認された。この結果から、シートで見られた橙赤色の発色が、溶出した鉄(II)と1,10−フェナントロリンとの錯体形成によることが分かった。
A=A1+A2+A3+A4+A5
A1;目的成分(鉄(II)・1,10−フェナントロリン錯体)による吸光度
A2;共存する発色試薬による吸光度
A3;ゲル間隙に存在する酸性溶液による吸光度
A4;ゲル相の吸収・散乱バックグラウンド
A5;セルによる吸収・散乱バックグラウンド
ゲルは、溶液とは違って内部の状態が同じではないので、A4が測定の度に変動し、それが測定誤差を引き起こしてしまう。そこで、各波長の吸光度と目的成分の非吸収波長における吸光度との差を用いることで、その問題を克服した。図4に、得られた吸収スペクトルより求めた吸光度差を示す。吸光度差は、各波長の吸光度値から700nmでの吸光度値を引いて算出した。目的成分の吸収極大波長である510nmでの吸光度差を見てみると、鉄の含有量が高い銅合金ほど大きな値が得られた。発色シートを用いて、銅合金中の鉄の含有量の違いを確認することができた。
HPC(和光純薬工業製,1000〜4000cP)の10gを、精製水40gとよく混練りし、ペースト状試料を調製し、プレス法により成膜した。成膜したサンプルに電子線を50kGy照射し、発色剤の担持体となる透明なゲル膜を得た。得られたゲル膜を用い、実施例1と同様の手順で発色シート(膜厚1mm)を作製した。
実施例1と同じ5種類の銅合金試料を用い、作製した発色シートによる鉄の判定を行った。各試験片に10分間貼付した後の発色シートの目視観察及び吸光度測定の結果を表3に示す。また発色シートの写真を図5に示す。ここで、目視により発色が見られなかったものを陰性、程度の差はあるが発色を確認できたものを陽性とした。CuFe0では発色は見られず、それ以外の試験片では橙赤色の発色が見られた。CuFe1は最も発色の程度が低く、目視による発色の有無の判定は困難であった。各試料の結果を比較すれば、鉄の含有量が高い銅合金ほどより強い発色が観察され、目視により判別することができた。
また、吸収スペクトルから、鉄(II)・1,10フェナントロリン錯体による510 nmの吸光度は、Fe含有量の増加に伴い増加することが分かった。従って、HPCゲル発色シートを用いて、銅合金中の鉄の含有量の違いを確認することができた。
Claims (10)
- 透明なハイドロゲル、金属成分と反応して発色する発色剤、および酸を含み、該発色剤および酸が該ゲル中に坦持されている金属材料の簡易成分分析用組成物。
- 前記の透明なハイドロゲルが、ポリビニルアルコールおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性高分子を架橋させたハイドロゲルである、請求項1記載の組成物。
- 前記水溶性高分子が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド及び天然多糖類誘導体から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、請求項2記載の組成物。
- 前記の酸が硝酸、硫酸、塩酸、リン酸およびフッ酸からなる群から選択される少なくとも1つの酸である、請求項1から3のいずれか1項記載の組成物。
- 前記の発色剤が、チオシアン酸塩、アセチルアセトン、1−10フェナントロリン、p−ジメチルアミノベンジリデンローダニン、ジチゾン、8−キノリノール、アルミノン錯体、ヨウ化カリウム、2−ヒドロキシルアニル、ニトロソR塩錯体、2−ニトロソ−1−ナフトール、ジフェニルカルバジド、ジエチルジチオカルバミン酸塩、キシリジルブルーII、ジチオール、ジメチルグリオキシム、ローダミンB、フェニルフルオロン、過酸化水素、ジアンチピリルメタン、N−ベンゾイル−N−フェニルヒドロキシルアミン、チオシアン酸塩と塩化スズ、およびジンコンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1から4のいずれか1項記載の組成物。
- 前記の金属成分が、Fe、Ag、Al、Bi、Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Hg、Mg、Mo、Ni、Pb、Sb、Sn、Ti、V、WおよびZnからなる群から選択される少なくとも1つの金属である、請求項1から5のいずれか1項記載の組成物。
- 分析される金属成分が鉄であり、発色剤が1−10フェナントロリンであり、酸が硝酸および塩酸の混酸である、請求項1記載の組成物。
- ポリビニルアルコールおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性高分子を含む水溶液にγ線、X線、または電子線である放射線を照射して架橋させることにより透明なゲルを形成し、得られたゲルを酸および発色剤を含む水溶液と接触させることを含む、請求項1から7のいずれか1項記載の金属材料の簡易成分分析用組成物の製造方法。
- 請求項1から7のいずれか1項記載の金属材料の簡易成分分析用組成物を被分析材料の表面に付着させ、組成物の発色を評価することを含む、金属材料の簡易成分分析方法。
- 透明なハイドロゲル、金属成分と反応して発色する発色剤、および酸を含み、該発色剤および酸が該ゲル中に坦持され、該ハイドロゲルがシート形状であり、該シートの両面がフィルムで被覆された、金属材料の簡易成分分析用シート。
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