JP2010013534A - アクリル系多段階重合体の粉体の製造方法、メタクリル系樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】着色が抑制され、透明で耐衝撃性に優れた、メタクリル系樹脂を使用した成形品とするために使用されるアクリル系多段階重合体の粉体、この粉体を含有するメタクリル系樹脂組成物及びメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品を提供する。
【解決手段】アクリル系多段階重合体を構成する単量体100質量部に対して0.1〜0.3質量部の還元剤を含有するレドックス開始剤による乳化重合によってアクリル系多段階重合体のラテックスを製造した後に、アクリル系多段階重合体のラテックスを噴霧乾燥してアクリル系多段階重合体の粉体を製造する方法、アクリル系多段階重合体の粉体及びメチルメタクリレート単位を含有するメタクリル系樹脂を有するメタクリル系樹脂組成物及びメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品。
【選択図】なし
【解決手段】アクリル系多段階重合体を構成する単量体100質量部に対して0.1〜0.3質量部の還元剤を含有するレドックス開始剤による乳化重合によってアクリル系多段階重合体のラテックスを製造した後に、アクリル系多段階重合体のラテックスを噴霧乾燥してアクリル系多段階重合体の粉体を製造する方法、アクリル系多段階重合体の粉体及びメチルメタクリレート単位を含有するメタクリル系樹脂を有するメタクリル系樹脂組成物及びメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品。
【選択図】なし
Description
本発明はアクリル系多段階重合体の粉体の製造方法、メタクリル系樹脂組成物及び成形品に関する。
アクリル系多段階重合体はメタクリル樹脂等の各種プラスチック製品の耐衝撃性改質剤等として使用されている。これらのアクリル系多段階重合体の製造方法としては、レドックス開始剤系を用いた乳化重合法を用いるのが一般的である。従って、メタクリル樹脂等の各種プラスチックと溶融混練するためには、乳化重合により生成されたラテックスから重合体を乾燥した粉体として回収する必要がある。
このラテックスから重合体を回収する方法としては、ラテックスを直接熱風中に噴霧して乾燥する噴霧乾燥法が挙げられ、粒子が均一な球状の粉体が得られるが、次のような問題点がある。噴霧乾燥法で得られる重合体の粉体中には、乳化重合で使用される乳化剤、触媒、開始剤等の原料や、これらの原料が分解されて生成する成分が残留する。このため、メタクリル樹脂等と溶融混練して成形した際に、熱により着色する現象が起こり製品価値を低下させる等の問題があった。
上記問題を解決するために、乳化重合により得られた粉体状グラフト共重合体を噴霧乾燥により回収する方法において、乳化重合の際に特定の乳化剤、開始剤を使用することにより、塩化ビニル樹脂と溶融混練する際の熱安定性の低下及び成形品の温水白化を抑制し、耐衝撃性を向上できるブタジエン系グラフト重合体の製造方法が提案されている。(特許文献1)
しかしながら、特許文献1には、着色が抑制され、透明性及び耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる、乳化重合ラテックスを噴霧乾燥して得られるアクリル系グラフト共重合体の粉体については何ら開示されていない。
特開2000−72835号公報
しかしながら、特許文献1には、着色が抑制され、透明性及び耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる、乳化重合ラテックスを噴霧乾燥して得られるアクリル系グラフト共重合体の粉体については何ら開示されていない。
本発明の目的は、着色が抑制され、透明で耐衝撃性に優れた、メタクリル系樹脂を使用した成形品とするために使用されるアクリル系多段階重合体の粉体、この粉体を含有するメタクリル系樹脂組成物及びメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品を提供することである。
本発明の要旨とするところは、アクリル系多段階重合体を構成する全単量体100質量部に対して0.1〜0.3質量部の還元剤を含有するレドックス開始剤による乳化重合によってアクリル系多段階重合体のラテックスを製造した後に、アクリル系多段階重合体のラテックスを噴霧乾燥してアクリル系多段階重合体の粉体を製造する方法を第1の発明とする。
また、本発明の要旨とするところは、上記の方法により製造されるアクリル系多段階重合体の粉体及びメチルメタクリレート単位を含有するメタクリル系樹脂を有するメタクリル系樹脂組成物を第2の発明とする。
更に、本発明の要旨とするところは、上記のメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品を第3の発明とする。
本発明のアクリル系多段階重合体の粉体は、メタクリル系樹脂等と溶融混練して成形したときに成形品の着色が抑制され、透明で耐衝撃性に優れた成形品を得ることができることから、照明、自動車、OA機器等の用途に使用することができる。
アクリル系多段階重合体
本発明で使用されるアクリル系多段階重合体は乳化重合によって得られたものである。
本発明で使用されるアクリル系多段階重合体は乳化重合によって得られたものである。
乳化重合により得られるラテックス中のアクリル系多段階重合体の粒子径としては特に制限はないが、50〜2,000nmが好ましい。
アクリル系多段階重合体としては、例えば、単独で重合した場合に得られる重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」という)が25℃以下である単量体を構成単位として有する少なくとも一段重合により得られるゴム状弾性体(軟質重合体)を一段目重合体とし、この一段目重合体の存在下に、最終段重合体として、単独で重合した場合に得られる重合体のTgが50℃以上である単量体を構成単位として有する硬質重合体の層を重合させたものが挙げられる。
更に、アクリル系多段階重合体としては、上記の一段目重合体と最終段重合体に、三段階以上の多段階の重合体となるように一段目重合体の前後に少なくとも一種の重合体を設けることにより多段階重合体としてもよい。各段階の重合体は、乳化重合により得ることが好ましい。
上記三段階以上の多段階重合体の具体例としては、一段目重合体として上記硬質重合体、二段目以降重合体(最終段重合体を除く)として上記の軟質重合体を重合させたもの及び最終段重合体として上記硬質重合体を重合させた三段階重合による重合体;一段目重合体としてTgが25℃より高く50℃未満になる半硬質重合体、二段目以降重合体(最終段重合体を除く)として前記の軟質重合体を重合させたもの及び最終段重合体として前記の硬質重合体を重合させた三段階重合による重合体;並びに一段目重合体として上記の軟質重合体、二段目として前記の硬質重合体を重合させたもの、三段目として前記の軟質重合体を重合させたもの及び最終段重合体として前記の硬質重合体を重合させた四段階重合による重合体を挙げることができる。
アクリル系多段階重合体を形成する軟質重合体(ゴム状弾性体)を構成するための原料となる単量体組成としては、単独で重合した場合に得られる重合体のTgが25℃以下となる単量体又は単量体混合物が挙げられる。この単量体又は単量体混合物の組成として、例えば、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート40〜90質量%及びこれと共重合可能な1個のビニル基を有する単官能性単量体10〜60質量%を含有する単量体混合物100質量部に対して、グラフト交叉剤0.1〜10質量部及び架橋剤0.1〜10質量部を含有するものが挙げられる。
上記の炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、n−ブチルアクリレートが好ましい。
上記の共重合可能な1個のビニル基を有する単官能性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族不飽和単量体及びフェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル系単量体が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、得られる重合体の屈折率を調整する際にはスチレンが好適に使用される。
上記のグラフト交叉剤は反応性の異なるラジカル重合性ビニル基を少なくとも2個有している化合物である。グラフト交叉剤の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はフマル酸のアリルエステルが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アクリル酸アリル及びメタクリル酸アリルが好ましい。
上記の架橋剤は分子中に反応性が同じラジカル重合性ビニル基を少なくとも2個有している化合物である。架橋剤の具体例としては、1,3−ブタンジオールジメタクリレート及び1,4−ブタンジオールジアクリレートが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系多段階重合体において、最終段重合体を形成する際の硬質重合体を構成するための原料となる単量体組成としては、単独で重合した場合に得られる重合体のTgが50℃以上となる単量体又は単量体混合物が挙げられる。この単量体又は単量体混合物の組成として、例えば、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート60〜100質量%及びこれらと共重合可能な他の不飽和単量体0〜40質量%を含有する単量体又は単量体混合物が挙げられる。
上記の炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート及びn−ブチルメタクリレートが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうちメチルメタクリレートが好ましい。
上記の共重合可能な他の不飽和単量体としては、例えば、前述した炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート、共重合可能な1個のビニル基を有する単官能性単量体及びアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明における乳化重合により得られるアクリル系多段階重合体のラテックスは以下に示すように公知の方法により得られる。
まず、一段目重合体を構成するための単量体成分を乳化重合し、一段目重合体用の重合体ラテックスを得る。次いで、得られた最内層用の重合体ラテックスの存在下に、目的とする多段構造を形成させるための単量体を順次乳化重合することによってアクリル系多段階重合体のラテックスが得られる。
レドックス開始剤
上記の乳化重合に使用する重合開始剤には、過酸化物、触媒、還元剤及び触媒を安定化させるキレート剤を組み合わせたレドックス開始剤が含有されることが好ましい。
上記の乳化重合に使用する重合開始剤には、過酸化物、触媒、還元剤及び触媒を安定化させるキレート剤を組み合わせたレドックス開始剤が含有されることが好ましい。
本発明においては、過酸化物としては、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイドが好ましい。
過酸化物
過酸化物の使用量は用いる過酸化物やアクリル系多段階重合体を構成する単量体によって異なるが、例えば、単量体100質量部に対して0.1〜5.0質量部が好ましい。
過酸化物の使用量は用いる過酸化物やアクリル系多段階重合体を構成する単量体によって異なるが、例えば、単量体100質量部に対して0.1〜5.0質量部が好ましい。
触媒
また、触媒としては、硫酸第一鉄が好ましい。
また、触媒としては、硫酸第一鉄が好ましい。
触媒の使用量はアクリル系多段階重合体を構成する単量体100質量部に対して0.000025〜0.005質量部が好ましい。
還元剤
更に、還元剤としては、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートが好ましい。
更に、還元剤としては、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートが好ましい。
還元剤の使用量はアクリル系多段階重合体を構成する全単量体100質量部に対して0.1〜0.3質量部である。還元剤の使用量をこの範囲で使用するとメタクリル樹脂と溶融混練して成形した成形品の着色性が小さくなる。好ましい還元剤の使用量は0.1〜0.2質量部である。
キレート剤
また、キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムが好ましい。
また、キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムが好ましい。
キレート剤の使用量はアクリル系多段階重合体を構成する単量体100質量部に対して0.000075〜0.015質量部が好ましい。
乳化重合
本発明における乳化重合においては、反応容器への単量体組成物及び重合開始剤等の添加方法としては、一括添加、分割添加、連続添加法等の公知の方法を採用することができる。また、重合に際しては、反応をスムーズに進めるために反応容器内を窒素置換する方法、残存単量体を除去するために反応終了後反応液を昇温する方法、鉄等の触媒を添加する方法等を採用することができる。
本発明における乳化重合においては、反応容器への単量体組成物及び重合開始剤等の添加方法としては、一括添加、分割添加、連続添加法等の公知の方法を採用することができる。また、重合に際しては、反応をスムーズに進めるために反応容器内を窒素置換する方法、残存単量体を除去するために反応終了後反応液を昇温する方法、鉄等の触媒を添加する方法等を採用することができる。
上記の乳化重合における重合温度としては、例えば、30〜120℃とすることができ、好ましくは50〜100℃である。また、乳化重合におけるアクリル系多段階重合体を構成する単量体と水の質量比としては、例えばアクリル系多段階重合体を構成する単量体1に対して水1〜5程度とすることができる。
上記の乳化重合に用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が挙げられるが、アニオン系の乳化剤が好ましい。
アニオン系の乳化剤としては、例えば、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等のカルボン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩が挙げられる。
乳化剤の使用量は使用する乳化剤、単量体の種類や配合比、重合条件によって適宜選択することができるが、アクリル系多段階重合体を構成する単量体100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、乳化剤の使用量は重合体への残存量を抑えるため、アクリル系多段階重合体を構成する単量体成分100質量部に対して10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
上記の乳化重合に際しては、連鎖移動剤、紫外線吸収剤等、重合時に添加する添加剤を用いることができる。
アクリル系多段階重合体の粉体
本発明のアクリル系多段階重合体の粉体は上述で得られたアクリル系多段階重合体のラテックスを噴霧乾燥してポリマーを回収することにより得られる。また、噴霧乾燥する際に、アクリル系多段階重合体のラテックスは単独で、又は複数のアクリル系多段階重合体のラテックスを組合わせて用いることができる。
本発明のアクリル系多段階重合体の粉体は上述で得られたアクリル系多段階重合体のラテックスを噴霧乾燥してポリマーを回収することにより得られる。また、噴霧乾燥する際に、アクリル系多段階重合体のラテックスは単独で、又は複数のアクリル系多段階重合体のラテックスを組合わせて用いることができる。
アクリル系多段階重合体の粉体の粒子径としては、例えば、30〜300μm程度のものとなる。
噴霧乾燥法は、ラテックスを微小液滴状に噴霧し、これに熱風を当てて乾燥する方法である。
噴霧乾燥に用いられる装置としては特に制限はなく、液滴を発生させる方式としては、例えば、回転円盤式、圧力ノズル式、2流体ノズル式及び加圧2流体ノズル式が挙げられる。
また、乾燥容量も特に制限は無く、実験室で使用する小規模スケールから工業的に使用するような大規模スケールまでいずれの乾燥容量のものでも使用することができる。
噴霧乾燥機における乾燥用加熱ガスの供給部である入口部や乾燥用加熱ガス及び乾燥粉体の排出口である排出口の位置は特に限定されるものではなく、通常用いられている噴霧乾燥の装置と同様とすることができる。
噴霧乾燥機内に導入する熱風の温度(熱風入口温度)、即ちアクリル系多段階重合体に接触し得る熱風の最高温度は200℃以下が好ましく、120〜180℃がより好ましい。
本発明においては、アクリル系多段階重合体の粉体のブロッキング、嵩比重等の粉体特性を向上させるために、必要に応じてアクリル系多段階重合体のラテックスの噴霧乾燥後に、シリカ、タルク、炭酸カルシウム等の無機質充填剤添加することができる。
また、アクリル系多段階重合体の粉体を得る前に、アクリル系多段階重合体のラテックス中に酸化防止剤、添加剤等の各種添加剤を配合することができる。
メタクリル系樹脂
本発明においては、上述したアクリル系多段階重合体の粉体とメチルメタクリレート単位を含有するメタクリル系樹脂とを有するメタクリル系樹脂組成物を得る。
本発明においては、上述したアクリル系多段階重合体の粉体とメチルメタクリレート単位を含有するメタクリル系樹脂とを有するメタクリル系樹脂組成物を得る。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂としては、メチルメタクリレートを構成単位として有するものであり、構成単位としてメチルメタクリレート単位をメタクリル樹脂中、50〜100質量%及びメチルメタクリレートと共重合可能なメチルメタクリレート以外のビニル又はビニリデン単量体単位0〜50質量%を主要構成単位とする重合体が好ましく、メチルメタクリレート単位を80〜99質量%含有する重合体がより好ましい。
その他のビニル又はビニリデン単量体単位を構成するための原料であるその他のビニル又はビニリデン単量体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルアクリレート及びスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。
メタクリル系樹脂組成物
本発明のメタクリル系樹脂組成物中のメタクリル系樹脂と本発明のアクリル系多段階重合体の粉体との配合割合は用途により任意に選ぶことができ、メタクリル系樹脂とアクリル系多段階重合体の粉体との質量比は95/5〜5/95とすることが好ましい。
本発明のメタクリル系樹脂組成物中のメタクリル系樹脂と本発明のアクリル系多段階重合体の粉体との配合割合は用途により任意に選ぶことができ、メタクリル系樹脂とアクリル系多段階重合体の粉体との質量比は95/5〜5/95とすることが好ましい。
本発明のメタクリル系樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、顔料、染料等を添加することができる。
本発明のメタクリル系樹脂組成物はメタクリル系樹脂とアクリル系多段階重合体の粉体とを所定の配合比で混合し、押出成形機等を使用して加熱溶融することにより得ることが好ましい。加熱溶融温度はメタクリル系樹脂とアクリル系多段階重合体の粉体の溶融温度以上であればよく、例えば、200〜300℃とすることができる。
成形品
本発明の成形品はメタクリル系樹脂組成物を射出成形等の各種成形法により成形して得ることができる。
本発明の成形品はメタクリル系樹脂組成物を射出成形等の各種成形法により成形して得ることができる。
本発明の成形品は着色が抑制され、且つ耐衝撃性及び透明性に優れていることから、照明、自動車、OA機器等の用途に使用することができる。
以下、本発明を実施例により説明する。尚、実施例中の「部」は「質量部」を表す。
また、アクリル系多段階重合体のTg並びに成形品のアイゾット衝撃強度、全光線透過率、YI値及びヘイズ値の評価は以下の方法により実施した。
(1)Tg
アクリル系多段階重合体の各層を構成する重合体のTgは、原料単量体組成物中の単官能性単量体のみを重合した単独重合体のTgを用いて、以下のFOXの式により算出して求めた。
アクリル系多段階重合体の各層を構成する重合体のTgは、原料単量体組成物中の単官能性単量体のみを重合した単独重合体のTgを用いて、以下のFOXの式により算出して求めた。
FOXの式:1/Tg=Σ(wi/Tgi)
式中、wiは単量体iの質量割合、Tgiは単量体iの単独重合体のTgを表す。
式中、wiは単量体iの質量割合、Tgiは単量体iの単独重合体のTgを表す。
尚、単官能性単量体の単独重合体のTgはPOLYMER HANDBOOK THIRD EDITIONのデータを引用した。
(2)アイゾット衝撃強度
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で127×12.7×6.35mmの試片を作製し、それを63.5mmに切断したものを試験片とした。この試験片に自動ノッチングマシーン((株)東洋精機製作所製、ノッチングツール型番:A−3)でノッチを付け、ノッチ付き試験片を作製した。ノッチ付き試験片を使用してASTM−D−256に準拠して、デジタル衝撃試験機((株)東洋精機製作所製、ユニバーサル式、型番:DG−UB)にてハンマー秤量2.75Jでアイゾット衝撃強度(kJ/cm2)を測定した。
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で127×12.7×6.35mmの試片を作製し、それを63.5mmに切断したものを試験片とした。この試験片に自動ノッチングマシーン((株)東洋精機製作所製、ノッチングツール型番:A−3)でノッチを付け、ノッチ付き試験片を作製した。ノッチ付き試験片を使用してASTM−D−256に準拠して、デジタル衝撃試験機((株)東洋精機製作所製、ユニバーサル式、型番:DG−UB)にてハンマー秤量2.75Jでアイゾット衝撃強度(kJ/cm2)を測定した。
(3)全光線透過率
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で100×50×2mmの試験片を作製し、ASTM−D1003に準拠して、ヘイズメーター((株)村上色彩研究所製、HR−100(商品名))を使用して全光線透過率(%)を測定した。
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で100×50×2mmの試験片を作製し、ASTM−D1003に準拠して、ヘイズメーター((株)村上色彩研究所製、HR−100(商品名))を使用して全光線透過率(%)を測定した。
(4)YI(イエローインデックス)値
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で100×50×2mmの試験片を作製し、JIS Z−8722に準拠して、分光式色差計(日本電色工業(株)製、SE−2000(商品名))を使用し、透過・C光源・2℃視野の条件でYI値(−)を測定した。
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で100×50×2mmの試験片を作製し、JIS Z−8722に準拠して、分光式色差計(日本電色工業(株)製、SE−2000(商品名))を使用し、透過・C光源・2℃視野の条件でYI値(−)を測定した。
(5)ヘイズ値
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で100×50×2mmの試験片を作製し、ASTM−D1003に準拠して、ヘイズメーター((株)村上色彩研究所製、HR−100(商品名))を使用してヘイズ値(%)を測定した。
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で100×50×2mmの試験片を作製し、ASTM−D1003に準拠して、ヘイズメーター((株)村上色彩研究所製、HR−100(商品名))を使用してヘイズ値(%)を測定した。
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、窒素吹き込み口、単量体追加口及び温度計を備えた5口フラスコに窒素置換したイオン交換水217.2部を投入した。次いで、容器内を加熱し、内温が80℃になった時点で下記の組成の混合物(a)を投入し、15分間保持した。
撹拌機、還流冷却器、窒素吹き込み口、単量体追加口及び温度計を備えた5口フラスコに窒素置換したイオン交換水217.2部を投入した。次いで、容器内を加熱し、内温が80℃になった時点で下記の組成の混合物(a)を投入し、15分間保持した。
(混合物(a))
イオン交換水: 5部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(CRO):
0.203部
硫酸第1鉄: 1.0×10−4部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム: 3.0×10−4部
この後、下記の組成の混合物(b)の1/10を5分間かけて滴下し、15分間保持した。その後、混合物(b)の残り9/10を110分かけて滴下し、80℃に保ったまま30分間保持し、一段目重合体(A−1)のラテックスを得た。一段目重合体(A−1)の重合率は99%以上であった。また、一段目重合体(A−1)のTgは18.1℃であった。
イオン交換水: 5部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(CRO):
0.203部
硫酸第1鉄: 1.0×10−4部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム: 3.0×10−4部
この後、下記の組成の混合物(b)の1/10を5分間かけて滴下し、15分間保持した。その後、混合物(b)の残り9/10を110分かけて滴下し、80℃に保ったまま30分間保持し、一段目重合体(A−1)のラテックスを得た。一段目重合体(A−1)の重合率は99%以上であった。また、一段目重合体(A−1)のTgは18.1℃であった。
(混合物(b))
メチルメタクリレート(MMA): 13.9375部
スチレン(ST): 1.0625部
n−ブチルアクリレート(nBA): 10.0部
1,3−ブタンジオールジメタクリレート(1,3BD):
0.75部
アリルメタクリレート(ALMA): 0.0938部
t−ブチルハイドロパーオキサイド(tBH):
0.438部
乳化剤A(NA): 1.20部
(乳化剤Aとしては、東邦化学(株)製ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩:フォスファノールRS−610NA(商品名)を使用した。)
引き続き、フラスコ内の上記の一段目重合体(A−1)のラテックス中に、下記の組成の混合物(c)を180分間かけて滴下し、滴下終了から30分後にクメンハイドロパーオキサイド(CHP)0.0528部を添加し、更に80℃に保ったまま50分保持し、二段目重合体(B−1)の重合を完結させた。二段目重合体(B−1)の重合率は99%以上であった。また、二段目重合体(B−1)のTgは−37.8℃であった。
メチルメタクリレート(MMA): 13.9375部
スチレン(ST): 1.0625部
n−ブチルアクリレート(nBA): 10.0部
1,3−ブタンジオールジメタクリレート(1,3BD):
0.75部
アリルメタクリレート(ALMA): 0.0938部
t−ブチルハイドロパーオキサイド(tBH):
0.438部
乳化剤A(NA): 1.20部
(乳化剤Aとしては、東邦化学(株)製ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩:フォスファノールRS−610NA(商品名)を使用した。)
引き続き、フラスコ内の上記の一段目重合体(A−1)のラテックス中に、下記の組成の混合物(c)を180分間かけて滴下し、滴下終了から30分後にクメンハイドロパーオキサイド(CHP)0.0528部を添加し、更に80℃に保ったまま50分保持し、二段目重合体(B−1)の重合を完結させた。二段目重合体(B−1)の重合率は99%以上であった。また、二段目重合体(B−1)のTgは−37.8℃であった。
(混合物(c))
ST: 6.5625部
nBA: 30.9375部
1,3BD: 0.09375部
ALMA: 0.65625部
CHP: 0.3169部
NA: 0.3部
次に、上記反応器内に、下記の組成の混合物(d)を120分間かけて滴下し、更に80℃に保ったまま60分保持し、三段目重合体(C−1)の重合を完結させ、アクリル系多段階重合体(イ)のラテックスを得た。三段目重合体(C−1)の重合率は99%以上であった。また、三段目重合体(C−1)のTgは98.6℃であった。尚、アクリル系多段階重合体(イ)のラテックスの固形分は45.3質量%であった。
ST: 6.5625部
nBA: 30.9375部
1,3BD: 0.09375部
ALMA: 0.65625部
CHP: 0.3169部
NA: 0.3部
次に、上記反応器内に、下記の組成の混合物(d)を120分間かけて滴下し、更に80℃に保ったまま60分保持し、三段目重合体(C−1)の重合を完結させ、アクリル系多段階重合体(イ)のラテックスを得た。三段目重合体(C−1)の重合率は99%以上であった。また、三段目重合体(C−1)のTgは98.6℃であった。尚、アクリル系多段階重合体(イ)のラテックスの固形分は45.3質量%であった。
(混合物(d)
MMA: 35.625部
メチルアクリレート(MA): 1.875部
tBH: 0.06375部
n−オクチルメルカプタン(nOM):0.1125部
得られたアクリル系多段階重合体(イ)のラテックスを5kg/hrで供給し、NIRO JAPAN(株)製小型スプレードライヤー(直胴部高さ;0.8m、直胴部内径;1.5m、回転円盤型アトマイザー)を用い、熱風入口温度150℃の条件で噴霧乾燥し、アクリル系多段階重合体(イ)の粉体を得た。
MMA: 35.625部
メチルアクリレート(MA): 1.875部
tBH: 0.06375部
n−オクチルメルカプタン(nOM):0.1125部
得られたアクリル系多段階重合体(イ)のラテックスを5kg/hrで供給し、NIRO JAPAN(株)製小型スプレードライヤー(直胴部高さ;0.8m、直胴部内径;1.5m、回転円盤型アトマイザー)を用い、熱風入口温度150℃の条件で噴霧乾燥し、アクリル系多段階重合体(イ)の粉体を得た。
得られたアクリル系多段階重合体(イ)の粉体400部及びメタクリル系樹脂として三菱レイヨン(株)製アクリペット(登録商標)VH(商品名)600部の混合物を、外形30mmφの2軸スクリュー型押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30(商品名)、L/D=25)を用い、シリンダー温度250℃で溶融混練してメタクリル系樹脂組成物(イ)を得、次いで射出成形機で成形して成形品(イ)の試験片を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1に示す。
[実施例2]
硫酸第1鉄の量を2.0×10−4部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの量を6.0×10−4部及びCROの量を0.101部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体(ロ)の粉体及びメタクリル系樹脂組成物(ロ)を得、成形品(ロ)の試験片を作製し、各種評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
硫酸第1鉄の量を2.0×10−4部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの量を6.0×10−4部及びCROの量を0.101部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体(ロ)の粉体及びメタクリル系樹脂組成物(ロ)を得、成形品(ロ)の試験片を作製し、各種評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
[実施例3]
CROの量を0.304部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体(ハ)の粉体及びメタクリル系樹脂組成物(ハ)を得、成形品(ハ)の試験片を作製し、各種評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
CROの量を0.304部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体(ハ)の粉体及びメタクリル系樹脂組成物(ハ)を得、成形品(ハ)の試験片を作製し、各種評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
[比較例1]
混合物(a)中のCROの量を0.25部に変更する以外は実施例1と同様にして一段目重合体(A’−1)のラテックスを得た。次いで、一段目重合体(A’−1)のラテックス中にCROを0.125部添加した後に、実施例1と同様にして混合物(c)を滴下し、更にCHPの添加前にCROを0.125部添加する以外は実施例1と同様にして二段目重合体(B’−1)のラテックスを得た。この後、二段目重合体(B’−1)のラテックス中にCROを0.125部添加した後に、実施例1と同様にして三段目重合体(C’−1)の重合を完結させ、アクリル系多段階重合体粉体(ニ)の粉体及びメタクリル系樹脂組成物(ニ)を得、成形品(ニ)の試験片を作製し、各種評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
混合物(a)中のCROの量を0.25部に変更する以外は実施例1と同様にして一段目重合体(A’−1)のラテックスを得た。次いで、一段目重合体(A’−1)のラテックス中にCROを0.125部添加した後に、実施例1と同様にして混合物(c)を滴下し、更にCHPの添加前にCROを0.125部添加する以外は実施例1と同様にして二段目重合体(B’−1)のラテックスを得た。この後、二段目重合体(B’−1)のラテックス中にCROを0.125部添加した後に、実施例1と同様にして三段目重合体(C’−1)の重合を完結させ、アクリル系多段階重合体粉体(ニ)の粉体及びメタクリル系樹脂組成物(ニ)を得、成形品(ニ)の試験片を作製し、各種評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
Claims (4)
- アクリル系多段階重合体を構成する全単量体100質量部に対して0.1〜0.3質量部の還元剤を含有するレドックス開始剤による乳化重合によってアクリル系多段階重合体のラテックスを製造した後に、アクリル系多段階重合体のラテックスを噴霧乾燥してアクリル系多段階重合体の粉体を製造する方法。
- 還元剤がナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートである請求項1に記載のアクリル系多段階重合体の粉体を製造する方法。
- 請求項1又は2に記載の方法により製造されるアクリル系多段階重合体の粉体及びメチルメタクリレート単位を含有するメタクリル系樹脂を有するメタクリル系樹脂組成物。
- 請求項3に記載のメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008173991A JP2010013534A (ja) | 2008-07-02 | 2008-07-02 | アクリル系多段階重合体の粉体の製造方法、メタクリル系樹脂組成物及び成形品 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008173991A JP2010013534A (ja) | 2008-07-02 | 2008-07-02 | アクリル系多段階重合体の粉体の製造方法、メタクリル系樹脂組成物及び成形品 |
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JP (1) | JP2010013534A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012067297A (ja) * | 2010-09-21 | 2012-04-05 | Rohm & Haas Co | Ir反射組成物 |
WO2020195988A1 (ja) * | 2019-03-28 | 2020-10-01 | 東レ株式会社 | 二次電池用セパレータ、熱可塑性樹脂造粒体、スラリー組成物、及びこれらの製造方法、並びに二次電池 |
-
2008
- 2008-07-02 JP JP2008173991A patent/JP2010013534A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012067297A (ja) * | 2010-09-21 | 2012-04-05 | Rohm & Haas Co | Ir反射組成物 |
WO2020195988A1 (ja) * | 2019-03-28 | 2020-10-01 | 東レ株式会社 | 二次電池用セパレータ、熱可塑性樹脂造粒体、スラリー組成物、及びこれらの製造方法、並びに二次電池 |
JPWO2020195988A1 (ja) * | 2019-03-28 | 2020-10-01 | ||
JP7243716B2 (ja) | 2019-03-28 | 2023-03-22 | 東レ株式会社 | 二次電池用セパレータ、熱可塑性樹脂造粒体、スラリー組成物、及びこれらの製造方法、並びに二次電池 |
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