JP2010013509A - 有機無機ハイブリッド材料及びその製造方法 - Google Patents

有機無機ハイブリッド材料及びその製造方法 Download PDF

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【課題】水素結合性ポリマーとシリカからなる有機無機ハイブリッド材料及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、沈降シリカと同様の外観と嵩高さを有する新規な有機無機ハイブリッド材料、及びその製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明は、シリカと水素結合性ポリマーからなる有機無機ハイブリッド材料であって、水銀ポロシメーターによる細孔径3nm〜10μmの範囲の細孔容積が0.6ml/g以上であることを特徴とする有機無機ハイブリッド材料、及び、アルカリ金属珪酸塩と酸性化剤を、水及び水素結合性ポリマーの存在下で、pHを4〜9に維持しながら反応させ、反応物を沈降させることを特徴とする有機無機ハイブリッド材料の製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、水素結合性ポリマーとシリカからなる有機無機ハイブリッド材料及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、沈降シリカと同様の外観と嵩高さを有する新規な有機無機ハイブリッド材料、及びその製造方法に関するものである。
沈降シリカは不規則な形状をした約5nm〜50nmの一次粒子が強固に結合した二次粒子であり、平均二次粒子径はおよそ1μm〜100μmの範囲である。その細孔容積の大きさはシリカ以外の他の顔料、例えば炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタンなどの顔料とは一線を画するものである。細孔容積は水銀ポロシメーターによって測定することができ、細孔径3nm〜10μmの範囲の細孔容積はおよそ0.6ml/g〜4.5ml/gの範囲にある。因みに炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタンは0.2ml/g〜0.5ml/g程度である。そのため多くの用途があり、例えば、ゴムや樹脂の補強剤、インク、塗料、樹脂、グリースなどの粘性調整剤やチクソトロピー付与剤、研磨剤、つや消し剤、製紙用填料や顔料、農薬や触媒の担持材料、断熱材、フィルムのブロッキング防止剤などとして大量に用いられている。
沈降シリカの製造は基本的には珪酸ナトリウムなどの水溶性珪酸塩の水溶液を酸性化剤で中和することにより行われる。しかし、中和条件を工夫しないとシリカが粒子として沈降せず、寒天状の珪酸のゲルを生じ、これから工業製品として有用な形態に精製することは著しく手間とコストを要する。そのため、ゲル化を回避し、なおかつ生産性の高い製造方法が古くから種々工夫されてきた。
例えば、特許文献1では、アルカリ金属珪酸塩水溶液の酸性化を少なくとも二回に分けて行い、かつ前段の酸性化段階においてはアルカリ金属珪酸塩水溶液のSiO/NaOのモル比を4〜8にするに必要な酸を比較的徐々に添加し、次いで常温〜150℃において反応液の粘度が最高となる範囲を過ぎてしまうまで中間熟成を行い、その後残余の所要量の酸を一挙に又は断続的に反応液中に添加して後段の酸性化を完成することを特徴とし、かくして得られたシリカ懸濁液を必要に応じて50〜150℃において加熱処理し、水洗、pH調節などを行うことからなる微粉ケイ酸の製造法が開示されている。
特許文献2では、
(1)アルカリ金属又はアルカリ土類金属珪酸塩及び/又は有機及び/又は無機塩基の水溶液をpH7〜8.5で反応釜に前装入し、
(2)この前装入物に、撹拌下に55〜95℃で10〜120分間、同時的に水ガラス及び酸性化剤を添加し、
(3)酸性化剤で約3.5のpH値まで酸性にし、かつ
(4)ろ過し、かつ乾燥させることを特徴とする、沈降シリカの製法が開示されている。(2)の工程ではpHを7.5に制御することが実施例に記載されている。
上記の方法においては、反応条件の制御によってシリカの物理的な形状を変更することができる。例えば比表面積、細孔容積、及び粒子径を広範囲に変更が可能である。しかし、当然なことに化学的な性質は変えることができない。そのため、用途によっては種々の表面処理法が工夫されてきた。例えばシランカップリング剤による表面処理は代表的なものであり、その他、金属酸化物や水酸化物による表面処理、界面活性剤や水溶性樹脂による表面処理が行なわれている。しかしながら、表面処理ではシリカ内部の性質までは変更できないため、その密度や屈折率、誘電率など大きく変更できない物性もあった。
このような表面処理法とは別に、特定の水溶性ポリマーとシリカがハイブリッドを形成することが明らかになり、新規な材料を得る方法として注目を集めている。例えば、非特許文献1には、ポリビニルピロリドンなどアミドカルボニル基を有するポリマーを用い、テトラメトキシシランなどのゾルゲル反応系中に共存させることでハイブリッドが合成できることが記載されている。このハイブリッドは走査型電子顕微鏡レベルでの凝集は観察されず、見た目にも透明な材料である。従って、この材料は微視的にはシリカの存在領域と水溶性ポリマーの存在領域が区別できるが、その大きさは分子レベル又は10nm未満であり、かつ巨視的にはシリカの存在領域と水溶性ポリマーの存在領域が均一に分布して一体化している材料である。また本発明者らの検討結果では、このハイブリッドは沸騰水中でも安定であり、水溶性ポリマーの溶出が事実上認められなかった。このようなハイブリッドができる理由は、ポリマー中のアミドカルボニル基が水素結合受容基となり、シリカマトリックスのシラノール基と効果的に水素結合を形成することにより、ポリマーやシリカマトリックスの凝集が抑えられることによると考えられている。この方法は表面処理とは異なり、シリカと水溶性樹脂の割合を大きく変更することができるので、シリカの化学的性質だけでなく、その密度や屈折率、誘電率など種々の物性までも変更することが可能となる。この方法により得られる材料は粉砕することにより填料や顔料として用いうるが、沈降シリカのように比表面積や細孔容積が大きくないため、用途が制限される欠点があった。
また、非特許文献2には、酸性コロイダルシリカまたは、珪酸ナトリウム水溶液を硫酸で中和してpH2とし、熟成させて製造したポリ珪酸と特定の極性有機化合物を混合すると、コアセルベーションによってシリカと有機化合物の球状コンプレックスが沈降すると記載されている。この球状一次粒子は、一次粒子同士が凝集して二次粒子を形成する傾向が小さいために、細孔容積は沈降シリカと比較すると小さいものであった。似た構成の技術として、特許文献3には珪酸アルカリ水溶液、アクリルアミド系重合体、及び部分中和量の酸水溶液を混合し、放置して珪酸アルカリの部分中和物から成る粒状物を生成させ、この粒状物を分離した後、酸で中和することを特徴とする球状非晶質シリカの製造方法が開示されている。この特許文献3の方法では、水溶性樹脂はシリカとの結合が弱く、洗浄工程で溶出するものであり製品中には残らないため、非特許文献1で報告されているハイブリッドとは異なるものである。
特公昭38−17651号公報 特表2005−534608号公報(請求項5等) 特開平7−81930号公報 高分子、56巻、3月号、118〜121ページ(2007年) THE CHEMISTRY OF SILICA,RALPH K.ILER,Wiley−Interscience Publication,p.396〜398)
本発明は、非特許文献1で報告されているような水素結合性ポリマーとシリカが分子レベル又は10nm未満のナノレベルで均一に一体化しているハイブリッド材料において、沈降シリカと同様の外観と嵩高さを有するものを提供する。さらにその効率的な製造方法を提供しようとするものである。
本発明の有機無機ハイブリッド材料は以下のとおりである。
(1)シリカと水素結合性ポリマーからなる有機無機ハイブリッド材料であって、水銀ポロシメーターによる細孔径3nm〜10μmの範囲の細孔容積が0.6ml/g以上であることを特徴とする有機無機ハイブリッド材料。
(2)窒素吸着法による比表面積が50m/g〜500m/gである(1)記載の有機無機ハイブリッド材料。
(3)不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子となっている(1)又は(2)記載の有機無機ハイブリッド材料。
(4)水素結合性ポリマーが、ポリビニルアルコール、アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N−ビニルアセトアミドおよびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド材料。
(5)水素結合性ポリマーがカチオン性誘導体である(4)記載の有機無機ハイブリッド材料。
また、本発明の有機無機ハイブリッド材料の製造方法は、以下のとおりである。
(6)アルカリ金属珪酸塩と酸性化剤を、水および水素結合性ポリマーの存在下で、pHを4〜9に維持しながら反応させ、反応物を沈降させることを特徴とする有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
特に、水素結合性ポリマーの存在下に、アルカリ金属珪酸塩水溶液、及び、酸性化剤を含む水溶液を添加し、pHを4〜9に維持しながら反応させ、反応物を沈降させる方法が最も効率的に製造でき好ましい。
(7)反応容器に予め水素結合性ポリマー水溶液を仕込み、アルカリ金属珪酸塩水溶液と、酸性化剤を含む水溶液を同時に添加することを特徴とする(6)記載の有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
なお、アルカリ金属珪酸塩の水溶液と酸性化剤を含む水溶液の添加は、攪拌しながら行なうことが好ましい。また、「同時に添加する」とは、両液を一定の時間内に並行して添加すればよく、添加開始と添加終了の時が完全に一致する必要はない。また、両液の添加の途中で中断し、攪拌を行なった後、両液の添加を再開することも可能であり、好ましい方法のひとつである。
(8)アルカリ金属珪酸塩水溶液と、酸性化剤を含む水溶液の同時添加を10分〜240分かけて行なう(6)または(7)に記載の有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
(9)有機無機ハイブリッド材料を沈降させるときの反応温度が5℃〜50℃である(6)〜(8)に記載の有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
(10)前記反応をpH緩衝剤の存在下で行なう(6)〜(9)のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
(11)pH緩衝剤がアルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属炭酸水素塩である(10)のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
本発明の有機無機ハイブリッド材料は、沈降シリカと同様の外観と嵩高さ有している、水素結合性ポリマーとシリカからなるハイブリッド材料である。また、この有機無機ハイブリッド材料を効率よく製造する方法を提供することができる。本発明の有機無機ハイブリッド材料は、シリカと異なる化学的及び物理的性質を有しており、製紙用填料、塗工紙製造用顔料、エラストマー補強用充填剤、薬品担体などの広範囲の用途に使用しうるものである。例えばシリカより低密度という点に注目すれば、製紙用填料として軽量紙の製造に効果的であるし、ポリマーの水素結合性に注目すれば、填料内填紙や塗工膜の強度アップ、水中での分散安定性が期待できる。さらに、無酸素雰囲気下で焼成することによりシリカと炭素のハイブリッドに変換することも可能であり、エラストマー補強材料として有用である。
[有機無機ハイブリッド材料]
本発明の有機無機ハイブリッド材料とは、水素結合性ポリマーとシリカが分子レベル、又は10nm未満のナノレベルで主に水素結合により結合して、一体化されているものを指す。なお、水素結合以外に共有結合やイオン結合が含まれていても良い。このような有機無機ハイブリッド材料の著しい特徴として、90℃の熱水に対して安定であり、水素結合性ポリマーは殆ど溶出しない。90℃の水中で1時間加熱しても、通常水溶性ポリマーの溶出量は水溶性ポリマー全体の10質量%未満である。そして、本発明の有機無機ハイブリッド材料は、水銀ポロシメーターで測定した細孔径3nm〜10μmの範囲の細孔容積が0.6ml/g以上のものである。細孔容積が0.6ml/g以上であることにより、従来知られた有機無機ハイブリッド材料より嵩高くなり、沈降シリカと同様に多方面の用途が開け、なおかつハイブリッド化されたポリマーの効果により沈降シリカ以上の性能や異なった分野の用途を期待できる。好ましくは0.8ml/g以上であり、さらに好ましくは1.0ml/g以上である。細孔容積の上限に特に制限は無いが、容易に製造しうるのは4.5ml/g以下である。
上記有機無機ハイブリッド材料の比表面積は50〜500m/gが好ましい。ここで比表面積とは、窒素吸着法(BET法)により測定される値である。この範囲に調整することにより、有機無機ハイブリッド材料の一次粒子径が小さくなり、凝集した二次粒子を形成し易くなるため、嵩高くなる。また、ゴムや樹脂に添加したときの補強効果や、塗料に配合したときの粘度調整効果や、吸着・担持材料として有用な性質が付与されるなど、沈降シリカと同様に多方面の用途が開ける。好ましい比表面積は80〜400m/gであり、最も好ましい比表面積は100〜350m/gである。
本発明の有機無機ハイブリッド材料は不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子となっていることが好ましい。このような形状とすることにより、大きな細孔容積を発揮し、また圧力やせん断力がかかった場合でも粒子構造が壊れることが少ないので、応用製品中でも嵩高さを維持できる。
本発明の有機無機ハイブリッド材料中の水素結合性ポリマーの比率に特に制限はない。ただし、ポリマーの比率が80質量%以下であれば、水中で膨潤することもなく、耐水性が優れる。また、5質量%以上であれば、ポリマーの性質が現れ、通常の沈降シリカとの差が顕著となる。なお、好ましいポリマーの比率は10〜60質量%である。
水素結合性ポリマーとは、水素結合性官能基を有する水溶性ポリマーを指し、水素結合性官能基は、シラノール基のプロトンを受容しやすい性質を持った官能基を意味し、例えば、水酸基、エーテル基、アミド基、カルボニル基、チオール基、チオエーテル基、尿素基、ウレタン基などが例示される。特にアミド基はシリカと水素結合を形成し易いことが知られている。そのような水素結合性官能基を有する水素結合性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ−N,N-ジメチルアクリルアミド、ポリ−N,N-ジエチルアクリルアミド、ポリ−N-イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリ-N−ビニルフォルムアミド、ポリ−2−メチル−2−オキサゾリン、ポリビニルメチルエーテル、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、およびそれらの誘導体が挙げられる。これらのポリマーは他のモノマーとのコポリマーであっても良く、官能基の一部が種々の方法によって修飾されていても良い。特に、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ−N,N-ジメチルアクリルアミド、ポリ−N−ビニルアセトアミド、およびそれらの誘導体がシリカとハイブリッドを形成し易いので好ましい。
ここでいう誘導体としては、特に限定するものではないが、好ましい誘導体はカチオン性の誘導体である。カチオン性の誘導体とすることによりシリカとの相互作用が強くなり、有機無機ハイブリッド材料中のポリマー比率を高めることが容易になる。また、有機無機ハイブリッド材料の製造工程において、シリカとハイブリッドを形成せずに損失となるポリマー量を少なくすることができ、経済的である。例えばポリビニルアルコールやポリアクリルアミドは、比較的プロトン受容性が小さいが、カチオン性誘導体とすることにより、シリカとハイブリッドを形成し易くなり、ハイブリッド中のポリマー比率を高めることができる。カチオン性の誘導体は特に限定するものではないが、1級〜3級のアミノ基や、4級アンモニウム基を導入した誘導体が知られており、一部は工業的に製造され市販もされている。
[有機無機ハイブリッド材料の製造方法]
本発明の有機無機ハイブリッド材料の製造方法は、アルカリ金属珪酸塩と酸性化剤を、水及び水素結合性ポリマーの存在下で、pHを4〜9に維持しながら反応させ、反応物を沈降させる方法である。特に、水素結合性ポリマーの存在下に、アルカリ金属珪酸塩水溶液、及び、酸性化剤を含む水溶液を反応容器に添加し、pHを4〜9に維持しながら反応させ、生成物を沈降させる方法が最も効率的に製造できる方法である。
一般に、沈降シリカは、特許文献1に記載されているように、反応容器に珪酸ナトリウム水溶液を仕込み、加熱しながら硫酸を二段階に分けて添加し、シリカを沈降させる方法が行われている。しかしこの方法では、反応容器に仕込まれた珪酸ナトリウムの濃度が高いために、予め水素結合性ポリマーを珪酸ナトリウム水溶液に溶解しようとしても塩析により析出してしまうことがわかった。水素結合性ポリマーを水溶液として、硫酸と同時に少しずつ添加することも試みたが同様であった。反応容器に仕込む珪酸ナトリウムの濃度を下げれば塩析を回避できるが、生産性が大幅に低下してしまった。この問題は、水素結合性ポリマーの存在下に、アルカリ金属珪酸塩水溶液と、酸性化剤を含む水溶液を反応釜に同時に添加する方法で解決できる。アルカリ金属珪酸塩水溶液と、酸性化剤から珪酸が生成し、珪酸とポリマーとの水素結合並びに重合が同時に起こることにより有機無機ハイブリッド材料が生成する。
有機無機ハイブリッド材料の製造に用いる反応容器(例えば反応釜、フラスコ等)は、攪拌機と必要に応じ加熱装置を備えたものであれば良く、その形状、大きさ、材質は問わない。攪拌機は通常、攪拌羽根をモーターで回転させて、反応釜内部の液を攪拌する方式が一般的である。ただし、これに限定されるものではなく、反応容器内部の液をポンプで外部に取り出し、再度反応容器に循環させる方式でも構わない。加熱方式は、反応容器内部に蒸気を直接吹き込む方式や、反応容器外部から蒸気や電熱によって加熱する方式でも良い。
水素結合性ポリマーの種類については前述の通りであるが、分子量については高いほうが、有機無機ハイブリッド材料を製造する際に、得られる有機無機ハイブリッド材料中のポリマー比率が高い傾向にあるので好ましい。なお、分子量が100,000以下の場合、有機無機ハイブリッド材料の製造過程で反応混合物がゲル化することを抑制でき、分子量を500以上とすることで有機無機ハイブリッド材料中のポリマー比率を十分高くすることができる。そのため、分子量は500〜100,000程度が好ましく、特に好ましくは500〜50,000程度である。
アルカリ金属珪酸塩としては、SiO/MO(但し、Mはアルカリ金属原子を表す)モル比として2〜4程度のナトリウム水ガラスを用いるのが価格も安く好ましいが、これに限定されるものではなく、オルト珪酸ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウムなど市販工業製品として入手できるものを単独あるいは併用して使用することもできる。またカリウム塩も同様に使用可能である。アルカリ金属珪酸塩のSiO濃度は2%〜30%が好ましく、より好ましくは5%〜15%である。SiO濃度が2%未満では有機無機ハイブリッド材料の生産性が低下するおそれがある。また30%より大きい場合には、水溶液粘度が著しく上昇し、正確な添加速度を維持することが困難となる傾向にある。
酸性化剤としては、珪酸ナトリウム水溶液のpHを6以下に下げうる物質であれば、無機・有機を問わず使用できる。例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸など)、リン酸、メタリン酸、カルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、サリチル酸など)などが挙げられる。また、強酸の酸性塩や、強酸と弱塩基の塩、例えば硫酸アルミニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなども使用できる。好ましくは、硫酸または塩酸である。酸性化剤の濃度に限定は無いが、0.5モル/リットル未満では添加すべき酸性化剤を含む水溶液の体積が増えるので、仕上がりの有機無機ハイブリッド材料の濃度が下がって生産性が低下するおそれがある。最も用いられている硫酸の場合には50〜150g/リットルが好ましい。
水素結合性ポリマーは、水溶液として予め反応容器に仕込み、攪拌しながらアルカリ金属珪酸塩水溶液と、酸性化剤を含む水溶液を反応容器に同時に添加して珪酸と反応させることが好ましい。予め仕込まれた水素結合性ポリマー水溶液は添加されるアルカリ金属珪酸塩と酸性化剤の濃度を下げ、かつ速やかに混合することを助ける役割も果たす。そのため、水素結合性ポリマーの塩析を防止しうる。この方法は最も簡単な設備で実施できる利点がある。
なお、水素結合性ポリマーを、酸性化剤を含む水溶液中に溶解しておいて、アルカリ金属珪酸塩水溶液と同時に反応容器に添加して製造してもよい。また、設備は複雑になるが水素結合性ポリマー水溶液、アルカリ金属珪酸塩水溶液、及び酸性化剤を含む水溶液の三種類の液を、同時に反応容器に添加して反応させる方法でもよい。この場合、初期の反応混合物の量が少ない時期に、三種類の液の混合が問題になる場合も出てくるが、反応容器に予め水などを仕込んでおき、攪拌しながら前記の三種類の液を添加していくことにより回避できる。また、水の代わりに、製造済みの有機無機ハイブリッド材料のスラリーでも良い。この場合、有機無機ハイブリッド材料の製造後に反応容器からすべてのスラリーを取り出さず、一部を残して次の製造の仕込み液とすればよい。
反応容器に予め水素結合性ポリマー水溶液や、水、有機無機ハイブリッド材料のスラリーなど、反応開始直後の攪拌を助ける液を仕込む場合には、その量は反応中の粘度により適宜調整すればよいが、目安としてはアルカリ金属珪酸塩及び酸性化剤の添加を終わったときの反応混合物中の有機無機ハイブリッド材料濃度がおよそ1%〜10%になるように調整すればよい。
反応容器にアルカリ金属珪酸塩水溶液と、酸性化剤を含む水溶液を反応容器に同時添加するときには、10分から240分かけて行なうことが好ましい。10分未満では、部分的にアルカリ金属珪酸塩の濃度が高くなりすぎて、ポリマーが塩析されるおそれがあるし、また珪酸濃度が高くなって反応液がゲル化することがある。10分以上の場合には、珪酸は重合により逐次消費されるため、珪酸濃度が過度に高くなることは無く、有機無機ハイブリッド材料が円滑に生成し沈澱する。しかし、240分を超える添加時間は生産性を下げる傾向にある。
反応混合物のpHは4〜9に維持する必要がある。シリカとポリマーの水素結合はpHが約2付近で最も強く起きるが、アルカリ金属珪酸塩水溶液と酸性化剤の反応により生成する珪酸の重合速度が小さいためにシリカの生成が遅く、最終的には混合物全体がゲル化するに至る。pHが11未満の領域では、pHが高い方が珪酸の重合速度は速いのでシリカの生成に都合が良いが、ポリマーとシリカの水素結合が起こりにくくなり、ハイブリッドが得られ難くなる。pHが4〜9の範囲であれば、珪酸の重合速度も、水素結合の生成も問題なく、有機無機ハイブリッド材料が得られる。
アルカリ金属珪酸塩を100%中和したときのpHは約5であり、中和点近傍でのpHの変化は非常に大きい。酸が少量でも過剰であるとpHは簡単に4未満に低下する。そのため、反応中のpHを4〜9に保つためには、酸性化剤とアルカリ金属珪酸塩両方の添加速度を適切な比率を保ちながら厳密に制御する必要があり、設備及び操業の負担が大きくなるおそれがある。また反応中のpHが4未満に低下すると、珪酸の重合速度が低下し、反応混合物の粘度上昇やゲル化などの好ましくない現象が起き易い。また、得られる有機無機ハイブリッド材料の細孔容積や比表面積が変化するので、製造ロット毎の品質のバラツキが大きくなるおそれもある。この問題点は、pH緩衝剤の存在下で有機無機ハイブリッド材料の製造を行なうことで解決できる。pH緩衝剤は予め反応釜に仕込んでおく各種の液や、アルカリ金属珪酸塩水溶液の中に混合しておいても良い。また、酸性化剤とアルカリ金属珪酸塩の同時添加を行う際に、pH緩衝剤単独の水溶液を添加しても良い。
pH緩衝剤としては、pH4〜8の間で緩衝効果を発揮するものであれば良い。そのためには4〜8のpKa値を有する酸のアルカリ金属塩が好ましい。多塩基酸の場合、複数のpKaを有するが、4〜8の範囲のpKaを1つ有していれば良い。具体的には、炭酸(6.4)リン酸(7.2)、メタリン酸(6.6)、マレイン酸(6.2)が挙げられるが、価格が安価な炭酸塩又は炭酸水素塩が好ましい。pH緩衝剤の量は酸性化剤の1モル%〜30モル%に相当する量が好ましい。1モル%未満ではpHの緩衝効果が不足し、30モル%より大きい場合には消費されずに余る量が増えるので不経済である。
同時添加を行う時の温度は5℃〜50℃が好ましい。温度が高くなるとポリマーとシリカの水素結合が起こりにくくなる傾向があるためか、得られる有機無機ハイブリッド材料中のポリマーの割合が低下する。加熱は必須ではなく室温で行ないうるが、5℃未満になると珪酸モノマーの重合速度が低下しすぎ、ゲル化しやすくなるおそれがあり、そのような場合には若干の加熱を行なう。有機無機ハイブリッド材料中のポリマーの割合を高く保ち、かつ反応液のゲル化を防止するためには5℃〜50℃の範囲が適切であり、さらに好ましくは15℃〜40℃である。
有機無機ハイブリッド材料の製造を行う時の水素結合性ポリマーと、アルカリ金属珪酸塩の添加比率は、有機無機ハイブリッド材料中のポリマー割合の目標値や、水素結合性ポリマーのハイブリッドの形成のしやすさなどを勘案して決めるべきものであるが、ポリマー割合の目標値が5〜80%である場合には、アルカリ金属珪酸塩のSiO換算量100質量部に対し、水素結合性ポリマーはおおまかに6〜600質量部程度である。
有機無機ハイブリッド材料の製造を行う際の水素結合性ポリマーとアルカリ金属珪酸塩の比率、及び水素結合性ポリマーの種類は、有機無機ハイブリッド材料の一次粒子の形状及び凝集状態に大きな影響を与える。一般的傾向として、水素結合性ポリマーの量が少ないほど一次粒子は不規則な形状となり、それらが強く結合した二次粒子となりやすい。また、ポリビニルピロリドン、ポリ−N,N-ジメチルアクリルアミドなど、シリカと強い水素結合を起すポリマーの場合、その量が多い場合には球状の一次粒子を与える傾向がある。
アルカリ金属珪酸塩水溶液と、酸性化剤を含む水溶液を同時添加するときには、添加を行う途中で添加を中断し、熟成を促進することは好ましい。熟成工程は複数回行っても良く、同時添加終了後に熟成を行うことも好ましい。
上記の工程によって有機無機ハイブリッド材料を含むスラリーが得られ、そのまま利用することもできる。或いはろ過、濃縮、洗浄、乾燥、粉砕、分級などを任意に行って利用することもできる。エラストマー補強用充填剤用途には有機無機ハイブリッド材料中のアルカリ金属分を下げることが好ましく、同時添加終了後のスラリーpHを6以下、好ましくは2〜4に下げてから洗浄するのが良い。またpHを下げる薬品として硫酸アルミニウムなどの酸性金属塩を用いると残留アルカリ金属分の減少を促進し、スラリー粘度を下げる効果もある。
ろ過、濃縮、洗浄方法は公知のものが使用できる。例えばフィルタープレス、ベルトフィルター、回転式真空フィルターなどが挙げられる。
乾燥方法は、従来公知の方法によって適宜実施することができる。中でも、スプレードライによる方法が好ましい。噴霧はノズル式噴霧器、加圧液体噴霧器又はダブル流体噴霧器を用いることができる。スプレードライを行う時の有機無機ハイブリッド材料濃度は10質量%以上が好ましく、さらに好ましくは15質量%以上である。
以下に、本発明の更に詳しい説明を実施例により行うが、本発明はそれらによって限定されるものではない。尚、%は質量%を意味する。
まず、実施例及び比較例に記載した物性の測定方法について、以下に説明する。
(細孔容積測定方法:水銀ポロシメーターでの測定)
マイクロメトリックス ポアサイザ9320((株)島津製作所製)を用いて、水銀圧入法により、比表面積、及び細孔容積を求めた。平均細孔径の測定は細孔の断面を円形として仮定して導かれた下記の式を用いて計算した。
D=−4γCOSθ/P
ただし、D:細孔直径、γ:水銀の表面張力、θ:接触角、P:圧力とする。水銀の表面張力は482.536dyn/cmとし、使用接触角は130°とし、高圧部測定(0〜30000psia、測定細孔径レンジ10μm〜6nm)を行った。
(比表面積測定方法:BET法)
試料を105℃の熱風乾燥器で乾燥し、窒素ガス吸着法比表面積・細孔分布測定装置(Coulter社製SA3100plus型)を用い、前処理として200℃で2時間真空脱気した後に測定した。比表面積はBET多点法(5点法)で解析した。
(粒子径測定方法)
試料粉末を純水中に分散し、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製SALD2000)にて平均粒径を測定した。
(水素結合性ポリマー含有量測定方法)
有機無機ハイブリッド材料中のポリマーの含有量は、熱重量分析装置(SII社製EXSTAR6000)を用い、室温から105℃まで昇温速度10℃/分で昇温し、30分保持した。次に105℃から600℃まで昇温速度10℃/分で昇温し、試料の105℃から600℃間での重量減少量から算出した。測定試料は予め105℃の熱風乾燥機で乾燥させたものを用いた。
実施例1
攪拌羽根方式の攪拌機を備えた1リットル3ツ口セパラブルフラスコ内に、水140gを仕込み、攪拌しながら、25℃の下記の珪酸ソーダ及びpH緩衝剤を含むS1液280g、酸性化剤を含むA1液280g、及び水素結合性ポリマーを含むP1液140gをチューブポンプを用いて、反応温度を25℃に保ちながら1時間かけて同時に滴下した。S1液に含まれるSiO換算量に対する水素結合性ポリマーの添加率は22%である。このとき滴下速度は一定に保って実施し、その結果、反応混合物のpHは約6.8に保たれた。
滴下終了後5分間撹拌し、生成したスラリーを吸引ろ過し、沈澱のろ過と水洗を繰り返して約20%スラリーの導電率が1mS/cm以下になるまで洗浄した。なお、導電率の測定は、生成した硫酸ナトリウムの残留程度を確認するために行なった。
このスラリーを水で約5%に希釈し90℃で1時間撹拌した後ろ過を行ない、更に熱水洗浄とろ過を3回繰り返して、未反応の水素結合性ポリマーを除去し、105℃の熱風乾燥器で乾燥して、有機無機ハイブリッド材料を得た。得られた有機無機ハイブリッド材料は、不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子であり、沈降シリカと同様の外観を有する嵩高い白色粉体であり、その細孔容積、比表面積、水素結合性ポリマーの含有量、平均粒径は表1の通りであった。
[S1液]
水146.44gに試薬特級の炭酸水素ナトリウム1.9g(0.0226モル)を溶解し、次いで三号珪酸ソーダ(SiO濃度29%、モル比3.12、東曹産業(株)製)131.66gを溶解してS1液とした。このS1液に含まれるSiO換算量は38.18g、NaO換算量は12.62g(0.204モル)である。
[A1液]
水259.2gの水に96%硫酸20.8g(0.204モル)を溶解してA1液とした。
[P1液]
部分けん化ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA217、けん化度87〜89mol%、重合度1700)8.4gを水131.6gに溶解して濃度6%のP1液とした。
実施例2
P1液を318.2gに増やしたこと以外は実施例1と同様にして、有機無機ハイブリッド材料を得た。得られた有機無機ハイブリッド材料は、不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子であり、沈降シリカと同様の外観を有する嵩高い白色粉体であり、その細孔容積、比表面積、水素結合性ポリマーの含有量、平均粒径は表1の通りであった。
実施例3
実施例1で用いた1リットル3ツ口セパラブルフラスコ内に、実施例1のP1液140gをとり、攪拌しながら実施例1のA1液280g、及びS1液280gを、反応温度を25℃に保ちながら1時間かけて同時に滴下した。S1液に含まれるSiO換算量に対する水素結合性ポリマーの添加率は22%である。このとき滴下速度は一定に保って実施し、反応混合物のpHは約6.8に保たれた。
反応混合物から実施例1と同様にして未反応の水素結合性ポリマーを除去し、有機無機ハイブリッド材料を得た。得られた有機無機ハイブリッド材料は、不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子であり、沈降シリカと同様の外観を有する嵩高い白色粉体であり、その細孔容積、比表面積、水素結合性ポリマーの含有量、平均粒径は表1の通りであった。
実施例4
実施例3で用いたP1液に換えて下記のP2液を用いたこと以外は実施例3と同様の操作を行った。同時滴下中のpHは約6.9に保たれた。
反応混合物から実施例1と同様にして未反応の水素結合性ポリマーを除去し、有機無機ハイブリッド材料を得た。得られた有機無機ハイブリッド材料は、不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子であり、沈降シリカと同様の外観を有する嵩高い白色粉体であり、その細孔容積、比表面積、水素結合性ポリマーの含有量、平均粒径は表1の通りであった。
[P2液]
カチオン性ポリビニルアルコール((株)クラレ製、CM318)の6%水溶液140gをP2液とした。
実施例5
実施例3で用いたP1液に換えて下記のP3液用いたこと以外は実施例3と同様の操作を行った。同時滴下中のpHは約6.9に保たれた。
反応混合物から実施例1と同様にして未反応の水素結合性ポリマーを除去し、有機無機ハイブリッド材料を得た。得られた有機無機ハイブリッド材料は、不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子であり、沈降シリカと同様の外観を有する嵩高い白色粉体であり、その細孔容積、比表面積、水素結合性ポリマーの含有量、平均粒径は表1の通りであった。
[P3液]
重量平均分子量が15,000の市販カチオン性ポリアクリルアミド(アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウムクロライドの共重合体、カチオン量1.5m当量/g)の6%水溶液140gをP3液とした。
実施例6
実施例3で用いたP1液に換えて下記のP4液を用いたこと以外は実施例3と同様の操作を行った。同時滴下中のpHは約7.1に保たれた。
反応混合物から実施例1と同様にして未反応の水素結合性ポリマーを除去し、有機無機ハイブリッド材料を得た。得られた有機無機ハイブリッド材料は、不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子であり、沈降シリカと同様の外観を有する嵩高い白色粉体であり、その細孔容積、比表面積、水素結合性ポリマーの含有量、平均粒径は表1の通りであった。
[P4液]
重量平均分子量が10,000のポリビニルピロリドン(東京化成工業(株)製)の6%水溶液140gをP4液とした。
実施例7
実施例3で用いたP1液に換えて下記のP5液を用いたこと以外は実施例3と同様の操作を行った。同時滴下中のpHは約6.9に保たれた。
反応混合物から実施例1と同様にして未反応の水素結合性ポリマーを除去し、有機無機ハイブリッド材料を得た。得られた有機無機ハイブリッド材料は、不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子であり、沈降シリカと同様の外観を有する嵩高い白色粉体であり、その細孔容積、比表面積、水素結合性ポリマーの含有量、平均粒径は表1の通りであった。
[P5液]
N,N-ジメチルアクリルアミド10%水溶液に重合開始剤として過硫酸カリウム、分子量調節剤としてメルカプトプロピオン酸を加えて、窒素雰囲気下で水溶液重合を行い、重量平均分子量が15,000のポリN,N-ジメチルアクリルアミド水溶液を得た。濃度を調製し、6%水溶液140gをP5液とした。
実施例8
実施例3で用いたS1液に換えてpH緩衝剤を含まない下記組成のS2液を用いたこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。同時滴下中のpHは約3.6〜7の間で変動し、滴下終了時は5.2になった。
反応混合物から実施例1と同様にして未反応の水素結合性ポリマーを除去し、有機無機ハイブリッド材料を得た。得られた有機無機ハイブリッド材料は、不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子であり、沈降シリカと同様の外観を有する嵩高い白色粉体であり、その細孔容積、比表面積、水素結合性ポリマーの含有量、平均粒径は表1の通りであった。
[S2液]
水148.34gに実施例1で用いた三号珪酸ソーダ131.66gを溶解して、S2液とした。
比較例1
実施例1で用いた1リットル3ツ口セパラブルフラスコ内に、実施例1で用いたS1液を入れ、実施例1で用いたP1液を混合し、次いでA1液を添加する方法を試みたが、S1液とP1液を混合した時点でポリビニルアルコールが塩析されて分離してしまい、有機無機ハイブリッド材料を製造することができなかった。
比較例2
実施例3で用いたA1液に替えて下記組成のA2液を用いたこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。同時滴下中のpHは約2.5であった。滴下終了後に反応混合物が増粘したが、沈澱は生成しなかった。
[A2液]
水257.1gの水に96%硫酸22.9g(0.224モル)を溶解してA1液とした。
比較例3
実施例3で用いたA1液に換えて下記組成のA3液を用いたこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。同時滴下中のpHは約10であった。生成した反応混合物から実施例1と同様にして未反応の水素結合性ポリマーを除去し、沈降シリカと同様の外観を有する嵩高い白色粉体を得た。この白色粉体中の水素結合性ポリマーの含有量を調べたところ、含有されていなかった。得られた有機無機ハイブリッド材料の細孔容積、比表面積、平均粒径を表1に示した。
[A3液]
水270.77gの水に96%硫酸9.23g(0.904モル)を溶解してA3液とした。
比較例4
100mlのサンプル管ビンに水62.78g、6%部分けん化ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA217、けん化度87〜89mol%、重合度1700)水溶液22g、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)15.22g(SiO換算で6.0g相当)を量り取りテトラメトキシシランが完全に溶解するまで良く攪拌した。このときのpHは5.8であった。蓋をして25℃で1日放置したところ全体が半透明ゲルとなった。このゲルを取り出して粉砕し、水140gを加え、90℃で1時間撹拌した後ろ過を行ない、更に熱水洗浄とろ過を3回繰り返して、未反応の水素結合性ポリマーを除去し、105℃の熱風乾燥器で乾燥し、有機無機ハイブリッド材料を得た。得られた有機無機ハイブリッド材料は、不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子であるが、沈降シリカと異なる外観を有する嵩の低い白色粉体であり、その細孔容積、比表面積、水素結合性ポリマーの含有量、平均粒径は表1の通りであった。
比較例5
100mlのサンプル管ビンに水83.46gをとり、ポリビニルピロリドン(東京化成工業(株)製、重量平均分子量10,000)1.32gを完全に溶解した。次いでテトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)15.22gを加えて完全に溶解するまで良く攪拌した。このときのpHは5.6であった。蓋をして25℃で1日放置したところ、少量の白色沈殿を含む不均一なゲルとなった。このゲルを取り出して粉砕し、水140gを加え、90℃で1時間撹拌した後ろ過を行ない、更に熱水洗浄とろ過を3回繰り返して、未反応の水素結合性ポリマーを除去し、105℃の熱風乾燥器で乾燥し、有機無機ハイブリッド材料を得た。得られた有機無機ハイブリッド材料は、不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子であるが、沈降シリカと異なる外観を有する嵩の低い白色粉体であり、その細孔容積、比表面積、水素結合性ポリマーの含有量、平均粒径は表1の通りであった。
Figure 2010013509
水素結合性ポリマーの存在下に珪酸ソーダを含む液と酸性化剤を含む液を同時添加する方法により、外観は沈降シリカと同様の嵩高い粉体でありながら、熱水によって抽出されない水素結合性ポリマーを含んだ有機無機ハイブリッド材料が得られた(実施例1〜8)。一方従来公知のゾルゲル法により作られる有機無機ハイブリッド材料(比較例4、5)は嵩の低い粉体であり、実施例の粉体とは性状が大きく異なった。
製造においては、珪酸ソーダを含む液と酸性化剤を含む液を同時添加するときの反応混合物のpHが重要であり、pHが低い場合(比較例)や高い場合(比較例3)には有機無機ハイブリッド材料は得られなかった。
本発明の有機無機ハイブリッド材料は、沈降シリカと同様にゴムや樹脂の補強剤、インク,塗料,樹脂,グリースなどの粘性調整剤やチクソトロピー付与剤、研磨剤、つや消し剤、製紙用填料や顔料、農薬や触媒の担持材料、断熱材、吸着剤、フィルムのブロッキング防止剤などとして好適に用いうる。

Claims (11)

  1. シリカと水素結合性ポリマーからなる有機無機ハイブリッド材料であって、水銀ポロシメーターによる細孔径3nm〜10μmの範囲の細孔容積が0.6ml/g以上であることを特徴とする有機無機ハイブリッド材料。
  2. 窒素吸着法による比表面積が50m/g〜500m/gである請求項1記載の有機無機ハイブリッド材料。
  3. 不規則な形状をした一次粒子が結合した二次粒子となっている請求項1又は2記載の有機無機ハイブリッド材料。
  4. 水素結合性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ−N,N-ジメチルアクリルアミド、ポリ−N−ビニルアセトアミド、及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド材料。
  5. 水素結合性ポリマーがカチオン性誘導体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド材料。
  6. アルカリ金属珪酸塩と酸性化剤を、水及び水素結合性ポリマーの存在下で、pHを4〜9に維持しながら反応させ、反応物を沈降させることを特徴とする有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
  7. 反応容器に予め水素結合性ポリマー水溶液を仕込み、アルカリ金属珪酸塩水溶液と、酸性化剤を含む水溶液を同時に添加することを特徴とする請求項6記載の有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
  8. アルカリ金属珪酸塩水溶液と、酸性化剤を含む水溶液の同時添加を10分〜240分かけて行なう請求項6又は7に記載の有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
  9. 有機無機ハイブリッド材料を沈降させるときの反応温度が5℃〜50℃である請求項6〜8のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
  10. 前記反応をpH緩衝剤の存在下で行なう請求項6〜9のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
  11. pH緩衝剤がアルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属炭酸水素塩である請求項10に記載の有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
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