JP2010007209A - 炭素繊維製造用炭化炉のシール装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のシール装置10は、炭化炉20の繊維束導出入孔21に接続される炭化炉接続孔11bと外気雰囲気30に開放された開放孔11dとが形成され、内部に繊維束Aが走行するシール装置本体11を有し、シール装置本体11の内部には、繊維束Aの走行方向に沿って10段以上30段未満の膨張室12が設けられ、開放孔11d側から数えて8段目の膨張室12より炭化炉接続孔11b側の膨張室12の少なくとも1つに、繊維束Aの走行方向に対して略直交方向に不活性気体を吐出する気体吐出手段16が設置されている。
【選択図】図1
Description
ところで、炭化処理では、炭化炉内に外気が流入して酸化性雰囲気になると、炭素繊維の性能や品質が低下することがある。そのため、炭化炉内の不活性雰囲気を維持するために、通常、炭化炉の繊維束導出入孔に、炭化炉内への外気の流入および炭化炉内のガスの流出を抑制するためのシール装置が取り付けられている。
シール装置としては、例えば、特許文献1には、繊維束の走行方向に沿って膨張室が5段以上10段未満設けられ、炭化炉側から数えて3段目の膨張室より外側の膨張室の少なくとも1つに、繊維束の走行方向に対して直交方向に不活性気体を吐出する気体吐出手段が設置されたラビリンス型のシール装置が開示されている。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、シール性能に優れる上に、炭化炉内の圧力が上昇した場合でも炭化炉からのガスの流出を抑制できる炭素繊維製造用炭化炉のシール装置を提供することを目的とする。
[1] 炭素繊維製造用炭化炉の繊維束導出入孔に接続され、繊維束が通されるラビリンス型のシール装置において、
前記炭化炉の繊維束導出入孔に接続される炭化炉接続孔と外気雰囲気に開放された開放孔とが形成され、内部に繊維束が走行するシール装置本体を有し、
シール装置本体の内部には、繊維束の走行方向に沿って10段以上30段未満の膨張室が設けられ、
開放孔側から数えて8段目の膨張室より炭化炉接続孔側の膨張室の少なくとも1つに、繊維束の走行方向に対して略直交方向に不活性気体を吐出する気体吐出手段が設置されていることを特徴とする炭素繊維製造用炭化炉のシール装置。
[2] 2つの膨張室が互いに対向するように設けられ、該2つの膨張室に気体吐出手段が各々設置されていることを特徴とする[1]に記載の炭素繊維製造用炭化炉のシール装置。
図1に、本実施形態例のシール装置を示す。このシール装置10は、炭化炉20の繊維束導出入孔21に接続され、繊維束Aが通されるラビリンス型のもので、内部に帯状の繊維束Aが走行するシール装置本体11を有する。
本実施形態例における炭化炉接続孔11bおよび開放孔11dは、水平方向が長辺の矩形状の孔である。
ここで、膨張室とは、2枚の仕切り板で挟まれた空間のことである。本実施形態例における膨張室12は、シール装置本体11の上面に対して垂直に取り付けられた矩形状の2枚の仕切り板13a,13aで挟まれた空間、および、シール装置本体11の下面に対して垂直に取り付けられた矩形状の2枚の仕切り板13b,13bで挟まれた空間である。すなわち、本実施形態例では、膨張室12は、シール装置本体11の上部および下部に設けられ、上部の膨張室12と下部の膨張室12とが互いに対向するようになっている。
なお、シール装置本体11の炭化炉接続孔11bが形成された一方の端面11aと仕切り板13a,13bとで挟まれた空間14、シール装置本体11の開放孔11dが形成された他方の端面11cと仕切り板13a,13bとで挟まれた空間15は膨張室ではない。実質的に、空間14は炭化炉20の内部と同じ雰囲気になり、空間15は外気と同じ雰囲気になるからである。
互いに対向するように仕切り板13a,13bが取り付けられていることにより、水平方向が長辺の矩形状の開口部13cが形成されている。互いに対向する仕切り板13a,13bの間隔は、炭化炉接続孔11bに近くなるほど、大きくなっていることが好ましい。炭化炉20に近くなるにつれて、繊維束Aが自重により撓むため、繊維束Aが下側の仕切り板13bに接触するおそれがあるが、仕切り板13a,13bの間隔が、炭化炉接続孔11bに近くなるほど、大きくなっていれば、繊維束Aの下側の仕切り板13bへの接触を防止しやすい。
本実施形態例における気体吐出手段16は、長さ方向に沿って吐出孔16aが多数形成された金属製の管である。また、本実施形態例における吐出孔16aは、繊維束Aと反対側に向けられて、不活性気体が繊維束Aの走行方向と略直交方向に吐出されるようになっている。
多孔板17の材質としては、熱変形しにくいことから、黒鉛が好ましい。
繊維束Aの総繊度は、繊維束Aの強度や処理効率の点から、300テックス以上であることが好ましい。
すなわち、シール装置10を炭化炉20に、シール装置10の炭化炉接続孔11bが炭化炉20の繊維束導出入孔21に接続されるように取り付ける。
次いで、炭化炉20の熱処理室22をヒータ23により加熱し、シール装置10の開放孔11dから繊維束Aを、繊維束Aの幅方向が水平になるようにシール装置本体11内に導入する。シール装置本体11内に導入された繊維束Aは、シール装置本体11内を走行し、炭化炉接続孔11bおよび繊維束導出入孔21を介して、熱処理室22に導入される。そして、熱処理室22内に導入された繊維束Aは加熱されて炭化処理される。
その際、シール装置10においては、炭化炉接続孔11bに最も近い膨張室12にて気体吐出手段16より不活性気体を繊維束Aの走行方向に対して略直交方向に吐出する。吐出された不活性気体は、シール装置本体11の内壁11eに衝突した後、反転し、仕切り板13a,13bに沿って繊維束Aの方向に流れる。そして、多孔板17を通過した後、隣の膨張室12に流れ込み、さらに隣の膨張室12に流れ込む。このようなことが外側の膨張室12に向かって順次繰り返され、最終的には、各膨張室12に不活性気体が充満すると共に開放孔11dから不活性気体が流出する。これにより、炭化炉20の熱処理室22と外気雰囲気30とを遮断して、シール性能を得る。
また、熱処理室22にて処理された繊維束Aは、炭化炉接続孔11bおよび繊維束導出入孔21を介して、シール装置本体11内に導入される。シール装置本体11内に導入された繊維束Aは、シール装置本体11内を走行し、開放孔11dから外気雰囲気30に導出される。
その際にも、上記のようにシール装置10では、気体吐出手段16から不活性気体を吐出して、各膨張室12に不活性気体を充満させると共に開放孔11dから不活性気体を流出させて、シール性能を得る。
また、気体吐出手段16による不活性気体の吐出では、風速を0.01m/秒以上かつ0.3m/秒以下にすることが好ましい。不活性気体の風速を0.01m/秒以上にすれば、シール性能をより高くできる。一方、不活性気体の風速を0.3m/秒以下にすれば、繊維束Aの走行姿勢の乱れを防止でき、繊維束Aが仕切り板13a,13bの縁に触れて損傷することを防止できる。さらには、不活性気体の使用量を抑制でき、製造コストを低くすることができる。
また、炭化炉20の内部の圧力が上昇する場合には、シール性能の低下を抑制するために、圧力上昇に対応して不活性気体の風速を速くすることが好ましい。
また、シール装置本体11の内部の膨張室12の数は、10段以上30段未満の範囲であればよい。膨張室12の数が10段未満であると、充分なシール性能が得られず、30段以上であると、シール装置10が大きくなるため、設置場所の確保が難しくなる。
また、上記実施形態例では、気体吐出手段16が炭化炉接続孔11bに最も近い膨張室12のみに設置されていたが、本発明では、開放孔11d側から数えて8段目の膨張室12より炭化炉接続孔11b側の膨張室12の少なくとも1つに設置されていればよい。開放孔11d側から数えて8段目の膨張室12より炭化炉接続孔11b側の膨張室12の少なくとも1つに気体吐出手段16が設置されていれば、シール装置10のシール性能を高くすることができる。しかし、圧力変化の傾斜が大きくなってシール性能をより高くできることから、上記実施形態例のように、気体吐出手段16が炭化炉接続孔11bに最も近い膨張室12のみに設置されていることが好ましい。
また、仕切り板13a,13bは、先端が互いに対向していなくてもよい。その場合、膨張室12の段数は、上側の膨張室12と下側の膨張室12とで別々に数える。
また、シール装置本体11は、四角形状の箱体でなくてもよく、例えば、円柱状の箱体であってもよいし、他の多角形状(例えば、三角形状、五角形状等)の箱体であってもよい。
以下、本発明について具体的な実施例及び比較例を挙げて説明する。
この実施例及び比較例においては、繊維束として総繊度が1000テックスのアクリロニトリル100%のアクリル繊維を耐炎化した繊維束を採用している。
炭化炉としては横型炭化炉を用い、その繊維束導入孔及び導出孔には、黒鉛材の図1および図2に示すシール装置を取り付けた。
であって、その膨張室数等をそれぞれ以下の表1に示す条件としたシール装置を使用して、以下に示す条件を同一として炭化を行った。
炭化炉への投入繊維束数 : 200
炭化炉での処理時間 : 1.5分
炭化炉内温度 : 1000℃
炭化炉及びシール装置の開口幅: 1.3m
シール装置の繊維束走行間隙D: 13mm
炭化炉の開口高さ : 80mm
実施例2は、膨張室、気体吐出手段の設置段数、不活性気体の吐出面風速は実施例1と同一であるが、炭化炉内の圧力は8Paであった。その結果、炉内への外気の流入及び炭化炉からシール装置を介した炉内ガスの流出も無く、シール性能が良好であった。
これに対し、比較例1では、膨張室数、不活性気体の吐出面風速、炭化炉内の圧力は実施例1と同一であるが、開放孔側から数えて3段目に不活性気体の気体吐出手段を設置したシール装置を用いた。その結果、炉内への外気の流入は無いが、炭化炉からシール装置を介した炉内ガスの流出があり、シール性能が不十分であった。
比較例2は、不活性気体の吐出面風速、炭化炉内の圧力は実施例1と同一であるが、膨張室を7段とし、開放孔側から数えて3段目に不活性気体の気体吐出手段を設置した。その結果、炉内への外気の流入は無いが、炭化炉からシール装置を介した炉内ガスの流出があり、シール性能が不充分であった。
11 シール装置本体
11a 一方の端面
11b 炭化炉接続孔
11c 他方の端面
11d 開放孔
12,12a,12b 膨張室
13a,13b 仕切り板
13c 開口部
16 気体吐出手段
16a 吐出孔
17 多孔板
20 炭化炉
21 繊維束導出入孔
22 熱処理室
23 ヒータ
30 外気雰囲気
A 繊維束
Claims (2)
- 炭素繊維製造用炭化炉の繊維束導出入孔に接続され、繊維束が通されるラビリンス型のシール装置において、
前記炭化炉の繊維束導出入孔に接続される炭化炉接続孔と外気雰囲気に開放された開放孔とが形成され、内部に繊維束が走行するシール装置本体を有し、
シール装置本体の内部には、繊維束の走行方向に沿って10段以上30段未満の膨張室が設けられ、
開放孔側から数えて8段目の膨張室より炭化炉接続孔側の膨張室の少なくとも1つに、繊維束の走行方向に対して略直交方向に不活性気体を吐出する気体吐出手段が設置されていることを特徴とする炭素繊維製造用炭化炉のシール装置。 - 2つの膨張室が互いに対向するように設けられ、該2つの膨張室に気体吐出手段が各々設置されていることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維製造用炭化炉のシール装置。
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