JP2010003980A - 圧電アクチュエータ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧電アクチュエータは、軸方向に伸縮する圧電素子10と、圧電素子10を収容し、伸縮可能な伸縮部21を備えた収容部材20とを有する。収容部材20は、圧電素子10の側面外方を覆う筒状の胴部23と、胴部23の先端開口部231に配設されると共に圧電素子10の駆動力が作用する駆動部21と、胴部23と駆動部21との間を連結するよう配設されるダイヤフラム板よりなる伸縮部22とを有する。伸縮部22は、Ni−Co−Mo合金(マルエージング鋼)からなる。
【選択図】図2
Description
従来から、圧電アクチュエータの伸縮部は、圧電素子の伸縮に伴う伸縮変形の繰り返しにより、疲労破壊が生じるという問題がある。特に、圧電アクチュエータを小型化する場合、伸縮部を小型化すると伸縮部に発生する応力が大きくなり、疲労寿命がさらに低下してしまう。
上記伸縮部は、Ni−Co−Mo合金(マルエージング鋼)からなることを特徴とする圧電アクチュエータにある(請求項1)。
使用するNi−Co−Mo合金(マルエージング鋼の特性としては、疲労強度が700MPa以上、硬度が540Hv以上、引張強さが1800N/mm2であることが好ましい。
すなわち、上記伸縮部をダイヤフラム構造とした場合でも、該伸縮部の疲労寿命を向上させることができ、耐久性・信頼性を高めることができる。特に、ダイヤフラム構造の場合には、上記伸縮部を小型化した場合に、上記圧電素子の伸縮に伴って上記伸縮部に発生する応力が大きくなる傾向があるため、上記の効果をより一層発揮することができる。
上記伸縮部は、大径部と小径部とを交互に有するベローズである構成とすることができる(請求項3)。
すなわち、上記伸縮部をベローズ構造とした場合でも、該伸縮部の疲労寿命を向上させることができ、耐久性・信頼性を高めることができる。
上記圧電アクチュエータを使用状態にセットした場合には、上記圧電素子の先端面と上記駆動部とが接触しており、かつ、上記圧電素子が自然長の状態では、上記収容部材の上記伸縮部に圧縮応力が作用するよう構成されていることが好ましい(請求項4)。
上記インジェクタは、上記圧電アクチュエータの伸縮変位約30μmかつ繰り返し伸縮回数約1×109回以上という過酷な条件下で使用される。そのため、上記の優れた圧電アクチュエータを用いることにより、耐久性・信頼性を向上させることができ、上記インジェクタ全体の性能向上を図ることができる。
上記圧電素子を伸長させた状態で、その先端面を上記駆動部に接触させて上記収容部材内に収容し、
さらに、上記伸縮部に対して実質的に応力が作用しない状態で、上記収容部材の上記胴部と上記伸縮部と上記駆動部とを固定すると共に、上記圧電素子の後端位置を規制するハウジング部と上記胴部とを固定し、
その後、上記圧電素子を自然長の状態に戻し、該圧電素子の先端面と上記駆動部との間に隙間を形成することを特徴とする圧電アクチュエータの製造方法がある(請求項6)。
このように、上記の製造方法によれば、伸縮部の疲労寿命を向上させることができ、耐久性・信頼性に優れた圧電アクチュエータを得ることができる。
本発明の実施例にかかる圧電アクチュエータ及びその製造方法について、図を用いて説明する。
本例の圧電アクチュエータ1は、図1、図2に示すごとく、軸方向に伸縮する圧電素子10と、圧電素子10を収容し、伸縮可能な伸縮部22を備えた収容部材20とを有する。伸縮部22は、Ni−Co−Mo合金(マルエージング鋼)からなる。
以下、これを詳説する。
なお、セラミック積層体11の断面形状としては、用途等によって円形、樽形、八角形等の様々な形状とすることもできる。
また、側面電極14の側面外周は、図示を省略したが、シリコーン樹脂よりなる絶縁樹脂でモールドされている。
また、側面電極14は、Agフィラーをエポキシ樹脂中に含有させた導電性接着剤に、金属板を加工したメッシュ状のエキスパンドメタルを埋設して構成されている。
また、セラミック積層体11の後端面112には、アルミナよりなる略円柱形状のブロック部材19が接合されている。
本例の伸縮部22は、市販されている一般的なNi−Co−Mo合金(マルエージング鋼)により構成されている。
また、駆動部21は、セラミック積層体11の先端面111に接合された伝達部材18の先端面181との間に隙間29を形成している。隙間29の軸方向の距離dは、30μmである。
まず、圧電材料となるジルコン酸チタン酸鉛よりなるセラミックス原料粉末を準備し、溶剤、バインダー、可塑剤、分散剤等を加えてスラリーを作製した。そして、ドクターブレード法により、上記スラリーをキャリアフィルム上に塗布し、一定厚みのグリーンシートを成形した。
なお、グリーンシートの成形方法としては、本例で用いたドクターブレード法以外にも、押出成形法やその他種々の方法を用いることができる。
そして、上記グリーンシートから所望の大きさのシート片120を切り出し、そのシート片120を積層し、中間積層体110を作製した。このとき、シート片120に形成された控え部131の位置が交互となるように、シート片120を積層した。
そして、セラミック積層体11の電極接合面118、119に導電性接着剤を塗布した後、塗布した導電性接着剤に一対のエキスパンドメタルを配置し、導電性接着剤を加熱硬化させた。これにより、セラミック積層体11の電極接合面118、119に側面電極14を形成した。
そして、ブロック部材19とハウジング部30とを当接させた状態で、圧電素子10とハウジング部30とを組み付けた。このとき、ハウジング部30の収容孔31に収容された一対のターミナルリード32の先端部と圧電素子10の一対の側面電極14に接合しておいた電極端子15とを溶接により接合した。また、ターミナルリード32とハウジング部30との間は、収容孔31の後端開口部312において、ガラスよりなるハーメチックシール33によりシールしておいた。
さらに、図示を省略したが、圧電素子10の側面外周にシリコーン樹脂よりなる絶縁樹脂を塗布し、180℃、1時間の条件で加熱して硬化させた。これにより、圧電素子10の外周面100を絶縁樹脂によりモールドした。
このとき、図6(a)に示すごとく、圧電素子10に電圧を印加して圧電素子10を伸長させた状態とし、圧電素子10の先端面(伝達部材18の先端面181)を駆動部21に接触させ、伸縮部22に対して軸方向に実質的に応力が作用しない状態で圧電素子10を収容した。
以上により、図1の圧電アクチュエータ1を作製した。
まず、圧電アクチュエータ1をインジェクタに組み付け、圧電アクチュエータ1を使用状態にセットする。
すなわち、同図に示すごとく、圧電アクチュエータ1を使用状態にセットした場合において、圧電素子10に対して電圧が印加されていない自然長の状態では、収容部材20の伸縮部22に圧縮応力f1(=約420MPa)が作用する。
ここで、本例では、予め伸縮部22に圧縮応力f1が作用しているため、最終的に伸縮部22に作用する応力(引張応力)Fは、F=f2−f1(=約140MPa)となる。
また、図7(b)の状態から圧電素子10に対する電圧の印加を解除すれば、圧電素子10は自然長の状態となり、図7(a)の状態に戻る。
本例の圧電アクチュエータ1は、圧電素子10を収容する収容部材20において、伸縮可能な伸縮部22を備えている。そして、伸縮部22は、Ni−Co−Mo合金(マルエージング鋼)からなる。すなわち、本例では、圧電素子10の伸縮に伴って伸縮を繰り返す伸縮部22を構成する材料として、数ある鋼材料の中から実験結果に基づいてNi−Co−Mo合金を積極的に選択して採用し、この材料が伸縮部22に適用するものとして最適であることを見出したのである。そして、Ni−Co−Mo合金の特性を生かして伸縮部22の疲労破壊を抑制することができ、疲労寿命を格段に向上させることができる。これにより、圧電アクチュエータ1の耐久性・信頼性を高めることができる。また、伸縮部22を小型化しても、疲労寿命を充分に確保することができるため、圧電アクチュエータ1の小型化を図ることもできる。
このような構造とした場合でも、伸縮部22の疲労寿命を向上させることができ、耐久性・信頼性を高めることができる。特に、ダイヤフラム構造の場合には、伸縮部22を小型化した場合に、圧電素子10の伸縮に伴って伸縮部22に発生する応力が大きくなる傾向があるため、上記の効果をより一層発揮することができる。
ベローズ構造としては、例えば、図8に示すごとく、収容部材20は、圧電素子10の側面外方を覆う筒状の胴部23と、胴部23の先端側に連結される筒状の伸縮部22と、伸縮部22の先端開口部221を閉塞してなると共に圧電素子10の駆動力が作用する駆動部21とを有する。そして、伸縮部22は、大径部と小径部とを交互に有するベローズである。その他の構成は、図1のダイヤフラム構造のものと同様である。
この場合にも、圧電アクチュエータ1は、ダイヤフラム構造の場合と同様に、伸縮部22の疲労寿命を向上させることができ、耐久性・信頼性を高めることができる。
本例は、本発明の圧電アクチュエータの効果(耐久性)を調べた試験例である。
本例では、まず、本発明品として、収容部材の伸縮部がNi−Co−Mo合金(マルエージング鋼)からなる実施例1の圧電アクチュエータ(本発明品E)を準備した。伸縮部は、ダイヤフラム構造を採用したものである。
また、比較品として、伸縮部がそれぞれ析出硬化型ステンレス鋼(SUS631)、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)からなる圧電アクチュエータ(比較品C1、C2)を準備した。
疲労強度は、平滑材の試験片を用いて繰り返し曲げ試験を行うことにより求めた。また、硬度は、ビッカース硬度計を用いて試験片断面の硬度を測定することにより求めた。また、引張強さは、試験片をロードセルで引っ張り、破断した際の荷重を測定することにより求めた。
この結果を表2、表3に示す。
表2、図9からわかるように、比較品C1は、応力振幅が約430MPaを超えると破断してしまう。また、比較品C2は、応力振幅が約670MPaを超えると破断してしまう。これに対して、本発明品Eは、約800MPaを超えても破断しない。
同表からわかるように、疲労強度は、比較品C1が620MPa、比較品C2が420MPaであるのに対し、本発明品Eは800MPaであった。また、硬度は、比較品C1がHv400、比較品C2がHv190であるのに対し、本発明品はHv590であった。また、引張強さは、比較品C1が1350MPa、比較品C2が723MPaであるのに対し、本発明品Eは1985MPaであった。このように、本発明品Eは、疲労強度、硬度、引張強さのいずれも比較品C1、C2より高い値を示した。
修正Goodman線の作成方法は、まず、図10に示すごとく、横軸に伸縮部(ダイヤフラム板)に作用する平均応力(=f1+f2/2)、縦軸に伸縮部(ダイヤフラム板)に作用する応力振幅(=f2/2)をとる。なお、f1、f2は、実施例1において説明した圧縮応力、引張応力である。
また、修正Goodman線よりも内側(応力の低い側)の領域は、伸縮部が破損・破断しない応力領域である。
すなわち、本発明品の圧電アクチュエータは、収容部材の伸縮部を構成する材料をNi−Co−Mo合金(マルエージング鋼)とすることにより、比較品(従来品)に比べて伸縮部の疲労破壊を抑制することができ、疲労寿命を格段に向上できることがわかった。そして、これにより、耐久性・信頼性を高められることがわかった。
本例は、実施例1の圧電アクチュエータ1をインジェクタ6に用いた例である。
本例のインジェクタ6は、図11に示すごとく、ディーゼルエンジンのコモンレール噴射システムに適用したものである。
このインジェクタ6は、同図に示すごとく、駆動部としての圧電アクチュエータ1が収容される上部ハウジング62と、その下端に固定され、内部に噴射ノズル部64が形成される下部ハウジング63を有している。
縦穴621の側方には、高圧燃料通路622が平行に設けられ、その上端部は、上部ハウジング62上側部に突出する燃料導入管623内を経て外部のコモンレール(図示略)に連通している。
ドレーン通路624は、縦穴621と駆動部となる圧電アクチュエータ1との間の隙間60を経由し、さらに、この隙間60から上下ハウジング62、63内を下方に延びる図示しない通路によって後述する3方弁651に連通してしる。
10 圧電素子
20 収容部材
21 駆動部
22 伸縮部
23 胴部
231 先端開口部
Claims (6)
- 軸方向に伸縮する圧電素子と、該圧電素子を収容し、伸縮可能な伸縮部を備えた収容部材とを有する圧電アクチュエータにおいて、
上記伸縮部は、Ni−Co−Mo合金(マルエージング鋼)からなることを特徴とする圧電アクチュエータ。 - 請求項1において、上記収容部材は、上記圧電素子の側面外方を覆う筒状の胴部と、該胴部の先端開口部に配設されると共に上記圧電素子の駆動力が作用する駆動部と、上記胴部と上記駆動部との間を連結するよう配設されるダイヤフラム板よりなる上記伸縮部とを有することを特徴とする圧電アクチュエータ。
- 請求項1において、上記収容部材は、上記圧電素子の側面外方を覆う筒状の胴部と、該胴部の先端側に連結される筒状の上記伸縮部と、該伸縮部の先端開口部を閉塞してなると共に上記圧電素子の駆動力が作用する駆動部とを有しており、
上記伸縮部は、大径部と小径部とを交互に有するベローズであることを特徴とする圧電アクチュエータ。 - 請求項2又は3において、上記圧電アクチュエータは、該圧電アクチュエータ単体の場合には、上記圧電素子が自然長の状態では、該圧電素子の先端面と上記駆動部との間に隙間が形成されており、
上記圧電アクチュエータを使用状態にセットした場合には、上記圧電素子の先端面と上記駆動部とが接触しており、かつ、上記圧電素子が自然長の状態では、上記収容部材の上記伸縮部に圧縮応力が作用するよう構成されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。 - 請求項1〜4のいずれか1項において、上記圧電アクチュエータは、内燃機関の燃料噴射用のインジェクタに内蔵するアクチュエータであることを特徴とする圧電アクチュエータ。
- 請求項4に記載の圧電アクチュエータを製造する方法であって、上記収容部材内に上記圧電素子を収容するに当たっては、
上記圧電素子を伸長させた状態で、その先端面を上記駆動部に接触させて上記収容部材内に収容し、
さらに、上記伸縮部に対して実質的に応力が作用しない状態で、上記収容部材の上記胴部と上記伸縮部と上記駆動部とを固定すると共に、上記圧電素子の後端位置を規制するハウジング部と上記胴部とを固定し、
その後、上記圧電素子を自然長の状態に戻し、該圧電素子の先端面と上記駆動部との間に隙間を形成することを特徴とする圧電アクチュエータの製造方法。
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