以下に、本発明について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る有機ELディスプレイの平面図である。図2は、有機ELディスプレイの画素の平面図である。また、図3は、画素の拡大断面図である。
有機ELディスプレイ1は、図1に示すように、テレビ等の家電機器、携帯電話又はコンピュータ機器等の電子機器に用いるものであり、素子基板2と、素子基板2上に形成される複数の画素3と、かかる画素3の発光を制御する駆動IC4と、を含んで構成されている。
素子基板2は、例えば、ガラス又はプラスチックから成り、素子基板2の中央に位置する表示領域D1には、マトリックス状に配列された複数の画素3が形成されている。また、素子基板2の端部に位置する非表示領域D2には、駆動IC4が実装されている。
図2に示すように、画素3には発光領域Rが形成されており、かかる発光領域Rに発光可能な有機EL素子5が設けられている。
また、各画素3は、隔壁6によって仕切られている。隔壁6は、断面が上部よりも下部が幅広の形状であって、後述する絶縁物7上に形成され、画素3を取り囲むように配置されている。隔壁6は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素又は酸化窒化ケイ素等の無機絶縁材料、あるいはフェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の有機絶縁材料から成る。
また、画素3は、赤色、緑色又は青色のいずれかの色を発光することができる。このことは、後述するように有機EL素子5を構成する材料を選択することによって、発光する色を決定することができる。なお、本実施形態においては、画素を赤色、緑色又は青色のいずれかの色を発光するものとしたが、例えば、白色又は橙色等の色を発光するようにしてもよい。
また、素子基板2上には、素子基板2に対して対向するように配置された封止基板8が形成されている。封止基板8は透明の基板から成り、例えばガラス又はプラスチックを用いることができる。なお、本実施形態においては、素子基板2側から封止基板8側に向けて光が発せられるトップエミッション型の有機ELディスプレイであるため、封止基板8は透明の部材が用いられる。
素子基板2の表示領域D1には、表示領域D1を被覆するようにシール層9が形成されており、素子基板2と封止基板8とシール層9によって各画素3を密封している。各画素3を密封することによって、各画素3に酸素又は水分が浸入するのを低減し、各画素3が劣化するのを抑制することができる。また、シール層9は、接着材としての機能を有し、硬化することによって素子基板2と封止基板8とを固着することができる。かかるシール層9は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂又はシリコン樹脂等の光硬化性樹脂を用いることができる。なお、本実施形態においては、紫外線の照射により硬化する光硬化性のエポキシ樹脂を用いる。
次に、図3に示すように、本実施形態に係る有機ELディスプレイの素子基板2と封止基板8との間に形成される各種層について説明する。素子基板2上には、TFTや電気配線等から成る回路層10が形成されている。さらに、回路層10上には、回路層10の所定領域以外が電気的にショートしないように、例えば、窒化珪素(SiNx)、酸化珪素(SiOx)又は酸化窒化珪素(SixNyOz)等から成る絶縁層11が形成されている。
また、絶縁層11上には、回路層10及び絶縁層11に起因する表面の凹凸を低減するために、平坦化膜12が形成されている。回路層10は、複数の電気配線がパターニングされているため、その表面には凹凸が形成される。有機EL素子5を凹凸な面上に形成すると、有機EL素子5を構成する電極層同士が短絡し、有機EL素子5が発光しないことがある。そのため、回路層10及び絶縁層11上に平坦化膜12が形成される。
かかる平坦化膜12は、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂又はシリコン樹脂等の絶縁性を有する有機材料を用いることができる。なお、平坦化膜12の厚みは、例えば2μm以上5μm以下に設定されている。
また、平坦化膜12には、平坦化膜12を貫通するコンタクトホールSが形成されている。かかるコンタクトホールSは、上部よりも下部が幅狭に形成されている。コンタクトホールSは、各画素3に形成されており、コンタクトホールSの底部には、回路層10の一部が露出している。
また、発光領域Rを取り囲むように、第1電極層13上に絶縁物7が形成されている。そして、絶縁物7は、第1電極層13と後述する第2電極層15とが短絡するのを防止している。なお、絶縁物7は、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の有機絶縁材料、あるいは窒化珪素、酸化珪素又は酸化窒化珪素等の無機絶縁材料から成る。
図4は、有機EL素子5の構成を説明するための断面図である。発光領域Rに位置する平坦化膜12上には、有機EL素子5が形成されている。有機EL素子5は、第1電極層13と、第1電極層13上に形成される複数層から成る有機EL層14と、有機EL層14上に形成される第2電極層15と、を含んで構成されている。
図4に示すように、有機EL層14は、第1電極層13上に形成される正孔注入層16と、正孔注入層16上に形成される正孔輸送層17と、正孔輸送層17上に形成された有機発光層18と、有機発光層18上に形成された電子輸送層19と、電子輸送層19上に形成された電子注入層20と、電子注入層20上に形成された第2電極層15と、を含んで構成されている。
第1電極層13は、コンタクトホールSの内周面から平坦化膜12の上面にかけて形成されるとともに、コンタクトホールS内に位置する回路層10の一部と接続されている。第1電極層13は、画素3毎に形成されており、隣接する画素における第1電極層と離間して設けられている。第1電極層13は、例えば、アルミニウム、銀、銅又は金等の金属、あるいはこれらの合金等の材料から成る。なお、第1電極層13の厚みは、例えば50nm以上500nm以下に設定されている。
正孔注入層16は、第1電極層13上に形成されている。正孔注入層16は、第1電極層13から有機発光層18に向けて電荷を注入しやすくするための機能を有している。かかる正孔注入層16は、例えば、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、パラジウム又は白金等のVIII族金属元素、銅等のIB族金属元素、或いはレニウム等のVII族金属元素からなる高導電性遷移金属、銅フタロシアニン(CuPc)等のフタロシアニン誘導体、フッ化炭素のオリゴマーまたはポリマー(CFx)、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、2−TNATA等のスターバースト型芳香族アミンから成る。
正孔輸送層17は、正孔注入層16上に形成されている。正孔輸送層17は、正孔注入層16から注入された正孔を有機発光層18に向けて輸送する機能を備えている。正孔輸送層17は、例えば、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等 の芳香族ジアミン化合物、或いは4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等のスターバースト芳香族又は芳香族アミン化合物、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェンなどの既知のホール輸送材料あるいはこれらの混合物または積層膜を用いることができる。
また、正孔輸送層17は、正孔注入層16上に、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン又はそれにシアノ基等が結合した誘導体等の複素環化合物の層を形成した上に、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の層を積層した積層膜を用いることができる。正孔輸送層17の厚みは、例えば10nm以上10μm以下に設定されており、好ましくは10nm〜500nmに設定されている。
有機発光層18に用いられる発光物質(発光分子)としては、蛍光を発光する物質および燐光を発光する物質のいずれをも用いることができるが、より好ましくは励起三重項状態から燐光を発光する物質、あるいは励起三重項状態を経由して発光する物質を用いる。有機発光層18は、ホスト材料に、ドーパント材料を含有したものを用いることができる。有機発光層18におけるドーパント材料の濃度は、例えば、0.5質量%以上20質量%以下とする。
有機発光層18は、赤色の光を発する場合、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,4−フェニレンビス(トリフェニルシラン)、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリ(9H−カルバゾール−9−イル)ベンゼン、CBP、Alq3又はSDPVBi等のホスト材料に、 燐光を発光するドーパント材料として、ビス[2−(2−ベンゾチアゾイル−kN3)フェニル−kC](2,4−ペンタジオナト−kO,kO’)イリジウム、ビス(1−フェニルイソキノリナト−C2,N)(2,4−ペンタンジオナト−O,O)イリジウム、トリス(1−フェニルイソキノリナト−C2,N)イリジウム等の有機イリジウム化合物、オクタエチルポルフィン白金(PtOEP)、(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)(2,4−ペンタンジオナト−O,O)白金(II)、(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)(2,4−ペンタンジオナト−O,O)白金(II)、ジシアノ(ジカルボキシ)ビピリジン白金錯体([Pt(CN)2(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)]、ピリジンチオラト架橋ビピリジン白金複核錯体syn−[Pt2(ビピリジン)2(ピリジンチオール)2](PF6)2、[Pt2(2−キノリン−2−チオール)2(2,2’−ビピリジン)2](PF6)2、Pt2Ph4(1,4−ビス(2,2’−ジピリジルアミノ)−ベンゼン)、Pt2Ph4(4,4’−ビス(2,2’−ジピリジルアミノ)ビフェニル)、Pt3Ph6(1,3,5−トリス(2,2’−ジピリジルアミノ)ベンゼン)、Pt3Ph6(2,4,6−トリス(2,2’−ジピリジルアミノ)−1,3,5−トリアジン)、Pt3Ph6(1,3,5−トリス[p−(2,2’−ジピリジルアミノ)フェニル]−ベンゼン)、Pt3Ph6(2,4,6−トリス[p−(2,2’−ジピリジルアミノ)フェニル]−1,3,5−トリアジン)、Pt3Ph6(1,3,5−トリス{4’−[4’’−(2,2’−ジピリジルアミノ)]ビフェニル}ベンゼン)、Pt3Ph6(1,3,5−トリス{4’−[4’’−(2,2’−ジピリジルアミノ)]ビフェニル}ベンゼン)等の複核白金(II)錯体、{ジメチル2−[メトキシ(8−オキシ−kO−2−キノリル−kN)メチル]マロナト−kC}(トリフェニルフォスフィン)白金(II)等の有機白金化合物、公知の有機レニウム化合物、公知の有機オスミウム化合物を含有したものを用いることができる。或いは、蛍光を発光するドーパント材料として、DCJTB、クマリン、キナクリドン、フェナンスレン基を有するペリノン誘導体、オリゴチオフェン誘導体又はペリレン誘導体等をホスト材料に含有したものを用いることができる。
また、緑色の光を発する場合、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,4−フェニレンビス(トリフェニルシラン)、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリ(9H−カルバゾール−9−イル)ベンゼン、CBP、Alq3又はSDPVBi等のホスト材料、あるいはこれらのホスト材料に、燐光を発光するドーパント材料として、ビス[ピリジニル−kN−フェニル−kC](2,4−ペンタジオナト−kO,kO’)イリジウム等の有機イリジウム化合物、有機白金化合物、公知の有機レニウム化合物、公知の有機オスミウム化合物を含有したものを用いることができる。或いは、蛍光を発光するドーパント材料として、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、スチリルアミン、ペルリン、ベンゼン環を有するシロール誘導体、フェナンスレン基を有するペリノン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ペリレン誘導体又はアゾメチン亜鉛錯体等をホスト材料に含有したものを用いることができる。
また、青色の光を発する場合、例えば、CBP又はSDPVBi等のホスト材料、あるいはこれらのホスト材料に、燐光を発光するドーパント材料として、トリス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−C2,N]イリジウム(III)、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−C2,N]イリジウム(III)ピコリネート等の有機イリジウム化合物、有機白金化合物、公知の有機レニウム化合物、公知の有機オスミウム化合物を含有したものを用いることができる。或いは、蛍光を発光するドーパント材料として、テトラ(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナト)ホウ素リチウム、スチリルアミン、ペルリン、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジェン、トリフェニルアミン構造とビニル基が結合した化合物、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体又はアゾメチン亜鉛錯体又はベンゼン環を有するシロール誘導体等をホスト材料に含有したものを用いることができる。なお、有機発光層18の厚みは、例えば20nm以上40nm以下に設定されている。
また、電子輸送層19は、電子注入層20から注入された電子を有機発光層18に向けて輸送する機能を備えており、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、 ポリアリールアルカン又はブタジエン等を用いることができる。電子輸送層19の厚みは、例えば10nm以上10μm以下に設定されており、好ましくは15nm〜300nmに設定されている。
上述した正孔注入層16、正孔輸送層17、有機発光層18又は電子輸送層19に用いられる有機化合物、ホール輸送材料或いは電子輸送材料はそれぞれ単独で各層を形成するほかに、高分子材料をバインダとして各層を形成することもできる。この目的で使用される高分子材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなどを例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。
上述した正孔注入層16、正孔輸送層17、有機発光層18又は電子輸送層19に用いられる有機化合物、ホール輸送材料或いは電子輸送材料の成膜方法は、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法又はコーティング法などを用いることが可能で、これらに特に限定されることはないが、低分子化合物に場合は主として抵抗加熱蒸着および電子ビーム蒸着が用いられ、高分子材料の場合は主にコーティング法が用いられる。
また、電子注入層20は、電子が第2電極層15から注入される機能を備えており、例えば、(8−ヒドロキシキノリナト)リチウム、フッ化リチウム又はフッ化セシウム等を用いることができる。電子注入層20の厚みは、例えば0.5nm以上2nm以下に設定されている。
第2電極層15は、電子注入層20上から絶縁物7上にかけて形成される。さらに、第2電極層15は、表示領域D1を被覆するように形成されており、隣接する画素同士にて第2電極層15は共通電極として機能している。第2電極層15を共通電極としたことで、各画素の駆動回路に接続された回路層10と、第2電極層15とを接続するコンタクトホールを別途形成しなくてもよいので、表示領域D1に占める画素の合計面積の比率である開口率が向上し、画素の電流密度が低減され、有機EL素子を長寿命化できるという効果を奏する。また、第2電極層15を電気的に分離形成するための下部よりも上部が幅広な逆テーパーレジストが不要になる。仮に、絶縁物7上に逆テーパーレジストを形成した場合、第2電極層は、逆テーパーレジストにて各画素に分離されるため、逆テーパーレジストの表面全体を第2電極層で被覆しないことになる。そのため、第2電極層にて被覆されていない逆テーパーレジストの一部を介して、有機EL素子内部に水分等が浸入しやすくなり、デバイスが劣化しやすくなる。一方、本実施形態においては、第2電極層15が表示領域D1の全面を被覆しているため、デバイスの劣化を避けられるという効果を奏する。
第2電極層15は、有機発光層18から放出される光が透過することができる材料から構成され、例えばインジウム錫酸化膜(ITO)又は錫酸化膜等の光透過性を有する導電材料を用いて形成される。また、第2電極層15は、例えばマグネシウム、銀、アルミニウム、セリウム又はカルシウム等の材料、あるいはこれらの合金等を用いることができ、その厚みを30nm以下にすることによって、光透過性の電極とすることができる。その結果、有機発光層18から放出された光が、第2電極層15を透過して、有機EL素子5から外部に出射される。
また、発光領域Rにおける第2電極層15上には、保護層21が形成されている。かかる保護層21は、シール層9形成時にシール層9の光分解性樹脂から分解する分解物と結合する機能を備えている。ここで、分解物とは、シール材が光を照射されることで硬化してシール層になるときに、シール層から発生する不飽和カルボニル化合物、スルフィド化合物又は含酸素環状化合物等をいう。分解物とは、例えば、シール層がエポキシ樹脂から成る場合、エポキシ樹脂に含まれる成分が光分解して発生するα,β−不飽和カルボニル化合物、不飽和アルデヒド、特にアクロレイン(IUPAC名:2−プロペナール)、オキシラン、オキセタン、オキソラン、オキサン等の環状エーテル又は含酸素環状化合物、或いはエピスルフィド基等から発生するアリールスルフィド化合物のことをいう。さらに、分解物とは、非イオン性光酸発生型光カチオン重合開始剤として含有され、シール材から発生するニトロベンジルエステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドホスホナート、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、スルホン酸誘導体、ベンゼン、ヨードベンゼン、塩化ベンゾイル、環状ジメチルシロキサン、シクロヘキサン、アセトン等のことをいう。
かかる分解物が有機発光層18中に浸入すると、キャリア輸送材料、ホスト材料、燐光材料からなるドーパント材料の励起状態の分子、基底状態の分子、ラジカルアニオン、ラジカルカチオンと化学反応を起こして、有機発光層18が劣化することがある。また、分解物がキャリア輸送材料の励起状態の分子、基底状態の分子、ラジカルアニオン、ラジカルカチオンと化学反応を起こして生成した劣化成分が、ホスト材料、燐光材料からなるドーパント材料の励起状態の分子、基底状態の分子、ラジカルアニオン、ラジカルカチオンと更に化学反応を起こして、有機発光層18が劣化することがある。
分解物と化学反応する層としての保護層21は、分解物と化学反応する捕捉成分である、反応剤、酸化剤、還元剤又は光触媒の少なくとも1種を、保護層21の光路長調整成分中に添加させた混合物から成る。
捕捉成分を添加する保護層21の光路長調整成分としては、例えば、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、2−TNATA、TCTA、等のスターバースト型芳香族アミン、NPB、TDAPB、CBP等の芳香族アミン、Alq,BAlq等のアルミニウム錯体、ZnS、ZnSe、ZnSxSe1−x、ZnO、SnO2、ZnS、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸化窒化膜、ITO、IZO、TO、ZnO等の酸化物や窒化物、LiF等のアルカリ金属フッ化物を用いることができる。
反応剤として作用する捕捉成分としては、例えば、アニリン、アニリン誘導体、N−フェニルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド誘導体、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、3−ニトロベンゼンスルホン酸、3−ニトロベンゼンスルホン酸誘導体、アルコール類、アルカンチオール類又はリポ酸等を用いることができる。分解物と反応剤とが化学反応することにより、分解物は燐光材料からなるドーパント材料や、キャリア輸送材料と化学反応を起こしにくい別の物質に変換される。例えば、分解物として不飽和アルデヒドに属するアクロレインと、反応剤としてのアニリン誘導体とは、付加反応を起こして、分解物よりも高分子量のアミノアルデヒド誘導体が生成する。アミノアルデヒド誘導体は、不飽和アルデヒドと比較して、燐光材料からなるドーパント材料や、キャリア輸送材料と化学反応を起こしにくい。更に、分解物よりも高分子量の別の物質に変換されることにより、保護層21中を移動することが困難になり、有機発光層18中に浸入することも防止される。
酸化剤として作用する捕捉成分としては、例えば、3−クロロ過安息香酸、過酢酸、過炭酸、過リン酸、次過塩素酸、過硫酸等の過酸、過炭酸ナトリウム等の過炭酸塩、過安息香酸塩、過酢酸塩、過リン酸塩、次過塩素酸塩、過硫酸塩等の過酸塩、或いは過酸エステル、不飽和ヒドロペルオキシド、過酸化バリウム等の無機過酸化物を用いることができる。さらに、酸化剤として作用する捕捉成分としては、大環状過酸化物、有機ビスマス−酸素錯体、過酸化尿素等の有機過酸化物、尿素−過酸化水素付加体、フェントン試薬、デルタ酸(三角酸)、スクアリン酸(四角酸)、クロコン酸(五角酸)、ロジゾン酸(六角酸)、ヘプタゴン酸(七角酸)等のオキソカーボン酸、ピクリン酸等のフェノール誘導体、メルドラム酸、チタノセン(III)塩化物等の遷移金属のメタロセン誘導体等を用いることができる。分解物と酸化剤とが化学反応することにより、分解物は燐光材料からなるドーパント材料や、キャリア輸送材料と化学反応を起こしにくい別の物質に変換される。例えば、分解物として不飽和アルデヒドに属するアクロレインは、酸化剤としての尿素−過酸化水素付加体と、酸化反応を起こして、分解物よりも高分子量の不飽和酸に属するアクリル酸が生成する。不飽和酸は、不飽和アルデヒドと比較して、燐光材料からなるドーパント材料や、キャリア輸送材料と化学反応を起こしにくい。更に、分解物よりも高分子量の別の物質に変換されることにより、保護層21中を移動することが困難になり、有機発光層18中に浸入することも防止される。アクロレインの、標準水素電極を基準電極とする酸化還元電位が−1.8Vであるので、酸化剤を選択する際、より酸化力の強い物質を選べばよい。
還元剤として作用する捕捉成分としては、例えば、アルキルアミン、アリールアミン、トコトリエノール、トコフェロール又はヒドロキノン、或いは没食子酸、没食子酸プロピル、没食子酸イソアミル、エピガロカテキンガレート等の没食子酸のエステルを用いることができる。さらに、還元剤として作用する捕捉成分としては、エラグ酸、アントシアニジン類、エピガロカテキン類、イソフラボン類、フラボノイド類、ポリフェノール化合物又は1,2−無水グリカール(Glycal)等の糖化合物等を用いることができる。分解物と還元剤とが化学反応することにより、分解物は燐光材料からなるドーパント材料や、キャリア輸送材料と化学反応を起こしにくい別の物質に変換される。例えば、分解物として不飽和アルデヒドに属するアクロレインは、還元剤としてのヒドロキノンまたはヒドロキノン誘導体と、還元反応を起こして、分解物よりも高分子量の飽和アルデヒドに属するプロピオンアルデヒドが生成する。飽和アルデヒドは、不飽和アルデヒドと比較して、燐光材料からなるドーパント材料や、キャリア輸送材料と化学反応を起こしにくい。更に、分解物よりも高分子量の別の物質に変換されることにより、保護層21中を移動することが困難になり、有機発光層18中に浸入することも防止される。アクロレインの、標準水素電極を基準電極とする酸化還元電位が−1.8Vであるので、還元剤を選択する際、より還元力の強い物質を選べばよい。
光触媒として作用する捕捉成分としては、例えば、リンポルフィリン錯体、アンチモンポルフィリン錯体又はトリス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)錯イオン(Ru(bpy)3]2+)等の錯体光触媒、或いはチオニン又はp−キンキフェニル等の有機半導体光触媒、層状ニオブ酸塩等の層状光触媒を用いることができる。さらには、光触媒として作用する捕捉成分としては、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等のチタン酸塩、バナジン酸ビスマス等のバナジン酸塩、モリブデン酸ビスマス等のモリブデン酸塩、タンタル酸ナトリウム等のタンタル酸塩又はAgGaO2等の複合酸化物、或いはチタン酸化物(TiO2)、タングステンの酸化物(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化鉄(Fe2O3)ZnO、ZnS、CdS、As2S3、FeS2、PbS、Zn3P2、Cd3P2、Cd3As2、CuCl、AgC1、AgBr、AgI、In2S3、CdSe、ZnSe等を用いることができる。光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下、好ましくは20nm以下の光触媒を使用するのが好ましい。前記のチタン酸化物としては、アナターゼ型とルチル型のいずれも使用することができるが、アナターゼ型の酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは励起波長が380nm以下にあり、このようなアナターゼ型酸化チタンの市販例としては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を例示できる。更に、光触媒とともに添加し、光触媒の作用を増強させる捕捉成分としては、例えば、1,1’−ジメチル−4,4’−ビピリジニウムイオン(メチルビオロゲン)等のメディエーター物質や、トリエタノールアミン等の犠牲還元剤を合わせて用いることができる。犠牲還元剤は、光励起された光触媒の最高被占有準位(HOMO)に生じた正孔に対して電子を供与して(光触媒により光酸化されて)、光励起で光触媒の最低空準位(LUMO)に昇位した還元力の非常に強い電子によって分解物が還元反応を起こすのを助ける作用がある。メチルビオロゲンは、標準水素電極を基準電極とする酸化還元電位が−0.45Vであり、トリス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)錯イオン(Ru(bpy)3]2+)等の光触媒が光励起されると最低空準位(LUMO)に昇位した還元力の非常に強い電子を受容して(光触媒により光還元されて)還元体に変化し、他の物質に対する還元性が強められて、分解物に還元反応を起こす作用がある。このように、分解物と、捕捉成分に含まれる光触媒および/またはメディエーター物質とが化学反応することにより、分解物は燐光材料からなるドーパント材料や、キャリア輸送材料と化学反応を起こしにくい別の物質に変換される。例えば、分解物として不飽和アルデヒドに属するアクロレインは、光触媒として作用するチタン酸化物と、酸化反応を起こして、分解物よりも高分子量の不飽和酸に属するアクリル酸が生成する。不飽和酸は、不飽和アルデヒドと比較して、燐光材料からなるドーパント材料や、キャリア輸送材料と化学反応を起こしにくい。更に、分解物よりも高分子量の別の物質に変換されることにより、保護層21中を移動することが困難になり、有機発光層18中に浸入することも防止される。
あるいは、分解物として不飽和アルデヒドに属するアクロレインは、光触媒として作用するリンポルフィリン錯体と、合わせて用いられるトリエタノールアミン等の犠牲還元剤により、還元反応を起こして、分解物よりも高分子量の飽和アルデヒドに属するプロピオンアルデヒドが生成する。飽和アルデヒドは、不飽和アルデヒドと比較して、燐光材料からなるドーパント材料や、キャリア輸送材料と化学反応を起こしにくい。更に、分解物よりも高分子量の別の物質に変換されることにより、保護層21中を移動することが困難になり、有機発光層18中に浸入することも防止される。
保護層21は、分解物と化学反応を起こして捕捉することにより、有機発光層18に到達する分解物を大幅に減少させることが出来る。その結果、シール層9が硬化することで発生する分解物が有機発光層18を劣化させるのを抑制し、有機EL素子5が劣化するのを防止することができる。ひいては有機EL素子の輝度が低下するのを抑制し、有機ELディスプレイのコントラストを良好に維持することができる。
また、保護層21は、有機発光層18が発する光の波長を共振させて、有機EL素子5から取り出される光の強度を増幅させる機能を備えている。保護層21の光学的な厚みを調整して、第1電極層13と第2電極層15との間の光路長を、有機発光層18の発する光の波長の四分の一の自然数倍とすることにより、取り出したい光の波長における進行波と反射波の位相を強めあうようにすることができ、光取出し効率を向上させることができる。
保護層21の厚みは、有機発光層18を構成する材料の屈折率に依存して設定される。例えば、有機発光層18のホスト材料又は電子輸送層19に用いられるトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)の波長450nmの青色光に対する屈折率は1.83、波長520nmの緑色光に対する屈折率は1.75、波長620nmの赤色光に対する屈折率は1.71であり、正孔輸送層17や光路長調整成分として用いられる4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)の波長450nmの青色光に対する屈折率は2.0、波長520nmの緑色光に対する屈折率は1.9、波長620nmの赤色光に対する屈折率は1.8であり、正孔注入層16に用いられるHATCN6の波長450nmの青色光に対する屈折率は1.90、波長520nmの緑色光に対する屈折率は1.83、波長620nmの赤色光に対する屈折率は1.79であるので、このような各層を構成する物質の所望の波長における屈折率と層の厚みを勘案して、保護層21の厚みを設定する。
また、保護層21を被覆するように、表示領域D1上には封止層22が形成されている。封止層22は、有機EL素子5を封止し、有機EL素子を水分又は外気から保護するものであって、光透過性の機能を有し、例えば窒化珪素(SiNx)、酸化珪素(SiOx)又は窒化炭化珪素(SixNyOz)等の無機材料、或いはパリレン等の有機材料から成る。なお、封止層22の厚みは、例えば10nm以上10μm以下に設定されており、好ましくは100nm以上5μm以下に設定されている。
上述したように本実施形態に係る有機ELディスプレイによれば、保護層21がシール層9から発生する分解物を捕捉することにより、有機発光層18が劣化するのを抑制し、有機EL素子5の輝度が低下するのを防止することが出来る。その結果、有機ELディスプレイのコントラストを良好に維持することが出来る。
以下に、本発明の実施形態に係る有機ELディスプレイ1の製造方法について、図5から図11を用いて詳細に説明する。なお、図5から図11は、一つの画素の断面図を示している。
図5(A)に示すように、回路層10、絶縁層11及び平坦化膜12を上面に積層した素子基板2を準備する。なお、回路層10及び絶縁層11は、従来周知のCVD法、蒸着法又はスパッタリング法等の薄膜形成技術、エッチング法やフォトリソグラフィー法等の薄膜加工技術を用いて、所定パターンに形成される。また、平坦化膜12は、例えば従来周知のスピンコート法を用いて、絶縁層11上に形成する。
次に、平坦化膜12上に露光マスクを用いて平坦化膜12を露光し、さらに現像、ベーキング処理を行い、図5(B)に示すように、回路層10の一部を露出させて、上部よりも下部が幅狭なコンタクトホールSを有する平坦化膜12を形成する。さらに、コンタクトホールSを形成した平坦化膜12上に、例えばアルミニウムから成る金属膜を形成する。そして、図6(A)に示すように、金属膜をパターニングして、第1電極層13形成する。
次に、例えばスピンコート法を用いて、第1電極層13及び一部露出した平坦化膜12上に、例えばアクリル樹脂から成る有機絶縁材料層を形成する。そして、有機絶縁材料層に対してフォトリソグラフィー法を用いて、有機絶縁材料層をパターニングして、図6(B)に示すように、絶縁物7を形成する。なお、絶縁物7は、発光領域Rを取り囲むように形成され、第1電極層13の上面の一部を露出している。
次に、図7(A)に示すように、絶縁物7上に、従来周知のフォトリソグラフィー法を用いて、上部よりも下部が幅広な隔壁6を形成する。かかる隔壁6は、各画素3を取り囲むように形成される。隔壁6は、蒸着マスクを載置することができる支持台としての機能を備えている。かかる隔壁6は、蒸着マスクを基板に対向させた際に、基板と蒸着マスクが接触し、基板を損傷しないように設けられている。
そして、蒸着法を用いて図7(B)に示すように、発光領域Rの第1電極層13上に有機EL層14を形成する。かかる有機EL層14は、複数の層から成る積層体である。
有機EL層14を構成する各層について説明する。まずは、第1電極層13上に、従来周知の真空蒸着法を用いて、例えば厚さ10nmの4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)から成る正孔注入層16を形成する。さらに、正孔注入層16上に、従来周知の真空蒸着法を用いて、例えば厚さ20nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)層を形成し、積層膜から成る正孔輸送層17を形成する。
そして、従来周知の蒸着法を用いて、正孔輸送層17上に厚さ25nmの有機発光層18を形成する。なお、有機発光層18は、構成する材料を選択することによって、発する色を調整することができる。また、有機発光層18上に、従来周知の蒸着法を用いて、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)から成る厚さ30nmの電子輸送層19を形成する。さらに、電子輸送層19上に、従来周知の蒸着法を用いて、例えば、フッ化リチウム(LiF)から成る厚さ0.7nmの電子注入層20を形成する。このようにして、有機EL層14を形成することができる。
次に、図8(A)に示すように、例えば、従来周知の蒸着法を用いて、表示領域D1を被覆するように、電子注入層20上に、例えばマグネシウム33質量%と銀67質量%との混合物から成る厚さ15nmの第2電極層15を形成する。第2電極層15は、隣接する画素同士で共通しており、共通電極として機能する。第2電極層15を共通電極とすることで、微細な空孔を備えた蒸着マスクを用いずに第2電極層15を形成することができるので、製造工程を単純化することができる。このようにして、有機EL素子5を形成することができる。
そして、図8(B)に示すように、発光領域Rにおける第2電極層15上に、従来周知の真空蒸着法を用いて、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)99質量%と、捕捉成分として過酸化尿素1質量%との混合物から成る厚さ100nmの保護層21を形成する。ここで、保護層21は、事前に素子基板2上に貼り合わせるシール層9の材料に合わせて、使用する材料を適宜選択する。つまり、シール層9形成時に、シール層9から発生する分解物と結合可能な材料を選択することで、有機発光層18の劣化を抑制することができる。なお、保護層21の厚みは、有機発光層18の発する光を外部に取り出しやすくするために、つまり光が共振しやすいように、厚みが適切に調整されている。また、光路長調整成分と捕捉成分との混合比率(濃度)は、シール層9の材料に合わせて適宜選択するが、保護層21中の捕捉成分の濃度は、例えば、0.1質量%以上90質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上15質量%以下に設定すると良好な結果が得られる。保護層21中の捕捉成分の濃度を設定する方法として、保護層21へ浸入する分解物の想定される物質量と、反応の化学量論比とに応じて、捕捉成分の物質量を求め、保護層21の膜厚で除して求めることもできる。
さらに、図9(A)に示すように、例えば、化学気相成長法(プラズマCVD法又は熱CVD法)を用いて、表示領域D1全面に、有機EL素子5が劣化しないように、窒化ケイ素から成る厚さ1.5μmの封止層22を形成する。
そして、図10に示すように、有機EL素子5が形成された素子基板2に対して、封止基板8を対向配置する。具体的には、封止基板8に対して、例えばスクリーン印刷法又はディスペンサ法を用いて予めエポキシ樹脂から成るシール材9xを被着させておく。そして、図11に示すように、素子基板2に対してシール材9xを介して封止基板8を接着させる。なお、封止基板8をシール材9xによって、素子基板2に固定する作業は、例えば窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス中や、圧力0.1Pa以上1.1kPa以下の高真空中で行うことによって、素子基板2と封止基板8との間に酸素や水分が含まれるのを抑制することができる。
そして、封止基板8側からシール材9xに向けて、ガラスフィルターを装着した出力500Wのメタルハライドランプを用いて、例えば波長300nm以上380nm未満の紫外線を10分間照射し、照射光量を1ジュール毎平方センチメートルとして、シール材9xを硬化させてシール層9とする。シール層9とすることによって、素子基板2と封止基板8とを固着させることができる。
メタルハライドランプ以外の例としては、マイクロウェーブ励起水銀灯、エキシマレーザー、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ又はハロゲンランプ等が挙げられる。光源の使用に際しては、例えばガラスフィルター等を用いて波長300nm未満の光を除去することが好ましい。また、シール材9xへの照射手順としては、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射等、どのような照射手順でも良い。さらに、上記光源は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
シール層9は、光分解性樹脂としてのエポキシ樹脂から成るシール材9xが硬化するときに、紫外線が照射されることでエポキシ樹脂を構成する分子の一部が分解して、エポキシ樹脂からアクロレインという分解物が発生する。アクロレインは、有機発光層18を劣化させるアウトガスであるが、有機発光層18とシール層9との間に、予め保護層21を形成したことによって、保護層21の捕捉成分が分解物と結合して、有機発光層18に無害な成分に変化して、有機発光層18が劣化するのを抑制することができる。
そして、非表示領域D2に駆動IC4を実装することで、有機ELディスプレイ1を作製することができる。
上述したように、本発明の実施形態によれば、シール材9xが硬化する際に発生するアウトガスを捕捉することが可能な保護層21を、予め有機発光層18とシール層9との間に介在させておくことで、有機発光層18が劣化するのを抑制することが出来る。その結果、輝度が低下しにくいコントラストを良好に維持することが可能な有機ELディスプレイを作製することができる。
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。上述した実施形態においては、トップエミッションの有機EL素子について説明したが、本発明の作用効果を奏するのであれば、ボトムエミッションの有機EL素子であっても構わない。また、隔壁6の形状を上部よりも下部を幅狭とすることによって、第2電極層15を画素毎に分断する構造であっても構わない。
第2の実施形態に係る有機ELディスプレイについて説明する。図12に示すように、第2の実施形態に係る有機ELディスプレイとしては、封止層22とシール層9との間であって、封止層22の上面に、空孔を有する多孔質材料から成る保護層としての吸着層23が形成されている。
吸着層23は、例えば、多孔性チタノシリケート、ゼオライト、モンモリロナイト、セピオライト、ハイドロタルサイト、スメクタイト、鎖状粘土鉱物等の鉱物、非晶質繊維状珪酸ゲル、多孔質ガラス、グラファイト、グラフェン、活性炭、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム等の多孔質物質から成る。活性炭は、椰子殻炭又は木炭等の木質系或いは石炭系のいずれでもよい。または、吸着層23は、ポリエチレングリコール、ポリメタクリル酸メチル、鎖状オリゴ糖、アミロース又はセルロース等のらせん状の立体構造を示し、分子サイズの空洞を有する高分子から成る吸着材で形成されている。あるいは、吸着層23は、ペルヒドロトリフェニレン誘導体、デオキシコール酸誘導体、ケノデオキシコール酸誘導体、グリコデオキシコール酸誘導体、アポコール酸誘導体又はコール酸アミド等のコール酸誘導体、尿素、チオ尿素、ヒドロキノン、トリ−o−チモチド、ジシアノアンミンニッケル等の分子が自発的に配向し、分解物分子よりもやや大きい空孔を形成するホスト物質から成る吸着材で形成されている。また、吸着層23は、アルキル化β−シクロデキストリン、アシル化β−シクロデキストリン等の疎水性シクロデキストリン類、グルコシル―β―シクロデキストリン、メチル化β−シクロデキストリン又はヒドロキシル化β−シクロデキストリン等の親水性シクロデキストリン類、環状シクロファン、かご型シクロファン、クリプタンド、カリックスアレン、カリックスレゾルカレン、クラウンエーテル又は環状オリゴ糖等の分子内に分解物分子よりもやや大きい空孔を有する物質から成る吸着材で形成されている。
吸着層23を形成する吸着材は、例えば、平均粒子径が0.5μm未満であるか、または、有機EL層14との平均屈折率の差が0.2未満であることが好ましい。吸着層23の平均粒子径が0.5μmを超え、かつ、有機EL層14との平均屈折率の差が0.2を超えると、吸着層23による光散乱が強められ、得られる有機EL素子のコントラストが不十分となることがある。
吸着層23に形成されている空孔は、シール材9xが硬化する際に発生する分解物よりも大きい孔である。具体的には、分解物がアクロレインであり、分子の大きさが長径0.4nm、短径0.12nmである場合、空孔の短径は0.13nm以上かつ0.35nm以下の大きさが好ましい。このように、空孔の短径が分解物の短径以上の大きさであるため、分解物を空孔内に進入させることができる。また、空孔の短径が分解物の長径以下の大きさであるため、空孔内に進入した分解物を空孔内に留めやすくすることができる。なお、空孔は平面視して楕円状であって、空孔の長軸に対して直交する断面における短径が分解物の短径よりも大きければ良く、空孔内に進入した分解物を空孔内に留めることができる。その結果、分解物が有機発光層18まで浸入しにくくすることができ、有機EL素子5が劣化するのを抑制することができ、ひいては有機ELディスプレイのコントラストを良好に維持することができる。
吸着層23は、図14に示すように、シール材9xの表面に吸着材23xを散布して素子基板2上に張り合わせて形成することもできる。吸着材23xを散布する際には、公知の粉体塗布の手法や、窒素等の不活性ガスをキャリアガスとして用いるスプレイ塗布の手法を用いることができる。また、公知の硬化遅延剤を含むシール材9xを用いるようにし、シール層9の形成工程の後に、シール層9上に吸着材23xを散布する工程を行い、最後に張り合わせ工程を行って有機ELディスプレイを形成することもできる。