JP2010001361A - 二軸配向フィルム - Google Patents

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英司 木下
Takeshi Ishida
剛 石田
Bunso Nagasaka
文惣 永阪
Makoto Iida
真 飯田
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Abstract

【課題】磁性層を塗布した後の乾燥工程のような高温で張力が加わる加工を行なうとき、フィルムが伸びやすくしわなどが入るといった問題の解消された二軸配向ポリエステルフィルムの提供。
【解決手段】(a)少なくともひとつのフィルム層が、(i)ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%未満の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および50モル%を超え95モル%以下の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸以外の芳香族ジカルボン酸成分を含有し、(ii)ジオール成分が90〜100モル%のアルキレングリコール成分を含有する芳香族ジカルボン酸成分およびジオール成分とのポリエステルからなり、(b)示差走査型熱量計(DSC)での測定において、110〜140℃の温度範囲に0.5J/g以上の熱量の吸熱ピークを持つことを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なポリエステル組成物を用いた二軸配向フィルムに関する。
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに代表される芳香族ポリエステルは、優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有するのでフィルムなどに幅広く使用されている。特にポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、ポリエチレンテレフタレートよりも優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有し、それらの要求の厳しい用途、例えば高密度磁気記録媒体などのベースフィルムなどに使用されている。しかしながら、近年の高密度磁気記録媒体などでの寸法安定性の要求はますます高くなってきており、さらなる特性の向上が求められている。
一方、特許文献1〜4には6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を主とする酸成分と、ジオール成分とのエステル単位からなるポリエステルが提案されている。該文献には、結晶性で、融点が294℃のポリエステルが開示されている。
しかしながら、これらの文献に開示されたポリエステルは、融点が非常に高く、また結晶性も非常に高く、フィルムなどに成形しようとすると、溶融状態での流動性が乏しく、押出しが不均一化したり、押出した後に延伸しようとしても結晶化が進んで高倍率で延伸すると破断したりするなどの問題があった。
ところで、特許文献5には、写真フィルム用ベースフィルムにおいて、特定の吸熱ピークをフィルムに具備させることで、抗カーリング性をフィルムに具備できることが開示されている。
特開昭60−135428号公報 特開昭60−221420号公報 特開昭61−145724号公報 特開平6−145323号公報 特開平7−219131号公報
本発明者らは、まず温度膨張係数(αt)および湿度膨張係数(αh)が低いフィルムを提供することを鋭意検討した結果、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などをジカルボン酸成分とするポリエステルに、所定量の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸(ANA)を共重合させたポリエステルは、製膜性に優れ、該共重合ポリエステルから機械的強度に優れたフィルムが得られることを見出した。また、得られたフィルムは、ANAの特性である低いαh値を有しつつも、PENなどと同程度の低いαtを示すことを見出した。ただ、その後の検討において、磁性層を塗布した後の乾燥工程のような高温で張力が加わる加工を行なうとき、フィルムが伸びやすくしわなどが入るといった問題があり、それがフィルムのカールを抑制する技術として写真用フィルムなどで用いられていた特定の吸熱ピークを具備させるという手段によって抑制できることを見出し、本発明に到達した。
かくして本発明によれば、下記(a)および(b)
(a)少なくともひとつのフィルム層が、(i)ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%未満の下記式(A)および50モル%を超え95モル%以下の下記式(B)で表される繰り返し単位を含有し、(ii)ジオール成分が90〜100モル%の下記式(C)で表される繰り返し単位を含有する芳香族ジカルボン酸成分およびジオール成分とのポリエステルからなること、
Figure 2010001361
(式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である)
Figure 2010001361
(式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基である)
Figure 2010001361
(式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である)
(b)示差走査型熱量計(DSC)での測定において、110〜140℃の温度範囲に0.5J/g以上の熱量の吸熱ピークを持つことを具備する二軸配向フィルムが提供される。
さらにまた、本発明の好ましい態様として、ポリエステルの式(A)で表される繰り返し単位が下記式(A−1)
Figure 2010001361
であること、
主たる繰り返し単位が下記構造式(D)で示される繰り返し単位(D)と下記構造式(E)で示される繰り返し単位(E)
Figure 2010001361
(ここで、式(D)および式(E)中の、Rは炭素数2〜10のアルキレン基、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である)とからなり、繰り返し単位(D)と(E)とが隣り合う割合(CD−E)が、下記式(1)
(CD−E)/2(C)*(C)<0.90 (1)
(上記式(1)中の、(C)は繰り返し単位(D)と(E)の合計モル数を基準としたときの繰り返し単位(D)の割合、(C)は繰り返し単位(D)と(E)の合計モル数を基準としたときの繰り返し単位(E)の割合、(CD−E)は繰り返し単位(D)と(E)、(E)と(E)および(D)と(D)が隣り合う合計のモル数を基準としたときの、繰り返し単位(D)と(E)とが隣り合う割合を意味する。)を満足すること、
ポリエステルが、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度が0.4〜3であること、
ポリエステルの融点が200〜260℃の範囲にあること、
厚みが3〜10μmの範囲にあること、
磁気記録媒体のベースフィルムに用いることの少なくともいずれかを具備する二軸配向フィルムも提供される。
本発明のフィルムは、温度膨張係数(αt)および湿度膨張係数(αh)が低く、機械的強度なども高いことから、温度や湿度などの環境変化に対する寸法安定性を具備し、しかも高温での加工時の張力による伸びが抑制されており、優れた加工適性も有し、磁気記録媒体のベースフィルムなどに好適に用いることができる。
[ポリエステル]
本発明におけるポリエステルは、ジカルボン酸成分およびジオール成分を含有する。
〔ジカルボン酸成分〕
ジカルボン酸成分は、5モル%以上50モル%未満の前記式(A)および50モル%を超え95モル%以下の前記式(B)で表される繰り返し単位を含有する。
式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である。アルキレン基としてエチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。
式(A)で表される繰り返し単位の含有量の上限は、好ましくは45モル%、より好ましくは40モル%、さらに好ましくは35モル%、特に好ましくは30モル%である。下限は、好ましくは5モル%、より好ましくは7モル%以上、さらに好ましくは10モル%、特に好ましくは15モル%である。従って、式(A)で表される繰り返し単位の含有量は、好ましくは5〜45モル%、より好ましくは7〜40モル%、さらに好ましくは10〜35モル%、特に好ましくは15〜30モル%である。
式(A)で表される繰り返し単位は、好ましくは6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸由来の単位が好ましい。これらの中でも式(A)におけるRの炭素数が偶数のものが好ましく、特に前記式(A−1)で示される6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸由来の単位が湿度膨張係数を抑えつつ機械的特性を高度に維持しやすいことから好ましい。
本発明におけるポリエステルは、ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%未満の式(A)で示される単位を含有することを特徴とする。式(A)で示される単位の割合が下限未満では共重合による湿度膨張係数(αh)の低減効果などが発現し難い。また上限よりも少なくすることで製膜性に優れ、温度膨張係数(αt)なども小さくしやすいという利点がある。式(A)で示される単位による湿度膨張係数(αh)の低減効果は、少量で非常に効率的に発現される。式(A)で表される繰り返し単位を含有するポリエステルを用いることで、温度膨張係数(αt)と湿度膨張係数(αh)の両方をともに低いフィルムを製造することができる。
つぎに、式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基である。式(B)で表される繰り返し単位として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸に由来する単位、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
〔ジオール成分〕
ジオール成分は、90〜100モル%の前記式(C)で表される繰り返し単位を含有する。式(C)で表される繰り返し単位の含有量は、好ましくは95〜100モル%、より好ましくは98〜100モル%である。
式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である。Rのアルキレン基として、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。これらの中でも式(C)で表されるジオール成分として、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等に由来する単位が好ましく挙げられ、これらの中でも特にエチレングリコールが好ましい。
〔ポリエステル〕
本発明におけるポリエステルは、式(A)で表される繰り返し単位と、式(C)で表される繰り返し単位で構成されるエステル単位(−(A)−(C)−)の含有量は、全繰り返し単位の好ましくは5モル%以上50モル%未満、より好ましくは5〜45モル%、さらに好ましくは7〜40モル%、よりさらに好ましくは10〜35モル%、最も好ましくは15〜30モル%である。
他のエステル単位として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート単位、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのポリアルキレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が好ましく挙げられる。これらの中でも機械的特性などの点からエチレンテレフタレート単位やエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が好ましく、特にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が好ましい。
ところで、本発明におけるポリエステルは、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を有する繰り返し単位と6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を有しない繰り返し単位とが隣接する割合を抑制することで、より高温加工時の伸びを抑制できる。
具体的には、前記構造式(D)で示される繰り返し単位(D)と下記構造式(E)で示される繰り返し単位(E)とからなり、繰り返し単位(D)と(E)とが隣り合う割合(CD−E)が、下記式(1)
(CD−E)/2(C)*(C)<0.90 (1)
(上記式(1)中の、(C)は繰り返し単位(D)と(E)の合計モル数を基準としたときの繰り返し単位(D)の割合、(C)は繰り返し単位(D)と(E)の合計モル数を基準としたときの繰り返し単位(E)の割合、(CD−E)は繰り返し単位(D)と(E)、(E)と(E)および(D)と(D)が隣り合う合計のモル数を基準としたときの、繰り返し単位(D)と(E)とが隣り合う割合を意味する。)を満足するポリエステルであることが好ましい。
ここで、前述の式(1)における分母は、確率的に繰り返し単位(D)と(E)が隣り合う割合である。したがって、繰り返し単位(D)と(E)を構成する芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とを一緒にエステル化反応またはエステル交換反応させてから重縮合反応させると、ほぼこの値近くになる。そして、前述の式(1)の範囲にするということは、繰り返し単位(D)と(E)とが隣り合って結合する割合を少なくし、繰り返し単位(D)同士が隣り合う割合(CD−D)や繰り返し単位(E)同士が隣り合う割合(CE−E)を多くすることを意味する。そして、前述の式(1)の値を上限以下にすることで、前述の温度膨張係数や湿度膨張係数などの環境変化に対する寸法安定性の向上効果を損なうことなく、加工時に受けるような高温下で張力がかかったときの伸びをより抑制しやすくなる。このようなポリエステルは、単純に繰り返し単位(D)と(E)を構成する芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とを一緒にエステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応させるのではなく、例えば繰り返し単位(E)を主たる繰り返し単位とするポリエステル樹脂Eと、繰り返し単位(D)を主たる繰り返し単位とするポリエステル樹脂Eとを用意し、それらを溶融混練させることなどで製造できる。もちろん、溶融混練で完全にエステル交換が進行してしまうと、前述の確率的に計算される割合に近づくため、溶融混練を比較的低温で短時間にすることが好ましい。なお、前述の式(1)で示される比の下限は特に制限されないが、少なくとも2つ以上のポリエステル樹脂を溶融混練するときにエステル交換反応が進むことから、通常0.4以上になりやすく、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bとを緊密に混練しようとすると0.6以上になりやすい。
本発明におけるポリエステルは、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度が0.4〜3、好ましくは0.4〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.5〜1.2dl/gである。
本発明におけるポリエステルの融点は、200〜260℃の範囲、好ましくは205〜257℃の範囲、より好ましくは210〜255℃の範囲である。融点はDSCで測定する。
融点が上限を越えると、溶融押出して成形する際に、流動性が劣り、吐出などが不均一化しやすくなる。一方、下限未満になると、製膜性は優れるものの、ポリエステルの持つ機械的特性などが損なわれやすくなる。
一般的に共重合体は単独重合体に比べ融点が低く、機械的強度が低下する傾向にある。しかし、本発明のポリエステルは、式(A)の単位および式(B)の単位を含有する共重合体であり、式(A)の単位を有する単独重合体に比べ、融点が低いが機械的強度は同じ程度であるという優れた特性を有する。
本発明におけるポリエステルのDSCで測定したガラス転移温度(以下、Tgと称することがある。)は、好ましくは80〜125℃、より好ましくは95〜123℃、さらに好ましくは110〜120℃の範囲にある。Tgがこの範囲にあると、耐熱性および寸法安定性に優れたフィルムが得られる。融点やガラス転移温度は、共重合成分の種類と共重合量、そして副生物であるジアルキレングリコールの制御などによって調整できる。
本発明におけるポリエステルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、それ自体公知の他の共重合成分を共重合しても良い。
[組成物]
本発明のポリエステルは、フィルムにしたときの走行性や巻取り性などの観点から、それ自体公知の滑剤、例えば不活性粒子などを含有した組成物としてもよい。
また、本発明におけるポリエステルの組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の熱可塑性ポリマー、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、顔料、核剤、充填剤あるいはガラス繊維、炭素繊維、層状ケイ酸塩などを必要に応じて配合した組成物としても良い。他種熱可塑性ポリマーとしては、液晶性樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルイミド、ポリイミドなどが挙げられる。
[二軸配向フィルム]
本発明の二軸配向フィルムは、前述のポリエステルを含有する、2軸に配向したフィルムである。2層以上のフィルム層を有する積層フィルムの場合は、これを構成する少なくとも1層が本発明のフィルムからなる層であればよい。
本発明のフィルムは、前述のポリエステル組成物を溶融製膜して、シート状に押出すことで得られる。そして、前述のポリエステルは、溶融時の流動性、その後の結晶性、製膜性に優れ、厚み斑の均一なフィルムとなる。さらに本発明のフィルムは、式(B)を含有する芳香族ポリエステルの持つ優れた機械的特性をも有する。
本発明において、フィルムの面方向とはフィルムの厚みに直交する面の方向であり、フィルムの製膜方向(縦方向)をMachine Direction(MD)、フィルムの幅方向(横方向)とはフィルムの製膜方向(MD)に直交する方向であり、Transverse Direction(TD)方向という。
ところで、本発明の二軸配向フィルムにおいて重要なことは、示差走査型熱量計(DSC)での測定において、110〜140℃の温度範囲に0.5J/g以上の熱量の吸熱ピークを有することである。このような吸熱ピークが110〜140℃の範囲内にあることで、高温での加工時の伸びの抑制が発現される。
好ましい吸熱ピークの熱量は1.0J/g以上、さらに1.5J/g以上である。なお、吸熱ピークの熱量の上限は特に制限されないが、通常5.0J/g以下である。
ところで、このようなDSCにおける吸熱ピークは、特許文献5に記載されている方法など、例えば高温でのエージング処理などで具備させることができる。
[温度膨張係数:αt]
本発明の二軸配向フィルムは、フィルムの幅方向の温度膨張係数(αt)が、好ましくは14×10−6/℃以下、より好ましくは10×10−6/℃以下、さらに好ましくは7×10−6℃以下、特に好ましくは5×10−6/℃以下の範囲であることが、雰囲気の温度変化による寸法変化に対して優れた寸法安定性を発現できることから好ましい。
本発明における二軸配向フィルムの幅方向の温度膨張係数(αt)の下限は、好ましくは−15×10−6/℃、より好ましくは−10×10−6/℃、さらに好ましくは−7×10−6/℃である。フィルムの幅方向の温度膨張係数が上記範囲であることで、磁気テープにしたときの寸法変化を抑制しやすくなる。
なお、特許文献3によれば、ポリアルキレン−6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエートを共重合したポリエステルフィルムの温度膨張係数(αt)は大きくなることが予想される。しかし、本発明によれば、特定の共重合比のポリエステルを採用し、かつ延伸することにより、温度膨張係数(αt)を小さくすることができる。
[湿度膨張係数:αh]
本発明の二軸配向フィルムは、フィルムの幅方向の湿度膨張係数(αh)が1×10−6〜7×10−6/%RH、さらに1×10−6〜6×10−6/%RHの範囲にあることが好ましい。αhがこの範囲にあると、磁気記録テープにしたときの寸法安定性が良好となる。
[ヤング率:Y]
本発明の二軸配向フィルムは、フィルムの製膜方向のヤング率が、好ましくは4.5GPa以上、より好ましくは5GPa以上であることが、高温加工時の伸びを抑制する点から好ましい。フィルムの製膜方向のヤング率(Y)の上限は12GPa程度がフィルムの幅方向にも十分なヤング率を具備させやすいことから好ましい。
一方、本発明の二軸配向フィルムは、フィルムの幅方向のヤング率が、6〜14GPa、より好ましくは7〜12GPaの範囲にあることが、フィルムの幅方向の温度膨張係数や湿度膨張係数を上記範囲内に調整しやすいことから好ましい。
<二軸配向フィルムの製造方法>
(ポリエステルの製造方法)
本発明におけるポリエステルは、以下の方法で製造することができる。例えば、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸(以下、ANAと略すことがある)およびナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体を含有するジカルボン酸成分と、エチレングリコール等のジオール成分とを反応させポリエステル前駆体を製造する。そして、得られたポリエステル前駆体を重合触媒の存在下で重合して製造できる。その後、必要に応じて固相重合などを施しても良い。
(押出工程)
まず、前述のポリエステルを乾燥後、該ポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+50)℃の温度に加熱された押出機に供給して溶融し、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出す工程である。
(冷却工程)
この押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化して未延伸フィルムとする工程である。
前述のαt、αh、ヤング率などを達成するためには、その後の延伸を進行させやすくすることが必要であり、そのような観点から冷却ドラムによる冷却は非常に速やかに行なうことが好ましい。そのような観点から、特許文献3に記載されるような80℃といった高温ではなく、20〜60℃という低温で行なうことが好ましい。このような低温で行なうことで、未延伸フィルムの状態での結晶化が抑制され、その後の延伸をよりスムーズに行なうことが可能となる。
(延伸工程)
得られた未延伸フィルムを二軸延伸する工程である。二軸延伸としては、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもよい。ここでは、逐次二軸延伸で、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行なう製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸は芳香族ポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜10倍、好ましくは4〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜11倍、より好ましくは5〜10倍に延伸し、さらに熱処理としてポリマーの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒間、さらに1〜15秒間、熱固定処理するのが好ましい。
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が共重合されていることから極めて延伸性に富む反面、同じ延伸倍率ではヤング率が低くなる傾向があり、目的とするヤング率を得るにはより高めの延伸倍率で延伸することが必要である。通常であれば、延伸倍率を上げると製膜安定性が損なわれるが、本発明では6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が共重合されているので延伸性が非常に高く、そのような問題は無い。
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは縦延伸と横延伸とを同時に行なう同時二軸延伸でも製造できる。その条件は前述の延伸倍率や延伸温度などを参考にすればよい。
また、本発明における二軸配向ポリエステルフィルムが積層フィルムの場合、2種以上の溶融ポリエステルをダイ内で積層してからフィルム状に押出すことができる。また2種以上の溶融ポリエステルをダイから押出した後に積層し、急冷固化して積層未延伸フィルムとすることもできる。押し出し温度は、好ましくはそれぞれのポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度である。
ついで前述の単層フィルムの場合と同様な方法で二軸延伸および熱処理を行なうとよい。また、塗布層を設ける場合、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムの片面または両面に所望の塗布液を塗布し、後は前述の単層フィルムの場合と同様な方法で二軸延伸および熱処理を行なうことが好ましい。
このようにして得られた二軸配向フィルムは、次いでアニーリング処理をすることにより、特定のDSC吸熱ピークを持つようになり、高温での加工に対する適性を向上させることができる。具体的にはフィルム温度が、ポリエステルのガラス転移温度(Tg)よりも30℃低い温度からTgの範囲、さらに好ましくは(Tg−20℃)から(Tg−5℃)の温度範囲でアニーリング処理する方法が効果的で好ましい。上記下限未満の温度でアニーリング処理しても前述の吸熱ピークが発現されがたく、高温での加工時の張力の伸び抑制効果が不十分となる。他方、上記上限より高い温度でアニーリング処理すると、フィルム表面へのオリゴマーの析出や、フィルム面への巻取りコア表面形状の転写、フィルム面の貼りつき等が起きやすく、フィルムの使用に不都合が生じる。
二軸配向フィルムのアニーリング処理方法としては、二軸延伸され、熱固定されたフィルムを一旦巻き取ることなく加熱ロールに接触させながら加熱する方法、加熱空気で搬送させながら非接触で加熱する方法、一旦巻き取ったフィルムを巻き出しながら上記と同じ方法で加熱する方法、または二軸配向フィルムをロール状態のまま加熱オーブン中で熱処理する方法等が挙げられる。特に、ロール状態で処理する方法は、処理時間を十分に長くすることが容易であり、好ましい。
アニーリング処理時間は、前述の吸熱ピークが十分に発現するように、処理方法に応じて適宜調整することができる。例えばロール状態で処理する場合、12時間以上150時間以下で処理するのが好ましく、さらには24時間以上120時間以下とするのが好ましい。また、処理温度に応じて時間を調整することが好ましく、処理温度が低いほど、処理時間を長目とするのが好ましい。例えば、105℃で処理する場合には、48時間以上120時間以下が好ましく、110℃で処理する場合には、24時間以上72時間以下が好ましい。処理時間が短すぎると十分な処理効果が得られず高温加工時の伸び抑制が不十分となる。また、処理時間が長すぎると、転写や貼りつき等の不都合が生じやすくなる他、処理に時間がかかり過ぎ、生産性を低下させるので好ましくない。
本発明によれば、本発明の上記二軸配向ポリエステルフィルムをベースフィルムとし、その一方の面に非磁性層および磁性層をこの順で形成し、他方の面にバックコート層を形成することなどで磁気記録テープとすることができる。
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。
(1)固有粘度
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
(2)ガラス転移点および融点
ガラス転移点および融点はDSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:Q100)により昇温速度20℃/minで測定した。
(3)共重合量
(グリコール成分)試料10mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに80℃で溶解し、イソプロピルアミンを加えて十分に混合した後に、600MHzのH−NMRを日本電子株式会社製、JEOL A600を用いて80℃で測定し、それぞれのグリコール成分量を求めた。
(酸成分)試料60mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、150MHzの13C−NMRを日本電子株式会社製、JEOL A600を用いて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を求めた。
(4)ヤング率
得られたフィルムを試料巾10mm、長さ15cmで切り取り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張り、得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算した。
(5)温度膨張係数(αt)
得られたフィルムを、フィルムの幅方向が測定方向となるように幅4mmに切り出し、セイコーインスツル株式会社製、商品名TMA/SS6000に測定長20mmでセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、80℃で30分前処理し、その後室温まで降温させた。その後30℃から80℃まで2℃/minで昇温して、各温度でのサンプル長を測定し、次式より温度膨張係数(αt)を算出した。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
αt={(L60−L40)}/(L40×△T)}+0.5×10−6
ここで、上記式中のL40は40℃のときのサンプル長(mm)、L60は60℃のときのサンプル長(mm)、△Tは20(=60−40)℃、0.5×10−6(/℃)は石英ガラスの温度膨張係数(αt)である。
(6)湿度膨張係数(αh)
得られたフィルムを、フィルムの幅方向が測定方向となるように幅5mmに切り出し、ブルカー・エイエックスエス株式会社製、商品名TMA4000SAに測定長15mmでセットし、30℃の窒素雰囲気下で、湿度20%RHと湿度80%RHにおけるそれぞれのサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数(αh)を算出した。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαhとした。
αh=(L80−L20)/(L20×△H)
ここで、上記式中のL20は20%RHのときのサンプル長(mm)、L80は80%RHのときのサンプル長(mm)、△H:60(=80−20)%RHである。
(7)塗布斑
幅500mmにスリットされた長さ500mのフィルムの一方の表面に、下記組成の非磁性塗料、磁性塗料をダイコータで同時に、乾燥後の非磁性層および磁性層の厚みが、それぞれ1.2μmおよび0.1μmとなるように膜厚を変えてこの順で塗布し、磁気配向させて張力20MPa、温度100℃×60秒の条件にて乾燥させる。さらに、小型テストカレンダ−装置(スチ−ルロール/ナイロンロール、5段)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダ−処理した後、70℃、48時間キュアリングする。そして、得られた磁性層付フィルムについて、目視判定により、以下の基準で塗布斑を評価した。なお、目視判定は、フィルムの裏側に蛍光灯を設置し、磁性層の抜けによる光の漏れをカウントすることで行ない、この磁性層付フィルムを必要に応じてバックコート層などを設けた上で、幅12.65mmにスリットし、カセットに組み込むことで磁気記録テープにできる。
◎:塗布抜けが5個/250m未満
○:塗布抜けが5個/250m以上10個/250m未満
△:塗布抜けが10個/250m以上20個/250m未満
×:塗布抜けが20個以上
非磁性塗料の組成
・二酸化チタン微粒子 :100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体 :10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート) : 5重量部
・レシチン : 1重量部
・メチルエチルケトン :75重量部
・メチルイソブチルケトン :75重量部
・トルエン :75重量部
・カーボンブラック : 2重量部
・ラウリン酸 :1.5重量部
磁性塗料の組成
・鉄(長さ:0.3μm、針状比:10/1、1800エルステッド):100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体 :10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート) : 5重量部
・レシチン : 1重量部
・メチルエチルケトン :75重量部
・メチルイソブチルケトン :75重量部
・トルエン :75重量部
・カーボンブラック : 2重量部
・ラウリン酸 :1.5重量部
(8)TMA
セイコーインスツル株式会社製TMA/SS6000を用いて、フィルム幅4mmに切り出し、チャック間距離20mmとなるようセットし、20MPaの荷重をかけて、昇温速度5℃/分にて180℃まで昇温し、30℃のときのフィルム長さ(L30)と100℃のときのフィルム長さ(L100)を測定し、伸び割合((L100−L30)/L30(%))を求めた。
伸び割合が低いほど、高温での加工時の伸びが小さく、優れているといえる。
(9)吸熱ピーク温度(T(℃))および吸熱エネルギー △H(J/g)
二軸配向フィルム20mgをTAインスツルメンツ社製、商品名DSC Q100にセットし、N気流中で、2℃/minの昇温速度、温度変調±2℃/分の条件で温度変調DSC測定を実施した。得られたデータのうち非可逆熱流曲線から、所定の温度範囲に存在する吸熱ピークのピーク温度(Tk(℃))、また、該吸熱ピークの面積(吸熱開始温度から終了温度まで直線を結び、この直線から吸熱側にずれた部分の面積)から吸熱エネルギー(ΔHk(J/g))を求めた。
(10)(CD−D)、(CE−E)、(CD−E)の割合
試料60mgをP−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1の混合溶媒に140℃で溶解した。完全に溶解したことを確認後、150MHzの13C−NMRを日本電子株式会社製、JEOL A600を用いて140℃で測定した。なお、グリコール成分の両端に繰り返し単位(D)の酸成分が結合しているものと、グリコール成分の両端に繰り返し単位(E)の酸成分が結合しているものと、グリコール成分の一方の端に繰り返し単位(D)の酸成分が結合し、他方に繰り返し単位(E)の酸成分が結合しているものとでは、グリコール成分のピークの位置が異なる。したがって、(CD−D)、(CE−E)、(CD−E)の割合は、検出される、異なる位置に出てくるグリコール成分のピーク面積比から求めた。
[参考例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、酸成分の30モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の70モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(PB1)を得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.4μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.3重量%となるように含有させた。
[参考例2]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、酸成分の99.5モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の0.5モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(PA1)を得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.4μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.3重量%となるように含有させた。
[参考例3]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルおよび6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の割合を変更した以外は参考例1と同様な操作を繰り返して、固有粘度0.62dl/gで、酸成分の73モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の27モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(PA2)を得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.4μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.3重量%となるように含有させた。
[参考例4]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルおよび6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の割合を変更した以外は参考例1と同様な操作を繰り返して、固有粘度0.62dl/gで、酸成分の65モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の35モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(PA3)を得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.4μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.3重量%となるように含有させた。
[参考例5]
6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を加えなかった以外は参考例2と同様な操作を繰り返して、固有粘度0.62dl/gで、酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(PA4)を得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.4μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.3重量%となるように含有させた。
[実施例1〜5]
参考例1および2で得られた芳香族ポリエステル(PA1)と(PB1)とを、重量比で61:39、押し出し機に供給して295℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度55℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が133℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度135℃で横延伸倍率8.3倍、熱固定処理(202℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ5.0μmの二軸延伸フィルムを得た。このようにして得られた二軸延伸フィルムを、フィルムロールの状態で、表1に示す温度および時間、アニーリング処理をして二軸配向フィルムを得た。
得られた二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、押し出し機の温度を300℃(平均滞留時間:20分)、縦方向(製膜方向)の延伸倍率を5.8倍、横延伸倍率を8.0倍に変更した以外は同様な操作を繰り返した。このようにして得られた二軸延伸フィルムを、フィルムロールの状態で、表1に示す温度および時間、アニーリング処理をして二軸配向フィルムを得た。
得られた二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
[実施例7および8]
参考例1および2で得られた芳香族ポリエステル(PA1)と(PB1)とを、重量比で52:48、押し出し機に供給して300℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度55℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が130℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.7倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度130℃で横延伸倍率8.3倍、熱固定処理(194℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ5.0μmの二軸延伸フィルムを得た。このようにして得られた二軸延伸フィルムを、フィルムロールの状態で、表1に示す温度および時間、アニーリング処理をして二軸配向フィルムを得た。
得られた二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
[実施例9]
参考例3で得られた芳香族ポリエステル(PA2)を押し出し機に供給して300℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度55℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が130℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率6.3倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度130℃で横延伸倍率9.2倍、熱固定処理(182℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ5.0μmの二軸延伸フィルムを得た。このようにして得られた二軸延伸フィルムを、フィルムロールの状態で、表1に示す温度および時間、アニーリング処理をして二軸配向フィルムを得た。
得られた二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
[比較例1]
実施例9において、アニーリング処理を施さなかった以外は同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
[実施例10]
参考例1および2で得られた芳香族ポリエステル(PA1)と(PB1)とを、重量比76:24で、押し出し機に供給して300℃(平均滞留時間:15分)でダイから溶融状態で回転中の温度55℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が136℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.2倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度138℃で横延伸倍率8.2倍、熱固定処理(212℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ5.0μmの二軸延伸フィルムを得た。このようにして得られた二軸延伸フィルムを、フィルムロールの状態で、表1に示す温度および時間、アニーリング処理をして二軸配向フィルムを得た。
得られた二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
[実施例11]
参考例1および2で得られた芳香族ポリエステル(PA1)と(PB1)とを、重量比で40:60、押し出し機に供給して300℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度55℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が125℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率6.2倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度125℃で横延伸倍率9.5倍、熱固定処理(190℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ4.5μmの二軸延伸フィルムを得た。このようにして得られた二軸延伸フィルムを、フィルムロールの状態で、表1に示す温度および時間、アニーリング処理をして二軸配向フィルムを得た。
得られた二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
[比較例2]
実施例11において、アニーリング処理を施さなかった以外は同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
[比較例3]
参考例4で得られた芳香族ポリエステル(PA3)を押し出し機に供給して300℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度55℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が125℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率6.8倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度125℃で横延伸倍率10.3倍、熱固定処理(175℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ5.0μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
[比較例4]
参考例1で得られた芳香族ポリエステル(PB1)を押し出し機に供給して300℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度55℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が120℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度120℃で横延伸倍率9.0倍、熱固定処理(210℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ5.0μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムおよびそれを構成するポリエステル樹脂の特性を表1に示す。
[比較例5〜7]
参考例5で得られた芳香族ポリエステル(PA4)自体をポリエステル樹脂として用いた。そして、比較例5として、該PA4を押し出し機に供給して300℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が140℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度140℃で横延伸倍率4.3倍、熱固定処理(200℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ4.5μmの二軸延伸フィルムを得た。
また、比較例6として、比較例5において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を4.0倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を4.0倍に、熱固定処理温度を200℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。
さらにまた、比較例7として、比較例5において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を4.5倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を3.4倍に、熱固定処理温度を200℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
得られた二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
Figure 2010001361
表1中の、B成分は2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、A成分は6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、Tgはガラス転移温度、MDはフィルムの製膜方向、TDはフィルムの幅方向、TMAは前述のTMAの測定で求められる伸び割合を示す。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、従来のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートやポリアルキレン−6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエートでは達成できなかったような優れた寸法安定性を有し、寸法安定性が求められる用途、特に高密度磁気記録媒体のベースフィルムとして、好適に使用することができる。

Claims (7)

  1. 下記(a)および(b)を具備することを特徴とする二軸配向フィルム。
    (a)少なくともひとつのフィルム層が、(i)ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%未満の下記式(A)および50モル%を超え95モル%以下の下記式(B)で表される繰り返し単位を含有し、(ii)ジオール成分が90〜100モル%の下記式(C)で表される繰り返し単位を含有する芳香族ジカルボン酸成分およびジオール成分とのポリエステルからなること、
    (b)示差走査型熱量計(DSC)での測定において、110〜140℃の温度範囲に0.5J/g以上の熱量の吸熱ピークを持つこと。
    Figure 2010001361
    (式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である)
    Figure 2010001361
    (式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基である)
    Figure 2010001361
    (式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である)
  2. ポリエステルの式(A)で表される繰り返し単位が下記式(A−1)
    Figure 2010001361
    である請求項1に記載の二軸配向フィルム。
  3. 主たる繰り返し単位が下記構造式(D)で示される繰り返し単位(D)と下記構造式(E)で示される繰り返し単位(E)
    Figure 2010001361
    (ここで、式(D)および式(E)中の、Rは炭素数2〜10のアルキレン基、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である)とからなり、繰り返し単位(D)と(E)とが隣り合う割合(CD−E)が、下記式(1)
    (CD−E)/2(C)*(C)<0.90 (1)
    (上記式(1)中の、(C)は繰り返し単位(D)と(E)の合計モル数を基準としたときの繰り返し単位(D)の割合、(C)は繰り返し単位(D)と(E)の合計モル数を基準としたときの繰り返し単位(E)の割合、(CD−E)は繰り返し単位(D)と(E)、(E)と(E)および(D)と(D)が隣り合う合計のモル数を基準としたときの、繰り返し単位(D)と(E)とが隣り合う割合を意味する。)を満足する請求項1に記載の二軸配向フィルム。
  4. ポリエステルが、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度が0.4〜3である請求項1に記載の二軸配向フィルム。
  5. ポリエステルの融点が200〜260℃の範囲にある請求項1記載の二軸配向フィルム。
  6. 厚みが3〜10μmの範囲にある請求項1記載の二軸配向フィルム。
  7. 磁気記録媒体のベースフィルムに用いる請求項1記載の二軸配向フィルム。
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