JP2010001262A - 機能性組成物および健康維持食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 タラ、ニシン、サケの腹子外皮の、収縮蛋白などの筋原線維蛋白質の分解物、特に、バチルス属が産生する蛋白分解酵素による分解物であるアミノ酸およびペプチドを、脂肪蓄積抑制ないし放出促進作用という機能を有する機能性組成物とし、健康維持食品や健康補助食品として利用し、廃棄物とされていた魚卵外皮の再利用の道を広げるものである。
【選択図】 図10
Description
しかしながら、魚卵の加工ならびに水産加工により発生する魚卵外皮については、ほとんどが産業廃棄物として処分されてきていた。
また、魚鱗や魚皮から抽出したコラーゲンを、医療用生体材料あるいは化粧品材料などとして利用する方法が、特開平05−93000号公報(特許文献3)や、特開2000−50811号公報(特許文献4)で提案されている。
この方法によれば、種々の必須アミノ酸とペプチドを含む組成物が得られ、得られた組成物は、各種食品の栄養強化のための食品強化剤として、また、ペプチドを含み、ACE阻害活性を有し、生理活性物質として有用であることが報告されている。
先の提案、すなわち、食品強化剤や生理活性物質として、さらには薬効性組成物としての利用は、優れて有効なものであるが、廃棄されていた魚卵外皮は大量であるので、それらを有効に活用するためには、上記薬効性組成物のさらなる利用方法が必要である。
魚卵外皮の筋原線維蛋白質の分解物であるアミノ酸およびペプチドからなるもので、
脂肪蓄積抑制ないし放出促進作用を有すること
を特徴とする機能性組成物である。
請求項1に記載の機能性組成物において、
前記脂肪蓄積抑制ないし放出促進作用は、
ノルアドレナリン存在下に良く機能するものであること
を特徴とするものである。
請求項1又は2に記載の機能性組成物において、
前記アミノ酸およびペプチドは、
オゾン水処理した魚卵外皮の筋原線維蛋白質を、バチルス属が産生する蛋白分解酵素で分解して得られたものであること
を特徴とするものである。
請求項1〜3のいずれかに記載の機能性組成物において、
前記魚卵外皮は、
タラ、ニシン、サケの腹子外皮であること
を特徴とするものである。
請求項1又は2に記載の機能性組成物において、
前記アミノ酸およびペプチドは、
魚卵外皮の筋原線維蛋白質を、バチルス属が産生する蛋白分解酵素で分解後、濾過により脂質を除去して得られたものであること
請求項1〜4のいずれかに記載の機能性組成物において、
前記魚卵外皮は、
タラ、ニシン、サケの腹子外皮であること
を特徴とするものである。
請求項1〜5のいずれかに記載の機能性組成物において、
前記アミノ酸およびペプチドは、
膵臓および肝臓機能低下抑制作用も有すること
を特徴とするものである。
魚卵外皮の筋原線維蛋白質の分解物であるアミノ酸およびペプチドの添加により、脂肪蓄積抑制ないし放出促進作用が付与されたこと
を特徴とする健康維持食品である。
その結果、健康維持食品や健康補助食品の素材としての用途が拡大され、魚卵外皮をより有効に利用することを可能としたものである。
また、産業廃棄物として処分されていた魚卵外皮の有効利用範囲を、さらに拡大するもので、環境汚染のうえからも、優れた効果を有するものである。
特に、肥満状態での運動効果を高める作用が期待できる。
その調製方法としては、特許文献5に記載の方法が挙げられる。
この方法では、この発明の機能性組成物は、以下のように調製される。
低温のオゾン水での処理により、付着細菌の除菌及び脱脂肪等が行なわれる。
さらに、構成蛋白である筋原線維蛋白の収縮蛋白質(ミオシン)の変成が防止される。
その結果、格別精製を行なうことなく、後工程の酵素分解反応により、溶液として、また、当該溶液を濃縮・乾燥することにより、食品用の栄養強化剤や健康食品の素材として利用することができるアミノ酸およびペプチドを粉末として得ることができる。
魚卵外皮が分散状態で存在しているオゾン処理液は、溶存しているオゾンを消失させるために、撹拌しながら酵素反応温度35〜50℃付近まで加温される。
この処理液を温度80℃以上に加温し、15分間以上撹拌して酵素を失活させたのち、絲状菌(Aspergillusoryzae)の産生する蛋白分解酵素を用いて、さらに低分子化と他種類の魚卵蛋白に由来する苦味や、アミノ酸臭等の分解処理を行なう。
得られたアミノ酸およびペプチドを含む濾液は、使用目的によって、そのままの状態であるいは適度の濃度に濃縮して、液状で利用することができる。
また、乾燥温度についても、温度130℃以下で実施することが望ましく、この温度を超えると有効成分の分解が始まり、品質の低下を招く。
好ましい乾燥温度は、温度70〜130℃である。
タンパク分解酵素、特にバチルス属(Bacillus subtilis)の産生する蛋白分解酵素の使用量が少ない場合(0.05質量%以下)、ペプチドが多く含まれた組成物が得られる。
鮭の魚卵(筋子)外皮5kgを、洗浄糟において冷水20Lで3回洗浄し、籠型遠心脱水装置で脱水した。
酵素分解タンク(5L)内に、脱水魚卵外皮1.5kgと冷水4.5Lを入れ、攪拌しながら、酵素反応温度付近まで加温した。
つぎに、この処理液に、収縮蛋白(ミオシン)などの筋原線維蛋白を分解するため、バチルス属(Bacillussubtilis)が産生する蛋白分解酵素(ヤクルト薬品(株)・アロアーゼAP−10)を、乾燥魚卵外皮換算で0.2質量%添加し、約45℃の温度で約2.5時間撹拌処理して、筋原線維蛋白質を分解した。
上記2種の蛋白分解酵素で酵素分解を行ったのち、処理液を液温80℃に加温し、残留酵素の失活並びに減菌処理を行った。
得られたこの発明の機能性組成物(以下、SOPという。)を、脂肪細胞に添加して培養し、その状態を顕微鏡で観察するとともに、遺伝子(UCP−1)の発現に関し、以下のように試験した。
1.試験材料
(1)被験物質
上記のSOPを、内臓脂肪細胞分化メディウム((株)プライマリーセル製)に最終濃度400、100、50μg/mLになるよう添加したものを被験物質とした。
(2)使用細胞
内臓脂肪細胞培養キットV−1(初代、ラット、(株)プライマリーセル製)
褐色脂肪細胞培養キットF−1(初代、ラット、(株)プライマリーセル製)
2−1.培養操作
内臓脂肪細胞(VAC)の培養
内臓脂肪前駆細胞3.0×106 cellsを、24穴プレートに播種(細胞数は1.2×105 cells/mL/well)し、4日間、内臓脂肪分化メディウムにて予備培養を行った。
予備培養後(播種後4日目)に、SOP未添加の陰性対照物質および被験物質を、内臓脂肪分化メディウムで規定濃度に調製し、調製済み培地を細胞に添加した。
培地交換は、被験物質添加0,2,4日目(播種4,6,8日目)に行ない、回収後は新しい調製済み培地を加えた。
最終日は、ノルエピネフリン未添加群については、そのままRNAの抽出を行ない、ノルエピネフリン添加群については、被験物質を規定濃度に、RNA抽出の6時間前にノルエピネフリンを1×10−6 M濃度に内臓脂肪分化メディウムで調製して、細胞に添加した。
顕微鏡観察は、被験物質添加日およびノルエピネフリン添加前後に行ない、代表例について、ホフマンモジュールレンズによる写真撮影を行なった。
24穴プレートに播種された褐色脂肪細胞を、増殖用メディウムで3日間培養し、コンフルエントになったのを確認した。
分化誘導培地に交換して、48時間培養し、SOP未添加の陰性対照物質および被験物質を維持メディウムで規定濃度に調製し、調製済み培地を細胞に添加した。
培地交換は、被験物質添加0,2,4,5日目に行ない、回収後は、新しい調製済み培地を加えた。
ノルエピネフリン添加処理については、VACと同様の処理を維持メディウムで行なった。
顕微鏡観察は、ノルエピネフリン添加前後に行ない、代表例について、ホフマンモジュールレンズによる写真撮影を行った。反復数3。
Cell lysateの調製
培養終了後に1ウェル当たり400μLのTRI−Reagent(Mo1ecular Research Center)を加えて、ピペッティングを行ない、3ウェル分を1本のエッペンチューブに封入し、直ちに温度−80℃で凍結保存した。
サンプルを解凍した後、室温で10分間以上インキュベートした。
200mLのクロロホルムを加えて、よくボルテックスミキサーで30秒間攪拌したのち、20,000×g、10分間、温度4℃の遠心操作により相分離を行った。
上清を、別の1.5mLチューブに採取し、上清と同量の冷イソプロパノールを加えて攪拌した後、10分間インキュベートし、20,000×g、10分間、温度4℃の遠心操作によりRNAを析出させた。
上清を除去し、1mLの70%エタノールにて洗浄後、20,000×g、5分間、温度4℃で遠心分離して上清を除き、風乾させた。
これに、DEPC処理した精製水を加えて、総RNA溶液とした。
得られたRNA溶液の濃度は、吸光光度計を用いて260nmの吸光度を測定することにより算出した。
1st Strand cDNA Synthesis kit for RT-PCR(AMV)(Roche)を使用し、抽出・精製したTotal RNA2.5mg分をRnase
Free Waterで希釈し、23.2mLにした。
これに10×Reaction Buffer 5mL、25mM MgCl2 10mL、Deoxynuc1eotide Mix 5mL、Random Primer 5mLを加え、よく撹幹し、スピンダウンしたのち、温度65℃で5分間インキュベートした。
RNase Inhibitor 1mLと、AMV Reverse Transcriptase 0.8mLを加え、室温で10分間、つぎに温度42℃で60分間、つづいて温度95℃で5分間インキュベートし、cDNAを合成した。
Applied Biosystems 7500 Rea1 Time PCR System(App1ied Biosystems)を使用し、標準的なTaqMan PCR kitプロトコールによりRea1-time PCRを行った。
TaqMan Universa1 PCR Master Mix、rodent GAPDHおよびrat ucp−1のプライマー・プローブは、全てApp1ied Biosystemsより購入した。
5mL RT product、2x TaqMan Universa1 PCR Master Mix、0.25mM TaqMan probe、0.9mM forward primerおよび0.9mM reverse primerを含有した50mL PCR反応溶液を使用した。
96穴プレート上で反応を行ない、反応条件として、温度95℃で10分の後、温度95℃で15秒に続く、温度60℃で1分のプログラムを40サイクル行った。
細胞形態観察顕微鏡写真は、その代表例が図1〜図10に示されている通である。
それらの観察結果は、以下のとおりである。
細胞形態観察顕微鏡写真(VAC)
被験物質投与0日目(播種4日目)(図1および図2)
(内臓脂肪細胞を播種4日目に、各被験物質調製済みの培養液1mLの添加時)
−各ウェルの全体を観察したところ、脂肪細胞に脂肪滴が蓄積し始めていた。
−各群間での差異はなく、試験系が各群同条件で行われたことが示された。
−陰性対照群では、小さな脂肪滴を蓄積した脂肪細胞が存在するが、成熟した脂肪細胞が多く存在した。
また、肥大化した脂肪細胞が若干増えた。
−SOP50μg/mL添加群では、陰性対照群と比較し、小さな脂肪滴を蓄積した脂肪細胞が多く、肥大化した脂肪細胞は殆んど存在しなかった。
−SOP100μg/mL添加群では、陰性対照群、50μg/mL添加群と比較して小さな脂肪滴を蓄積した脂肪細胞の数は同程度であったが、成熟した脂肪細胞及び肥大化した脂肪細胞は少なかった。
−SOP400μg/mL添加群では、陰性対照群、50μg/mL添加群及び100μg/mL添加群と比較し、小さな脂肪滴を蓄積した脂肪細胞は多く存在したが、成熟した脂肪細胞の数は更に少なかった。
−いずれの群においても、細胞障害は存在しなかった。
−陰性対照群では、殆どの脂肪細胞が成熟細胞になり、肥大化細胞も多く存在した。
−SOP50μg/mL添加群では、成熟した脂肪細胞が増加した。
また、肥大化した脂肪細胞も若干存在したが、陰性対照群と比較して、肥大化した脂肪細胞の数は少なかった。
−SOP100μg/mL添加群では、50μg/mL添加群よりも小さな脂肪滴を蓄積した脂肪細胞が多く存在し、成熟した脂肪細胞は少なかった。
また、肥大化した脂肪細胞の数も少なかった。
−SOP400μg/mL添加群では、陰性対照群、50μg/mL添加群及び100μg/mL添加群と比較し、小さな脂肪滴を蓄積した脂肪細胞が多く存在した。成熟した脂肪細胞や肥大化した脂肪細胞もわずかに存在したが、脂肪細胞の数は少なかった。
−いずれの群においても、細胞障害は存在しなかった。
−陰性対照群では、脂肪滴が縮小している細胞も存在していたが、変化があまりないものや肥大化している細胞が多く存在した。
−SOP50μg/mL添加群では、脂肪滴が縮小したものも多かったが、肥大化した脂肪滴も陰性対照と同程度存在した。
−SOP100μg/mL添加群では、50μg/mL添加群よりも脂肪滴が縮小した脂肪細胞が多く存在し、変化しない細胞が少なかった。
肥大化した脂肪滴は、50μg/mL添加群よりも若干少なかった。
−SOP400μg/mL添加群では、100μg/mL添加群よりも、さらに脂肪滴が縮小した脂肪細胞が多く存在し、脂肪滴の小さな脂肪細胞が多く存在した。
肥大化した脂肪滴は、100μg/mL添加群と同程度存在した。
ノルエピネフリン添加前(図7および図8)
−陰性対照群では、殆どの脂肪細胞が成熟細胞になり、肥大化している細胞も多く存在した。
−SOP400μg/mL添加群では、陰性対照群に比べて小さな脂肪滴を数多く溜めている脂肪細胞が多く存在した。
−いずれの群においても、細胞障害は存在しなかった。
−陰性対照群、SOP400μg/mL添加群とも殆どの脂肪細胞がVACよりも早く反応が起き、形態的にも1時間後には大きく変化した。
−SOP400μg/mL添加群では、陰性対照群に比べて、形態的変化に大きな差は存在しなかった。
遺伝子発現結果は、表1に示した通である。
なお、発現量は、B3の場合(褐色脂肪細胞(BAT)でSOP無添加、ノルエピネフリン添加)を1.00とし、それとの対比で表したものである。
1)VACでは、ノルエピネフリン未添加時におけるUCP−1遺伝子発現は検出限界以下で、被験物質投与群においても、全ての群で検出限界以下であった。
2)VACのノルエピネフリン添加群では、全ての群でUCP−1遺伝子が発現した。
3)VACのノルエピネフリン添加群において、SOP400μg/mL添加群では、コントロールに比べて、UCP−1遺伝子が多く発現した。
4)BATではノルエピネフリン添加の有無に関わらずUCP−1遺伝子が発現した。
5)BATのノルエピネフリン未添加群では、コントロールとSOP400μg/mL添加群のUCP−1遺伝子発現量は、ほぼ同等であった。
6)BATのノルエピネフリン添加処理群において、SOP400μg/mL添加群では,コントロールに比べて、UCP−1遺伝子が僅かに多く発現した。
イ)SOPは、その添加により、肥大化脂肪細胞の数が未添加群よりも少なく、小型の脂肪細胞が多い傾向が認められたことから、成熟脂肪細胞から肥大化脂肪細胞への移行を抑制する効果が認められた。
ロ)SOPの高用量群を400μg/mLに設定したが、播種8日目においても細胞毒性が見られなかったことから、サーモンオバリーペプチドを大量に摂取したとしても、内臓脂肪細胞には害を及ぼさない物質であると認められた。
ハ)ノルエピネフリンの添加によって、陰性対照群で認められない肥大化した脂肪滴の放出、過剰蓄積した脂肪滴の放出が認められた。
時間の経過とともに、脂肪放出する脂肪細胞の数は増加し、ノルエピネフリンを添加して15時間後には、多くの細胞で蓄積した脂肪滴の放出があり、脂肪滴が抜けた細胞や、非常に小さな脂肪滴になった細胞が多く認められた。
ニ)UCP−1遺伝子発現解析結果よって、内臓脂肪細胞、褐色脂肪細胞ともに、SOP添加群では、ノルエピネフリン添加時におけるUCP−1遺伝子発現量を増やす傾向が見られた。
SOPは、内臓脂肪細胞の褐色脂肪化、または褐色脂肪細胞の、特にノルエピネフリン存在下における、熱産生反応促進効果が認められた。
Claims (7)
- 魚卵外皮の筋原線維蛋白質の分解物であるアミノ酸およびペプチドからなるもので、
脂肪蓄積抑制ないし放出促進作用を有すること
を特徴とする機能性組成物。 - 前記脂肪蓄積抑制ないし放出促進作用は、
ノルアドレナリン存在下に良く機能するものであること
を特徴とする請求項1に記載の機能性組成物。 - 前記アミノ酸およびペプチドは、
オゾン水処理した魚卵外皮の筋原線維蛋白質を、バチルス属が産生する蛋白分解酵素で分解して得られたものであること
を特徴とする請求項1又は2に記載の機能性組成物。 - 前記アミノ酸およびペプチドは、
魚卵外皮の筋原線維蛋白質を、バチルス属が産生する蛋白分解酵素で分解後、濾過により脂質を除去して得られたものであること
を特徴とする請求項1又は2に記載の機能性組成物。 - 前記魚卵外皮は、
タラ、ニシン、サケの腹子外皮であること
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の機能性組成物。 - 前記アミノ酸およびペプチドは、
膵臓および肝臓機能低下抑制作用も有すること
を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の機能性組成物。 - 魚卵外皮の筋原線維蛋白質の分解物であるアミノ酸およびペプチドの添加により、脂肪蓄積抑制ないし放出促進作用が付与されたこと
を特徴とする健康維持食品。
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